(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上側弁シート及び下側弁シートによりその上面開口及び下面開口が気密的に封止された角筒状の主弁ハウジング、前記上側弁シート及び/又は前記下側弁シートに合計で少なくとも3個設けられたポート、及び前記主弁ハウジング内に移動可能に配在された主弁体を有する主弁と、前記主弁体を移動させるための流体圧式のアクチュエータとを備え、
前記主弁体内に、前記ポート間を選択的に連通するための複数本の連通路が設けられ、前記主弁体を移動させることにより、連通するポート間が切り換えられるようにされており、
前記主弁体は、一体移動可能かつ上下動可能な上半部と下半部との二分割構成とされ、前記上半部と前記下半部との間に、それらを相互に離れる方向に付勢する付勢手段が介装されていることを特徴とする流路切換弁。
前記主弁体内に、少なくとも、前記ポートのうちの一つと他の一つとを連通させ得る少なくとも一つの第1連通路と、前記ポートのうちの一つと別の一つとを連通させ得る少なくとも一つの第2連通路とが設けられ、前記主弁体を一方向に移動させることにより、前記第1連通路により連通するポート間から前記第2連通路により連通するポート間への流路切換が行われ、該流路切換後に前記主弁体を他方向に移動させることにより、前記第2連通路により連通するポート間から前記第1連通路により連通するポート間への流路切換が行われるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の流路切換弁。
前記複数本の連通路のうちの少なくとも1本は、全体が直線状の通路で構成され、残りの少なくとも1本は、U字状の通路で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の流路切換弁。
前記連通路の両端部に、前記上側弁シート及び/又は前記下側弁シートにおける各ポートの開口周りに密接する環状シール面を持つ凸部が突設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の流路切換弁。
前記連通路の一つとして、前記上半部と前記下半部とに跨がる分割連通路を有し、該分割連通路のうちの上半部分の下端部及び下半部分の上端部の一方に大径部が形成されるとともに、他方に前記大径部に挿入される円筒部が延設され、前記大径部と前記円筒部との間にOリングが介装されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の流路切換弁。
前記上半部と前記上側弁シートとの間及び前記下半部と前記下側弁シートとの間に、前記主弁体の移動時において、該主弁体側のシール面を前記上側弁シート及び前記下側弁シートから離れさせるボール式シール面離隔機構が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の流路切換弁。
前記ボール式シール面離隔機構は、ボールと、該ボールを、その一部を上下方向に突出させた状態で、回転自在にかつ移動は実質的に阻止した状態で収容する収容部と、前記主弁体の移動開始前及び移動終了時においては、前記主弁体側のシール面が前記上側弁シート及び前記下側弁シートから離れないようにすべく、前記収容部から突出する前記ボールの一部が嵌め込まれ、前記主弁体の移動時においては、前記ボールが前記上半部を押し下げるとともに、前記下半部を押し上げながら転がり出るような寸法形状を持つ凹穴と、を備え、前記ボール及び前記収容部は、前記上半部と前記下半部に2箇所以上に設けられるとともに、前記凹穴は前記上側弁シートと前記下側弁シートにおける、平面視で前記収容部と同一位置及び該位置から前記主弁体が流路切換時に移動する距離だけ離れた位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項7に記載の流路切換弁。
前記アクチュエータは、前記主弁内の高圧流体が導入される、ピストンにより気密的に仕切られた容積可変の第1作動室及び第2作動室を持つ往復駆動シリンダを備え、前記第1作動室に高圧流体を導入するとともに、前記第2作動室から高圧流体を排出することにより、前記主弁体を一方向に移動させる第1行程と、前記第2作動室に高圧流体を導入するとともに、前記第1作動室から高圧流体を排出することにより、前記主弁体を他方向に移動させる第2行程とを選択的にとり得るように構成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の流路切換弁。
前記主弁ハウジングの前面側に前記第1作動室を持つ第1シリンダが設けられるとともに、前記主弁ハウジングの後面側に前記第2作動室を持つ第2シリンダが設けられ、前記主弁体の前面に前記第1シリンダのピストンロッドに連結された第1押動板が対接せしめられるとともに、前記主弁体の後面に前記第2シリンダのピストンロッドに連結された第2押動板が対接せしめられていることを特徴とする請求項10に記載の流路切換弁。
前記第1シリンダ及び前記第2シリンダは、それぞれのピストンを相互に連結する共通のピストンロッドを有し、該ピストンロッドに前記第1押動板及び前記第2押動板が固定されるとともに、前記ピストンロッドにおける前記第1押動板と前記第2押動板との間の部分が、前記主弁体に設けられた前後貫通穴に若干の上下動可能に挿入されていることを特徴とする請求項11に記載の流路切換弁。
前記第1行程と前記第2行程との切り換えを、前記第1作動室と前記第2作動室、及び、前記主弁の高圧部分と低圧部分に接続された四方パイロット弁により行うようにされていることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の流路切換弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した如くの従来のスライド式の流路切換弁においては、内容積が比較的小さな主弁ハウジング内において高圧流体(冷媒)が内壁面等に衝突するとともに、その流れ方向が大きく変わるので、圧力損失が大きくなる嫌いがあり、また、左右一対のパッキン付きピストンを伴うスライド式主弁体を摺動させて流路切換を行う構成であるので、スティックスリップ等により摺動部分が摩耗しやすく、それに伴い、耐久性並びに摺動部分のシール性が悪くなって、流体(冷媒)が主弁ハウジングとスライド式主弁体との摺動面間から漏れやすい(弁洩れしやすい)という問題もある。
【0009】
上記に加え、従来の流路切換弁、特に、前記したヒートポンプ式冷暖房システムに使用される四方切換弁では、主弁ハウジング内において高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが近接した状態(薄壁一枚を隔てた状態)で流されるので、それらの主弁ハウジング内での熱交換量が大きくなって、システムの効率が悪くなるという問題もある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、圧力損失を抑えることができるとともに、内部熱交換量を可及的に低減し得、摺動部分の摩耗を効果的に抑えることができ、耐久性並びにシール性を向上させ得て、弁洩れし難くできる流路切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る流路切換弁は、基本的には、上側弁シート及び下側弁シートによりその上面開口及び下面開口が気密的に封止された角筒状の主弁ハウジング、前記上側弁シート及び/又は前記下側弁シートに合計で少なくとも3個設けられたポート、及び前記主弁ハウジング内に移動可能に配在された主弁体を有する主弁と、前記主弁体を移動させるための流体圧式のアクチュエータとを備え、前記主弁体内に、前記ポート間を選択的に連通するための複数本の連通路が設けられ、前記主弁体を移動させることにより、連通するポート間が切り換えられるようにされて
おり、前記主弁体は、一体移動可能かつ上下動可能な上半部と下半部との二分割構成とされ、前記上半部と前記下半部との間に、それらを相互に離れる方向に付勢する付勢手段が介装されていることを特徴としている。
【0012】
具体的な好ましい態様では、前記主弁体内に、少なくとも、前記ポートのうちの一つと他の一つとを連通させ得る少なくとも一つの第1連通路と、前記ポートのうちの一つと別の一つとを連通させ得る少なくとも一つの第2連通路とが設けられ、前記主弁体を一方向に移動させることにより、前記第1連通路により連通するポート間から前記第2連通路により連通するポート間への流路切換が行われ、該流路切換後に前記主弁体を他方向に移動させることにより、前記第2連通路により連通するポート間から前記第1連通路により連通するポート間への流路切換が行われるようにされる。
【0013】
より具体的な好ましい態様では、前記上側弁シートに第1及び第2ポートが設けられるとともに、前記下側弁シートに第3及び第4ポートが設けられ、前記主弁体に、該主弁体が第1の移動位置をとるとき、前記第1ポートと第3ポートとを連通させる第1連通路及び前記第2ポートと第4ポートとを連通させる第2連通路が設けられるとともに、前記主弁体が第2の移動位置をとるとき、前記第1ポートと第2ポートとを連通させる第3連通路及び前記第3ポートと第4ポートとを連通させる第4連通路が設けられる。
【0014】
他の好ましい態様では、前記複数本の連通路のうちの少なくとも1本は、全体が直線状の通路で構成され、残りの少なくとも1本は、U字状の通路で構成される。
【0015】
前記連通路の両端部に、好ましくは、前記上側弁シート及び/又は前記下側弁シートにおける各ポートの開口周りに密接する環状シール面を持つ凸部が突設される。
【0017】
好ましい態様では、前記連通路の一つとして、前記上半部と前記下半部とに跨がる分割連通路を有し、該分割連通路のうちの上半部分の下端部及び下半部分の上端部の一方に大径部が形成されるとともに、他方に前記大径部に挿入される円筒部が延設され、前記大径部と前記円筒部との間にOリングが介装される。
【0018】
他の好ましい態様では、前記上半部と前記上側弁シートとの間及び前記下半部と前記下側弁シートとの間に、前記主弁体の移動時において、該主弁体側のシール面を前記上側弁シート及び前記下側弁シートから離れさせるボール式シール面離隔機構が設けられる。
【0019】
前記ボール式シール面離隔機構は、好ましくは、ボールと、該ボールを、その一部を上下方向に突出させた状態で、回転自在にかつ移動は実質的に阻止した状態で収容する収容部と、前記主弁体の移動開始前及び移動終了時においては、前記主弁体側のシール面が前記上側弁シート及び前記下側弁シートから離れないようにすべく、前記収容部から突出する前記ボールの一部が嵌め込まれ、前記主弁体の移動時においては、前記ボールが前記上半部を押し下げるとともに、前記下半部を押し上げながら転がり出るような寸法形状を持つ凹穴と、を備え、前記ボール及び前記収容部は、前記上半部と前記下半部に2箇所以上に設けられるとともに、前記凹穴は前記上側弁シートと前記下側弁シートにおける、平面視で前記収容部と同一位置及び該位置から前記主弁体が流路切換時に移動する距離だけ離れた位置にそれぞれ設けられる。
【0020】
前記凹穴は、好ましくは、前記上側弁シートと前記下側弁シートに敷設されたレールに形成される。
【0021】
他の好ましい態様では、前記アクチュエータは、前記主弁内の高圧流体が導入される、ピストンにより気密的に仕切られた容積可変の第1作動室及び第2作動室を持つ往復駆動シリンダを備え、前記第1作動室に高圧流体を導入するとともに、前記第2作動室から高圧流体を排出することにより、前記主弁体を一方向に移動させる第1行程と、前記第2作動室に高圧流体を導入するとともに、前記第1作動室から高圧流体を排出することにより、前記主弁体を他方向に移動させる第2行程とを選択的にとり得るように構成される。
【0022】
更に好ましい態様では、前記主弁ハウジングの前面側に前記第1作動室を持つ第1シリンダが設けられるとともに、前記主弁ハウジングの後面側に前記第2作動室を持つ第2シリンダが設けられ、前記主弁体の前面に前記第1シリンダのピストンロッドに連結された第1押動板が対接せしめられるとともに、前記主弁体の後面に前記第2シリンダのピストンロッドに連結された第2押動板が対接せしめられる。
【0023】
更に好ましい態様では、前記第1シリンダ及び前記第2シリンダは、それぞれのピストンを相互に連結する共通のピストンロッドを有し、該ピストンロッドに前記第1押動板及び前記第2押動板が固定されるとともに、前記ピストンロッドにおける前記第1押動板と前記第2押動板との間の部分が、前記主弁体に設けられた前後貫通穴に若干の上下動可能に挿入される。
【0024】
他の好ましい態様では、前記第1行程と前記第2行程との切り換えを、前記第1作動室と前記第2作動室、及び、前記主弁の高圧部分と低圧部分に接続された四方パイロット弁により行うようにされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る流路切換弁においては、主弁ハウジングの上側弁シート及び下側弁シートに全てのポートが設けられるので、例えば、ポート間を連通する4本の連通路のうちの2本は、始端から終端までの太さ(通路径)を各ポートの口径と略同じ直線状の通路として、流体をポートから真下もしくは真上にストレートに流すことができ、そのため、主弁(主弁体)内での圧力損失の発生を効果的に抑制できる。また、残りの連通路も、曲がり部分(流れ方向が変わる部分)に特定形状の案内部を設けること等によって、始端から終端まで実効通路面積をさほど変化しないようにできるとともに、曲がり部分でのうず流を発生し難くでき、これによって、連通路内での流体の膨縮が抑えられるとともに、当該連通路を流れる流体に対する抵抗が軽減され、その結果、流体を滑らかに流すことができて圧力損失を軽減でき、トータルでは従来の流路切換弁に比べて圧力損失を相当軽減できる。
【0026】
また、高圧を受ける主弁体が直方体状とされ、その内部に直線貫通路からなる連通路が設けられるとともに、その内部の上下にU字状の連通路が設けられるので、全体構造をシンプルなものとすることができるとともに、流路切換バランスも良好なものとなり、さらに、十分な強度や耐久性を確保できる。
【0027】
加えて、シールすべき面、すなわち、流路切換時に主弁体(の上半部及び下半部)が摺接する部分である上側弁シート及び下側弁シートは、平板状とされるので、シールすべき面を平坦な平滑面とする(容易に面精度を上げる)ことができ、これによっても、シール性を格段に向上できる。
【0028】
さらに、主弁ハウジングの上側弁シート及び下側弁シートに全てのポートが設けられることから、配管の取り回しが容易となるとともに、配管を含めた実質的な占有スペースを小さくできる。
【0029】
また、主弁体を上半部と下半部との二分割構成として、上半部と下半部をそれぞれ独立して上下動できるようにするとともに、上半部と下半部との間に圧縮コイルばね等の付勢手段が介装されることにより、その付勢力により、上半部及び下半部を弁シート面に押し付けることができる。加えて、主弁体側(各連通路の両端部)に凸部を突設してその端面を環状シール面とすることで、弁シート面に対接する部分の面積を必要最小限とでき、対接面圧を高めることができる。これらにより、十分なシール性を確保できて、弁洩れを一層効果的に抑制できる。
【0030】
さらに加えて、ボール式シール面離隔機構が設けられることにより、主弁体の移動時(流路切換中)には、主弁体側のシール面が上側弁シート及び下側弁シートの弁シート面から離されるようにされるので、摺動摩擦がほとんど生じず、そのため、スティックスリップ等を生じ難くでき、摺動部分の摩耗を大幅に抑制でき、さらに、摩耗が抑制されることから、シール性が向上して弁洩れをさらに効果的に抑えることができる。
【0031】
上記に加え、本発明に係る流路切換弁をヒートポンプ式冷暖房システム等の、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが流される環境で使用する場合、各連通路は主弁体内で比較的大きく離されて設けられるので、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが近接した状態(薄壁一枚を隔てた状態)で流される従来のものに比べて、主弁ハウジング内での熱交換量を大幅に低減でき、そのため、システムの効率を向上できるという効果も得られる。
【0032】
また、アクチュエータとして主弁内に供給される高圧流体と低圧流体との差圧を利用して主弁体を往復移動させる流体圧式のものが採用されるので、主弁体を電磁式あるいは電動式のアクチュエータで直接移動させる場合に比べて、コスト削減、消費電力の低減、省エネ化等を図ることができる。
【0033】
上記した以外の、課題、構成、及び作用効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本発明に係る流路切換弁の一実施例における、主弁体が第1の移動位置にある状態を示す上面図、
図2は、上記実施例の主弁体が第2の移動位置にある状態を示す上面図である。また、
図3、
図4は、それぞれ
図1、
図2のA−A矢視線に従う断面図、
図5、
図6は、それぞれ
図3、
図4のB−B矢視線に従う断面図である。
【0037】
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際にヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
【0038】
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
【0039】
図示実施例の流路切換弁1は、スライド式の四方切換弁であり、例えば前述した
図13に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100における四方切換弁140として用いられるもので、主弁ハウジング10とこの主弁ハウジング10内に前後方向に往復直線移動(以下、前後動と略す場合がある)可能かつ上下動可能に配在された主弁体20とを有する主弁5と、往復駆動シリンダ50と四方パイロット弁80(後述する
図10、
図11参照)とを有する流体圧式のアクチュエータ7とを備える。
【0040】
前記主弁5の主弁ハウジング10は、アルミあるいはステンレス等の金属材料を素材として金型成形(アルミダイカスト等)により作製されたもので、前面が開口した直方体状の箱形部10Cと、この箱形部10Cの前面開口を気密的に封止するように、かしめ固定されるとともに、はんだ付け、ろう付け、溶接等により密封接合された厚肉矩形板状の前蓋部材10Dとを有する。箱形部10Cの上面部、下面部は、それぞれ上側弁シート10A、下側弁シート10Bとされ、上側弁シート10Aの下面及び下側弁シート10Bの上面は、平坦で滑らかな弁シート面17、17となっている。
【0041】
上側弁シート10Aの左右には、所定間隔Jをあけて管継手からなる第1ポート11及び第2ポート12が垂設され、下側弁シート10Bの左右には、所定間隔Jをあけて管継手からなる第3ポート13及び第4ポート14が垂設されている。ここでは、第1ポート11と第3ポート13及び第2ポート12と第4ポート14は平面視で同一位置に配在されている。
【0042】
本実施例では、
図13に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100に組み込まれた場合において、例えば、第1ポート11は圧縮機吐出側に接続される吐出側高圧ポートDとされ、第2ポート12は室内熱交換器に接続される室内側入出ポートEとされ、第3ポート13は室外熱交換器に接続される室外側入出ポートCとされ、第4ポート14は圧縮機吸入側に接続される吸入側低圧ポートSとされる。
【0043】
前記主弁ハウジング10における上側弁シート10A及び下側弁シート10Bの左右端近くには、それぞれ主弁体20を前後動させる際の便宜を図るべく左右一対のレール44、44がそのレール面(主弁体対接面)を前記弁シート面17と面一とされた状態で前後方向に向けて平行に敷設されている(詳細は後述)。
【0044】
主弁ハウジング10内に配在された主弁体20は、短角柱状の上半部20Aと下半部20Bとの二分割構成となっている。詳しくは、比較的厚みのある第1層部材21と該第1層部材21の下面側に溶接等により一体的に接合された第2層部材22とで上半部20Aが構成され、第3層部材23と該第3層部材23の下面側に溶接等により一体的に接合された比較的厚みのある第4層部材24とで下半部20Bが構成されている。
【0045】
前記上半部20A(の第2層部材22)と下半部20B(の第3層部材23)との間には、
図8に示される如くに、それらを相互に離れる方向に付勢する付勢手段としての4本の圧縮コイルばね29が縮装されている。4本の圧縮コイルばね29は、第3層部材23の上面側の四隅近くに設けられた4個のばね収納穴23hに、その一部を上方に突出させた状態で装填されている。
【0046】
流路切換にあたり、主弁体20は、後述するアクチュエータ7により、前後方向に往復移動せしめられ、
図1及び
図5に示される如くの第1の移動位置と、この第1の移動位置から後方に向けて所定距離L(
図1、
図2参照)だけ移動させた、
図2及び
図6に示される如くの第2の移動位置とを選択的にとり得るようにされている。
【0047】
主弁体20には、第1の移動位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる直線状の第1連通路31及び第2ポート12と第4ポート14とを連通させる直線状の第2連通路32とが設けられるとともに、第2の移動位置をとるとき、第1ポート11と第2ポート12とを連通させるU字状の第3連通路33及び第3ポート13と第4ポート14とを連通させるU字状の第4連通路34とが設けられている(詳細は後述)。
【0048】
一方、主弁ハウジング10(の
前蓋部材10D)の前面側と箱形部10Cの後面側には、前記往復駆動シリンダ50を構成する第1シリンダ50Aと第2シリンダ50Bとが前後方向に沿ってそれぞれ突設されている。
【0049】
第1シリンダ50Aは、前蓋部材10D(の厚み部分)と前方突出部とに跨って設けられたシリンダ部51を有し、このシリンダ部51内には、パッキン53付きピストン52が前後方向に摺動可能に嵌挿されるとともに、このパッキン53付きピストン52により気密的に封止される容積可変の第1作動室55Aが形成されている。
【0050】
第2シリンダ50Bは、主弁ハウジング10の後方突出部に設けられたシリンダ部51を有し、このシリンダ部51内には、パッキン53付きピストン52が前後方向に摺動可能に嵌挿されるとともに、このパッキン53付きピストン52により気密的に封止される容積可変の第2作動室55Bが形成されている。
【0051】
第1シリンダ50A及び第2シリンダ50Bは、それぞれのピストン52、52を相互に連結する共通のピストンロッド54を有し、この共通のピストンロッド54の中間部前端寄りには、主弁体20の前面に対接せしめられる矩形板状の第1押動板58Aが固定されるとともに、その中間部後端寄りには、主弁体20の後面に対接せしめられる矩形板状の第2押動板58Bが固定されている。第1押動板58A及び第2押動板58Bは、それぞれ主弁体20の前面及び後面の略全域を押圧し得る大きさとされている。
【0052】
また、ピストンロッド54における第1押動板58Aと第2押動板58Bとの間の部分が、主弁体20の略中央部(第3層部材23)に設けられた断面小判形の前後貫通穴60に若干の相対上下動可能に挿入されている。
【0053】
なお、第1押動板58A及び第2押動板58Bのピストンロッド54への固定は、例えば、
図5及び
図6に加えて
図7を参照すればよくわかるように、第1押動板58A及び第2押動板58Bの中央部より下側に下面が開口したスリット状切欠部61が形成されるとともに、ピストンロッド54には左右両面平行面取りにより左右一対の嵌合溝62が形成され、前記スリット状切欠部61の左右両縁部を前記嵌合溝62に上から圧入気味にその上端部がピストンロッド54に接するまで押し込むことによりなされ、その後、必要に応じて溶接等により固定される。
【0054】
前記第1シリンダ50Aの第1作動室55Aには、該第1作動室55Aに高圧流体を導入・排出するための第1入出ポート56Aが設けられるとともに、前記第2シリンダ50Bの第2作動室55Bには、該第2作動室55Bに高圧流体を導入・排出するための第2入出ポート56Bが設けられている。第1入出ポート56A及び第2入出ポート56Bは、シリンダ部51における突出端近傍の(左側の)部位に開口している。
【0055】
ここでは、主弁体20は、第1押動板58Aが前蓋部材10Dに接当してその前方への移動が阻止された第1の移動位置にある状態(
図1、
図5)と、第2押動板58Bが箱形部10Cの後部壁10Eに接当してその後方への移動が阻止された第2の移動位置にある状態(
図2、
図6)とを選択的にとり得るようにされている。
【0056】
言い換えれば、前蓋部材10Dと後部壁10Eとは主弁体20の前後動を制止するストッパの役目を果たし、主弁体20が第2の移動位置にあるとき(
図2)における第1押動板58Aと前蓋部材10Dとの離隔距離並びに主弁体20が第1の移動位置にあるとき(
図1)における第2押動板58Bと箱形部10Cの後部壁10Eとの離隔距離は共にLとされており、したがって、主弁体20における、第1の移動位置から第2の移動位置までの移動距離並び第2の移動位置から第1の移動位置までの移動距離は共にLとされる。
【0057】
主弁体20が第1の移動位置にある状態(
図1、
図5)において、第1作動室55Aに第1入出ポート56Aを介して高圧流体を導入するとともに、第2作動室55Bから第2入出ポート56Bを介して高圧流体を排出すると、第1シリンダ50A及び第2シリンダ50Bのピストン52、52が後方に移動し、それに伴い、第1押動板58Aにより主弁体20が第1の移動位置から後方に押し動かされ、やがて第2押動板58Bが箱形部10Cの後部壁10Eに接当してその後方への移動が阻止される。このときの移動距離がLとされ、このときの位置が第2の移動位置とされる(この第1の移動位置から第2の移動位置への移動を後方移動行程と称す)。
【0058】
それに対し、主弁体20が第2の移動位置にある状態(
図2、
図6)において、第2作動室55Bに第2入出ポート56Bを介して高圧流体を導入するとともに、第1作動室55Aから第1入出ポート56Aを介して高圧流体を排出すると、第1シリンダ50A及び第2シリンダ50Bのピストン52、52が前方に移動し、それに伴い、第2押動板58Bにより主弁体20が第2の移動位置から前方に押し動かされ、やがて第1押動板58Aが前蓋部材10Dに接当してその前方への移動が阻止される。このときの移動距離がLとされ、このときの位置が第1の移動位置とされる(この第2の移動位置から第1の移動位置への移動を前方移動行程と称す)。
【0059】
次に、主弁体20とそれに設けられた第1〜第4連通路31〜34の構成を詳細に説明する。
【0060】
第1〜第4連通路31〜34を構成する、第1〜第4層部材21〜24に設けられた各通路部の上面開口及び/又は下面開口は、第1〜第4ポート11〜14のうちのいずれか二つと平面視で同一位置に配在されており、また、その口径は各ポート11〜14の口径と略同じとされ、さらに、各通路部の実効通路面積(通路径)も全長で各ポート11〜14の口径と略同じとされている。
【0061】
主弁体20の上半部20Aの上部を構成する第1層部材21には、左右に所定間隔J(第1ポート11と第2ポート12との間隔と同じ)をあけて2つの直線貫通路部21A、21Bが設けられるとともに、第2層部材22によりその下面開口が閉塞される、平面視直線状の横穴21Eにより結ばれた2つの横穴付き通路部21C、21Dが設けられている。横穴付き通路部21C、21Dは、左右に所定間隔Jをあけて配在されており、2つ合わせてU字状の第3連通路33を形成する。この第3連通路33の構成、作用効果については、後で詳述する。直線貫通路部21A、21Bと横穴付き通路部21C、21Dとの離隔距離は、主弁体20の、前述した第1の移動位置から第2の移動位置までの移動距離Lと等しくされている。
【0062】
したがって、主弁体20が第1の移動位置にあるときには、直線貫通路部21A、21Bが第1ポート11、第2ポート12の真下に位置し、主弁体20を第1の移動位置から距離Lだけ後方に移動させると、主弁体20が第2の移動位置に移動し、直線貫通路部21A、21Bの上面開口が上側弁シート10Aにより閉塞されるとともに、横穴付き通路部21C、21Dの上面開口が第1ポート11、第2ポート12の真下に位置する。
【0063】
それとは逆に、主弁体20を第2の移動位置から距離Lだけ前方に移動させると、主弁体20が第1の移動位置に移動し、横穴付き通路部21C、21Dの上面開口が上側弁シート10Aにより閉塞されるとともに、直線貫通路部21A、21Bの上面開口が第1ポート11、第2ポート12の真下に位置する。
【0064】
主弁体20の上半部20Aの下部を構成する第2層部材22には、第1層部材21の直線貫通路部21A、21Bの真下に位置するように2つの直線貫通路部22A、22Bが設けられている。
【0065】
また、主弁体20の下半部20Bの上部を構成する第3層部材23には、第2層部材2
2の直線貫通路部22A、22Bの真下に位置するように2つの直線貫通路部23A、23Bが設けられている。
【0066】
主弁体20の下半部20Bの下部を構成する第4層部材24には、第1層部材21と同様に、左右に所定間隔Jをあけて2つの直線貫通路部24A、24Bが設けられるとともに、第3層部材23によりその上面開口が閉塞される、平面視直線状の横穴24Eにより結ばれた2つの横穴付き通路部24C、24Dが設けられている。横穴付き通路部24C、24Dは、左右に所定間隔Jをあけて配在されており、2つ合わせてU字状の第4連通路34を形成する。直線貫通路部24A、24Bと横穴付き通路部24C、24Dとの離隔距離は、主弁体20の、前述した第1の移動位置から第2の移動位置までの移動距離Lと等しくされている。
【0067】
したがって、主弁体20が第1の移動位置にあるときには、直線貫通路部24A、24Bが第3ポート13、第4ポート14の真上に位置し、主弁体20を第1の移動位置から所定距離Lだけ後方に移動させると、主弁体20が第2の移動位置に移動し、直線貫通路部24A、24Bの下面開口が下側弁シート10Bにより閉塞されるとともに、横穴付き通路部24C、24Dの下面開口が第3ポート13、第4ポート14の真上に位置する。
【0068】
それとは逆に、主弁体20を第2の移動位置から距離Lだけ前方に移動させると、主弁体20が第1の移動位置に移動し、横穴付き通路部24C、24Dの下面開口が下側弁シート10Bにより閉塞されるとともに、直線貫通路部2
4A、2
4Bの下面開口が第3ポート13、第4ポート14の真上に位置する。
【0069】
前記した各連通路31、32、33、34の両端部には、
図3及び
図4に示される如くに、上側弁シート10A、下側弁シート10Bの弁シート面17、17における各ポート11〜14の開口周りに密接する環状シール面を持つ凸部36が突設されている。
【0070】
また、第1連通路31と第2連通路32は、
図3に示される如くに、主弁体20の上半部20Aと下半部20Bとに跨がる分割連通路となっているので、シール性を確保するため、次のような方策が講じられている。すなわち、第1連通路31を代表して説明するに、第1連通路31を構成する第2層部材22の直線貫通路部22Aの下部に段付きの大径部22cが形成されるとともに、第3層部材23の直線貫通路部23Aの上端に、前記大径部22cに摺動自在に挿入される円筒状部23cが延設され、大径部22cと円筒状部23cとの間にOリング28が介装され、また、Oリング28の脱落を防止するため、大径部22cの下端にはワッシャ27が溶接等により固定されている。第2連通路32も同様な構成となっている。
【0071】
上記に加え、本実施例では、主弁体20の第1層部材21と上側弁シート10Aとの間、及び、第4層部材24と下側弁シート10Bとの間に、主弁体20の移動時において、主弁体20側のシール面を上側弁シート10A及び下側弁シート10Bの弁シート面17から離れさせるボール式シール面離隔機構45が設けられている。
【0072】
ボール式シール面離隔機構45は、第1層部材21と上側弁シート10Aとの間に設けられたものが
図9に代表例で示されているように、ボール46と、該ボール46を、その一部を上下方向に突出させた状態で、回転自在にかつ移動は実質的に阻止した状態で収容する収容部47と、主弁体20の移動開始前及び移動終了時においては、主弁体20側のシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17から離れないように、前記収容部47から突出する前記ボール46の一部が嵌め込まれ、主弁体20の移動開始時(流路切換開始時)においては、ボール46が主弁体20を押し下げながら転がり出るような寸法形状とされた円錐台状の凹穴48とを備えている。この凹穴48は、上側弁シート10Aに敷設されたレール44に形成されており、また、収容部47は、丸穴47aと該丸穴47aに圧入等により固定された、上部が窄まった筒状抜け止め金具47bとで構成されている。
【0073】
前記ボール46が収容された収容部47は、主弁体20の第1層部材21と第4層部材24の四隅近くの平面視で同一位置に、前後方向に前記した主弁体20の移動距離Lの2倍の距離をあけて設けられており、また、凹穴48は、上側弁シート10A及び下側弁シート10Bに敷設された左右のレール44、44の、平面視で前記収容部47と同一位置及び該位置から前記移動距離Lだけ離れた位置の計4箇所ずつ設けられている(
図1、
図2参照)。
【0074】
なお、前記レール44は、必ずしも必要とするものではなく、前記凹穴48を直接上側弁シート10A及び下側弁シート10Bに設けてもよい。本実施例では、予め、前記のように4箇所に凹穴48が設けられたレール44を用意しておき、箱形部10Cの金型成形時に前記レール44が埋め込まれる長溝を成形し(金型の長溝形成部分は成形後に前方に抜くことができるようにしておく)、成形後に、前記長溝に前記凹穴48付きレール44を嵌め込んで固定する手法、あるいは、箱形部10Cの金型成形とともに凹穴48付きレール44をインサート成形して一体化する手法等が採られる。
【0075】
前記したボール式シール面離隔機構45では、主弁体20の移動開始前及び移動終了時においては、
図9(A)に示される如くに、上側弁シート10Aの凹穴48内にボール46の一部が嵌り込んでいる。この嵌り込み量(上側弁シート10Aの弁シート面17からボール46の頂上までの高さ)をhとする。この状態から主弁体20を移動させ始めると、収容部47も移動し始め、これに伴ってボール46は、
図9(B)に示される如くに、主弁体20(上半部20A)を、上半部20Aと下半部20Bとの間に縮装された圧縮コイルばね29の付勢力に抗して押し下げながら凹穴48から転がり出る。これによって、主弁体20のシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17から離れる。この際の主弁体20の押し下げ量は前記嵌り込み量hとなる。
【0076】
主弁体20が前記距離L分だけ移動すると、ボール46が次の凹穴48に嵌り込むので、主弁体20(上半部20A)は圧縮コイルばね29の付勢力によって押し上げられ、主弁体20のシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17に押し付けられる。
【0077】
以上の説明から理解されるように、主弁体20が第1の移動位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる第1連通路31は、直線貫通路部21A、22A、23A、及び24Aで構成される直線状通路となり、また、第2ポート12と第4ポート14とを連通させる第2連通路32は、直線貫通路部21B、22B、23B、及び24Bで構成される直線状通路となる。
【0078】
それに対し、主弁体20が第2の移動位置をとるとき、第1ポート11と第2ポート12とを連通させる第3連通路33は、主弁体20の上半部20Aに設けられた横穴付き通路部21C及び21Dで構成されるU字状通路となり、また、第3ポート13と第4ポート14とを連通させる第4連通路34は、主弁体20の下半部20Bに設けられた横穴付き通路部24C及び24Dで構成されるU字状通路となる。
【0079】
ここで、第3連通路33を形成する横穴付き通路部21C、21Dの間並びに第4連通路34を形成する横穴付き通路部24C、24Dの間には、
図4に示される如くに、横穴21E、24E側に膨出し内端側角部が丸みを帯びた左右方向に比較的長い案内部20Gが設けられている。この案内部20Gにより、流体(冷媒)がU字状に曲がる部分でのうず流の発生を抑制でき、また、横穴21E、24Eの実効通路面積(通路径)と各ポート11〜14の口径とが略同じとされるので、第3連通路33及び第4連通路34は、全長にわたって通路径が略一定となり、これにより、第3連通路33及び第4連通路34内で流体の膨張、収縮が起こらず、そのため、圧力損失を低減できる。
【0080】
仮に、主弁体20の上半部20A(第3連通路33)を第1層部材21と第2層部材22の2部材、また、主弁体20の下半部20B(第4連通路34)を第3層部材23と第4層部材24の2部材で形成するのではなく、上半部20A、下半部20Bをそれぞれ金型成形により一体物として作製する場合には、第3連通路33及び第4連通路34の横穴21E、24E部分がアンダーカット部となるため、第3連通路33及び第4連通路34を、前記案内部20Gの無い椀形状とせざるを得ず、その結果、うず流の発生を抑制できず、また、通路径も略一定にはできないため、圧力損失が大きくなる。
【0081】
上記のように、本実施例の流路切換弁1では、主弁体20を第1の移動位置から後方に向けて距離Lだけ移動させる後方移動行程を行うことによって、第1連通路31により連通するポート11−13間及び第2連通路32により連通するポート12−14間から、第3連通路33により連通するポート11−12間及び第4連通路34により連通するポート13−14間への流路切換が行われ、主弁体20を第2の移動位置から前方に向けて距離Lだけ移動させる前方移動行程を行うことによって、第3連通路33により連通するポート11−12間及び第4連通路34により連通するポート13−14間から、第1連通路31により連通するポート11−13間及び第2連通路32により連通するポート12−14間への流路切換が行われる。
【0082】
本実施例の流路切換弁1を、
図13に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システムに組み込む際には、前述したように、例えば、第1ポート11は圧縮機吐出側に接続される吐出側高圧ポートD、第2ポート12は室内熱交換器に接続される室内側入出ポートE、第3ポート13は室外熱交換器に接続される室外側入出ポートC、第4ポート14は圧縮機吸入側に接続される吸入側低圧ポートSとされる。
【0083】
そして、冷房運転を行う場合には、主弁体20に第1の移動位置をとらせる。これにより、
図3に白抜き矢印で示される如くに、圧縮機からの高圧冷媒が吐出側高圧ポート11(D)→直線状の第1連通路31→室外側入出ポート13(C)へと流れるとともに、室内熱交換器からの低圧冷媒が室内側入出ポート12(E)→直線状の第2連通路32→吸入側低圧ポート14(S)へと流れる。
【0084】
一方、暖房運転を行う場合には、主弁体20を第1の移動位置から後方に向けて移動させて第2の移動位置をとらせる。これにより、流路切換が行われ、
図4に白抜き矢印で示される如くに、圧縮機からの高圧冷媒が吐出側高圧ポート11(D)→U字状の第3連通路33→室内側入出ポート12(E)へと流れるとともに、室外側熱交換器からの低圧冷媒が室外側入出ポート13(C)→逆U字状の第4連通路34→吸入側低圧ポート14(S)へと流れる。
【0085】
このような構成とされた本実施例の流路切換弁1においては、第1連通路31及び第2連通路32は始端から終端までの太さ(通路径)が第1ポート11及び第2ポート12の口径と略同じ直線状の通路とされ、冷媒は第1ポート11及び第2ポート12から真下にストレートに流れるので、主弁5(主弁体20)内での圧力損失の発生を効果的に抑制することができる。
【0086】
また、U字状の第3連通路33及び第4連通路34は、前述したように特定形状の案内部20Gが設けられるので、始端から終端まで実効通路面積をさほど変化しないようにできるとともに、U字状曲がり部分でのうず流を発生し難くでき、これによって、連通路33、34内での流体の膨縮が抑えられるとともに、当該連通路33、34を流れる流体に対する抵抗が低減され、その結果、流体を滑らかに流すことができて圧力損失を軽減でき、トータルでは従来の流路切換弁に比べて圧力損失を相当軽減できる。
【0087】
また、高圧を受ける主弁体20が直方体状とされ、その内部に直線貫通路からなる連通路31、32が設けられるとともに、その内部の上下にU字状の連通路33、34が設けられるので、全体構造をシンプルなものとすることができるとともに、流路切換バランスも良好なものとなり、さらに、十分な強度や耐久性を確保できる。
【0088】
加えて、シールすべき面、すなわち、流路切換時に主弁体20(の上半部20A及び下半部20B)が摺接する部分である上側弁シート10A及び下側弁シート10Bは、平板状とされるので、シールすべき面を平坦な平滑面とする(容易に面精度を上げる)ことができ、これによっても、シール性を格段に向上できる。
【0089】
さらに、主弁ハウジング10の上側弁シート10A及び下側弁シート10Bに全てのポート11〜14が設けられることから、配管の取り回しが容易となるとともに、配管を含めた実質的な占有スペースを小さくできる。
【0090】
また、主弁体20が上半部20Aと下半部20Bとの二分割構成とされ、上半部20Aと下半部20Bとはそれぞれ独立して上下動できるようにされるとともに、上半部20Aと下半部20Bとの間に圧縮コイルばね29が縮装されているので、そのばね力により、上半部20Aは押し上げられてそのシール面が上側弁シート10Aの弁シート面17における各ポート11、12周りに押し付けられるとともに、下半部20Bは押し下げられてそのシール面が下側弁シート10Bの弁シート面17における各ポート13、14周りに押し付けられる。
【0091】
この場合、主弁体20(上半部20Aと下半部20B)側に凸部36が突設されてその端面が環状シール面37とされていることから、弁シート面17に対接する部分の面積が必要最小限とされ、そのため、対接面圧が高められる。これらの相乗効果により、十分なシール性を確保できて、弁洩れを効果的に抑制できる。
【0092】
さらに加えて、本実施例においては、ボール式シール面離隔機構45により、主弁体20の移動時(流路切換中)には、主弁体20の上半部20Aが押し下げられるとともに、下半部20Bが押し上げられて、主弁体20側のシール面が上側弁シート10A及び下側弁シート10Bの弁シート面17、17から離されるようにされているので、摺動摩擦がほとんど生じず、そのため、スティックスリップ等を生じ難くでき、摺動部分の摩耗を大幅に抑制でき、さらに、摩耗が抑制されることから、シール性が向上して弁洩れを一層効果的に抑えることができる。
【0093】
また、特許文献1に示されるような従来のスライド式主弁体を有する四方切換弁においては、流路の切換時に高圧配管Dと低圧配管Sとの流路開口面積が急激に変化するため、高圧の冷媒が低圧配管に一気に入り込むことにより異音(切換音)が発生する。この異音を防止するために、冷暖房システム側で圧縮機の周波数を徐々に低下させて、高圧配管Dと低圧配管Sとの圧力差による異音が許容できる程度の差圧になるようにしてから流路の切り換えを行う必要があった。本実施例の流路切換弁1においては、ボール式シール面隔離機構45により主弁体を弁シート面から嵌り込み量hの分だけ浮かせてから切り換えるので、切換直後から一定の流路開口面積を確保でき、高圧配管Dと低圧配管Sとの間の流路開口面積が急激に変化することがなく、それゆえ上記の異音の発生を抑制できる。また、嵌り込み量hを適宜変更することにより、流路切換時の圧縮機の周波数の低下度合を特許文献1の四方切換弁を用いた冷暖房システムより小さくすることもできるし、圧縮機の周波数の低下を行うことなく流路を切り換えることもできる。
【0094】
上記に加え、本実施例の流路切換弁1をヒートポンプ式冷暖房システム等の、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが流される環境で使用する場合、各連通路31〜34は主弁体20内で比較的大きく離されて設けられているので、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが近接した状態(薄壁一枚を隔てた状態)で流される従来のものに比べて、主弁ハウジング10内での熱交換量を大幅に低減でき、そのため、システムの効率を向上できるという効果も得られる。
【0095】
なお、上記実施例では、第1層部材21とこれに接合された第2層部材22とで上半部20Aが、また、第3層部材23とこれに接合された第4層部材24とで下半部20Bが構成されていたが、それに代えて、3Dプリンター等で上半部20A及び下半部20Bをそれぞれ初めから一体物として作製してもよいし、更に、上半部20A及び下半部20Bを一体物として、すなわち主弁体20を一部材として作製してもよい。
【0096】
また、上記実施例では、四方切換弁1を例示したが、本発明に係る流路切換弁は四方切換弁に限られることはなく、三方切換弁等にも適用できる。三方切換弁の場合は、上記実施例の流路切換弁(四方切換弁)1において、例えば、上半部20Aを始めから一体物として作製し(U字状の連通路を形成する必要がないため)、主弁ハウジング10に設けられている第2ポート12を無くすとともに、第2連通路32及び第3連通路33を構成する直線貫通路部21B、22B、23B、24Bと横穴付き通路部21C、21D及びそれに付随する部分を削除し、連通路は、主弁体20が第1の移動位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる直線状の第1連通路31と、主弁体20が第2の移動位置をとるとき、第3ポート13と第4ポート14とを連通させるU字状の第4連通路34との2本構成とすればよい。
【0097】
なお、上記三方切換弁を前述したヒートポンプ式冷暖房システムに使用する場合には、当該三方切換弁を2個使用して四方切換弁として働かせる、あるいは、冷媒又は冷気・暖気供給先の切り換え(例えば、2室のうちの一方に送るか、他方に送るかの切り換え)等に使用する。
【0098】
次に、
図10〜
図12を参照しながら、第1及び第2シリンダ50A、50Bを有するアクチュエータ7に備えられる四方パイロット弁80の構成並びに動作について説明する。
【0099】
本実施例においては、前記流路切換、すなわち、後方移動行程と前方移動行程との切り換えは、第1及び第2シリンダ50A、50Bにおける第1入出ポート56Aと第2入出ポート56B、及び、主弁5の高圧部分である第1ポート11(吐出側高圧ポートDであり、高圧ポート11と称することがある)と低圧部分である第4ポート14(吸入側低圧ポートSであり、低圧ポート14と称することがある)に接続された電磁式の四方パイロット弁80により行うようにされている。
【0100】
四方パイロット弁80は、主弁ハウジング10における箱形部10Cの左側面部の後部に、コ字状の基端側取付具65及び受け側取付具66を介して横置きで取り付けられている(取付具65、66等の詳細は後述)。
【0101】
四方パイロット弁80は、その構造自体はよく知られているもので、
図12に示される如くに(
図12では、他の図面と上下方向及び前後方向が異なる)、通電励磁用のコイル82a、このコイル82aの外周を覆うカバーケース82b、コイル82aの内周側に配在されてボルト82cによりカバーケース82bに固定された吸引子84、この吸引子84に対向配置されたプランジャ85等を備えている。プランジャ85は、コイル82aと吸引子84との間にその一端部(
図12では上端部、以下同じ)が配在された円筒状のガイドパイプ86に摺動自在に嵌挿されている。ガイドパイプ86の上端部は吸引子84の外周段丘部に溶接等により固定され、その下端側開口部には、細管挿着穴を有するフィルタ付き蓋部材81が溶接・ろう付け・かしめ等により気密的に取着されており、蓋部材81とプランジャ85とガイドパイプ86とで囲まれる領域が弁室88となっている。
【0102】
また、吸引子84とプランジャ85との間には、プランジャ85を吸引子84から離れる方向(
図12では下方)に付勢するプランジャばね87が縮装されている。
【0103】
ガイドパイプ86におけるプランジャ85の下端と蓋部材81との間には取付開口86aが形成され、この取付開口86aに、その内端面が弁座(弁シート)92とされ、その上面(プランジャ85側の面)がプランジャ85の吸引子84から離れる方向の移動を制止するストッパ面とされる断面外形が矩形ないしかまぼこ状の弁座ブロック83の弁座側とは反対側の端部外周が溶接等により気密的に密封接合されている。前記弁座ブロック83の弁座側とは反対側はガイドパイプ86の外周面に沿うような円筒面とされ、この弁座ブロック83の円筒面とガイドパイプ86の取付開口86aの接合部周りとは、後述する受け側取付具66の断面円弧状の取付受座66a(
図11も参照)に密着せしめられて溶接等により密封接合されており、これによって、四方パイロット弁80が受け側取付具66及び基端側取付具65を介して主弁ハウジング10に取り付け固定されている。
【0104】
プランジャ85の吸引子84側とは反対側の端部には、弁体91をその自由端側で厚み方向に摺動可能に保持する弁体ホルダ90がその幅広の基端部96をかしめ等により取付固定されている。弁体ホルダ90には、弁体91を弁座92に押し付ける方向(厚み方向)に付勢する板ばね94が取り付けられている。弁体91は弁座92のシート面をプランジャ85の上下動に伴って摺動するようになっている。
【0105】
前記弁座92には、下から順にポートa、ポートb、ポートcが設けられており、また、弁体91には、ポートaとポートb及びポートbとポートcを選択的に連通させ得る、厚み方向に凹む凹部93が設けられている。弁座ブロック83には、ポートaのみに連通するように細管95aの一端部が、ポートbのみに連通するように細管95bの一端部が、ポートcのみに連通するように細管95cの一端部がそれぞれ挿着されている。また、蓋部材81には細管95dの一端部が挿着されている。
【0106】
一方、
図10及び
図11に示される如くに、細管95a、95b、95c、及び95dは、主弁ハウジング10の外表面に沿うように引き回されており、細管95aの他端部は、第1シリンダ50Aの第1入出ポート56Aを介して第1作動室55Aに接続され、細管95bの他端部は、低圧ポート14に接続され、細管95cの他端部は、第2シリンダ50Bの第2入出ポート56Bを介して第2作動室55Bに接続されている。また、細管95dの他端部は、高圧ポート11に接続されている。
【0107】
次に、四方パイロット弁80を主弁ハウジング10における箱形部10Cの左側面部の後部に横置きで取り付けるための基端側取付具65及び受け側取付具66等について説明する。基端側取付具65は、矩形平板状の縦辺部65aと上下の横辺部65b、65cとを有し、縦辺部65a(の外周部)が主弁ハウジング10における箱形部10Cの左側面部の後部に溶接等により固定されている。また、横辺部65b、65cには、それぞれ受け側取付具66との連結固定に供される止めねじ70の通し穴が形成されており、下側の横辺部65cにおける通し穴の内面側外周縁部には前記止めねじ70が螺合するバーリング部65dが形成されている。
【0108】
一方、受け側取付具66は、基端側取付具65を左右反転させたような逆コ字状とされ、その縦辺部が四方パイロット弁80のガイドパイプ86の外周面に沿うような断面円弧状の取付受座66a(
図11も参照)とされ、この取付受座66aの上下両端に矩形平板状の横辺部66b、66cが設けられている。受け側取付具66の横辺部66b、66cの間隔は基端側取付具65と同じであるが、横辺部66b、66cの幅は基端側取付具65のそれより広くされており、受け側取付具66の上下の横辺部66b、66cはそれぞれ基端側取付具65の上下の横辺部65b、65cの下側に位置せしめられている。また、横辺部66b、66cには、それぞれ基端側取付具65との連結固定に供される止めねじ70の通し穴が形成されており、上側の横辺部66bにおける通し穴の内面側外周縁部には前記止めねじ70が螺合するバーリング部66dが形成されている。
【0109】
四方パイロット弁80を主弁ハウジング10に取り付けるにあたっては、前述したように弁座ブロック83とガイドパイプ86の取付開口86aの接合部周りとを受け側取付具66の取付受座66aに溶接等により接合した後、受け側取付具66を基端側取付具65に止めねじ70、70で締付固定するようにされる。
【0110】
このような構成とされた四方パイロット弁80においては、通電OFF時には、
図12(A)に示される如くに、プランジャ85はプランジャばね87の付勢力により、その下端が弁座ブロック83に接当する位置まで押し下げられている。この状態では、弁体91がポートaとポートb上に位置し、その凹部93によりポートaとポートbが連通するとともに、ポートcと弁室88とが連通するので、高圧ポート11の高圧流体が細管95d→弁室88→ポートc→細管95c→第2入出ポート56Bを介して第2作動室55Bに導入されるとともに、第1作動室55Aの高圧流体が第1入出ポート56A→細管95a→ポートa→凹部93→ポートb→細管95b→低圧ポート14へと流れて排出される。
【0111】
それに対し、通電ON時には、
図12(B)に示される如くに、プランジャ85は吸引子84の吸引力により、その上端が吸引子84に接当する位置まで引き寄せられる。このときには、弁体91がポートbとポートc上に位置し、その凹部93によりポートbとポートcが連通するとともに、ポートaと弁室88とが連通するので、高圧ポート11の高圧流体が細管95d→弁室88→ポートa→細管95a→第1入出ポート56Aを介して第1作動室55Aに導入されるとともに、第2作動室55Bの高圧流体が第2入出ポート56B→細管95c→ポートc→凹部93→ポートb→細管95b→低圧ポート14へと流れて排出される。
【0112】
したがって、通電OFFから通電ONにすると、前記後方移動行程がとられ、主弁体20が第1の移動位置から第2の移動位置へと移動し、前記した如くの流路切換が行われる一方、通電ONから通電OFFにすると、前記前方移動行程がとられ、主弁体20が第2の移動位置から第1の移動位置へと移動し、前記した如くの流路切換が行われる。
【0113】
このように、本実施例の流路切換弁1においては、前記した主弁5の構成による効果に加えて、次のような効果が得られる。
【0114】
すなわち、電磁式四方パイロット弁80への通電をON/OFFで切り換えることで、主弁5内を流通する高圧流体と低圧流体との差圧を利用して主弁体20を往復移動させるようにされているので、主弁体20を電磁式あるいは電動式のアクチュエータで直接移動させる場合に比べて、コスト削減、消費電力の低減、省エネ化等を図ることができる。
【0115】
なお、本発明に係る流路切換弁は、ヒートポンプ式冷暖房システムのみならず、他のシステム、装置、機器類にも組み込めることは勿論である。
【0116】
また、主弁ハウジング10や主弁体20等の素材は、特に制限されず、アルミやステンレス等の金属、合成樹脂等の、導入される流体の圧力に耐えられるものであれば、いかなるものであってもよい。