【文献】
J.L. Weyher, 外5名,Study of individual grown-in and indentation-induced dislocations in GaN by defect-selective etching and transmission electron microscopy,Materials Science and Engineering B,2001年,Vol. 80,pp. 318-321
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
バンドギャップが広い窒化ガリウム(GaN)等の窒化物系半導体は、青色や紫外光の短波長発光デバイスの材料として不可欠の材料である。また、窒化物系半導体を用いることにより、シリコン(Si)等の従来の半導体材料では実現困難な、高出力、高周波、高耐圧、高耐環境性を有する半導体素子を実現することか可能となる。そのため、窒化物系半導体は、短波長発光デバイスの材料としてのみならず、大電力制御や省エネルギーを可能とするパワーデバイス材料、高速大容量の通信デバイス材料、車載用の耐熱性デバイス材料、耐放射線デバイス材料等の広い範囲への応用が期待されている。
【0003】
しかしながら、窒化物系半導体は、融点が高くまた高温で分解するため、インゴットを作成し、作成したインゴットから基板を製造することは困難である。そこで、窒化物系半導体は、一般的に、格子定数が比較的近い異種基板(サファイア、6H構造の炭化珪素(6H−SiC)あるいはシリコン(Si))上にエピタキシャル成長させることにより製造される。このように、異種基板上にエピタキシャル成長された窒化物半導体には、多数の欠陥が導入され、発光デバイスにおける量子効率の低下や、パワーデバイスにおける耐圧の低下等をもたらす虞がある。
【0004】
そこで、近年では、窒化物系半導体をエピタキシャル成長させる基板として、異種基板上にエピタキシャル成長させたGaN基板を異種基板から分離した自立基板が提供されるようになってきた。このように提供される自立基板は、種々の方法により結晶欠陥が低減されており、発光デバイスあるいはパワーデバイスの基板として十分な品質を有するものとなってきている。
【0005】
このように、GaN基板は、窒化物系半導体を用いたデバイスの製造に有用である。しかしながら、GaN基板を製造する際の機械加工において基板表面に導入された欠陥は、GaNが粘りを有しているため、砥粒の細粒化を図っても除去することが難しく、機械加工後のGaN基板の表面には、厚いダメージ層が残存する。
【0006】
また、窒化物系半導体をエピタキシャル成長させるためには、GaN基板の表面を原子レベルで平坦化することが求められる。表面の原子レベルでの平坦化は、例えば、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、ドライエッチング、あるいは、触媒基準エッチング(例えば、特許文献1参照)等により行うことが可能であるが、機械加工で生じた厚いダメージ層を除去することは困難である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.実施形態:
A1.GaN基板の製造工程:
A2.エッチング工程:
A3.実施例および比較例:
B.変形例:
【0019】
A.実施形態
A1.GaN基板の製造工程:
図1は、本発明の一実施形態としての窒化ガリウム(GaN)基板の製造工程(以下、単に「基板製造工程」とも呼ぶ)を示す工程図である。GaN基板の製造工程では、まず、
図1(a)に示すように、GaNとは異なる材料の基板DMS(以下、「異種基板」とも呼ぶ)を準備する。具体的には、異種基板DMSとして、サファイア、6H構造の炭化珪素(6H−SiC)あるいはシリコン(Si)の基板を準備する。次いで、
図1(b)に示すように、異種基板DMSの一方の面に、GaN厚膜90を結晶成長させる。このGaN厚膜90を異種基板DMSから分離することにより、自立したGaN基板(成長基板)91が得られる。
【0020】
次いで、本実施形態では、得られた成長基板91表面の凹凸を除去するため、成長基板91の両面に機械研磨を施す。これにより、
図1(c)に示すように、成長基板91の表面の凹凸が除去されたGaN基板(研磨基板)92が得られる。機械研磨は、例えば、定盤に貼り付けられた研磨パッドに成長基板91を押し当てた状態で、ダイヤモンド砥粒を含む研磨剤を研磨パッドに滴下しつつ、定盤と成長基板91とをそれぞれ回転させることにより行うことができる。なお、研磨剤に含まれるダイヤモンド砥粒の粒度は、研磨基板92に要求される表面粗さ、成長基板91の表面粗さ、機械研磨の研磨速度等に基づいて、適宜(例えば、#4000)設定される。
【0021】
研磨基板92の表面粗さは、粒度の細かいダイヤモンド砥粒を用いることにより、十分に小さく(Ra<3nm)することが可能である。しかしながら、砥粒の硬度が高いために、研磨基板92の表面には、
図1(d)の破線で示すように、2nmから10nmの深さのスクラッチ傷SCRが発生する。また、GaNは、粘りがあるため、結晶欠陥が導入された領域が十分に除去されず、研磨基板92の表面に、数μmから十数μmの厚さのダメージ層DMGが発生する。なお、スクラッチ傷SCRおよびダメージ層DMGは、機械研磨を行った研磨基板の両面に発生するが、
図1(d)では、図示の便宜上、研磨基板の一方の表面に生じたスクラッチ傷SCRおよびダメージ層DMGを図示している。
【0022】
本実施形態では、研磨基板92の表面に発生したスクラッチ傷SCRおよびダメージ層DMGを除去するため、研磨基板92の表面を等方的にエッチングする。このエッチングにより、スクラッチ傷SCRおよびダメージ層DMGを除去したGaN基板(エッチド基板)93が得られる。また、本実施形態のエッチングにより、エッチド基板93の表面は、原子レベルで平坦な面となり、平坦な領域(テラス)と原子レベルの段差(ステップ)とを有するステップテラスが形成される。このように、エッチド基板93の表面にステップテラスが形成されることにより、エッチド基板93の表面に結晶性の良好なGaN等の窒化物半導体をエピタキシャル成長させることが容易となる。なお、エッチングの具体的な方法については、後述する。
【0023】
A2.エッチング工程:
図2は、本実施形態の基板製造工程におけるエッチング工程の具体例を示す説明図である。本実施形態において、エッチングは、マッフル炉20を用い、空気雰囲気中で加熱・融解したエッチング剤(後述する)中に研磨基板92を浸漬することにより行われる。
【0024】
具体的には、まず、ヒータ22に囲まれたマッフル炉20の炉内24に配置され、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、アルミナ(Al
2O
3)等のエッチング剤に対する耐食性を有する素材からなる坩堝30に、固体のエッチング剤および研磨基板92を装入する(
図2(a))。次いで、マッフル炉20のヒータ22に通電して炉内24を昇温する。炉内24の温度(炉内温度)がエッチング剤の融点を超えると、
図2(b)に示すように、坩堝30に装入されたエッチング剤が融解して、液状の溶融エッチング剤中に研磨基板92が浸漬された状態となる。
【0025】
昇温は、エッチング剤が融解した後も、炉内温度が所定のエッチング温度(後述する)に到達するまで継続される。炉内温度がエッチング温度に到達した後、所定の保持時間(例えば、20分)炉内温度をエッチング温度に保持することにより、研磨基板92の表面はエッチングされ、エッチド基板93が得られる。なお、保持時間は、エッチング剤によるGaNのエッチングレートと、ダメージ層DMG(
図1(d))の厚さとに基づいて、適宜変更される。
【0026】
保持時間の経過後、炉内24は降温される。降温により、炉内温度がエッチング剤の融点を下回ると、
図2(c)に示すように、坩堝30中の溶融エッチング剤が固化して、固体エッチング剤中にエッチド基板93が埋め込まれた状態となる。炉内温度が略室温になった後、エッチング剤とエッチド基板93は、水中に投入される。これによりエッチド基板93を覆う固体エッチング剤が溶解し、
図2(d)に示すように、エッチド基板93が取り出される。
【0027】
エッチング剤としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)と水酸化カリウム(KOH)とを所定のモル比で混合したものを用いることができる。なお、以下では、エッチング剤全体に対するNaOHのモル比(NaOH/(KOH+NaOH))をNaOHモル比とも呼ぶ。NaOHモル比は、種々変更可能であるが、エッチング剤の融解温度が380℃以下となるように設定するのが好ましい。さらに、よりエッチング剤の融解温度を下げることが可能である点で、NaOHモル比は、0.3〜0.8に設定するのがより好ましい。
【0028】
また、本実施形態では、NaOHとKOHとからなるエッチング剤を用いているが、一般的に、エッチング剤は、少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物(LiOH、NaOH、KOH、RbOHもしくはCsOH)を含んでいれば良い。但し、エッチング剤の融解温度を低下させ、より低温でエッチングすることが可能となる点で、2種以上のアルカリ金属水酸化物を混合したエッチング剤を用いるのが好ましい。さらに、入手がより容易である点で、エッチング剤としては、NaOHとKOHとを混合したものを用いるのが好ましい。
【0029】
エッチング温度は、エッチング剤の融解温度から550℃の範囲で適宜設定することが可能である。但し、エッチング温度が高くなると、エッチングレートは上昇するものの、エッチド基板93の表面にエッチピットや荒れが生じやすくなる。そのため、エッチング温度は、380℃以下とするのが好ましい。さらに、表面の原子レベルでの平坦化がより容易となる点で、エッチング温度は、330℃以下とするのがより好ましい。一方、エッチング温度が低くなるとエッチングレートが急激に低下する。そのため、エッチング温度は、200℃以上とするのが好ましく、240℃以上とするのがより好ましい。
【0030】
また、
図2の例では、予め固体エッチング剤および研磨基板92を坩堝30に装入し、その坩堝30をマッフル炉20で加熱することによりエッチングを行っているが、エッチングの方法はこれに限定されない。例えば、特開2011-151317号公報に開示されているように、予めエッチング剤を融解し、溶融したエッチング剤中に研磨基板92を浸漬するものとしても良い。
【0031】
上述のように、本実施形態の基板製造工程では、機械研磨を行った後にエッチングを行うことにより、機械研磨で生じた数μmから十数μmの厚さのダメージ層DMG(
図1(d))が除去される。また、本実施形態におけるエッチングにより、エッチド基板93の表面を原子レベルで平坦化することができる。そのため、エッチングを行ったそのままの状態で、エッチド基板93上に結晶性の良好な窒化物半導体をエピタキシャル成長させることができる。このように、本実施形態によれば、ダメージ層DMGの除去と表面の平坦化とをエッチングのみで行うことができるので、エピタキシャル成長に適したGaN基板をより容易に製造することが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態では、エッチング(
図1(d))の前工程として、成長基板91の機械研磨(
図1(c))を1回行っているが、機械研磨に先立って成長基板91を研削する工程を含めても良い。また、研削と機械研磨との少なくとも一方を複数回行うものとしても良く、研削と機械研磨との一方のみを複数回行い、他方を省略することも可能である。これらの場合、砥石や研磨剤に含まれる砥粒の粒度は、工程が進むに従って、粗いものから細かいものに順次変更される。
【0033】
また、成長基板91の凹凸が十分に小さい場合には、エッチングのみを行うものとしても良い。さらに、エッチングレートの速いエッチングを行った後、低いエッチング温度で本実施形態のエッチングを行うものとしても良い。このようにすれば、より短時間で、ダメージ層DMGを除去するとともに、エッチド基板93の表面を原子レベルで平坦化することができる。なお、エッチングレートの速いエッチング方法として、例えば、より高いエッチング温度で本実施形態のエッチングを行うものとしても良い。また、エッチング剤としてアルカリ金属ハロゲン化物にアルカリ金属水酸化物を所定の割合(例えば、エッチング剤に対するアルカリ金属水酸化物の重量比で、0.2%から2%)で添加したものを溶融し、溶融したエッチング剤にGaN基板を浸漬させるものとしても良い。このエッチングにおけるエッチング温度は、等方的なエッチングが進行するように、例えば、900℃から1100℃の間で適宜設定される。
【0034】
さらに、本実施形態において、エッチング温度を高くすること等により、エッチド基板93の表面が原子レベルで十分に平坦化していない場合、エッチング後に、化学機械研磨、ドライエッチング、あるいは、触媒基準エッチング等を行うことにより、エッチド基板93の表面を原子レベルで平坦化することも可能である。このようにしても、エッチングによりダメージ層DMGが除去されるので、より容易にエピタキシャル成長に適したGaN基板を製造することができる。
【0035】
本実施形態では、異種基板DMS上に結晶成長したGaN厚膜90を、当該異種基板DMSから分離した成長基板91(自立基板)のエッチングを行っているが、本実施形態のエッチングは、異種基板DMSから分離していないGaN厚膜90(非自立基板)やインゴットをスライスして作成される基板(スライス基板)にも適用することができる。これらの場合においても、エッチングの前工程として研削や機械研磨を行なってもよく、エッチングの後工程として、化学機械研磨、ドライエッチング、あるいは、触媒基準エッチング等を行っても良い。また、前工程および後工程を行うことなく、非自立基板やスライス基板にエッチングのみを行うものとしても良い。
【0036】
このように、本実施形態によれば、上述のエッチングにより、研削や機械研磨等の機械加工により生じるダメージ層DMGが除去される。機械加工では、砥粒の大きさを小さくしてもダメージ層DMGが形成されるため、ダメージ層DMGが除去されたGaN基板を得ることができない。また、化学機械研磨、ドライエッチングあるいは触媒基準エッチング等は、研磨速度やエッチングレート等の加工速度が極めて遅く、機械加工で生じるダメージ層DMGを除去することは、加工時間や加工コストの点で現実的でない。そのため、本実施形態で示したエッチングを行うことなく、ダメージ層DMGが除去されたGaN基板を低コストで製造することはできない。従って、ダメージ層DMGが除去されたGaN基板が、機械加工のみを行ったGaN基板と同等程度のコストで提供されている場合には、本実施形態で示したエッチングを行っていると考えられる。なお、ダメージ層DMGが除去されているか否かは、GaN基板上にエピタキシャル成長したGaNの結晶性の良否で判断することができる。また、X線トポグラフィやカソードルミネセンス等を用いてGaN基板の表面付近の欠陥を検出することによっても、ダメージ層DMGが除去されているか否かを判断することができる。
【0037】
A3.実施例および比較例:
本実施形態の実施例および比較例として、GaN基板をエッチングして、その表面形態を観察した。具体的には、まず、GaN基板上にGaN単結晶膜(エピ膜)をエピタキシャル成長した基板(エピ基板)を準備した。準備したエピ基板のエピ膜側の表面形態を、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて観察した。なお、準備したエピ基板のエピ膜は、基板のGa面側に形成されたエピ膜であり、エピ膜の表面もGa面となっている。
【0038】
図3は、エッチング前のGaN基板の表面形態を示すAFM観察像である。
図3(a)および
図3(b)は、互いに異なる位置におけるAFM観察像を示している。
図3(a)に示すように、エピ膜側の表面には、エピ膜がスパイラル成長することにより形成される螺旋状のパターンが形成されていた。また、
図3(a)の右下部分および
図3(b)に示すように、エピ膜側の表面には螺旋状のパターンが複数形成されており、エピ膜を成長させる際のスパイラル成長の基点が面内に複数分布していることが確認できた。
【0039】
表面形態の観察に引き続き、GaN基板のエッチングを行った。具体的には、まず、ニッケル(Ni)製の坩堝に、NaOHおよびKOHからなるエッチング剤を装入し、ヒータで坩堝を加熱し、エッチング剤を融解した。エッチング剤のNaOHモル比は、エッチング剤の融解温度が最も低くなる(約170℃)ように、0.515とした。
【0040】
次いで、エッチング剤の温度を所定のエッチング温度に保った状態で、溶融したエッチング剤にGaN基板を浸漬した。そして、所定のエッチング時間の経過後、GaN基板を取り出し、エッチングされたGaN基板と、GaN基板の表面に付着したエッチング剤とを水中に投入することによりエッチング剤を溶解させ、エッチングが行われたGaN基板を得た。次いで、エッチング後のGaN基板のエピ膜側の表面形態を、AFMを用いて観察した。実施例1および2と、比較例とにおいて、エッチング温度とエッチング時間は、以下の表1に示すように設定した。なお、エッチング時間は、エッチング量が両面で約2μmとなるように設定した。
【0042】
[実施例1]
図4は、実施例1のエッチング後におけるGaN基板の表面形態を示す説明図である。
図4(a)は、エッチング後のGaN基板のAFM観察像であり、
図4(b)は、
図4(a)において矩形の枠で示した領域(矩形領域)の拡大像である。また、
図4(c)は、
図4(a)において点Aから点Bに延びる直線で示した領域(直線領域)における高さプロファイルを示すグラフである。
図4(c)において、横軸は、点Aからの距離を表し、縦軸は、エピ膜側の表面の高さを表している。また、
図4(c)において上下で組となっている破線は、0.3nmの高さの差を示している。
【0043】
図4(a)に示すように、エッチング後のGaN基板の表面からは、エピ膜の表面に形成されていた螺旋状のパターンが消失し、
図4(b)に示すように、細かい縞状のステップテラスが形成されていることが確認できた。また、
図4(c)に示すように、ステップテラスの段差を表す高さプロファイルの振幅は、約0.3nmであり、実施例1のエッチングを行うことにより、ステップテラスの段差が原子レベルとなることが確認できた。
【0044】
このように、エッチング温度を280℃とすることにより、エッチング後の基板表面を原子レベルで平坦にすることができた。また、エッチング温度を280℃としても、エッチングレートは、両面で約6μm/h程度であり、ダメージ層DMG(
図1)の除去するために十分な速さである。そのため、エッチング温度を280℃としてエッチングを行うことにより、GaN基板の製造過程において発生した表面欠陥を除去するとともに、結晶性の良好な窒化物半導体のエピタキシャル成長に適したGaN基板を容易に製造できることが可能であることが判った。
【0045】
[実施例2]
図5は、実施例2のエッチング後におけるGaN基板の表面形態を示す説明図である。
図5(a)は、エッチング後のGaN基板のAFM観察像であり、
図5(b)は、
図5(a)において矩形の枠で示した領域(矩形領域)の拡大像である。
図5(a)に示すように、実施例2のエッチングでは、エッチング後のGaN基板の表面に、エピ基板の表面に形成されていた螺旋状のパターンが残存していた。しかしながら、
図5(b)に示すように、エピ膜の表面には、ステップテラスが形成されていた。このことから、実施例2においても、エッチングが等方的に行われることが判った。そのため、第2実施例のようにエッチング温度を330℃としても、エッチング時間をより長くすることにより、等方的なエッチングが進行し、エッチング後のGaN基板の表面を原子レベルで平坦にすることが可能であることが判った。
【0046】
このように、エッチング温度を330℃としても、エッチング後の基板表面を原子レベルで平坦にすることができることが判った。また、実施例2では、エッチングレートは、両面で約20μm/h程度であり、ダメージ層DMG(
図1)の除去するために十分な速さである。そのため、エッチング温度を330℃としても、GaN基板の製造過程において発生した表面欠陥を除去するとともに、結晶性の良好な窒化物半導体のエピタキシャル成長に適したGaN基板を容易に製造できることが可能であることが判った。
【0047】
[比較例]
図6は、比較例のエッチング後におけるGaN基板のAFM観察像である。
図6に示すように、比較例のエッチングでは、エッチング後のGaN基板の表面に、エピ基板の表面に形成されていた螺旋状のパターンが残存していた。また、エピ膜の表面において、ステップテラスは観察されなかった。しかしながら、エッチング後のGaN基板には、表面の荒れなどは発生しておらず、エッチング温度を380℃としても、エッチングにより、少なくともダメージ層DMG(
図1)の除去ができることが判った。また、エッチング温度を380℃とすることにより、エッチングレートは、両面で約30μm/h程度以上となるため、ダメージ層DMG(
図1)等の表面欠陥を、より短時間で除去できる。
【0048】
B.変形例:
本発明は上記各実施形態および適用形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0049】
B1.変形例1:
上記実施形態では、GaN基板のエッチングを行っているが、このエッチング方法は、GaN基板に限らず、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)およびこれらの混晶((In
XGa
1−X)
YAl
1−YN:X,Yは0〜1の実数)等、窒化物系半導体の基板をエッチングするために用いることができる。