特許第6461615号(P6461615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461615
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】回転システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/08 20060101AFI20190121BHJP
   F16C 35/06 20060101ALI20190121BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   H02K7/08 Z
   F16C35/06 Z
   H02K7/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-3691(P2015-3691)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2016-129470(P2016-129470A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2018年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】594121615
【氏名又は名称】株式会社栗田工業
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】栗田 泰生
(72)【発明者】
【氏名】栗田 賀央
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−116111(JP,A)
【文献】 特開2002−243006(JP,A)
【文献】 特開2012−090519(JP,A)
【文献】 特開2006−17149(JP,A)
【文献】 特開2012−021582(JP,A)
【文献】 特開平08−308178(JP,A)
【文献】 特開2005−273852(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0214347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/08
F16C 35/06
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転軸部を有する第1のモータと、
前記第1の回転軸部と同軸上に配置された第2の回転軸部を有する第2のモータと、
前記第1の回転軸部または前記第2の回転軸部に固定される被回転部材と、
外輪及び内輪の間に複数の転動体を転動可能に保持した転がり軸受と
を備え、
前記第1の回転軸部が有する軸受保持部に前記外輪が固定され、前記第2の回転軸部に前記内輪が固定され、
前記第1のモータ及び前記第2のモータは、前記第1の回転軸部及び前記第2の回転軸部を互いに逆方向に回転させる
ことを特徴とする回転システム。
【請求項2】
前記軸受保持部は、筒状をなし、内周側に前記転がり軸受が嵌合されるとともに、外周側に前記被回転部材が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の回転システム。
【請求項3】
前記被回転部材は発電機の回転子であることを特徴とする請求項1または2に記載の回転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被回転部材が固定された回転軸部を回転させる回転システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送風機の羽根や発電機の回転子等の被回転部材をモータで駆動する回転システムが用いられている。このような回転システムでは、モータの回転軸部に被回転部材を直接接続した状態で、回転軸部を回転させることが多い。また、回転軸部を転がり軸受で保持し、円滑に回転軸部を回転させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の回転システムでは、回転軸部を転がり軸受のみで保持していることから、転がり軸受に掛かる負担が大きく、転がり軸受の部分で回転エネルギーを損失する割合も大きい。そこで、本願出願人は、図5図6に示されるような回転システム51を提案している(例えば、特許文献2参照)。この回転システム51は、中心軸にモータ52の回転軸部53が連結された円筒状の回転枠54と、回転枠54の中心軸と同軸上に配置された固定軸部55と、回転枠54の内周に外輪56aが固定され、固定軸部55に内輪56bが固定された転がり軸受56とを備えている。また、回転枠54には被回転部材である発電機の回転子57が固定される。よって、この回転システム51によれば、固定軸部55に転がり軸受56を介して回転自在に保持された回転枠54が回転駆動されることで回転子57が回転することから、回転エネルギーの損失を抑えることが可能であると考えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−343487号公報(図1等)
【特許文献2】特願2013−258979号(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献2に記載の従来技術を採用したとしても、被回転部材(発電機の回転子57)の負荷が回転軸部53や転がり軸受56などに掛かるため、回転軸部53を回転させる際に転がり軸受56に生じる摩擦抵抗が大きくなり、転がり軸受56の部分で回転エネルギーを損失してしまう。また、摩擦抵抗が大きくなることにより、モータ52の消費電力も増える傾向にある。ゆえに、回転エネルギーの損失をさらに低減させることが可能な回転システムが求められている。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転エネルギーの損失をよりいっそう低減させることが可能な回転システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1の回転軸部を有する第1のモータと、前記第1の回転軸部と同軸上に配置された第2の回転軸部を有する第2のモータと、前記第1の回転軸部または前記第2の回転軸部に固定される被回転部材と、外輪及び内輪の間に複数の転動体を転動可能に保持した転がり軸受とを備え、前記第1の回転軸部が有する軸受保持部に前記外輪が固定され、前記第2の回転軸部に前記内輪が固定され、前記第1のモータ及び前記第2のモータは、前記第1の回転軸部及び前記第2の回転軸部を互いに逆方向に回転させることを特徴とする回転システムをその要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に記載の発明では、第1のモータが有する第1の回転軸部が回転するのに伴い、第1の回転軸部に固定された転がり軸受の外輪が回転して転動体が転動を開始すると同時に、第2のモータが有する第2の回転軸部が、第1の回転軸部とは逆方向に回転する。その結果、第2の回転軸部に固定された内輪と転動体との接触部分において、内輪の回転方向が転動体の転動方向と一致するため、内輪の回転力と転動体の回転力とが相殺されにくくなる。よって、被回転部材の負荷が回転軸部や転がり軸受などに掛かることに起因する抵抗、即ち、回転軸部を回転させる際に転がり軸受に生じる摩擦抵抗や摺動抵抗を小さくすることができ、転がり軸受の部分での回転エネルギーの損失をよりいっそう低減させることができる。また、摩擦抵抗が小さくなることにより、モータの消費電力を抑えることができる。しかも、摩擦抵抗や摺動抵抗によりロスしていたモータの電気エネルギーを、回転エネルギーとして効率良く用いることができる。
【0009】
なお、回転システムとしては、発電機、ギヤモータ、ブラシレスモータ、送風機、コンプレッサ、冷凍機などが構成できる。その被回転部材の具体例としては、発電機の回転子(請求項3)、電動機(モータ)の回転軸、送風機の羽根、コンプレッサ用のモータの回転子などが挙げられる。また、転がり軸受としては、球体(ボール)を転動体として用いた玉軸受や、ころを転動体として用いたころ軸受などが挙げられる。玉軸受としては、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、四点接触玉軸受、自動調心玉軸受などのラジアル玉軸受が好適に使用されるほか、スラスト玉軸受、スラストアンギュラ玉軸受などのスラスト玉軸受が好適に使用される。また、ころ軸受としては、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、円錐ころ軸受、自動調心ころ軸受などのラジアルころ軸受が好適に使用されるほか、スラスト円筒ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト円錐ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受などのスラストころ軸受が好適に使用される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記軸受保持部は、筒状をなし、内周側に前記転がり軸受が嵌合されるとともに、外周側に前記被回転部材が取り付けられることをその要旨とする。
【0011】
従って、請求項2に記載の発明によると、被回転部材及び転がり軸受をスラスト方向において同じ位置に配置できるため、被回転部材をブレることなく安定的に動作させることができる。また、転がり軸受が筒状をなす軸受保持部の内周側に収容されるため、回転システム全体の小型化を図りやすくなる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記被回転部材は発電機の回転子であることをその要旨とする。
【0013】
従って、請求項3に記載の発明によると、被回転部材である発電機の回転子が重い場合であっても、回転子が固定された回転軸部を小さな力で回転させることができるため、小さなエネルギーで発電を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0014】
以上詳述したように、請求項1〜3に記載の発明によると、回転エネルギーの損失をよりいっそう低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態における回転システムを示す概略断面図。
図2図1のA−A線断面図。
図3】(a)は本実施形態における転がり軸受の動きを示す要部断面図、(b)は従来技術における転がり軸受の動きを示す要部断面図。
図4】他の実施形態における回転システムを示す概略断面図。
図5】従来技術における回転システムを示す概略断面図。
図6図5のB−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1図2に示されるように、回転システム1は、第1の動力源である第1のモータ10と、第2の動力源である第2のモータ20と、被回転部材である発電機の回転子30とを備えている。第1のモータ10は第1の回転軸部11を有している。第1の回転軸部11は、棒状をなす軸部本体12と、軸部本体12の先端部に取り付けられた筒状の軸受保持部13とを有している。軸部本体12は、転がり軸受14によって保持されている。また、軸受保持部13は、略円筒状をなす保持部本体15と、保持部本体15の基端(図1では右端)側を塞ぐ略円板状の底部16とによって形成されている。保持部本体15(軸受保持部13)の外周側には、発電機の回転子30が継手31を介して固定されている。また、底部16の中心部には軸部本体12が挿通しており、底部16は、継手17を介して軸部本体12に連結されている。一方、第2のモータ20は、第1の回転軸部11と同軸上に配置された棒状の第2の回転軸部21を有している。なお、本実施形態では、第1のモータ10及び第2のモータ20の出力が互いに等しくなっている。
【0018】
また、図1図3に示されるように、回転システム1は転がり軸受40を備えている。転がり軸受40は、保持部本体15(軸受保持部13)の内周側に嵌合されている。また、転がり軸受40は、外輪40a及び内輪40bの間に複数のボール41(転動体)を転動可能に保持した構造を有している。即ち、本実施形態の転がり軸受40は深溝玉軸受である。そして、外輪40aは軸受保持部13の内周に固定され、内輪40bは第2の回転軸部21に固定されている。
【0019】
従って、本実施形態の回転システム1では、第1のモータ10を駆動させると、第1のモータ10が有する第1の回転軸部11(及び軸受保持部13)が時計回り方向(図2に示す矢印F1方向)に回転する。これに伴い、軸受保持部13の内周側に嵌合している転がり軸受40の外輪40aも、時計回り方向に回転する(図3(a)参照)。このとき、転がり軸受40のボール41は、時計回り方向に自転する。また、軸受保持部13の回転に伴って、発電機の回転子30が時計回り方向(矢印F1方向)に回転し、発電が行われる。
【0020】
ところで、図5図6に示す従来の回転システム51では、転がり軸受56の内輪56bが固定軸部55に固定されているため、内輪56bが回転することはない(図3(b)参照)。この場合、転がり軸受56のボール56cと内輪56bとの間に摩擦抵抗や摺動抵抗が生じてしまうため、ボール56cの回転力が低下してしまい、転がり軸受56の外輪56aのトルクT2も低下してしまう。
【0021】
そこで、本実施形態では、外輪40aが回転してボール41が転動を開始すると同時に、第2のモータ20を駆動させている。この場合、第2のモータ20が有する第2の回転軸部21が、第1の回転軸部11とは逆方向、本実施形態では反時計回り方向(図2に示す矢印F2方向)に回転する。これに伴い、第2の回転軸部21に固定されている転がり軸受40の内輪40bも、反時計回り方向に回転する(図3(a)参照)。このとき、内輪40bとボール41との接触部分において、内輪40bの回転方向がボール41の自転方向と一致するため、内輪40bの回転力とボール41の回転力とが相殺されにくくなる。ゆえに、転がり軸受40の外輪40aのトルクT1は、従来よりも大きくなる。
【0022】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0023】
(1)本実施形態の回転システム1では、第2の回転軸部21に固定された転がり軸受40の内輪40bと、第1の回転軸部11に固定された外輪40aの回転によって転動するボール41との接触部分において、内輪40bの回転方向をボール41の転動方向と一致させている。その結果、内輪40bの回転力とボール41の回転力とが相殺されにくくなり、第1の回転軸部11を回転させて発電機による発電を行う際に転がり軸受40に生じる摩擦抵抗や摺動抵抗が小さくなるため、転がり軸受40の部分での回転エネルギーの損失をよりいっそう低減させることができる。また、摩擦抵抗が小さくなることにより、第1のモータ10の消費電力を大幅に抑えることができる。特に、多くのエネルギーを要する発電機の起動時において、第1のモータ10の消費電力を抑えることができる。しかも、摩擦抵抗や摺動抵抗によりロスしていた第1のモータ10の電気エネルギーを、回転エネルギーとして効率良く用いることができる。
【0024】
(2)本実施形態では、第1のモータ10のトルクが第2のモータ20のトルクによってサポートされるだけでなく、第1のモータ10のトルクと第2のモータ20のトルクとが合成されてより大きなトルクT1(図3(a)参照)となる。その結果、第1のモータ10の回転数、ひいては、発電機の回転子30の回転数が下がりにくくなるため、発電機による発電をより効率良く行うことができる。即ち、第2のモータ20は第1のモータ10のパワーアシストとなる。
【0025】
(3)本実施形態では、発電機の回転子30が固定された第1の回転軸部11を、従来のモータ52(図5参照)よりも出力が小さいモータ(第1のモータ10)を用いて回転させることができる。このため、小さなエネルギーで発電を行うことが可能である。
【0026】
(4)本実施形態では、第2の回転軸部21が第1の回転軸部11と同軸上に配置されるため、例えば、第1の回転軸部11と同軸上に配置される回転軸部と第2の回転軸部21とをつなぐ動力伝達機構などを設けなくても済む。よって、回転システム1の小型化を図ることができる。
【0027】
(5)本実施形態では、転がり軸受40が筒状をなす軸受保持部13の内周側に収容されているため、転がり軸受40にごみが付着しにくくなる。ゆえに、ごみの付着に起因する摩擦抵抗や摺動抵抗の増大を回避することができる。
【0028】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0029】
・上記実施形態では、発電機の回転子30が第1の回転軸部11に固定されていたが、図4に示すように、回転子61などの被回転部材を第2の回転軸部62に固定してもよい。しかしながら、回転子61を第2の回転軸部62に固定すると、回転システム60が転がり軸受40のスラスト方向に大型化されてしまい、第2の回転軸部62が延長されて回転システム60全体が重くなるため、回転子は第1の回転軸部に固定されることが好ましい。
【0030】
・上記実施形態では、第1のモータ10及び第2のモータ20の出力が互いに等しくなっている。しかし、第2のモータ20の出力を第1のモータ10の出力よりも小さくしてもよい。即ち、モータに主従の関係を持たせてもよい。このようにすれば、より小さなエネルギーで発電を行うことが可能である。なお、第1のモータ10の出力を第2のモータ20の出力よりも小さくすることも可能である。
【0031】
・上記実施形態では、軸受保持部13と第2の回転軸部21とに1個の転がり軸受40が固定されていたが、2個以上の転がり軸受40が固定されていてもよい。
【0032】
・上記実施形態の軸受保持部13は、筒状をなしていたが、筒状でなくてもよい。例えば、軸受保持部を、略円板状の底部16のみによって形成し、転がり軸受40を底部16に取り付けてもよい。
【0033】
・上記実施形態の回転システム1は、モータ10,20を駆動して発電機から電力を取り出すシステムであったが、モータ、ポンプ、エンジンなどの動力源を用いて被回転部材を回転させることにより、2つのモータ10,20から電力を取り出すシステムに変更してもよい。
【0034】
・上記実施形態では、第1のモータ10が第1の動力源として用いられ、第2のモータ20が第2の動力源として用いられていたが、発電機、ポンプ、エンジンなどの他の構成を第1の動力源及び第2の動力源として用いてもよい。
【0035】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0036】
(1)第1の回転軸部を有する第1の動力源と、前記第1の回転軸部と同軸上に配置された第2の回転軸部を有する第2の動力源と、前記第1の回転軸部または前記第2の回転軸部に固定される被回転部材と、外輪及び内輪の間に複数の転動体を転動可能に保持した転がり軸受とを備え、前記第1の回転軸部が有する軸受保持部に前記外輪が固定され、前記第2の回転軸部に前記内輪が固定され、前記第1の動力源及び前記第2の動力源は、前記第1の回転軸部及び前記第2の回転軸部を互いに逆方向に回転させることを特徴とする回転システム。
【符号の説明】
【0037】
1,60…回転システム
10…第1のモータ
11…第1の回転軸部
13…軸受保持部
20…第2のモータ
21,62…第2の回転軸部
30,61…被回転部材としての発電機の回転子
40…転がり軸受
40a…外輪
40b…内輪
41…転動体としてのボール
図1
図2
図3
図4
図5
図6