(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記舌片部は、前記周枠部の前記上辺部側の基端部と前記下端部との間に、前記基端部よりも幅方向寸法が小さい狭幅部を有するととともに、前記狭幅部の下方で前記狭幅部よりも幅方向寸法が大きい広幅部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の背凭れ用カバー部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された構成においては、フレーム材が枠状をなしているため、フレーム材の内周縁部と、その内側の開口との間で段差が生じる。この段差は、利用者が椅子に着座して背凭れ部にもたれ掛かったときに、違和感を感じさせる原因となる。
【0007】
また、特許文献2に開示された構成においては、フレーム材が板状をなしているため、上記のような問題は生じない。その一方で、フレーム材は、背凭れ本体の前面に沿う形状に予め成形されている。フレーム材を、背凭れ本体の前面の形状に沿う形状に予め成形するには、フレーム材を高精度に形成する必要があり、製造コストが増大する。
【0008】
そこでなされた本発明の目的は、低コストでありながら、着座時の違和感を低減することのできる背凭れ用カバー部材、背凭れ及び椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明に係る背凭れ用カバー部材は、椅子の背凭れ本体に対して装着可能な背凭れ用カバー部材であって、前記背凭れ本体の前面に沿って装着されるベース部材と、前記ベース部材を被覆する表皮材と、を備え、前記ベース部材は、前記背凭れ本体の上縁部及び下縁部の各々に沿う上辺部及び下辺部を有して前記背凭れ本体に支持される周枠部と、前記周枠部の内方に形成され、前記周枠部の上辺部から下方に向かって延出した板状で、下端部が、前記周枠部の下辺部よりも上方で、かつ前記背凭れ本体の上下方向の中間部よりも下方に位置する舌片部と、を一体に備え
、前記舌片部の前記下端部と、前記周枠部の前記下辺部とを連結する連結部をさらに備えていることを特徴とする。
【0010】
このように、ベース部材に、周枠部の上辺部から下方に向かって延出する舌片部を備えることで、背凭れ用カバー部材を装着した椅子に利用者が着座したときに、舌片部が利用者の背中に沿う。このとき、利用者が背凭れに強く寄りかかったとしても、背凭れは、その上部を中心に利用者の背中に沿う。これに対し、舌片部の下端部は、背凭れ本体の中間部よりも下方に位置するので、利用者は、舌片部の下端部による段差を感じにくい。
また、利用者が背凭れに寄りかかれば、舌片部が周枠部の上辺部側の基端部を中心として下端部側が弾性変形して背凭れ本体に沿うので、背凭れ用カバー部材を、背凭れ本体の前面に沿うように高精度に形成する必要もない。
また、舌片部の背凭れ本体への接触は、周枠部の支持状態に影響され難いので、舌片部が周枠部に引っ張られて背凭れ本体の前面から浮き上がるという事象も発生し難い。
また、舌片部の下端部と周枠部の下辺部とを連結する連結部をさらに備えるので、舌片部が周枠部に対して前方に浮き上がるのを抑え、舌片部の外周縁部の段差を小さくすることができる。
【0011】
また、この発明に係る背凭れ用カバー部材において、前記中間部よりも下方に前方に向かって膨出した膨出部を有する前記背凭れ本体に装着可能であり、前記舌片部は、前記下端部が、前記膨出部と同じ高さまたは前記膨出部よりも下方に位置しているようにしてもよい。
このように、舌片部の下端部を、背凭れ本体の膨出部と同じ高さまたはそれよりも下方に配置することで、利用者は、舌片部の下端部による段差を、より確実に感じにくくなる。
【0013】
また、この発明に係る背凭れ用カバー部材において、前記舌片部は、前記周枠部の前記上辺部の幅方向両側端部から下方に向かって延出しているようにしてもよい。
このように構成することで、舌片部において、周枠部の上辺部に連結された基端部の幅が大きくなる。これにより、利用者が寄りかかったときに、舌片部の基端部側において、舌片部の両側端部の段差を感じにくくなる。
【0014】
また、この発明に係る背凭れ用カバー部材において、前記舌片部は、前記周枠部の前記上辺部側の基端部と前記下端部との間に、前記基端部よりも幅方向寸法が小さい狭幅部を有するととともに、前記狭幅部の下方で前記狭幅部よりも幅方向寸法が大きい広幅部を有するようにしてもよい。
このように構成することで、利用者が寄りかかったときに、舌片部は、この狭幅部の部分で変形しやすくなる。したがって、舌片部が利用者の背中に沿って変形しやすくなる。
【0015】
また、この発明に係る背凭れ用カバー部材において、前記舌片部は、前記周枠部の前記上辺部よりも板厚が小さいようにしてもよい。
このように構成することで、舌片部は、周枠部に対して柔軟になり、舌片部が利用者の背中に沿って変形しやすくなる。
【0016】
また、この発明に係る背凭れ用カバー部材において、前記舌片部は、前記周枠部の前記上辺部と前記下端部との間に、幅方向に延びるスリットを有しているようにしてもよい。
このように構成することで、舌片部は、このスリットの部分で変形しやすくなる。したがって、舌片部が利用者の背中に沿って変形しやすくなる。
【0017】
また、この発明に係る背凭れは、上記したような背凭れ用カバー部材が背凭れ本体に装着されていることを特徴とする。
また、この発明に係る椅子は、脚部と、前記脚部上に支持された座部と、前記座部の後方に設けられた背凭れ本体と、を備え、前記背凭れ本体に、上記したような背凭れ用カバー部材が装着されていることを特徴とする。
【0018】
このような背凭れ及び椅子は、利用者が、背凭れ用カバー部材を装着した椅子に着座したときに、舌片部が利用者の背中に沿って変形し、利用者は、舌片部による段差を感じにくい。
また、利用者が背凭れに寄りかかれば、舌片部が弾性変形して背凭れ本体に沿うので、背凭れ用カバー部材を、背凭れ本体の前面に沿うように高精度に形成する必要もない。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る背凭れ用カバー部材、背凭れ及び椅子によれば、舌片部による段差を感じにくくなるので、着座時の違和感を低減することが可能となる。また、背凭れ部材を、背凭れ本体の前面に沿うように高精度に形成する必要がなく、低コストで製作することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る背凭れ用カバー部材、椅子の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明における前後上下左右の方向は、着座者から見た方向を示している。また、着座者における「前方」を図中矢印FRで示し、前記着座者の「上方」を図中矢印UPで示し、上記着座者の「左方」を図中矢印LHで示す。
【0022】
図1は、本実施形態の椅子1の正面図である。
図2は、本実施形態の椅子1の側面図である。
図1、
図2に示すように、本実施形態の椅子1は、支持構造体(脚部)2と、座部3と、ヒンジ4と、背凭れ6とを備えている。
【0023】
支持構造体2は、左右一対の脚体2aと、脚体2a同士を連結する前フレーム2bとを一体的に備えている。このような支持構造体2は、金属材料からなる管状の材料を成型することによって形成されている。
【0024】
脚体2aは、前方に配設された前脚2a1と、後方に配設された後脚2a2と、前脚2a1と後脚2a2とを連結する上部連結杆2a3と、キャスタ2a4とを備えている。前脚2a1は、上端が下端よりも椅子1の内側に配置されるように僅かに傾斜して上下方向に延設されており、上端が前フレーム2bに一体的に接続されている。後脚2a2は、前脚2a1の後方かつ外側に配置されており、上端が下端よりも椅子1の内側に配置されるように僅かに傾斜して上下方向に延設されている。この後脚2a2の上端部は、上部連結杆2a3よりも上方に突出されている。上部連結杆2a3は、座部3の下方にて前脚2a1と後脚2a2とを接続するように前後方向に延設されている。このような上部連結杆2a3は、例えば溶接やロウ付けによって前脚2a1及び後脚2a2と一体的に接続されている。キャスタ2a4は、前脚2a1の下端と後脚2a2の下端との各々に設けられており、本実施形態においては
図1に示すように合計で4つ設けられている。これらのキャスタ2a4は、椅子1の全体を前後左右に移動可能とする。
【0025】
前フレーム2bは、左右一対の脚体2aが備える前脚2a1の上端同士を連結するように水平に延設されており、両端が下方に湾曲して前脚2a1と接続されている。この前フレーム2bは、例えば溶接やロウ付けによって前脚2a1と一体的に接続されている。この前フレーム2bは、ヒンジ4を中心として回動可能とされた座部3のストッパとして機能すると共に、座部3を下方から支持する。
【0026】
座部3は、利用者を下方から支持する部位であり、後端側部の各々にヒンジ4が連結されている。このような座部3は、ヒンジ4により、後端を中心として前端が上下動するように回動可能に支持されている。ヒンジ4は、左右一対の脚体2aの後脚2a2に対して各々設けられており、座部3を左右方向挟むように合計で2つ設けられている。これらのヒンジ4は、上述のように座部3を回動可能に支持する。
【0027】
背凭れ6は、左右一対の脚体2aの各後脚2a2の上端部によって支持されており、利用者を後方から支持する。
【0028】
図3は、背凭れ6の一部を分解した状態における本実施形態の椅子1の正面図である。
図4は、背凭れ6の左右方向中心からずれた位置における側断面図である。
図5は、背凭れ本体の左右方向中心からずれた位置における側断面図である。
図3、
図4に示すように、本実施形態の椅子1において、背凭れ6は、背凭れ本体7と、カバー部材(背凭れ用カバー部材)8とを備えている。
【0029】
背凭れ本体7は、利用者の背中に沿うように湾曲した板状の部材である。この背凭れ本体7は、利用者を後方から支え、利用者からの荷重を受けることが可能な剛性を有する樹脂等によって形成されている。
【0030】
図5に示すように、背凭れ本体7は、平断面視すると、左右両側縁部7sに対して中央部7cが後方に向けて膨出するように形成されている。
また、背凭れ本体7の左右方向の中央部を側断面視すると、背凭れ本体7の上縁部7dと下縁部7eとの間には、下方から上方に向かって後方に一定の傾斜角度θ1で傾斜した背凭れ面(前面)7fと、背凭れ面7fの上部に連続して形成され、後方に向かって湾曲した上部湾曲面7gと、背凭れ面7fの下方に形成され、背凭れ面7fよりも後方への傾斜角度θ2が小さい下部平面部7hと、背凭れ面7fと下部平面部7hとの間に形成され、前方に膨出した膨出部7jと、を有している。膨出部7jは、背凭れ面7fの下部と下部平面部7hとの間で、前方に向かって膨出するよう湾曲形成されている。
【0031】
ここで、膨出部7jにおいて、背凭れ面7fに沿い上下方向に延びる接線S1と、下部平面部7hに沿い上下方向に延びる接線S2とが交差する位置を交点Kとする。この交点Kから膨出部7jの表面に向かって延びる直交線S3が膨出部7jと交差する位置を、膨出部7jの突出位置Pとする。この膨出部7jおよび突出位置Pは、背凭れ本体7の上縁部7dと下縁部7eとの中間部よりも下方であって、下縁部7eから所定寸法上方の位置に形成されている。
【0032】
図6は、背凭れ6を斜め右後方から見た斜視図である。
図1、
図6に示すように、背凭れ本体7の左右両端部には、下方から後脚2a2の先端部を挿入可能な差込部7aが設けられている。背凭れ本体7は、これらの差込部7aに後脚2a2の先端部が差し込まれることによって、支持構造体2に固定されている。
【0033】
また、
図3、
図6に示すように、背凭れ本体7には、直線状あるいは湾曲状の長孔7b(貫通孔)が多数形成されている。背凭れ本体7の上縁部7dには、相対的に長さが長い長孔7b1と、相対的に長さが短い長孔7b2とが左右方向に交互に配列されている。
【0034】
また、背凭れ本体7の下縁部7eには、後方に向かって膨出し、下縁部7eを覆うフード部9が一体に形成されている。
【0035】
図2に示すように、カバー部材8は、背凭れ本体7と対向するよう配置される板状のベース部材80と、ベース部材80の前面側に配置されるクッション材(図示無し)と、クッション材(図示無し)を覆うと共に縁部がベース部材80に固定されるカバー(表皮材)82とが積層されて形成されている。
【0036】
図7は、カバー部材8を構成するベース部材80を椅子1の背凭れ本体7に装着した状態を示す正面図である。
図8は、ベース部材80を背凭れ本体7に装着した状態を斜め左前方から見た斜視図である。
図9は、ベース部材80の左右方向中心からずれた位置における側断面図である。
図10は、ベース部材80の後面図である。
図7、
図8に示すように、ベース部材80は、背凭れ本体7の前面において左右両端部の差込部7aを除いた領域を覆うように形成されている。ベース部材80は、その外縁部を形成する周枠部83と、周枠部83の内方に形成された舌片部84と、舌片部84の下端部84aと周枠部83の下辺部83bの左右方向中央部とを連結する連結部85と、を備えている。ベース部材80は、例えば樹脂成型により一体形成されている。
【0037】
周枠部83は、左右に延びる上辺部83aおよび下辺部83bと、上辺部83aおよび下辺部83bの左右それぞれの端部間において上下に延びる側辺部83c,83dと、を有する。
【0038】
舌片部84は、周枠部83の上辺部83aから下辺部83b側に向けて延出するよう形成されている。舌片部84の下端部84aおよび左右両側の側端部84b,84cは、周枠部83の下辺部83bおよび側辺部83c,83dに対して所定の間隔を空けた位置に形成されている。これにより、周枠部83の下辺部83bおよび側辺部83c,83dと、舌片部84の下端部84aおよび側端部84b,84cとの間には、略U字状をなした開口部86,86が形成されている。なお、連結部85を無くして一つに繋がった開口部86としてもよい。
【0039】
舌片部84は、その下端部84aが、背凭れ本体7の膨出部7jの突出位置Pと同位置またはそれよりも下方に位置するよう形成されている。そして、
図4に示すように、周枠部83の上辺部83a、および上辺部83aから下方に延びる舌片部84は、背凭れ本体7の上部湾曲面7g、背凭れ面7f、膨出部7jに沿うように形成されている。
【0040】
また、
図7、
図8に示すように、舌片部84は、全体として、周枠部83の上辺部83a側の基端部84dに対して下端部84aの左右方向の幅寸法が小さくなるよう形成されている。舌片部84の基端部84dは、周枠部83の上辺部83aの左右方向両端部から延出している。
舌片部84の側端部84b,84cには、基端部84dから所定寸法下方の位置に、左右方向内方に向かってくぼむように湾曲した凹部84sが形成されている。さらに、舌片部84の側端部84b,84cには、凹部84sの下方に、左右方向外方に向かって膨出した凸部84tが形成されている。そして、舌片部84は、凸部84tから下端部84aに向かって、左右方向の幅寸法が漸次小さくなるよう湾曲形成されている。
これにより、舌片部84は、左右の凹部84s,84sの部分が、その上方の基端部84d、および下方の凸部84t,84tの部分よりも、左右方向の幅が狭い狭幅部84Nとされている。また、舌片部84は、狭幅部84Nの下方で左右の凸部84t,84tの部分が、狭幅部84Nよりも左右方向の幅が広い広幅部84Mとされている。
【0041】
図9、
図10に示すように、ベース部材80の背面80bにおいて、舌片部84の基端部84dには、左右方向に延びる段部87が形成されている。ベース部材80において、段部87の上方に対して段部87の下方の部分は、その板厚が小さくなるよう形成されている。すなわち、舌片部84は、周枠部83の上辺部83aよりも板厚が小さく形成されている。
【0042】
さらに、舌片部84には、段部87の下方に、左右方向に延びる複数のスリット88が、左右方向に間隔をあけて形成されている。
【0043】
このような舌片部84は、周枠部83に一体に固定された基端部84dに対し、下端部84a側が自由端となって弾性変形可能となっている。
このとき、舌片部84は、段部87の下方で板厚が小さく、さらにスリット88および狭幅部84Nが形成されることで、舌片部84は、基端部84d側を固定端とし、下端部84a側を自由端として弾性変形しやすくなっている。
【0044】
周枠部83の上辺部83aには、左右方向両側に、周枠部83の上縁83sから下方に向かって延びる複数の切り欠き90が形成されている。これらの切り欠き90により、周枠部83は、背凭れ本体7の上縁部7dの平断面形状に倣って弾性変形しやすくなっている。
【0045】
また、周枠部83の側辺部83c,83dには、左右方向内方に向かって張り出す側部プレート部83e,83fが形成されている。
【0046】
ベース部材80の背面側には、上部係合爪91と、側部係合爪92と、下部係合フック93と、が一体に形成されている。
【0047】
図11は、ベース部材80に形成された上部係合爪91が、背凭れ本体7の長孔7b2に係合された状態を、斜め後方から見た斜視図である。
図12は、
図11のXII−XII断面に対応する断面図である。
上部係合爪91は、周枠部83の上辺部83aに、左右方向に間隔をあけて複数形成されている。各上部係合爪91は、周枠部83の上辺部83aから後方に突出して形成されている。
図6に示すように、上部係合爪91は、背凭れ本体7の上縁部7dに形成された複数の長孔7bのうち、相対的に長さが短い長孔7b2に係合される。
【0048】
図11に示すように、上部係合爪91は、上下方向の長さが、係合対象となる長孔7b2の上下方向の長さに合わせて形成されている。また、上部係合爪91は、先端部の周縁部に、上下方向および幅方向の寸法が漸次小さくなるテーパ面91tが形成されている。また、上部係合爪91の先端部の幅方向両側面には、側方に突出する係合突起91aが形成されている。上部係合爪91は、係合突起91a,91aが形成された部分における幅寸法が、係合対象となる長孔7b2の幅寸法に対して僅かに大きくなるよう形成されている。係合突起91aは、テーパ面91tに連続するように幅方向外側に突出しており、その係合突起91aの背面側(ベース部材80側)には、
図12に示すように、係合面91bが形成されている。係合面91bは、係合突起91aの背面側において幅方向外側方から内側方に向けて円弧状に窪んで形成されている。なお、上部係合爪91の上下方向の端部に、長孔7b2の上下方向の端部に背凭れ本体7の背面側から係合するようなフック形状を設けてもよい。
【0049】
このような上部係合爪91は、背凭れ本体7の前面側から長孔7b2に押し込むことで係合される。具体的には、上部係合爪91が長孔7b2に押し込まれると、係合突起91a,91aが長孔7b2の対向する両側壁を外側方に変形させながら、奥行方向奥側に進み、ベース部材80の背面が背凭れ本体7の表面に当接したところで止まる。こうして、係合突起係合突起91a,91aの進行が止まった状態において、係合突起91aの背面は長孔7b2の背面と略同一位置となる状態か、あるいはやや突出した状態になる。これにより、係合突起91aは椅子を背面から視認した場合において目立たなくなり、外観体裁が良好となる。また、各係合突起91aの背面側の係合面91bが長孔7b2の開口縁の湾曲面7b21に当接することによって、係合突起91aの手前側への脱落が有効に防止される。これにより、係合突起91a,91aは長孔7b2の幅方向の範囲内に概ね収まった状態となり、外観体裁が良好となる。
【0050】
図12は、ベース部材80に形成された側部係合爪92が、背凭れ本体7の長孔7b3に係合された状態を、斜め後方から見た斜視図である。
図9、
図10に示すように、側部係合爪92は、周枠部83の側辺部83c,83dからそれぞれ延出した側部プレート部83e,83fに、上下方向に間隔をあけて複数形成されている。各側部係合爪92は、側部プレート部83e,83fから後方に突出して形成されている。
図6に示すように、側部係合爪92は、背凭れ本体7の左右両側縁部7sに形成された長孔7b3に係合される。
【0051】
図12に示すように、側部係合爪92は、上下方向の長さが、係合対象となる長孔7b3の長手方向の寸法に合わせて形成されている。また、側部係合爪92は、幅方向一方の側面92aに形成され、側方に突出する凸部(係合突起、爪)92sと、幅方向他方の側面92b側に形成され、側面92a側に向かって凹となる凹部92tと、を備える。側部係合爪92は、側面92bと凸部92sの先端との間隔が、長孔7b3の幅寸法に対して略同寸または僅かに大きくなるよう形成されている。
【0052】
このような側部係合爪92は、背凭れ本体7の前面側から長孔7b3に押し込むことで係合される。ここで、長孔7b3は、背凭れ本体7の左右方向中央部に向かって張り出すように湾曲している。側部係合爪92は、凹部92t側が形成された側面92b側が、長孔7b3の湾曲方向外方に向くよう配置される。これにより、側部係合爪92は、凹部92tの両側で、湾曲した長孔7b3の湾曲方向に沿って容易に弾性変形する。
このように、長孔7b3に側部係合爪92が係合することで、ベース部材80の両側端部が、背凭れ本体7に対し、上下方向および左右方向への移動が拘束された状態で係合される。
【0053】
ここで、側部係合爪92周辺の作用についてさらに説明する。まず、側辺部83c,83dを背凭れ本体7に対向させて側部係合爪92を長孔7b3に押し込むと、凸部92sが凹部92tの方向へ撓む。このとき、長孔7b3は、背凭れ本体7の幅方向内側方に凸をなすように湾曲しているので、湾曲内側(幅方向外側)の辺の長さは、湾曲外側(幅方向内側)の辺の長さよりも僅かに小である。このため、側部係合爪92を長孔7b3に押し込むと、側部係合爪92における凹部92t上下の上腕部92c及び下腕部92dが、側部係合爪92及び長孔7b3の形状及び寸法によって以下のように弾性変形する。
【0054】
例えば、背凭れ本体7の背凭れ面7fとの直交方向に沿う長孔7b3の内周面に対し、側部係合爪92の側面が先端側ほど背凭れ本体7の幅方向外側に位置するように傾いている場合(
図13参照)、側部係合爪92を長孔7b3に押し込むと、背凭れ本体7の幅方向外側に位置する上腕部92cは、幅方向内側に強く押され、もって側部係合爪92全体が捩じれるように弾性変形する。この弾性変形の復元力により、側部係合爪92が長孔7b3により強く係止される。
また、例えば、側部係合爪92の上下方向の長さが長孔7b3の上下方向の長さよりも大である場合、上下腕部92c,92dが凹部92t側に倒れるように弾性変形する。この弾性変形の復元力によっても、側部係止爪92が長孔7b3により強く係止される。
【0055】
側部係合爪92において、凸部92sの反対側は凹部92tで肉が無いため、凸部92sが長孔7b3から抜け出ようとする動作に対する反力を別個所で発生させる必要がある。上記した側部係合爪92の弾性変形により蓄積された初期状態への復元力は、前記反力になり得る。
側部係合爪92は、着座者からの荷重によるベース部材80の撓みの中心となる背凭れ6の幅方向中央部から大きく離間しているので、長孔7b3から外れようとするモーメントが強く作用する。しかし、前記反力を発生させることにより、側部係合爪92の長孔7b3に対する係合強度を増強することができる。また、このことによって、凸部92Sの幅方向の突出量を大きくして、係合しろを大きくすることなく、側部係合爪91の長孔7b3に対する係合強度を確保できるので、外観体裁にも優れる。
【0056】
このように、ベース部材80の上辺部83aa、側辺部83bにおいて、上部係合爪91、および側部係合爪92の、長孔9b2および長孔7b3への係合強度を高めているので、背面側からの抜け止め部材(例:文献1におけるクリップ18等)によることなく、カバー部材8の背凭れ本体7に対する支持強度を増強することができる。
【0057】
図10に示すように、下部係合フック93は、周枠部83の下辺部83bの左右方向両側にそれぞれ形成されている。各下部係合フック93は、周枠部83の下辺部83bの下縁に沿って延設されている。下部係合フック93は、周枠部83の下辺部83bの下縁から後方に向けて延びる後方延出部93aと、後方延出部93aの後端から上方に向かって延びる上方延出部93bと、を一体に有した断面L字状をなしている。
【0058】
図6に示すように、下部係合フック93は、背凭れ本体7の下縁部7eに下方から係止される。下部係合フック93の後方延出部93aが背凭れ本体7の下縁部7eに下方から突き当たることで、ベース部材80の上方への移動が規制される。また、下部係合フック93の上方延出部93bが背凭れ本体7の下縁部7eの背面側に突き当たることで、ベース部材80の前方への移動が規制される。ここで、下部係合フック93の上方延出部93bの後方は、フード部9に覆われるため、後方から見たときに、下部係合フック93が露出しないようになっている。
【0059】
また、
図10に示すように、ベース部材80の周枠部83には、クッション材(図示無し)およびカバー82を装着するためのフック95が、周方向に間隔をあけて複数設けられている。各フック95は、周枠部83から、後方、およびベース部材80の中心に対して外方に向かって突出するよう形成されている。
カバー82の外周部には、紐状の係止索(図示無し)が挿通されている。カバー82は、クッション材(図示無し)をベース部材80の前面に沿わせて配置した状態で、クッション材(図示無し)およびベース部材80を、前方から覆うように被せて設けられる。そして、カバー82は、ベース部材の後面側において、係止索(図示無し)を複数のフック95に掛止させ、係止索(図示無し)によってカバー82の外周部を巾着状に引き絞ることによって、ベース部材80に装着される。
【0060】
上記したようなカバー部材8を背凭れ本体7に装着するには、まず、ベース部材80の下部係合フック93,93を、下方から背凭れ本体7の下縁部7eに係止させる。続いて、ベース部材80を背凭れ本体7の前面に押し付け、上部係合爪91、側部係合爪92のそれぞれを、長孔7b2,7b3に押し込んで係合させる。これにより、カバー部材8を、背凭れ本体7に対し、容易に取り付けることができるようになっている。
【0061】
上述したようなカバー部材8および椅子1によれば、ベース部材80に、周枠部83の上辺部83aから下方に向かって延出する舌片部84を備えることで、利用者が、カバー部材8を装着した椅子1に着座したときに、舌片部84が利用者の背中に沿う。利用者が椅子1の背凭れ6に強く寄りかかったとしても、カバー部材8は、その上部を中心に利用者の背中に沿う。これに対し、舌片部84の下端部84aは、背凭れ本体7の中間部よりも下方に位置するので、利用者は、舌片部84の下端部84aによる段差を感じにくい。
また、利用者が背凭れ6に寄りかかれば、片持ち梁状の舌片部84が弾性変形して背凭れ本体7に沿うので、カバー部材8を、背凭れ本体7の背凭れ面7fに沿うように高精度に形成する必要もない。
したがって、カバー部材8および椅子1は、着座時の違和感を低減することが可能となる。カバー部材8を、低コストで製作することが可能となる。
【0062】
また、着座者の荷重が加わる前の装着状態で、カバー部材8が背凭れ本体7から浮き上がることを抑えることでも、低コスト化に寄与することができる。
【0063】
また、舌片部84の下端部84aを、背凭れ本体7の膨出部7jと同じ高さまたはそれよりも下方に配置することで、利用者は、舌片部84の下端部84aによる段差を、より確実に感じにくくなる。
【0064】
さらに、舌片部84の下端部84aと、周枠部83の下辺部83bとを連結する連結部85が設けられているので、舌片部84が周枠部83から前方に浮き上がるのを抑え、舌片部84の外周縁部の段差を小さくすることができる。
【0065】
また、舌片部84は、周枠部83の上辺部83aの幅方向両側から下方に向かって延出している。このように構成することで、舌片部84において、周枠部83の上辺部83aに連結された基端部84dの幅が大きくなる。これにより、利用者が寄りかかったときに、舌片部84の基端部84d側において、舌片部84の両側端部84b,84cの段差を感じにくくなる。
【0066】
また、舌片部84は、周枠部83の上辺部83a側の基端部84dと下端部84aとの間に、幅方向寸法が小さい狭幅部84Nを有している。このように構成することで、利用者が寄りかかったときに、舌片部84は、この狭幅部84Nの部分で変形しやすくなる。したがって、舌片部84が利用者の背中に沿って変形しやすくなる。これによっても、利用者は、舌片部84による段差を感じにくくなる。
【0067】
加えて、舌片部84は、周枠部83の上辺部83aよりも板厚が小さいので、舌片部84は、周枠部83に対して柔軟になり、舌片部84が利用者の背中に沿って変形しやすくなる。
また、舌片部84は、周枠部83の上辺部83aと下端部84aとの間に、幅方向に延びるスリット88が形成されている。これにより、舌片部84は、このスリット88の部分で変形しやすくなる。したがって、舌片部84が利用者の背中に沿って変形しやすくなる。
これらによっても、利用者は、舌片部84による段差を感じにくくなる。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0069】
例えば、上部係合爪91,側部係合爪92,下部係合フック93について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ベース部材80を背凭れ本体7に確実に装着できるのであれば、ベース部材80を背凭れ本体7にいかなる構成で支持するようにしてもよい。また、前述の如く連結部85を無くした構成としてもよい。
カバー82のベース部材80への装着は、単品状態のベース部材80を被覆する工程に限らず、例えばベース部材80を背凭れ本体7に取り付けた状態でこのベース部材80を被覆する工程でもよい。
【0070】
また、上記実施形態で示した椅子1の全体構成については、他のいかなる構成のものであってもよい。