(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器においては高速通信や大容量情報伝達などが重要度を増してきており、処理速度を高速化するための信号伝搬速度の高速化や使用周波数の高周波化による伝送損失を低減するために、低比誘電率で低誘電正接の材料が求められてきている。
エポキシ樹脂組成物は、優れた接着性や耐熱性の面から電気、電子分野において広く用いられているが、エポキシ樹脂は比誘電率や誘電正接が高くなるという問題点を有している。
このような低比誘電率、低誘電正接の樹脂材料として、広くポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が知られているが、接着性や他の樹脂との相溶性が悪いなどするため、電子材料として利用されることは少ない。
【0003】
電子機器の基板や封止材料として広く用いられている材料の一つとしてエポキシ樹脂材料があるが、エポキシ樹脂材料の比誘電率はその組成によって異なるものの、2.5〜6程度を示すものである。
一方で、低比誘電率、低誘電正接の材料としては、樹脂材料の中で最も優れた特性を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE、比誘電率2.1)が注目されるものであるが、各種樹脂材料中にPTFEを溶融混合するなどして用いられている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
このような溶融混合は、加熱して樹脂を軟化させた状態で混合するため、熱硬化型の樹脂材料や反応型の樹脂材料、PTFEよりも耐熱性の低い樹脂材料などと混合する場合には適さないものであり、エポキシ樹脂材料の比誘電率や誘電正接を下げるために添加する方法としても適さないものである。
【0005】
一方、ポリテトラフルオロエチレンフィラーが配合されても、樹脂の特性が損なわれず、優れた低誘電率性を有する樹脂組成物として、例えば、特定式で表されるエポキシ樹脂、硬化剤として特定式で表されるフェノール樹脂及びポリテトラフルオロエチレンフィラーを含有することを特徴とする樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
この樹脂組成物において、実施例では、平均粒子径が3μmとなるポリテトラフルオロエチレンフィラーをエポキシ樹脂、フェノール樹脂などと共に、ビーズミルで分散するものであり、未だにその分散性が劣るため、低比誘電率、低誘電正接となるエポキシ樹脂組成物が得られていないのが現状である。
こうした中、電子材料等に広く用いられているエポキシ樹脂材料中にPTFEを均一に分散させた低比誘電率、低誘電正接となるエポキシ樹脂組成物などが求められている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のポリテトラフルオロエチレン含有エポキシ樹脂組成物は、分散状態における平均粒子径が1μm以下のポリテトラフルオロエチレン油性溶剤系分散体と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを少なくとも含有することを特徴とするものである。以下において、ポリテトラフルオロエチレンを、単に「PTFE」という場合がある。
【0012】
〔PTFE油性溶剤系分散体〕
本発明のPTFE油性溶剤系分散体としては、油性溶剤系中で分散状態における平均粒子径が1μm以下となるPTFEを含有する分散体となるものであれば、特に限定されないが、例えば、少なくとも、一次粒子径が1μm以下のPTFEと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤などを用いることにより調製等することができる。
本発明の上記油性溶剤系分散体に用いることができるPTFEとしては、一次粒子径が1μm以下となるものが好ましい。
このようなPTFEのマイクロパウダーは、乳化重合法により得られるものであり、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(黒川孝臣編、日刊工業新聞社)に記載されている方法など、一般的に用いられる方法により得ることができる。そして、前記乳化重合により得られたPTFEは、凝集・乾燥して、一次粒子径が凝集した二次粒子として微粉末として回収されるものであるが、一般的に用いられている各種微粉末の製造方法を用いることができる。
【0013】
PTFEの一次粒子径としては、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、画像イメージング法などによって測定される体積基準の平均粒子径(50%体積径、メジアン径)が1μm以下であることが油性溶剤中で安定に分散する上で好ましく、望ましくは、0.5μm以下、さらに望ましくは、0.3μm以下とすることにより、さらに均一な分散体となる。
このPTFEの一次粒子径が1μmを超えるものであると、油性溶剤中で沈降しやすくなり、安定して分散することが難しくなるため、好ましくない。また、上記平均粒子径の下限値は、低ければ低い程良好であるが、製造性、コスト面等から、0.05μm以上が好ましい。
なお、本発明におけるPTFEの一次粒子径は、マイクロパウダーの重合段階においてレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって得られた値を指し示すものであるが、乾燥して粉体状態にしたマイクロパウダーの場合には、一次粒子同士の凝集力が強く、容易に一次粒子径をレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって測定することが難しいため、画像イメージング法によって得られた値を指し示すものであってもよい。測定装置としては、例えば、FPAR−1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法や、マイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法や、マックビュー(株式会社マウンテック社製)による画像イメージング法などを挙げることができる。
【0014】
本発明においては、油性溶剤系分散体全量に対して、PTFEが5〜70質量%含有されるものであることが好ましく、より好ましくは、10〜60質量%含有されることが望ましい。
この含有量が5質量%未満の場合には、油性溶剤の量が多く、極端に粘度が低下するためにPTFEの微粒子が沈降しやすくなるだけでなく、エポキシ樹脂などの材料と混合した際に油性溶剤の量が多いことによる不具合、例えば、溶剤の除去に時間を要することになるなど好ましくない状況を生じることがある。一方、70質量%を超えて大きい場合には、PTFE同士が凝集しやすくなり、微粒子の状態を安定的に、流動性を有する状態で維持することが極端に難しくなるため、好ましくない。
【0015】
本発明の油性溶剤系分散体に用いることができるフッ素系添加剤は、少なくとも含フッ素基と親油性基を有するものであれば、特に限定されるものではなく、この他に親水性基が含有されているものであってもよい。
少なくとも含フッ素基と親油性基を有するフッ素系添加剤を用いることにより、分散媒となる油性溶剤の表面張力を低下させ、PTFE表面に対する濡れ性を向上させてPTFEの分散性を向上させると共に、含フッ素基がPTFE表面に吸着し、親油性基が分散媒となる油性溶剤中に伸長し、この親油性基の立体障害によりPTFEの凝集を防止して分散安定性を更に向上させるものとなる。
含フッ素基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルケニル基などが挙げられ、親油性基としては、例えば、アルキル基、フェニル基、シロキサン基などの1種又は2種以上が挙げられ、親水性基としては、例えば、エチレンオキサイドや、アミノ基、ケトン基、カルボキシル基、スルホン基などの1種又は2種以上が挙げられる。
具体的に用いることできるフッ素系添加剤としては、パーフルオロアルキル基含有のサーフロンS−611などのサーフロンシリーズ(AGCセイミケミカル社製)、メガファックF−555、メガファックF−558、メガファックF−563などのメガファックシリーズ(DIC社製)、ユニダインDS−403Nなどのユニダインシリーズ(ダイキン工業社製)などを用いることができる。
これらのフッ素系添加剤は、用いるPTFEと油性溶剤の種類によって、適宜最適なものが選択されるものであるが、1種類、または2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0016】
前記フッ素系添加剤の含有量は、PTFEの質量に対して、0.1〜50質量%含有されるものであるが、望ましくは、5〜30質量%、さらに望ましくは、15〜25質量%含有されることが好ましい。
この含有量がPTFEの質量に対して、0.1質量%未満では、PTFEのマイクロパウダー表面を充分に油性溶剤に濡らすことができず、一方、50質量%超過では分散体の泡立ちが強くなって分散の効率が低下し、分散体自体の取扱いやその後に樹脂材料などと混ぜ合わせる際にも不具合を生じることなどがあり、好ましくない。
【0017】
本発明におけるPTFEの油性溶剤系分散体においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のようなフッ素系添加剤と組み合わせて、他の界面活性剤を用いることも可能である。
例えば、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの界面活性剤やノニオン系、アニオン系、カチオン系などの高分子界面活性剤などを挙げることができるが、これらに限定されることなく、使用することができる。
【0018】
本発明の上記油性分散体に用いられる油性溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ブチルモノグリシジルエーテル、フェニルモノグリシジルエーテル、メチルジグリシジルエーテル、エチルジグリシジルエーテル、ブチルジグリシジルエーテル、フェニルジグリシジルエーテル、メチルフェノールモノグリシジルエーテル、エチルフェノールモノグリシジルエーテル、ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ミネラルスピリット、2−ヒドロキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−ビニルピリジン、N−メチルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、からなる群から選ばれる1種類の溶剤、またはこれらの溶剤を2種以上含んでいるものである。
これらの油性溶剤の中で、好ましくは、エポキシ樹脂組成物の用途等により変動するものであるが、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ブチルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0019】
本発明においては、上記油性溶剤を用いるものであるが、他の油性溶剤と組み合わせて用いることや他の油性溶剤を用いることもできるものであり、用いる用途(各種の樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料)などにより好適なものが選択される。
なお、用いる油性溶剤の極性によっては水との相溶性が高いものが考えられるが、水分量が多いとPTFEの油性溶剤中への分散性を阻害し、粘度上昇や粒子同士の凝集を引き起こすことがある。本発明においては、用いる油性溶剤は、カールフィッシャー法による水分量が、20000ppm以下〔0≦水分量≦20000ppm〕となるものが好ましい。本発明(後述する実施例を含む)において、カールフィッシャー法による水分量の測定は、JIS K 0068:2001に準拠するものであり、MCU−610(京都電子工業社製)により測定することができる。この油性溶剤中の水分量を20000ppm以下にすることで、更に、微粒子径で低粘度、保存安定性に優れたポリテトラフルオロエチレンの油性溶剤系の分散体とすることができる。なお、上記水分量以下の調整としては、一般的に用いられている油性溶剤の脱水方法を用いることが可能であるが、例えば、モレキュラーシーブスなどを用いることができる。
本発明の上記油性分散体に用いる油性溶剤の含有量は、上記PTFE、フッ素系添加剤の残部となるものである。
【0020】
本発明の上記油性分散体には、さらに、シリコーン系消泡剤やフッ素系消泡剤を含有させることができる。特に、PTFEを70質量%であったり、フッ素系添加剤をPTFEの質量に対して50質量%と、高濃度で使用する場合には、分散体の泡立ちが分散体の製造工程、安定性、樹脂材料などとの混合の際に問題を引き起こすことにつながる場合がある。
用いることができる消泡剤としては、シリコーン系やフッ素系のエマルジョン型、自己乳化型、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、粉末型、固形型などがあるが、用いる油性溶剤との組合せで、適宜最適なものが選択されることになる。特に、油性溶剤とPTFEとの界面よりも、油性溶剤と空気との界面に存在させるために、例えば、親水性や水溶性のシリコーン系消泡剤を用いることが好ましいが、これらに限定されることなく、用いることができるものである。消泡剤の含有量は、PTFEの含有量(濃度)等により変動するものであるが、分散体全量に対して、好ましくは、有効成分として1質量%以下である。
【0021】
本発明の上記油性溶剤系分散体は、分散状態においてPTFEのレーザー回折・散乱法または動的光散乱法による平均粒子径が、1μm以下となるものである。
一次粒子径が1μm以下のPTFEを用いた場合であっても、通常、一次粒子が凝集し、二次粒子として粒子径が1μm以上のマイクロパウダーとなっている。このPTFEの二次粒子を1μm以下の粒子径となるように分散することにより、例えば、超音波分散機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどの分散機を用いて分散することにより、低粘度で長期保存した場合でも安定な分散体を得ることができるものである。
【0022】
さらに、本発明において、PTFE油性溶剤系分散体は、カールフィッシャー法による水分量が、20000ppm以下〔0≦水分量≦20000ppm〕であることが好ましい。油性溶剤に含まれる水分量のほかに、PTFEのマイクロパウダーやフッ素系添加剤などの材料自体に含まれる水分や、PTFEを油性溶剤中に分散する製造工程においても水分の混入が考えられるが、最終的にPTFEの油性溶剤系の分散体水分量を20000ppm以下にすることで、より保存安定性に優れた、PTFE油性溶剤系分散体を得ることができる。なお、上記水分量以下の調整としては、一般的に用いられている油性溶剤の脱水方法を用いることが可能であるが、例えば、モレキュラーシーブスなどを用いることができる。また、ポリテトラフルオロエチレンは、加熱や減圧などによる脱水を行うことで充分に水分量を下げた状態で使用することができる。さらに、PTFE油性溶剤系分散体を作製した後に、モレキュラーシーブスや膜分離法などを用いて水分除去することも可能であるが、上記した方法以外であっても、油性溶剤系分散体の水分量を下げることができるものであれば、特に限定されることなく用いることができる。
【0023】
本発明に用いる上記分散状態における平均粒子径が1μm以下のPTFE油性溶剤系分散体の含有量は、該分散体に含まれるPTFE、油性溶剤の各量により、また、エポキシ樹脂組成物の用途等により変動するものであり、エポキシ樹脂組成物中の油性溶剤は最終的にエポキシ樹脂組成物調製後、硬化の際等で除去されるものであるため、エポキシ樹脂100質量部に対して、PTFEの含有量が、最終的に、好ましくは、1〜100質量部、より好ましくは、1〜25質量部となるように調整して分散体を用いることが望ましい。
このPTFEの含有量がエポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上とすることにより、低比誘電率で低誘電正接という電気特性を発揮することができ、一方、100質量部以下とすることにより、エポキシ樹脂の持つ接着性や耐熱性を損なうことなく、本発明の効果を発揮せしめることができる。
また、上記油性溶剤系分散体は、分散状態における平均粒子径が1μm以下のPTFEを含むものとなるので、微粒子径で低粘度、保存安定性に優れており、長期保存後でも再分散性に優れるものとなる。また、フッ素系添加剤が多く含有されていても消泡性に優れ、エポキシ樹脂組成物に添加した際にも均一に混合させることができるものとなる。
【0024】
〔エポキシ樹脂〕
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、平均1個以上のエポキシ基(オキシラン環)を含有するエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペン タジエン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、前記各種エポキシ樹脂のフェニル基を水素添加した水添型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などの少なくとも1種を挙げることができる。
本発明に用いることができるエポキシ樹脂は、1分子中に1個以上のエポキシ基があれば上記樹脂に限定されるものではないが、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、クレゾールノボラック系等が好適である。
【0025】
〔硬化剤〕
本発明に用いる上記エポキシ樹脂用の硬化剤は、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテル等の芳香族アミン類、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等のメルカプタン類、ビスフェノールA、ビスフェノール F、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタ レン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のフェノール樹脂類、これらフェノール樹脂類の芳香環を水素化したポリオール類、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナ ン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物等の脂環式酸無水物類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類及びその塩類、上記脂肪族アミン類、芳香族アミン類、及び/またはイミダゾール類とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン類、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、ジシアンジアミド等の少なくとも1種が挙げられる。
これらの中でも脂環式酸無水物類、芳香族酸無水物類が好ましく、より好ましくは、脂環式酸無水物類であり、特に好ましくは、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物である。
【0026】
これらの硬化剤の使用量は、好ましくは、上記エポキシ樹脂100質量部に対して1〜200質量部である。より好ましくは2〜100質量部である。
この使用量が1〜200質量部の範囲で、架橋反応が十分に進み、耐光性、耐熱性に優れ、機械的強度や寸法安定性を有するエポキシ樹脂硬化物が得られる。
【0027】
〔PTFE含有エポキシ樹脂組成物〕
本発明のPTFE含有エポキシ樹脂組成物は、上記成分以外に必要に応じて、硬化促進剤、消泡剤、着色剤、蛍光体、変性剤、変色防止剤、無機フィラー、シランカップリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー等の従来公知の添加剤を適宜量配合することができる。
硬化(反応)促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類及びその塩類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、トリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、アミノトリアゾール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の錫系、オクチル酸亜鉛等の亜鉛系、アルミニウム、クロム、コバルト、ジルコニウム等のアセチルアセトナート等の金属触媒類等が用いられる。これらの硬化(反応)促進剤は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0028】
本発明のPTFE含有エポキシ樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法により成型、硬化して硬化物とすることができる。成型方法、硬化方法は公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、本発明のPTFE含有エポキシ樹脂組成物固有の方法は不要であり、特に限定されるものでない。
本発明のPTFE含有エポキシ樹脂硬化物は、積層物、成型物、接着物、塗膜、フィルム等の形態をとることができる。
本発明のPTFE含有エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物は、エポキシ樹脂の持つ接着性や耐熱性を損なうことなく、低比誘電率で低誘電正接という電気特性に優れているので、電子基板材料や絶縁材料、接着材料などに好適であり、例えば、電子部品に用いられる封止材、銅張り積層板、絶縁塗料、複合材、絶縁接着剤等の材料として有用であることが判った。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明について、更に実施例、比較例を参照して詳しく説明する。なお、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0030】
〔PTFE油性溶剤系分散体の調製:分散体1〜5〕
下記表1に示す配合処方にて、油性溶剤中にフッ素系添加剤を充分に攪拌混合した後、ポリテトラフルオロエチレンを添加して、さらに攪拌混合を行った。その後、得られたポリテトラフルオロエチレン混合液を、横型のビーズミルを用いて、0.3mm径のジルコニアビーズにて分散し、各分散体1〜5を得た。
得られた分散体1〜5におけるPTFEの平均粒子径をマイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法で測定した。なお、各分散体1〜5のカールフィッシャー法による水分量を測定したところ、20000ppm以下であることを確認した。
下記表1に分散体1〜5の配合処方、得られた分散体におけるPTFEの平均粒子径を下記表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
〔実施例1〜5及び比較例1〜3:PTFE含有エポキシ樹脂組成物、その硬化物の調製〕
得られた分散体1〜5を用い、下記表2に示す配合処方にてPTFE含有エポキシ樹脂組成物を用いて硬化物を作製した。
実施例1〜5及び比較例1〜3に示す配合比でよく混合した後、50℃にて減圧して溶剤を除去し、さらに100℃まで減圧しながら上昇させた。その後、減圧を解除して180℃まで温度を上げて硬化物を得た。
得られた各硬化物について、電機特性(比誘電率、誘電正接)について、23℃、1GHzにおける比誘電率、誘電正接をマテリアルアナライザ 4291B(Agilent Technologies社製)を用いて測定した。
これらの結果を下記表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
上記表2から明らかなように、本発明の範囲内である実施例1〜5は、PTFEを添加していない比較例1よりも比誘電率、誘電正接のいずれにおいても低下することが確認された。一方で、本発明の範囲外となる比較例2、3は、比誘電率が未添加の比較例とほとんど変化なく、誘電正接も未添加とほぼ変わらない結果となった。