特許第6461644号(P6461644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461644
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】整流板を有する調理用レンジフード
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20190121BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   F24F7/06 101A
   F24F13/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-38865(P2015-38865)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-161180(P2016-161180A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】515055993
【氏名又は名称】吉村 健児
(73)【特許権者】
【識別番号】505214515
【氏名又は名称】株式会社ハイマート産業
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健児
(72)【発明者】
【氏名】中島 民生
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−089331(JP,A)
【文献】 特開2014−044010(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3113477(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0288655(US,A1)
【文献】 特開2004−263908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部には排気用ダクトを有し、下端面には調理用レンジ上に開口する箱形のガス捕集空間を有するフードからなり、前記開口面の内側に調理用レンジから上昇する調理ガスを整流するための整流板を配置してなるレジンフードであって、
前記整流板は、それぞれが周囲に立上りを形成した複数の平板からなり、前記複数の平板のそれぞれの長さ方向の端辺には、フックを有する連結板部材を設けてなり、
前記平板の連結板部材のフックとこれに相対する平板の連結板部材のフックとを、結合部材によって、両方の平板との間に傾斜角度と間隔とを設けて連結し、
両平板を10度以上の傾斜面の断面が山形状とするとともに、両平板の頂辺連結部の間には調理ガスの頂部通気間隔を形成してなるレンジフード。
【請求項2】
整流板の側面に、整流板の強化用側板を張り付けてなる請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
整流板の下方端辺と箱形の調理ガス捕集用フードの下端内側との間に下部通気間隙を設けた請求項1に記載のレンジフード。
【請求項4】
断面が複数の山形を複数個配列した傘状の整流板の、それぞれの頂部に通気間隙を設けた請求項1に記載のレンジフード。
【請求項5】
断面の形状が山形状をなす整流板の傾斜面に、調理ガスの中間通気間隙を設けた請求項1に記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理場、とくに、大型の調理場での調理の際、発生する油煙、水蒸気等を含む調理ガスを屋外へ排出するためのレンジフード、とくに、調理ガスの流れを整流する邪魔板とも称される整流板を設けた調理用レンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
この調理用レンジフードは、通常、下面が開口した発生ガスの捕獲空間を有する箱形のフードを有し、このフードの頂部にはフィルターと排風機が設けられており、調理器具の直上に配置して、調理ガスの発生時に排風機を作動することによって、フードの捕獲空間に集められた調理ガスをフードの頂部に設けたフィルターを経て、フード頂部に連結したダクトから屋外に排出するようになっている。
【0003】
そして、このレンジフードには、家庭内の厨房用としては、従来から、特許文献1および特許文献2に示されているように、フードの下面の開口に整流板を配置し、フード内に入るガスを整流することによって調理ガスのスムーズな排出が試みられ、クリーンな厨房が維持されるようになってきた。
【0004】
そして、比較的大型の調理場用のレンジフードへもこの整流板の適用が試みられるようになり、特許文献3には、その適用を容易にするための手段として、整流板の周囲にフックを設け、これをフード内側の周縁部に連結する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−17465号公報
【特許文献2】特開2013−213602号公報
【特許文献3】実用新案登録第3189435号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】国土交通省住宅局建築指導課 換気設備技術基準
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、比較的大型の調理場から発生する調理ガスをフード内の空間に一旦捕集したのち、ダクトからスムーズに排出するための整流板による整流効果を、レンジフード自体の構造を変更することなく、向上するための手段を見いだすことにあり、これによって、レンジからの調理ガスのフードからの排気効率をさらに改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、頂部には排気用ダクトを有し、下端面には調理用レンジ上に開口する箱形のガス捕集空間を有するフードからなり、前記開口面の内側に調理用レンジから上昇する調理ガスを整流するための整流板を配置してなるレジンフードであって、
前記整流板は、それぞれが周囲に立上りを形成した複数の平板からなり、前記複数の平板のそれぞれの長さ方向の端辺には、フックを有する連結板部材を設けてなり、
前記平板の連結板部材のフックとこれに相対する平板の連結板部材のフックとを、結合部材によって、両方の平板との間に傾斜角度と間隔とを設けて連結し、
両平板を10度以上の傾斜面の断面が山形状とするとともに、両平板の頂辺連結部の間には調理ガスの頂部通気間隔を形成してなることを特徴とする。
【0009】
この平板の傾斜は、箱形のガス捕集空間の下方開放面の内側に配置される一枚の平板の上下の何れかの方向への傾斜であっても良いし、また、箱形のガス捕集空間の下方開放面の内側に配置される平板が、二枚の平板からなり、この二枚の平板の接合によって形成される上下何れかの山形または逆山形状の中心から両端方向に形成される上下の何れかの方向への傾斜であっても良い。要するに、邪魔板による整流板の面が、調理ガスの上昇方向に対して直角以外の角度、すなわち傾斜面を形成しておれば良い。
【0010】
そして、その傾斜角は、非特許文献1の346ページ図8-3に示されている通り、10度以上、傾斜していることが、下方からの調理ガスが整流板に衝突して整流を形成するのには都合が良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、箱形のレンジフードの下方開放面の内側に、平板を何れかの方向に傾斜せしめて
配置することによって、レンジフード下側開放面の下方位置に配置した調理器レンジからのガスは、整流状態を形成してフード内に捕獲され、さらにダクト内へ吸引される際にも、整流状態が維持されるために、ダクト入り口に設けられたフィルターによるガス中の油煙その他の浮遊物の分離効果を高め、かつ、層流状態が維持されてダクトに流入し、円滑な大気へ放出が可能となり、排気モータの容量は少なくて済む。
【0012】
フードに捕集された水蒸気、煤煙を多量に含有する調理ガスは、ガス発生量が変化しても、ダクトから、整流状態を維持されつつスムーズに、系外に排出される。これによって、発生した調理ガスの一時的な増大量の変化に円滑に対応できるようになる。
【0013】
そして、本発明に係る整流板を適用したレンジフードに備えた排気装置の設計仕様としては、従来、有効換気量Vが精々20kQを超えたものであったものが、各、20kQ以下のものを使用することができ、さらに、従来の整流板を使用したレンジフードのそれぞれの通気間隙におけるガス吸い込み速度は1.5〜2.0 m/sに均一になり、勧化換気効率を向上でき、装置の容量を50%近く低減できる。
【0014】
さらに、本発明に係る整流板の基本構造は、平板に10度以上の傾斜を持たせて、レンジフードの下開放面の内側に組み込むだけであり、また、整流板の形成も、ダクトの下面組み込みも簡単に行うことができるので、本発明のダクトの作成は容易になる。
【0015】
また、この整流板を大型のフードに適用することによって、比較的大量の油煙を含む調理ガスが生じても、ガスの排出効果が向上するので、レンジフードに設置される排気設備のモータおよび環境圧調整機構の出力が少ないもので済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のレンジフード実施形態を概念的に示す。
図2】本発明の実施例に係るレンジフードを下方開放面から見た図である。
図3図2のIII−IIIによる切断面を示す。
図4図2のIV―IVによる切断面を示す。
図5】整流板の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1の各図は、本発明のレンジフード10の実施形態を示す。
【0018】
以下、(a)〜(c)の各図に示す形態を、図に基づいて説明するが、順次各図において図示されてはいるが、符号の説明がない前掲の部位と同じ部位は、前に出た説明に示すものと同様の部位であり、同様の機能を有するものと理解されるべきである。
【0019】
各図における細線によって示されている矢印は、本発明のレンジフード10において、その下方に位置するレンジから生じたガスの流れが、各図に示す整流板1によって形成された整流を示す。
【0020】
各図に示す整流板は複数の平板部材1からなり、それぞれの両端に整流板の強化用と調理ガス中の油の沈積溜の形成用を兼ねた両端に形成された立板を設けて山形に成形したものである。 2は排気用ダクト3の入り口に設けられたフィルターを示す。整流板1は、頂部で排気用ダクト3と連結する箱形の調理ガス捕集用フード10の両下端の間に設置されている。ダクト3に設けられた通風ファン4の作動によって、調理ガスは、矢印で示すように、整流板1の下面に沿って整流化し、整流板1の下端とレンジフードの下端内側との間に形成された下部通気間隙5と上部通気間隙6を通ってフード内で捕集されたのち、フード頂部に設けられたフィルター2からダクト3を経て外気に放出される。
【0021】
整流板1の水平面に対する傾斜角αは、フード内のガス流を整流化する点から10度以上に形成されているのが好都合である。
【0022】
また、この実施形態は、全て、整流板1の下方端辺は、箱形の調理ガス捕集用フード10の下端内側との間に下部通気間隙5を設けた構造のものに適用したものである。しかしながら、本発明に係る何れの整流板1も、このような、格別の下部通気間隙5を形成していないフードにも適用できるのは当然である。
【0023】
実施形態(a)
図1の(a)図は、第1の形態を示す。この例の場合、断面が頂部山形状あるいは傘状の整流板1の頂辺に頂辺通気間隙6が形成されている。この例の場合、矢印に示すように、調理ガスは、下方通気間隙5とこの頂部通気間隙6を通して、フードの空間内に一旦、捕集されたのち、フィルター2からダクト3を通して放出される。この際、レンジからの排煙が一時的に増加した場合、それぞれが、他の通気間隙を補完し、余分のガスをフード内に導入し、スムーズなレンジガスの排出を保証する手段となる。
【0024】
2枚の板材の端辺を接合して得られた傘状の頂部に設けられるフード内のガスの排出用の空間は、如何なる形態のものであってもよく、また、大きさも傘状フードを保てる程度の大きさであれば良いが、任意の長さと幅を有するバンドによって、両板の端縁を溶接その他の手段で連結する際、形成される間隙をもって、フード内の排ガスの排出のための空隙とすることができる。
【0025】
実施形態(b)
(b)図は、前記(a)図に示す頂部通気間隙6に加えて、さらに、整流板1の下端とレンジフードの下端内側との間の傘状整流板1の表面に、中間通気間隙7を設けた例を示す。この例の場合は、調理ガスの発生量が多く、しかも、その発生変動が激しい例の場合に適している。
【0026】
実施形態(c)
(c)図は、前記(a)図に示す断面が山形を形成する傘状の整流板1を複数個(図示の場合は2個)配列し、頂部に通気間隙6を2カ所設けた例を示す。この例の場合は、調理器具が複数個並び、調理面が広く、レンジフードが比較的広い面をカバーする必要がある場合に適している。
【実施例】
【0030】
以下に、先の本発明の実施形態を示す図1における例(a)の実施例を示す。
【0031】
添付図2〜5は、本発明を企業寮の厨房のレンジフードに適用した例を示すもので、図2は、本発明の前記実施形態を示す図1のレンジフード10を開放下面から見た図である。図3は、図2のIII―III線に沿った切断面を示す図である。図4は、同IV―IVの切断面を示す。
【0032】
これらの図において、フード10の中央上面には、フード10の下面開放面から導入される調理ガス中の油煙その他の不純物を濾過するフィルター2と、濾過した後の調理ガスを強制排出する吸引通風機4を有するダクト3が取り付けられている。
【0033】
この箱形のレンジフード10は、1620mmの下開放面と600mmの高さを有し、下部開放面の吸込み面積が0.496m、定格設計容量が、2,150CMH、吸込風速が1.20m/sの下で設計施工したものである。
【0034】
図5は、上記各図に示す整流板1を構成する平板部材1−1の外観の構成図を示す。同図において、この平板部材1−1のそれぞれに、その周囲に底板の捻り防止と強化を兼ねてガス中の油煙をための湯溜まり形成する立ち上り8を設けた2枚の平板の長さ方向の両端にフックを設けた連結板部材11間隔を設けて形成し、これを他方の平板の端辺に設けた同様の連結板部材11のフックを、連結部材12によって結合し、両方の平板に間隙と傾斜角度を設けて整流板1の部材1−1を形成する。
【0035】
同図において、9は、このようにして形成された連結板部材1―1の傾斜角を調整し、部材を強化するための側板であって、部材1−1,1−2,1−3の側面、あるいは、整流板1の側面に、図5に示すように、溶接その他の任意の手段で張り貼り付けることによって、整流板1自体を強化すると共に、図5にしめすように形成された各部材1−1,1−2,1−3から、整流板1をフード10への組み込みを簡単に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、既設、新規のレンジフードに関係なく、また、調理ガスの流れに関係なく整流板を設けることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 整流板
1−1,1−2,1−3 平板部材
2 フィルター
3 排気用ダクト
4 通風機
5 下部通気間隙
6 頂部または上部通気間隙
7 中間通気間隙
8 立板
9 整流板強化側板
10 レンジフード
11 連結板部材
12 結合部材
図1
図2
図3
図4
図5