(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂層は、前記多層フィルム上にポリカーボネート系ウレタンエマルジョンを主成分とするウレタン系インキを印刷して形成された印刷層である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム被覆物品。
加熱して軟化させた前記フィルムを前記物品に被せた後、前記物品の前記上面側から前記物品と前記フィルムとの間を脱気することにより、前記フィルムを前記物品の表面に密着させた、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム被覆物品。
前記フィルムは、前記物品の前記上面を覆う部分の少なくとも一部に、フィルム内面同士が密着した内面密着部を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム被覆物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0012】
以下では、フィルム被覆物品を構成する物品として電池セル11,71を例示するが、物品はこれに限定されない。例えば、物品としては円筒型など他の形態を有する電池セルであってもよく、電池セル以外の物品であってもよい。
【0013】
図1〜
図4に、実施形態の一例であるフィルム被覆物品10を示す。
フィルム被覆物品10は、上面11a、底面11b、及び4つの側面11c,11dを有する電池セル11と、少なくとも電池セル11の底面11b及び側面11c,11dを被覆するフィルム12とを備える。即ち、フィルム被覆物品10はフィルムが被覆された電池セルであって、フィルム12は、例えば電池セル11が傷付かないように、また水濡れしないように保護すると共に、電池セル11を周囲から絶縁する機能も有している。フィルム被覆物品10は、加熱して軟化させたフィルム12を電池セル11に被せて、電池セル11の上面11a側から電池セル11とフィルム12との間を脱気することにより、電池セル11の表面にフィルム12が密着した構造を有する。詳しくは後述するように、フィルム12は、A層とB層とが積層された複層部28を3以上含む多層フィルム18と、当該多層フィルム18の電池セル11の表面に接触する側に設けられた樹脂層19とを含む。樹脂層19は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を主成分とする樹脂層である。
【0014】
電池セル11は、例えば、略直方体形状を有し、上面11a、底面11b、及び4つの側面11c,11dを有する。上面11aには、他の部材との接続部である一対の電極端子13が上方に向けて突設されている。上面11a及び底面11bは、短辺と長辺とを有し、4つの側面11c,11dは短辺側の側面11cと長辺側の側面11dとからなる。短辺の長さXと長辺の長さYと高さZとの関係は、X<Z<Yとなっている。即ち、面積の大きい順に、側面11d、上面11a及び底面11b、側面11cとなっている。
図1に例示する電池セル11は、所謂角形電池セルである。電池セル11の外装の材質は、アルミニウム金属が主に用いられる。電池セル11は、例えば、長辺側の側面11d同士が対向するように短辺方向に沿って複数個並べられてモジュール化され(後述の
図13参照)、車載用や不動産等に置かれる定置用として使用される。
【0015】
電池セル11は、1枚のフィルム12によって被覆されることが好適である。本実施形態では、電池セル11の表面のうち一対の電極端子13の上面13a以外の部分にフィルム12が密着保持されている。フィルム12は、電池セル11の底面11b及び4つの側面11c,11dの全体に密着しており、さらに電池セル11の上面11a、及び電極端子13の側面13bにも密着している(
図3及び
図4参照)。図面では、フィルム12が判別し易いように電池セル11の表面からフィルム12を離して図示しているが、実際には、フィルム12が電池セル11の表面に密着している。
【0016】
フィルム12は、電池セル11の上面11aを覆う部分の少なくとも一部に、フィルム内面同士が密着した内面密着部29を有する。内面密着部29は、電池セル11の上面11aより上方であって、電極端子13が存在していない箇所に形成されている(
図3及び
図4参照)。なお、
図4においては、一対の電極端子13の間に内面密着部29が形成されているが、当該内面密着部29が形成される場所は特に限定されない。例えば、一対の電極端子13の外方領域や、電池セル11の上面11aの角部領域(例えば、後述の
図12における角部領域に形成されたブリッジ55も内面密着部29の一例である)等に形成されていてもよい。
図4において内面密着部29にドットを付して示している。フィルム被覆物品10の側面にブリッジが形成されると、上述のような問題を生じ得るが、フィルム被覆物品10の上面に形成される内面密着部29は、電池セル11の表面にフィルム12を固定する機能を有し、フィルム12の剥がれを抑制する。このように電池セル11の6つの面の略全体にフィルム12が密着しているが、最大面積を有している長辺側の側面11dが主たるフィルム密着保持面となっている。
【0017】
フィルム被覆物品10は、加熱により軟化したフィルム12を電池セル11に被せて、電池セル11の上面11a側から電池セル11とフィルム12との間を脱気することにより形成される。即ち、脱気方向は、4つの側面11c,11dに沿った電池セル11の上下方向であって、上面11a側が脱気側となる。なお、フィルム被覆物品10は、後述の
図9〜
図12を用いて説明するフィルム被覆物品50の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0018】
以下、
図5及び
図6を参照しながら、フィルム12の構成について詳説する。
図5は、フィルム12の積層構造の一例を示す断面図である。
図6は、フィルム12の積層構造の他の一例を示す断面図である。
【0019】
図5に示すように、フィルム12は、A層21とB層22とが積層された複層部28を合計で3以上含む多層フィルム18と、当該多層フィルム18の電池セル11の表面に接触する側に設けられた樹脂層19とを含む。樹脂層19は、電池セル11の表面に接触するフィルム12の最内層である。
【0020】
図5に例示する多層フィルム18は、複数の複層部28を含む基層部20と、基層部20の表面に形成された表面層とを有する。各複層部28は、A層21、B層22以外の層を介して積層されていてもよいが、好ましくは互いに隣接して積層される。即ち、複数のA層21とB層22とが交互に積層されていることが好ましい。
【0021】
A層21とB層22とが交互に積層されているとは、実質的に交互に積層されていることを含む。例えば、A層21/B層22/A層21の二種三層構成を繰り返し単位として積層した場合、「A層21/B層22/A層21/A層21/B層22/A層21/A層21/B層22/A層21・・・」となるが、「A層21/A層21」の部分は同種の樹脂が積層されることから、実質的にA層21の一層とみなすことができる。このように、本願において実質的に交互に積層されているとは、同種の層が積層されている場合はそれを一層とみなしてもよく、その結果、A層21とB層22とが交互に積層されているものを含む意味である。
【0022】
表面層としては、基層部20の一方の面に形成された内層23と、基層部20の他方の面に形成された外層24とが設けられる。内層23は被覆対象物品である電池セル11側に向いた多層フィルム18の最内層であり、外層24は多層フィルム18の最外層であって、本実施形態ではフィルム12の最外層を構成する。本実施形態では、樹脂層19が多層フィルム18の内層23上に形成されている。
【0023】
多層フィルム18は、延伸されているか否かについては特に限定されないが、実質的に延伸されていない無延伸フィルムであることが好適である。本明細書において、無延伸フィルムとは、シュリンクフィルムの製造過程で実施されるような延伸工程を経ることなく製造されるフィルムであって、より具体的には、延伸倍率が2%未満、好ましくは1%未満のフィルムを意味する。無延伸フィルムを用いることにより、見栄えが良好な包装形態を得ることが容易になる。
【0024】
基層部20を構成する各層、内層23、外層24は、必要に応じて、後述の樹脂成分以外の他の成分(添加剤)、例えば、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、着色剤(顔料)、ピニング剤(アルカリ土類金属)、軟化剤等を含んでいてもよい。これらの成分は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0025】
基層部20は、3以上の複層部28を含み、好ましくは5〜30の複層部28を含む。即ち、A層21とB層22の合計が少なくとも6層以上であり、好ましくは10層〜60層である。A層21とB層22の積層数の上限は、特に限定されないが、生産性等の観点から、例えば200層以下が好ましく、60層以下がより好ましい。当該積層数を6層以上、好ましくは10層〜60層とすることにより、側面11c乃至側面11d又は側面11cと側面11dが連接している側面角部付近にブリッジが無く見栄えの良い包装形態を得ることができる。また、多層フィルム18の透明性が向上して包装体の意匠性がさらに良好なものとなる。また、後述するレーザーカット性が良好でありながら優れた伸展性が得られる。基層部20の最表面は、A層21、B層22のいずれであってもよく、例えば一方の最表面がA層21、他方の最表面がB層22であってもよい。或いは、両面共にA層21であるか、両面共にB層22であってもよい。
【0026】
なお、生産性等の観点から、A層21、B層22のそれぞれは、全ての層が実質的に同一(例えば、層を構成する樹脂製品が実質的に同じであり、層厚みの差異が製造誤差の範囲内)であることが好ましい。
【0027】
[A層21]
A層21は、例えば、多層フィルム18に適切な機械的強度を付与し、製造時や流通時、使用時等における多層フィルム18の耐久性を向上させる。A層21を構成する好適な樹脂としては、B層22を構成する樹脂よりも融点の高い樹脂であって、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特にポリプロピレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。B層22を構成する樹脂よりも高融点の樹脂を用いることで、多層フィルム18の耐久性等が向上すると共に、フィルム12を加熱して電池セル11に装着するまでの間に、溶融又は軟化する内層23やB層22の温度が下がり難いという利点がある。これらのうち、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂がより好ましく、ポリアミド系樹脂が特に好ましい。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
A層21は、例えば、B層22よりも後述するレーザー光αの吸収率が高い樹脂層である。レーザー光αの吸収率が高いとは、A層21、B層22の1層同士を比較したときに、A層21の方がレーザー光αの吸収率が高いことを意味する。A層21は、単位体積当たりのレーザー光αの吸収率がB層22よりも高いことが好ましい。各層のレーザー光αの吸収率は、分光測定装置を用いて測定することができる。
【0029】
上記ポリアミド系樹脂としては、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン−6T、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸とからなるナイロン−6I、ノナンジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン−9T、メチルペンタジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン−M5Tなどが挙げられる。
【0030】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、結晶性のポリプロピレン系樹脂を用いることができる。例えば、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体、結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレン及びα−オレフィンの少なくとも一方とプロピレンとの結晶性ブロック共重合体等が挙げられる。当該α−オレフィンは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましい。
【0031】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分を必須の構成成分として構成された種々のポリエステル(即ち、ジカルボン酸に由来する構成単位とジオールに由来する構成単位を少なくとも含むポリエステル)が挙げられる。
上記ジカルボン酸(ジカルボン酸成分)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トランス−3,3’−スチルベンジカルボン酸、トランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ジベンジルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ドコサン二酸、1,12−ドデカンジオン酸、及びこれらの置換体等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。上記ジカルボン酸は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記ジオール(ジオール成分)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2,4−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環式ジオール;2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等のビスフェノール系化合物のエチレンオキシド付加物、キシリレングリコール等の芳香族ジオールなどが挙げられる。上記ジオールは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記ポリエステル系樹脂は、上記成分以外にも、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸;安息香酸、ベンゾイル安息香酸等のモノカルボン酸;トリメリット酸等の多価カルボン酸;ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル等の1価アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどに由来する構成単位を含んでいてもよい。
また、ジカルボン酸成分及びジオール成分のうちの少なくとも一方が2種以上の成分から構成される(例えば、主成分の他に成分を含む)変性芳香族ポリエステル系樹脂であってもよい。
【0032】
上記ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を必須の単量体(モノマー)成分として構成される重合体である。即ち、分子中(1分子中)に、スチレン系単量体に由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。上記ポリスチレン系樹脂は、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。また、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。これらのうち、入手し易さ、材料価格などの観点から、スチレンが好ましい。なお、上記スチレン系単量体は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記ポリスチレン系樹脂の具体例としては、スチレンの単独重合体である一般ポリスチレン(GPPS)等のスチレン系単量体の単独重合体、2種以上のスチレン系単量体のみを単量体成分として構成される共重合体、スチレン−ジエン系共重合体、スチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル系共重合体等の共重合体、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)などが挙げられる。これらのうち、スチレン−ジエン系共重合体が好ましい。なお、上記ポリスチレン系樹脂は、水素添加されたポリスチレン系樹脂(水添ポリスチレン系樹脂)であってもよい。
上記スチレン−ジエン系共重合体は、スチレン系単量体及びジエン(特に、共役ジエン)を必須の単量体成分として構成される共重合体である。共重合の形態は、特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。ジエンは、共役ジエンが好ましく、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどが挙げられる。ジエンは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記スチレン−ジエン系共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン・イソプレン−スチレンブロック共重合体(SBIS)などが挙げられる。
上記水添ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、SBSやSISに水素を添加した水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)や水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。
【0033】
A層21の厚み(電池セル11に装着される前)は、特に限定されないが、好ましくは0.05μm〜20μm、より好ましくは0.1μm〜15μm、特に好ましくは0.2μm〜10μmである。フィルム被覆物品10の製造において後述するレーザーカット工程が適用される場合、A層21の厚みは、例えば、0.05μm〜5μmが好ましく、0.08μm〜4μmがより好ましく、0.1μm〜3μmが特に好ましい。A層21の厚みが当該範囲内であれば、例えば、多層フィルム18の機械的強度が良好なものとなり、製造時や流通時、使用時等における多層フィルム18(フィルム12)の耐久性が向上する。また、良好なレーザーカット性が得られる。
【0034】
[B層22]
B層22は、例えば、多層フィルム18に柔軟性を付与して伸展性を向上させる機能を有する。なお、B層22を構成する樹脂としては、A層21を構成する樹脂よりも低融点であることが好ましく、この関係を満たせば、A層21を構成するものとして例示する上記ポリアミド系樹脂、上記ポリプロピレン系樹脂、上記ポリエステル系樹脂、上記ポリスチレン系樹脂などを用いることもできる。例えば、A層21がポリアミド系樹脂から構成され、B層22が当該ポリアミド系樹脂よりも融点の低いポリアミド系樹脂やポリスチレン系樹脂から構成される場合等が例示できる。
【0035】
B層22を構成する好適な樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、B層22はポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層であることが好ましい。B層22におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、B層22を構成する樹脂成分の総重量に対して、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
【0036】
上記ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体、1−ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2−ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が例示できる。これらのうち、A層21との層間強度を向上させるためには、特に好ましくはエチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体である。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体は、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、ランダム共重合体が特に好ましい。具体例としては、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE−g−MAH)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体を酸部分と金属イオンとの塩形成によってイオン橋かけ構造を形成したアイオノマー(IO)等が挙げられる。これらのうち、LLDPE−g−MAH、EMAA、IOが好ましい。
エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体には、市販品を用いてもよい。好適な市販品としては、三井化学株式会社製のNF536等が挙げられる。
【0037】
B層22は、他の層との接着性を向上させる目的で、必要に応じて、ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、水添テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、水添クマロン系樹脂、石油樹脂等の粘着付与樹脂;芳香族系炭化水素樹脂;フェノール系樹脂;脂環族系炭化水素樹脂;スチレン−アクリル共重合体;天然ゴムや合成ゴムのエラストマー等を含んでいてもよい。
【0038】
B層22の厚み(電池セル11に装着される前)は、特に限定されないが、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.08μm〜4μm、特に好ましくは0.1μm〜3μmである。また、後述のレーザーカット工程が適用される場合も、B層22の厚みは、例えば、0.05μm〜5μmが好ましく、0.08μm〜4μmがより好ましく、0.1μm〜3μmが特に好ましい。B層22の厚みが当該範囲内であれば、多層フィルム18に柔軟性を付与して伸展性を向上させることができ、例えば、電池セル11とフィルム12との良好な密着性が得られ易い。また、良好なレーザーカット性が得られる。
【0039】
A層21とB層22を構成する樹脂として好ましい組み合わせは、A層21がポリアミド系樹脂、B層22がポリオレフィン系樹脂である組み合わせ、A層21がポリエステル系樹脂、B層22がポリオレフィン系樹脂である組み合わせが挙げられる。
【0040】
[内層23]
内層23は、上記のように、多層フィルム18の最内層である。内層23を構成する樹脂は、A層21又はB層22を構成する樹脂と同一組成とすることもできるが、異なるものを用いてもよい。内層23は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等の熱可塑性樹脂から構成される。これらの樹脂は、具体的には上述のA層21又はB層22を構成する樹脂が挙げられる。なお、後述するように樹脂層19を内層23上に印刷で設ける場合には、その印刷適性からポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、特にポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。
【0041】
内層23は、A層21及びB層22のいずれの表面に形成されてもよい。内層23の厚みは、特に限定されないが、A層21、B層22よりも厚いことが好適である。具体的には、2μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。また、後述のレーザーカット工程が適用される場合も、内層23の厚みは、例えば、2μm〜15μmが好ましく、3μm〜12μmがより好ましく、5μm〜10μmが特に好ましい。
【0042】
[外層24]
外層24は、上記のように、多層フィルム18の最外層であり、且つ本実施形態ではフィルム12の最外層である。外層24は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等の熱可塑性樹脂から構成される。これらの樹脂は、具体的には上述のA層21又はB層22を構成する樹脂が挙げられる。
【0043】
外層24は、A層21及びB層22のいずれの表面に形成されてもよいが、接着性等の観点から好ましくはB層22上に形成される。外層24の厚みは、特に限定されないが、A層21、B層22よりも厚いことが好適である。具体的には、2μm〜40μmが好ましく、3μm〜20μmがより好ましく、5μm〜15μmが特に好ましい。また、後述のレーザーカット工程が適用される場合も、外層24の厚みは、例えば、2μm〜15μmが好ましく、3μm〜12μmがより好ましく、5μm〜10μmが特に好ましい。
【0044】
フィルム12のカールを抑制するために、内層23を構成する樹脂と外層24を構成する樹脂を同一組成とすることも好適である。同一組成とする場合は、LLDPE、EVA等のポリエチレン系樹脂やポリアミド系樹脂から構成される。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。但し、フィルム12には後述する樹脂層19が設けられるため、内層23を構成する樹脂と外層24を構成する樹脂が異なりフィルム12のカールが生じ易い場合であっても、樹脂層19の機能により電池セル11の表面に対するフィルム12の良好な密着性が得られ、フィルム12の浮き、剥がれが十分に抑制される。例えば、内層23がポリアミド系樹脂から構成され、外層24がポリエチレン系樹脂から構成される場合、フィルム12は外層24側にカールし易くなるが、樹脂層19の効果により、さらに内面密着部29の効果により、フィルム12の浮き、剥がれが抑制される。一方、内層23がポリエチレン系樹脂から構成され、外層24がポリアミド系樹脂から構成される場合は、樹脂層19を内層23上に印刷で設けようとすると、コロナ処理等の表面処理が必要となる。換言すると、コロナ処理等の表面処理を行えば、樹脂層19の印刷が可能である。当該構成によれば、表面処理が必要であるものの、フィルム12が電池セル11側にカールし易くなるため、さらにフィルム12の浮き、剥がれを抑制し易くなる。
【0045】
なお、内層23、外層24、及び基層部20を構成する各層で、含有される上記添加剤の種類や量が異なっていてもよい。例えば、内層23及び外層24のみに帯電防止剤や滑剤が含有されていてもよい。
【0046】
[樹脂層19]
樹脂層19は、上記のように、電池セル11の表面に接触するフィルム12の最内層であって、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を主成分とする樹脂層である。フィルム12の最内層としてポリカーボネート系ウレタン樹脂を主成分とする樹脂層19を設けることにより、電池セル11の表面に対するフィルム12の密着力が向上し、フィルム12の浮きが発生し難くなる。ここで、「主成分」とは樹脂層19の構成材料のうち含有量が最も多い成分を意味する。ポリカーボネート系ウレタン樹脂の含有量は、樹脂層19の総重量に対して50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上が特に好ましい。ポリカーボネート系ウレタン樹脂のみ(100重量%)で樹脂層19が構成されていてもよい。
【0047】
樹脂層19を構成するポリカーボネート系ウレタン樹脂は、ポリカーボネートポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との反応生成物である。ポリカーボネート系ウレタン樹脂には、ポリカーボネートポリオール以外のポリオール成分、鎖伸張成分、アニオン性、カチオン性、又は非イオン性の親水基などが含まれていてもよい。ポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分とのモル比は、例えば、30:70〜70:30である。ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、例えば、ガラス転移温度(Tg)が−50℃〜−10℃、ビカット軟化温度が70℃〜120℃の範囲にある。ビカット軟化温度は、JIS K 7206に準拠して測定することができる。
【0048】
上記ポリカーボネートポリオール成分は、ジオール成分とカーボネート成分との反応生成物であることが好ましい。ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール−A等が例示できる。カーボネート成分としては、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等が例示できる。これらは、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0049】
上記ポリイソシアネート成分は、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンビスメチルイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートなどが例示できる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0050】
上記鎖伸張成分としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、トリエタノールアミン等のアミノアルコールなどが挙げられる。上記親水基は、カルボン酸塩型(アニオン性)が好ましく、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2 ,2−ジメチロールヘプタン酸等を用いて樹脂骨格にカルボキシル基を導入し、これを中和することにより形成される。
【0051】
樹脂層19には、ポリカーボネート系ウレタン樹脂以外の樹脂成分、顔料等の添加剤が含まれていてもよい。ポリカーボネート系ウレタン樹脂以外の樹脂成分としては、当該ウレタン樹脂と共に樹脂層19を構成可能な樹脂であれば特に限定されず、例えば、多層フィルム18を構成する樹脂と同様のポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。但し、樹脂層19を構成する樹脂成分は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂が80重量%以上であることが好ましく、実質的にポリカーボネート系ウレタン樹脂のみであることが特に好ましい。また、樹脂層19に顔料が含まれる場合、樹脂層19の総重量に対する顔料の含有量は20重量%未満が好ましく、10重量%未満が特に好ましい。
【0052】
樹脂層19は、例えば、内層23上にポリカーボネート系ウレタンエマルジョンを主成分とするウレタン系水性インキを印刷して形成された印刷層である。この場合、樹脂層19を構成するポリカーボネート系ウレタン樹脂は、水、アルコール等の水性溶媒、又はこれらの混合物を主成分とする水系媒体中に分散されてエマルジョンを形成する。ポリカーボネート系ウレタンエマルジョンは、界面活性剤を乳化剤として使用する強制乳化型であってもよいが、好ましくはウレタン樹脂中にカルボン酸塩等の親水基を導入して界面活性剤を不要とする自己乳化型である。樹脂層19の印刷に使用されるウレタン系水性インキには、ポリカーボネート系ウレタンエマルジョンを構成するポリカーボネート系ウレタン樹脂及び水系媒体の他に、必要によりさらなる水性溶媒や、界面活性剤が含まれていてもよく、各種添加剤(例えば、増粘剤、消泡剤、防腐剤、PH調整剤、着色剤、鎖伸張剤、架橋剤等)が含まれていてもよい。
【0053】
樹脂層19を構成するポリカーボネート系ウレタン樹脂(ポリカーボネート系ウレタンエマルジョン)には、市販品を用いることができる。当該市販品の例としては、三洋化成工業製のパーマリンシリーズ、ユーコートシリーズ等が挙げられる。
【0054】
樹脂層19の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.08μm〜4μm、特に好ましくは0.1μm〜3μmである。
【0055】
図6は、フィルム12の積層構造の他の一例を模式的に示す。この例に示すフィルム12は、例えば、特開2013−111822号公報に記載のフィルムが挙げられる。
【0056】
図6に示す例では、多層フィルム18が複数の複層部28同士が隣接して積層されてなる基層部20、内層23、及び外層24を有する点で
図5に示す例と共通するが、接着層25,26、及びコア層27が設けられる点で
図5に示す例と異なる。
図6に示す例では、コア層27を挟んで、その両側に2つの基層部20が設けられている。フィルム12は、基層部20における複層部28を3以上含むものであるが、このように2つの基層部20が設けられている場合は、それぞれを併せて、全体として複層部28を3以上含んでいればよい。各基層部20における複層部28の数は、2〜15がより好ましく、3〜10が特に好ましい。各基層部20における複層部28の数は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0057】
[接着層25]
接着層25は、例えば、内層23と基層部20(例えば、B層22)との接着強度を向上させる。接着層25を構成する材料には、従来公知の接着性樹脂、例えば、接着性ポリオレフィン系樹脂などが用いられる。具体例としては、エチレン−メタクリレート−グリシジルアクリレート三元共重合体、各種ポリオレフィンに一塩基性不飽和脂肪酸、二塩基性不飽和脂肪酸、又はこれらの無水物をグラフトさせたもの(マレイン酸グラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体、マレイン酸グラフト化エチレン−α−オレフィン共重合体など)などが用いられる。一塩基性不飽和脂肪酸として、アクリル酸、メタクリル酸などが用いられる。二塩基性不飽和脂肪酸として、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが用いられる。また、B層22を構成する樹脂と同じ樹脂を用いて接着層25を形成してもよい。
【0058】
接着層25の厚みは、特に限定されないが、A層21、B層22よりも厚いことが好適である。具体的には、好ましくは2μm〜70μm、より好ましくは3μm〜60μmである。また、後述のレーザーカット工程が適用される場合も、接着層25の厚みは、例えば、2μm〜15μmが好ましく、3μm〜12μmがより好ましい。接着層25の厚みが当該範囲内であれば、良好な接着強度を有する多層フィルム18を比較的安価で得ることができる。
【0059】
[接着層26]
接着層26は、例えば、外層24と基層部20との接着強度を向上させる。接着層26を構成する材料は、外層24を構成する樹脂に応じて適宜変更可能であり、例えば接着層25を構成する材料と同じものを用いることができる。
【0060】
接着層26の厚みは、特に限定されないが、A層21、B層22よりも厚いことが好適である。具体的には、好ましくは2μm〜50μm、より好ましくは3μm〜40μmである。また、後述のレーザーカット工程が適用される場合も、接着層26の厚みは、例えば、2μm〜15μmが好ましく、3μm〜12μmがより好ましい。接着層26の厚みが当該範囲内であれば、良好な接着強度を有する多層フィルムを比較的安価で得ることができる。
【0061】
[コア層27]
コア層27は、フィルム12の用途等に応じて適宜選択される。例えば、フィルム12にバリア性が求められる場合には、バリア層が設けられる。また、耐熱性が求められる場合には、耐熱バリア層が設けられる。コア層27としては、酸素バリア性を有する酸素バリア層が例示できる。酸素バリア層を構成する材料としては、例えばポリビニルアルコール、EVOH、塩化ビニリデン樹脂、ジアミン成分に芳香環を有するポリアミド系樹脂などが用いられる。これらの中でも、EVOHが好ましい。EVOHのエチレン共重合比率は、特に限定されないが、20モル%〜50モル%が好ましく、30モル%〜40モル%がより好ましく、30モル%〜35モル%が特に好ましい。
【0062】
コア層27を構成する樹脂として、例えばエチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体、1−ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2−ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体等を用いてもよい。また、A層21又はB層22とコア層27とで同一組成(実質的に同一)の樹脂を用いてもよい。例えば、A層21がポリアミド系樹脂から構成される場合に、同じポリアミド系樹脂(同一製品)からコア層27が構成されてもよい。また、コア層27は、複数の樹脂層を有していてもよい。
【0063】
コア層27の厚みは、特に限定されないが、具体的には、1μm〜30μmが好ましく、2μm〜25μmがより好ましい。また、後述のレーザーカット工程が適用される場合も、コア層27の厚みは、例えば、1μm〜15μmが好ましく、2μm〜12μmがより好ましい。
【0064】
[フィルム12(多層フィルム18)の製造方法]
上記層構造を有するフィルム12は、溶融製膜などの慣用の方法によって製造することができる。中でも、溶融製膜法(特に、Tダイ法)が好ましい。また、積層の方法としては、例えば、共押出法(フィードブロック法、マルチマニホールド法等)、ドライラミネート法などを用いることができる。中でも、共押出法が好ましく、フィードブロック法が好ましい。
【0065】
さらに、レイヤー・マルチプライヤー(layer multiplier)を用いて、またフィードブロックとレイヤー・マルチプライヤー(以下、「マルチプライヤー」という)を組み合わせて、基層部20の多層化を行うこともできる。マルチプライヤーは、フィルム層を多層化する装置である。マルチプライヤーでフィルム層を多層化する方法としては、特に限定されないが、フィルム層を幅方向に分割した後、分割したフィルム層を厚み方向に積層する方法が挙げられる。
【0066】
ここで、共押出法(フィードブロック法)の一例について説明する。
まず初めに、それぞれ所定の温度に設定した複数の押出機に、基層部20を形成する原料、表面層を形成する原料をそれぞれ投入して溶融(又は溶融混練)後、溶融した原料をTダイから共押出することで、溶融されたA層21を構成する原料(a)と、B層22を構成する原料(b)とを積層して、A層21及びB層22が交互に積層された基層部20を作製する。即ち、複数の複層部28同士が隣接して積層された基層部20を作製する。基層部20の積層構造は、フィードブロックのみを用いて形成することもできるし、フィードブロックとマルチプライヤーを組み合わせて用いることで形成することもできる。必要に応じて、ギアポンプで原料の供給量を調節してもよいし、フィルターを用いて異物を除去してもよい。なお、押出温度は、用いる原料の種類によっても異なり、特に限定されないが、150℃〜250℃が好ましい。また、例えば、溶融されたコア層27を構成する原料(e)を、フィードブロックを用いて押出すと共に、溶融された原料(a)及び原料(b)を、原料(e)の両側から押出すことにより、コア層27の両側にA層21とB層22とが交互に積層された基層部20を形成することもできる。上記共押出したポリマーを、冷却ドラムなどを用いて急冷することにより、未延伸多層フィルム(無延伸多層フィルム)を得ることができる。
【0067】
また、内層23を構成する原料(c)及び外層24を構成する原料(d)をそれぞれ上記の原料(a)及び(b)(場合により原料(e))と同時に共押出することにより、あるいは内層23を構成するフィルムや外層24を構成するフィルムと、上記により得られた基層部20を含む未延伸多層フィルムとを、慣用のラミネート法(ドライラミネート法)等により積層することにより、多層フィルム18を製造することができる。
【0068】
フィルム12は、多層フィルム18の一方の面上に樹脂層19を形成して得られる。フィルム12の樹脂層19が形成された面が、電池セル11の表面に接触する最内面となる。樹脂層19は、多層フィルム18の層構造を形成する場合と同様に、共押出法、ドライラミネート法等を用いて形成されてもよい。但し、生産性等の観点から、ポリカーボネート系ウレタンエマルジョンを主成分とする上記ウレタン系インキを用いて樹脂層19を形成することが好ましい。樹脂層19の印刷には、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、凸版輪転印刷機等の従来公知の印刷機が使用できる。
【0069】
上記構成を備えたフィルム被覆物品10は、その電極端子13の上面13aを除く電池セル11の表面がフィルム12で被覆されているので、傷等から電池セル11の表面を保護することができるうえに、防水性、絶縁性も確保される。特に、底面11bにおけるフィルム12の厚さが最も厚いので、フィルム被覆物品10を設置する面との擦れにも強いという利点がある。さらに、上面11a側よりも底面11b側の方がフィルム12の厚さが相対的に厚くなっているので、特に傷つきやすい電池セル11の下部を効果的に保護することができると共に、設置場所が浸水したとしても高い防水性能が発揮される。一方、電池セル11の上面11a側は脱気口であってフィルム12の開口端でもあるが、フィルム12の上面11a側は底面11b側に比して大きく引き伸ばされた状態となっているため、電池セル11の表面に対して強く密着する。ゆえに、フィルム12が開口端から剥がれることも防止される。なお、電極端子13の上面13aは露出しているので、他の部材との接続作業も容易である。
【0070】
また、フィルム被覆物品10によれば、側面におけるブリッジ(以下、「側面ブリッジ」という場合がある)の発生を抑制して、見栄えの良い包装形態を得ることができる。電池セル11の側面11c乃至側面11d又は側面11cと側面11dが連接している側面角部付近にはブリッジが発生して見栄えが悪くなり易いが(後述の
図17参照)、フィルム被覆物品10の場合は、多層フィルム18が良好に伸展して当該部分における側面ブリッジの発生が抑制される。
【0071】
また、電池セル11の表面に接触する最内層としてポリカーボネート系ウレタン樹脂を主成分とする樹脂層19を設けたことにより、電池セル11の表面に対するフィルム12の密着性がさらに向上し、フィルム12の浮き、剥がれがさらに抑制される。そして、電池セル11の表面に対するフィルム12の良好な密着状態を長時間維持できる。一方、フィルム12は電池セル11の表面に対して完全に接合しているわけではないので、フィルム12を剥離させる必要が生じた場合には電池セル11の表面に樹脂成分が残存することなく容易に剥離することができる。さらに、フィルム被覆物品10の上面に内面密着部29が形成されることでフィルム12が固定され、フィルム12の剥がれがより一層抑制される。なお、フィルム被覆物品の製造過程において加熱されたフィルムの温度が常温に戻ったときに、フィルムが電池表面から浮いて電池とフィルムの間に空気層が形成され易い。大きな空気層が形成されると電池の冷却性能が低下する、モジュール化の際にフィルムにシワが入るといった問題が発生するが、フィルム被覆物品10によれば、大きな空気層の形成を防止できるので、かかる問題を解決することができる。
【0072】
以下、
図7〜
図12を参照しながら、実施形態の他の一例であるフィルム被覆物品50について説明する。
図9〜
図12は、フィルム被覆物品50の製造工程の一例を説明するための図である。
【0073】
図7及び
図8に、フィルム被覆物品50を示す。
フィルム被覆物品50は、フィルム被覆物品10と同様に、電池セル11と、電池セル11の表面を被覆するフィルム51とを備える。一方、フィルム被覆物品50は、電極端子13及びその周囲がフィルム51に覆われず露出している点で、電極端子13の側面までフィルム12で被覆されたフィルム被覆物品10と異なる。フィルム51は、電池セル11の底面11b及び4つの側面11c,11dの全体と、上面11aの周縁部とに密着している。なお、フィルム51には、フィルム12と同様の多層フィルム18及び樹脂層19が適用される。
【0074】
図9は、台座52を取り付けた電池セル11を示す図である。
電池セル11には、台座52を取り付けた状態でフィルム51を被せることが好適である。台座52は、例えば、電池セル11の上面11aに取り付けられ、電極端子13を挿入可能な穴を有する。台座52は、後述する第3の工程後に取り外されるが、後述する第2の工程では、台座52の側面にもフィルム51が装着される。以下では、台座52が取り付けられた電池セル11を「電池セル11z」という。
【0075】
台座52の高さは、電極端子13の高さ以上であることが好適である。
図9に示す例では、電極端子13の上面と台座52の上面が略面一となっている。後述する第1及び第2の工程は、台座52が取り付けられる電池セル11の上面11aを下に向けた状態で支持台100上に電池セル11zを載置して行われるが、台座52を取り付けることにより、電池セル11zの安定性が向上する。また、電極端子13が台座52に覆われるため、フィルム51が電極端子13に密着することを防止できる。
【0076】
台座52は、例えば略直方体形状を有し、電極端子13を覆って上面11aに取り付けられる。本実施形態では、台座52の上面及び底面の長辺、短辺の長さは、それぞれ電池セル11の短辺の長さX、長辺の長さYよりも短い。即ち、電池セル11zは、上下方向(高さ方向)に沿って外形寸法が急峻に変化する部分を有する。電池セル11zを構成する台座52は、電池セル11よりも横方向の外周長が短く、電池セル11と台座52の外周長の違いに起因して台座52と電池セル11との境界に段差が形成される。
【0077】
図10は、フィルム被覆物品50の製造工程を示すブロック図である。
フィルム被覆物品50の製造工程は、下記の工程を含む。
(1)フィルム51を加熱して軟化させ、当該フィルムを電池セル11zに被せる第1の工程である加熱軟化工程。
(2)電池セル11zの主たるフィルム密着保持面を脱気方向に対して側方に位置させた状態で、電池セル11zの一方側から電池セル11zとフィルム51との間を脱気して、電池セル11zの表面にフィルム51を密着させる第2の工程である脱気工程。
フィルム被覆物品50の製造工程は、さらに下記の工程を含むことが好適である。
(3)電池セル11zを被覆したフィルム51にレーザー光αを照射して当該フィルムを切断する第3の工程であるレーザーカット工程。
本実施形態では、第2の工程と第3の工程の間に、粗カット工程を設けている。
【0078】
図11は、加熱軟化工程〜粗カット工程を示す図である。
図11(a)〜(c)は加熱軟化工程(第1の工程)、
図11(d)は脱気工程(第2工程)、
図11(e)は粗カット工程をそれぞれ示す。以下では、長尺状のフィルム51により電池セル11zを被覆した形態を「フィルム被覆物品50x」、各フィルム被覆物品50xの周囲で長尺状のフィルム51を環状に切断して形成された形態を「フィルム被覆物品50y」とする。
【0079】
図11(a)〜(c)に示すように、第1の工程(加熱軟化工程)では、ヒーター101を用いてフィルム51を加熱し、当該加熱により軟化したフィルム51を相対的に電池セル11zに接近させて電池セル11zの上から被せている。
図11に示す例では、台座52(電極端子13)が下を向き底面11bが上を向くように電池セル11zを天地逆向きにして支持台100上に載置し、電池セル11zの底面11b上に加熱により軟化した長尺状のフィルム51を被せている。支持台100は、吸引孔102を有する。第1の工程では、フィルム51を降下させてもよいし、電池セル11zを上昇させてもよいし、フィルム51を降下させつつ電池セル11zを上昇させてもよい。いずれにしても、フィルム51を相対的に電池セル11zに接近させることでフィルム51は最初に電池セル11の底面11bに接触する。
【0080】
図11(b)に示す例では、電池セル11zが載置された支持台100を上昇させると共に、押え枠103を下降させてフィルム51を押し下げている。押え枠103は、電池セル11zの四方を囲むように配置され、押え枠103と支持台100との間にフィルム51が挟まれると共に、フィルム51が電池セル11zに被せられ電池セル11の底面11bに接触する(
図11(c)参照)。
【0081】
図11(d)に示すように、第2の工程(脱気工程)では、支持台100の吸引孔102から空気を吸引することにより、電池セル11zの一方側である台座52側から電池セル11zとフィルム51との間を脱気して、軟化したフィルム51を電池セル11zの表面に密着させる。軟化したフィルム51が電池セル11の底面11bに接触した状態で脱気すると、フィルム51は電池セル11の底面11bを起点として下側に向かって引き伸ばされる。このとき、主たるフィルム密着保持面である電池セル11の側面11dが脱気方向に対して側方に位置している。フィルム51が引き伸ばされ難い場合は、側面から加熱しながら引き伸ばして密着させてもよい。
【0082】
上記脱気工程により、フィルム51は深絞り状態に引き伸ばされ、伸張状態で電池セル11の側面11c,11dに密着すると共に、電池セル11の側面11c,11dから上面11aにスムーズに回り込み、台座52の側面にも密着する。即ち、フィルム51は、電池セル11と、電池セル11よりも外周長が短い台座52とに跨って密着する。電池セル11と台座52の寸法差が大きい場合、フィルム51は、台座52に密着する部分が、電池セル11に密着する部分に比べて大きく窄まる。このため、台座52に密着する部分にブリッジ55(
図12参照)が形成される場合がある。但し、ブリッジ55は電池セル11の側面11c,11dを覆う部分に形成されるものではなく上面11aを覆う部分に形成される内面密着部29の一種であるから、フィルム51を固定する機能を有し、フィルム51の剥がれをより一層抑制する。以下では、フィルム被覆物品の上面(電池セルの上面を覆う部分)に形成されるブリッジを、側面ブリッジと区別して「上面ブリッジ」という場合がある。
【0083】
フィルム51は、台座52側に引き伸ばされ、伸張した状態で電池セル11の側面11c,11d、台座52の側面に対して不離一体に密着するため、電池セル11の底面11bにおける厚さよりも側面11c,11dや台座52の側面における厚さが薄くなる。フィルム51の厚みは、脱気前と比べて、例えば底面11bを被覆する部分で70%〜98%程度、側面11c,11dを被覆する部分で20%〜65%程度になる。即ち、フィルム51は、側面11c,11d等に対して大きく引き伸ばされた状態で密着するため高い密着性が得られる。一方、底面11bにおけるフィルム51の厚みは、側面11c,11dや台座52の側面における厚みよりも厚くなるため、外的接触に対する高い耐久性が得られる。
【0084】
図11(e)に示すように、長尺状のフィルム51を電池セル11zの近傍で切断する粗カット工程を第2の工程後に設けている。本工程では、長尺状のフィルム51により繋がった複数のフィルム被覆物品50xの周囲にカット線53を環状に形成して、互いに分離されたフィルム被覆物品50yを作製する。カット線53は、電池セル11zに密着した部分に形成されるものではないため、生産性等の観点から、トムソン刃等の刃物104を用いて形成することが好適である。但し、レーザー光αの照射によりカット線53を形成することも可能である。フィルム被覆物品50yには、台座52の周りにフィルム51の余剰部分54が存在する。フィルム被覆物品50yは、例えばロボットアームを用いてレーザーカットを行う場所に搬送される。
【0085】
図12は、レーザーカット工程(第3の工程)を示す図である。
第3の工程では、粗カットされたフィルム51にレーザー光αを照射して所望の位置で当該フィルムを切断し、フィルム51の余剰部分54を切除する。本実施形態では、台座52の側面に密着した範囲にレーザー光αを照射する。レーザー光αは、台座52の各側面に沿って横方向に連続的に照射される。台座52の周りにレーザー光αを環状に照射することにより、レーザー光αが照射された部分でフィルム51が切断され、レーザー光αの照射部よりも上に位置する部分が余剰部分54として切除される。レーザー光αの照射は、レーザー光αの照射スポットと電池セル11zとを相対的に移動させて行うが、例えばレーザー光αを走査してもよいし、ロボットアーム等を用いて電池セル11z側を動かしてもよい。
【0086】
フィルム51にレーザー光αを照射すると、フィルム51にレーザー光αが吸収されて照射部に熱が発生し、これによりフィルム51が溶融して切断される。フィルム51の場合、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするB層22にはレーザー光αが殆ど吸収されないが、レーザー光αはA層21に吸収されるため、レーザー光αの照射部で熱が発生し、その熱がB層22にも伝わってフィルム51が切断される。
【0087】
レーザー光αは、上記脱気工程によりフィルム51が引き伸ばされて厚みが薄くなった部分に照射することが好適である。特に、脱気前よりもフィルム51の厚みが20%以上薄くなった薄肉部にレーザー光αを照射することが好適である。具体的には、フィルム51が大きく引き伸ばされて厚みが薄くなる脱気口の近傍、例えば台座52に密着する部分に対してレーザー光αを照射する。
【0088】
フィルム51の台座52に密着する部分には、上記のように、上面ブリッジであるブリッジ55が形成される場合がある。上面ブリッジはフィルム51の剥がれを抑制する効果があるため、上面の少なくとも一部においてむしろ形成されることが好ましいが、その部分でフィルム51を切断し難いという問題がある。しかし、レーザーカット工程を適用することにより、上面ブリッジが形成された部分においてもフィルム51を容易に切断し、余剰部分54を切除することができる。
【0089】
第3の工程では、樹脂フィルムのレーザーカットに用いられる従来公知のレーザー装置を用いることができる。好適なレーザー装置としては、CO2レーザー(波長9.3μm、又は波長10.6μm)、YAGレーザー(1064nm)及びYVO4レーザー(1064nm)が挙げられる。レーザー装置は、パルス発振方式、連続発振方式のいずれであってもよく、レーザー出力や照射時間等の条件はカット適正等を考慮して適宜設定できる。
【0090】
図13に、フィルム被覆物品50を用いた電池モジュール110を示す。
図13に例示するように、電池モジュール110は、角形の電池セル11をフィルム12で被覆したフィルム被覆電池であるフィルム被覆物品50と、絶縁性のスペーサ111と、一対のエンドプレート112とを備える。フィルム被覆物品50とスペーサ111が電池セル11の短辺方向に沿って交互に積層されることで電池ブロック113が構成されており、電池ブロック113の両端にエンドプレート112が配置されている。一対のエンドプレート112の間には図示しない締結部材が架設され、これにより電池ブロック113を構成する各フィルム被覆物品50及び各スペーサ111が結束される。
【0091】
電池モジュール110では、電池セル11の電極端子13が同じ方向を向くように各フィルム被覆物品50が配列されている。また、+側の電極端子13と−側の電極端子13がフィルム被覆物品50の積層方向に沿って交互に真っ直ぐ並ぶように、隣り合うフィルム被覆物品50同士は互いに向きを180°変えて積層されている。そして、隣り合うフィルム被覆物品50の+側の電極端子13と−側の電極端子13とが、例えば、図示しないバスバーを介して接続される。電池モジュール110は、例えば、電池ブロック113を収容するケースを備える。
【0092】
電池モジュール110を構成するフィルム被覆物品50は、上述のように、側面ブリッジを有さず、特に電池セル11の外装であるアルミニウム金属との密着性が良好なポリカーボネート系ウレタン樹脂が樹脂層19として設けられているため電池セル11の表面に対するフィルム12の密着性が良好であり、両者の間に空気層が殆ど形成されない。フィルム被覆物品50を用いることで、側面ブリッジに起因して発生する不具合、例えば、絶縁性や熱伝導性の低下、モジュール化の際に規定スペースに収容できなくなるといった不具合を防止できる。また、電池とフィルムとの間に大きな空気層が形成されると、充放電により電池が発熱したときに空気層が断熱層として機能し熱がこもるため、電池性能が低下することが考えられるが、フィルム被覆物品50の場合は当該空気層が殆ど形成されないため、電池セル11の放熱性が向上し、電池性能を十分に発揮することが可能となる。また、電池セル11を冷却又は加熱する温調装置が設けられている場合、フィルム被覆物品50を用いることで、電池温度の制御性が向上する。さらに、フィルム被覆物品50によれば、電池セル11とフィルム12との間に水分が浸入し難く、良好な防水性能、絶縁性能を確保することができる。かかる特徴を有する電池モジュール110は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車等の車載用動力用電源に好適である。
【0093】
図14に、実施形態の他の一例であるフィルム被覆物品70yを示す。
図14では、電池セル71に台座73が取り付けられた状態のフィルム被覆物品70yを示している。フィルム被覆物品70yを構成する電池セル71は、電池セル11と同様に角形であり、上面71a、底面71b、及び4つの側面71c,71dを有するが、電池セル11と比べて厚みが薄く、例えば、短辺の長さX(厚み)が1mm〜5mmである。電池セル71の短辺の長さXと長辺の長さYと高さZとの関係は、X<Y<Zとなっている。即ち、面積の大きい順に、側面71d、側面71c、上面71a及び底面71bとなっている。電池セル71の用途としては、携帯電話、タブレット、デジタルカメラ等の小型で薄型の電子機器用電源が挙げられる。電極端子(図示せず)は、例えば、上面71a及び底面71bにそれぞれ設けられる。なお、電池セル71を被覆するフィルム72は、フィルム12と同様の多層フィルム18及び樹脂層19を有する。
【0094】
フィルム被覆物品70yでは、フィルム72が電池セル71の4つの側面71c,71d、及び底面71bの全体に密着している。底面71bには電極端子が設けられているので、例えば、後工程でフィルム72の底面71bを覆う部分の一部を切除し、当該電極端子を露出させる。
図14に示す例では、台座73が上面71aに取り付けられており、台座73の側面もフィルム72で被覆されている。フィルム被覆物品70yは、例えば、台座73を取り付けた電池セル71を支持台100上に載置し、加熱したフィルム72を電池セル71の底面71b側から被せ、上面71a側から電池セル71とフィルム72との間を脱気することにより得られる。
【0095】
図14に示す台座73は、上端部及び下端部が平坦で、上端部の面積が電池セル71の上面71aの面積よりも小さな柱状部材である。台座73は、その上端部が電池セル71の上面71aから食み出さないように上面71aに取り付けられる。なお、電池セル71と台座73の境界には、それぞれの外周長の差に起因して段差が形成される。台座73は、上下方向(高さ方向)に長く延びており、その高さは電池セル71の上下方向長さの25%以上であることが好ましい。台座73の下端部の面積は上端部の面積よりも大きく、柱状である台座73の太さは上から下に向かって次第に太くなっている(側面の周長は次第に長くなっている)。電池セル71のように厚みが薄い物品の場合、電池セル11の場合よりもさらに側面ブリッジが形成され易く、例えば、フィルム12の側面71cに密着する部分に側面ブリッジが形成され易い。しかし、フィルム被覆物品70yでは、高さが高い台座73を用いることにより、台座73に密着する部分にブリッジ74が形成され、側面ブリッジは形成されない。なお、
図15に示すように、高さが低い台座75を用いた場合は、側面ブリッジであるブリッジ76が形成され易くなる。
【0096】
フィルム72を台座73の側面に密着する部分でレーザー光α等を用いて切断し、台座73を取り外すことにより、例えば、上面71aの周縁部にフィルム72が密着すると共に、上面71aの電極端子が露出する。このとき、ブリッジ74が形成された部分でフィルム72が切断されるが、レーザーカットを適用することによりフィルム72を容易に切断することができる。上面ブリッジであるブリッジ74は、内面密着部29の一種であるから、フィルム72を固定する機能を有し、フィルム72の剥がれをより一層抑制する。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
<実施例1>
多層フィルムには、特開2013-111822号公報に記載の方法に準じて作成した多層フィルム(総厚:100μm)を用いた。ポリカーボネート系ウレタン樹脂から構成される樹脂層は、多層フィルムの内層上にポリカーボネート系ウレタンエマルジョン(三洋化成工業製、パーマリンUA−368)を主成分とするウレタン系水性インキをグラビア印刷し、乾燥して形成した。上記多層フィルム及び上記樹脂層を含むフィルムの層構造、各層の組成等は、以下の通りである。
層構造:樹脂層/内層/接着層1/基層部1/コア層/基層部2/接着層2/外層
樹脂層(2.0μm):ポリカーボネート系ウレタン樹脂
内層(13.0μm):ポリアミド系樹脂(宇部興産製、1030B)
接着層1(20.0μm):ポリエチレン系樹脂(三井化学製、NF536)
基層部1:ポリアミド系樹脂(A層:4.0μm、宇部興産製、1030B)、ポリエチレン系樹脂(B層:2.0μm、三井化学製、NF536)、A層/B層が交互に合計で8層(4つの隣接して積層された複層部を含む)
コア層(4.0μm):ポリアミド系樹脂(宇部興産製、1030B)
基層部2:ポリエチレン系樹脂(B層:2.0μm、三井化学製、NF536)、ポリアミド系樹脂(A層:4.0μm、宇部興産製、1030B)、B層/A層が交互に合計で8層(4つの隣接して積層された複層部を含む)
接着層2(6.0μm):ポリエチレン系樹脂(三井化学製、NF536)
外層(9.0μm):LLDPE(宇部興産製、1520F)
【0099】
物品には、略矩形形状(150mm×100mm×25mm)のアルミニウム製ブロックを用いた。当該ブロックは、上面と下面、及び4つの側面を有する。上面及び下面は、短辺と長辺とを有し、4つの側面は短辺側の側面と長辺側の側面とからなる。面積の大きい順に、長辺側の側面、上面及び下面、短辺側の側面となっている。
【0100】
フィルム被覆物品A1は、以下のようにして作製した。
まず、上記ブロックの上面に加熱により軟化した上記多層フィルムを被せる。続いて、多層フィルムを被せたブロックの下面側から吸引して、ブロックと多層フィルムとの間の空気を脱気する。これにより、多層フィルムが伸展されてブロックの側面及び下面の全体に密着したフィルム被覆物品A1が得られる。脱気工程では、長辺側の側面を脱気方向に対して側方に位置させた。なお、本実施例・比較例は、側面ブリッジ及びフィルムの浮きの有無を検証するものであり、上記ブロックの全体を覆うように多層フィルムを被覆した。
【0101】
図16は、フィルム被覆物品A1の外観を撮影した写真である。この写真は、側面ブリッジが発生し易い部分である脱気側の角部近傍を撮影したものである。この写真から良く解るように、フィルム被覆物品A1では、脱気側の角部近傍においても側面ブリッジが全く形成されておらずフィルムが良好に密着しており、美麗な包装形態を実現している。さらに、フィルムの脱気側端部から短辺側の側面に沿ってフィルムをカットし、フィルムの状態を確認したところ、フィルムの浮きは見られず、ブロックの表面にフィルムが密着した状態が維持された。
【0102】
<比較例1>
多層フィルムとして、タマポリ株式会社製の3層フィルム(商品名:ZPX111、総厚:100μm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム被覆物品X1を作製した。比較例1で用いたフィルムの層構造等は、以下の通りである。
層構造:樹脂層/内層/中心層/外層
樹脂層:ポリカーボネート系ウレタン樹脂(2.0μm)
内層:ポリエチレン系樹脂(42.5μm)
中心層:ポリアミド系樹脂(15μm)
外層:ポリエチレン系樹脂(42.5μm)
【0103】
図17は、フィルム被覆物品X1の外観を撮影した写真である。この写真は、
図16と同様に側面ブリッジが発生し易い部分である脱気側の角部近傍を撮影したものである。この写真から良く解るように、フィルム被覆物品X1では、脱気側の角部近傍に大きな側面ブリッジが形成され、フィルム被覆物品A1に比べて見栄えの悪い包装形態となった。
【0104】
<比較例2>
フィルムとして、樹脂層の無い実施例1の多層フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム被覆物品X1を作製した。フィルム被覆物品X1ではフィルムは密着するものの、ブロック上面付近にフィルムの浮きが発生し、ブロックとフィルムとの間に空気層が確認された。
【0105】
上記のように、比較例1のフィルム被覆物品X1では、側面ブリッジが発生し、比較例2のフィルム被覆物品X1では、フィルムの浮きが発生した。これに対して、実施例1のフィルム被覆物品A1では、側面ブリッジが発生することなく、脱気側の角部近傍においてもフィルムが良好に密着してフィルムの浮きも確認されず、ブロックとフィルムとの間に空気層が略無い美麗な包装形態を実現することができた。
【0106】
<実施例2>
多層フィルムのコア層の素材をポリアミド系樹脂からEVOH樹脂(クラレ製、J171B)に代えた以外は、実施例1と同様にしてフィルム被覆物品A2を作製した。フィルム被覆物品A2もフィルム被覆物品A1と同じく、側面ブリッジ及びフィルムの浮きは確認されず、美麗な包装形態を実現した。
【0107】
<比較例3>
フィルムの樹脂層の素材をポリカーボネート系ウレタン樹脂からポリエステル系ウレタン樹脂に代えた以外は、実施例1と同様にしてフィルム被覆物品X2を作製した。フィルム被覆物品X2ではポリエステル系ウレタン樹脂層の割れが発生して密着せずにフィルムの浮きが発生した。
【0108】
<比較例4>
フィルムの樹脂層の素材をポリカーボネート系ウレタン樹脂からアクリル系樹脂に代えた以外は、実施例1と同様にしてフィルム被覆物品X2を作製した。フィルム被覆物品X2ではアクリル系樹脂層の割れが発生して密着せずにフィルムの浮きが発生した。
【0109】
<実施例3>
接着層1の厚みを15μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製した。本実施例では、吸引孔を有する支持台上に台座を配置し、その台座上に上記ブロックを載置してフィルムを装着する。以下では、当該ブロックの台座に接する面を上面、台座と反対側の面を下面とする(支持台に接する台座の面は上面)。
【0110】
フィルム被覆物品A5は、以下のようにして作製した。
まず、上記ブロックを台座(x:130mm×z:30mm×y:15mm)上に載置し、ブロックの下面に加熱により軟化した上記フィルムを被せる。上記ブロックは、その各辺X、Z、Yと、台座の対応する各辺x、z、yとがそれぞれ略平行となるように配置した。続いて、フィルムを被せたブロックの上面側(台座側)から吸引して、ブロックとフィルムとの間の空気を脱気する。脱気工程では、長辺側の側面を脱気方向に対して側方に位置させた。次に、脱気工程によりブロック及び台座の表面に密着したフィルムのうち、台座部分のフィルムに、下記の条件でレーザー光を照射して当該フィルムを切断し、フィルム被覆物品A5を得た。
レーザー装置:CO2レーザーマーカ(パナソニック株式会社製「LP400」)
波長:9.3μm
出力:16W
走査速度:100mm/sec.
レーザー光の照射位置:台座の下面(ブロックの上面)から1mm上方
レーザー光の照射位置におけるフィルムの平均厚み:60μm
【0111】
ブロックに密着したフィルムは、上記レーザー光の照射により所望の位置で容易に切断され、またその切断端縁の状態も良好であった。フィルムの台座に密着する部分には、上述したように上面ブリッジが形成され易いが(本実施例においても
図12に示すような上面ブリッジが形成された)、本実施例では上面ブリッジ部分も容易にレーザーカットすることが可能であった。フィルム被覆物品A3もフィルム被覆物品A1と同じく、側面ブリッジ及びフィルムの浮きは確認されず、美麗な包装形態を実現した。フィルムの台座に密着する部分に形成された上面ブリッジは、フィルムを固定し、フィルムの剥がれをより一層抑制する。
【0112】
<比較例4>
比較例1で使用したフィルムを用い、且つ下記のレーザー装置を用いた以外は、実施例3と同様にしてフィルム被覆物品X4を作製した。
レーザー装置:CO2レーザーマーカ(株式会社キーエンス製「3−Axis」)
波長:10.6μm
出力:80W
走査速度:50mm/sec.
この場合も、フィルムをレーザーカットすることが可能であった。しかし、フィルム被覆物品A3と比べてそのフィルム切断端縁の状態は煤が付着し且つ粗いものであり好ましいものではなかった。また、フィルム被覆物品X4ではフィルム被覆物品X1と同じく、側面ブリッジ及びフィルムの浮きが発生し、実施例のフィルム被覆物品に比べて見栄えの悪い包装形態となった。なお、実施例3と同一のレーザー装置を用い同一条件でフィルムの切断を試みたが切断できず、上述のとおり、より高出力のレーザー装置を用い、且つ走査速度を遅くすることでレーザーカットが可能となったものである。