(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述した問題をふまえ、高温条件下でも触媒作用を発揮することができる、触媒金属を含有した酸化チタン触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、酸化チタンのナノ粒子である一次粒子が凝集した酸化チタンナノ粒子凝集体と、該酸化チタンナノ粒子凝集体および前記一次粒子の粒子径よりも小さな粒子径を有
する触媒金属とで構成され、前記触媒金属の粒子径が1nm以上10nm以下であり、前記一次粒子の粒子径が前記触媒金属の粒子径の2倍以上であるとともに、前記一次粒子の粒子径が50nm以下で構成され、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面には、隣接する3個以上の前記一次粒子によって、前記触媒金属が担持できるとともに、担持された前記触媒金属の移動を拘束できる深さの凹部が複数形成され、前記触媒金属が、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に
形成された前記凹部に分散して担持
された酸化チタン触媒であることを特徴とする。
【0010】
また、この発明は、
粒子径が50nm以下である、酸化チタンのナノ粒子で構成された一次粒子を凝集させ、
隣接する3個以上の前記一次粒子によって複数の凹部を表面に形成させた酸化チタンナノ粒子凝集体を生成する凝集工程と、
前記触媒金属の粒子径が1nm以上10nm以下であるとともに、前記一次粒子の粒子径の2分の1以下である触媒金属を、前記酸化チタンナノ粒子凝集体
の表面に形成された前記凹部に担持させる工程とを有し、
前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面の前記凹部は、担持された前記触媒金属の移動を拘束できる深さに形成される酸化チタン触媒の製造方法とすることができる。
【0011】
前記ナノ粒子は、粒子径が1nm以上100nm以下の大きさを有するナノサイズの粒子をさす。すなわち前記一次粒子は、粒子径が1nm以上100nm以下の大きさを有するナノサイズの酸化チタンの粒子である。
【0012】
前記粒子径は、ナノ粒子のそれぞれ大きさのみならず、複数のナノ粒子の粒子径を測定して算出した平均値を含む。
【0013】
また前記酸化チタンナノ粒子凝集体とは、球状体、筒状体、薄膜状などを含めた板状体、円柱状、階層構造を有している場合の他、規則性なく凝集した形状などが含まれる。換言すると、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の外観は特定の形状を形成しているものではなく、例えば中実状の形状や中空状の形状などの球状体や板状体や円柱状体なども含まれる。すなわち、本明細書でいう酸化チタンナノ粒子凝集体は、いかなる外観を備えた酸化チタンナノ粒子凝集体も含まれる。
【0014】
前記触媒金属とは、鉄(Fe)やイリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、鉛(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)などの金属や、これらの合金、これらの金属などを含む錯体など触媒活性を有する化合物なども含まれる。すなわち、触媒活性を有する金属や金属を含有する化合物も含まれる。
なお、前記触媒金属は、前記酸化チタンナノ粒子凝集体よりも小さいだけでなく、前記一次粒子よりも小さいナノ粒子サイズの金属粒子である。
【0015】
また、前記担持工程は、スパッタリング法や湿式法などの前記触媒金属を前記酸化チタンナノ粒子凝集体に担持する方法を含むものであり、特に方法を限定するものではない。すなわち、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に前記触媒金属を担持する方法であればどのような方法であってもよい。
【0016】
この発明によれば、前記触媒金属を含有する前記酸化チタン触媒は、前記触媒金属がシンタリングを発生する高温条件下においても所望の触媒作用を発揮することができる。
詳述すると、前記酸化チタンナノ粒子は比表面積が大きいため、前記酸化チタンナノ粒子の凝集体である前記酸化チタンナノ粒子凝集体の比表面積は、同サイズの酸化チタン粒子と比べて50倍程度大きく、多数の前記触媒金属を分散させて担持することができる。
【0017】
さらに、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面は、ナノ粒子である前記一次粒子が凝集した集合体であるため、表面全体に多数の凹凸形状が形成されている。このため、例えば、触媒反応による熱や意図的に加えた熱などにより表面に担持された前記触媒金属が移動しても、前記触媒金属は前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面全体に形成される各凹部に担持される。各凹部に担持された前記触媒金属は各凹部と隣接する凸部により移動が拘束されるため、各凹部に安定して担持される。このため、高温条件下であっても前記金属触媒は前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面で一定の分散度合を維持することができる。
【0018】
また、前記一次粒子の凝集体である前記酸化チタンナノ粒子凝集体は、表面に複数の凹凸形状を有しているため、前記酸化チタンナノ粒子凝集体は同じサイズの酸化チタン粒子に比べて表面積が大きく、多数の前記触媒金属を担持することができる。
したがって、前記触媒金属を含有する前記酸化チタン触媒は、前記触媒金属がシンタリングを起こす高温条件下においても所望の触媒作用を発揮することができる。
【0019】
また、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に所望の凹凸形状を形成することができる。
詳述すると、前記一次粒子の粒子径が2nm未満である場合、一次粒子が凝集して形成された酸化チタンナノ粒子凝集体において、隣接する一次粒子同士が形成する凹部の底と凸部の頂点までの高さが触媒金属の大きさに対して低くなり、前記凹部に担持された前記触媒金属の移動を拘束することができない。このため、触媒反応の際に生じる反応熱や触媒反応に要する熱により、前記凹部に担持した前記触媒金属が前記凸部を超えて移動し、他の触媒金属と凝集してシンタリングすることとなる。このようなシンタリングが生じた場合には、前記触媒金属は肥大化し、ナノ粒子としての機能を失うとともに、触媒金属の表面積が減少するため、前記酸化チタン触媒の触媒活性が低下することとなる。
【0020】
また、前記一次粒子の粒子径が50nm以上となると、所定の大きさに対する酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に形成され凹凸の個数は前記一次粒子の粒子径が小さい場合に比べて減少することとなる。このため、前記凹部の深さは深くなるが、触媒金属は酸化チタンナノ粒子凝集体の多くが凸部に担持されることとなり、触媒反応が起きた場合には、凸部に担持している触媒金属同士が凝集したり、少数の凹部に触媒金属が多く凝集したりし、これらの触媒金属がシンタリングされることにより、前記酸化チタン触媒の触媒活性が低下することとなる。
【0021】
このことから、前記一次粒子の粒子径を2nm以上50nm以下とすることで凹部に担持された前記触媒金属の移動を拘束できる深さの凹凸形状を、十分な数形成することができる。したがって、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に担持された前記触媒金属同士が過度に凝集してシンタリングすることなく、触媒作用をより効率よく発揮することができる前記酸化チタン触媒とすることができる。
【0022】
なお、前記一次粒子の粒子径が20nm以上であれば、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に形成される凸部が十分な高さを有するとともに適度な数となり、熱が加わることなどによる熱振動があっても、触媒金属の移動をより拘束することができるため、前記触媒金属は凸部を超えることができず、凹部に確実に担持されることとなる。
【0023】
また、前記一次粒子の粒子径が40nm以下である場合には、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に前記触媒金属の移動を拘束するのに十分な深さを有する凹部を形成することができるだけでなく、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に凹部が多数形成され、十分な個数の前記触媒金属を凹部に担持することができる。
したがって、前記一次粒子の粒子径が、20nm以上40nm以下である方が好ましい。
【0024】
また、前記酸化チタン触媒の表面が高温条件となった場合であっても、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に担持された前記触媒金属の凝集およびシンタリングを防ぐことができる。
【0025】
詳述すると、酸化チタンナノ粒子凝集体において隣接する前記一次粒子同士が形成する凸部の高さが、前記触媒金属の大きさに比べて十分な大きさを有するため、例えば、触媒反応によって生じる反応熱などがある場合でも、隣接する前記一次粒子同士が形成する凹部に担持された前記触媒金属の移動を前記凸部により制限することができる。
したがって、前記触媒金属の凝集およびシンタリングを防ぐことができ、効率の良い触媒作用を有することができる。
【0026】
また、この発明は、前記触媒金属を担持させた前記酸化チタンナノ粒子凝集体を熱処理する熱処理工程を有することができる。
この発明により、前記触媒金属を前記酸化チタンナノ粒子凝集体に表面に担持させたのちに熱処理をすることにより、前記触媒金属が前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に形成される多数の凹部に分散して担持でき、所望の触媒作用を安定して有することができる。
【0027】
詳述すると、酸化チタン触媒は、高温条件下で前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に形成される凸部にも十分な数の触媒金属が分散配置されている。このため、例えば高温条件下で行う二酸化炭素の水素化反応の触媒として前記酸化チタン触媒を利用した場合、始めは優れた触媒作用を有するが、時間経過とともに凸部に担持する前記触媒金属が各凹部移動して担持されることとなる。このため、凹部によってはナノ粒子である金属触媒が凝集することがある。このため、前記酸化チタン触媒の触媒活性が下がる。すなわち、この酸化チタン触媒では触媒活性が安定していない。
【0028】
これに対して、前記酸化チタンナノ粒子凝集体に前記触媒金属を担持させたのちに、高熱条件下で前記酸化チタン触媒を所定の時間放置することにより、例えば凸部に担持されている前記触媒金属は、近辺の凹部に移動し担持されることができ、前記触媒金属を、予め隣接する前記一次粒子同士が形成する各凹部に担持させた酸化チタン触媒とすることができる。
【0029】
このように、各凹部に担持されている前記触媒金属は、前記凹部に隣接して取り囲む凸部により移動が拘束されるため、安定して各凹部に分散して担持されることとなり、触媒反応時に生じる高熱などにより前記触媒金属が移動しようとしても、前記触媒金属は凸部を超えることをできず、隣接する凹部に担持された前記触媒金属同士がシンタリングされることない。
【0030】
したがって、前記酸化チタン触媒は、前記触媒金属が前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に形成される各凹部に分散配置されているとともに、高温条件下でも前記触媒金属が移動してシンタリングなどを起こすことがないため、所望の触媒作用を安定して有することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記触媒金属の含有量が、前記酸化チタンナノ粒子凝集体と前記触媒金属との合計100重量%あたり、1重量%以上40重量%以下とすることができる。
また、前記触媒金属の含有量が、前記酸化チタンナノ粒子凝集体と前記触媒金属との合計100重量%あたり、5重量%以上10重量%以下である方が好ましい。
【0032】
この発明により、触媒がより効率よく作用することができる前記酸化チタン触媒とすることができる。
詳述すると、例えば、前記酸化チタンナノ粒子凝集体と前記触媒金属との合計質量を100重量%とした際の100重量%に対して、前記触媒金属の含有量が1重量%未満である場合、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に担持する前記触媒金属の量が少なく、十分に有効な触媒作用を有さない。
【0033】
また、前記触媒金属の含有量が40重量%より大きい値であると、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に多くの前記触媒金属が担持されるため、触媒反応による反応熱により隣接する一部の前記触媒金属同士が凝集してシンタリングをすることとなり、触媒作用の効率が下がることとなる。
【0034】
したがって、前記触媒金属の含有量を、前記酸化チタンナノ粒子凝集体と前記触媒金属との合計100重量%に対して、1重量%以上40重量%以下とすることにより、前記酸化チタン触媒は触媒として十分な機能を有するとともに、触媒作用を効率よく発揮することができる。
【0035】
なお、前記触媒金属の含有量が5重量%以上10重量%以下である場合には、前記触媒金属を十分に含有しているとともに、前記触媒金属の凝集およびシンタリングが起きる可能性の低い触媒とすることができ、より効率的な触媒作用を有する前記酸化チタン触媒とすることができる。
【0036】
さらにまたこの発明の態様として、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の粒子径が100nm以上2000nm以下とすることができる。
より好ましくは、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の粒子径が400nm以上800nm以下である。
【0037】
この発明により、十分な触媒作用を発揮することができる酸化チタン触媒を製造することができる。
詳述すると、粒子径が100nm以下とすると、前記酸化チタン触媒を所定の大きさの空間に充填した際に酸化チタン触媒の充填率が高くなり、すなわち、空間内の前記酸化チタン触媒が高密度となり、表面が露出しない酸化チタン触媒が多くなる。このため、表面に担持する前記触媒金属が隠れてしまい、十分な触媒活性が得られないこととなる。すなわち、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の粒子径を100nm以上にすることにより、前記酸化チタンナノ粒子凝集体に担持させた触媒金属が、内部に埋もれることなく外気と接触させることができ、十分な触媒作用を発揮することができる前記酸化チタン触媒とすることができる。
【0038】
また、粒子径が2000nmより大きい前記酸化チタンナノ粒子凝集体を用いて製造した前記酸化チタン触媒の転化率と、粒子径が2000nm以下の前記酸化チタンナノ粒子凝集体を用いて製造した前記酸化チタン触媒の転化率を比較したところ、触媒作用が大きく向上しない。しかし、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の粒子径が2000nmより大きくするためには前記酸化チタンナノ粒子凝集体の製造に時間を要することとなる。
【0039】
このため、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の粒子径を2000nmよりも大きくすることは時間を要するが、触媒作用を向上させることとならない。すなわち、前記酸化チタンナノ粒子凝集体を2000nm以下とすることで時間や費用を削減することができる。
したがって、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の粒子径が100nm以上2000nm以下とすることで十分な触媒作用を発揮することができるとともに、その製造にかかる時間や費用を削減することができる。
【0040】
さらにまたこの発明の態様として、前記触媒金属を、Ru、Pt、Pd、Au、Ag、Cu、Ni、Fe、Ir、Rh、Reの中から選ばれた少なくとも1種とすることができる。
この発明により、前記触媒金属を含有する酸化チタン触媒は、二酸化炭素と水素からメタンと水を生成することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、高温条件下でも所望の触媒作用を発揮することができる触媒金属を含有した酸化チタン触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は酸化チタン触媒1の構造を説明するための説明図を示し、
図2は実施例1で製造された試料1のTEM画像を示し、
図3は比較例1および実施例1で製造された試料1のTEM画像を示す。
図4は実施例1で製造した試料1のEDXマッピング写真であり、
図5は実施例1で製造した試料1のX線回折データである。
【0044】
詳述すると、
図2は実施例1で製造された試料1の低分解能TEM画像であり、図の横幅の0.12倍の大きさが100nmとなるように拡大表示されている。
図3(a)は比較例1で製造した比較試料1を焼成する前の高分解能TEM画像を示し、
図3(b)は比較例1で製造した比較試料1を焼成した後の高分解能TEM画像を示す。また、
図3(c)は実施例1で製造した試料1を焼成する前の低分解能TEM画像であり、
図3(d)は実施例1で製造した試料1を焼成する前の高分解能TEM画像であり、
図3(e)は実施例1で製造した試料1を焼成した後の低分解能TEM画像であり、
図3(f)は実施例1で製造した試料1を焼成した後の高分解能TEM画像を示し、それぞれのスケールサイズを各図中の左下部に表示する。
【0045】
図4(a)は実施例1で製造した試料1を焼成する前のRu元素の分布を示すEDXマッピング写真を示し、
図4(b)は実施例1で製造した試料1を真空中において300℃で焼成した後のRu元素の分布を示すEDXマッピング写真を示し、
図4(c)は実施例1で製造した試料1を真空中において400℃で焼成した後のRu元素の分布を示すEDXマッピング写真を示す。
図5は焼成前の試料1および、真空中および空気中において300℃および400℃で試料1を焼成した後のX線回折データを示す。
【0046】
酸化チタン触媒1の構成について
図1に基づいて簡単に説明する。
酸化チタン触媒1は、
図1に示すように、ナノサイズに形成した酸化チタンナノ粒子11が複数凝集して形成される酸化チタンナノ粒子凝集体10と、その表面に担持されるナノサイズに形成された触媒金属であるルテニウム粒子20とで構成する。
【0047】
酸化チタンナノ粒子凝集体10は、粒子径は100nm〜2000nmの球状の粒子であり、複数の酸化チタンナノ粒子11が凝集して形成されている。そのため、酸化チタンナノ粒子凝集体10の表面には、凸部101と凹部102とが形成される(
図1(a)参照)。
【0048】
酸化チタンナノ粒子11は、粒子径2〜50nmの球状ナノ粒子である。
ルテニウム粒子20は、
図1(a)に示すように、触媒として作用する原子であるルテニウムを粒子径が2〜10nmであるナノメートルサイズの粒子状にしたものであり、酸化チタンナノ粒子凝集体10の表面に形成される凹部102に担持されている(
図1(b)参照)。
【0049】
以下、酸化チタン触媒の製造方法および、当該製造方法で合成された酸化チタン触媒について説明する。
なお、本発明の酸化チタン触媒の製造方法は当該製造方法に限定されるわけでなく、他の製造方法としても良い。また、本発明の酸化チタン触媒は、当該製造方法で製造された酸化チタン触媒に限定されるものではなく、例えば他の製造方法で製造された酸化チタン触媒でも良い。
【0050】
本実施形態における酸化チタン触媒の製造方法は、超臨界流体中でチタン化合物とカルボン酸とを反応させる反応工程と、当該工程により製造された酸化チタンナノ粒子凝集体に触媒金属を担持させる担持工程とを行う製造方法である。
なお、超臨界流体とは、物質固有の臨界温度や臨界圧力を超えた状態にある流体をいい、気体と液体の中間の物理的性質を備えている。
【0051】
本実施形態においては、超臨界流体として超臨界メタノールを用いた。超臨界メタノールを用いることにより、ナノ粒子である酸化チタンナノ粒子の一次粒子同士が分離することなく球状多孔質の無機酸化物ナノ粒子(酸化チタンナノ粒子凝集体10)を合成することができる。
【0052】
メタノールに対するチタン化合物の濃度は、0.01〜1.0mol/Lとする。
さらにまた、本発明において、無機化合物であるチタン化合物と反応させるカルボン酸はオルトフタル酸としたが、オルトフタル酸以外のカルボン酸としてギ酸を用いることもできる。
【0053】
上記のカルボン酸を、超臨界メタノール中で上記チタン化合物と反応させることにより、一次粒子同士が分離することなく球状多孔質の酸化チタンナノ粒子凝集体10を製造することができる。
なお、上記のカルボン酸のメタノールに対する濃度としては、0.05〜5.0mol/Lとすることが好ましい。
【0054】
次に、担持工程において酸化チタンナノ粒子凝集体10に対して金属ナノ粒子であるルテニウム粒子20を担持させる方法を記載する。本実施例において、触媒金属を担持させる方法として湿式合成法を用いた。
【0055】
湿式合成法は、アルコール、トリエタノールアミン、アスコルビン酸、クエン酸、シュウ酸等の有機系還元剤や、水素化ホウ素ナトリウム等の無機系還元剤などの還元剤を、触媒担体と触媒金属とを混ぜ合わせた溶液に加えて反応させる方法である。
【0056】
具体的には、触媒担体である酸化チタンナノ粒子凝集体と触媒である金属の無機塩を水またはアルコール内で混ぜ合わせて前駆体溶液とし、この前駆体溶液と上記還元剤とを室温あるいは60℃程度の加熱条件下で反応させることで金属触媒を担持した酸化チタン触媒を合成することができる。反応時間は数時間から1日程度である。反応後は、遠心分離機を用いて酸化チタン触媒と還元剤を含む前駆体溶液とを遠心分離し、沈殿した酸化チタン触媒を回収する。この回収した酸化チタン触媒を、水あるいはアルコール等で数回洗浄した後に、室温あるいは40〜60℃程度の加熱条件下で減圧乾燥させることで、目的である酸化チタン触媒の紛体を得ることができる。
【0057】
なお本発明では、触媒金属としてRuを用いるが、Ptなどの触媒活性を有する金属であればよく、また、例えばNi、Pd、Au、Ag、Fe、Ir、Cu、Rh、Reなどよい。さらにまた、これらの金属を含む錯体や、化合物であっても良い。すなわち、触媒作用を有する金属又は金属化合物であって、酸化チタンナノ粒子凝集体および一次粒子よりも小さなナノサイズであれば、いかなる化合物であっても良い。
【0058】
また、上記説明において、触媒金属の担持に湿式合成法を用いているが、湿式合成法である必要はなく、例えば、スパッタリング法などでナノサイズの触媒金属を酸化チタンナノ粒子凝集体に担持させても良い。すなわち、所望のサイズである触媒金属を酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に適宜担持できる方法であれば、担持方法はいかなる方法であってもよい。
【0059】
以下で、上述の酸化チタン触媒の製造方法および製造された酸化チタンの実施例について説明する。
【0060】
(実施例1)
有機修飾剤としてオルトフタル酸(C
6H
4(COOH)
2)830mg(和光純薬工業株式会社)を0.5mol/Lとなるように添加したメタノール10mL(和光純薬工業株式会社)に、チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH
3)
2]
4)207mg(東京化成工業株式会社)を撹拌しながら混合した。
【0061】
次に、この溶液を温度300℃、圧力17MPaまで上昇させ、超臨界メタノールとし、10分間反応させ、6600rpmで10分間、遠心分離して得られた沈殿物をデカンテーションにより分離した。さらにこの沈殿物に対して新たにメタノールを加え、遠心分離および沈殿物のデカンテーションの操作を二回繰り返し、沈殿物を0.001KPa(0.01hPa)で12時間乾燥して酸化チタンナノ粒子凝集体の粉体を得た。
【0062】
次に、酸化チタンナノ粒子凝集体100mgと、本発明の触媒とする金属であるRuの無機塩であるRuCl
3・3H
2O(和光純薬工業株式会社)の粉末3.0mgとを水100mlに混ぜ合わせて前駆体溶液を作製し、前駆体溶液に3当量以上の過剰量である還元剤トリエタノールアミンを加えて室温下で3時間反応させた。反応後、遠心分離機を用いて10分間6600rpmで遠心分離することにより、触媒金属の担持した酸化チタンナノ粒子凝集体を沈殿させ、沈殿した触媒金属の担持した酸化チタンナノ粒子凝集体をデカンテーションにより分離した。分離された触媒金属の担持した酸化チタンナノ粒子凝集体は、水あるいはアルコール等で数回洗浄した後、40℃で減圧乾燥させた。
【0063】
これらの作業を行うことにより、実施例1の試料(以下、『試料1』とする。)を得ることができる。ここで得られた試料のRuの担持量はICP−AES法により測定し、試料1のRuの担持量は3.02重量%に相当した。
【0064】
このようにして得られた試料1を、透過型電子顕微鏡(JEM−2100F 日本電子株式会社製)を用いて撮影し得られたTEM画像を
図2に示す。
図2のTEM画像において測長することにより、試料1の酸化チタンナノ粒子凝集体の粒子径などを求めることができる。具体的には、任意の5視野で撮影したTEM画像から対象粒子のサイズを計測し、それらの平均値を算出して求める。このようにして求めた試料1の粒子径は約610nmであるとともに、試料1を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約19nmであり、Ruナノ粒子の粒子径が3.2nmである。
【0065】
(実施例2)
チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH
3)
2]
4)92mg(和光純薬工業株式会社)をメタノール10mL(和光純薬工業株式会社)に撹拌しながら混合すること以外は、実施例1と同様の方法により実施例2の試料(以下、『試料2』とする。)の製造を行った。
【0066】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料2の酸化チタン触媒の粒子径は約580nmであり、試料2を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約8nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が2.9nmであることが分かった。また、ここで得られた試料2のRuの担持量は3.18重量%に相当した。
【0067】
(実施例3)
実施例1において、チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH
3)
2]
4)121mg(和光純薬工業株式会社)をメタノール10mL(和光純薬工業株式会社)に撹拌しながら混合すること以外は、実施例1と同様の方法により実施例3の試料(以下、『試料3』とする。)の製造を行った。
【0068】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料3の酸化チタン触媒の粒子径は約600nmであり、試料3を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約12nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.0nmであることが分かった。また、ここで得られた試料3のRuの担持量は3.21重量%に相当した。
【0069】
(実施例4)
チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH
3)
2]
4)284mg(和光純薬工業株式会社)をメタノール10mL(和光純薬工業株式会社)に撹拌しながら混合すること以外は、実施例1と同様の方法により実施例4の試料(以下、『試料4』とする。)の製造を行った。
【0070】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料4の酸化チタン触媒の粒子径は約610nmであり、試料4を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約28nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が2.8nmであることが分かった。また、ここで得られた試料4のRuの担持量は3.07重量%に相当した。
【0071】
(実施例5)
チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH
3)
2]
4)420mg(和光純薬工業株式会社)をメタノール10mL(和光純薬工業株式会社)に撹拌しながら混合すること以外は、実施例1と同様の方法により実施例5の試料(以下、『試料5』とする。)の製造を行った。
【0072】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料5の酸化チタン触媒の粒子径は約620nmであり、試料5を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約43nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.1nmであることが分かった。また、ここで得られた試料5のRuの担持量は2.95重量%に相当した。
【0073】
(実施例6)
チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH
3)
2]
4)515mg(和光純薬工業株式会社)をメタノール10mL(和光純薬工業株式会社)に撹拌しながら混合すること以外は、実施例1と同様の方法により実施例6の試料(以下、『試料6』とする。)の製造を行った。
【0074】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料6の酸化チタン触媒の粒子径は約640nmであり、試料6を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約54nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.3nmであることが分かった。また、ここで得られた試料6のRuの担持量は3.31重量%に相当した。
【0075】
(実施例7)
チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH
3)
2]
4)725mg(和光純薬工業株式会社)をメタノール10mL(和光純薬工業株式会社)に撹拌しながら混合すること以外は、実施例1と同様の方法により実施例7の試料(以下、『試料7』とする。)の製造を行った。
【0076】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料7の酸化チタン触媒の粒子径は約630nmであり、試料7を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約71nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が2.8nmであることが分かった。また、ここで得られた試料7のRuの担持量は2.87重量%に相当した。
【0077】
(実施例8)
実施例1における酸化チタンナノ粒子凝集体100mgと、本発明の触媒とする金属であるRuの無機塩であるRuCl
3・3H
2Oの粉末1.2mgとを水100mlに混ぜ合わせて前駆体溶液とすること以外は、実施例1と同様の方法により実施例8の試料(以下、『試料8』とする。)の製造を行った。
【0078】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料8の酸化チタン触媒の粒子径は約590nmであり、試料8を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約22nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が1.3nmであることが分かった。さらにまた、ここで得られた試料8のRuの担持量は2.67重量%に相当した。
【0079】
(実施例9)
実施例1における酸化チタンナノ粒子凝集体100mgと、本発明の触媒とする金属であるRuの無機塩であるRuCl
3・3H
2Oの粉末3.9mgとを水100mlに混ぜ合わせて前駆体溶液とすること以外は、実施例1と同様の方法により実施例9の試料(以下、『試料9』とする。)の製造を行った。
【0080】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料9の酸化チタン触媒の粒子径は約620nmであり、試料9を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約24nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が4.0nmであることが分かった。また、ここで得られた試料9のRuの担持量は2.53重量%に相当した。
【0081】
(実施例10)
実施例1における酸化チタンナノ粒子凝集体100mgと、本発明の触媒とする金属であるRuの無機塩であるRuCl
3・3H
2Oの粉末5.2mgとを水100mlに混ぜ合わせて前駆体溶液とすること以外は、実施例1と同様の方法により実施例10の試料(以下、『試料10』とする。)の製造を行った。
【0082】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料10の酸化チタン触媒の粒子径は約580nmであり、試料10を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約28nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が5.3nmであることが分かった。また、ここで得られた試料10のRuの担持量は2.65重量%に相当した。
【0083】
(実施例11)
実施例1における酸化チタンナノ粒子凝集体100mgと、本発明の触媒とする金属であるRuの無機塩であるRuCl
3・3H
2Oの粉末9.8mgとを水100mlに混ぜ合わせて前駆体溶液とすること以外は、実施例1と同様の方法により実施例11の試料(以下、『試料11』とする。)の製造を行った。
【0084】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料11の酸化チタン触媒の粒子径は約580nmであり、試料11を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約24nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が9.6nmであることが分かった。また、ここで得られた試料11のRuの担持量は2.83重量%に相当した。
【0085】
(実施例12)
実施例1と同様に、有機修飾剤としてオルトフタル酸(C
6H
4(COOH)
2)830mgを0.5mol/Lとなるように添加したメタノール10mLに、チタンテトライソプロポキシド(Ti[OCH(CH
3)
2]
4)284mgを撹拌しながら混合した溶液(以下「混合溶液」とする。)を温度300℃、圧力17MPaまで上昇させ、超臨界メタノールとし、3分間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例12の試料(以下、『試料12』とする。)の製造を行った。
【0086】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料12の酸化チタン触媒の粒子径は約110nmであり、試料12を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約23nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が2.5nmであることが分かった。また、ここで得られた試料12のRuの担持量は3.12重量%に相当した。
【0087】
(実施例13)
実施例1と同様に、混合溶液を温度300℃、圧力17MPaまで上昇させ、超臨界メタノールとし、4分間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例13の試料(以下、『試料13』とする。)の製造を行った。
【0088】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料13の酸化チタン触媒の粒子径は約200nmであり、試料13を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約25nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.4nmであることが分かった。また、ここで得られた試料13のRuの担持量は2.98重量%に相当した。
【0089】
(実施例14)
実施例1と同様に、混合溶液を温度300℃、圧力17MPaまで上昇させ、超臨界メタノールとし、7分間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例14の試料(以下、『試料14』とする。)の製造を行った。
【0090】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料14の酸化チタン触媒の粒子径は約390nmであり、試料14を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約21nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.2nmであることが分かった。また、ここで得られた試料14のRuの担持量は3.15重量%に相当した。
【0091】
(実施例15)
実施例1と同様に、混合溶液を温度300℃、圧力17MPaまで上昇させ、超臨界メタノールとし、25分間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例15の試料(以下、『試料15』とする。)の製造を行った。
【0092】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料15の酸化チタン触媒の粒子径は約830nmであり、試料15を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約21nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が2.9nmであることが分かった。また、ここで得られた試料15のRuの担持量は3.21重量%に相当した。
【0093】
(実施例16)
実施例1と同様に、混合溶液を温度300℃、圧力17MPaまで上昇させ、超臨界メタノールとし、100分間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例16の試料(以下、『試料16』とする。)の製造を行った。
【0094】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料16の酸化チタン触媒の粒子径は約1320nmであり、試料16を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約18nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が2.7nmであることが分かった。また、ここで得られた試料16のRuの担持量は2.64重量%に相当した。
【0095】
(実施例17)
実施例1と同様に、混合溶液を温度300℃、圧力17MPaまで上昇させ、超臨界メタノールとし、360分間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例17の試料(以下、『試料17』とする。)の製造を行った。
【0096】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料17の酸化チタン触媒の粒子径は約1910nmであり、試料17を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約23nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.1nmであることが分かった。また、ここで得られた試料17のRuの担持量は2.52重量%に相当した。
【0097】
(実施例18)
実施例1と同様に、前駆体溶液に3当量以上の過剰量である還元剤トリエタノールアミンを加えて室温下で1時間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例18の試料(以下、『試料18』とする。)の製造を行った。
【0098】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料18の酸化チタン触媒の粒子径は約600nmであり、試料18を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約22nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.3nmであることが分かった。また、ここで得られた試料18のRuの担持量は0.72重量%に相当した。
【0099】
(実施例19)
実施例1と同様に、前駆体溶液に3当量以上の過剰量である還元剤トリエタノールアミンを加えて室温下で6時間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例19の試料(以下、『試料19』とする。)の製造を行った。
【0100】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料20の酸化チタン触媒の粒子径は約610nmであり、試料20を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約21nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.2nmであることが分かった。また、ここで得られた試料20のRuの担持量は5.29重量%に相当した。
【0101】
(実施例20)
実施例1と同様に、前駆体溶液に3当量以上の過剰量である還元剤トリエタノールアミンを加えて室温下で10時間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例20の試料(以下、『試料20』とする。)の製造を行った。
【0102】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料19の酸化チタン触媒の粒子径は約590nmであり、試料19を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約20nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が2.7nmであることが分かった。また、ここで得られた試料19のRuの担持量は9.31重量%に相当した。
【0103】
(実施例21)
実施例1と同様に、前駆体溶液に3当量以上の過剰量である還元剤トリエタノールアミンを加えて室温下で24時間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例21の試料(以下、『試料21』とする。)の製造を行った。
【0104】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料21の酸化チタン触媒の粒子径は約640nmであり、試料21を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約19nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.4nmであることが分かった。また、ここで得られた試料21のRuの担持量は21.59重量%に相当した。
【0105】
(実施例22)
実施例1と同様に、前駆体溶液に3当量以上の過剰量である還元剤トリエタノールアミンを加えて室温下で48時間反応させたこと以外は、実施例1と同様の方法により実施例22の試料(以下、『試料22』とする。)の製造を行った。
【0106】
試料1と同様にTEM画像内で測長することにより、試料22の酸化チタン触媒の粒子径は約620nmであり、試料22を構成する一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が約24nmであることが分かった。また、Ruナノ粒子の粒子径が3.5nmであることが分かった。また、ここで得られた試料22のRuの担持量は38.46重量%に相当した。
【0107】
次に以下に説明する方法によって比較例1乃至比較例3を製造した。
【0108】
(比較例1)
0.023gのRuCl
3・3H
2Oを10ミリリットルの純水に完全に溶解させた溶液に、5.0gの酸化チタン(TiO
2)の粉末を含浸し、十分撹拌した後に5分放置し、80℃で約16時間乾燥させる。ここで得られた比較試料1のRuの担持量をICP−AESで測定した結果、Ruの担持量は3.12重量%に相当することが分かった。
【0109】
また、調整した比較試料1の低分解能TEM画像(図示省略)より、比較試料1の粒子径は、約560nmであることが分かった。また、高分解能TEM画像(
図2(a)参照)より、触媒金属Ruの粒子径は2.6nmであった。
【0110】
(比較例2)
比較例1に記載の実験方法において、0.015gのRuCl
3・3H
2Oを約10ミリリットルの純水に完全に溶解させたこと以外は、比較例1と同様の方法である比較試料調整を行った。ここで得られた比較試料2のRuの担持量をICP−AESで測定した結果、Ruの担持量は2.45重量%に相当することが分かった。
また比較試料2の低分解能のTEM画像より、比較試料2の粒子径は、約570nmであり、高分解能TEM画像より、触媒金属Ruの粒子径は1.9nmであった。
【0111】
(比較例3)
比較例1に記載の実験方法において、0.072gのRuCl
3・3H
2Oを約10ミリリットルの純水に完全に溶解させたこと以外は、比較例1と同様の方法である比較試料調整を行った。得られた比較試料2のRuの担持量をICP−AESで測定した結果、Ruの担持量は2.89重量%に相当することが分かった。
また調整した比較試料3の低倍率のTEM画像より、比較試料2の粒子径は、約550nmであり、高分解能TEM画像より、触媒金属Ruの粒子径は9.8nmであった。
【0112】
以下、このようにして得られた試料1および比較試料1を用いて、常温条件下と高温条件下での触媒金属Ruの酸化チタンナノ粒子凝集体の表面への担持状態について、
図2乃至
図5に基づいて、説明する。
【0113】
先ず、試料1を、真空中および空気中で昇温速度:2℃/分として、300℃又は400℃の温度まで加熱し、この温度で4時間焼成した。続いて焼成したそれぞれの試料をH
2流通下で300℃、2時間還元処理した。
同様に、比較試料1を真空中および空気中で昇温速度:2℃/分として、350℃まで加熱し、この温度で4時間焼成したのちに、試料をH
2流通下で300℃、2時間還元処理した。
【0114】
このようにして得られた試料、すなわち、焼成後の試料1および比較例1の酸化チタン触媒と、焼成前の試料1および比較試料1を、透過型電子顕微鏡を用いてTEM画像を撮影するとともに(
図2、
図3参照)、焼成前の試料1および焼成後の試料1のEDXマッピング写真を撮影した(
図4参照)。
【0115】
試料1の低倍率のTEM画像である
図2、
図3(c)、
図3(e)に示すように、焼成前後の実施例1で製造された酸化チタン触媒の粒子径が約610nmであり、酸化チタンナノ粒子(一次粒子)が複数集まって凝集体を形成していることが分かる。また、一次粒子である酸化チタンナノ粒子の粒子径が、約28nmであることが分かる(
図2参照)。
【0116】
また、高倍率のTEM画像に示すように、焼成する前の比較試料1では、触媒金属Ruが酸化チタンナノ粒子凝集体の表面にナノ粒子の状態で担持しているが(
図3(a)参照)、真空中で350℃、4時間焼成した後の比較試料1に担持している触媒金属Ruは、酸化チタンナノ粒子凝集体の表面上でシンタリングを起こしている(
図3(b)参照)。
これに対して試料1に担持している触媒金属Ruのナノ粒子は、焼成前後であっても、酸化チタンナノ粒子凝集体の表面にナノ粒子の状態で担持されている(
図3(d)参照)。
【0117】
また、試料1の触媒金属RuのEDXマッピング写真により(
図4参照)、試料1を焼成する前の触媒金属Ruの分布状態(
図4(a)参照)と、試料1を焼成した後の触媒金属Ruの分布状態(
図4(b)および
図4(c)参照)を調べると、ともに触媒金属Ruが酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に分散配置されていることが分かる。このことから、試料1に担持される触媒金属Ruは焼成後であっても、シンタリングを起こさず、酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に分散配置されていることが分かる。
【0118】
さらにまた、試料1の焼成前後のX線回折実験の結果、試料1の焼成前と空気中又は真空中で300℃または400℃で焼成した後のX線回折パターンに変化がなく、また触媒金属Ruのピークまたは酸化ルテニウムのピークも顕著に現れないことから、本発明の試料1に担持している触媒金属Ruが焼成した後もシンタリングを起こしていないことが分かる(
図5参照)。
【0119】
次に、実施例1乃至実施例22で製造した酸化チタン触媒の転化率の評価について説明する。
先ず、試料1乃至試料22および比較試料1乃至比較試料3を等量(10mg)ずつガラス管に充填する。次に、アルゴンガス(Ar)で満たした容器に所定の量の二酸化炭素(CO
2)および水素(H
2)をCO
2とH
2とArの比率がCO
2:H
2:Ar=1:4:9となるように注入し、容器内にそれぞれの試料を充填したガラス管をセットする。
このように準備された容器を400℃で1時間放置させた後に、容器内の二酸化炭素の量の変化を調べ、以下の基準で評価した。
【0120】
比較例1に対して二酸化炭素の減少量が著しく減少した:◎
比較例1に対して二酸化炭素の減少量が十分に減少した:○
比較例1に対して二酸化炭素の減少量の変化の差がない:×
【0121】
上述の実施例1乃至実施例7と比較例1の触媒活性および、触媒としての評価の結果について表1とともに以下で説明する。
なお、表1は酸化チタン触媒を構成する一次粒子の粒子径を変化させた場合の二酸化炭素の変化量を評価したものである。
【0123】
表1に示すように、実施例1乃至実施例7で得られた酸化チタン触媒は、比較例1で得られた比較試料1と比較して、十分な二酸化炭素の量の減少がみられ、有効な触媒活性が得られた。一方で、実施例2や実施例3、実施例6、実施例7は実施例1、実施例4や実施例5に比べて触媒活性が低い結果となった。
【0124】
なお、実施例1および実施例4、実施例5はより有効な触媒活性を有していることから、酸化チタン触媒の構成として、一次粒子の粒子径は
19nm以上50nm未満であることが好ましく、また、より好ましくは、一次粒子の粒子径が20nm以上40nmである。
【0125】
以上の結果より、熱処理を加えた後でも実施例1乃至実施例7で製造された酸化チタン触媒は、酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に担持する触媒金属であるRuが分散配置されており、比較例1で製造する酸化チタン触媒に比べて優位な触媒活性を有する。したがって、実施例1乃至実施例7で製造された酸化チタン触媒は高温条件下でも、利用可能な触媒であると考えられる。
【0126】
このように、実施例1乃至実施例7が比較例1に対して優位な転化率を有するのは、比較例1のような凝集体構造を有さない酸化チタンに対して実施例1のような酸化チタンナノ粒子凝集体は触媒金属Ruが担持する表面積が広いためと考えられる。
【0127】
詳述すると、例えば、600nmの酸化チタンの単位質量当たりの表面積(比表面積)は2.56m
2/gであるのに対して、6nmの比表面積は256.41m
2/gである。このため、比表面積の大きな酸化チタンナノ粒子を凝集させた酸化チタンナノ粒子凝集体は、同サイズの酸化チタンと比べて比表面積が大きく、触媒金属Ruを多く担持できる。
【0128】
また、一次粒子の凝集体である酸化チタンナノ粒子凝集体は、表面に複数の凹凸形状を有しているため、前記酸化チタンナノ粒子凝集体は同じ大きさの酸化チタン粒子に比べて表面積が大きく、多数の前記触媒金属を担持することができる。
【0129】
また、高温条件下であっても、実施例1乃至実施例7が比較例1に対して優位な転化率を有するのは、ナノ粒子である触媒金属Ruがシンタリングしないためである。
【0130】
詳述すると、酸化チタンナノ粒子凝集体は、酸化チタンナノ粒子である一次粒子が凝集した集合体であるため、表面が凹凸状に形成されている。このため、例えば、触媒反応による熱や意図的に加えた熱などにより触媒金属Ruが移動しても、触媒金属Ruは酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に形成される凹部102に移動して担持されることとなる。このため、高温条件下であっても前記触媒金属はナノ粒子の状態で分散して配置されているとともに、安定して担持されている。
【0131】
したがって、前記酸化チタン触媒は、高温条件下でも所望の触媒作用を発揮することができる。
【0132】
以上のことから、一次粒子径の大きさは10nm以上50nm以下であることが好ましく、また、一次粒子径の大きさは20nm以上40nm以下であるとより好ましい。
【0133】
次に、酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に担持させる触媒金属Ruの粒子径を変化させた場合の二酸化炭素の減少量について、試料1および試料8乃至試料11と、比較試料1乃至比較試料3とを比較して評価し、その評価結果を表2に示す。
【0135】
表2に示すように、ナノ粒子である触媒金属Ruの金属粒子径を大きくした比較例2及びナノ粒子である触媒金属Ruの金属粒子径を小さくした比較例3は、比較例1と比べて優位な触媒活性を有さなかった。
一方で、触媒金属Ruの粒子径が約1.0nm〜10.0nmである酸化チタン触媒は十分な触媒活性を有する(実施例1、実施例8乃至実施例10)。
【0136】
上記結果より、実施例1および実施例8乃至11で得られる酸化チタン触媒はより有効な触媒活性を有している。したがって、酸化チタン触媒を構成する触媒金属の粒子径は1nm以上10nm未満であることが好ましい。
また、実施例1および実施例9より得られる酸化チタン触媒は他の酸化チタン触媒よりも二酸化炭素の減少量が大きいため、酸化チタン触媒を構成する触媒金属の粒子径は、3nm以上4nm以下がより好ましい。
【0137】
さらに、実施例1及び実施例8乃至実施例11より、一次粒子の粒子径が、触媒金属Ruの粒子径の2倍以上の大きさを有する酸化チタン触媒は、有効な触媒活性を有していることが分かる。このことと実施例1乃至実施例7より、触媒金属Ruの粒子径が1.0nmである場合には、一次粒子の粒子径を2nmとしても有効な触媒活性を有すると考えられ、一次粒子の粒子径は2nm以上50nm以下が好ましいといえる。
【0138】
同様に、試料1と試料12乃至試料17を用いて、酸化チタンナノ粒子凝集体の粒子径(全体粒子径)に対する二酸化炭素の変化量について評価した結果を表3に示す。
【0140】
表3に示すように、実施例1、実施例12乃至実施例17で得られた酸化チタン触媒は比較例1で得られる酸化チタン触媒に対して優位に二酸化炭素の量を減少した。また、実施例1および実施例15で得られた酸化チタン触媒は、比較例1と比べて著しい二酸化炭素の量を減少した。
【0141】
実施例12で得られた酸化チタン触媒のように、全体粒子径が100nm以下である場合には、ガラス管に充填した際に酸化チタン触媒の充填率が高くなり、酸化チタン触媒の表面が露出しない酸化チタン触媒が多くなる。このため、酸化チタンナノ粒子凝集体の表面に担持する触媒金属Ruが隠れてしまい、著しい触媒活性が得られない。
【0142】
一方で、実施例16、実施例17で得られた酸化チタン触媒のように全体粒子径が1000nmを超える場合には、二酸化炭素の還元触媒としての活性は十分に有するが、粒子径が2000nmより大きい前記酸化チタンナノ粒子凝集体を用いて作成した前記酸化チタン触媒の転化率と、前記酸化チタンナノ粒子凝集体の粒子径が2000nm以下の酸化チタン触媒の転化率を比較したところ、触媒活性が大きく向上しない。その一方で、2000nmより大きな酸化チタンナノ粒子凝集体を生成するには長時間を要する。
【0143】
これらのことから、2000nmより大きな酸化チタン触媒は、酸化チタンナノ粒子凝集体の生成に費用や時間が嵩むこととなるが、酸化チタン凝集体を生成する時間に対して優位な転化率を有さない。
したがって、酸化チタン触媒の全体粒子径は、100nm以上2000nm以下であることが好ましく、またより好ましくは600nm〜800nmである。
【0144】
同様に、試料1と試料18乃至試料22を用いて、酸化チタン触媒が担持する金属触媒Ruの担持量(重量%)に対する二酸化炭素量の減少について評価した結果を表4に示す。
【0146】
表4に示すように、試料18乃至試料22は比較試料1と比較して優位か触媒作用を有する。また、触媒金属Ruの担持量が3.0%以上6.0%以下である試料1および試料19は二酸化炭素の量の十分に減少している。一方で、触媒金属Ruの担持量が少ない試料18は比較試料1よりも優位な触媒作用を示すが、二酸化炭素量の減少は他の実施例に比べて少なかった。
【0147】
このことから、触媒金属Ruの含有量を、前記酸化チタンナノ粒子凝集体と前記触媒金属との合計100重量%に対して、1重量%以上40重量%以下とすることにより、二酸化炭素還元触媒として十分な機能を有するとともに、触媒作用を効率よく発揮することができる前記酸化チタン触媒とすることができる。
また、前記触媒金属の含有量が3.0重量%以上6.0重量%以下とすることで、より効率的な触媒作用を有する前記酸化チタン触媒とすることができる。
【0148】
なお、上記実施例において、チタン化合物としてTi[OCH(CH
3)
2]
4を用いた方法を記載するが、チタン化合物はこの無機化合物に限定されるわけでなく、TiF
4などを用いても良い。なお、TiF
4などのチタン化合物で合成した酸化チタンナノ粒子は球状多孔質形状を形成するが、一次粒子を細かくすることが困難であり、好ましくはTi(O
iPr)
4を用いる方が良い。
【0149】
また、上記実施例において、触媒金属をRuとしているが、Ruに限定されるものではなく、例えばPtやNi、Pd,Cu、Rh,Reなどを用いることによっても二酸化炭素の還元作用を有する触媒を提供することができる。また、他の金属を用いることで二酸化炭素以外の金属の還元に適した触媒を提供することもできる。