特許第6461683号(P6461683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461683
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】電動作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/02 20060101AFI20190121BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   B60K1/02
   B60L15/20 S
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-76063(P2015-76063)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-196204(P2016-196204A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛和
(72)【発明者】
【氏名】小池 和生
【審査官】 稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−218951(JP,A)
【文献】 特開2013−18386(JP,A)
【文献】 特開2014−61880(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/145515(WO,A2)
【文献】 特表2012−532061(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/016884(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/64
B60K 1/00−1/04
17/28
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームと連結しているケース構造体と、
前記ケース構造体の左部分を構成する左ケース部に支持される左後輪と、
前記ケース構造体の右部分を構成する右ケース部に支持される右後輪と、
前記ケース構造体の中央部分を構成する中央ケース部の左領域に内装された左モータと、
前記中央ケース部の右領域に内装された右モータと、
前記左ケース部に内装されるとともに、前記左モータからの動力を前記左後輪に伝達する左伝動機構と、
前記右ケース部に内装されるとともに、前記右モータからの動力を前記右後輪に伝達する右伝動機構と、
電動作業車両が有する作業を実行させるための作業装置への動力を作り出す作業用モータと、
前記作業用モータが作り出す動力を前記作業装置に伝達するPTO軸とを備え
前記PTO軸は前記中央ケース部の前記左領域と前記右領域との間の中央領域を通過するように配置され、前記左モータと前記右モータとは前記PTO軸を挟んで隣接して配置されており、
前記中央ケース部は機体横断方向に延びており、前記中央ケース部の左端から前記左ケース部が機体前後方向で後方に延びており、前記中央ケース部の右端から前記右ケース部が機体前後方向で後方に延びており、前記左ケース部の左側に左後車軸ケース部が形成されており、前記右ケース部の右側に右後車軸ケース部が形成されており、
前記作業用モータは、前記中央ケース部と前記左ケース部と前記右ケース部とによって囲まれた空間に配置されている電動作業車両。
【請求項2】
前記作業用モータの左右方向の幅が、前記PTO軸の左右方向の幅よりも大きい請求項1に記載の電動作業車両。
【請求項3】
前後方向視において、前記左モータの前記PTO軸に隣接する側の少なくとも一部、及び前記右モータの前記PTO軸に隣接する側の少なくとも一部と、前記作業用モータの少なくとも一部とは重畳している請求項1又は2に記載の電動作業車両。
【請求項4】
前記車体フレームは、車体前後方向に延びた左フレームと右フレームと、前記左フレームと右フレームとを接続する少なくとも1つのクロスビームとを備え、
前記左フレームと前記左ケース部とが連結され、前記右フレームと前記右ケース部とが連結されている請求項1から3のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項5】
前記中央ケース部は筒体であり、前記左モータと前記右モータとの共通のモータハウジングである請求項1からのいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項6】
前記中央ケース部には、前記左モータと前記右モータとの共通の冷却水通路が形成されている請求項1からのいずれか一項に記載の電動作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左電動モータによって左後輪が駆動されるとともに、右電動モータによって右後輪が駆動される電動作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左右一対の後輪が左右一対のモータによってそれぞれ独立して駆動される芝刈機が開示されている。左右一対の後輪はその間にわたって延びている後車軸ケースによって支持されている。後車軸ケースの中央部からギヤケースが後車軸ケースの延び方向に対して直角に延びており、さらにギヤケースの先端部から左側に左側モータ、右側に右側モータが車体横断方向に延びるように装備されている。各モータの回転動力は、ギヤケースに内装された動力伝達機構を通じて後車軸ケースに内装されている車軸に伝達される。特許文献1の図2から明らかなように、車体横断方向で直線状に延びている左右一対のモータと、車体横断方向で直線状に延びている後車軸ケースとが、それぞれの中央部で、車体前後方向に延びたギヤケースによって連結されている。特許文献1で開示されたモータから後輪へ動力を伝達する機構を内装するケース構造は、かなり複雑な形状であり、コスト高の要因となる。さらに、左右のモータがそれぞれ片持ちのモータケースで支持されるため、強度的にも問題も生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/015171号(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記実情に鑑みて、左右のモータを支持するモータケースの構造の改善が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に関わる電動作業車両は、車体フレームと、前記車体フレームと連結しているケース構造体と、前記ケース構造体の左部分を構成する左ケース部に支持される左後輪と、前記ケース構造体の右部分を構成する右ケース部に支持される右後輪と、前記ケース構造体の中央部分を構成する中央ケース部の左領域に内装された左モータと、前記中央ケース部の右領域に内装された右モータと、前記左ケース部に内装されるとともに、前記左モータからの動力を前記左後輪に伝達する左伝動機構と、前記右ケース部に内装されるとともに、前記右モータからの動力を前記右後輪に伝達する右伝動機構と、電動作業車両が有する作業を実行させるための作業装置への動力を作り出す作業用モータと、前記作業用モータに電力を供給するPTO軸とを備え、前記PTO軸は前記中央ケース部の前記左領域と前記右領域との間の中央領域を通過するように配置され、前記左モータと前記右モータとは前記PTO軸を挟んで隣接して配置されており、前記中央ケース部は機体横断方向に延びており、前記中央ケース部の左端から前記左ケース部が機体前後方向で後方に延びており、前記中央ケース部の右端から前記右ケース部が機体前後方向で後方に延びており、前記左ケース部の左側に左後車軸ケース部が形成されており、前記右ケース部の右側に右後車軸ケース部が形成されており、前記作業用モータは、前記中央ケース部と前記左ケース部と前記右ケース部とによって囲まれた空間に配置されている
【0006】
この構成によれば、左モータと右モータとは、ケース構造体の中央ケース部に内装されるので、中央ケース部が左モータと右モータとの共通のモータハウジングとして機能することができる。このため、この構造は、モータハウジングの低コスト化に貢献する。さらに、ケース構造体の左ケース部と右ケース部とは、それぞれ左伝動機構と右伝動機構とのハウジングとして機能する。つまり、ケース構造体はモータ及びモータ動力を駆動輪に伝達する伝動機構とのための一体化されたハウジングであり、その結果大きな剛性を有する。これにより、左モータと右モータとの共通のハウジングは強度的にも優れものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電動作業車両に搭載される駆動ユニット3の基本的な構成と配置を説明する斜視図である。
図2】電動草刈機の側面図である。
図3】電動草刈機の平面図である。
図4】バッテリパックとバッテリパックから給電されるモータとの平面図である。
図5】バッテリパックの実施形態の1つを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に関係する電動作業車両の具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いて、電動作業車両に搭載される駆動ユニット3の基本的な構成と配置を説明する。
【0009】
この電動作業車両の車体10は、車体前後方向に延びた左フレーム21と右フレーム22と、左フレーム21と右フレーム22とを接続する少なくとも1つのクロスビーム23とを含む車体フレーム20を備えている。左前輪11Lと右前輪11Rとは、車体フレーム20の前部に支持されており、左後輪12Lと右後輪12Rとは、車体フレーム20の後部に駆動ユニット3を介して支持されている。以下において、特に区別する必要がない場合には、左前輪11Lと右前輪11Rとはその総称として前輪11なる語句が使用され、左後輪12Lと右後輪12Rとはその総称として後輪12なる語句が使用される。
【0010】
駆動ユニット3は、車体フレーム20と連結しているケース構造体30を備えている。ケース構造体30は、ケース構造体30の左部分を構成する左ケース部30Lと、ケース構造体30の右部分を構成する右ケース部30Rと、ケース構造体30の中央部分を構成する中央ケース部30Cとを備えている。左後輪12Lは、左ケース部30Lに支持される。右後輪12Rは、右ケース部30Rに支持される。中央ケース部30Cの左領域には左モータ4Lが内装され、中央ケース部30Cの右領域には右モータ4Rが内装されている。左モータ4Lからの動力を左後輪12Lに伝達する左伝動機構43は、左ケース部30Lに内装され、右モータ4Rからの動力を右後輪12Rに伝達する右伝動機構44に内装されている。図1において、左伝動機構43及び右伝動機構44は、その動力の流れを示す矢印付きの点線で示されているだけである。左伝動機構43及び右伝動機構44は、一般的には、ギヤ対やチェーンや伝動軸などを用いて構成される。
【0011】
左フレーム21と左ケース部30Lとが連結され、右フレーム22と右ケース部30Rとが連結されている。これにより、ケース構造体30は、車体フレーム20のクロスビームとしての機能を果たすので、車体フレーム20の強度が向上する。その結果、車体フレーム20における左右の後輪を支持する箇所に補強フレームを付加する必要がなくなる。
【0012】
図1に示されているように、中央ケース部30Cは機体横断方向に延びており、中央ケース部30Cの左端から左ケース部30Lが機体前後方向で後方に延びている。中央ケース部30Cの右端から右ケース部30Rが機体前後方向で後方に延びている。左ケース部30Lの自由端部の左側に左後車軸ケース部301が形成されており、右ケース部30Rの自由端部の右側に右後車軸ケース部302が形成されている。
【0013】
中央ケース部30Cは略円筒体であり、左モータ4Lと右モータ4Rとの共通のモータハウジングとして機能する。つまり、中央ケース部30Cの内周面には、その軸心方向に沿って、左モータ4Lの外周側部材と右モータ4Rの外周側部材とが取り付けられている。これにより、左モータ4Lと右モータ4Rとを内装しても、中央ケース部30Cの外径は、それぞれモータハウジングの備えたモータを内装する構造に比べて小さくなる。
【0014】
図1では、図示されていないが、中央ケース部30Cの周壁に左モータ4Lと右モータ4Rとに対して共通の冷却水通路が形成することできる。これにより、2台のモータを備えてもその冷却水通路が簡素化することができる。
【0015】
図1から明らかなように、上方から見て、中央ケース部30Cと左ケース部30Lと右ケース部30Rとによって囲まれた空間が生じている。この空間には、左モータ4Lと右モータ4Rとに給電するバッテリパックの一部または全てを配置することができる。これにより、車両重量バランス及び電動作業車両のコンパクト化が向上する。また、この電動作業車両の装備される作業装置への動力を作り出す作業モータが搭載される場合、この空間に、作業モータを配置すると、空間の有効活用となり、電動作業車両のコンパクト化に貢献でき、車両重量バランスも向上する。同じ目的で、別な重量物をこの空間に配置することも可能である。
【0016】
次に、図面を用いて、電動作業車両の具体的な実施形態の1つを説明する。図2は、電動作業車両の一例である電動草刈機の側面図であり、図3は電動草刈機の平面図であり、図4は車体後部の平面図である。図2図3図4とに示されているように、電動草刈機(以下単に草刈機と称する)は、左右一対の前輪11と回転駆動される駆動車輪としての左右一対の後輪12とによって対地支持された車体10を備えている。車体10は、ベースフレームとして車体フレーム20を有しており、車体フレーム20は左フレーム21と右フレーム22とからなる。前輪11と後輪12との間で、モーアユニット13がリンク機構14を介し車体フレーム20から吊り下げられている。モーアユニット13には、ブレード伝動機構131と、このブレード伝動機構131によって回転するブレード132が備えられている。車体10の機体前後方向中央領域に運転部16が配置されている。このため、車体10の機体前後方向中央領域には座席支持体を介して運転座席16aが配置されている。
【0017】
図4に示されているように、車体フレーム20の後端領域には、左フレーム21と右フレーム22との間に、駆動ユニット3が配置されている。この駆動ユニット3は、ケース構造体30を備えている。ケース構造体30は平面視で門型形状であり、その左部分である左ケース部30Lと、その右部分である右ケース部30R、左ケース部30Lと右ケース部30Rとを接続する中央ケース部30Cとからなる。左ケース部30Lと右ケース部30Rとは、それぞれ中央ケース部30Cから後方に延びている。左ケース部30Lの端部領域には左後車軸41を支持する左後車軸ケース部301が形成され、右ケース部30Rの端部領域は右後車軸42を支持する右後車軸ケース部302が形成されている。ケース構造体30は左フレーム21と右フレーム22と連結されており、車体フレーム20のクロスビームの1つとして機能している。車体フレーム20の後方部分はケース構造体30よりさらに後方延びており、載置面22Sを規定しており、この載置面22Sにバッテリパック6が配置されている。
【0018】
中央ケース部30Cは、左の後輪12を駆動する左モータ4Lと右の後輪12を駆動する右モータ4Rとの共通のハウジングとして機能する。この実施形態では、中央ケース部30Cには、左モータ4Lと右モータ4Rとの共通の冷却水通路が形成されている。冷却水通路自体は、電動車両用モータの冷却のためのウオータジャケット構造として良く知られているので、図4では、点線で模式的に示されているだけである。冷却水通路を含む冷却回路を構成するポンプにはバッテリパック6から給電されるポンプモータを有する電動ポンプが採用される。ポンプPも中央ケース部30Cに内装または外装される。あるいは、ポンプを中央ケース部30C以外の場所の配置し、中央ケース部30Cに設けられた冷却水通路とポンプとの間を連結管路で接続してもよい。
【0019】
トランスミッション4Tは、左モータ4Lの動力を左後車軸41に伝達する左伝動機構43と左モータ4Lの動力を右後車軸42に伝達する右伝動機構44とを備えている。左伝動機構43は左ケース部30Lに内装され、右伝動機構44は右ケース部30Rに内装されている。図4では、左伝動機構43及び右伝動機構44はよく知られた構造であるので、その動力の流れを示す矢印付き線で模式的に示されている。通常、左伝動機構43及び右伝動機構44は、ギヤ対やチェーンや伝動軸などを用いて構成される。
【0020】
左モータ4Lと右モータ4Rとは独立に可変速駆動制御される。これにより、左右の後輪12の両方が同じまたはほぼ同じ速度で前進方向に駆動することで直進前進が作り出され、左右の後輪12が同じまたはほぼ同じ速度で後進方向に駆動することで直進後進が作り出される。さらに、左右の後輪12の速度を互いに異ならせることで、車体10を任意の方向に旋回移動させることができ、例えば、左右の後輪12のいずれか一方を零速に近い低速にさせ、他方の後輪12を高速で前進側あるいは後進側に操作することで小回り旋回させることができる。さらに、左右の後輪12を互いに逆方向に駆動することで、車体10を左右の後輪12のほぼ中央部を旋回中心としてスピンターンさせることもできる。左右一対の前輪11は、キャスタ輪に構成されて縦軸芯周りで向きを自由に変更することができるから、左右の後輪12の駆動による走行方向に応じて向きが修正されることになる。
【0021】
左モータ4Lと右モータ4Rとに対する変速操作は、図2及び図3に示されている運転座席16aの両側に配置された左右一対の変速レバー18によって行われる。変速レバー18を前後中立位置に保持すると無段変速装置が中立停止状態となり、変速レバー18を中立位置から前方に操作することで前進変速が実現し、後方に操作することで後進変速が実現する。
【0022】
運転部16の後部にはロプス(ROPS)装置17が設けられている。ロプス装置17はU字状のアーチ部材であり、左右の自由端領域が、左フレーム21と左ケース部30L及び右フレーム22と右ケース部30Rとに連結している。
【0023】
図4に示すように、中央ケース部30Cと左ケース部30Lと右ケース部30Rとによって囲まれる空間に作業装置13としてのモーアユニット13に動力を与える作業用モータ4Wが配置されている。作業用モータ4Wからの出力軸と中継軸とを含むPTO軸130が車体前後方向で前方に延びており、作業用モータ4Wからの動力をモーアユニット13のブレード伝動機構131に伝達する。
【0024】
以下、図5を用いて、バッテリパック6を説明する。この実施形態におけるバッテリパック6は分解された形態で示されているが、長方体を基本形状としており、前輪11と後輪12とに対地支持された車体10に搭載されている。車体前後方向つまり車体走行方向に関して、後輪12の前方にモーアユニット13が配置され、後輪12の後方にバッテリパック6が配置されている。これにより、車両の前後の重量バランスが良好となっている。
【0025】
バッテリパック6は、ケース60を備え、ケース60の内部空間にバッテリユニット6Aと、循環ファン6Bと、バッテリ制御ユニット6Cとが備えられている。ケース60は、長方体形状のバッテリユニット6Aを収納する第1ケース部61と、第1ケース部61の上面に煙突状に突き出るように配置された長方体形状の第2ケース部62とからなる。第2ケース部62は第1ケース部61より小さなサイズである。第1ケース部61によって作り出される第1内部空間S1にバッテリユニット6Aが収納され、第2ケース部62によって作り出される第2内部空間S2に循環ファン6Bとバッテリ制御ユニット6Cとが収納される。その際、バッテリ保持フレーム構造体51は、ケース60の骨組みを作り出している。バッテリユニット6Aは、複数のバッテリモジュール6a、この実施形態では、3列3段、計9つのバッテリモジュール6aからなり、バッテリ保持フレーム構造体51によって保持されている。各段を構成する3つのバッテリモジュール6aはパック組立フレーム53によって一体化される。バッテリ保持フレーム構造体51の外面がパネル52で覆われることで、密閉した第1内部空間S1が作り出される。バッテリモジュール6aはLiイオンバッテリである複数のバッテリセルを含んでおり、その充電及び給電はバッテリ制御ユニット6Cによって制御される。
【0026】
第1内部空間S1とバッテリユニット6Aとはほぼ相似形であり、第1内部空間S1の方がバッテリユニット6Aより若干大きい。例えば、第1ケース部61の内面とバッテリユニット6Aの外面とは、数ミリから数センチ程度のわずかな隙間が形成される。第1ケース部61と第2ケース部62との間の境界面にはファン開口63と戻り開口64とが作り出される。第1内部空間S1と第2内部空間S2はファン開口63と戻り開口64とによって流通しているが、第1内部空間S1及び第2内部空間S2は、外部に対しては、外気の進入が抑制される程度に、あるいは草や紙切れなどが入り込まない程度に密閉されている。循環ファン6Bは、循環ファン6Bによって作り出される冷却風がファン開口63を通って第1内部空間S1に流れ込むように取り付けられている。
【0027】
第1内部空間S1と第2内部空間S2とを流通させる戻り開口64は、ファン開口63とは反対側に位置しており、戻り開口64とファン開口63との直接流通は図示されていない仕切り板によって抑制されている。
【0028】
上部フレーム構造体54には、実質的に底板として機能する載置板543が取り付けられている。この載置板543には、バッテリ制御ユニット6Cと循環ファン6Bとが載置される。循環ファン6Bは軸流形であり、吹き出し側を載置板543に設けられたファン開口63に向くように取り付けられ、上方から吸い込んだ空気を、下方から冷却風として吹き出す。循環ファン6Bからの冷却風は、ファン開口63と開口S3とを通り、第1内部空間S1に送られる。
【0029】
載置板543には、ファン開口63以外に、バッテリ制御ユニット6Cの載置箇所周辺にも戻り開口64としての貫通孔が設けられており、この戻り開口64を通じて、第1内部空間S1に送られた冷却風が第2内部空間S2に戻ってくることができる。第2内部空間S2に入った冷却風は、循環ファン6Bの吸い込みにより循環ファン6Bの吸い込み側へ流れるが、この冷却風の流れにより、バッテリ制御ユニット6Cを構成する構成部品が冷却される。
【0030】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施形態では、ケース構造体30の中央ケース部30Cは略円筒体で形成されていたが、その形態は円筒体、多角形筒体、さらには、異形筒体であってもよい。
(2)上記実施形態では、バッテリユニット6Aは、3列3段、計9つのバッテリモジュール6aを含んでいたが、その他の列数、段数を採用することができ、バッテリモジュール6aの数も9個に限定されるわけではない。
(3)上記実施形態では、駆動輪が後輪12であったが、左右の駆動輪が前輪11であってもよいし、駆動輪が前輪11と後輪12の両方であってもよい。いずれにしても、左右の駆動輪を駆動する左モータ4Lと右モータ4Rとを内装するハウジングはケース構造体30の中央ケース部30Cによって共通化される。
(4)上記実施形態では、電動作業車両として草刈機が取り上げられたが、田植機やコンバインやトラクタなどの農作業機、バックホウやバケットローダなどの建機なども本発明の適用対象である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、左電動モータによって左後輪が駆動されるとともに、右電動モータによって右後輪が駆動される電動作業車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 :車体
11 :前輪
11L :左前輪
11R :右前輪
12 :後輪
12L :左後輪
12R :右後輪
13 :モーアユニット(作業装置)
16 :運転部
16a :運転座席
18 :変速レバー
20 :車体フレーム
21 :左フレーム
22 :右フレーム
22S :載置面
23 :クロスビーム
3 :駆動ユニット
30 :ケース構造体
30C :中央ケース部
30L :左ケース部
30R :右ケース部
4L :左モータ
4R :右モータ
4T :トランスミッション
4W :作業用モータ
41 :左後車軸
42 :右後車軸
43 :左伝動機構
44 :右伝動機構
6 :バッテリパック
図1
図2
図3
図4
図5