(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような積層シートの保護層は、例えば、基材(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート層)上に、接着剤層を介して積層される。
【0006】
しかしながら、上記従来の積層シートは、保護層を形成することで耐傷付性は向上するものの、照明や太陽光などの光にさらされると、保護層を透過する紫外線により、保護層と基材との間の接着剤層が劣化し、保護層が剥離し易くなる(紫外線に対する耐候性が低い)という問題がある。
【0007】
本発明の目的は、耐候性及び耐傷付性に優れた積層シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、基材上に接着剤層を介して形成する保護層について、紫外線吸収剤の含有量と、所定波長の光の透過率とを、それぞれ所定範囲に調整することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、積層シートの基材と、前記基材の一方の主面に設けられた第1接着剤層と、前記第1接着剤層上に設けられた保護層と、を備え、
前記保護層は、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤およびUV硬化樹脂を含み、前記保護層は、
厚みが4.0〜6.0μmであり、前記ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤の含有量が
10〜15重量
%であり、且つ前記第1接着剤層の材質に応じた特定の紫外線吸収波長領域の光の透過率が11%以下である積層シートが提供される。
【0010】
本発明において、前記第1接着剤層は、ポリエステル系樹脂を主剤とし、前記第1接着剤層の前記紫外線吸収波長領域は、325nmを中心とする領域であることが好ましい。
本発明において、前記保護層の厚みが3.5μm超であることが好ましい。
本発明において、前記保護層は、UV硬化樹脂を含むことが好ましい。
本発明において、前記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤であることが好ましい。
本発明において、前記基材は、透明樹脂からなり、前記基材の他方の主面に、第2接着剤層、印刷柄層及び基礎樹脂層が、この順で形成されてなることが好ましい。
本発明において、前記基材は、延伸されたポリエチレンテレフタレートからなることが好ましい。
【0011】
また本発明によれば、上記積層シートを、鋼製基板、化粧基板又は光学基板上に設けてなる積層板が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材上に接着剤層を介して形成する保護層について、紫外線吸収剤の含有量を所定値以下とし、且つ所定波長の光の透過率を抑制するため、保護層の耐傷付性の低下が抑制されるとともに、紫外線による接着剤層の劣化が防止される。その結果、耐候性及び耐傷付性に優れた積層シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態について説明する。本発明に係る積層シートは、例えば、冷蔵庫、洗濯機その他の電気製品、建築物、車両などの各種製品に意匠性を付与するために採用される化粧基板の保護のために、これらの表層に設けられる。以下においては、本発明に係る積層シートを、冷蔵庫のドアの外板(ドアシェル)に用いる化粧基板の表面に設けた実施形態にて本発明を説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る積層シート11を化粧基板12の表面に設けてなる積層板1を、化粧板として適用した冷蔵庫2の一実施の形態を示す斜視図、
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。本例の冷蔵庫2は、冷蔵庫本体21と、冷蔵庫本体21の前面に開閉可能に装着されたドア22と、同じく冷蔵庫本体21の前面に引き出し可能に装着された引出収納部23,23と、を備える。本例の積層板1は、冷蔵庫本体21の側面21Aや天井面21B、ドア22の外板面22A、引出収納部23,23の前面23A,23Aなどを構成するパネル部品として適用することができる。
【0016】
図1に示す冷蔵庫2のドア22は、
図2の断面図に示すように、冷蔵庫2の前面を構成するアウタパネル221と、冷蔵庫2の内部の一面を構成するインナパネル222と、これらアウタパネル221とインナパネル222とで挟まれた断熱材223とを備える。アウタパネル221は、その周縁が折り曲げ加工され、インナパネル222と接合されているが、本例では、このアウタパネル221に本発明に係る積層板1が採用されている。以下、
図3を参照して、冷蔵庫2のドア22のアウタパネル221に適用した本発明に係る積層板1の構成について説明する。
【0017】
図3は、
図2のIII部を拡大して示す断面図であり、同図において上側が
図1の冷蔵庫2の外面、下側が冷蔵庫2の内面(冷蔵庫2の室内)に相当する。なお、
図3では図示省略したが、積層板1の下側には、必要に応じて、塗膜やフィルムなどの樹脂層が設けられる。
図3に示す本例の積層板1は、化粧基板12と、取付対象物、すなわち
図1の冷蔵庫2であれば外面側の主面(
図3の上面)に設けられた積層シート11と、を備える。
【0018】
まず、積層シート11について説明する。積層板1の積層シート11は、基材111上に、接着剤層112を介して保護層113が形成されてなる。
【0019】
本例の積層シート11を構成する基材111としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、変性ポリエチレンテレフタレート(変性PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、変性ポリブチレンテレフタレート(変性PBT)などのポリエステル樹脂が挙げられ、これらの中でもポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。基材111を構成する樹脂は、これらの樹脂を1種単独で、あるいは、2種以上をブレンドして用いることができ、単層で、又は同一若しくは異なる樹脂を2層以上積層して用いることができる。なお、本実施形態では、基材111として透明な樹脂を用いることで、化粧基板12の上に積層シート11を積層しても、化粧基板12の質感や、後述する印刷柄層123の絵柄などの意匠性を損なわないようにすることができる。あるいは、基材111として色付きの樹脂を用いて、基材111自体に意匠性を持たせてもよい。
【0020】
また、基材111は、フィルムに製膜した無延伸の状態であってもよいが、一軸方向又は二軸方向に延伸した状態で用いることが好ましい。基材111を延伸した状態とすることにより、基材111を積層シート11として化粧基板12上に形成する際にしわを生じにくくすることが可能となる。
【0021】
接着剤層112は、基材111と保護層113とを接着させるための層である。接着剤層112を形成する接着剤としては、基材111及び保護層113との接着性が良好なものであればよく、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−ビニルアセテート系樹脂、尿素系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂などのエマルジョン型接着剤や、エポキシ−フェノール系樹脂などの接着剤などが挙げられ、これらの中でもポリエステル系樹脂を主剤とする接着剤を用いることが好ましい。
【0022】
保護層113は、積層シート11の表面に硬さ、耐汚れ性、耐傷付性を付与する等の目的に応じて形成される層であり、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂又は2液硬化樹脂などの各種樹脂を接着剤層112の表面に塗布し、この樹脂を硬化させることで形成することができる。また、外観をマット調にするために、粒子を含有する樹脂を用いてもよい。
【0023】
保護層113を構成する樹脂としては、積層シート11の耐傷付性等を向上させることができるものであれば特に限定されないが、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ−メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル−シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂などの硬質樹脂を用いることができ、これらの中でもウレタンアクリレート系樹脂が特に好ましい。
【0024】
保護層113を形成する方法としては、上述した硬質樹脂などを溶媒に溶解し、接着剤層112上にコーターやスプレー等により塗布した後、UV硬化又は乾燥する方法が挙げられる。保護層113を形成する場合には、積層シート11の生産性を向上させるという観点より、保護層113を構成する樹脂としてUV硬化樹脂を用い、これを接着剤層112上に塗布してUV硬化させる方法が好ましい。
【0025】
本実施形態では、保護層113を構成する樹脂に、紫外線吸収剤を添加させる。紫外線吸収剤としては、特に限定されず、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤などを用いることができる。なお、保護層113に紫外線吸収剤を添加させると、通常、保護層113の耐傷付性が低下する傾向にあるため、紫外線吸収剤としては、この耐傷付性の低下を抑制できるという観点や、保護層113としてUV硬化樹脂を用いた際に塗装後のUV硬化を阻害しない(UV硬化に必要な波長(例えば370nm付近)の光を適度に透過する)という観点より、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0026】
本実施形態では、保護層113における紫外線吸収剤の含有量は、15重量%以下、好ましくは13重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上述したように、保護層113における紫外線吸収剤の含有量が多いほど、保護層113の耐傷付性が低下する傾向にあるため、紫外線吸収剤の含有量を15重量%以下とすることにより、保護層113の耐傷付性の低下を抑制できる。
【0027】
また、本実施形態では、保護層113について、上述した接着剤層112を構成する接着剤の材質に応じた特定の紫外線吸収波長領域(以下、「特定波長領域」という。)の光の透過率が、11%以下、好ましくは6%以下である。なお、上記特定波長領域とは、接着剤層112を構成する接着剤における、紫外線領域内の吸収波長帯であって、当該接着剤を劣化させて接着力を低下させる波長領域をいう。例えば、接着剤層112としてポリエステル系樹脂を主剤とする接着剤を用いる場合には、特定波長領域、すなわち接着剤を劣化させる波長領域は、325nmを中心とする領域となる。本実施形態では、保護層113における特定波長領域の光の透過率を上記範囲とすることにより、積層シート11が照明や太陽光などの光にさらされても、当該光に含まれる特定波長領域の光を保護層113が吸収し、特定波長領域の光が接着剤層112まで到達し難くなるため、接着剤層112の劣化が抑制される。
【0028】
なお、保護層113における特定波長領域の光の透過率を上記範囲にする方法としては、保護層113に含まれる紫外線吸収剤の含有量、及び保護層113の厚みをそれぞれ適宜調整する方法を用いることができる。すなわち、保護層113に含まれる紫外線吸収剤の含有量を多くすると、特定波長領域の光の透過率を低下させることができる一方で、上述したように、保護層113の耐傷付性が低下する傾向にある。また、保護層113の厚みが厚いほど、特定波長領域の光の透過率を低下させることができるが、保護層113の厚みが厚過ぎると、特定波長領域の光の透過率を低下させる効果が飽和し、コスト的に不利になる。そのため、本実施形態では、保護層113に含まれる紫外線吸収剤の含有量と、保護層113の厚みとをバランスさせることにより、得られる積層シート11の耐傷付性を向上させることができるとともに、紫外線による接着剤層112の劣化を抑制できる。
【0029】
なお、保護層113の厚みは、好ましくは3.5μm超であり、より好ましくは4.0〜6.0μmである。保護層113の厚みが薄過ぎると、塗装などの方法により膜として形成することが困難となる。保護層113の厚みが厚過ぎると、上述したようにコスト的に不利になる。
【0030】
次いで、化粧基板12について説明する。積層板1の化粧基板12は、基板121上に、基礎樹脂層122、印刷柄層123及び接着剤層124がこの順で形成されてなる。
【0031】
本例の化粧基板12を構成する基板121としては、特に限定されないが、鋼板や、その他金属板(例えば、アルミニウム板。)などを用いることができる。鋼板としては、冷延鋼板、冷延鋼板に亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム合金などをめっきしためっき鋼板、冷延鋼板に電解クロム酸処理、リン酸クロメート処理、各種のノンクロム処理などの化成処理を施した表面処理鋼板、又はこれらのめっき鋼板にこれらの化成処理を施した表面処理めっき鋼板などを用いることが好ましい。また、積層板1の用途によっては、基板121として、木板や合板などの木質板、石膏ボード、プラスチック板などの非金属板を用いることもできる。
【0032】
基礎樹脂層122としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは、2種以上をブレンドして用いることができ、単層で、又は同一若しくは異なる樹脂を2層以上積層して用いることができる。
【0033】
印刷柄層123は、上述した基礎樹脂層122の上に、印刷インキを塗布することにより形成される印刷インキからなる層であり、下層となる基板121及び基礎樹脂層122を隠蔽するベタ印刷層、又は木目、石目、天然皮革の表面柄、布目、抽象柄などの模様を表現した絵柄印刷層のいずれであってもよい。あるいは、印刷柄層123は、ベタ印刷層を印刷下地とし、その上に絵柄印刷層を重ねて意匠性を向上させたものであってもよい。印刷層20を形成するための印刷インキとしては、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、あるいは、ポリエステル樹脂やウレタン変性ポリエステル樹脂などをビヒクルとする印刷インキを用いることができる。これらのなかでも、密着性および熱接着性の両観点からニトロセルロース−アルキド樹脂系インキが好ましい。
【0034】
接着剤層124は、印刷柄層123と上述した基材111との接着性が良好なものであればよく、特に限定されないが、上述した接着剤層112として挙げた接着剤などを用いることができる。
【0035】
以上のようにして、本実施形態の積層板1は構成される。本実施形態の積層板1によれば、表面に積層シート11が形成されていることによって耐傷付性に優れ、さらに、積層シートの保護層113における紫外線吸収剤の含有量及び特定波長領域の光の透過率を所定範囲に調整しているため、耐傷付性の低下が抑制されるとともに、紫外線による保護層113の剥離が防止される(耐候性が向上する)。これにより、本実施形態の積層板1は、ユーザや物に接触する機会が多く、照明や太陽光などの光に長期間さらされる、冷蔵庫、洗濯機その他の電気製品、建築物、車両などの各種製品の化粧板として、好適に用いることができる。
【0036】
なお、上述した
図3の例においては、積層シート11を化粧基板12の表面に設けて積層板1とし、これを冷蔵庫の化粧板として用いた例を示したが、本実施形態では、化粧基板12を用いることなく、積層シート11自体を、冷蔵庫等の化粧板として用いてもよい。この場合には、
図4に示す積層シート11aのように、化粧基板12に代わる基材111aとして、鋼板や、その他金属板(例えば、アルミニウム板。)などを用いて、この基材111aの上に、直接、接着剤層112を介して保護層113を形成すればよい。
【0037】
また、本実施形態では、
図3に示す積層板1において、化粧基板12に代えて、液晶ディスプレイ等の表示装置に用いられる光学基板(例えば、ガラス板、偏光板など。)を用いることで、積層シート11を表示装置の保護シートとして使用してもよい。あるいは、上述した
図4に示す積層シート11において、基材111aとして、上記光学基板を用いて、この光学基板上の上に、直接、接着剤層112を介して保護層113を形成してもよい。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0039】
《実施例1》
まず、積層シート11を積層するための原板として、厚み0.45mmの溶融亜鉛めっき鋼板を準備し、準備した溶融亜鉛めっき鋼板の表面に接着剤を塗布した。
【0040】
次いで、溶融亜鉛めっき鋼板の接着剤を塗布した面に、積層シート11の基材111として、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム(帝人デュポンフィルム社製、品番:HPE)をラミネートした。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムとしては、予め溶融亜鉛めっき鋼板と重ね合わせる面とは反対方向の面に、ポリエステル系樹脂を主剤とする接着剤層112が形成された、総厚25μmのものを使用した。
【0041】
次いで、接着剤層112の上に、ウレタンアクリレート系のUV硬化型ハードコート剤(新中村化学工業社製、品番:KCR−12902)及び紫外線吸収剤(一方社油脂工業社製、品番:ULS−935LH)をメチルエチルケトン(MEK)に溶解させた溶液をバーコーターで塗布し、温度80℃で2分間乾燥させた後、500mJ/cm
2の紫外線を照射して硬化させることで、紫外線吸収剤の含有率が10重量%であり、厚みが5.5μmの保護層113を形成し、積層シート11を得た。
【0042】
別途、適当な基材フィルム(例えば、厚み100μmの延伸PET)上に、上記溶液を用いて紫外線吸収剤の含有率が10重量%、且つ厚みが5.5μmの保護層113を形成し、作製した保護層付き基材フィルムについて、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、型番:U−4100)を用いて、波長325nmの光の透過率を測定した。また、基材フィルムのみについても、波長325nmの光の透過率を測定した。
そして、測定により得られた保護層付き基材フィルムの透過率T
all、および基材フィルムのみの透過率T
baseから、下記式(1)、(2)に基づいて、保護層付き基材フィルムの吸光度A
all、および基材フィルムのみの吸光度A
baseを算出した。求めた保護層付き基材フィルムの吸光度A
all、および基材フィルムのみの吸光度A
baseから、下記式(3)に基づいて保護層113の吸光度A
coatを計算後、下記式(4)に基づいて保護層113の透過率T
coatを算出した。
ここで、波長325nmの光は、接着剤層112として用いたポリエステル系樹脂を劣化させる波長領域の光である。測定結果より求めた保護層113の透過率を表1に示す。
A
all=−log
10T
all ・・・(1)
A
base=−log
10T
base ・・・(2)
A
coat=A
all−A
base ・・・(3)
T
coat=10
−Acoat ・・・(4)
【0043】
そして、得られた積層シート11を用いて、以下の方法により、耐傷付性及び耐候性(密着性)の評価を行った。
【0044】
<耐傷付性>
まず、約1kgの重りの一方の面に、超極細(#0000)のスチールウールを両面テープで貼付した。次いで、スチールウールを貼付した面が摺動面となるように、上記重りを積層シート11の上に乗せ、サウザランド・ラブテスタ(東洋精機製作所社製)を用いて、設地面積:50cm
2、応力:20gf/cm
2の条件にて上記重りを15往復させた後、目視にて積層シート11を観察し、以下の基準で耐傷付性を評価した。なお、耐傷付性の評価においては、以下の基準で2点以上であれば、積層シート11が十分な耐傷付性を有していると判断した。
3点:積層シート11の摺動面に傷が見られなかった。
2点:積層シート11の摺動面に、3本以下の傷が見られた。
1点:積層シート11の摺動面に、4本以上の傷が見られた。
【0045】
<耐候性>
得られた積層シート11に対して、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製、型番:S80)を用いて、サンシャインウェザオメータ試験(JIS A 1415)を試験時間300時間にわたって実施した後、積層シート11の保護層113に粘着テープを貼付して剥離する剥離試験を行うことで、耐候性(密着性)を評価した。結果を表1に示す。
【0046】
《実施例2,3》
積層シート11の保護層113について、紫外線吸収剤の含有量を13重量%(実施例2)又は15重量%(実施例3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層シート11を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0047】
《比較例1〜10》
積層シート11の保護層113について、紫外線吸収剤の含有量及び保護層113の厚みを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、積層シート11を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
《考 察》
表1に示すように、積層シート11の保護層113について、紫外線吸収剤の含有量を15重量%以下とし、且つ特定波長領域(接着剤層112を劣化させ、接着力を低下させる波長)の光の透過率を11%以下とした実施例1〜3は、耐傷付性及び耐候性(密着性)の評価結果がいずれも良好であり、ユーザや物に接触する機会が多く、照明や太陽光などの光に長期間さらされる機器を保護する積層シートとして好適であることが確認された。
【0050】
一方、表1に示すように、積層シート11の保護層113について、紫外線吸収剤の含有量を15重量%以下としたものの、紫外線吸収剤の含有量と、保護層113の厚みとの関係により、特定波長領域の光の透過率が11%超となった比較例1〜5は、紫外線吸収剤の含有量が低いことから耐傷付性に優れるものの、特定波長領域の光の透過率が高いことから耐候性(密着性)に劣ることが確認された。
【0051】
また、表1に示すように、積層シート11の保護層113について、紫外線吸収剤の含有量を15重量%超とした比較例6〜10は、紫外線吸収剤の含有量を多くしたことにより特定波長領域の光の透過率が低くなり、耐候性(密着性)には優れているが、紫外線吸収剤の含有量が多過ぎることによって耐傷付性が低下していることが確認された。