特許第6461694号(P6461694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6461694車両用の灯火装置、及び、車両用の灯火システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461694
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】車両用の灯火装置、及び、車両用の灯火システム
(51)【国際特許分類】
   B62J 6/02 20060101AFI20190121BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20190121BHJP
   B60Q 1/076 20060101ALI20190121BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20190121BHJP
   F21S 41/36 20180101ALI20190121BHJP
   F21S 41/675 20180101ALI20190121BHJP
   F21W 102/165 20180101ALN20190121BHJP
   F21W 107/13 20180101ALN20190121BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190121BHJP
【FI】
   B62J6/02 F
   B60Q1/04 Z
   B60Q1/076
   F21S41/147
   F21S41/36
   F21S41/675
   F21W102:165
   F21W107:13
   F21Y115:10
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-83204(P2015-83204)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-203653(P2016-203653A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】河辺 正美
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】松元 賢斗
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−095048(JP,A)
【文献】 特開2011−157023(JP,A)
【文献】 特開平04−331678(JP,A)
【文献】 特開2010−149836(JP,A)
【文献】 特開2006−131212(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0055918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 6/02
B60Q 1/00 − 1/56
F21S 2/00 − 45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、複数のミラーセルを有して前記光源からの光を反射するミラーアレイと、を備え、
前記複数のミラーセルの一部からなる第一ミラーセル群において反射する光が、第一照射領域に照射され、
前記複数のミラーセルの残部からなる第二ミラーセル群において反射する光が、第二照射領域に照射され、
前記第二ミラーセル群を構成する複数のミラーセルは、それぞれ独立して揺動可能であり、前記光源からの光が反射することで前記光を前記第二照射領域内の一部に照射されるスポット光とし、かつ、前記スポット光が前記第二照射領域内を移動するように揺動し、
さらに、前記第二ミラーセル群を構成する複数のミラーセルは、複数の前記スポット光が前記第二照射領域を分割した複数のスポット光移動領域においてそれぞれ移動するように揺動する車両用の灯火装置。
【請求項2】
車両の状態変化に応じて前記第二ミラーセル群のミラーセルの傾斜角度が変化することで、前記第二照射領域が前記第一照射領域に対して移動する請求項1に記載の車両用の灯火装置。
【請求項3】
車両が直線走行する際の車両の状態に応じて、前記第二照射領域が前記第一照射領域に対して車両の車幅方向両側に位置し、
車両がカーブを走行する際の車両の状態に応じて、カーブの外側に位置する一方の第二照射領域が、カーブの内側に位置する他方の第二照射領域に隣り合う位置に移動する請求項2に記載の車両用の灯火装置。
【請求項4】
車両の状態変化に応じて、前記第二照射領域が前記第一照射領域に対して車両の進行方向の前後に移動する請求項2又は請求項3に記載の車両用の灯火装置。
【請求項5】
リーン姿勢で旋回する車両がカーブを走行する際のリーン姿勢に応じて、カーブの内側に位置する前記第二照射領域が前記第一照射領域に対して車両の進行方向前側に移動する請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の車両用の灯火装置。
【請求項6】
前記第二照射領域が、車両のウィンカースイッチの状態に応じて前記第一照射領域に対して移動する請求項2に記載の車両用の灯火装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両用の灯火装置と、
車両の状態を検出する状態検出部と、
前記状態検出部の検出結果に基づいて前記第二ミラーセル群の動作を制御するミラーアレイ制御部と、を備える車両用の灯火システム。
【請求項8】
前記状態検出部は、車両の姿勢変化を検出する請求項7に記載の車両用の灯火システム。
【請求項9】
前記状態検出部は、車両のウィンカースイッチの状態を検出する請求項7又は請求項8に記載の車両用の灯火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用の灯火装置、及び、車両用の灯火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両前方を照らすヘッドライト(灯火装置)が設けられている。従来では、ヘッドライトによる視認性を向上させるための様々な工夫がなされている。
例えば特許文献1,2には、ヘッドライトの光源の光を反射する反射鏡として、複数の微小可動鏡の周囲に固定鏡を配置した構成が開示されている。この構成では、微小可動鏡を適宜駆動することで、光を所望の方向(例えば車両の運転者が見たい方向)に向けて照射する。また、複数の微小可動鏡の周囲に固定鏡を配することで、ヘッドライトによる照射領域の拡大を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−190594号公報
【特許文献2】国際公開第2005/080859号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2の構成では、反射鏡における光の反射面積が固定鏡によって拡大されているだけであり、ヘッドライトによる照射領域が拡大しても、照射領域の明るさを十分に得られない虞がある。照射領域の明るさを確保するためには、光源の数や光量を増やすことも考えられるが、この場合には、消費電力が大きくなってしまう。車両において消費電力が大きくなることは好ましくない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、消費電力を大きくすることなく、照射領域の明るさを十分に確保しながら、照射領域の拡大を図ることが可能な車両用の灯火装置、及び、車両用の灯火システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の車両用の灯火装置は、光源と、複数のミラーセルを有して前記光源からの光を反射するミラーアレイと、を備え、前記複数のミラーセルの一部からなる第一ミラーセル群において反射する光が、第一照射領域に照射され、前記複数のミラーセルの残部からなる第二ミラーセル群において反射する光が、第二照射領域に照射され、前記第二ミラーセル群を構成する複数のミラーセルは、それぞれ独立して揺動可能であり、前記光源からの光が反射することで前記光を前記第二照射領域内の一部に照射されるスポット光とし、かつ、前記スポット光が前記第二照射領域内を移動するように揺動し、さらに、前記第二ミラーセル群を構成する複数のミラーセルは、複数の前記スポット光が前記第二照射領域を分割した複数のスポット光移動領域においてそれぞれ移動するように揺動することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の車両用の灯火システムは、前記灯火装置と、車両の状態を検出する状態検出部と、前記状態検出部の検出結果に基づいて前記第二ミラーセル群の動作を制御するミラーアレイ制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スポット光が第二照射領域内において残像効果を得られる程度の速さで移動することで、第一照射領域の外側において第二照射領域を明るく照らすことができる。したがって、光源の数や光量を増やすことなく、すなわち、消費電力を大きくすることなく、灯火装置によって照らされる照射領域の明るさを十分に確保しながら、照射領域の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用の灯火装置を設けた車両を示す正面図である。
図2図1の灯火装置の概略を示す断面図である。
図3図2の灯火装置に備えるミラーアレイの概略を示す平面図である。
図4図3のミラーアレイのミラーセルの概略を示す平面図である。
図5図4のミラーセルの概略を示す断面図である。
図6図2の灯火装置に備える反射鏡の概略を示す図である。
図7】第二ミラーセル群の動作を説明するための模式図である。
図8図1〜5に示す灯火装置を含む灯火システムを示すブロック図である。
図9】車両が直線走行している状態において灯火装置によって照射される照射領域を示す模式図である。
図10図9の状態における灯火装置の動作を説明するための模式図である。
図11図9の状態における灯火装置の動作を説明するための模式図である。
図12】車両がカーブを走行している状態において灯火装置によって照射される照射領域を示す模式図である。
図13図12の状態における灯火装置の動作を説明するための模式図である。
図14図12の状態における灯火装置の動作を説明するための模式図である。
図15】車両が図12よりも曲率半径の小さいカーブを走行している状態において灯火装置によって照射される照射領域を示す模式図である。
図16図15の状態における灯火装置の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜16を参照して本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る車両用の灯火装置は、図1に示すように、リーン姿勢(車両Vを車幅(左右)方向に傾ける姿勢)で旋回する車両の一種である自動二輪車に設けられる。本実施形態の灯火装置2は、車両Vの前方を照らすヘッドライトである。
【0011】
灯火装置2は、図1,2に示すように、光源12と、ミラーアレイ13とを備える。光源12から出射された光は、ミラーアレイ13において反射した上で、所定の照射領域に照射される。本実施形態における照射領域は、車両Vの前方側の路面の領域である。
本実施形態の灯火装置2は、ハウジング11に光源12、ミラーアレイ13、反射鏡14及びレンズカバー15を設けて構成されている。光源12、ミラーアレイ13及び反射鏡14はハウジング11の内部に設けられている。レンズカバー15は、透明な材料からなり、ハウジング11の開口部11Aに設けられている。本実施形態においてハウジング11の開口部11Aは車両Vの前方側に向いている。これにより、本実施形態では、光源12から出射された光が、ミラーアレイ13及び反射鏡14において順番に反射し、さらに、レンズカバー15を通過した上で、車両Vの前方側の照射領域(例えば図9における第一照射領域LA1、第二照射領域LA2)に照射される。図1において、ハウジング11の開口部11A及びレンズカバー15は、平面視矩形状に形成されているが、これに限ることはない。
【0012】
光源12は、後述するミラーアレイ13の全てのミラーセル20(図3参照)に向けて光を照射する。本実施形態の光源12は、LED(Light Emitting Diode)であるが、例えばフィラメント灯であってもよい。また、光源12の数は、例えば複数であってもよいが、本実施形態では一つである。
レンズカバー15は、ハウジング11の開口部11Aを覆うように設けられる。レンズカバー15は、例えば、光源12から出射されてハウジング11の開口部11Aから外部に照射される光の広がりが一定となるように形成されている。
【0013】
ミラーアレイ13は、図3に示すように、複数のミラーセル20を有して光源12からの光を反射する。
複数のミラーセル20のうち一部のミラーセル20Aは、第一ミラーセル群13Aを構成する。第一ミラーセル群13Aにおいて反射する光は、第一照射領域LA1(図10参照)に照射される。また、複数のミラーセル20のうち残部のミラーセル20Bは、第二ミラーセル群13Bを構成する。第二ミラーセル群13Bにおいて反射する光は、第一照射領域LA1とは別の第二照射領域LA2(図10参照)に照射される。
第二ミラーセル群13Bは、第一ミラーセル群13Aに対して任意の位置に配されてよいが、本実施形態では、第一ミラーセル群13Aの左右両側に配される。本実施形態のミラーアレイ13では、図3における左右方向が車両Vの車幅方向(図1参照)に対応し、図3における上下方向が車両Vの上下方向(図1参照)や、路面における車両Vの前後方向に対応するが、これに限ることはない。
【0014】
第二ミラーセル群13Bは、複数の小さなミラーセル20を縦横に配列して構成される。第一ミラーセル群13Aは、例えば第二ミラーセル群13Bを構成するミラーセル20よりも大きなミラーセル20によって構成されてもよいが、本実施形態では、第二ミラーセル群13Bと同様に複数の小さなミラーセル20を縦横に配列して構成される。すなわち、本実施形態のミラーアレイ13は、複数の小さなミラーセル20を縦横に配列して構成されている。
【0015】
第二ミラーセル群13Bを構成する複数のミラーセル20Bは、それぞれ独立して揺動可能である。すなわち、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの反射面は、ミラーアレイ13の上下左右、及び、これらを組み合わせた任意の方向に向けることができる。これにより、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bにおいて反射する光の向きを自在に変えることができる。
第一ミラーセル群13Aのミラーセル20Aは、例えば揺動しなくてもよいが、本実施形態では第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bと同様に揺動可能である。
【0016】
ミラーセル20の具体的構成の一例について説明する。
ミラーセル20は、例えば図4,5に示すように、ベース部21と、ベース部21に対して揺動可能に支持され、光源12からの光を所定の方向に反射させるミラー板22と、を備える。
ミラー板22は、平坦な反射面22Aを有する。ミラー板22は、ベース部21に対して任意の方向に揺動可能である。ミラー板22は、任意の平面視形状に形成されてよいが、本実施形態では平面視矩形状に形成されている。
【0017】
ベース部21の構成は任意であってよいが、本実施形態のベース部21は、板状のベース本体23と、ベース本体23の主面23A上に設けられ、ミラー板22をベース本体23の主面23Aの上方に間隔をあけた位置で揺動可能に支持する支持部24とを備える。
ベース本体23は、例えば基板または板状に形成された絶縁材である。支持部24は、ベース本体23の主面23Aから突出して設けられ、ミラー板22を囲む枠部25と、ミラー板22の周縁部から枠部25まで延びる複数の梁部26と、を備える。
【0018】
枠部25は、ミラー板22に対応する平面視形状に形成されている、すなわち、本実施形態では平面視矩形状に形成されている。
複数の梁部26は、枠部25の周方向に間隔をあけて配列される。各梁部26は、例えば弾性変形可能に形成される。本実施形態において、各梁部26は、ミラー板22の角部とこれに対向する枠部25の角部とを接続する。
これらミラー板22、枠部25、梁部26は、例えば、鉄やニッケル等の軟磁性体、または、半導体からなる基板によって構成することができる。また、ミラー板22の反射面22Aは、例えば、金やアルミ等の金属薄膜を基板に蒸着させることで形成することができる。
【0019】
また、本実施形態のミラーセル20は、ミラー板22を所望の傾斜角度に変位させるための構成として、ベース本体23の主面23Aに配される複数の電極27を備える。複数の電極27は、ベース本体23の主面23Aのうちミラー板22に対向する領域において枠部25の周方向に互いに間隔をあけて配列される。本実施形態では、電極27がミラー板22の各角部に配されている。
【0020】
この構成において、ミラー板22を傾斜させる場合には、例えば複数の電極27のうち選択された一部の電極27に駆動電位を印加する。また、ミラー板22に接地電位を印加する。これにより、印加された電極27とその直上に位置するミラー板22の部位との間に静電引力(クーロン力)が発生する。この静電引力によって上記ミラー板22の部位がベース本体23に近づくことでミラー板22が傾斜する。また、選択された電極27に印加する駆動電位の大きさを調整することで、ミラー板22の傾斜角度を変化させ、ミラー板22を所望の傾斜角度に設定することができる。また、駆動電位が印加される電極27を変えることで、ミラー板22を揺動させることができる。
本実施形態における第二ミラーセル群13Bのミラー板22の傾斜角度(以下、ミラーセル20の傾斜角度と呼ぶ。)の変化は、後述する状態検出部3及びミラーアレイ制御部4(図8参照)によって行われる。
【0021】
図6に示すように、反射鏡14の反射面14Aは、任意の形状に形成されてよいが、本実施形態では左右方向に凹状に湾曲している。また、反射鏡14の反射面14Aは、反射鏡14の上側から下側に向かうにしたがって反射面14Aが上方に向くように凹状に湾曲している。図6における反射鏡14の左右方向は、車両Vの車幅方向に対応し、反射鏡14の上下方向は車両Vの上下方向、路面における車両の前後方向に対応する。
【0022】
反射鏡14の反射面14Aのうち左右方向の中央の領域は、主にミラーアレイ13の第一ミラーセル群13Aにおいて反射した光を反射させる第一反射領域14A1であり、主に図9,10における第一照射領域LA1に対応する。一方、反射鏡14の反射面14Aのうち第一反射領域14A1の左右両側の領域は、第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光を反射させる第二反射領域14A2であり、図9,10における第二照射領域LA2に対応する。
また、反射鏡14の反射面14Aのうち上下方向の下側の領域は、光を車両Vの進行方向の手前側に照射するための下側反射領域14AL(Lowビーム用の反射領域)である。一方、反射鏡14の反射面14Aのうち下側反射領域14ALの上側に隣り合う領域は、車両Vの進行方向の奥側に照射するための上側反射領域14AH(Hiビーム用の反射領域)である。
反射鏡14は、図2に例示するように一枚だけ設けられてもよいが、例えば二枚以上設けられてもよい。すなわち、灯火装置2は、例えばミラーアレイ13からの光を複数の反射鏡14で繰り返し反射させた上で、照射領域を照らすように構成されてもよい。
【0023】
上記した本実施形態の灯火装置2において、第二ミラーセル群13Bを構成する複数のミラーセル20Bは、図7に示すように、光源12からの光が反射することで第二照射領域LA2(図7において第二照射領域LA2に対応する反射鏡14の反射面14Aの領域)内の一部に照射されるスポット光SLとし、かつ、スポット光SLが第二照射領域LA2(反射面14Aの対応領域)内を移動するように揺動する。スポット光SLは、複数のミラーセル20Bにおいて反射して第二照射領域LA2の同一の一部領域(スポット光照射領域SLA)に照射される光である。
【0024】
スポット光SLは、これを作る複数のミラーセル20Bが連携して揺動することで第二照射領域LA2内を移動する。スポット光SLは、残像効果を得られる程度の速さで第二照射領域LA2内を移動する。これにより、第二照射領域LA2全体が、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bにおいて反射した光によって照射される。
スポット光SLは、例えば第二ミラーセル群13Bの全てのミラーセル20Bを用いて一つだけ作られてもよいが、本実施形態では複数作られる。以下、本実施形態のスポット光SLについて具体的に説明する。
【0025】
本実施形態では、第二ミラーセル群13Bのうち一部(図7において五つ)のミラーセル20Bを一つのセルユニット13BUとし、一つのセルユニット13BUによって一つのスポット光SLが作られる。同一のセルユニット13BUを構成する複数のミラーセル20Bは、図7のように左右方向に配列されてもよいが、任意に配列されてよい。
本実施形態において、各スポット光SLのスポット光照射領域SLAは、第二照射領域LA2の一部領域(スポット光移動領域SMA)において移動する。すなわち、本実施形態の第二照射領域LA2は、複数のスポット光移動領域SMAを配列して構成されている。
【0026】
本実施形態における各スポット光移動領域SMAは帯状であり、スポット光照射領域SLAはスポット光移動領域SMAの長手方向に移動する。このため、スポット光移動領域SMAの短手方向の寸法は、これに対応するスポット光照射領域SLAの寸法と同等である。
図7において、スポット光移動領域SMAの長手方向の寸法は、これに対応するスポット光照射領域SLAの寸法の五倍に設定されているが、これに限ることはない。また、帯状のスポット光移動領域SMAは、例えば途中で折り返すように設定されてもよいが、例えば図7のように折り返さずに直線状に形成されてもよい。また、スポット光移動領域SMAの長手方向は、例えば図7のように左右方向に延びてもよいが、これに限ることはない。
【0027】
また、本実施形態において、複数のスポット光移動領域SMAはその幅方向(図7において上下方向)及び長手方向(図7において左右方向)に互いに隣り合うように配列されている。また、幅方向に隣り合う二つのスポット光移動領域SMAにおける二つのスポット光SLのスポット光照射領域SLAの移動方向は、互いに逆向きに設定されている。
スポット光SLを作成したり移動させたりするための第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの動作は、後述するミラーアレイ制御部4によって行われる。
【0028】
以上のように構成される本実施形態の灯火装置2では、光源12から出射されてミラーアレイ13の第一ミラーセル群13Aにおいて反射する光が、反射鏡14の第一反射領域14A1において反射し、第一照射領域LA1を照らす。一方、光源12から出射されてミラーアレイ13の第二ミラーセル群13Bにおいて反射する光は、反射鏡14の第二反射領域14A2等において反射し、第一照射領域LA1に隣り合う第二照射領域LA2を照らす。本実施形態では、図10,13に例示するように、第二ミラーセル群13Bにおいて反射する光が二つの第二照射領域LA2(LA2R,LA2L)を照らす。
【0029】
また、第二ミラーセル群13Bにおいて反射する光(スポット光SL)は、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度の変化に応じて、第一照射領域LA1の外側の領域において移動する。すなわち、本実施形態の灯火装置2では、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度が変化することで、第二ミラーセル群13Bからの光によって照射される第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して移動する。
上記した第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度は、スポット光SLをスポット光移動領域SMA内で移動させるために第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bが揺動する角度範囲の中間の角度を意味する。
【0030】
以下、第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して移動する具体例について図9〜16を参照して説明する。
本実施形態において、例えば図10,11に示すように、各第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光(スポット光SL)が、反射鏡14のうち各第二ミラーセル群13Bに対応する側の各第二反射領域14A2において反射する場合、すなわち、左側の第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光が反射鏡14のうち左側の第二反射領域14A2において反射し、かつ、右側の第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光が右側の第二反射領域14A2において反射する場合には、図9,10に示すように、第二照射領域LA2が第一照射領域LA1の左右両側に位置する。
【0031】
また、例えば図13,14に示すように、左右両側の第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光(スポット光SL)が、反射鏡14のうち左右一方の第二反射領域14A2やその近傍において反射する場合には、図12,13に示すように、二つの第二ミラーセル群13Bに対応する二つの第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して左右の一方側のみに位置する。
すなわち、本実施形態の灯火装置2では、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度(向き)をミラーアレイ13の左右方向に変化させることで、図10,13のように第二照射領域LA2が左右方向に移動する。
【0032】
本実施形態の灯火装置2では、上記のように左右両側の第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光(スポット光SL)が、反射鏡14のうち左右一方の第二反射領域14A2やその近傍において反射すると、左右の第二ミラーセル群13Bからの光が反射鏡14の反射面14Aにおいて反射する反射角度α1,α2の違いによって、二つの第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して左右の一方側に順番に配列される。この点について、図13を参照して具体的に説明する。
【0033】
右側の第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光(スポット光SL)は、反射鏡14の右側の第二反射領域14A2において反射することで、第一照射領域LA1に隣り合う第二照射領域LA2Lを照らす。一方、左側の第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光(スポット光SL)は、反射鏡14の右側の第二反射領域14A2やその近傍において反射するが、この反射角度α2は、右側の第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光が右側の第二反射領域14A2において反射する反射角度α1よりも大きい。このため、左側の第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光は、右側の第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光によって照らされる第二照射領域LA2Lよりも第一照射領域LA1から離れた別の第二照射領域LA2Rを照らす。
反射角度α1,α2の違いは、例えば、二つの第二ミラーセル群13Bの相対的な配置や、左右方向に凹状に湾曲する反射鏡14の反射面14Aの形状などに起因して生じる。
【0034】
また、本実施形態の灯火装置2では、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度(向き)をミラーアレイ13の上下方向に変化させることで、第二照射領域LA2が灯火装置2に対して近接あるいは離間する方向に移動する。
例えば図11,14に示すように、各第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光が、反射鏡14のうち下側反射領域14ALにおいて反射する場合には、図9,12のように第二照射領域LA2が灯火装置2の近くに位置する。一方、例えば図16に示すように各第二ミラーセル群13Bにおいて反射した光が、反射鏡14のうち上側反射領域14AHにおいて反射する場合には、図15に示すように第二照射領域LA2が灯火装置2から離れて位置する。
【0035】
また、本実施形態の灯火装置2では、第一ミラーセル群13Aのミラーセル20Aの傾斜角度(向き)をミラーアレイ13の上下方向に変化させることで、上記した第二ミラーセル群13Bの場合と同様に、第一照射領域LA1が灯火装置2に対して近接あるいは離間する方向に移動する。
また、本実施形態の灯火装置2では、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度(向き)だけをミラーアレイ13の上下方向に変化させ、第一ミラーセル群13Aのミラーセル20Aの傾斜角度を固定することで、第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して灯火装置2に近づく方向あるいは離れる方向に移動する。
第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bは、前述したように上下左右を組み合わせた任意の方向に傾斜させることができる。このため、第二照射領域LA2は、灯火装置2に対する左右方向と近接離間方向とを組み合わせた任意の方向に移動することができる。
【0036】
本実施形態の灯火装置2は、図8に示すように、車両Vの状態を検出する状態検出部3、及び、状態検出部3の検出結果に基づいて少なくとも第二ミラーセル群13Bの動作を制御するミラーアレイ制御部4と共に、灯火システム1を構成している。
状態検出部3には、車両Vの姿勢を検出する姿勢検出部5と、車両Vのウィンカースイッチ(不図示)の状態を検出するスイッチ検出部6とが含まれる。
【0037】
本実施形態の姿勢検出部5には、車速度センサ、ハンドル角度センサ、車両傾斜センサが含まれる。車速度センサは、車両Vの車速を検出する。ハンドル角度センサは、操舵輪(本実施形態では前輪タイヤ)が車両Vの前後方向に向いている状態を基準として、操舵輪の左右への回転角度(ハンドル角度)を検出する。車両傾斜センサは、例えばジャイロセンサであり、車両Vが直立した状態(図1,9参照)を基準とした車両Vの左右への傾斜角度(以下、リーン角度と呼ぶ。)を検出する。これら車速度センサ、ハンドル角度センサ、車両傾斜センサにおいて検出された車速、ハンドル角度、リーン角度を示す信号は、ミラーアレイ制御部4に送出される。
【0038】
スイッチ検出部6は、ウィンカースイッチの位置を検出する。具体的に説明すれば、スイッチ検出部6は、ウィンカースイッチが右側あるいは左側のウィンカー(方向指示器)を動作させる位置、ウィンカーが動作しない位置のいずれに配されているか、を検出する。スイッチ検出部6において検出されたウィンカースイッチの位置を示す信号は、ミラーアレイ制御部4に送出される。
【0039】
ミラーアレイ制御部4は、スポット光SLを作成し、これを移動させるように第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの動作を制御する。
また、ミラーアレイ制御部4は、上記した状態検出部3の検出結果に基づいて、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を変化させる。ミラーアレイ制御部4は、例えば姿勢検出部5において検出されたリーン角度に基づいて、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を変化させる。また、ミラーアレイ制御部4は、例えばスイッチ検出部6において検出されたウィンカースイッチの位置に基づいて、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を変化させる。
【0040】
また、ミラーアレイ制御部4は、例えば車速及びリーン角度に基づいて車両Vのコーナリング半径を求めてもよい。この場合、ミラーアレイ制御部4は、コーナリング半径により車両Vの走行状態(旋回状態)を予測し、この予測に基づいて第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を変化させてもよい。なお、ハンドル角度センサ、車両傾斜センサにおいて検出されるハンドル角度、リーン角度のデータ更新は、車速度センサにおいて検出される車速のデータ更新よりも早い。このため、例えば所定の車速におけるハンドル角度及びリーン角度の変位を検出し、上記したコーナリング半径を求めることで、車両の走行状態を予測してもよい。
【0041】
ミラーアレイ制御部4は、第二ミラーセル群13Bを構成する各ミラーセル20Bの複数の電極27(図4,5参照)に対して駆動電位を選択的に印加することによって、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を変化させる。ミラーアレイ制御部4は、例えば、電極27に対して駆動電位を印加した状態に保持する機能、すなわち、ミラーセル20Bを所定の傾斜角度の保持する機能を備えてもよい。ミラーアレイ制御部4は、第二ミラーセル群13Bの複数のミラーセル20Bを独立して制御することができる。
本実施形態のミラーアレイ制御部4は、第二ミラーセル群13Bだけではなく、例えば第一ミラーセル群13Aの動作も同様に制御してよい。
【0042】
次に、上記構成の灯火装置2及びこれを備える灯火システム1を車両Vに設けた場合の動作について説明する。ここでは、車両Vの状態変化に伴う灯火システム1の動作について説明する。本実施形態における車両Vの状態変化には、車両Vの姿勢変化、及び、車両Vのウィンカースイッチの状態変化が含まれる。
【0043】
〔車両の姿勢変化に伴う動作〕
はじめに、車両Vの姿勢変化、具体的には、車両Vのリーン角度に応じた灯火システム1の動作について説明する。
【0044】
〔車両のリーン角度が0度または微小の場合〕
図9に示すように、車両Vが、その車幅方向に傾斜しない状態(例えばリーン角度θが0度または微小な角度)で走行する場合、具体的には、直線の道路や、直線の道路に近い曲率半径の大きいカーブを走行したりする場合、また、曲率半径の小さいカーブであっても車速が十分に小さい状態で旋回したりする場合を考える。上記したカーブの走行には、湾曲した道路における走行だけではなく、交差点を曲がるときの走行も含まれる。
【0045】
車両Vがその車幅方向に傾斜しない状態で走行する場合、すなわち、姿勢検出部5からの信号に基づいて得られたリーン角度θが0度または微小である場合、灯火装置2から出射される光は、道路のうち車両Vの前方側(進行方向Dの奥側(前側))の領域を照射する。この照射領域は、車両Vの車幅方向の中央の第一照射領域LA1、及び、第一照射領域LA1に対して車幅方向両側に位置する第二照射領域LA2である。
【0046】
このように灯火装置2から光を出射するためには、図10,11に示すように、二つの第二ミラーセル群13Bにおいて反射する光(スポット光SL)が、反射鏡14のうち各第二ミラーセル群13Bに対応する側の各第二反射領域14A2において反射するように、ミラーアレイ制御部4が第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を設定する。また、第二ミラーセル群13Bにおいて反射する光が第二反射領域14A2のうち下側反射領域14ALに入射されるように、ミラーアレイ制御部が第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を設定する。
【0047】
〔車両のリーン角度が小さい場合〕
次に、図12に示すように、車両Vが、所定の車速を維持しながらカーブを走行する場合、具体的には、車両Vを車幅方向に少し傾斜した状態(リーン角度θ=θ1(小さいが微小ではない角度))で走行する場合を考える。
【0048】
車両Vが少し傾斜した状態で走行する場合、すなわち、姿勢検出部5からの信号に基づいて得られたリーン角度θが小さい場合、カーブの外側に位置する一方の第二照射領域LA2Rが第一照射領域LA1よりも車両Vの進行方向Dの奥側に位置する。一方、車両Vがカーブを走行する際に車両Vの運転者が積極的に見たい方向はカーブの内側である。
このため、車両Vがカーブを走行する際には、カーブの外側に位置する一方の第二照射領域LA2Rが、カーブの内側に位置する他方の第二照射領域LA2Lに隣り合う位置に移動するように、ミラーアレイ制御部4が一方の第二照射領域LA2Rに対応する一方の第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を変化させる。
【0049】
このように灯火装置2から光を出射するためには、図13,14に示すように、一方の第二ミラーセル群13Bにおいて反射する光(スポット光SL)が、反射鏡14のうち他方の第二ミラーセル群13Bに対応する第二反射領域14A2やその近傍において反射するように、一方の第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度が設定されればよい。他方の第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度は、車両Vがその車幅方向に傾斜しない状態で走行する場合と同様に設定されてよい。また、全ての第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度は、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bにおいて反射する光が下側反射領域14ALに入射されるように設定されればよい。
これにより、図12に示すように、第一照射領域LA1、他方の第二照射領域LA2L、一方の第二照射領域LA2Rが、カーブの内側に向けて順番に配列される。また、車両Vが傾斜していることで、一方の第二照射領域LA2Rが車両Vに対して最も進行方向Dの手前側(後側)に位置し、他方の第二照射領域LA2L、第一照射領域LA1の順番で車両Vから進行方向Dの奥側(前側)に離れて位置する。
【0050】
〔車両のリーン角度が大きい場合〕
次に、図15に示すように、車両Vが、前述したものよりも車速が高い状態を維持しながらカーブを走行する場合、または、前述したものと同じ車速で曲率半径の小さなカーブを走行する場合、すなわち、車両Vを車幅方向に大きく傾斜した状態(リーン角度θ=θ2>θ1)で走行する場合を考える。
【0051】
車両Vが大きく傾斜した状態で走行する場合、すなわち、姿勢検出部5からの信号に基づいて得られたリーン角度θが大きい場合、カーブの内側に位置する二つの第二照射領域LA2が第一照射領域LA1よりも車両Vの進行方向Dの手前側に位置する。一方、車両Vを車幅方向に大きく傾斜した状態で走行する際に車両Vの運転者が積極的に見たい方向はカーブの内側のうち、車両Vの進行方向Dの奥側である。
このため、車両Vを車幅方向に大きく傾斜した状態で走行する際には、カーブの内側に位置する第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して車両Vの進行方向Dの奥側に移動するように、ミラーアレイ制御部4が第二照射領域LA2に対応する第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を変化させる。
【0052】
このように灯火装置2から光を出射するためには、図16に示すように、カーブの内側に位置する第二照射領域LA2に対応する第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bにおいて反射する光(スポット光SL)が、反射鏡14のうち上側反射領域14AHに入射されるように、第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度が設定されればよい。
この状態では、図15に示すように、第一照射領域LA1、他方の第二照射領域LA2L、一方の第二照射領域LA2Rが、カーブの内側に向けて順番に配列される。また、車両Vが傾斜していても、第一照射領域LA1を車両Vに対して最も進行方向Dの手前側に位置させ、他方の第二照射領域LA2L、一方の第二照射領域LA2Rの順番で車両Vから進行方向Dの奥側に離れて位置させることができる。
【0053】
〔ウィンカースイッチの状態変化に伴う動作〕
次に、車両Vのウィンカースイッチの状態変化、具体的には、ウィンカースイッチの操作に基づく灯火システム1の動作について説明する。
例えば、車両Vの運転者が左側のウィンカーを点滅させるようにウィンカースイッチを操作した場合、すなわち、スイッチ検出部6からミラーアレイ制御部4に出力される信号が左側のウィンカーの点滅を示す場合、車両Vは左方向に曲がるカーブを走行することが予測される。
【0054】
このため、例えば図12に示すように、カーブの外側(右側)に位置する一方の第二照射領域LA2Rが、カーブの内側(左側)に位置する他方の第二照射領域LA2Lに隣り合う位置に移動するように、ミラーアレイ制御部4が一方の第二照射領域LA2Rに対応する一方の第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を変化させる。
また、これに加えて、例えば図15に示すように、カーブの内側(左側)に位置する第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して車両Vの進行方向Dの奥側に移動するように、ミラーアレイ制御部4がカーブの内側の第二照射領域LA2に対応する第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度を変化させる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の灯火装置2及びこれを備える灯火システム1によれば、第二ミラーセル群13Bを構成する複数のミラーセル20Bによって形成されるスポット光SLが第二照射領域LA2内において残像効果を得られる程度の速さで移動する。これにより、第一照射領域LA1の外側において第二照射領域LA2を明るく照らすことができる。したがって、光源12の数や光量を増やすことなく、すなわち、消費電力を大きくすることなく、灯火装置2によって照らされる照射領域の明るさを十分に確保しながら、照射領域の拡大を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態の灯火装置2及び灯火システム1によれば、車両Vの状態(リーン角度の大きさ、ウィンカースイッチの状態)が変化することに応じて第二ミラーセル群13Bのミラーセル20Bの傾斜角度が変化することで、第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して移動する。これにより、車両Vの状態に適した照射領域(車両Vの運転者が見たい方向の領域)を照らすことが可能となる。
【0057】
また、本実施形態の灯火装置2及び灯火システム1によれば、図9に例示したように車両Vが直線走行またはこれに近い走行をする際の車両Vの状態に応じて、第二照射領域LA2が第一照射領域LA1の車幅方向両側に位置する。このため、車両Vが直線走行等する際には、灯火装置2による照射領域を車幅方向両側に拡大することができる。
また、図12に例示したように車両Vがカーブを走行する際の車両Vの状態に応じて、カーブの外側に位置する一方の第二照射領域LA2Rが、カーブの内側に位置する他方の第二照射領域LA2Lに隣り合う位置に移動する。このため、車両Vがカーブを走行する際には、灯火装置2による照射領域をカーブの内側に拡大することができる。すなわち、車両Vがカーブを走行する際に車両Vの進行方向Dの領域(運転者が見たい方向の領域)を積極的に照らすことができる。また、一方の第二照射領域LA2Rがカーブの外側から内側に移動することで、一方の第二照射領域LA2Rを照らす光がカーブの外側にある対向車線を照らすことを抑制できる、すなわち、対向車線を走行する車両の運転者に届くことを抑制できる。
【0058】
また、本実施形態の灯火装置2及び灯火システム1によれば、図15に例示したように車両Vがカーブを走行する際のリーン姿勢(リーン角度θ)に応じて、カーブの内側に位置する第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して車両Vの進行方向Dの奥側(前側)に移動する。これにより、車両Vのリーン角度が大きくなっても、灯火装置2から出射される光によって、車両Vの進行方向Dの領域(運転者が見たい方向の領域)をより積極的に照らすことができる。
【0059】
また、本実施形態の灯火装置2及び灯火システム1によれば、車両Vのウィンカースイッチの状態に応じて第二照射領域LA2が第一照射領域LA1に対して移動する。これにより、車両Vの姿勢に関わらず、車両Vがカーブを走行する前の段階(車両Vがリーン姿勢となる前の状態)で、予めカーブの先(予測される車両Vの進行方向Dの領域)を照らすことができる。
【0060】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0061】
例えば、車両Vがカーブを走行する際に、第一照射領域LA1に対してカーブの外側に位置する一方の第二照射領域LA2Rが、カーブの外側から内側には移動せず、車両Vの進行方向Dの手前側に移動し、カーブの内側に位置する他方の第二照射領域LA2Lが車両Vの進行方向前側に移動してもよい。
この場合でも、上記実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、車両Vがカーブを走行する際にカーブの内側の他方の第二照射領域LA2Lが車両Vの進行方向Dの奥側に移動することで、車両Vの進行方向Dの領域を積極的に照らすことができる。また、車両Vがカーブを走行する際にカーブの外側の一方の第二照射領域LA2Rが車両Vの進行方向Dの手前側に移動することで、一方の第二照射領域LA2Rを照らす光がカーブの外側にある対向車線を照らすことを抑制できる、すなわち、対向車線を走行する車両の運転者に届くことを抑制できる。
【0062】
また、第二照射領域LA2は、例えば車両Vに設けられる灯火装置2の操作スイッチの状態に応じて、また、例えば車両Vの車速変化に応じて、第一照射領域LA1に対して車両の進行方向Dの前後(手前側、奥側)に移動してもよい。例えば、第二照射領域LA2は、車両Vが減速する際に第一照射領域LA1に対して車両Vの進行方向Dの手前側(後側)に移動し、車両Vが加速する際に第一照射領域LA1に対して車両Vの進行方向Dの奥側(前側)に移動してもよい。これらの場合でも、車両Vの運転者が見たい方向の領域を積極的に照らすことができる。
【0063】
また、第二照射領域LA2は、第一照射領域LA1に対して車両Vの車幅方向に隣り合せて位置することに限らず、例えば車両Vの進行方向Dの前後に位置してもよいし、例えば第一照射領域LA1の外側全体に位置してもよい。
【0064】
本発明の灯火装置及び灯火システムは、自動二輪車に適用されることに限らず、例えば、自動三輪車やスノーモービル、ATV(全地形走行車)等のようにリーン姿勢で旋回する他の車両、あるいは、リーン姿勢で旋回しない自動四輪車等の車両にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 灯火システム
2 灯火装置
3 状態検出部
4 ミラーアレイ制御部
5 姿勢検出部
6 スイッチ検出部
12 光源
13 ミラーアレイ
13A 第一ミラーセル群
13B 第二ミラーセル群
20,20A,20B ミラーセル
LA1 第一照射領域
LA2 第二照射領域
LA2R 一方の第二照射領域
LA2L 他方の第二照射領域
SL スポット光
V 車両
D 進行方向
θ,θ1,θ2 リーン角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16