(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤とを含み、カールフィッシャー法による水分量が5000ppm以下であると共に、分散された状態のフッ素系樹脂のマイクロパウダーの平均粒子径が1μm以下であるフッ素系樹脂の非水系分散体と、シアン酸エステル樹脂またはエポキシ樹脂からなる樹脂組成物と、を少なくとも含むことを特徴とする回路基板用接着剤組成物。
前記フッ素系樹脂のマイクロパウダーが、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンープロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシ重合体、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンークロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレンークロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上のフッ素系樹脂のマイクロパウダーであることを特徴とする請求項1に記載の回路基板用接着剤組成物。
前記非水系分散体に用いる溶媒が、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ブチルモノグリシジルエーテル、フェニルモノグリシジルエーテル、メチルジグリシジルエーテル、エチルジグリシジルエーテル、ブチルジグリシジルエーテル、フェニルジグリシジルエーテル、メチルフェノールモノグリシジルエーテル、エチルフェノールモノグリシジルエーテル、ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ミネラルスピリット、2−ヒドロキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−ビニルピリジン、N−メチル−2−ピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキソラン、各種シリコーンオイル、からなる群から選ばれる1種類の溶媒、またはこれらの溶媒を2種以上含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の回路基板用接着剤組成物。
前記絶縁性フィルムが、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリエステル、パラ系アラミド、ポリ乳酸、ナイロン、ポリパラバン酸、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、からなる群より選ばれる1種類以上のフィルムであることを特徴とする請求項4に記載の回路基板用積層板。
前記絶縁性フィルムが、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリエステル、パラ系アラミド、ポリ乳酸、ナイロン、ポリパラバン酸、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、からなる群より選ばれる1種類以上のフィルムであることを特徴とする請求項6に記載のカバーレイフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の回路基板用接着剤組成物は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤とを含み、カールフィッシャー法による水分量が5000ppm以下であるフッ素系樹脂の非水系分散体と、シアン酸エステル樹脂またはエポキシ樹脂からなる樹脂組成物と、を少なくとも含むことを特徴とするものである。
【0021】
〔フッ素系樹脂の非水系分散体〕
本発明に用いるフッ素系樹脂の非水系分散体としては、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤とを含み、カールフィッシャー法による水分量が5000ppm以下となる非水系分散体となるものであれば、特に限定されないが、例えば、少なくとも、一次粒子径が1μm以下のフッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤、溶媒などを用いることにより調製等することができる。
本発明に用いることができるフッ素系樹脂のマイクロパウダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレン−プロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)からなる群から選ばれる少なくとも1種のフッ素系樹脂のマイクロパウダーが挙げられ、これらは一次粒子径が1μm以下となるものが好ましい。
上記フッ素系樹脂のマイクロパウダーの中でも、特に、低比誘電率、低誘電正接の材料として、樹脂材料の中で最も優れた特性を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE、比誘電率2.1)の使用が望ましい。
このようなフッ素系樹脂のマイクロパウダーは、乳化重合法により得られるものであり、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(黒川孝臣編、日刊工業新聞社)に記載されている方法など、一般的に用いられる方法により得ることができる。そして、前記乳化重合により得られたフッ素系樹脂のマイクロパウダーは、凝集・乾燥して、一次粒子径が凝集した二次粒子として微粉末として回収されるものであるが、一般的に用いられている各種微粉末の製造方法を用いることができる。
【0022】
フッ素系樹脂のマイクロパウダーの一次粒子径としては、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、画像イメージング法などによって測定される体積基準の平均粒子径(50%体積径、メジアン径)が1μm以下であることが油性溶剤中で安定に分散する上で好ましく、望ましくは、0.5μm以下、さらに望ましくは、0.3μm以下とすることにより、さらに均一な分散体となる。
このフッ素系樹脂のマイクロパウダーの一次粒子径が1μmを超えるものであると、油性溶剤中で沈降しやすくなり、安定して分散することが難しくなるため、好ましくない。また、上記平均粒子径の下限値は、低ければ低い程良好であるが、製造性、コスト面等から、0.05μm以上が好ましい。
なお、本発明におけるフッ素系樹脂の一次粒子径は、マイクロパウダーの重合段階においてレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって得られた値を指し示すものであるが、乾燥して粉体状態にしたマイクロパウダーの場合には、一次粒子同士の凝集力が強く、容易に一次粒子径をレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって測定することが難しいため、画像イメージング法によって得られた値を指し示すものであってもよい。測定装置としては、例えば、FPAR−1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法や、マイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法や、マックビュー(株式会社マウンテック社製)による画像イメージング法などを挙げることができる。
【0023】
本発明においては、非水系分散体全量に対して、フッ素系樹脂のマイクロパウダーが5〜70質量%含有されるものであることが好ましく、より好ましくは、10〜50質量%含有されることが望ましい。
この含有量が5質量%未満の場合には、溶媒の量が多く、極端に粘度が低下するためにフッ素系樹脂のマイクロパウダー微粒子が沈降しやすくなるだけでなく、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂などの材料と混合した際に溶媒の量が多いことによる不具合、例えば、溶媒の除去に時間を要することになるなど好ましくない状況を生じることがある。一方、70質量%を超えて大きい場合には、フッ素系樹脂のマイクロパウダー同士が凝集しやすくなり、微粒子の状態を安定的に、流動性を有する状態で維持することが極端に難しくなるため、好ましくない。
【0024】
本発明の非水系分散体に用いることができるフッ素系添加剤は、少なくとも含フッ素基と親油性基を有するものであれば、特に限定されるものではなく、この他に親水性基が含有されているものであってもよい。
少なくとも含フッ素基と親油性基を有するフッ素系添加剤を用いることにより、分散媒となる油性溶剤の表面張力を低下させ、フッ素系樹脂のマイクロパウダー表面に対する濡れ性を向上させてフッ素系樹脂のマイクロパウダーの分散性を向上させると共に、含フッ素基がフッ素系樹脂のマイクロパウダー表面に吸着し、親油性基が溶媒となる油性溶剤中に伸長し、この親油性基の立体障害によりフッ素系樹脂のマイクロパウダーの凝集を防止して分散安定性を更に向上させるものとなる。
含フッ素基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルケニル基などが挙げられ、親油性基としては、例えば、アルキル基、フェニル基、シロキサン基などの1種又は2種以上が挙げられ、親水性基としては、例えば、エチレンオキサイドや、アミド基、ケトン基、カルボキシル基、スルホン基などの1種又は2種以上が挙げられる。
具体的に用いることできるフッ素系添加剤としては、パーフルオロアルキル基含有のサーフロンS−611などのサーフロンシリーズ(AGCセイミケミカル社製)、メガファックF−555、メガファックF−558、メガファックF−563などのメガファックシリーズ(DIC社製)、ユニダインDS−403Nなどのユニダインシリーズ(ダイキン工業社製)などを用いることができる。
これらのフッ素系添加剤は、用いるフッ素系樹脂のマイクロパウダーと溶媒の種類によって、適宜最適なものが選択されるものであるが、1種類、または2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0025】
前記フッ素系添加剤の含有量は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーの質量に対して、0.1〜40質量%含有されるものであるが、望ましくは、5〜30質量%、さらに望ましくは、10〜25質量%含有されることが好ましい。
この含有量がフッ素系樹脂のマイクロパウダーの質量に対して、0.1質量%未満では、フッ素系樹脂のマイクロパウダー表面を充分に油性溶剤などの溶媒に濡らすことができず、一方、40質量%超過では分散体の泡立ちが強くなって分散の効率が低下し、分散体自体の取扱いやその後に樹脂材料などと混ぜ合わせる際にも不具合を生じることなどがあり、好ましくない。
【0026】
本発明におけるフッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のようなフッ素系添加剤と組み合わせて、他の界面活性剤を用いることも可能である。
例えば、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの界面活性剤やノニオン系、アニオン系、カチオン系などの高分子界面活性剤などを挙げることができるが、これらに限定されることなく、使用することができる。
【0027】
本発明の上記非水系分散体に用いられる溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ブチルモノグリシジルエーテル、フェニルモノグリシジルエーテル、メチルジグリシジルエーテル、エチルジグリシジルエーテル、ブチルジグリシジルエーテル、フェニルジグリシジルエーテル、メチルフェノールモノグリシジルエーテル、エチルフェノールモノグリシジルエーテル、ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ミネラルスピリット、2−ヒドロキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−ビニルピリジン、N−メチル−2−ピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキソラン、各種シリコーンオイル、からなる群から選ばれる1種類の溶媒、またはこれらの溶媒を2種以上含んでいるものが挙げられる。
これらの溶媒の中で、好ましくは、用いる接着性樹脂種、回路基板の用途等により変動するものであるが、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキソランが挙げられる。
【0028】
本発明においては、上記溶媒を用いるものであるが、他の溶媒と組み合わせて用いることや他の溶媒を用いることもできるものであり、用いる用途(各種の回路基板用樹脂材料)などにより好適なものが選択される。
なお、用いる溶媒の極性によっては水との相溶性が高いものが考えられるが、水分量が多いとフッ素系樹脂のマイクロパウダーの溶媒中への分散性を阻害し、粘度上昇や粒子同士の凝集を引き起こすことがある。
本発明においては、用いる溶媒は、カールフィッシャー法による水分量が、5000ppm以下〔0≦水分量≦5000ppm〕となるものが好ましい。本発明(後述する実施例を含む)において、カールフィッシャー法による水分量の測定は、JIS K 0068:2001に準拠するものであり、MCU−610(京都電子工業社製)により測定することができる。この溶媒中の水分量を5000ppm以下にすることで、更に、微粒子径で低粘度、保存安定性に優れたフッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体とすることができ、更に好ましくは、3000ppm以下、より好ましくは、2500ppm以下、特に2000ppm以下とすることが望ましい。なお、上記水分量以下の調整としては、一般的に用いられている油性溶剤などの溶媒の脱水方法を用いることが可能であるが、例えば、モレキュラーシーブスなどを用いることができる。
本発明の上記非水系分散体に用いる溶媒の含有量は、上記フッ素系樹脂のマイクロパウダー、フッ素系添加剤の残部となるものである。
【0029】
本発明の上記溶媒には、さらに、シリコーン系消泡剤を含有させることができる。特に、フッ素系樹脂のマイクロパウダーを70質量%であったり、フッ素系添加剤をフッ素系樹脂のマイクロパウダーの質量に対して40質量%と、高濃度で使用する場合には、分散体の泡立ちが分散体の製造工程、安定性、樹脂材料などとの混合の際に問題を引き起こすことにつながる場合がある。
用いることができる消泡剤としては、シリコーン系のエマルジョン型、自己乳化型、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、粉末型、固形型などがあるが、用いる油性溶剤との組合せで、適宜最適なものが選択されることになる。特に、油性溶剤とPTFEとの界面よりも、油性溶剤と空気との界面に存在させるために、例えば、親水性や水溶性のシリコーン系消泡剤を用いることが好ましいが、これらに限定されることなく、用いることができるものである。消泡剤の含有量は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーの含有量(濃度)等により変動するものであるが、非水系分散体全量に対して、好ましくは、有効成分として1質量%以下である。
【0030】
本発明の上記非水系分散体は、分散状態においてフッ素系樹脂のマイクロパウダーのレーザー回折・散乱法または動的光散乱法による平均粒子径が、1μm以下となるものである。
一次粒子径が1μm以下のフッ素系樹脂のマイクロパウダーを用いた場合であっても、通常、一次粒子が凝集し、二次粒子として粒子径が1μm以上のマイクロパウダーとなっている。このフッ素系樹脂のマイクロパウダーの二次粒子を1μm以下の粒子径となるように分散することにより、例えば、超音波分散機、3本ロール、湿式ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザーなどの分散機を用いて分散することにより、低粘度で長期保存した場合でも安定な分散体を得ることができるものである。
【0031】
さらに、本発明において、フッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体は、カールフィッシャー法による水分量が、5000ppm以下〔0≦水分量≦5000ppm〕であることが好ましい。油性溶剤に含まれる水分量のほかに、フッ素系樹脂のマイクロパウダーやフッ素系添加剤などの材料自体に含まれる水分や、フッ素系樹脂のマイクロパウダーを非水系分散体中に分散する製造工程においても水分の混入が考えられるが、最終的にフッ素系樹脂の非水系分散体の水分量を5000ppm以下にすることで、より保存安定性に優れた、フッ素系樹脂の非水系分散体を得ることができ、更に好ましくは、3000ppm以下、より好ましくは、2500ppm以下、特に2000ppm以下とすることが望ましい。なお、上記水分量以下の調整としては、一般的に用いられている油性溶剤の脱水方法を用いることが可能であるが、例えば、モレキュラーシーブスなどを用いることができる。また、フッ素系樹脂の非水系分散体は、加熱や減圧などによる脱水を行うことで充分に水分量を下げた状態で使用することができる。さらに、フッ素系樹脂の非水系分散体を作製した後に、モレキュラーシーブスや膜分離法などを用いて水分除去することも可能であるが、上記した方法以外であっても、フッ素系樹脂の非水系分散体の水分量を下げることができるものであれば、特に限定されることなく用いることができる。
【0032】
本発明に用いる上記分散状態における平均粒子径が1μm以下のフッ素系樹脂のマイクロパウダーの含有量は、該分散体に含まれるフッ素系樹脂のマイクロパウダー、溶媒の各量により、また、回路基板、用いるシアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂種等により変動するものであり、各回路基板用接着剤組成物中の溶媒は最終的に接着剤組成物調製後、硬化の際等で除去されるものであるため、エポキシ樹脂又はシアン酸エステル樹脂などの総樹脂量100質量部に対して、フッ素系樹脂のマイクロパウダーの含有量が、最終的に、好ましくは、1〜70質量部、より好ましくは、5〜50質量部とするように調整して分散体を用いることが望ましい。
このフッ素系樹脂のマイクロパウダーの含有量が1質量部以上とすることにより、回路基板用接着剤の硬化後における比誘電率や誘電正接を下げることができ、一方、70質量部以下とすることにより、回路基板用接着剤やその硬化物の各種特性や安定性を損なうことなく、本発明の効果を発揮せしめることができる。
また、上記フッ素系樹脂の非水系分散体は、分散状態における平均粒子径が1μm以下のフッ素系樹脂のマイクロパウダーを含むものとなるので、微粒子径で低粘度、保存安定性に優れており、長期保存後でも再分散性に優れるものとなる。また、フッ素系添加剤が多く含有されていても消泡性に優れ、回路基板用接着剤組成物に添加した際にも均一に混合させることができるものとなる。
【0033】
〔樹脂組成物〕
本発明において、用いる樹脂組成物としては、シアン酸エステル樹脂またはエポキシ樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、回路基板用接着剤組成物のベース樹脂となるものであり、接着性樹脂への使用に適するものであれば、特に限定されることなく用いることができる。
用いることができるシアン酸エステル樹脂としては、少なくとも2官能性の脂肪族シアン酸エステル、少なくとも2官能性の芳香族シアン酸エステル、またはこれらの混合物が挙げられ、例えば、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、および2,7−ジシアナトナフタレンから選択された少なくとも1種の多官能シアン酸エステルの重合体、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂またはこれらに水素を添加したもの、ビスフェノールF型シアン酸エステル樹脂またはこれらに水素を添加したもの、6FビスフェノールAジシアン酸エステル樹脂、ビスフェノールE型ジシアン酸エステル樹脂、テトラメチルビスフェノールFジシアン酸エステル樹脂、ビスフェノールMジシアン酸エステル樹脂、ジシクロペンタジエンビスフェノールジシアン酸エステル樹脂、またはシアン酸ノボラック樹脂などが挙げられる。また、これらのシアン酸エステル樹脂の市販品も用いることができる。
【0034】
更に、前記シアン酸エステル樹脂には、必要に応じて、シアン酸エステル硬化促進剤を用いることができる。
このシアン酸エステル硬化促進剤としては、有機金属塩または有機金属錯体が使用され、例えば、鉄、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン、スズなどを含む有機金属塩または有機金属錯体が使用される。具体的には、前記シアネートエステル硬化促進剤は、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸鉄、オクチル酸銅、オクチル酸亜鉛、オクチル酸コバルトなどの有機金属塩;アセチルアセトネート鉛、アセチルアセトネートコバルトなどの有機金属錯体が挙げられる。
これらのシアン酸エステル硬化促進剤は、金属の濃度を基準として、反応性および硬化性、成形性の点から、前記シアン酸エステル樹脂100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部で含ませることができる。
【0035】
用いることができるエポキシ樹脂としては、平均1個以上のエポキシ基(オキシラン環)を含有するエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペン タジエン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、前記各種エポキシ樹脂のフェニル基を水素添加した水添型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などの少なくとも1種を挙げることができる。
本発明に用いることができるエポキシ樹脂は、1分子中に1個以上のエポキシ基があれば上記樹脂に限定されるものではないが、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、クレゾールノボラック系等が好適である。
【0036】
上記エポキシ樹脂を用いる場合には、反応性および硬化性、成形性の点から、硬化剤を用いることが好ましい。用いることができる硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、 3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテル等の芳香族アミン類、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等のメルカプタン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチ ルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタ レン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチ リデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のフェノール樹脂類、これらフェノール樹脂類の芳香環を水素化したポリオール類、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナ ン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物等の脂環式酸無水物類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾー ル、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類およびその塩類、上記脂肪族アミン類、芳香族アミン類、及び/またはイミダゾール類とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン類、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン −7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、ジシアンジアミド等の少なくとも1種が挙げられる。
これらの中でも脂環式酸無水物類、芳香族酸無水物類が好ましく、より好ましくは、脂環式酸無水物類であり、特に好ましくは、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3− ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物である。
これらの硬化剤の使用量は、用いるエポキシ樹脂と用いる硬化剤の種類により決定されるものであるが、エポキシ当量とアミン当量あるいは活性水素当量を合わせることが望ましい。同一当量を混ぜることにより、架橋反応が十分に進み、耐光性、耐熱性に優れた回路基板用接着剤の硬化物が得られる。
【0037】
〔回路基板用接着剤組成物〕
本発明の回路基板用接着剤組成物は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤とを含み、カールフィッシャー法による水分量が5000ppm以下であるフッ素系樹脂の非水系分散体と、シアン酸エステル樹脂またはエポキシ樹脂からなる樹脂組成物と、を少なくとも含むものであり、前記シアネン酸エステル樹脂またはエポキシ樹脂内に分散したゴム成分がさらに含有してもよいものである。
本発明の回路基板用接着剤組成物は、配線や基板を曲げることのできるフレキシブルな印刷回路基板などの製造に使用するためには、組成物自体も十分な柔軟性(Flexible、以下同様)を有しなければならないが、このような柔軟性を補うために、前記回路基板用接着剤組成物にはゴム成分がさらに含まれることが好ましい。
【0038】
用いることができるゴム成分としては、天然ゴム(NR)または合成ゴムが挙げられ、好ましくは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ポリブタジエンゴム、および変性、改質されたポリブタジエンゴムなどが挙げられ、好ましくは、エチレン含有量が10〜40質量%のEPDMゴム、若しくは、SBR、NBRなどを用いることができ、特に、樹脂組成物の比誘電率および誘電損失係数値を低下させることができるEPDMゴムが好ましい。
これらのゴム成分の含有量は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、接着力と耐熱性の点から、前記樹脂(シアン酸エステル樹脂またはエポキシ樹脂)100質量部に対して1〜80質量部、好ましくは10〜70質量部、より好ましくは20〜60質量部である。
【0039】
本発明の回路基板用接着剤組成物は、上記フッ素系樹脂のマイクロパウダーと、少なくとも含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤とを含み、カールフィッシャー法による水分量が5000ppm以下であるフッ素系樹脂の非水系分散体と、シアン酸エステル樹脂またはエポキシ樹脂からなる樹脂組成物などを混合する通常の方法により製造さすることができ、好ましくは、フッ素系樹脂の非水系分散体に、シアン酸エステル樹脂またはエポキシ樹脂、更にゴム成分を含む樹脂組成物を添加して混合する方法により製造することができる。
【0040】
本発明の回路基板用接着剤組成物には、更に、難燃性などを補うために、リン系難燃剤などの無機粒子がさらに含まれるとよい。これらのリン系難燃剤などの無機粒子は、前記シアン酸エステル樹脂、または、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部が望ましい。
また、本発明の回路基板用接着剤組成物は、上記成分以外に必要に応じて、上記以外の硬化促進剤、消泡剤、着色剤、蛍光体、変性剤、変色防止剤、無機フィラー、シランカップリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー等の従来公知の添加剤を適宜量配合することができる。
上記以外の硬化(反応)促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類およびその塩類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、トリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、アミノトリアゾール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の錫系、オクチル酸亜鉛等の亜鉛系、アルミニウム、クロム、コバルト、ジルコニウム等のアセチルアセトナート等の金属触媒類等が用いられる。これらの硬化(反応)促進剤は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0041】
本発明の回路基板用接着剤組成物は、公知のシアン酸エステル樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物と同様な方法により成型、硬化して硬化物とすることができる。成型方法、硬化方法は公知のシアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、本発明の回路基板用接着剤組成物固有の方法は不要であり、特に限定されるものでない。
本発明の回路基板用接着剤組成物は、更に、積層物、成型物、接着物、塗膜、フィルム等の各形態にすることができる。
本発明の回路基板用接着剤組成物は、フッ素系樹脂のマイクロパウダーが安定的に均一に分散された非水系分散体を用いて回路基板用接着剤組成物が得られるので、比誘電率と誘電正接が低く、接着性、耐熱性、寸法安定性、難燃性などにも優れた特性を有するため、回路基板用接着材料に好適であり、例えば、それを用いた回路基板用積層板、カバーレイフィルム、プリプレグ、ボンディングシートなどの製造に使用できる。前記カバーレイフィルムまたはプリプレグ、ボンディングシートなどは、回路基板、例えば、柔軟性金属箔積層板のような柔軟性印刷回路基板(FPCB)に適用できるものであって、これらの製造に本発明の回路基板用接着剤組成物を使用する場合、更に比誘電率と誘電正接が低く、接着性、耐熱性、寸法安定性、難燃性などにも優れた特性を有する回路基板用接着剤組成物が実現可能になる。
【0042】
〔回路基板用積層板〕
本発明の回路基板用積層板は、絶縁性フィルムと、金属箔と、該絶縁性フィルムと該金属箔との間に介在する接着剤層の構成を少なくとも含む回路基板用積層板であって、該接着剤層が上記構成の回路基板用接着剤組成物で構成されることを特徴とするものである。
【0043】
図1は、本発明の回路基板用積層板の実施形態の一例となる金属箔積層板(FPCB)を、断面態様で示す概略図である。
本実施形態の回路基板用積層板Aは、絶縁性フィルム10上に、金属箔30が積層され、該絶縁性フィルム10と金属箔30との間に介在した接着性樹脂層20を少なくとも含むものであり、該接着性樹脂層20が上記構成の回路基板用接着剤組成物で構成(接合)される。
図2は、本発明の回路基板用積層板の実施形態の他例となる金属箔積層板(FPCB)を、断面態様で示す概略図である。
本実施形態の回路基板用積層板Bは、
図1の片面構造に代え、
図2に示すように、両面構造を採るものであり、絶縁性フィルム10の両面に、金属箔30、30が積層され、該絶縁性フィルム10と金属箔30,30との各間にそれぞれ介在した接着性樹脂層20、20を少なくとも含むものであり、該接着性樹脂層20、20が上記構成の回路基板用接着剤組成物で構成(接合)される。
【0044】
図1、
図2などの本発明となる回路基板用積層板において、用いる絶縁性フィルム10は、電気絶縁性を有するものであれば、特に限定されないが、耐熱性、屈曲性、機械的強度および金属に似た熱膨張係数を有するものが使用できる。
用いることができる絶縁性フィルム10としては、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリエステル、パラ系アラミド、ポリ乳酸、ナイロン、ポリパラバン酸、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、からなる群より選ばれる1種類以上のフィルムが挙げられ、好ましくは、ポリイミド(PI)フィルムである。
また、これらの材料から成形されるフィルムには、上記接着性樹脂層20との界面密着力などを更に向上させる点から、好ましくは、そのフィルム表面に、低温プラズマなどで更に表面処理したフィルムを用いることができる。
前記絶縁性フィルム10の厚さは、十分な電気絶縁性と金属箔積層板の厚さ、および柔軟性などを勘案して、好適な範囲で選択可能であり、好ましくは、5〜50μm、より好ましくは、7〜45μmが望ましい。
【0045】
前記接着性樹脂層20は、上記構成の回路基板用接着剤組成物で構成(接合)されるものであり、その厚さは、絶縁性フィルムとの界面密着性、積層板の柔軟性、接着強度などの点から、好ましくは、1〜50μm、より好ましくは、3〜30μmが望ましい。
【0046】
前記金属箔30としては、導電性を有する金属箔を有するものが挙げられ、例えば、金、銀、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、これらの合金などが例示される。導電性、取扱いの容易性、価格等の観点から、銅箔やステンレス箔が好適に用いられる。銅箔としては、圧延法や電解法によって製造されるいずれのものでも使用することができる。
金属箔の厚さは、電気伝導性、絶縁性フィルムとの界面密着性、積層板の柔軟性、耐折り曲げ性の向上や、回路加工においてファインパターンを形成しやすいという点、配線間の導通性の点などを勘案して好適な範囲が設定でき、例えば、1〜35μmの範囲内が好ましく、より好ましくは5〜25μmの範囲内、特に好ましくは8〜20μmの範囲内である。
また、使用する金属箔は、マット面の表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.1〜4μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜2.5μmの範囲内がより好ましく、特に、0.2〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
このように構成される本発明の回路基板用積層板(例えば、
図1又は
図2)の製造は、例えば、絶縁性フィルム10上に上記構成となる本発明の回路基板用接着剤組成物を塗布して接着性樹脂層20を形成させた後、乾燥して半硬化状態にし、次に、接着性樹脂層20上に金属箔30を積層して熱圧着(熱積層)する方法により比誘電率と誘電正接が低く、接着性、耐熱性、寸法安定性、難燃性などにも優れた特性を有する回路基板用積層板を製造することができる。この際、柔軟性金属箔積層板を後硬化することで半硬化状態の接着性樹脂層20を完全に硬化させることにより、最終的な柔軟性金属箔積層板を得ることができる。
【0048】
〔カバーレイフィルム〕
次に、本発明のカバーレイフィルムは、絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムの少なくとも一方の面に接着剤層が形成されたカバーレイフィルムであって、該接着剤層が上記構成の回路基板用接着剤組成物であることを特徴とするものである。
図3は、本発明のカバーレイフィルムの実施形態の一例を、断面態様で示す概略図である。
本実施形態のカバーレイフィルムCは、フレキシブルプリント配線板(FPC)用などの表面保護フィルム等として用いるものであり、絶縁性フィルム40上に、接着性樹脂層50が形成されたものであり、接着性樹脂層50上に保護層となる紙やPETフィルムなどのセパレーター(剥離フィルム)60が接合されたものである。なお、このセパレーター(剥離フィルム)60は、作業性、保存安定性などを勘案して、必要に応じて、設けられるものである。
【0049】
用いる絶縁性フィルム40としては、上述の回路基板用積層板において用いた絶縁性フィルム10と同様であり、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリエステル、パラ系アラミド、ポリ乳酸、ナイロン、ポリパラバン酸、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、からなる群より選ばれる1種類以上のフィルムが挙げられる。
また、これらの材料から成形されるフィルムには、上記接着性樹脂層50との界面密着力などを更に向上させる点から、好ましくは、そのフィルム表面に、低温プラズマなどで更に表面処理したフィルムを用いることができる。
特に、カバーレイの耐熱性、寸法安定性、機械特性などを勘案すると、ポリイミド(PI)フィルムが好ましく、特に、低温プラズマ処理されたポリイミドフィルムをカバーレイに使用することが好ましい。
前記絶縁性フィルム40の厚さは、十分な電気絶縁性と保護性、および柔軟性などを勘案して、好適な範囲で選択可能であり、好ましくは、5〜200μm、より好ましくは、
7〜100μmが望ましい。
【0050】
前記接着性樹脂層50は、上記構成の回路基板用接着剤組成物で構成(接合)されるものであり、その厚さは、絶縁性フィルムとの界面密着性、接着強度などの点から、好ましくは、1〜50μm、より好ましくは、3〜30μmが望ましい。
【0051】
このように構成される本発明のカバーレイフィルムは、上記構成となる本発明の回路基板用接着剤組成物を、コンマロールコーター、リバースロールコーターなどを用いて絶縁性フィルム40上に塗布して接着剤層を形成させ、乾燥して半硬化状態(組成物が乾燥した状態またはその一部で硬化反応が進行している状態)にし、次に、上述の保護層となるセパレーター(剥離フィルム)60を積層することにより比誘電率と誘電正接が低く、接着性、耐熱性、寸法安定性、難燃性などにも優れた特性を有するカバーレイフィルムを製造することができる。
【0052】
〔プリプレグ〕
本発明のプリプレグは、カーボン系繊維、セルロース系繊維、ガラス系繊維、またはアラミド系繊維からなる群より選ばれる1種類以上の繊維により形成される構造体に、少なくとも上記構成となる本発明の回路基板用接着剤組成物が含浸されていることを特徴とするものである。
本発明において、プリプレグは、多層フレキシブルプリント配線板などの構成材として用いることができ、ダストフリー、ローフローのプリプレグであって、上記繊維中に上述の接着剤組成物を含浸させた後、乾燥して半硬化した状態のシートなどとして提供できる。
【0053】
このプリプレグに用いる繊維としては、カーボン系繊維、セルロース系繊維、ガラス系繊維、またはアラミド系繊維からなる群より選ばれる1種類以上の繊維が挙げられ、具体的には、Eガラス繊維、Dガラス繊維、NEガラス繊維、Hガラス繊維、Tガラス繊維、およびアラミド繊維からなる群より選択された1種以上の繊維が挙げられる。特に、プリプレグの比誘電率および誘電損失係数を最大限に低下させるためには、他のガラス繊維より比誘電率および誘電損失係数が低いNEガラス繊維(比誘電率約4.8、誘電損失係数約0.0015)を使用が好ましい。
【0054】
上記プリプレグは、厚さ15〜500μmとなるように構成され、回路基板に用いる上では、より薄型の15〜50μm程度が好ましい。
このように構成される本発明のプリプレグは、多層フレキシブルプリント配線板などの層間構成材と接着を兼ねた材料として用いることにより、比誘電率と誘電正接が低く、接着性、耐熱性、寸法安定性、難燃性などにも優れた特性を有するプリプレグがていきょうされる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明について、更に実施例、比較例を参照して詳しく説明する。なお、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0056】
〔フッ素系樹脂の非水分散体の調製:分散体1〜5〕
下記表1に示す配合処方にて、溶媒中にフッ素系添加剤を充分に攪拌混合、溶解した後、フッ素系樹脂のマイクロパウダーとしてPTFEマイクロパウダーを添加して、さらに攪拌混合を行った。その後、得られたPTFE混合液を、横型のビーズミルを用いて、0.3mm径のジルコニアビーズにて分散し、各分散体1〜5を得た。
得られた分散体1〜5におけるPTFEの平均粒子径をFPAR−1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法で測定した。また、各分散体1〜5のカールフィッシャー法による水分量を測定した。
下記表1に分散体1〜5の配合処方、得られた分散体におけるPTFEの平均粒子径、水分量を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
〔実施例1〜3及び比較例1〜2:回路基板用接着剤組成物の調製〕
得られた分散体1〜5を用い、下記表2に示す配合処方にて回路基板用接着剤組成物を作製した。
実施例1〜3及び比較例1〜2に示す配合比で混合した後、ディスパーを用いてPTFE分散体と樹脂が均一に混ざるように攪拌して、各回路基板用接着剤組成物を得た。
ここで、分散体1〜3を用いて作製した各回路基板用接着剤組成物となる実施例1〜3は、非常に均一な状態を示したが、分散体4を用いて作製した回路基板用接着剤組成物となる比較例4は、PTFE粒子の凝集と見られる粒状のものが壁面に観察された。また、分散体5を用いて作製した回路基板用接着剤組成物となる比較例5は、長期間保存した際に粒子の沈降分離が見られた。
【0059】
【表2】
【0060】
(実施例4〜6、比較例3〜4:カバーレイフィルムの製造)
ポリイミドフィルム(厚さ:25μm)の片側全面に、実施例1〜3、比較例1〜2によって得られた接着剤組成物を、乾燥後の厚さが約25μmとなるようにコーターを用いて均一な厚さになるよう塗布し、約120℃で約10分間乾燥した後、離型コーティングされた厚さ125μmの離型紙をラミネートして、カバーレイフィルムを製造した。
【0061】
(実施例7〜9、比較例5〜6:プリプレグの製造)
厚さ約100μmのNEガラスクロスに、実施例1〜3、比較例1〜2によって得られた接着剤組成物を含浸させた後、約120℃で約10分間乾燥して、全体の厚さが約125μmとなる熱硬化性プリプレグを製造した。
【0062】
(実施例10〜12、比較例7〜8:回路基板用積層板の製造)
ポリイミドフィルム(厚さ:25μm)の片側全面に、実施例1〜3、比較例1〜2によって得られた接着剤組成物を、乾燥後の厚さが約10μmとなるようにコーターを用いて均一な厚さになるよう塗布して接着性樹脂層を形成させた後、これを乾燥して半硬化状態にした。そして、前記ポリイミドフィルムの反対側の面にも、同様の接着性樹脂層を形成して、接着性のシートを作製した。
次に、前記接着性のシートの両面に銅箔(厚さ:約12μm、マット面の粗度(Rz):1.6μm)を積層した後、170℃で40kgf/cm
2の圧力で圧着、170℃で5時間後硬化して、回路基板用積層板を製造した。
【0063】
(カバーレイフィルムの評価サンプルの作製)
実施例4〜6、比較例3〜4のカバーレイを、カバーレイのポリイミドフィルム/カバーレイの接着面/銅箔(12μm)の順に積層した後、これを180℃、40kgf/cm
2の圧力で60分間ホットプレスして、評価サンプルを作製した。
【0064】
(プリプレグの評価サンプルの作製)
実施例7〜9、比較例5〜6のプリプレグを、ポリイミドフィルム(12.5μm)/プリプレグ/ポリイミド(12.5μm)の順に積層した後、これを180℃、40kgf/cm
2の圧力で60分間ホットプレスして、評価サンプルを作製した。
【0065】
(回路基板用積層板の評価サンプルの作製)
実施例10〜12、比較例7〜8の回路基板用積層板を、評価サンプルとした。
【0066】
(物性評価)
上記で得た実施例4〜12、比較例3〜8の評価サンプルを用い、下記のような物性評価を行った。
【0067】
(電気特性の評価方法)
比誘電率と誘電誘電正接は、JIS C6481−1996の試験規格に準じて、インピーダンス分析器(Impedence Analyzer)を用いて1MHzで測定した。
【0068】
(耐熱性の評価方法)
50mm×50mmサイズのサンプルを調整し、120℃、0.22MPa、12時間吸湿処理した後、260℃のハンダ槽に1分間浮かせてサンプルの状態を肉眼で観察した。評価基準として、剥がれ、変形、膨れなどの異常がなければ「○」、剥がれ、変形、膨れなどの異常があれば「×」とした。
【0069】
(接着強度の評価方法)
100mm×10mmに切断したサンプルを用意し、テンシロンを用いて形成された接着層の接着強度を測定した。
【0070】
カバーレイフィルムの評価結果を下記表3に、プリプレグの評価結果を下記表4に、回路基板用積層板の評価結果を下記表5に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
上記表3〜5に示しているように、実施例4〜12による接着剤組成物は、低い比誘電率と低い誘電正接を有することにより、これを用いて製造された、カバーレイフィルム、プリプレグ、および回路基板用積層板は、比較例3〜8と比べて、耐熱性および接着強度が同等でありながらも、より向上した電気特性を示すことが確認された。