(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の刃は、前記第1刃部のうちの前記稜線が形成された部分の少なくとも下面に形成された第1の面と、前記稜線と反対側において前記第1の面と連なる第2の面とを有し、
前記第1の面と、前記第1の刃の前記稜線を通り、且つ、前記第1の刃が延びる延在面とがなす角度が、前記第2の面と、前記第1の刃の前記稜線を通り、且つ、前記第1の刃が延びる延在面とがなす角度よりも大きい2段刃になっており、
前記第2の刃は、前記第2刃部のうちの前記稜線が形成された部分の少なくとも上面に形成された第3の面と、前記稜線と反対側において前記第3の面と連なる第4の面とを有し、
前記第3の面と、前記第2の刃の前記稜線を通り、且つ、前記第2の刃が延びる延在面とがなす角度が、前記第4の面と、前記第2の刃の前記稜線を通り、且つ、前記第2の刃が延びる延在面とがなす角度よりも大きい2段刃になっていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の糸切断装置。
前記第1の刃は、前記第1刃部のうちの前記稜線が形成された部分の少なくとも下面に形成された第1の面と、前記稜線と反対側において前記第1の面と連なる第2の面とを有し、
前記第2の面は、前記第1の面よりも表面粗度が粗く、
前記第2の刃は、前記第2刃部のうちの前記稜線が形成された部分の少なくとも上面に形成された第3の面と、前記稜線と反対側において前記第3の面と連なる第4の面とを有し、
前記第4の面は、前記第3の面よりも表面粗度が粗いことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の糸切断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の糸の切断時、第1カッターまたは第2カッターには、複数の糸がまとまった状態で刃に接触する。従って、特許文献1に記載の従来のカッターでは、複数の糸を確実に切断することが難しい場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の糸を切断する際に、各糸をより確実に切断することができる糸切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の糸切断装置は、第1刃部を有する第1の刃と、前記第1の刃の下方に重ねて配置され、第2刃部を有する第2の刃とを備え、複数の糸を切断する糸切断装置であって、前記第1の刃と前記第2の刃の重なり方向から見て、前記第1刃部の刃先の稜線と前記第2刃部の刃先の稜線とが交差し、前記第1刃部と前記第2刃部との間には隙間が設けられ、各糸を構成する単糸の太さをdmm、前記複数の糸の単糸の合計本数をf本としたとき、前記第1刃部と前記第2刃部との間の最近接距離が、d×(f)
1/2以上であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、第1の刃と第2の刃の重なり方向から見て、第1刃部の刃先の稜線と第2刃部の刃先の稜線とが交差し、第1刃部と第2刃部との間には隙間が設けられている。また、各糸を構成する単糸の太さをdmm、単糸の総数をf本としたとき、第1刃部と第2刃部との間の最近接距離が、d×(f)
1/2以上である。ここで、d×(f)
1/2は、第1刃部と第2刃部との間に押し込まれる際の、束となった複数の糸の太さを表している。つまり、本発明では、第1刃部と第2刃部との間の最近接距離が、束となった複数の糸の太さ以上である。従って、第1刃部と第2刃部の隙間に挟まれることなく、複数の糸を第1刃部と第2刃部の間に通すことができる。これにより、切断するために十分なせん断力が生じる位置まで、複数の糸を確実に押し込むことができるため、それらの糸を確実に切断することができる。また、切断された糸が第1の刃と第2の刃の間に挟まって、次に進入してくる糸の切断の妨げとなることを防止できる。
【0009】
第2の発明の糸切断装置は、前記第1の発明において、前記第1刃部と前記第2刃部との最近接距離が、10mm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、第1刃部と第2刃部との最近接距離が大きい場合、複数の糸が切断されるに足るせん断力を作用させるためには、第1の刃と第2の刃の奥深くまで複数の糸を押し込む必要がある。この場合、例えば、糸の押し込みのエアシリンダの有効ストロークでは、糸を切断するための十分なせん断力が得られない、または、押し込みの過程で糸が切断される位置に大きなばらつきが生じてしまうなどの問題が生じる。本発明では、第1刃部と第2刃部との最近接距離が、10mm以下である。第1刃部と第2刃部との最近接距離がこの範囲内であれば、上述したような問題を防止することができる。
【0011】
第3の発明の糸切断装置は、前記第1または2の発明において、前記第1の刃は、前記第1刃部に連なる第1基部を有し、前記第2の刃は、前記第2刃部に連なる第2基部を有し、前記第1の刃と前記第2の刃の重なり方向において、前記第1基部と前記第2基部との間に隙間が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、第1の刃と第2の刃の重なり方向において、第1の刃の第1基部と第2の刃の第2基部との間にも隙間が設けられている。これにより、糸が第1刃部と第2刃部との間に挟まって詰まり、次に刃部に進入してくる糸の切断の妨げになることを防止できる。
【0013】
第4の発明の糸切断装置は、前記第1〜3の何れかの発明において、前記第1の刃は、前記第1刃部のうちの前記稜線が形成された部分の少なくとも下面に形成された第1の面と、前記稜線と反対側において前記第1の面と連なる第2の面とを有し、前記第1の面と、前記第1の刃の前記稜線を通り、且つ、前記第1の刃が延びる延在面とがなす角度が、前記第2の面と、前記第1の刃の前記稜線を通り、且つ、前記第1の刃が延びる延在面とがなす角度よりも大きい2段刃になっており、前記第2の刃は、前記第2刃部のうちの前記稜線が形成された部分の少なくとも上面に形成された第3の面と、前記稜線と反対側において前記第3の面と連なる第4の面とを有し、前記第3の面と、前記第2の刃の前記稜線を通り、且つ、前記第2の刃が延びる延在面とがなす角度が、前記第4の面と、前記第2の刃の前記稜線を通り、且つ、前記第2の刃が延びる延在面とがなす角度よりも大きい2段刃になっていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明では、第1の刃において、第1刃部の稜線が形成された部分の下面に形成された第1の面と、第1の刃の稜線を通り、第1の刃が延びる延在面とがなす角度が、第1の面に連なる第2の面と、前記延在面とがなす角度よりも大きくなっている。即ち、第1の刃は、前記延在面に対する傾斜角度が異なる2つの面を有する、いわゆる2段刃になっている。また、第2の刃においても、第2刃部の稜線が形成された部分の上面に形成された第3の面と、第2の刃の稜線を通り、第2の刃が延びる延在面とがなす角度が、第3の面に連なる第4の面と、前記延在面とがなす角度よりも大きくなっている。即ち、第2の刃も2段刃になっている。従って、第1刃部の稜線、または、第2刃部の稜線で切断された糸は、第1刃部の第1の面に連なる第2の面、又は、第2刃部の第3の面に連なる第4の面において離れやすくなる。これにより、切断された糸が、次に刃部に進入してくる糸の切断の妨げになることを防止できる。
【0015】
第5の発明の糸切断装置は、前記第1〜4の何れかの発明において、前記第1の刃は、前記第1刃部のうちの前記稜線が形成された部分の少なくとも下面に形成された第1の面と、前記稜線と反対側において前記第1の面と連なる第2の面とを有し、前記第2の面は、前記第1の面よりも表面粗度が粗く、前記第2の刃は、前記第2刃部のうちの前記稜線が形成された部分の少なくとも上面に形成された第3の面と、前記稜線と反対側において前記第3の面と連なる第4の面とを有し、前記第4の面は、前記第3の面よりも表面粗度が粗いことを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、第1刃部の、稜線と反対側に位置する第2の面の表面粗度が、稜線側の第1の面の表面粗度よりも粗い。また、第2刃部の、稜線と反対側に位置する第4の面の表面粗度が、稜線側の第3の面の表面粗度よりも粗い。従って、第1刃部の稜線、または、第2刃部の稜線で切断された糸は、第1刃部の第1の面に連なる第2の面、又は、第2刃部の第3の面に連なる第4の面においてスムーズに移動しやすくなり、第1刃部又は第2刃部から糸が離れやすくなる。これにより、切断された糸が、次に刃部に進入してくる糸の切断の妨げになることを防止できる。
【0017】
第6の発明の糸切断装置は、前記第1〜5の何れかの発明において、前記第1刃部および前記第2刃部の刃角が、15度以上30度以下であることを特徴とするものである。
【0018】
ここで、第1刃部および第2刃部の刃角が大きい場合、せん断力が小さくなるため、糸を確実に切断することができない。また、第1刃部および第2刃部の刃角が小さい場合、刃が薄いため、破損しやすい。本発明では、第1刃部および第2刃部の刃角が、15度以上30度以下である。この範囲によれば、上述した問題を防止することができる。
【0019】
第7の発明の糸切断装置は、前記第1〜6の何れかの発明において、前記複数の糸を吸引する吸引部と、前記吸引部と前記第1の刃及び前記第2の刃とを前記複数の糸と交差する方向に相対移動させる駆動部とを有し、前記吸引部に前記複数の糸がまとめて吸引されている状態で、前記駆動部により前記吸引部と前記第1の刃及び前記第2の刃とを相対移動させて、前記第1刃部と前記第2刃部により前記複数の糸を切断することを特徴とするものである。
【0020】
本発明では、吸引部に複数の糸がまとめて吸引されている状態で、駆動部により吸引部と第1の刃及び第2の刃とを相対移動させて、第1刃部と第2刃部により複数の糸を切断する。従って、吸引部によって吸引されてまとまった複数の糸が、第1刃部と第2刃部の交差部に連続的に送られる場合であっても、糸を次々に切断していくことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本実施形態は、紡糸引取機1に本発明を適用した一例である。紡糸引取機1は、
図1、
図2に示すように、紡糸機2から紡出された複数の糸10を引取る第1ゴデットローラ11および第2ゴデットローラ12と、第1ゴデットローラ11の上方に配置された糸切断装置30と、引取られた複数の糸10を複数のボビンBに巻き取る糸巻取機3とを有する。以下では、
図1に示す前後を前後方向と定義する。すなわち、後述するボビンホルダ7の先端側は、オペレータが紡糸引取機1を操作する側であって、これを前方とする。また、前方からの視点にて左右方向を定義する。以下、上記の方向語を適宜使用して説明する。なお、
図2では、
図1では示されている強度部材29の記載を省略している。
【0024】
紡糸機2から紡出された複数の糸10は、
図1、
図2に示すように、第1ゴデットローラ11および第2ゴデットローラ12によって引取られる。複数の糸10は、
図2に示すように、左右方向に配列されている。その後、複数の糸10は、第2ゴデットローラ12の下方に設けられた糸巻取機3に送られる。
【0025】
第1ゴデットローラ11は、
図1に示すように、紡糸機2の直下に配置されている。第1ゴデットローラ11は、ローラ昇降機構4の長手方向一端部(図中前方側)に設置されている。ローラ昇降機構4は、その長手方向一端部(図中前方側)が下、他端部(図中後方側)が上となるように、前後方向に対して斜めに配置されている。ローラ昇降機構4によって、第1ゴデットローラ11は、その軸芯がボビンホルダ7の軸芯と直交して、回転可能に支持されている。ローラ昇降機構4は、その長さ方向他端部(図中後方側)で、強度部材29によって支持されている。
【0026】
また、第1ゴデットローラ11のすぐ上方には、糸規制ガイド16が設けられている。糸規制ガイド16は、
図3に示すように、複数の糸10の配列方向に並んだ複数のガイドピース16aを有し、櫛歯状となっている。紡糸機2から送られた複数の糸10は、この複数のガイドピース16aの間にそれぞれ通される。これにより、第1ゴデットローラ11に巻き掛けられる複数の糸10の間隔が規定される。また、糸10の走行が安定するとともに、左右方向に配列された複数の糸10の、左右方向への移動が規制される。
【0027】
糸切断装置30は、
図1、
図2に示すように、糸規制ガイド16の糸走行方向におけるすぐ上流側において、複数の糸10の糸道よりも左側に配置されている。糸切断装置30は、
図3に示すように、その基体となるホルダ31と、吸引装置34と、第1カッター32と、第2カッター33と、サクションガン38(
図11、
図12参照)を位置決めする位置決め部37などを備えている。
【0028】
吸引装置34は、
図10に示すように、第1カッター32によって切断された複数の糸10を吸引するためのものである。吸引装置34は、
図3に示すように、筒部材57(本発明の吸引部に相当)と、エアシリンダ(不図示)などを有している。筒部材57の右側端部は、ホルダ31の開口部31aから突出している。筒部材57には、
図2に示す吸引源71が接続されており、筒部材57の右側先端部には、切断された複数の糸10を吸引する吸引力が発生する。筒部材57は、吸引源71と電磁バルブ(不図示)を介して接続されている。エアシリンダ(不図示)は、ホルダ31内に設けられている。また、エアシリンダにはシリンダロッド(不図示)が取り付けられている。シリンダロッドは、筒部材57に接続されている。
図2に示す駆動装置70によってエアシリンダを駆動し、シリンダロッドを進退させることによって、筒部材57は、複数の糸10の配列方向(左右方向)に進退する。
【0029】
第1カッター32は、
図10に示すように、筒部材57が右側に移動する際、糸規制ガイド16の上方で複数の糸10を、1本ずつ切断するためのものである。第1カッター32は、
図3に示すように、第1カッター保持部材35を介して、筒部材57の右側先端部の下部に取り付けられている。これにより、第1カッター32は、筒部材57が右側に移動することによって、それとともに複数の糸10側に移動する。第1カッター32は、後述する第1の刃47および第2の刃48の先端が上側となるように、水平方向に対して斜めに配置されている。
【0030】
第2カッター33は、
図12に示すように、吸引装置34によって吸引され、束となった複数の糸10を切断するためのものである。第2カッター33は、
図3に示すように、吸引装置34の上方に配置されている。第2カッター33は、第2カッター保持部材36を介して、ホルダ31の上端右側端部に取り付けられている。第2カッター33は、後述する第1の刃39および第2の刃42の先端が上側となるように、水平方向に対して斜めに配置されている。なお、第2カッター33の詳細な説明については後述する。
【0031】
位置決め部37は、
図12に示すように、第2カッター33によって切断された複数の糸10を吸引可能な位置に、サクションガン38を位置決めするためのものである。具体的には、位置決め部37は、第2カッター33の近傍であって、第2カッター保持部材36の上側に配置されている。断面が円筒形状のサクションガン38を載置しやすく、また、サクションガン38の位置がずれにくくなるように、位置決め部37の形状は半円形の凹形状である。
【0032】
第2ゴデットローラ12は、
図1に示すように、その軸芯がボビンホルダ7の軸芯と直交して配置されている。第2ゴデットローラ12は、第1ゴデットローラ11の後方、且つ、上方に配置されている。第2ゴデットローラ12は、
図1、
図2の鎖線で示す下側位置と、
図1、
図2の実線で示す上側位置との間で移動可能となっている。
【0033】
また、第2ゴデットローラ12のすぐ前斜め下側には、上述した糸規制ガイド16と同様の糸規制ガイド14が設けられている。糸規制ガイド14は、第2ゴデットローラ12とともに昇降する。第1ゴデットローラ11から送られた複数の糸10は、糸規制ガイド14の複数のガイドピース(不図示)間にそれぞれ通される。
【0034】
次に、糸巻取機3について説明する。糸巻取機3は、
図1、
図2に示すように、第2ゴデットローラ12から送られた複数の糸10がそれぞれ分配される複数の糸振支点ガイド13と、複数の糸振支点ガイド13によって分配された糸10をそれぞれ綾振る複数のトラバースガイド8と、複数のボビンBが軸芯に沿って直列に装着される2本のボビンホルダ7と、ボビンホルダ7の一端が支持される円盤状のターレット6と、ターレット6を回転可能に支持する本体フレーム5と、本体フレーム5に対して上下方向に移動可能であり、ボビンホルダ7に装着されたボビンBに対して離接するコンタクトローラ9などを有している。
【0035】
複数の糸振支点ガイド13は、ガイド部材23に移動可能に装着されている。ガイド部材23は、その長さ方向がボビンホルダ7の軸心方向に対して平行になるように配置されている。ガイド部材23は、その下側に取り付けられた支持部材17によって、本体フレーム5に取り付けられている。
【0036】
第2ゴデットローラ12から送られた複数の糸10は、ボビンBの軸方向に往復移動可能なトラバースガイド8によって、複数の糸振支点ガイド13を支点としてボビンBの軸方向にそれぞれ綾振りされる。ボビンホルダ7に装着された複数のボビンBを回転させ、回転する複数のボビンBにそれぞれ糸10を巻き取り、パッケージPを形成する。また、コンタクトローラ9は、ボビンBへの糸巻き取り時に、パッケージPに所定の接圧を付与しながら回転し、パッケージPの形状を整える。
【0037】
次に、紡糸引取機1の電気的構成について説明する。紡糸引取機1の動作を制御する制御装置15は、第1ゴデットローラ11、第2ゴデットローラ12を駆動するモータ(不図示)、ローラ昇降機構4のモータ(不図示)を制御する。これにより、第1ゴデットローラ11、第2ゴデットローラ12が駆動される。制御装置15は、吸引装置34に設けられた電磁バルブ(不図示)を制御する。これにより、電磁バルブは、開閉駆動される。また、制御装置15は、駆動装置70を制御する。これにより、上述した吸引装置34のエアシリンダが駆動され、エアシリンダに取り付けられたシリンダロッドが進退することによって、それに接続された筒部材57が左右方向に進退する。また、制御装置15は、糸巻取機3の制御部24に信号を送る。制御部24は、糸巻取機3に設けられたターレット6、トラバースガイド8、ボビンホルダ7等を制御する。
【0038】
次に、上述した吸引装置34の第2カッター33の詳細について説明する。第2カッター33は、
図3、
図4に示すように、第1の刃39と、第2の刃42と、案内部材45と、刃保持部材46とを備えている。
【0039】
図4、
図5に示すように、第1の刃39は、その先端部である第1刃部41と、第1刃部41に連なる第1基部55からなる。また、第2の刃42は、その先端部である第2刃部44と、第2刃部44に連なる第2基部56からなる。
【0040】
第1の刃39と第2の刃42とは、
図4、
図5に示すように、第1の刃39が上側、第2の刃42が下側になるように、第1基部55と第2基部56とが重なった状態で配置されている。糸10の走行方向から見て、第1の刃39の刃先の稜線39aと第2の刃42の刃先の稜線42aとは、それらの途中部において交差する。また、第1の刃39は、第1刃部41の刃角θ1が15度以上30度未満である。第2の刃42は、第2刃部44の刃角θ2が15度以上30度未満である。本実施形態では、第1の刃39の刃角θ1と第2の刃42の刃角θ2は等しくなっている。第1の刃39の第1刃部41と、第2の刃42の第2刃部44との間には、隙間Sが設けられている。即ち、第1刃部41の下面の一部と第2刃部44の上面の一部とが、隙間Sをあけて対向している。
【0041】
複数の糸50を切断する際に、複数の糸10は、
図6、
図7に示すように、第1刃部41と第2刃部44との間の隙間Sに押し込まれる。この隙間Sの最小値、すなわち、第1刃部41と第2刃部44との最近接距離Dは、下式の範囲である。d×(f)
1/2≦D≦10mm・・・(1)
【0042】
(1)式の下限の導出方法について詳細に説明する。
図8に示すように、各糸50を構成する単糸50aの太さが0.01mm、各糸50を構成する単糸50aの数が16本である4本の糸50が、第1刃部41と第2刃部44との隙間Sに押し込まれる場合を考える。
【0043】
4本の糸50は、第1刃部41と第2刃部44との隙間Sに押し込まれる際、
図8に示すように、束となって互いに密着し、押し込まれていく。このときの糸束の断面をひし形として近似する。ここで、糸束は、その太さが細い方向、すなわち、ひし形の短対角線が、上記最近接距離Dの方向とほぼ平行となった状態で、第1刃部42と第2刃部44との間を通るように押し込まれていく。
図8から分かるように、合計64本の単糸50aがひし型に整列した場合、上記短対角線には8本の単糸50aが並ぶ。上記断面の短対角線の長さdnは、単糸50aの太さが0.01mmであるから、0.01(mm)×8(本)=0.08(mm)となる。
【0044】
ここで、短対角線に並んだ単糸50aの数(8本)は、4本の糸50を構成する単糸50aの合計本数(64本)を用いて、(64)
1/2として表すことができる。従って、上述した束になった4本の糸50の断面の短対角線の長さdn(0.08mm)は、単糸50aの太さ(0.01mm)と4本の糸50を構成する単糸50aの合計本数(64本)を用いて、0.01×(64)
1/2として表すことができる。
【0045】
なお、同時に押し込まれる糸の本数、および、各糸を構成する単糸の本数が変化しても、複数の糸は、互いに密着し、その断面が略ひし形となった状態で第1刃部41と第2刃部44の隙間Sに押し込まれていく。つまり、押し込まれる糸の本数、および、各糸を構成する単糸の本数がどのような場合であっても、上述した場合と同様に、その断面形状をひし形として近似することができる。
【0046】
以上より、第1刃部42と第2刃部44の間に押し込まれる際の、束となった複数の糸の太さを、ひし形の短対角線の距離と定義すると、各糸を構成する単糸の太さ(d)、束になって隙間Sに押し込まれる複数の糸を構成する単糸の合計本数(f)を用いて、第1刃部42と第2刃部44の間に押し込まれる際の、束となった複数の糸の太さ≒d×(f)
1/2として表すことができる。
【0047】
つまり、(1)式の範囲によれば、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離Dが、束となった複数の糸10の太さ以上である。従って、(1)式の範囲によれば、
図6、
図7に示すように、第1刃部41と第2刃部44の隙間Sに挟まれることなく、複数の糸10を第1刃部41と第2刃部44の間に通すことができる。
【0048】
案内部材45は、
図4に示すように、第1の刃39の
図4紙面奥側に重ねて配置されている。案内部材45は、糸10を、第1の刃39および第2の刃42に形成された第1刃部41と第2刃部44とが交差する交差部Cに案内するためのものである。案内部材45は、複数の糸10を第1の刃39と第2の刃42とが交差する交差部Cに案内するように、略V字形状に形成されている。案内部材45と第1の刃39と第2の刃42は、刃保持部材46によって保持されている。
【0049】
尚、第1カッター32は、
図3に示すように、第1の刃47と、第2の刃48と、案内部材51と、刃保持部材49とを備えている。なお、本実施形態では、第1カッター32は、第2カッター33と同様の構成であるため、詳細な説明は割愛する。
【0050】
次に、糸切断装置30による動作について、
図9〜
図12を用いて説明する。なお、糸巻取装置3による糸10の巻き取り中は、吸引装置34は、吸引源71との接続が電磁バルブ(不図示)により遮断されて駆動しない。また、筒部材57は、ホルダ31側に後退した位置に配置されており、その右側端部と第1カッター32も、巻取られる複数の糸10よりもホルダ31側に退避している。
【0051】
図9に示すように、例えば、巻き取り中の複数の糸10が切断されるなどの異常が発生すると、制御装置15は、センサー(不図示)により、糸切れを検出し自動的に糸切断装置30を作動させる。若しくは、オペレータが糸切断装置30を作動させる。糸切断装置30は、電磁バルブ(不図示)が開放され、筒部材57が吸引源71に接続されることにより、吸引を開始する。なお、
図9の筒部材57内の矢印は、吸引方向を示している。
【0052】
図10に示すように、エアシリンダが駆動されることによって、エアシリンダのシリンダロッドが伸び、それに接続された筒部材57が右側に突出する。それに伴って、筒部材57の右側端部に取り付けられた第1カッター32も右側に移動する。これにより、筒部材57の右側端部と第1カッター32の第1の刃47および第2の刃48が、複数の糸10の配列方向に沿って右側に移動する。これにより、複数の糸10は、第1カッター32の交差部に導かれることによって糸10が1本ずつ順に切断されるとともに、吸引装置34によって吸引される。なお、
図10の矢印は、筒部材57の移動方向を示している。
【0053】
先に詳細に説明した第2カッター33と同様に、第1カッター32においては、複数の糸10の走行方向から見て、第1の刃47に設けられた第1刃部の刃先の稜線と、第2の刃48に設けられた第2刃部の刃先の稜線とが交差し、第1刃部と第2刃部との間には隙間が設けられている。従って、第1刃部の刃先の稜線と第2刃部の刃先の稜線との交差部に案内された糸10は、その動きが規制され、第1刃部と第2刃部との間の隙間に押し込まれていく。これにより、糸10にせん断力を作用させ、刃部に順々に進入してくる糸10を1本ずつ切断する。
【0054】
図11に示すように、吸引装置34に取り付けられた第1カッター32を、複数の糸10よりも右側まで移動させる。これにより、複数の糸10はすべて切断され、吸引装置34によって吸引された状態となる。この状態でエアシリンダ(不図示)が突出端のストロークエンドに達することで、吸引装置34の移動が停止する。
【0055】
上述したように、吸引装置34の移動を停止させた状態で、オペレータは、上述したような紡糸引取装置1の異常を解消させる。異常が解消されると、糸10の巻き取りを再開するために、まず、オペレータは、吸引装置34によって保持されている複数の糸10をサクションガン38に移し取る。
【0056】
図12に示すように、オペレータは、位置決め部37にサクションガン38を載置して位置決めする。その後、エアシリンダ(不図示)を駆動させ、吸引装置34をホルダ31側に移動させる。なお、
図12の矢印は、吸引装置34の移動方向を示している。
【0057】
吸引装置34をホルダ31側に移動させることによって、吸引装置34に吸引された複数の糸10をホルダ31側に移動させる。このとき、第2カッター33は、吸引装置34の先端部上方において、吸引装置34に連続的に吸引され、束になった複数の糸10を切断していく。
【0058】
ここで、上述したように、左右方向に配列する複数の糸10を、1本ずつ順々に第1カッター32によって切断する場合に対して、複数の糸10が吸引装置34によって吸引されているとき、それらは束になっている。そのため、第2カッター33によって切断する際、複数の糸10は、第1の刃39と第2の刃42が交差する交差部Cに一気に案内されてくる。そのため、第1カッター32による切断と比べると、第2カッター33による複数の糸10の切断は、難易度が高いと言える。
【0059】
本実施形態では、第2カッター33は、
図4、
図5に示すように、複数の糸10の走行方向から見て、第1の刃39に設けられた第1刃部41と、第2の刃42に設けられた第2刃部44との間には隙間Sが設けられている。従って、第1刃部41の刃先の稜線39aと第2刃部44の刃先の稜線42aとの交差部Cに案内された糸10は、その動きが規制され、
図6に示すように、第1刃部41と第2刃部44との間の隙間Sに押し込まれていく。これにより、糸10にはせん断力が作用するため、刃部に進入してくる糸10を切断しやすくなる。
【0060】
しかしながら、第1刃部41と第2刃部44との最近接距離Dが小さい場合、まとまって刃部に進入してきた複数の糸10は、第1刃部41と第2刃部44との間の隙間Sに挟まって詰まりやすい。このとき、次に刃部41,44の間に進入してくる糸10を隙間Sに押し込みにくくなる。そのため、糸10に対して大きなせん断力を生じさせることができず、糸10を確実に切断することができない場合がある。この点、本実施形態では、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離Dが、d×(f)
1/2以上、即ち、束となった複数の糸の太さ以上となっている。従って、第1刃部41と第2刃部44の隙間Sに挟まれることなく、複数の糸10を第1刃部41と第2刃部44の間に通すことができる。これにより、十分なせん断力が生じる位置まで、複数の糸10を確実に押し込むことができ、それらの糸10を確実に切断することができる。また、切断された糸10が第1の刃39と第2の刃42の間に挟まって、次に進入してくる糸10の切断の妨げとなることを防止できる。
【0061】
一方で、第1刃部41と第2刃部44との最近接距離Dが大きい場合、第1刃部41と第2刃部44との間の隙間Sに押し込む際、複数の糸10にせん断力を作用させるためには、第1の刃39と第2の刃31の奥深くまで糸10を押し込む必要がある。この場合、糸10の押し込みのエアシリンダ(不図示)の有効ストロークでは、糸10を切断するための十分なせん断力が得られないために糸10が切断されにくくなる、もしくは、押し込みの過程で糸10が切断される位置に大きなばらつきが生じてしまうため、サクションガン38から離れた位置で糸10が切断されてしまう。この場合、糸10が吸引できなくなる虞がある。この点、本実施形態では、第1刃部41と第2刃部44との最近接距離Dが、10mm以下であるため、奥深くまで糸10を押し込まずとも、糸10に十分なせん断力を作用させることが可能となる。
【0062】
第1刃部41と第2刃部44の最近接距離Dについて、以下のような検証を行った。
図13は、実施例及び比較例の条件及び糸切断結果を示す表である。
図13の実施例1〜3、及び、比較例1,2では、糸種(ポリエステルPOY)、単糸の太さ(0.01mm)、各糸の単糸の本数(72本)、同時に切断される糸の本数(10本)の、各条件は同じである。その上で、第2カッター33に設けられた第1の刃39の第1刃部41と第2の刃42の第2刃部44との間の、最近接距離Dの値が、0mm,0.3mm,2.0mm,10mm,20mmと異なっている。
【0063】
実施例1では、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離Dが0.3mmである。このとき、刃部41,44の間に進入してきた糸10の束は、第2カッター33によって切断されている。なお、このときの(1)式の下限値は0.27mmであって、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離D(0.3mm)より小さく、(1)式が成り立っている。
【0064】
実施例2では、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離Dが2.0mmである。このとき、刃部41,44の間に進入してきた糸10の束は、第2カッター33によって切断されている。なお、このときの(1)式の下限値は0.27mmであって、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離D(2.0mm)より小さく、(1)式が成り立っている。
【0065】
実施例3では、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離Dが10mmである。このとき、刃部41,44の間に進入してきた糸10の束は、第2カッター33によって切断されている。また、このときの(1)式の下限値は0.27mmであって、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離D(10mm)より小さく、(1)式が成り立っている。
【0066】
実施例4では、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離Dが20mmである。このとき、刃部41,44の間に進入してきた糸10の束は、第1の刃39と第2の刃31の奥深くまで糸10を押し込めず、第2カッター33によって切断できなかった。しかし、糸10を押し込むためのエアシリンダ(吸引装置34を駆動するエアシリンダ)を、有効ストロークが長いものに交換することで、糸10の束は、第2カッター33によって問題なく切断できるようになった。但し、糸10の束は切断されても切断位置が安定せず、切断位置のばらつきが大きくなり、そのために、サクションガン38で吸引できないことがあったため、サクションガン38と第1刃部41と第2刃部44の位置調整やサクションガン38の吸引力の増加を行った。これにより、切断された糸10が全てサクションガン38に吸引されるようになった。
【0067】
一方、比較例1では、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離Dが0mmである。即ち、第1刃部41と第2刃部44の間に隙間が存在しない場合である。このとき、刃部41,44の間に進入してきた糸10の束は、第2カッター33によって切断されなかった。また、このときの(1)式の下限値は0.27mmであって、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離D(0mm)より大きく、(1)式が成り立っていない。
【0068】
以上より、
図13の条件の場合、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離Dが、0.3mm以上であれば、上述した条件の糸10を切断でき、また、サクションガン38によって吸引することができる。但し、第1刃部41と第2刃部44との間の最近接距離Dが20mmの場合は、エアシリンダの有効ストロークを大きくする、あるいは、サクションガン38の吸引能力を上げるなどの調整が必要であったことから、最近接距離Dは10mm以下であることが望ましい。
【0069】
また、第1刃部41と第2刃部44の刃角が大きい場合、せん断力が小さくなるため、糸10を確実に切断することができない。また、第1刃部41と第2刃部44の刃角が小さい場合、刃が薄いため、破損しやすい。本実施形態では、第1刃部41と第2刃部44の刃角が、15度以上30度以下である。この範囲によれば、これらの問題を防止することができる。
【0070】
第2カッター33によって複数の糸10がすべて切断されると、複数の糸10は、位置決め部37に載置されたサクションガン38にすべて吸引される。その後、オペレータは、サクションガン38を操作し、各糸10を第1ゴデットローラ11、第2ゴデットローラ12、および、巻取装置2に設けられた各装置に掛けていく糸掛け作業を行う。その後、糸10の巻き取りが再開される。
【0071】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0072】
また、本実施形態では、第2カッター33において、第1の刃39の第1刃部41と、第2の刃42の第2刃部44とで、刃角が同じであるが、第1刃部41と第2刃部44の刃角が異なっていても構わない。このことは、第1カッター32についても同様である。
【0073】
本実施形態では、第2カッター33において、第1の刃39の第1刃部41、及び、第2の刃42の第2刃部44が、それぞれ、稜線39aを通り、基部55(56)の延在方向と平行な水平面(延在面)に対して上下に対称な形状となっているが、第1刃部41、第2刃部44の少なくとも一方が、前記延在面に対して非対称であってもよい。このことは、第1カッター32についても同様である。
【0074】
また、本実施形態では、
図5,
図6に示すように、第1の刃39と第2の刃42の重なり方向において、第1基部55と第2基部56との間にも隙間が設けられている場合について記載したが、複数の糸10を押し込む隙間Sは、少なくとも第1刃部41と第2刃部44との間に設けられていればよい。例えば、
図14に示すように、第1の刃39と第2の刃42の重なり方向において、第1基部55と第2基部56との間には、隙間が設けられていなくても構わない。即ち、第1基部55の下面が、第2基部56の上面と、上下方向において同じ位置にあるか、あるいは、第2基部56の上面よりも下の位置にあってもよい。
【0075】
また、本実施形態では、第1カッター32および第2カッター33に設けられた第1の刃47,39、第2の刃48,42は、その両面に、2つの刃部がそれぞれ設けられた、いわゆる両刃であるが、例えば、
図15に示すように、第1の刃39、第2の刃42は、どちらも片刃であっても構わない。このとき、第1の刃39の下面、及び、第2の刃42の上面が、刃の延在面に対して傾斜する。また、第1の刃39の刃角θ3と第2の刃42の刃角θ4は、15度以上30度以下であることが好ましい。
【0076】
また、第1の刃39および第2の刃42は、
図16に示すように、刃(基部)の延在面に対する傾斜角度の異なる2つの面を有する2段刃でも構わない。より具体的には、第1刃部41には、稜線39aが形成された部分である、先端部の上下両面に形成された2つの第1の面41aと、稜線39aと反対側において2つの第1の面41aにそれぞれ連なる第2の面41bとが形成されている。また、第1の面41aと、第1の刃39の稜線39aを通り、第1の刃39が延びる延在面66とがなす角度θ5は、第1刃部41に形成された第2の面41bと延在面66とがなす角度θ6よりも大きい。第1の刃39の刃角(第1の面41aと延在面66とがなす角度θ5)は、15度以上30度以下であることが好ましい。
【0077】
また、第2刃部44にも同様に、稜線42aが形成された部分である、先端部の上下両面に形成された2つの第3の面44aと、稜線42aと反対側において2つの第3の面44aにそれぞれ連なる2つの第4の面44bが形成されている。第3の面44aと、第2の刃42の稜線42aを通り、第2の刃42が延びる延在面67とがなす角度θ7は、第2刃部44に形成された第4の面44bと延在面67とがなす角度θ8よりも大きい。第2の刃42の刃角も、15度以上30度以下であることが好ましい。
【0078】
従って、第1刃部41の稜線39a、または、第2刃部44の稜線42aで切断された糸10は、第1刃部41の第1の面41aに連なる第2の面41b、又は、第2刃部44の第3の面44aに連なる第4の面44bにおいて離れやすくなる。これにより、切断された糸10が、次に刃部41,44の間に進入してくる糸10の切断の妨げになることを防止できる。なお、
図16では、第1の刃39、第2の刃42は、2段刃であるが、第1の刃39、第2の刃42が、3段刃以上となるように形成されていても構わない。
【0079】
また、
図17に示すように、第1刃部41の、稜線39aと反対側の第2の面41bの表面粗度が、稜線39a側の第1の面41aの表面粗度よりも粗くてもよい。また、第2刃部44の、稜線42aと反対側の第4の面44bの表面粗度が、稜線42a側の第3の面44aの表面粗度よりも粗く形成されている構成であっても構わない。より具体的には、第1の面41aおよび第3の面44aは、例えば、研磨によって鏡面処理が施され、第2の面41bおよび第4の面44bは、例えば、ブラスト加工によって梨地処理が施されている。このとき、第2の面41bおよび第4の面44bの表面粗さは、例えば、Ra=0.2μmである。
【0080】
この構成によれば、第1刃部41の稜線39a、または、第2刃部44の稜線42aで切断された糸10は、第1刃部41の第1の面41aに連なる第2の面41b、又は、第2刃部44の第3の面44aに連なる第4の面44bにおいてスムーズに移動しやすくなるため、第1刃部41又は第2刃部44から糸10が離れやすくなる。これにより、切断された糸10が、次に刃部に進入してくる糸10の切断の妨げになることを防止できる。
【0081】
また、本実施形態では、上述したような構成を、第1カッター32の第1の刃47および第2の刃48、第2カッター33の第1の刃39および第2の刃42にそれぞれ適用する場合について記載したが、上述したような構成を、第1カッター32、もしくは、第2カッター33のみに適用しても構わない。
【0082】
また、本実施形態では、第1カッター32に設けられた第1の刃47および第2の刃48は、第2カッター33と同様の形状であるが、第1の刃47および第2の刃48の形状は、第2カッター33と同じでなくても構わない。
【0083】
また、本実施形態では、糸切断装置1は、第1カッター32および第2カッター33を備えているが、例えば、糸切断装置は、特開2012−127011号公報、特許2854989号公報、US6494700b1に記載のような構成の糸切断装置に適用しても構わない。