(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461719
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】伝動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20190121BHJP
F16H 25/06 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16H25/06 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-115525(P2015-115525)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-2954(P2017-2954A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】松岡 慎弥
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−121494(JP,A)
【文献】
実開平6−47756(JP,U)
【文献】
特開2012−26568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸線(X1)上の主軸部(2a)および該第1回転軸線(X1)から偏心した第2回転軸線(X2)上の偏心軸部(2b)を有して、前記偏心軸部(2b)が前記第1回転軸線(X1)周りに公転し得る偏心シャフト(2)と、
前記偏心軸部(2b)に回転可能に支承されて前記第2回転軸線(X2)周りに自転しながら前記第1回転軸線(X1)周りに公転し得るとともに、外周部に外歯(3a)を有する偏心体(3)と、
前記第1回転軸線(X1)上に軸心を持ち、内周壁に前記偏心体(3)の外歯(3a)と噛み合う内歯(1f)を有するハウジング(1)と、
前記第1回転軸線(X1)周りに回転し得るとともに一側面(4a)を前記偏心体(3)の一側面(3b)と対向させた回転体(4)と、
前記偏心体(3)の前記一側面(3b)および前記回転体(4)の前記一側面(4a)に各々形成された曲線波溝(10,11)と、
前記両曲線波溝(10,11)間に挟まれてこれらの曲線波溝(10,11)によって規定される軌道上を移動する複数個の転動体(13)とを含み、
前記偏心シャフト(2)と前記偏心体(3)と前記ハウジング(1)とで第1の変速部(A)が構成されるとともに、前記偏心体(3)と前記回転体(4)と前記複数個の転動体(13)とで第2の変速部(B)が構成されて、これら第1,第2の変速部(A,B)により、前記偏心シャフト(2)の主軸部(2a)または前記回転体(4)の何れか一方の回転が減速または増速されて他方に伝達されることを特徴とする伝動装置。
【請求項2】
前記偏心体(3)の曲線波溝(10)の波数が前記回転体(4)の曲線波溝(11)の波数よりも多く形成されることを特徴とする、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項3】
前記偏心体(3)の前記一側面(3b)の前記曲線波溝(10)よりも外周側に第1の薄肉部(3d)が形成されるとともに、前記偏心体(3)の他側面(3c)には第2の薄肉部(3e)が形成され、第1回転軸線(X1)と直交する投影面で見たときに、第2の薄肉部(3e)の面積は第1の薄肉部(3d)の面積よりも大きいことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1回転軸線上の主軸部および該第1回転軸線から偏心した第2回転軸線上の偏心軸部を有して、該偏心軸部が前記第1回転軸線周りに公転し得る偏心シャフトと、この偏心シャフトの前記偏心軸部に回転可能に支承され、該偏心シャフトの前記第1回転軸線周りの回転に連動して前記第2回転軸線周りに自転しながら前記第1回転軸線周りに公転し得る偏心体と、該偏心体の自転および公転と連動しつつ、前記第1回転軸線周りに回転し得る回転体とを備え、前記偏心シャフトの主軸部または前記回転体の何れか一方の回転が、他方に前記偏心体を介して減速または増速されて伝達される伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような偏心シャフト、偏心体および回転体を備えるとともに、偏心シャフトの主軸部の回転が、曲線波溝と該曲線波溝によって軌道が規制される複数の中間部材とを介して、減速されて回転体に伝達される伝動装置が、下記特許文献1,2に開示されるように、既に知られている。
【0003】
即ち、特許文献1では、第1回転軸線上の入力軸2(主軸部)と第2回転軸線上の偏心軸22(偏心軸部)とで構成される偏心シャフトの偏心軸22に、偏心回転体4(偏心体)が回転可能に支承され、この偏心回転体4外周の内側溝51(曲線波溝)とハウジング1内周の外側溝52(曲線波溝)とによって規定される軌道上を複数個の転動ボール53(転動体)が移動することで、入力軸2の回転に連動して偏心回転体4が第2回転軸線周りに自転しながら第1回転軸線周りに公転し、この偏心回転体4の一側面に対向する側面に整動機構40を配置した被動円板32(回転体)が、偏心回転体4の自転および公転を受けて第1回転軸線周りに回転するように構成されており、特許文献2では、第1回転軸線上の入力軸部12a(主軸部)と第2回転軸線上の偏心部12d(偏心軸部)とで構成される偏心軸12(偏心シャフト)に、偏心板4(偏心体)が回転可能に支承され、この偏心板4の一側面のエピ条溝部7(曲線波溝)とそれに対向する固定板3の側面のハイポ条溝部6(曲線波溝)とによって規定される軌道上を、複数個の第1転動ボール10(転動体)が移動することで、入力軸部12aの回転に連動して偏心板4が第2回転軸線周りに自転しながら第1回転軸線周りに公転し、この偏心板4の自転および公転を受けて、該偏心板4の他側面のハイポ条溝部8(曲線波溝)とそれに対向する出力板5(回転体)の側面のエピ条溝部9(曲線波溝)とによって規定される軌道上を複数個の第2転動ボール11(転動体)が移動することで、偏心板4の自転および公転に連動して出力板5が第1回転軸線周りに回転するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−26011号公報
【特許文献2】特許第4814351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の伝動装置は、入力軸2の回転を、偏心回転体4の外周に形成された曲線波溝51と、それに対向してハウジング1の内周に形成された曲線波溝52と、それらによって規定される軌道上を転動する転動ボール53とで、偏心回転体4の自転および公転に変換しているので、伝動装置がこれらの曲線波溝51,52により径方向に大型化してしまうとともに、整動機構40は変速を行うものでないので、変速部が1段だけとなって変速比を大きく取れない。
【0006】
また、特許文献2の伝動装置は、変速部が複数段あっても、偏心板4の両側面に曲線波溝7,8を形成したり、固定板3の側面にも曲線波溝6を形成しなければならなくて、偏心板4や固定板3の肉厚を薄くできない。しかも、固定板3と偏心板4との間、および偏心板4と出力板5との間にそれぞれ転動ボール10,11を介在させなければならないので、伝動装置の軸方向への大型化が避けられず、また多数の転動ボール10,11を用いなければならないことから部品点数が増大するとともに、伝動装置全体の重量も増加してしまう。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、部品点数の低減や軽量化を図りつつ、装置全体を大型化することなく変速部を複数段とすることのできる伝動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、第1回転軸線上の主軸部および該第1回転軸線から偏心した第2回転軸線上の偏心軸部を有して、前記偏心軸部が前記第1回転軸線周りに公転し得る偏心シャフトと、前記偏心軸部に回転可能に支承されて前記第2回転軸線周りに自転しながら前記第1回転軸線周りに公転し得るとともに、外周部に外歯を有する偏心体と、前記第1回転軸線上に軸心を持ち、内周壁に前記偏心体の外歯と噛み合う内歯を有するハウジングと、前記第1回転軸線周りに回転し得るとともに一側面を前記偏心体の一側面と対向させた回転体と、前記偏心体の前記一側面および前記回転体の前記一側面に各々形成された曲線波溝と、前記両曲線波溝間に挟まれてこれらの曲線波溝によって規定される軌道上を移動する複数個の転動体とを含み、前記偏心シャフトと前記偏心体と前記ハウジングとで第1の変速部が構成されるとともに、前記偏心体と前記回転体と前記複数個の転動体とで第2の変速部が構成されて、これら第1,第2の変速部により、前記偏心シャフトの主軸部または前記回転体の何れか一方の回転が減速または増速されて他方に伝達されることを第1の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記偏心体の曲線波溝の波数が前記回転体の曲線波溝の波数よりも多く形成されることを第2の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記偏心体の前記一側面の前記曲線波溝よりも外周側に第1の薄肉部が形成されるとともに、前記偏心体の他側面には第2の薄肉部が形成され、第1回転軸線と直交する投影面で見たときに、第2の薄肉部の面積は第1の薄肉部の面積よりも大きいことを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば、第1回転軸線上の主軸部および該第1回転軸線から偏心した第2回転軸線上の偏心軸部を有して、前記偏心軸部が前記第1回転軸線周りに公転し得る偏心シャフトと、前記偏心軸部に回転可能に支承されて前記第2回転軸線周りに自転しながら前記第1回転軸線周りに公転し得るとともに、外周部に外歯を有する偏心体と、前記第1回転軸線上に軸心を持ち、内周壁に前記偏心体の外歯と噛み合う内歯を有するハウジングとで第1の変速部が構成され、前記偏心体の一側面、およびそれに対向する前記回転体の一側面に各々形成された曲線波溝と、これら両曲線波溝間に挟まれてこれらの曲線波溝によって規定される軌道上を移動する複数個の転動体とで第2の変速部が構成されるので、第1,第2の変速部からなる複数の変速段を有していながらも、偏心体の曲線波溝を該偏心体の一側面のみに設ければ良く、またハウジングに曲線波溝を設ける必要もないので、これらの肉厚を薄くして伝動装置の軸方向長さを短縮できるとともにその重量を低減できる。また、第1の変速部は、各々径方向に短く突出する偏心体の外歯とハウジングの内歯とが噛み合うだけで、径方向に大きく蛇行して延びる曲線波溝同士が転動体を挟んで噛み合うものでないので、伝動装置が径方向に大型化することもない。しかも、偏心体に形成される曲線波溝は、外周部に外歯を有する偏心体の駄肉部である側面を利用して形成されるので、該駄肉部の有効活用が図れるとともに、これによっても偏心体を軽量化できる。
【0012】
また、本発明の第2の特徴によれば、前記偏心体の曲線波溝の波数が前記回転体の曲線波溝の波数よりも多く形成されるので、自転および公転をするために一定以上の面積が必要とされる前記偏心体の一側面における曲線波溝の波数を、前記回転体の曲線波溝の波数よりも多くすることで、前記偏心体の一側面の更なる有効活用が図れるとともに、前記回転体を小径化できるのでこれを小型化できる。
【0013】
更に、本発明の第3の特徴によれば、前記偏心体の前記一側面の前記曲線波溝よりも外周側に第1の薄肉部を形成するとともに、前記偏心体の他側面にも第2の薄肉部を形成したので、前記偏心体をこれらの薄肉部で更に軽量化できるとともに、第1回転軸線と直交する投影面で見たときに、第2の薄肉部の面積を第1の薄肉部の面積よりも大きくしたので、曲線波溝のない他側面の第2の薄肉部の前記面積を更に大きくして更なる軽量化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る伝動装置の縦断正面図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る伝動装置の主軸部をモータの出力軸に組み付けた第3実施形態に係る伝動装置の縦断正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて以下に説明する。
【0016】
先ず、
図1〜
図3に基づいて、本発明の伝動装置の第1実施形態を説明する。
【0017】
図1において、第1実施形態の伝動装置Tは、短円筒状の筒部1aおよび該筒部1aの軸方向両側の開放部分を塞ぐ左右一対のカバー部1b,1cで一体に構成されたハウジング1と、このハウジング1内に収容される偏心シャフト2、偏心体3および回転体4とを備えている。
【0018】
偏心シャフト2は、第1回転軸線X1周りに回転自在な主軸部2aと、該第1回転軸線X1から偏心した第2回転軸線X2上の偏心軸部2bとを有していて、偏心軸部2bは第1回転軸線X1周りに公転可能である。
【0019】
ハウジング1の一方のカバー部1bには、第1回転軸線X1上に軸心を持つ円筒状の第1ボス部1dが形成されるとともに、ハウジング1の他方のカバー部1cには、同じく第1回転軸線X1上に軸心を持つ円筒状の第2ボス部1eが形成されて、第1ボス部1dの内側には偏心シャフト2の主軸部2aが第1の軸受け5を介して回転自在に支承され、第2ボス部1eの内側には回転体4が回転自在に支承される。また、他方のカバー部1cと回転体4との間にはスラストワッシャ6が配置される。
【0020】
また偏心軸部2bには、外周部に外歯3aを形成した前記偏心体3が第2の軸受け7を介して回転自在に支承されるとともに、第1回転軸線X1上に軸心を有する前記筒部1aの内周壁には、偏心体3の外歯3aと噛み合う内歯1fが形成されていて、偏心シャフト2を第1回転軸線X1周りに回転させると、外歯3aを筒部1aの内歯1fに噛み合わせた前記偏心体3が、第2回転軸線X2周りに自転しながら第1回転軸線X1周りに公転し、逆に偏心体3を第2回転軸線X2周りに自転させながら第1回転軸線X1周りに公転させると、偏心シャフト2が第1回転軸線X1周りに回転する。
【0021】
また、偏心シャフト2の主軸部2aには第1回転軸8がスプライン結合されるとともに、回転体4には第2回転軸9がスプライン結合されていて、外部からの回転が、これら第1,第2回転軸8,9の一方から偏心シャフト2の主軸部2aおよび回転体4に伝達されるとともに、偏心シャフト2の主軸部2aおよび回転体4の回転がこれら第1,第2回転軸8,9の他方から外部に伝達される。
【0022】
模式図である
図2と、
図1の3−3矢視断面図である
図3とを併せて参照して、回転体4は、それの一側面4aを偏心体3の一側面3bと対向させるとともに、偏心体3の前記一側面3bおよび回転体4の前記一側面4aには、各々トロコイド曲線に沿って周方向に延びる曲線波溝10および曲線波溝11が形成されており、これら両曲線波溝10,11間には、レース部材12に保持された複数個のボール状の転動体13が、これらの曲線波溝10,11に挟まれてこれらの曲線波溝10,11によって規定される軌道上を移動するようにして介装される。
【0023】
従って、偏心体3が第2回転軸線X2周りに自転しながら第1回転軸線X1周りに公転すると両曲線波溝10,11の対向位置が移動し、該対向位置の移動に伴って両曲線波溝10,11に挟まれた転動体13が移動および回転することで回転体4が第1回転軸線X1周りに回転し、逆に回転体4を第1回転軸線X1周りに回転させると、偏心体3が第2回転軸線X2周りに自転しながら第1回転軸線X1周りに公転する。
【0024】
偏心体3の、前記一側面3bの曲線波溝10よりも外周側には第1の薄肉部3dが形成されるとともに、偏心体3の他側面3cには第2の薄肉部3eが形成されており、第1回転軸線X1と直交する投影面で見たときに、第2の薄肉部3eの面積は第1の薄肉部3dの面積よりも大きくされている。
【0025】
また本第1実施形態では、前記筒部1a内周壁の内歯1fの数が80、それに噛み合う偏心体3外周部の外歯3aの数が70とされるとともに、偏心体3の前記一側面3bに形成される曲線波溝10が波数6のハイポトロコイド波溝、回転体4の前記一側面4aに形成される曲線波溝11が波数4のエピトロコイド波溝、両波溝10,11間に保持される転動体13の数が5とされていて、後述するように、第1回転軸8から入力された回転が第2回転軸9から5/7に減速された逆向きの回転となって出力される。
【0026】
但し、これらの歯および曲線波溝の数は本第1実施形態に限定されるものでなく、例えば筒部1a内周壁の内歯1fの数や偏心軸部3外周部の外歯3aの数は自由に設定できるとともに、曲線波溝10,11の数も、その差を2としておけば自由に設定できる。また、後述する第2実施形態のように、回転体4の一側面4aに形成される曲線波溝11の数を偏心体3の前記一側面3bに形成される曲線波溝10の数よりも多くすることも可能である。
【0027】
また更に、偏心体3の前記一側面3bに形成される曲線波溝10や回転体4の一側面4aに形成される曲線波溝11は、特にハイポトロコイド波溝、エピトロコイド波溝に限定されるものでなく、例えば、一方をハイポサイクロイド波溝、他方をエピサイクロイド波溝とする等してもよい。
【0028】
このような機構における偏心シャフトの主軸部と回転体との間の伝達比は、筒部内周壁の内歯の数をZ1,偏心軸部外周部の外歯の数をZ2,偏心体の一側面に形成される曲線波溝をZ3,回転体の一側面に形成される曲線波溝をZ4としたときに〔1−{(Z1×Z3)/(Z2×Z4)}〕で表されるところ、本第1実施形態では、Z1=80,Z2=70,Z3=6,Z4=4としているので、第1回転軸8を入力軸としたときの減速比は−5/7となって、第1回転軸8から入力された回転が、主軸部から回転体に逆向きの5/7に減速された回転となって伝達されて第2回転軸9から出力されることになる。
【0029】
次に、この第1実施形態の作用について説明する。
【0030】
第1回転軸線X1上の主軸部2aおよび該第1回転軸線X1から偏心した第2回転軸線X2上の偏心軸部2bを有して、偏心軸部2bが第1回転軸線X1周りに公転し得る偏心シャフト2と、偏心軸部2bに回転可能に支承されて第2回転軸線X2周りに自転しながら第1回転軸線X1周りに公転し得るとともに、外周部に外歯3aを有する偏心体3と、第1回転軸線X1上に軸心を持つ筒部1aの内周壁に偏心体3の外歯3aと噛み合う内歯1fを有するハウジング1とで、第1の変速部Aが構成され、偏心体3の一側面3bに形成されたハイポトロコイド曲線からなる曲線波溝10と、該偏心体3の前記一側面3bに対向する前記回転体4の一側面4aに形成されたエピトロコイド曲線からなる曲線波溝11と、これら両曲線波溝10,11間に挟まれてこれらの曲線波溝10,11によって規定される軌道上を移動する複数個の転動体13とで第2の変速部Bが構成されるので、第1,第2の変速部A,Bからなる複数の変速段を有していながらも、偏心体3の曲線波溝10を該偏心体3の前記一側面3bのみに設ければ良く、またハウジング1の一方のカバー部1bに曲線波溝を設ける必要もないので、これら偏心体3およびカバー部1bの肉厚を薄くして伝動装置の軸方向長さを短縮できるとともにその重量を低減できる。また、第1の変速部Aは、各々径方向に短く突出する偏心体3の外歯3aとハウジング1の筒部1aの内歯1fとが噛み合うだけで、径方向に大きく蛇行して延びる曲線波溝同士が転動体を挟んで噛み合うものでないので、伝動装置が径方向に大型化することもない。しかも、偏心体3に形成されるハイポトロコイド曲線からなる曲線波溝10は、外周部に外歯3aを有する偏心体3の駄肉部である側面を利用して形成されるので、該駄肉部の有効活用が図れるとともに、これによっても偏心体を軽量化できる。
【0031】
また、偏心体3の前記一側面3bに形成されるハイポトロコイド波溝10の波数を回転体4の前記一側面4aに形成されるエピトロコイド波溝11の波数よりも多くしているので、自転および公転をするために一定以上の面積が必要とされる偏心体3の前記一側面3bにおけるハイポトロコイド波溝10の波数を、回転体4のエピトロコイド波溝11の波数よりも多くできて、面積の広い偏心体3の前記一側面3bの更なる有効活用が図れるとともに、回転体4を小径化できてこれを小型化できる。
【0032】
更に、偏心体3の前記一側面3bの曲線波溝10よりも外周側に第1の薄肉部3dを形成するとともに、偏心体3の他側面3cにも第2の薄肉部3eを形成したので、偏心体3をこれらの薄肉部3d,3eで更に軽量化できるとともに、第1回転軸線X1と直交する投影面で見たときに、第2の薄肉部3eの面積を第1の薄肉部3dの面積よりも大きくしたので、曲線波溝のない偏心体3の他側面3cにおける第2の薄肉部3eの前記面積を更に大きくして更なる軽量化が図れる。
【0033】
次に、本発明の伝動装置の第2実施形態を説明する。
【0034】
第2実施形態は、回転体4の一側面4aに形成される曲線波溝11の数を偏心体3の前記一側面3bに形成される曲線波溝10の数よりも2だけ多くしたもの、具体的には、第1実施形態における筒部1a内周壁の内歯1fの数および偏心体3外周部の外歯3aの数は変えずに、偏心体3の一側面3bに形成される曲線波溝10を波数4のエピトロコイド波溝、回転体4の一側面4aに形成される曲線波溝11を波数6のハイポトロコイド波溝としたものであるが、第1実施形態との相違点はその点だけなので図示は省略する。
【0035】
本第2実施形態では、Z1=80,Z2=70,Z3=4,Z4=6となっているので、第1回転軸8を入力軸としたときの減速比は5/21となって、第1回転軸8から入力された回転が第2回転軸9から5/21に減速された回転となって出力される。
【0036】
次に、
図4に基づいて、本発明の伝動装置の第3実施形態を説明する。
【0037】
第3実施形態は、ケーシング1が駆動部であるモータMをも覆っており、ハウジング1の一方のカバー部1bが、第1,第2の変速部A,Bからなる伝動部とモータMとを分離する隔壁1bとして構成されており、更に第1回転軸がモータMの回転軸8として構成されている点で第1実施形態と相違しているだけで、その余の点においては第1実施形態と差異がない。
【0038】
そして、この第3実施形態によれば、駆動部をも含む伝動装置を1つに纏めることができるので、伝動装置をコンパクトに構成することができる。
【0039】
以上、本発明の第1〜第3実施形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0040】
例えば、第1〜第3実施形態では、第1回転軸8から入力された回転を第2回転軸9から出力するように構成されているが、第2回転軸9から入力された回転を第1回転軸8から出力するように構成してもよい。
【0041】
また、第1〜第3実施形態では、転動体13を特にボール状に形成しているが、該転動体13は、ローラ状またはピン状であってもよい。
【0042】
また更に、ハウジング1の筒部1aは、内周壁に偏心体3の外歯3aと噛み合う内歯1fを形成できるものであれば、特に円筒状とする必要はない。
【符号の説明】
【0043】
1・・・・ハウジング
1f・・・内歯
2・・・・偏心シャフト
2a・・・主軸部
2b・・・偏心軸部
3・・・・偏心体
3a・・・外歯
3b・・・偏心体の一側面
3c・・・偏心体の他側面
3d・・・第1の薄肉部
3e・・・第2の薄肉部
4・・・・回転体
4a・・・回転体の一側面
10・・・・偏心体の曲線波溝
11・・・回転体の曲線波溝
13・・・転動体
A・・・・第1の変速部
B・・・・第2の変速部
X1・・・第1回転軸線
X2・・・第2回転軸線