特許第6461720号(P6461720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461720
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】耐圧ボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20190121BHJP
【FI】
   B65D1/02 220
   B65D1/02 200
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-116057(P2015-116057)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-1691(P2017-1691A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】横山 拓己
(72)【発明者】
【氏名】武田 知己
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝典
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−137488(JP,A)
【文献】 特開2005−219804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、首部、肩部、胴部及び底部が上方から下方に向けてこの順に連設され、
前記首部の直径が、25.5mm以上27.0mm以下であり、
前記肩部が、上方から下方に向かうにしたがって漸次拡径し、
2.5ガスボリューム以上の炭酸溶液が充填される合成樹脂製の耐圧ボトルであって、
前記首部と前記肩部とを連結する連結部分が、前記首部の下端に連なり、上下方向に沿う縦断面視で当該耐圧ボトルの内側に向けて窪む曲線状をなす首下曲面部と、前記首下曲面部の下端に連なり、前記縦断面視で真っ直ぐ延びる延在部と、を備え、
前記首部の下端と前記肩部の下端との間の上下方向に沿う距離が、前記肩部の下端における直径の半分未満であり、
前記肩部の下端における直径が、68mm以上73mm以下であり、
上下方向に直交する水平方向に対する前記首下曲面部の下端における接線の傾斜角が、30°以上58°以下であることを特徴とする耐圧ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量を増大させかつクレージングの発生を抑制した耐圧ボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、口部、首部、肩部、胴部及び底部がボトル軸方向に沿って上下に連設され、炭酸溶液が充填される合成樹脂製の耐圧ボトルが知られている。
このような耐圧ボトルでは、例えば図2において二点鎖線で示すように、首部12と肩部13とを連結する連結部分31(連結部分31の下端を点31Aで示す)が、上下方向に沿う縦断面視でこのボトルの内側に向けて窪む曲面状をなしており、この曲面が所定の曲率半径r2’を有している。
【0003】
このような耐圧ボトルの容量は、500ml用であることが多いが、ボトルの高さを変えることなく例えば600ml用から800ml用など容量を増大させることに関する要望がある。しかし、ボトルの高さを変更してしまうと、現行の充填機械を使用できなくなったり、需要者が受ける商品イメージが変わってしまったりする。そこで、ボトルの高さを変更することなく容量を増大させる手法としては、例えば、耐圧ボトルの胴部や肩部の直径を大きくすることが挙げられる。特に肩部の直径を大きくすることにより、耐圧ボトルの容量を効果的に増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−231249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の耐圧ボトルでは、単純に肩部の直径を大きくすると、例えば高温下に置かれるなどして内圧が上昇したときに、耐圧ボトル内の正圧に起因する応力が首部12や連結部分31に集中してしまい、この部分にひび割れが生ずる可能性がある。なお、一般的に、このひび割れは、クレージングと称される。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、容量を増大させてもクレージングの発生を抑制できる耐圧ボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の耐圧ボトルは、口部、首部、肩部、胴部及び底部が上方から下方に向けてこの順に連設され、前記首部の直径が、25.5mm以上27.0mm以下であり、前記肩部が、上方から下方に向かうにしたがって漸次拡径し、2.5ガスボリューム以上の炭酸溶液が充填される合成樹脂製の耐圧ボトルであって、前記首部と前記肩部とを連結する連結部分が、前記首部の下端に連なり、上下方向に沿う縦断面視で当該耐圧ボトルの内側に向けて窪む曲線状をなす首下曲面部と、前記首下曲面部の下端に連なり、前記縦断面視で真っ直ぐ延びる延在部と、を備え、前記首部の下端と前記肩部の下端との間の上下方向に沿う距離が、前記肩部の下端における直径の半分未満であり、前記肩部の下端における直径が、68mm以上73mm以下であり、上下方向に直交する水平方向に対する前記首下曲面部の下端における接線の傾斜角が、30°以上58°以下であることを特徴とする。
【0008】
この発明では、首部と肩部との連結部分が首下曲面部及び延在部を有しているので、耐圧ボトル内の正圧に起因する応力が連結部分に分散してかかりやすくなる。また、首下曲面部の下端における接線の水平方向に対する傾斜角が30°以上であるため、耐圧ボトル内の正圧に起因する応力が首部及び首下曲面部に分散してかかりやすくなる。さらに、上記傾斜角を30°以上とすることによって、背景技術において上述したように首部と肩部との連結部分が曲面部のみで構成されている場合と比較して、連結部分の下端における水平方向に対する傾斜角を大きくすることが可能となり、耐圧ボトル内の正圧に起因する応力が首部及び連結部分全体に分散してかかりやすくなる。以上より、連結部分、特に首下曲面部が耐圧ボトルの外側に向けて変形されることを抑制し、首部や連結部分にクレージングが発生することを抑制できる。したがって、耐圧ボトルに2.5ガスボリューム以上の炭酸溶液を充填し、この炭酸溶液の炭酸ガスによって耐圧ボトルの内圧が上昇しても、連結部分への応力集中を抑制できる。
また、首下曲面部の下端における接線の水平方向に対する傾斜角が58°以下であり、肩部の下端における直径が68mm以上73mm以下であり、かつ、首部の下端と肩部の下端との間の上下方向に沿う距離が肩部の下端における直径の半分未満であるため、従来の耐圧ボトルに対して高さを変更することなく耐圧ボトルの容量、特に肩部における容量を効果的に増大させることができる。
ここで、首部の直径が従来の耐圧ボトルと同様の25.5mm以上27.0mm以下であり、耐圧ボトルの高さを変更していないため、従来から使用している充填機械を用いて炭酸溶液を充填できる。さらに、耐圧ボトルの形状を大きくは変更していないので、耐圧ボトルの外観イメージを維持できる。
以上より、耐圧ボトルの容量を増大させてもクレージングの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明にかかる耐圧ボトルによれば、首部と肩部との連結部分が首下曲面部及び延在部を有しており、首下曲面部の下端における接線の水平方向に対する傾斜角が30°以上58°以下であり、また、首部の直径が25.5mm以上27.0mm以下であり、肩部の下端における直径が68mm以上73mm以下であり、かつ、首部の下端と肩部の下端との間の上下方向に沿う距離が肩部の下端における直径の半分未満であるため、耐圧ボトルの容量、特に肩部における容量を効率的に増大させても、首部や連結部分にクレージングが生ずることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかる耐圧ボトルを示す軸方向断面図である。
図2図1の耐圧ボトルを示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態にかかる耐圧ボトルを、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0012】
本実施形態にかかる耐圧ボトル1には、例えば2.5ガスボリューム以上の炭酸飲料などの炭酸溶液が充填されている。なお、1ガスボリュームは、1リットルの内容液に対して1リットルの二酸化炭素が含まれていることを意味する。したがって、2.5ガスボリューム以上の炭酸溶液には、1リットル当たり2.5リットル以上の二酸化炭素が含まれた炭酸溶液を意味する。
この耐圧ボトル1は、図1に示すように、円筒状の口部11と、円筒状の首部12と、円筒状の肩部13と、円筒状の胴部14と、有底筒状の底部15と、を備える。また、耐圧ボトル1は、例えばポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂材料で一体的に形成されており、インジェクション成形によって形成されたプリフォームを二軸延伸ブロー成形することより形成されている。なお、耐圧ボトル1の高さは、従来用いられている容量が500ml用の耐圧ボトルと同様に、220mmとなっている。
【0013】
これら口部11、首部12、肩部13、胴部14及び底部15は、この順で連設されると共に、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置する状態で配設されている。以下、この共通軸をボトル軸Oと称し、図1においてボトル軸Oに沿って底部15から口部11に向かう方向を上方、その逆方向を下方とする。また、ボトル軸Oから見た平面視でボトル軸Oに直交する方向を径方向、ボトル軸O回りで周回する方向を周方向と称する。
【0014】
口部11は、上下方向に真っ直ぐ延在する円筒状をなしており、口部11の直径は、従来用いられている容量が500ml用の耐圧ボトルと同様である。口部11の外周面には、図示しないキャップが着脱可能に螺着されている雄ネジ部11Aが形成されている。口部11の下端部には、径方向の外側に向けて突出しかつ全周にわたって連続して延びるネックリング16が形成されている。口部11において、雄ネジ部11Aとネックリング16との間に位置する部分には、ネックリング16よりも径方向外側に向けた突出量が小さい膨出部11Bが形成されている。
【0015】
首部12は、ネックリング16から下方に向けて延びる円筒状に形成されており、首部12の直径は、従来用いられている一般に28口径と称される容量が500ml用の耐圧ボトルと同様に、25.5mm以上27.0mm以下である。また、首部12は、上下方向の全長にわたって真っ直ぐ延在している。なお、首部12のうち後述する連結部分21に連なる下部を径方向内側に向けて突となる曲面状に形成してもよい。
【0016】
肩部13は、図1及び図2に示すように、上下方向の縦断面視で下方に向かうにしたがって漸次拡径すると共に径方向外側に向けて突となる曲線状をなしている。そして、肩部13は、胴部14の上端部と段差なく滑らかに連なっている。
肩部13は、上記縦断面視で上下方向の全長にわたって単一の円弧形状に形成されている。ここで、上記縦断面視における肩部13の曲率半径は、所定の曲率半径r1となっている。また、肩部13の下端における直径φは、68mm以上73mm以下となっている。さらに、肩部13の下端と首部12の下端との間の上下方向に沿う距離Dは、肩部13の下端における直径φの半分未満となっている。
【0017】
首部12と肩部13とを連結する連結部分21は、首部12の下端に連なる円筒状の首下曲面部22と、首下曲面部22の下端に連なる円筒状の延在部23と、を備える。
首下曲面部22は、上記縦断面視で下方に向かうにしたがって漸次拡径すると共に径方向内側に向けて窪む曲線状をなしている。首下曲面部22は、上下方向の全長にわたって単一の円弧形状に形成されている。ここで、上記縦断面視における首下曲面部22の曲率半径は、所定の曲率半径r2となっている。また、上下方向に直交する水平方向に対する首下曲面部22の下端における接線Lの傾斜角θは、30°以上58°以下となっている。
【0018】
延在部23は、上記縦断面視で下方に向かうにしたがって径方向外側に向かうように真っ直ぐ延在する直線状をなしている。
胴部14は、図1に示すように、円筒状に形成されており、胴部14の上下方向の中央部分は、径方向内側に向けて窪んでいる。
【0019】
底部15の周壁部には、周方向に間隔をあけて複数の縦凹条部15Aが形成されていると共に、底部15の周壁部において周方向で隣り合う縦凹条部15A同士の間に位置する部分には、底部15の底壁部よりも下方に向けて突出する脚部15Bが形成されており、底部15は、いわゆるペタロイド形状に形成されている。なお、縦凹条部15A及び脚部15Bそれぞれは、奇数個ずつ形成されており、図示の例では、5個ずつ形成されている。また、複数の縦凹条部15Aは、互いに同形同大に形成されていると共に、周方向に等間隔を開けて配設されている。同様に、複数の脚部15Bは、互いに同形同大に形成されていると共に、周方向に等間隔を開けて配設されている。
【0020】
以上のような構成の耐圧ボトル1によれば、連結部分21が首下曲面部22だけではなく延在部23を有しているので、耐圧ボトル1内の正圧に起因する応力が連結部分21に分散してかかる。また、首下曲面部22の下端における接線Lの水平方向に対する傾斜角θが30°以上であるので、耐圧ボトル1内の正圧に起因する応力が首部12及び首下曲面部22に分散してかかりやすくなる。さらに、傾斜角θを30°以上と大きくすることで、耐圧ボトル1内の正圧に起因する応力が首部12及び連結部分21全体に分散してかかりやすくなる。したがって、耐圧ボトル1に充填される2.5ガスボリューム以上の炭酸溶液の炭酸ガスによって耐圧ボトル1の内圧が上昇しても、首部12や連結部分21にクレージングが発生することを抑制できる。
【0021】
また、首下曲面部22の下端における接線Lの水平方向に対する傾斜角θが58°以下であり、肩部13の最大直径φが68mm以上73mm以下であり、かつ、首部12の下端と肩部13の下端との間の上下方向に沿う距離Dが肩部13の下端における直径φの半分未満となっているので、従来の耐圧ボトルに対して高さを変更することなく耐圧ボトル1の容量を増大させることができる。
さらに、首部12の直径が従来の耐圧ボトルと同様の25.5mm以上27.0mm以下であり、耐圧ボトル1の高さを変更していないため、従来から使用している充填機械を用いて炭酸溶液を充填でき、また、耐圧ボトル1の形状を大きくは変更していないので、耐圧ボトル1の外観イメージを維持できる。
【0022】
次に、以上説明した作用効果の検証試験について説明する。
比較例として、図2において二点鎖線で示すように、首部12と肩部13との連結部分31に延在部23が設けられていない耐圧ボトルを採用した。この耐圧ボトルの連結部分31は、上記縦断面視で下方に向かうにしたがって漸次拡径すると共に径方向外側に向けて突となる曲面状をなしており、上下方向の全長にわたって単一の円弧形状に形成されている。ここで、水平方向に対する連結部分31の下端31Aにおける接線L’の傾斜角を傾斜角θ’としている。
なお、実施例及び比較例は、容量、重量、胴部直径及び肩部の曲率半径を同一としており、連結部分21、31の形状のみが異なっている。
4.2ガスボリュームの炭酸溶液を充填した場合の実施例及び比較例における各数値及び検証試験結果を以下の表1に示す。ここで、最大応力値は、首部及び連結部分で発生した最大応力の値を示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示すように、実施例にかかる耐圧ボトル1では、比較例にかかる耐圧ボトルよりも最大応力値を低減でき、連結部分21にクレージングが発生することを抑制できることを確認した。一方、比較例にかかる耐圧ボトルでは、特に連結部分31に応力が集中しており、クレージングの発生を確認した。このように、実施例にかかる耐圧ボトル1では、炭酸溶液の炭酸ガスによって耐圧ボトル1の内圧が上昇しても、連結部分21にクレージングが発生しにくい。したがって、実施例によれば、炭酸溶液の種類に関わらずクレージングの発生を抑制することが可能である。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、肩部の曲率半径や最大直径、連結部分の首下曲面部の曲率半径、連結部分の延在部の長さなどは、適宜変更されてもよい。
口部には、膨出部及びネックリングの少なくとも一方が設けられていなくてもよい。
胴部は、上下方向の中間部分が径方向内側に向けて窪んでいるが、窪みのない形状など、他の形状であってもよい。
底部としていわゆるペタロイド形状を示しているが、他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明によれば、容量を増大させてもクレージングの発生を抑制できる耐圧ボトルに関して、産業上の利用可能性が認められる。
【符号の説明】
【0027】
1 耐圧ボトル、11 口部、12 首部、13 肩部、14 胴部、15 底部、21 連結部分、22 首下曲面部、23 延在部
図1
図2