(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
[エポキシ化合物]
(第一のエポキシ化合物)
第一のエポキシ化合物は、上記式(1)で示される。式(1)は2価フェノールを母核とするエポキシ化合物である。
【0012】
式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、互いに独立に、水素、グリシジル又はメチルグリシジルであり、R
1、R
2、R
3及びR
4の少なくとも2つは、グリシジル又はメチルグリシジルである。R
1、R
2、R
3及びR
4の少なくとも3つが、グリシジル又はメチルグリシジルであることが好ましく、R
1、R
2、R
3及びR
4の4つが、グリシジル又はメチルグリシジルであることがより好ましい。ここで、「グリシジル」とは2,3−エポキシプロピルである。また、「メチルグリシジル」とは2,3−エポキシ−2−メチルプロピルである。
【0013】
グリシジル及びメチルグリシジルの数は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって計算できる。具体的には、HPLCによりグリシジル及びメチルグリシジルの個数に対応したピークが得られ、それぞれのピーク面積からグリシジル及びメチルグリシジルの個数の存在割合を算出できる。これにより、化合物に含まれるグリシジル及びメチルグリシジルの個数を算出することができる。また、式(1)で示されるエポキシ化合物が混合物である場合、グリシジル及びメチルグリシジルの数は混合物の平均値として算出される。すなわち、エポキシ基の数はHPLCの各ピークにおける質量分析(LC−MS)を行うことにより分子量が判断でき、混合物中の各成分の存在比から混合物におけるエポキシ基の平均数が算出できる。例えば、式(1)で示されるエポキシ化合物の混合物には、エポキシ基が1、2、3又は4個の化合物、並びにその多量体が含まれる場合がある。「エポキシ基」とは、グリシジル基及びメチルグリシジル基の少なくとも一方を含む。
【0014】
式(1)中、R
5及びR
6は、互いに独立に、水素又はメチルである。R
5及びR
6は、同一であって、水素であるのが好ましい。
【0015】
式(1)中、X
1及びX
2は、互いに独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、又は基:−Y
1−(O−Y
1)
n1−(式中、Y
1は、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n1は、0又は1〜6の整数である)である。
【0016】
炭素原子数1〜4のアルキレンは、メチレン、エチレン、トリメチレン、及びテトラメチレンが挙げられ、好ましくは、メチレン及びエチレンである。また、炭素原子数1〜6のアルキレンは、前記の炭素原子数1〜4のアルキレンに加えて、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等の炭素原子数5及び6のアルキレンが含まれる。炭素原子数6〜20のアリーレンは、単環又は多環の芳香族基であり、フェニレン、ナフチレン、及びアントラセニレンが挙げられ、好ましくはフェニレンである。
【0017】
炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンにおける炭素原子数1〜4のアルキレン及び炭素原子数6〜20のアリーレンの例示は、前記したとおりである。炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンとして、−メチレン−1,3−フェニレン基、−メチレン−1,4−フェニレン基、−エチレン−1,3−フェニレン基及び−エチレン−1,4−フェニレン基が好ましい。炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンにおける各基への結合の順序はいずれであってもよいが、R
3及びR
4に結合する酸素原子には、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンにおける、炭素原子数1〜4のアルキレンが結合しているのが好ましい。
【0018】
炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレンにおける炭素原子数1〜4のアルキレン及び炭素原子数6〜20のアリーレンの例示は、前記したとおりである。炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレンとして、1,3−フェニレンビスメチレン(m−キシリレン)及び1,4−フェニレンビスメチレン(p−キシリレン)が好ましい。
【0019】
n1は、0又は1〜6の整数であり、n1は、好ましくは、0又は1〜4の整数である。
【0020】
式(1)中、ベンゼン環への酸素の結合位置は、特に限定されず、1,2−位(カテコール骨格)、1,3−位(レゾルシノール骨格)、1,4−位(ヒドロキノン骨格)が挙げられる。好ましくは、1,3−位及び1,4−位であり、つまりレゾルシノール骨格及びヒドロキノン骨格を有するものである。式(1)で示されるエポキシ化合物がレゾルシノール骨格及びヒドロキノン骨格を有する場合、より低粘度であり、液晶溶出性により優れ、更に、低温硬化性が良好である。
【0021】
以上より、式(1)で示されるエポキシ化合物は、下記式(1a)で表される化合物2、及び下記式(1b)で表される化合物4が好ましい。
【化4】
【化5】
【0022】
式(1)で示されるエポキシ化合物の数平均分子量は、200〜5,000であるのが好ましい。このような範囲であれば、接着性が良好であり、かつ液晶への汚染性が更に抑えられる。
【0023】
式(1)で示されるエポキシ化合物のエポキシ当量は、100〜3,000g/eq.であるのが好ましく、150〜1,000g/eq.であるのがより好ましい。このような範囲であれば、接着性が良好であり、かつ液晶への汚染性が更に抑えられる。エポキシ当量は、エポキシ化合物が混合物である場合、混合物の平均値として求められる。本発明において、エポキシ当量は、JISK7236:2001(ISO3001:1999に対応)に準拠して求められる。
【0024】
式(1)で示されるエポキシ化合物の25℃における粘度は、500〜600,000mPa・sとすることができ、1,000〜500,000mPa・sであるのが好ましく、2,000〜300,000mPa・sであるのがより好ましい。このような範囲であれば、硬化剤や粉体等の固形成分を多く充填できるため、シール剤配合の設計の自由度も向上する。なお、粘度は、E型粘度計を用いて測定した値である。
【0025】
(第二のエポキシ化合物)
第二のエポキシ化合物は、エポキシ化合物であって、工程(1A)〜(1B):
(1A)ジヒドロキシベンゼンのジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゼンのジメチルグリシジルエーテル及びジヒドロキシベンゼンのグリシジルメチルグリシジルエーテルからなる群より選択される1以上の2官能エポキシ化合物と、ジヒドロキシ化合物とを反応させて、2官能エポキシ化合物の開環体を得る工程と、
(1B)工程(1A)で得られた2官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基の少なくとも2つをエポキシ化する工程と
を含む方法により得られる。
第二のエポキシ化合物の製造方法は、好ましいものを含め、後述するとおりである。
【0026】
[部分エステル化エポキシ化合物]
(第一の部分エステル化エポキシ化合物)
部分エステル化エポキシ化合物は、前記式(2)で示される。
【0027】
式(2)中、R
11、R
12、R
13及びR
14は、互いに独立に、水素、グリシジル、メチルグリシジル又は基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19(式中、R
17は、水素又はメチルであり、R
18は、水素又は(メタ)アクリロイルであり、R
19は、(メタ)アクリロイルである)であり、
R
11、R
12、R
13及びR
14の少なくとも2つは、グリシジル、メチルグリシジル又は基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19であり、
R
15及びR
16は、互いに独立に、水素又はメチルであり、
X
11及びX
12は、互いに独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、又は基:−Y
2−(O−Y
2)
n2−(式中、Y
2は、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n2は、0又は1〜6の整数である)であり、
グリシジル及びメチルグリシジルと基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19との割合は、10:90〜90:10である〕
【0028】
基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19は、エポキシ基と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物とを反応させることにより形成される。エポキシ基がグリシジル基である場合、R
17が水素であり、エポキシ基がメチルグリシジル基である場合、R
17がメチルである。R
17は水素であるのが好ましい。R
17が水素であると、合成が容易である。(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物が(メタ)アクリル酸である場合、R
18が水素であり、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物が(メタ)アクリル酸無水物である場合、R
18が(メタ)アクリロイルである。
【0029】
R
11、R
12、R
13及びR
14の少なくとも3つが、グリシジル、メチルグリシジル、又は基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19であることが好ましく、R
11、R
12、R
13及びR
14の4つが、グリシジル、メチルグリシジル、又は基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19であることがより好ましい。
【0030】
式(2)中、グリシジル及びメチルグリシジルの数、並びに(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、HPLCによって計算することができる。具体的には、HPLCにより、各エポキシ基の数及び各(メタ)アクリロイル基の数に対応したピークが得られ、それぞれのピーク面積から各個数の存在割合を算出することができる。これにより、式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物における、グリシジル、メチルグリシジル、基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19の個数が求められる。また、式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物が混合物である場合は、グリシジル及びメチルグリシジルの数、並びに(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、混合物の平均値として算出される。例えば、式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物の混合物には、式(1)で示されるエポキシ化合物の混合物及びそれらのエポキシ基の一部が(メタ)アクリロイル基になった化合物が含まれる場合がある。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む。
【0031】
式(2)部分エステル化エポキシ化合物において、グリシジル及びメチルグリシジルと基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19との割合は、10:90〜90:10である。ここで、エポキシ基と基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19との割合は、HPLC及びエポキシ当量より求めることができる。具体的には、原料であるエポキシ化合物のエポキシ当量が部分エステル化された分だけ減少することから、部分エステル化エポキシ化合物のエポキシ当量を測定することにより、どの程度エステル化されたかが算出できる。また、HPLCの各ピークにおける質量分析(LC−MS)を行うことにより各成分の分子量及び存在割合が求められ、成分ごとのエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基の割合を求めることができる。
【0032】
式(2)中、R
15及びR
16は、互いに独立に、水素又はメチルである。R
15及びR
16は、好ましいものを含め、R
5及びR
6で前記したとおりである。
【0033】
式(2)中、X
11及びX
12は、互いに独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、又は基:−Y
2−(O−Y
2)
n2−(式中、Y
2は、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n2は、0又は1〜6の整数である)である。X
11及びX
12は、好ましいものを含め、X
1及びX
2で前記したとおりである。
【0034】
式(2)中、ベンゼン環への酸素の結合位置は、好ましいものを含め、式(1)で前記したとおりである。
【0035】
式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物の25℃における粘度は、1,000〜2,000,000mP・sとすることができ、5,000〜1,500,000mP・sであるのが好ましく、10,000〜1,000,000mP・sであるのがより好ましい。このような範囲であれば、液晶に塗布した際に流動が生じにくく、液晶への汚染を抑えることができる。
【0036】
(第二の部分エステル化エポキシ化合物)
第二の部分エステル化エポキシ化合物は、(1C)前記工程(1A)〜(1B)を含む方法により得られるエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物とを反応させることにより得られる。ここで、第二の部分エステル化エポキシ化合物の製造方法は、好ましいものを含め、後述するとおりである。
【0037】
[エポキシ化合物の製造方法]
エポキシ化合物の製造方法は、工程(1A)〜(1B):
(1A)ジヒドロキシベンゼンのジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゼンのジメチルグリシジルエーテル及びジヒドロキシベンゼンのグリシジルメチルグリシジルエーテルからなる群より選択される1以上の2官能エポキシ化合物と、ジヒドロキシ化合物とを反応させて、2官能エポキシ化合物の開環体を得る工程と、
(1B)工程(1A)で得られた2官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基の少なくとも2つをエポキシ化する工程と
を含む。
【0038】
ヒドロキシ基のエポキシ化には、ヒドロキシ基を、グリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基とすることが含まれる。
【0039】
(工程(1A))
工程(1A)において、原料化合物である2官能エポキシ化合物には、エポキシ基の開環によりヒドロキシ基が形成されると共に、ジヒドロキシ化合物に由来するヒドロキシ基が形成される。ここで、2官能エポキシ化合物の開環体とは、2官能エポキシ化合物のエポキシ基が全て開環した化合物をいう。
【0040】
<2官能エポキシ化合物>
2官能エポキシ化合物は、ジヒドロキシベンゼンのジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゼンのジメチルグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゼンのグリシジルメチルグリシジルエーテルである。ジヒドロキシベンゼンのジグリシジルエーテルは、ジヒドロキシベンゼンの2つのヒドロキシ基が、グリシジルオキシ基である化合物である。ジヒドロキシベンゼンのジメチルグリシジルエーテルは、ジヒドロキシベンゼンの2つのヒドロキシ基が、メチルグリシジルオキシ基である化合物である。ジヒドロキシベンゼンのグリシジルメチルグリシジルエーテルは、ジヒドロキシベンゼンの一方のヒドロキシ基がグリシジルオキシ基であり、もう一方のヒドロキシ基がメチルグリシジルオキシ基である化合物である。2官能エポキシ化合物として、レゾルシノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジメチルグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル及びヒドロキノンジメチルグリシジルエーテルが好ましく、レゾルシノールジグリシジルエーテル及びヒドロキノンジグリシジルエーテルがより好ましい。
【0041】
なお、2官能エポキシ化合物は、下記式(3)で示される化合物である。
【化6】
〔式中、R
31及びR
32は、独立して、水素又はメチルである〕
【0042】
ここで、R
5及びR
6が互いに異なる式(1)で示されるエポキシ化合物は、ジヒドロキシベンゼンのグリシジルメチルグリシジルエーテル、すなわちR
31及びR
32の一方が水素であり、もう一方がメチルである、式(3)で示される化合物を用いて製造できる。
【0043】
<ジヒドロキシ化合物>
ジヒドロキシ化合物は、分子中に2個のヒドロキシ基を含む化合物であれば特に限定されない。ジヒドロキシ化合物として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のモノアルキレングリコール及びポリアルキレングリコール;ベンゼン−1,4−ジメタノール、ベンゼン−1,3−ジメタノール、ベンゼン−1,4−ジエタノール等の芳香族ジアルコール;4−ヒドロキシメチルフェノール、3−ヒドロキシメチルフェノール、4−ヒドロキシエチルフェノール、及び3−ヒドロキシエチルフェノール等のヒドロキシアルキルフェノールが挙げられる。
【0044】
ジヒドロキシ化合物は、下記式(4):
HO−X
21−OH (4)
〔式中、X
21は、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、又は基:−Y
3−(O−Y
3)
n3−(式中、Y
3は、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n3は、0又は1〜6の整数である)である〕
で示されるジヒドロキシ化合物であるのが特に好ましい。ここで、X
21は、好ましいものを含め、X
1及びX
2で述べたとおりである。
【0045】
式(4)で示されるジヒドロキシ化合物として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のモノアルキレングリコール及びポリアルキレングリコール;ベンゼン−1,4−ジメタノール、ベンゼン−1,3−ジメタノール、ベンゼン−1,4−ジエタノール等の芳香族アルコール;(2−ヒドロキシフェニル)メタノール、(2−ヒドロキシフェニル)−2−エタノール等のヒドロキシアルキレンフェノールが好ましい。
【0046】
工程(1A)で、ジヒドロキシ化合物として、式(4)の化合物が用いられる場合、2官能エポキシ化合物の開環体は、下記式(5)で表される。
【化7】
〔式中、
R
25及びR
26は、互いに独立に、水素又はメチルであり、
X
22及びX
23は、互いに独立に、X
21の意味を有する〕
【0047】
ジヒドロキシ化合物の使用量は、2官能エポキシ化合物におけるエポキシ基1当量に対して、0.5当量〜10当量であり、好ましくは1当量〜8当量である。エポキシ開環体の生成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、原料の2官能エポキシ化合物さらには片末端反応物のピークの消失により、すべてのエポキシ基がジヒドロキシ化合物と反応して確認できる。ここで、片末端反応物とは、2官能エポキシ化合物の2つのエポキシ基の一方が未開環である反応物をいう。
【0048】
<反応条件>
工程(1A)における反応は、金属触媒の存在下又は不存在下で行うことができる。金属触媒は、エポキシ基の開環反応に用いられる触媒であればいずれも使用することができ、例えば、銅、亜鉛、鉄、マグネシウム、銀、カルシウム、錫等の金属と、BF
4−、SiF
62−またはPF
6−、CF
3SO
2−等のアニオンからなる金属触媒が挙げられる。好ましくは、ホウフッ化錫(Sn(BF
4)
2)である。金属触媒は、全反応混合物の重量に対して、10〜1,000ppm、好ましくは、20〜200ppmである。
【0049】
また、工程(1A)における反応は、第四級アンモニウム塩の存在下又は不存在下で行うことができる。第四級アンモニウム塩としては塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化メチルトリデシルアンモニウム及び塩化テトラメチルアンモニウムのような塩化テトラアルキルアンモニウム、及び塩化ベンジルトリメチルアンモニウムのような塩化アラルキルトリアルキルアンモニウム等が挙げられ、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムが好ましい。第四級アンモニウム塩の使用量は、2官能エポキシ化合物及びジヒドロキシ化合物の全重量に基づいて、0.1〜5重量%であり、0.5〜2.0重量%がより好ましい。
【0050】
工程(1A)における反応は、有機溶媒の存在下又は不存在下で行うことができる。用いることができる有機溶媒として、ベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素:シクロヘキサノン等の環式脂肪族ケトン;並びに出発物質のジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0051】
工程(1A)における反応温度は、特に制限されず、50℃〜130℃とすることができ、70℃〜120℃であるのが好ましい。
【0052】
(工程(1B))
工程(1B)により、工程(1A)で得られた2官能エポキシ化合物のエポキシ開環体のヒドロキシ基の少なくとも2つがエポキシ化される。工程(1B)において、2官能エポキシ化合物のエポキシ開環体におけるヒドロキシ基の一部又は全部がエポキシ化される。エポキシ化合物が、2官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基の2つ、3つ又は4つがエポキシ化した化合物の混合物である場合、2官能エポキシ化合物のエポキシ開環体の総ヒドロキシ基中の、50%〜100%がエポキシ化されるのが好ましく、75%〜100%がエポキシ化されるのがより好ましい。
【0053】
<エポキシ開環体>
2官能エポキシ化合物のエポキシ開環体(以下、単に「エポキシ開環体」ともいう。)は、工程(1B)における原料化合物であり、前述の2官能エポキシ化合物のエポキシ基が全て開環した化合物である。工程(1B)において、エポキシ化は、ヒドロキシ基をエポキシ化する公知の反応を用いることができ、例えば、エピクロロヒドリン法及び酸化法が挙げられ、好ましくはエピクロロヒドリン法である。
【0054】
<<エピクロロヒドリン法>>
エピクロロヒドリン法は、エポキシ開環体を、相関移動触媒の存在下、エピクロロヒドリン又はメチルエピクロロヒドリンと反応させることにより、エポキシ開環体のヒドロキシ基をエポキシ化する方法である。
【0055】
エピクロロヒドリン法では、エピクロロヒドリン又はメチルエピクロロヒドリンを、所望のエポキシ基の数となるモル数で反応させることができる。エポキシ開環体のヒドロキシ基1モルに対して、エピクロロヒドリン又はメチルエピクロロヒドリンの量は1.0〜20モル、好ましくは3.0〜15モルである。例えば、分子中に4個のヒドロキシ基を有する式(4)で示される化合物1モルに対して、エピクロロヒドリン又はメチルエピクロロヒドリンの量は、4〜80モル、好ましくは12〜60モルである。
【0056】
相間移動触媒は、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化メチルトリデシルアンモニウム及び塩化テトラメチルアンモニウムのような塩化テトラアルキルアンモニウム、及び塩化ベンジルトリメチルアンモニウムのような塩化アラルキルトリアルキルアンモニウム等の第四級アンモニウム塩が挙げられ、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムが好ましい。相間移動触媒の使用量は、反応体の全重量に基づいて、0.1〜5重量%であり、0.5〜2.0重量%がより好ましい。
【0057】
エピクロロヒドリン法における反応は、ヘキサン及びペンタン等の炭化水素;ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル及びジイソプロピルエーテル等のエーテル;またはアセトン及びメチルエチルケトン等のケトンのような溶媒の存在下で行うことができるが、溶媒として過剰のエピクロロヒドリン及びメチルエピクロロヒドリンを使用することもできる。反応温度は、30〜90℃、好ましくは40〜65℃、そして最も好ましくは約50ないし約55℃の範囲の温度で反応できる。
【0058】
<<酸化法>>
酸化法は、エポキシ開環体のヒドロキシ基をアリル化して、ジアリルエーテル化合物を得る工程と、ジアリルエーテル化合物のアリルオキシ基又は2−メチル−2−プロペニルオキシ基を酸化する工程とを含む方法である。本発明において、ヒドロキシ基のアリル化には、ヒドロキシ基をアリルオキシ基又は2−メチル−2−プロペニルオキシ基とすることが含まれる。
【0059】
ジアリルエーテル化合物を得る工程は、エポキシ開環体と、アリルハライド又は2−メチル−2−プロペニルハライドとを反応させることにより、エポキシ開環体のヒドロキシ基を、アリルオキシ基又は2−メチル−2−プロペニルオキシ基に変換する工程である。具体的には、エポキシ開環体及びアリルハライドをジメチルスルホキシドに溶解後、第四級アンモニウム塩を添加し、反応温度を40℃以下に保ちながらアルカリ水溶液を滴下し、滴下終了後、30〜40℃で約6時間反応を行う。
【0060】
アリルハライド及び2−メチル−2−プロペニルハライドにおけるハライドとして、塩素及び臭素が挙げられる。アリルハライド及び2−メチル−2−プロペニルハライドの添加量は、エポキシ開環体のヒドロキシ基1モルに対して3〜30モルが好ましい。
【0061】
第四級アンモニウム塩としては、例えばテトラブチルアンモニウムブロミド等のテトラアルキルアンモニウムハライド又はテトラフェニルアンモニウムクロリド等のテトラアリールアンモニウムハライドが挙げられる。第四級アンモニウム塩の添加量は、エポキシ開環体1モルに対して0.001モル〜0.1モルが好ましい。
【0062】
アルカリ水溶液としては、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。用いられるアルカリ金属の使用量は、エポキシ開環体のヒドロキシ基1当量に対して1〜8当量が好ましい。
【0063】
ジアリルエーテル化合物のアリルオキシ基又は2−メチル−2−プロペニルオキシ基を酸化する工程は、ジアリルエーテル化合物を、炭酸カリウムの存在下、過酸化水素水と反応させる工程である。具体的には、エポキシ開環体のヒドロキシ基をアリル化したジアリルエーテル化合物を、メタノール、エタノール等のアルコール、又はアセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル等の溶剤と、炭酸カリウムを加え、撹拌下、5〜40%、好ましくは30〜35%の過酸化水素水を滴下し、滴下終了後、0.5〜12時間、好ましくは1〜8時間、酸化反応を行う。
【0064】
過酸化水素水の添加量は、エポキシ開環体のヒドロキシ基をアリル化したジアリルエーテル化合物1モルに対して、5〜15モルになるよう加えることが好ましい。反応温度は、例えば45℃以下、好ましくは20〜40℃である。
【0065】
エポキシ化合物の製造方法は、好ましくは、式(1)で示されるエポキシ化合物の製造方法である。
【0066】
[部分エステル化エポキシ化合物の製造方法]
部分エステル化エポキシ化合物の製造方法は、工程(1C):
(1C)前記工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物を、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物と反応させる工程を含む。
【0067】
工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物は、特に限定されないが、式(1a)〜(1b)で示される化合物が好ましい。
(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸無水物としては、特に限定されず、例えば市販のアクリル酸、メタクリル酸及び(メタ)アクリル酸無水物が挙げられる。
【0068】
(反応条件)
工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物のエポキシ基1当量に対する、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物の反応量は、好ましくは10〜90当量%であり、より好ましくは20〜80当量%であり、さらに好ましくは30〜70当量%であり、特に好ましくは40〜60当量%である。部分エステル化エポキシ化合物の製造方法において、グリシジル基及びメチルグリシジル基と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応は定量的に進むため、得られた部分エステル化エポキシ化合物のエステル化率は、エポキシ当量より推定することもできる。
【0069】
工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物を上記範囲内で反応させると、不飽和基のみを反応させる一次重合の際に、仮固定に良好な樹脂特性が得られ、二次重合の際に相分離等を生じることなく均質な重合物を形成することが可能な部分エステル化エポキシ化合物を得ることができる。
【0070】
反応は塩基性触媒の存在下又は不存在下で行うことができる。塩基性触媒として、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応により用いられる公知の塩基性触媒を使用することができる。また塩基性触媒をポリマーに担持させた、ポリマー担持塩基性触媒を使用することもできる。塩基性触媒としては、3価の有機リン化合物及び/又はアミン化合物であることが好ましい。塩基性触媒の塩基性原子は、リン及び/又は窒素である。
【0071】
3価の有機リン化合物としては、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィンのようなアルキルホスフィン類及びその塩、トリフェニルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリス−(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のアリールホスフィン類及びその塩、トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等の亜リン酸トリエステル類及びその塩等が挙げられる。3価の有機リン化合物の塩としては、トリフェニルホスフィン・エチルブロミド、トリフェニルホスフィン・ブチルブロミド、トリフェニルホスフィン・オクチルブロミド、トリフェニルホスフィン・デシルブロミド、トリフェニルホスフィン・イソブチルブロミド、トリフェニルホスフィン・プロピルクロリド、トリフェニルホスフィン・ペンチルクロリド、トリフェニルホスフィン・ヘキシルブロミド等が挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン(PPh
3)が好ましい。
【0072】
アミン化合物としては、ジエタノールアミン等の第二級アミン、トリエタノールアミン、ジメチルベンジルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリスジエチルアミノメチルフェノール等の第3級アミン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(Me−TBD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン等の強塩基性アミン及びその塩が挙げられる。中でも、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)が好ましい。アミン化合物の塩としては、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムが挙げられる。
【0073】
塩基性触媒を担持させるポリマーとしては、特に限定されず、ポリスチレンをジビニルベンゼンで架橋させたポリマーやアクリル樹脂をジビニルベンゼンで架橋させたポリマー等が用いられる。これらのポリマーは、工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応に用いられる溶媒(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等)及び原料、生成物に不溶である。
【0074】
ポリマー担持塩基性触媒は、市販のものを用いてもよい。市販のポリマー担持塩基性触媒としては、例えばPS−PPh
3(ジフェニルホスフィノポリスチレン、バイオタージ社製)、PS−TBD(1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンポリスチレン、バイオタージ社製)が挙げられる。
【0075】
ポリマー担持塩基性触媒の使用割合は、工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物のエポキシ1当量に対して、ポリマー担持製塩基触媒が0.5〜5.0ミリ当量であることが好ましく、1.0〜3.0ミリ当量であることがより好ましい。ポリマー担持塩基性触媒の使用割合が、上記範囲内であると反応率、反応時間及び触媒コストの観点から好ましい。
【0076】
工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物の反応工程における温度は、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃である。
【0077】
触媒存在下で、工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物とを反応させる場合、ゲル化を防止するために反応系内及び反応系上の気相の酸素濃度を適正に保つ必要がある。例えば、積極的に反応系内に空気を吹き込む場合は、触媒の酸化を引き起こし、活性の低下を招く場合があるので注意が必要である。
【0078】
工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応は、この反応によって得られる部分エステル化エポキシ化合物が紫外線等の活性エネルギー線によって硬化することから、紫外線を遮光する容器内で反応を行うことが望ましい。また、工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応は、気相重合を防止するために、エポキシ化合物に対して良溶媒性を示す還流溶剤存在下で行なってもよいが、この場合は、反応終了後に溶媒を除去する必要があるため、無溶剤で行うことが好ましい。還流溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0079】
部分エステル化エポキシ化合物の製造方法は、好ましくは、式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物の製造方法である。
【0080】
[硬化性組成物]
(a)式(1)で示されるエポキシ化合物、(b)式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物、(c)工程(1A)〜(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物、並びに(d)工程(1A)〜(1C)を含む製造方法により得られる部分エステル化エポキシ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含む硬化性組成物について説明する。硬化性樹脂組成物に含まれるベースオリゴマー成分となる化合物は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物である。例えば、式(1)で示されるエポキシ化合物又は式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物を単独で用いてもよく、あるいは式(1)で示されるエポキシ化合物の1種以上と式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物の2種以上とを混合して用いてもよい。
【0081】
(更なる成分)
硬化性組成物は、更に、硬化剤、重合開始剤、フィラー、カップリング剤を含むことができる。
【0082】
硬化剤は、特に限定されないが、アミン系硬化剤、例えば有機酸ジヒドラジド化合物、アミンアダクト、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、エポキシ変性ポリアミン、およびポリアミノウレア等が挙げられ、特に有機酸ジヒドラジドであるVDH(1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン)、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、UDH(7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド)及びLDH(オクタデカン−1,18−ジカルボン酸ジヒドラジド);ADEKA社から、アデカハードナーEH5030S、味の素ファインテクノ社から、アミキュアPN−23、アミキュアPN−30、アミキュアMY−24、アミキュアMY−H等として市販されているアミンアダクトが好ましい。これらの硬化剤は、単独で用いても、複数で用いてもよい。硬化剤の配合量は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物の合計100重量部に対して、1〜150重量部であることが好ましく、5〜100重量部であることが好ましく、10〜80重量部であることがより好ましい。
【0083】
重合開始剤は、光のエネルギーを吸収することによって活性化し、ラジカルを発生する化合物を意味する。重合開始剤は、特に限定されず、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、α−アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類及びアントラキノン類の重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は、液晶への溶解性が低く、また、それ自身で光照射時に分解物がガス化しないような反応性基を有するものが好ましい。このような好ましい重合開始剤として、例えばEYレジンKR−2(ケイエスエム社製)等が挙げられる。重合開始剤の量は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。
【0084】
また、重合開始剤としては熱ラジカル重合開始剤を用いることも出来る。熱ラジカル重合開始剤は加熱によりラジカルを発生し、重合反応を開始させる重合開始剤である。熱ラジカル重合開始剤は、特に限定されず、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
【0085】
フィラーは、硬化性組成物の粘度制御や硬化性組成物を硬化させた硬化物の強度向上、または線膨張性を抑えることによって硬化性組成物の接着信頼性を向上させる等の目的で添加される。フィラーは、特に限定されず、エポキシ化合物を含む組成物に対して用いられる公知の無機フィラー及び有機フィラーが挙げられる。無機フィラーとして、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。有機フィラーとして、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、これらを構成するモノマーと他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、及びゴム微粒子が挙げられる。本発明において、特に無機フィラー、例えば二酸化ケイ素及びタルクが好ましい。フィラーの配合量は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物100重量部に対して、2〜40重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。
【0086】
カップリング剤は、液晶表示基板との接着性をさらに良好とすることを目的として添加される。カップリング剤は、特に限定されず、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。シランカップリング剤の量は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜2重量部であることがより好ましい。
【0087】
硬化性組成物は、好ましくは、液晶滴下工法用シール剤である。
【0088】
[硬化性組成物の硬化物]
本発明は、硬化性組成物の硬化物も対象とする。硬化性組成物は、紫外線等のエネルギー線の照射により、熱を加えることにより、又は紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化する。エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物を含む硬化性組成物を硬化させる方法は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物を含む硬化性組成物に紫外線等のエネルギー線を照射するか、熱を加えるか、又は紫外線等のエネルギー線の照射の後に熱を加える工程を含む。
【0089】
硬化性組成物の硬化物は、液晶表示体をシールするために用いられる。よって、本発明は、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物でシールされた、液晶表示体も対象とする。
【0090】
エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物は、低粘度で、液晶への溶解性が抑えられ、液晶の汚染を防止することができる、高品位のシール剤のオリゴマー成分として使用できる。
【実施例】
【0091】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0092】
[比較例1]化合物1の製造
【0093】
【化8】
【0094】
化合物1は、特開2012−077202号公報の合成例1に従って合成した。
【0095】
[比較例2]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA850CRP、DIC株式会社製)を、比較のため、化合物1−1のエポキシ化合物とした。
【0096】
[比較例3]
レゾルシノール型エポキシ樹脂(EX−201、ナガセケムテックス株式会社製)を、比較のため、化合物1−2のエポキシ化合物とした。
【0097】
[実施例1]化合物2の製造
【0098】
【化9】
【0099】
レゾルシノール型エポキシ樹脂(EX−201、ナガセケムテックス社製)117g、2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール(関東化学社製)152g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)1.8g、ブタノール(関東化学社製)200gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、110℃で20時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、メチルイソブチルケトンを300g加えて1%水酸化ナトリウム水溶液500gで2回、水500mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体243gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、原料のエポキシ樹脂および1つのエポキシ基のみが開環した化合物のピークの消失により、全てのエポキシ基が開環されていることを確認した。
【0100】
EX−201−2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール開環体100g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)445g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)15gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1リットルの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、120gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しジクロロメタン500mLを加え1Lの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、褐色透明粘稠物のエポキシ化合物(化合物2)126gを得た。
【0101】
[実施例2] 化合物3の製造(式(2)において、フェニル基への酸素の結合位置は、1,3−位であり、R
15及びR
16が水素であり、X
11及びX
12が−エチレン−1,3−フェニレン−であり、R
11、R
12、R
14及びR
15のうち、4個がグリシジル基及び基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19であり、R
17が水素であり、R
18が水素であり、R
19がメタクリロイルであり、グリシジル基と基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19との割合が50:50である化合物)の合成
【0102】
化合物2を80g、メタクリル酸(東京化成社製)18g、触媒であるPS−PPh
3(ジフェニルホスフィノポリスチレン、バイオタージ社製)2.0g、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)20mgを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で10時間撹拌した。反応終了後、濾過により触媒を除去し部分メタクリレート化エポキシ化合物(化合物3)72gを得た。
【0103】
[実施例3]化合物4の製造
【0104】
【化10】
【0105】
ヒドロキノン型エポキシ樹脂(EX−203、ナガセケムテックス社製)80g、2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール(関東化学社製)106g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)4.0g、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)400gを温度計、攪拌機を取り付けたナスフラスコに入れ、110℃で20時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液500gで2回、水500mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体111gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、原料のエポキシ樹脂および1つのエポキシ基のみが開環した化合物のピークの消失により、全てのエポキシ基が開環されていることを確認した。
【0106】
EX−203−2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール開環体80g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)356g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)12gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1リットルの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、120gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しジクロロメタン500mLを加え1Lの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物のエポキシ化合物(化合物4)95gを得た。
【0107】
[実施例4]化合物5の製造(式(2)において、フェニル基への酸素の結合位置は、1,4−位であり、R
15及びR
16が水素であり、X
11及びX
12が−エチレン−1,4−フェニレン−であり、R
11、R
12、R
14及びR
15のうち、4個がグリシジル基及び基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19であり、R
17が水素であり、R
18が水素であり、R
19がメタクリロイルであり、グリシジル基と基:−CH
2−CR
17(OR
18)−CH
2−O−R
19との割合が50:50である化合物)
【0108】
化合物4を80g、メタクリル酸(東京化成社製)19g、触媒であるPS−PPh
3(ジフェニルホスフィノポリスチレン、バイオタージ社製)2.1g、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)20mgを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で6時間撹拌した。反応終了後、濾過により触媒を除去し部分メタクリレート化エポキシ化合物(化合物5)70gを得た。
【0109】
(粘度及びエポキシ当量の測定)
実施例1〜4及び比較例1〜2の化合物について、E型粘度計(東機産業社製 RE105U)を用いて、コーンロータの回転速度2.5rpmで粘度を測定した粘度、及び、JISK7236:2001により測定したエポキシ当量を表1に示す。
【0110】
(NI点の測定)
実施例1〜4及び比較例1〜2の化合物について、以下の方法で、NI点の測定を行った。液晶の相転移温度であるNI点(Nematic−Isotropic point)の変化により、液晶へのエポキシ化合物又は部分エステル化エポキシ化合物の溶出性の評価を行える。液晶のNI点は液晶の各成分の混合組成により決定され、各配合で固有の値となる。一般的に、これら液晶に何らかの不純物(他成分)が混入することによりNI点は低下することが知られており、不純物混入具合をNI点より評価することができる。ここで、NI点変化が小さいことは、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物の液晶への汚染が低減されており、このようなエポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物は液晶溶出性に優れることを示す。
【0111】
(測定用試料の作製)
アンプル瓶にエポキシ化合物及び部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物0.1gを入れ、液晶(MLC−11900−080、メルク社製)1gを加えた。この瓶を120℃オーブンに1時間投入し、その後室温で静置して室温(25℃)に戻ってから液晶部分を取り出し0.2μmフィルターによりろ過し、評価用の液晶サンプルとした。NI点の測定は、示差走査型熱量計(DSC、パーキンエルマー社製、Pyris6)を使用した。評価用の液晶サンプル10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件で測定を行った。
【0112】
(硬化性試験)
実施例1及び比較例1〜2の化合物について、DSC発熱ピークを測定した。表2に示すエポキシ化合物及び部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物に対して、当量の潜在性硬化剤(アミンアダクトEH5030S(ADEKA社製))を混合して混合物を得た。その後、混合物から10mgを取り出してDSC測定を行った。DSCの測定条件は、窒素雰囲気下、25℃〜200℃、昇温速度5℃/分である。発熱ピーク温度が低ければ、より低温で硬化することを示す。結果を表2に示す。
【0113】
結果を表1及び表2に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
実施例のエポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物は、低粘度であり、NI点変化が小さく、液晶溶出性に優れる。一方、比較例のエポキシ化合物は、NI点変化が大きく、液晶溶出性に劣る。また、実施例5と比較例4及び5との比較により、実施例2のエポキシ化合物は、DSC発熱ピーク温度が低く、低温硬化性に優れている。