(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陰圧に保たれ、遺伝子操作された植物が栽培される栽培室と、前記栽培室の室内に設けられ、栽培された前記植物を不活化させ、前記栽培室の外から不活化後の前記植物を取り出せる不活化装置と、前記栽培室の外側に前記不活化装置の取出口に接して設けられ、不活化後の前記植物が保管される一時保管室と、を有する栽培室ユニットと、
不活化後の前記植物が搬入される原料保管室と、陽圧に保たれ、前記植物の植物由来成分を含む製品が製造される製造室と、を有する製造室ユニットと、
前記栽培室ユニットの前記一時保管室と、前記製造室ユニットの前記原料保管室とをつなぐ通路と、
を有する植物工場。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る植物工場10について、
図1、
図2(A)、
図2(B)を用いて説明する。
図1は、植物工場10の平面図であり、
図2(A)は、各室の室内空気圧を相対的に示した平面図であり、
図2(B)は、各室の空気清浄度を相対的に示した平面図である。
なお、本明細書では、各図において、扉の具体的な位置や形状等の記載は省略し、人や物の移動方向のみを矢印で示している。また、人や物の移動方向を示す矢印のうち、実線矢印は、人(作業者等)の移動方向を示し、破線矢印は、物(遺伝子操作植物や関連資材等)の移動方向を示し、一点鎖線矢印は、廃棄物の移動方向を示している。
【0018】
図1に示すように、植物工場10は、四周を外壁68で囲まれた建物の内部に設けられている。植物工場10は、機能から、一点鎖線で示す5つのエリア(資材搬入エリア82、栽培エリア80、保管搬出エリア84、衛生管理エリア86、事務厚生エリア88)に分けられている。
【0019】
栽培エリア80は、植物工場10のほぼ中央部に配置され、遺伝子操作された植物が栽培される栽培室12が設けられている。栽培室12は高い気密性を有する構成とされ、後述するように、内部は強い陰圧に保たれている。
【0020】
栽培室12の内部には、遺伝子操作された植物を栽培する栽培装置14が設けられている。栽培装置14の内部は、栽培される植物の栽培環境に維持されている。栽培装置14は、一例であり、栽培される植物の種類等により寸法や形状等が相違する。また、
図1では便宜上1台のみを図示したが、必要に応じて複数台が設置される。
【0021】
栽培室12の内部には、不活化装置16が設けられている。不活化装置16は、栽培された植物を、内部で処理して不活化させる。
ここに、不活化させるとは、例えば、凍結乾燥させる等の手段により、遺伝子操作された植物の、植物由来成分の活性を損なうことなく、遺伝子操作された植物が、自然環境下で発芽、成長、繁殖又は交雑しないようにさせることをいう。
【0022】
不活化装置16は、不活化させる植物を収容する筐体を備え、筐体の対向する側面には、植物を搬入する搬入口15と、栽培室12の外(製品保管室34)から、不活化装置16の内部の、不活化後の植物を取り出す取出口17が設けられている。
また、不活化装置16は、インターロック機能を有し、搬入口15が開いている間は、取出口17を常に閉じ、取出口17が開いている間は、搬入口15を常に閉じる構成とされている。
【0023】
これにより、栽培装置14で栽培された植物を、不活化装置16の搬入口15を開けて内部に搬入する際には、取出口17は閉じた状態となっている。
搬入終了後、搬入口15を閉じれば、不活化装置16は密閉状態となり、不活化装置16を運転し、不活化処理を行うことができる。
【0024】
不活化処理の終了後、不活化された植物は、取出口17から取り出される。このとき、取出口17が開けられた際には、搬入口15は常に閉じられている。
不活化された植物を取り出した後に、取出口17を閉じれば、不活化装置16は、再度密閉状態とされ、次の不活化処理を行うことができる。
この結果、不活化装置16の取出口17を、製品保管室34の側に設けたにも関わらず、栽培室12と製品保管室34の間を常に仕切っておくことができる。
【0025】
なお、栽培室12で栽培される遺伝子操作された植物は、植物工場10の外で操作された植物を持ち込んでも良いし、栽培室12の内部で遺伝子操作を行なっても良い。
即ち、二点鎖線で示す遺伝子操作室13を、栽培室12に設置し、遺伝子操作室13で遺伝子操作しても良い。これにより、同一の栽培室12の内部で、植物の遺伝子操作、栽培、不活化処理を一貫して行うことができる。
【0026】
栽培エリア80のX軸方向には、資材搬入エリア82が隣接して設けられている。
資材搬入エリア82は、栽培室12の仕切壁78と外壁68との間に、仕切壁78の全長に渡り設けられている。資材搬入エリア82の内部には、機械室22、資材搬入室20、制御・監視室30、及び作業通路32が形成されている。
【0027】
機械室22には、栽培装置14の栽培環境を調整する機械装置類が設置されている。
資材搬入室20は、矢印26に示すように、植物工場10の外から資材(栽培される植物の原料や関連物質等)を受け入れ、搬入された資材の開梱や浄化を行う。
資材搬入室20には、外壁68と接する位置に、パスルーム及びエアシャワー室24が設けられている。
【0028】
これにより、パスルーム及びエアシャワー室24で、植物工場10の内部と外部の空気の移動を遮断すると共に、人(作業者)や物(資材)に付着している塵埃等を清浄空気で除去し、植物工場10の外から、室内へ持ち込まないようにすることができる。
また、パスルームを兼ねているので、例えば、汚染源となりやすい、資材を入れたダンボール類の梱包を解き、資材を専用のケースに移し、汚染源の植物工場10への侵入を阻止することができる。また、発生した廃棄物を、植物工場10の外へ移動させる。
【0029】
資材搬入室20の栽培室12と接する位置には、エアロック室28が設けられている。
エアロック室28は、室内圧力の異なる2室の間に設けられ、各室の圧力を維持させた状態で資材を通過させる装置である。このため、密閉空間に2カ所の扉が順に並んでいて、それらが同時には開かないように構成されている。
エアロック室28を介して、資材を、資材搬入室20から栽培室12へ移動させることができる。
【0030】
制御・監視室30は、栽培室12と接して設けられ、栽培室12の内部環境の制御のみでなく、植物工場10全体の、室内圧力や空気清浄度等の制御や監視を行う。
作業通路32は、制御・監視室30と外壁68の間に設けられ、衛生管理エリア86と、資材搬入室20との間の、作業員の移動を確保する。
【0031】
栽培室12のX軸方向には、仕切壁64と外壁68の間に保管搬出エリア84が設けられている。保管搬出エリア84の内部には、製品保管室34、製品搬出室36、消毒室38が形成されている。
【0032】
製品保管室34は、仕切壁64の全長に渡り設けられ、仕切壁64に設けられた不活化装置16の取出口17から、不活化された植物を取出し、加工を加えて製品とし、搬出されるまで一時保管する。また、同時に廃棄物も取り出す。
【0033】
製品保管室34と隣接して、製品搬出室36が設けられている。製品保管室34には、製品搬出室36と接する仕切り壁側に、エアロック室40が設けられている。エアロック室40を介して、一時保管された製品や廃棄物が、製品保管室34から製品搬出室36へ、移動させられる。
【0034】
製品搬出室36には、外壁68と接してパスルーム及びエアシャワー室42が設けられている。これにより、矢印27に示すように、パスルーム及びエアシャワー室42を介して、製品搬出室36から、植物工場10の外へ製品が搬出される。
また、パスルーム及びエアシャワー室42を介して、物の搬入や廃棄物の搬出がなされる。
【0035】
消毒室38は、製品保管室34と製品搬出室36に接して設けられ、製品保管室34との間には、エアシャワー室44が設けられている。
これにより、消毒済の作業員が、消毒室38からエアシャワー室44を通り製品保管室34へ入退室できる。また、製品搬出室36へ入退室できる。
【0036】
栽培エリア80のY軸方向には、栽培エリア80、資材搬入エリア82及び保管搬出エリア84と隣接して、衛生管理エリア86が設けられている。また、衛生管理エリア86と接して、一般通路66が、X軸方向へ設けられている。
衛生管理エリア86には、更衣室50、品質管理室48、脱衣・消毒室54、更衣室52、消毒室56、更衣室58が設けられている。
【0037】
これにより、作業者は、一般通路66から、更衣室50、品質管理室48、更衣室52、更衣室58へ入退室することができる。また、更衣室50から消毒室38へ入退室することができ、更衣室58から作業通路32へ、入退室することができる。
一方、更衣室52からは、消毒室56へ入室することができ、脱衣・消毒室54は、栽培室12から入室し、更衣室52へ進むことができる。
【0038】
品質管理室48は、不活化された植物の品質分析(成分分析やコンタミ検査等)を行う部屋である。品質管理室48には、製品保管室34に設けられたパスボックス46から、遺伝子操作後の植物が届けられる。ここに、パスボックス46は、物のみを出し入れできる専用設備であり、遺伝子操作後の植物を、製品保管室34から品質管理室48へ移動させることができる。
【0039】
また、一般通路66のY軸方向には、一般通路66に沿って、事務厚生エリア88が設けられている。事務厚生エリア88には、食堂70、エントランス72及び事務室74が設けられ、一般通路66から、各室へ出入り可能とされている。
なお、食堂70にはトイレ等が設けられ、エントランス72には、風除室や靴箱が設けられ、事務室74には、応接室や会議室等が設けられている。
【0040】
本構成とすることにより、作業者は、エントランス72から一般通路66へ入り、一般通路66から、上述した各室へ、順次入ることができる。
特に、栽培室12へは、更衣室52から消毒室56のエアシャワー室62を通り、入ることができる。このとき、栽培室12からの戻りは、脱衣・消毒室54のエアシャワー室60を通り、更衣室52へ戻る一方通行となっている。
また、製品保管室34は、更衣室50から、消毒室38のエアシャワー室44を通り、行き来することができ、製品搬出室36は、消毒室38を通り行き来することができる。
【0041】
これにより、植物工場10の内部において、資材の受け入れ、植物の栽培、培養された植物の不活化、不活化された植物の出荷、等の一連の作業を、矢印18で示す方向に順次行うことができる。
【0042】
図2(A)に示すように、植物工場10の各室の圧力は、相対的に表示した場合、栽培室12が大気圧より低い、強い陰圧(−−圧)とされ、製品保管室34が栽培室12より弱い陰圧(−圧)とされている。これにより、遺伝子操作植物の花粉等が、栽培室12や製品保管室34から、外へ拡散するのを防止することができる。
【0043】
一方、資材搬入室20、製品搬出室36は弱い陽圧(+圧)とされている。これにより、資材搬入室20や製品搬出室36への不純物の侵入を抑制することができる。
なお、表示がない他の部屋は、いずれも大気圧(±0圧)とされている。
【0044】
また、
図2(B)に示すように、室内の空気清浄度は、栽培室12が中程度の清浄度((中)と記載、クラス100000程度)とされ、製品保管室34が高い清浄度((高)と記載、クラス10000程度)とされ、作業通路32、資材搬入室20、及び製品搬出室36が低い清浄度((低)と記載、クラス300000程度)とされている。
なお、表示がない他の部屋は、いずれも事務所などの一般的な居室の空気清浄度程度とされている。
【0045】
これにより、遺伝子操作植物の資材の受け入れから、製品としての出荷までを、適切な空気環境の中で行うことができる。
本実施形態の植物工場10で栽培される遺伝子操作植物としては、例えば、タバコ、カンゾウ、イチゴ、トマト、レタス、イネ、キノコ等が考えられる。
【0046】
以上説明したように、植物工場10は、陰圧に保たれ、遺伝子操作された植物が栽培される栽培室12と、栽培室12の室内に設けられ、栽培された植物を不活化させ、栽培室12の外から不活化後の植物を取り出せる不活化装置16と、を有している。
本構成によれば、遺伝子操作されて栽培室12で栽培された植物は、栽培室12の室内に設けられた不活化装置16で不活化される。また、栽培室12の外(製品保管室34)から、不活化装置16の中にある不活化後の植物を取り出すことができる。
【0047】
これにより、従来のように、遺伝子操作された植物を、栽培室12の外側に設けられた不活化装置まで搬送する必要がなくなり、栽培室12の外側で、遺伝子操作された植物が交差汚染されるおそれを低減させることができる。
この結果、遺伝子操作された植物の、交差汚染(クロス・コンタミネーション)のおそれを極力排除することができる。
【0048】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る植物工場90について、
図3、
図4(A)、
図4(B)を用いて説明する。
植物工場90は、栽培エリア80が、仕切壁94A、94Bで3室(栽培室92A、92B、92C)に区画されている点において、第1実施形態に係る植物工場10と相違する。相違点について説明する。
ここに、
図3は、植物工場90の平面図であり、
図4(A)は、渡り通路100の平面図であり、
図4(B)は、
図4(A)のX1−X1線断面図である。
【0049】
栽培室(栽培空間)92Aは、X軸方向が仕切壁64と仕切壁78で区画され、Y軸方向が仕切壁94Aと外壁68で区画されている。
栽培室92Aの内部には、栽培装置14Aが設けられ、製品保管室34側には、仕切壁64に当接させて不活化装置16Aが設けられている。不活化装置16Aは、栽培室92A側に搬入口15Aが設けられ、製品保管室34側に、仕切壁64を貫通して取出口17Aが設けられている。
【0050】
栽培室(栽培空間)92Bは、X軸方向が仕切壁64と仕切壁78で区画され、Y軸方向が仕切壁94Aと仕切壁94Bで区画されている。
栽培室92Bの内部には、栽培装置14Bが設けられ、製品保管室34側には、仕切壁64に当接させて不活化装置16Bが設けられている。不活化装置16Bは、栽培室92B側に搬入口15Bが設けられ、製品保管室34側に、仕切壁64を貫通して取出口17Bが設けられている。
【0051】
栽培室(栽培空間)92Cは、X軸方向が仕切壁64と仕切壁78で区画され、Y軸方向が仕切壁94Bと仕切壁76で区画されている。
栽培室92Cの内部には、栽培装置14Cが設けられ、製品保管室34側には、仕切壁64に当接させて不活化装置16Cが設けられている。不活化装置16Cは、栽培室92C側に搬入口15Cが設けられ、製品保管室34側に、仕切壁64を貫通して取出口17Cが設けられている。
【0052】
栽培室92A、92B、92C(以下、栽培室92A〜92Cと記載する。)には、不活化装置16A、16B、16C(以下、不活化装置16A〜16Cと記載する。)がそれぞれ設けられ、栽培室92A〜92Cは、いずれも、大気圧より低い、強い陰圧(−−圧)に保たれた状態で区画されている。
また、栽培室92A〜92CのX軸方向には、仕切壁78を挟んで前室96が設けられている。前室96は、密閉構造とされ、栽培室92A〜92Cのいずれとも接しており、前室96から、直接、栽培室92A〜92Cのいずれにも入室できる。
【0053】
図4(A)、
図4(B)に示すように、栽培室92A〜92Cの製品保管室34側には、仕切壁64に沿って、渡り通路(通路)100が設けられている。渡り通路100は、栽培室92Aから栽培室92Cの間に、栽培室92Bをまたいで設けられている。
【0054】
渡り通路100は密閉構造とされ、不活化装置16B、16Cの上方に掛け渡されている。栽培室92A、92Bには、渡り通路100の入口と連結される、上り階段98A、98Bが設けられている。一方、栽培室92Cには、渡り通路100の出口に、下り階段98Cが設けられている。
また、渡り通路100の、上り階段98A、98Bからの入り口、及び下り階段98Cの出口には、エアロック構造が設けられ、栽培室92A〜92Cと渡り通路100の間の空気の移動を制限している。
【0055】
これにより、栽培室92Aからは、階段98Aを上り、渡り通路100を通り、栽培室92Cの階段98Cを下り、エアシャワー室60を通り、脱衣・消毒室54に戻ることができる。この結果、栽培室92Aで作業した作業員は、栽培室92B、92Cを通る(空気と接する)ことなく、エアシャワー室60を通り、脱衣・消毒室54に戻ることができる。
【0056】
同様に、栽培室92Bからは、階段98Bを上り、渡り通路100を通り、栽培室92Cの階段98Cを下り、エアシャワー室60を通り、脱衣・消毒室54に戻ることができる。なお、栽培室92Cからは、直接エアシャワー室60へ入り、脱衣・消毒室54に戻ることができる。
【0057】
以上説明したように、植物工場90の栽培エリア(栽培室)80には、不活化装置16A、16B、16Cがそれぞれ設けられ、陰圧に保たれた状態で区画された複数の栽培室92A〜92Cと、陰圧に保たれて栽培室92A〜92Cと隣接して設けられ、それぞれの栽培室92A〜92Cに直接入室できる前室96と、それぞれの栽培室92A〜92Cから、他の栽培室92A〜92Cを通ることなく退室できる渡り通路100と、が設けられている。
【0058】
本構成によれば、栽培室92Aから92Cには、各栽培室92A〜92C毎に、遺伝子操作された種類の異なる植物を、それぞれ栽培することができる。
このとき、栽培室92A〜92Cには、それぞれ不活化装置16A〜16Cが設けられているので、それぞれの栽培室92A〜92Cにおいて、栽培した植物を不活化させることができる。
【0059】
これにより、従来のように、遺伝子操作された植物を、栽培室92A〜92Cの外側に設置された不活化装置まで搬送する必要がなくなり、栽培室92A〜92Cの外側で、遺伝子操作された植物が交差汚染されるおそれを低減させることができる。
また、栽培室92A〜92Cには、前室から直接入室し、渡り通路100で他の栽培室を通ることなく退室できる。即ち、人の動線を、一方通行に確保しているので、栽培時や不活化時における、他の栽培室との交差汚染を防ぐことができる。
【0060】
なお、本実施形態では、栽培エリア80を、栽培室92A〜92Cに区画する例について説明した。しかし、区画された栽培室の数は3室に限定されることはなく、必要に応じて、3室以外の栽培室に区画してもよい。
【0061】
また、本実施形態では、遺伝子操作室13の記載は省略したが、これに限定されることはなく、栽培室92A〜92Cの少なくとも1室の内部に、必要に応じて遺伝子操作室13を設ける構成でもよい。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0062】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る植物工場110について、
図5、
図6(A)、
図6(B)を用いて説明する。
植物工場110は、第2実施形態で説明した植物工場90の保管搬出エリア84に替えて、原料保管エリア102、製造エリア104及び衛生管理エリア106が設けられている点において、第2実施形態に係る植物工場90と相違する。相違点を中心に説明する。
ここに、
図5は、植物工場90の平面図であり、
図6(A)は、各室の室内空気圧を相対的に示した平面図であり、
図6(B)は、各室の空気清浄度を相対的に示した平面図である。
【0063】
原料保管エリア102には、原料保管室112が設けられ、不活化装置16A〜16Cから取り出した不活化後の植物を原料として一時保管する。
製造エリア104には、製造室118、製造室120、製造通路124、作業通路126、製品搬出室128、及び廃棄物用通路130が設けられている。また、衛生管理エリア106には、品質管理室114、更衣室116、消毒室132、更衣室134が設けられている。
【0064】
原料保管室112は、仕切壁64に接して設けられ、原料保管室112の内部には、パスボックス46が、品質管理室114と隣接して設けられている。品質管理室114では、不活化後の植物の品質管理、及び後述する、製造された製品の品質を管理する。
【0065】
原料保管室112に接して、製造室118、製造室120が設けられている。
製造室118には、エアロック室136が設けられ、エアロック室136から、不活化後の植物が搬入される。また、製造室118には、不活化後の植物の加工装置122が設けられ、不活化後の植物が加工される。
【0066】
加工された不活化後の植物は、製造通路124へ移動され、製造通路124を通り製造室120に搬入される。製造室120には、図示しない充填・包装装置が設けられ、搬入された加工植物が充填、包装されて商品となる。
製造室120で充填、包装された商品は、エアロック140を通して、製品搬出室128へ移動させられ、製品搬出室128から、植物工場110の外へ出荷される(矢印27参照)。
【0067】
図6(A)に示すように、植物工場110の各室の圧力は、栽培室92A〜92Cが大気圧より低い、強い陰圧(−−圧)とされ、前室96、原料保管室112、廃棄物用通路130が、栽培室92A〜92Cより弱い陰圧(−圧)とされている。これにより、遺伝子操作植物の花粉等が、栽培室92A〜92Cの外へ拡散するのを防止している。
【0068】
一方、製造室120は、大気圧より高い、強い陽圧(++圧)とされている。また、製造室118、製造通路124、製品搬出室128は、製造室120より弱い陽圧(+圧)とされている。これにより、製造室118、製造室120、製造通路124及び製品搬出室128への、周囲からの不純物の侵入を抑制することができる。
他の圧力の記載がない部屋は、いずれも大気圧とされている。
【0069】
図6(B)に示すように、室内の空気清浄度は、製造室120が、高い清浄度((高)と記載、クラス1000程度)とされ、原料保管室112、製造室118、製造通路124が、高い清浄度に準じる清浄度((準高)と記載、クラス10000程度)とされ、栽培室92A〜92C、前室96は、中程度の清浄度((中)と記載、クラス100000程度)とされ、資材搬入室20、作業通路32、製品搬出室128、作業通路126、廃棄物用通路130がいずれも低い清浄度((低)と記載、クラス300000程度)とされている。
なお、表示がない他の部屋は、いずれも事務所などの一般的な居室の空気清浄度程度とされている。
これにより、遺伝子操作植物の資材の受け入れから、製品としての出荷までを、適切な空気環境の中で行うことができる。
【0070】
以上説明したように、植物工場110は、第2実施形態で説明した栽培エリア80、資材搬入エリア82、衛生管理エリア86及び事務厚生エリア88に加えて、陰圧に保たれ、栽培エリア(栽培室)80の外側に、不活化装置16A〜16Cの取出口と接して設けられ、不活化装置16A〜16Cから取り出された不活化後の植物が保管される原料保管室(保管室)112、陽圧に保たれ、原料保管室112から搬送された植物の植物由来成分を含む製品が製造される製造室118、120、及び衛生管理エリア106を有している。
【0071】
本構成とすることにより、不活化装置16A〜16Cの中にある不活化後の植物が、不活化装置16A〜16Cの取出口17A〜17Cから、原料保管室112へ直接取り出される。
続いて、取り出された不活化後の植物は、原料保管室112から製造室118、120へ搬送される。製造室118、120では、植物由来成分を含む製品が製造される。
これにより、遺伝子操作された植物の栽培と、植物由来成分を含む製品の製造を、一貫して同じ植物工場110で行うことができる。
【0072】
なお、本実施形態では、栽培エリア80に3つの栽培室92A、92B、92Cを設けた構成で説明したが、これに限定されることはなく、第1実施形態で説明したように、栽培エリア80に1つの栽培室92を設けた構成でも良い。また、栽培エリア80に3つ以外の複数の栽培室を設けた構成でも良い。
他の構成は、第2実施形態と同じであり説明は省略する。
【0073】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る植物工場150について、
図7を用いて説明する。
ここで、
図7は、植物工場150の平面図である。
図7に示すように、植物工場150は、栽培室ユニット152、製造室ユニット154、及び事務厚生ユニット156を、それぞれ独立した建物内部に設け、これらの建物を、ユニット間通路158でつなぐ構成である点において、第3実施形態の植物工場110と相違する。相違点を中心に説明する。
【0074】
栽培室ユニット152は、栽培エリア80、資材搬入エリア82、保管搬出エリア85、及び衛生管理エリア87を有している。ここに、栽培エリア80、資材搬入エリア82は、第2実施形態で説明した栽培エリア80、資材搬入エリア82と同じ構成である。
【0075】
保管搬出エリア85には、一時保管室160、消毒室38、及びパスルーム168が設けられている。一時保管室160は、仕切壁64に設けられた不活化装置16A〜16Cの取出口17A〜17Cから、不活化された植物を取り出し、移動可能なように梱包し、一時保管する。
【0076】
消毒室38にはエアシャワー室44が設けられ、エアシャワー室44を通り、消毒室38から一時保管室160へ出入りできる。また、パスルーム168は、一時保管室160側に搬入口が設けられ、ユニット間通路158側に取出口が設けられている。
【0077】
衛生管理エリア87には、第2実施形態で説明した更衣室58、消毒室56、更衣室52、脱衣・消毒室54に加え、更衣室50と、衛生管理エリア87の各室に沿って設けられた通路162を有している。また、通路162の一端は、ユニット間通路158と接している。
本構成とすることにより、作業者は、ユニット間通路158から通路162へ入り、衛生管理エリア87の各室に出入りすることができる。
また、更衣室50から消毒室38を経て、一時保管室160へ出入りできる。
【0078】
製造室ユニット154は、原料保管エリア103、製造エリア104、及び衛生管理エリア107を有している。また、製造室ユニット154は、栽培室ユニット152の保管搬出エリア85と、対向する位置に配置され、原料保管エリア103と保管搬出エリア85は、ユニット間通路158で連結されている。
【0079】
原料保管エリア103には、原料保管室113、パスボックス46及びパスルーム170が設けられている。パスルーム170は、ユニット間通路158側に搬入口が設けられ、原料保管室113側に取出口が設けられている。
これにより、保管搬出エリア85からの原料を、原料保管エリア103へ搬入することができる。
【0080】
製造エリア104は、第3実施形態と同じ構成である。製造エリア104には、製造室118、製造室120、製造通路124、作業通路126、製品搬出室128、及び廃棄物用通路130が設けられている。
【0081】
また、衛生管理エリア107には、第3実施形態と同じ構成の品質管理室114、更衣室116、消毒室132、更衣室134が設けられている。衛生管理エリア107には、衛生管理エリア107の各室に沿って設けられた通路164を有している。また、通路164の一端は、ユニット間通路158と接し、出入り可能とされている。
本構成とすることにより、作業者は、ユニット間通路158から通路164へ入り、衛生管理エリア107の各室に出入りすることができる。
【0082】
また、事務厚生ユニット156は、食堂70、エントランス72、事務室74、及びそれらと通じる一般通路66を有している。一般通路66は、ユニット間通路158と連結されている。
なお、ユニット間通路158では、ユニット間通路158を移動する作業員の交錯が考えられるが、例えば、運用において、作業員の交錯を避けることができる。更に、ユニット間通路158を立体交差させて、一方通行とし、交錯を防止することもできる。
【0083】
これにより、栽培室ユニット152においては、栽培エリア80で、遺伝子操作された植物が栽培される。即ち、栽培室92A〜92Cの栽培装置14A〜14Cで栽培された植物が、不活化装置16A〜16Cで不活化される。
続いて、不活化された植物は、一時保管室160において、不活化装置16A〜16Cの取出口17A〜17Cから取り出され、一時保管室160で保管された後、ユニット間通路158を通り、製造室ユニット154の原料保管室113へ搬送される。
【0084】
また、製造室ユニット154においては、不活化後の植物を製造エリア104で加工して、植物由来成分を含む製品が製造される。
即ち、植物工場150は、栽培室ユニット152と製造室ユニット154を、それぞれ独立して設け、それらをユニット間通路158でつなぐ構成とされているので、栽培室ユニット152と製造室ユニット154を、生産量に応じてバランス良く、配置することができる。
【0085】
以上説明したように、植物工場150は、陰圧に保たれ、遺伝子操作された植物が栽培される栽培室92A〜92Cと、栽培室92A〜92Cに設けられ、栽培された植物を不活化させ、栽培室92A〜92Cの外から不活化後の前記植物を取り出せる不活化装置16A〜16Cと、栽培室の外側に不活化装置16A〜16Cの取出口に接して設けられ、不活化後の植物が保管される一時保管室と、を有する栽培室ユニット152と、不活化後の植物が搬入される原料保管室113と、陽圧に保たれ、植物の植物由来成分を含む製品が製造される製造室118、120と、を有する製造室ユニット154と、栽培室ユニット152の一時保管室160と、製造室ユニット154の原料保管室113とをつなぐユニット間通路158と、を有している。
【0086】
次に、本実施形態の展開例について説明する。
図8に示すように、植物工場180は、2棟の栽培室ユニット152と、1棟の製造室ユニット154、及び1棟の事務厚生ユニット156で構成されている。なお、
図8においては、栽培室ユニット152、製造室ユニット154及び事務厚生ユニット156は、いずれも、ブロック図で示している。それぞれの構成は、
図7と同じである。
【0087】
これにより、2カ所の栽培室ユニット152で栽培された遺伝子操作植物を、不活化して製造室ユニット154に搬送し、製造室ユニット154で製品とし、出荷することが出来る。即ち、植物工場180の生産と製造をバランス良くし、生産量に応じた最適数量で稼働することができる。
【0088】
更に、破線で示すように、栽培室ユニット152や製造室ユニット154を追加し、ユニット間通路158でつなぐ構成とすることができる。これにより、生産量や生産する植物の種類等に応じて、栽培室ユニット152や製造室ユニット154の数量を、柔軟に決定することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、栽培エリア80に3つの栽培室92A〜92Cを設けた構成で説明したが、これに限定されることはなく、第1実施形態で説明したように、栽培エリア80に1つの栽培室92を設けた構成でも良い。また、栽培エリア80に、3つ以外の複数の栽培室を設けた構成でも良い。他の構成は、第3実施形態と同じであり説明は省略する。