(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態として、半導体基板の回転加速度を変化させることで昇華性物質含有液中での昇華性物質の会合状態を解消させる実施形態について説明する。ここで、昇華性物質の会合状態とは、昇華性物質の分子やイオンが分子間力などによって集合体すなわちミセルを形成した状態をいう。
【0011】
昇華性物質含有液は、常温常圧で固体であって、常温での蒸気圧が100Pa以下の有機物である昇華性物質を、揮発性の第1溶媒に溶解した溶液である。昇華性物質含有液は、昇華性物質の膜を形成するものであれば特に限定されない。昇華性物質は、例えば、高分子化合物に比較して低分子化合物であることが好ましく、芳香族化合物、環状化合物が好ましい。さらに好ましくは、極性官能基を持つ芳香族化合物、極性官能基を持つ環状化合物がある。例えば、安息香酸誘導体、フタル酸誘導体、フェノール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、シクロヘキサンカルボン酸誘導体、ベンズアミド誘導体、アニリン誘導体などがある。また、昇華性物質は、メチルエステル基を有する化合物であってもよい。第1溶媒は、後述するリンス液を置換可能であれば特に限定されない。例えば、リンス液として純水を用いる場合、第1溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、IPA(すなわち2−プロパノール)、シクロヘキサノン、アセトン、テトラヒドロフラン、でよい。また、この他にも、第1溶媒は、PGMEA(プロピレングリコール‐1‐モノメチルエーテルアセテート)やNMP(N‐メチルピロリドン)などでもよい。
【0012】
図1は、第1の実施形態を示す基板処理装置1の図である。基板処理装置1は、回転部の一例である回転機構200と、複数のノズル301〜304と、会合解消部の一例である第1制御部4と、移動装置500とを有する。回転機構200と、第1制御部4とは、析出部としても機能する。
【0013】
回転機構200は、円板状の水平なステージ201を有している。ステージ201は、鉛に延びる回転軸202の上端に、回転軸202と同心状に固定されている。ステージ直方向201は、回転軸202を中心に回転できる。回転軸202には、例えばモータ等の駆動源203が接続されている。駆動源203は、回転軸202を回転駆動する。駆動源203には、既述した第1制御部4が接続されている。第1制御部4は、例えば、ドライバ回路やCPU等で構成される。第1制御部4は、駆動源203による回転軸202の回転駆動を制御する。後述するように、第1制御部4は、ステージ201の回転加速度
(角加速度)を変化させる、すなわち遠心加速度
(遠心力)を変化させる。回転加速度を変化させることで、第1制御部4は、半導体基板6の表面に供給された昇華性物質含有液にせん断力を加えることができる。これにより昇華性物質含有液中の昇華性物質の会合状態を解消させる。
【0014】
ステージ201の表面201aの外周縁には、複数のチャックピン204が周方向に間隔を隔てて配置されている。チャックピン204は、半導体基板6の外周面を把持するようにして半導体基板6をステージ201上に水平に固定する。これにより、回転機構200は、半導体基板6をステージ201の上方に固定した状態で回転させることができる。
【0015】
ステージ201の周囲には、ステージ201と同心の略筒状のカップ205が設けられている。カップ205の上端部は、チャックピン204より高い位置にある。カップ205は、例えば、後述する洗浄、リンスおよび乾燥の際に、半導体基板6の表面の液体が回転機構200の回転によって周囲に飛散することを防止する。
【0016】
第1ノズル301は、薬液を貯留するタンク305に供給管306を介して接続されている。供給管306には、薬液の流量を調整するバルブ307が配置されている。第1ノズル301は、半導体基板6の表面に洗浄用の薬液を吐出する。第1ノズル301は、半導体基板6から離間した待機位置と半導体基板6の表面上方の供給位置との間を移動可能である。なお、第1ノズル301は、半導体基板6を枚葉式で洗浄するが、バッチ式で洗浄した半導体基板6を乾燥するために本実施形態を適用することもできる。半導体基板6をバッチ式で洗浄する場合、第1ノズル301に替えて薬液漕を設ければよい。
【0017】
第2ノズル302は、リンス液を貯留するタンク309に供給管310を介して接続されている。リンス液は、例えば純水である。供給管310には、リンス液の流量を調整するバルブ311が配置されている。第2ノズル302は、第1ノズル301と同様に供給位置と待機位置との間を移動可能である。第2ノズル302は、薬液で洗浄した半導体基板6の表面に、タンク309から供給されたリンス液を吐出する。なお、第2ノズル302は、半導体基板6を枚葉式でリンスするが、バッチ式でリンスした半導体基板6を乾燥するために本実施形態を適用することもできる。半導体基板6をバッチ式でリンスする場合、第2ノズル302に替えてリンス液漕を設ければよい。
【0018】
第3ノズル303は、IPA(Iso-Proply Alcohol)を貯留するタンク313に供給管314を介して接続されている。供給管314には、IPAの流量を調整するバルブ315が配置されている。第3ノズル303は、第1ノズル301と同様に供給位置と待機位置との間を移動可能である。第3ノズル303は、リンス液で処理された半導体基板6の表面にIPAを吐出する。IPAは、リンス液と効率的に置換できる。但し、後述するように、第4ノズル304から吐出される昇華性物質含有液もリンス液と置換することができるので、第3ノズル303は、必ずしも設ける必要は無い。
【0019】
第4ノズル304は、第1供給部の一例である。第4ノズル304は、昇華性物質含有液を貯留するタンク316に供給管317を介して接続されている。供給管317には、昇華性物質含有液の流量を調整するバルブ318が配置されている。第4ノズル304は、第1ノズル301と同様に供給位置と待機位置との間を移動可能である。
との間を移動する。
【0020】
第4ノズル304は、リンス液で処理した(すなわち、洗浄した)半導体基板6の表面に、タンク316から供給された昇華性物質含有液を吐出する。
【0021】
第4ノズル304によって吐出された昇華性物質含有液は、ステージ201の回転にともなう半導体基板6の回転により、半導体基板6の表面の中央部から径方向外方に広がるように塗布される。半導体基板6の表面に塗布された昇華性物質含有液は、半導体基板6の表面に存在するリンス液と置換する。ステージ201を回転しながら昇華性物質含有液を塗布する過程で、第1制御部4は、ステージ201の回転加速度を変化させることで、昇華性物質含有液にせん断力を加える。せん断力は、回転機構200の回転加速度が変化する方向に抗する方向への慣性力ということもできる。せん断力を加えることで、昇華性物質含有液中の昇華性物質の会合状態を解消できる。会合状態は、昇華性物質含有液中の昇華性物質の全ての分子またはイオンにおいて解消してもよく、また、少なくとも一部の分子またはイオンにおいて解消してもよい。会合状態が解消された昇華性物質含有液から第1溶媒が揮発し、昇華性物質が析出することで、昇華性物質の膜が得られる。昇華性物質の膜は、会合状態が解消された状態で形成されたものであるので、成膜むらが少ない。成膜むらが少ない昇華性物質の膜が埋め込まれた半導体基板6の表面パターンは、倒壊や変形が少ない。
【0022】
移動装置500は、ノズル301〜304を上記供給位置と待機位置との間で移動させる。移動装置500は、ノズル301〜304を一体として移動させてもよく、あるいは、個別に移動させてもよい。移動装置500は、ノズル301〜304に一端が連結されたアーム部501と、アーム部501の他端に連結された回転軸503と、回転軸503を回転駆動する駆動源504と、駆動源504を制御する制御部505とを有する。
【0023】
以上説明したように、第1の実施形態の基板処理装置1は、昇華性物質を析出させるときに、ステージ201の回転加速度を変化させて昇華性物質含有液にせん断力を加えることで、昇華性物質の会合状態を解消させることができる。会合状態を解消できるので、成膜むらを抑制し、パターンの倒壊や変形を抑制することができる。
【0024】
次に、
図1の基板処理装置1を適用した基板処理方法について説明する。
図2は、第1の実施形態を示す基板処理方法のフローチャートである。
【0025】
先ず、基板処理装置1は、ステージ201上に載置されている半導体基板6に対して洗浄工程を実施する(ステップS1)。洗浄工程において、移動装置500は、第1ノズル301を供給位置に移動させて、半導体基板6の表面に薬液を吐出する。このとき、駆動源203は、ステージ201を回転させる。ステージ201の回転にともなって、半導体基板6は、回転しながら洗浄される。
図3Aは、第1の実施形態を示す基板処理方法の断面図である。
図3Aは、洗浄工程後の半導体基板6を示している。
図3Aに示すように、半導体基板6の表面には、複数の微細な凸状パターン61が狭ピッチで形成されている。凸状パターン61は、例えばNAND型フラッシュメモリのメモリ部のパターンや配線部のパターンであってもよい。微細な凹凸パターンであれば構造や材質は特に限定されない。洗浄工程によって、半導体基板6の表面には、薬液62が付着する。固化乾燥では、この薬液62を取り除いて半導体基板6の表面を乾燥する。
【0026】
次いで、
図2に示すように、基板処理装置1は、洗浄後の半導体基板6に対して、半導体基板6の表面の薬液をリンス液に置換するリンス工程を実施する(ステップS2)。リンス工程において、移動装置500は、第2ノズル302を供給位置に移動させ、半導体基板6の表面にリンス液を吐出する。このとき、駆動源203は、ステージ201を回転させる。ステージ201の回転にともなって、半導体基板6は、回転しながらリンスされる。
【0027】
次いで、基板処理装置1は、リンス後の半導体基板6に対して、IPA置換工程を実施する(ステップS3)。IPA置換工程において、移動装置500は、第3ノズル303を供給位置に移動させ、基板表面にIPAを吐出する。このとき、駆動源203は、ステージ201を回転させる。ステージ201の回転にともなって、半導体基板6が回転しながら、リンス液がIPAで置換される。なお、昇華性物質含有液によってリンス液を十分に置換できるのであれば、IPA置換工程は省略してもよい。
【0028】
次いで、基板処理装置1は、IPA置換後の半導体基板6に対して、昇華性物質含有液の塗布工程を実施する(ステップS4)。
図4は、第1の実施形態を示す基板処理方法の模式図である。
図4に示すように、塗布工程において、移動装置500は、第4ノズル304を供給位置に移動させ、第4ノズル304は、半導体基板6の表面に昇華性物質含有液(
図4における符号L)を吐出する。このとき、駆動源203は、
図4の符号Rに示される回転軸202回りにステージ201を回転させる。ステージ201の回転にともなって、基板表面には、昇華性物質含有液Lが基板表面の中央部から径方向外方に向かって塗布されていく。これにより、基板表面に残存するリンス液は、昇華性物質含有液Lによって効率的に置換される。塗布工程の終了後、移動装置500は、ノズル301〜304を待機位置へ移動させる。
【0029】
次いで、
図2に示すように、基板処理装置1は、昇華性物質含有液Lの塗布後の半導体基板6に対して、昇華性物質の会合状態の解消をともなう昇華性物質の析出工程を実施する(ステップS5)。析出工程において、駆動源203は、ステージ201を、塗布工程(ステップS4)のときよりも高速に回転させる。また、駆動源203は、第1制御部4の制御により、ステージ201の回転加速度を変化させる。回転加速度の変化のさせ方は、昇華性物質含有液にせん断力を加えることができれば特に限定されない。例えば、駆動源203は、回転加速度を加える(増加させる)ことで、せん断力を加えてもよい。また、回転加速度の変化は、析出工程の開始から一定期間に限って行ってもよい。また、回転加速度の変化は、回転加速度の増加と減少とを所定の期間にわたって繰り返してもよい。さらに、回転加速度の変化は、昇華性物質含有液Lの溶媒の揮発状態から最も効果的なタイミングで行ってもよい。
【0030】
ステージ201の高速回転によって昇華性物質含有液に大きな遠心力が作用すると、昇華性物質含有液は、半導体基板6の表面上において径方向外方側に流動する。これにより、昇華性物質含有液が振り切られ、昇華性物質の析出すなわち昇華性物質の膜の形成が促進される。また、昇華性物質含有液の表面がレベリングされて、半導体基板6の表面における高低差(起伏)が低減される。
【0031】
図5Aは、第1の実施形態を示す基板処理方法の模式図である。
図5Bは、
図5Aに続く基板処理方法の模式図である。
図5Aおよび
図5Bには、昇華性物質含有液中の会合状態と昇華性物質含有液表面の状態とが示されている。
図5Aおよび
図5Bにおいては、昇華性物質mが極性官能基g1と疎水基g2とによって表現されている。ステージの201の回転加速度の変化によって昇華性物質含有液にせん断力が加わると、界面活性剤と同様に、
図5Aに示される昇華性物質の会合状態が
図5Bに示すように解消される。会合状態が解消されることで、昇華性物質含有液をむら少なく析出させることができる。
図5Aでは疏水基g2が昇華性物質含有液L側を向いているが、極性官能基g1が昇華性物質含有液L側を向いていてもよい。
【0032】
もし、会合状態を解消しないまま昇華性物質を析出させた後に、昇華性物質の表面をIPAなどで溶かして表面をレベリングする場合、昇華性物質の表面での会合状態を解消することはできても、表面より下方の昇華性物質の膜の成膜むらを解消することはできない。
【0033】
これに対して、本実施形態では、昇華性物質を析出させる前に会合状態を解消させることができるので、成膜むらが少ない昇華性物質の膜を形成できる。
【0034】
図3Bは、
図3Aに続く基板処理方法の断面図である。
図3Bは、析出工程後の半導体基板6を示している。昇華性物質の会合状態の解消をともなう析出工程を実施することで、
図3Bに示すように、凸状パターン61間に昇華性物質の膜63を殆どむら無く埋め込むことができる。
【0035】
次いで、
図2に示すように、昇華性物質の膜が成膜された半導体基板6に対して、不図示のベーク炉を用いたベーク工程を実施する(ステップS6)。次いで、ベーク後の半導体基板6に対して、不図示の昇華装置を用いて、昇華性物質の膜の昇華工程を実施する(ステップS7)。昇華工程においては、昇華性物質の膜の温度および圧力を調整することで、昇華性物質の膜を直接気体に相転移させて基板表面から除去する。尚、昇華性物質の膜はプラズマを用いて気化することによって除去してもよい。これにより、半導体基板6の乾燥が完了する。
図3Cは、
図3Bに続く基板処理方法の断面図である。
図3Cは、昇華工程後の半導体基板6を示している。昇華工程により、
図3Cに示すように、凸状パターン61間の昇華性物質の膜63が除去され、凸状パターン61の倒壊や変形を殆どともなわずに半導体基板6の表面が乾燥される。
【0036】
以上説明したように、第1の実施形態の基板処理方法は、昇華性物質を析出させるときに、半導体基板6の回転加速度を変化させて昇華性物質含有液にせん断力を加えることで、昇華性物質の会合状態を解消させることができる。会合状態を解消できるので、成膜むらを抑制し、パターンの倒壊や変形を抑制することができる。
【0037】
本実施形態の基板処理方法は、例えば、2次元または3次元のNANDフラッシュメモリやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの凸状パターンを有する装置の製造に適用できる。本実施形態の基板処理方法を適用することで、凸状パターンを有する装置の歩留まりを向上できる。
【0038】
(第1の変形例)
次に、第1の実施形態の第1の変形例として、基板6の表面に塗布された昇華性物質含有液中の昇華性物質の会合状態を解消した状態を昇華性物質が析出するまでの間維持する例について説明する。第1の変形例において、
図1の基板処理装置1に対応する構成部については、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0039】
図6は、第1の実施形態の第1の変形例を示す基板処理装置1の図である。
図6に示すように、第1の変形例の基板処理装置1は、
図1の基板処理装置1の構成に加えて、更に、第4供給部の一例である第5ノズル320を備える。
【0040】
第5ノズル320は、蒸気供給源321に蒸気供給管322を介して接続されている。蒸気供給源321は、昇華性物質を溶解可能な第3溶媒を貯留する溶媒タンク323と、第3溶媒を加温する溶媒ヒータ324とを有する。溶媒ヒータ324によって加温された第3溶媒は、蒸発することで蒸気になる。また、蒸気供給管322には、第3溶媒の蒸気の流量を調整する蒸気供給バルブ325が配置されている。第5ノズル320は、不図示の移動装置によって、半導体基板6の表面の中央部に対向する位置と、半導体基板6の表面に対して上方向に離間した位置との間を移動可能であってもよい。
【0041】
昇華性物質の会合状態が解消した状態を維持するため、第5ノズル320は、昇華性物質含有液が供給された半導体基板6の表面に、蒸気供給源321から供給された第3溶媒の蒸気を吐出する。ここで、第3溶媒は、例えば、第1溶媒の例として挙げたIPAである。IPAは、昇華性物質を良好に溶解し、かつ、リンス液(純水)との置換性にも優れているので、半導体基板6の乾燥に適する。
【0042】
なお、第3溶媒は、昇華性物質を溶解可能であれば第1溶媒以外の溶媒であってもよい。例えば、メタノール、エタノール、IPA(すなわち2−プロパノール)、シクロヘキサノン、アセトン、テトラヒドロフラン、PGMEA(プロピレングリコール‐1‐モノメチルエーテルアセテート)、NMP(N‐メチルピロリドン)でもよい。
【0043】
図1の構成では、ステージ201の回転加速度の変化によって昇華性物質の会合状態を解消できる。第1の変形例では、析出工程(
図2のステップS5)において、会合状態が解消した昇華性物質含有液に第3溶媒の蒸気を接触させる。
【0044】
第3溶媒の蒸気を接触させることで、会合状態が解消した状態を維持しながら、昇華性物質を析出させることができる。したがって、第1の変形例によれば、成膜むらを更に有効に抑制することができる。
【0045】
(第2の変形例)
次に、第1の実施形態の第2の変形例として、不活性ガスの流速を制御する例について説明する。第2の変形例において、
図1の基板処理装置1に対応する構成部については、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0046】
図7は、第1の実施形態の第2の変形例を示す基板処理装置1の図である。
図7に示すように、第2の変形例の基板処理装置1は、
図1の基板処理装置1の構成に加えて、更に、第5供給部の一例である第6ノズル330を備える。第6ノズル330は、不活性ガスのガス源331に供給管332を介して接続されている。不活性ガスは、昇華性物質含有液Lと反応しない不活性ガスであり、例えば、N
2ガスであってもよい。供給管332には、不活性ガスの流量を調整するマスフローコントローラ333が配置されている。マスフローコントローラ333には、カップ205内に設けられた濃度計334が接続されている。濃度計334は、半導体基板6上の第1溶媒の蒸気濃度を検出し、検出された蒸気濃度のデータをマスフローコントローラ333に出力する。なお、半導体基板6の表面上の第1溶媒の蒸気は、昇華性物質含有液中の第1溶媒が揮発することで生じたものである。
【0047】
半導体基板6上の第1溶媒の蒸気濃度を制御するために、マスフローコントローラ333は、第1溶媒の蒸気濃度に基づいて、第6ノズル330による不活性ガスの流量すなわち流速を制御する。具体的には、マスフローコントローラ333は、基板6から10mmの位置の不活性ガスの流速を、第1溶媒の蒸気濃度を所定濃度未満に抑える流速に制御する。例えば、マスフローコントローラ333は、不活性ガスの流速を0.8m/sより小さくすることで、半導体基板6の表面上の第1溶媒の蒸気濃度を1200ppm未満に抑える。マスフローコントローラ333は、基板表面から20mmの位置の第1溶媒の蒸気濃度を1200ppm未満に抑えてもよい。
【0048】
昇華性物質の析出を促進させるために、第2の変形例では、析出工程(
図2のステップS5)において、不活性ガスを昇華性物質含有液に接触させて、第1溶媒を蒸発させる。一方、もし、昇華性物質の析出を促進させることのみを目的として不活性ガスを昇華性物質含有液に接触させる場合、不活性ガスの流速を大きく設定し過ぎる場合があり得る。この場合、半導体基板6上の第1溶媒の蒸気濃度すなわち昇華性物質含有液からの第1溶媒の揮発量が大き過ぎることになる。第1溶媒の蒸気濃度が大き過ぎることで、成膜むらの大きさを反映したベナードセルの寸法が大きくなる。例えば、不活性ガスの流速が1.0m/sの場合、半導体基板6の表面上の第1溶媒の蒸気濃度が2050ppmとなり、ベナードセルの寸法が10μm以上に達する。さらに、不活性ガスが基板6の表面に塗布された昇華性物質含有液Lに直接接触してしまい、異なるモードの成膜むらが発生してしまう。
【0049】
これに対して、第2の変形例では、昇華性物質の析出の促進だけではなく第1溶媒の蒸気濃度の制御も目的として、第1溶媒の蒸気濃度が所定濃度未満となるような流速で不活性ガスを昇華性物質含有液に接触させる。これにより、ベナードセルの寸法を小さくすることができる。例えば、不活性ガスの流速が0.5m/sの場合、半導体基板6の表面上の第1溶媒の蒸気濃度が760ppmとなり、ベナードセルの寸法を2μm以下に抑えることができる。なお、第1溶媒の蒸気濃度を所定濃度未満とすることで昇華性物質の会合状態が解消される場合、
図7の構成からせん断力で会合状態を解消する構成は削除してもよく、併用してもよい。
【0050】
したがって、第2の変形例によれば、不活性ガスの流速を制御することで、成膜むらを更に有効に抑制できる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、第1溶媒と異なる第2溶媒を昇華性物質含有液に添加する実施形態について説明する。第2実施形態の説明にあたり、
図1の基板処理装置1に対応する構成部については、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0052】
第2の実施形態では、析出工程(
図2のステップS5)において、昇華性物質含有液中に、第1溶媒と異なる第2溶媒を添加する。第2溶媒は、例えば、水である。第2溶媒の添加は、
図1で説明したノズル302で行ってもよい。
【0053】
図8は、第2の実施形態において実験例を示すグラフである。
図8の横軸は、昇華性物質含有液中の水濃度(wt%)であり、
図8の縦軸は、昇華性物質含有液の表面張力(mN/m)である。
【0054】
実験例では、昇華性物質含有液の第1溶媒としてIPAを用いた。また、実験例では、第2溶媒として水を用いた。そして、実験例では、昇華性物質含有液の水濃度に応じた昇華性物質含有液の表面張力を測定した。
図8に示すように、昇華性物質含有液中の水濃度が上昇すると、昇華性物質含有液の表面張力も上昇する。IPAの表面張力は21.5mN/mであり、表面張力が増加するということは、IPA中の昇華性物質の会合状態が解消され、IPA表面に昇華性物質が集まったことを意味する。すなわち、
図5Aの状態から
図5Bの状態に変化している。実験例によれば、昇華性物質含有液中に水を添加することで、水との相互作用によって昇華性物質の会合状態が解消され、成膜性が改善されると考えられる。好ましくは、昇華性物質含有液の表面張力が1〜10%の範囲で上昇(変化)するように、昇華性物質含有液中に水を添加する。なお、
図8には、水濃度が5wt%となるように水を添加することで、表面張力を5%増加できることが示されている。表面張力を1〜10%の範囲で上昇させることで、水の添加量を抑えながら成膜性を有効に改善できる。
【0055】
したがって、第2の実施形態によれば、第2溶媒を昇華性物質含有液に添加することで昇華性物質の会合状態を解消することができるので、第1の実施形態と同様に成膜むらを抑制することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として、第2溶媒の蒸気を昇華性物質含有液に接触させる実施形態について説明する。第3実施形態において、
図1の基板処理装置1に対応する構成部については、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0057】
図9は、第3の実施形態を示す基板処理装置1の図である。
図9に示すように、第3の実施形態の基板処理装置1は、
図1の基板処理装置1の構成に加えて、更に、第3供給部の一例である第7ノズル350を備える。
【0058】
第7ノズル350は、蒸気供給源351に蒸気供給管352を介して接続されている。蒸気供給源351は、第2溶媒を貯留する溶媒タンク353と、第2溶媒を加温する溶媒ヒータ354とを有する。溶媒ヒータ354によって加温された第2溶媒は、蒸発することで蒸気になる。また、蒸気供給管352には、第2溶媒の蒸気の流量を調整する蒸気供給バルブ355が配置されている。第7ノズル350は、昇華性物質含有液が供給された半導体基板6の表面に、蒸気供給源351から供給された第2溶媒の蒸気を吐出する。
【0059】
蒸気供給管352の一端は、半導体基板6の表面に対向する対向板7に接続されている。第7ノズル350は、対向板7の中央において蒸気供給管352の一端に連通されている。対向板7は、ステージ201と同心の円形平板状の天板71と、天板71の外周端から垂下した円筒状の外周壁72とを有する。第7ノズル350は、半導体基板6の表面の中央部に対向する位置と、半導体基板6の表面に対して上方向に離間した位置との間を移動可能である。第7ノズル350は、移動装置510によって対向板7と一体的に移動される。
【0060】
図10は、第3の実施形態の基板処理装置1による蒸気供給動作を示す図である。
図10に示すように、第7ノズル350は、半導体基板6に対向する位置において、昇華性物質含有液に第2溶媒の蒸気Sを接触させる。また、対向板7が半導体基板6上の空間を覆うことで、第2溶媒の蒸気Sを万遍なく昇華性物質含有液Lに接触させることができる。このような昇華性物質含有液Lへの第2溶媒の接触は、析出工程(
図2のステップS5)において行う。
【0061】
第3の実施形態によれば、昇華性物質含有液Lに第2溶媒の蒸気Sを接触させることで、昇華性物質含有液の会合状態を解消することができる。これにより、第1の実施形態と同様に、成膜むらを抑制できる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。