(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、プレキャストコンクリート部材と現場打ちコンクリート部材とを高い施工性でヒンジ結合できる接合コンクリート構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、プレキャストコンクリート部材と現場打ちコンクリート部材とが対向する接合部で接合した接合コンクリート構造体であって、前記接合部を跨ぐように、前記接合部が離間する方向に沿って配置する棒状の結合棒状体と、該結合棒状体を前記プレキャストコンクリート部材と前記現場打ちコンクリート部材の両方のそれぞれに定着する定着部とを有する結合部材と、前記接合部を跨ぐように、前記接合部が離間する方向に沿って直線状に配置するとともに、前記プレキャストコンクリート部材及び前記現場打ちコンクリート部材の少なくとも一方に対して長手方向の付着が前記結合部材より小さな棒状の補助結合部材を備え
、前記結合部材と前記補助結合部材とが、前記プレキャストコンクリート部材において前記接合部を構成する床版側方部の部材厚み方向に交差する方向及び前記離間する方向に交差する方向に沿って所定間隔を隔てて同列上に配置され、前記接合部をヒンジ接合構造としたことを特徴とする。
【0008】
上記結合棒状体は、PC鋼棒のように降伏耐力が高い高降伏耐力材や一般的に使用される異形棒鋼や丸鋼などの鉄筋などを含む概念である。
上記定着部は、異形棒鋼のように周面に形成し、摩擦抵抗を増大させるための節と呼ばれる凹凸や、表面が平滑な丸鋼などに装着し、径方向に突出する定着部材などで構成することができる。
【0009】
この発明により、プレキャストコンクリート部材と現場打ちコンクリート部材とを高い施工性でヒンジ結合して、接合コンクリート構造体を構築することができる。
詳しくは、前記プレキャストコンクリート部材と前記現場打ちコンクリート部材とによる接合部に対して、前記接合部を跨ぐように、前記接合部が離間する方向に沿って配置する棒状の結合棒状体と、該結合棒状体を前記プレキャストコンクリート部材と前記現場打ちコンクリート部材の両方のそれぞれに定着する定着部とを有する結合部材を備えたことにより、例えば、前記プレキャストコンクリート部材と前記現場打ちコンクリート部材とを機械式継ぎ手などを用いてそれぞれの鉄筋を連結して一体化する場合に比べて、容易に施工することができる。
【0010】
また、前記プレキャストコンクリート部材と前記現場打ちコンクリート部材とによる接合部に対して、前記接合部を跨ぐように、前記接合部が離間する方向に沿って配置する棒状の結合棒状体と、該結合棒状体を前記プレキャストコンクリート部材と前記現場打ちコンクリート部材の両方のそれぞれに定着する定着部とを有する結合部材を備えたことにより、接合部を介した曲げ負荷の伝達を抑制するとともに、接合部に作用するせん断力に対して結合棒状体で抗し、引っ張り方向の負荷に対して定着部で抗することができる。
【0011】
したがって、コンクリート構造体の基本性能を維持しながら、曲げ負荷の伝達を抑制できるヒンジ結合構造を有する接合コンクリート構造体を構築することができる。
さらに、仮に、結合棒状体を降伏耐力が高い高降伏耐力材で構成した場合、前記接合部に作用するせん断力に対して、少ない本数で抗することができる。
【0012】
また、前記接合部を跨ぐように、前記接合部が離間する方向に沿って直線状に配置するとともに、前記プレキャストコンクリート部材及び前記現場打ちコンクリート部材の少なくとも一方に対して長手方向の付着が前記結合部材より小さな棒状の補助結合部材を備え、
前記結合部材と前記補助結合部材とが、前記プレキャストコンクリート部材において前記接合部を構成する床版側方部の部材厚み方向に交差する方向及び前記離間する方向に交差する方向に沿って所定間隔を隔てて同列上に配置されることにより、せん断力に対する耐力を向上させながら、確実に曲げ負荷の伝達を抑制できるヒンジ結合を構成することができる。
【0013】
詳述すると、前記プレキャストコンクリート部材と、現場打ちした前記現場打ちコンクリート部材とによる接合部とには大きなせん断力が作用するが、大きなせん断力に抗するためにたくさんの結合部材を配置すると、大きなせん断力に抗することができるものの、接合部を跨いで定着された結合部材によって、接合部の剛性が増大してヒンジ結合構造でなくなり、接合部は曲げ負荷が伝達されるおそれがある。
【0014】
これに対し、前記プレキャストコンクリート部材及び前記現場打ちコンクリート部材の少なくとも一方に対して長手方向の付着が前記結合部材より小さな棒状の補助結合部材を備えることにより、接合部に作用する大きなせん断力に抗する耐力を有するとともに、曲げ負荷や引っ張り方向の負荷が作用した場合、長手方向の付着が前記結合部材より小さな棒状の補助結合部材は前記プレキャストコンクリート部材や前記現場打ちコンクリート部材から抜け出すため、曲げ負荷の伝達を抑制させながら、接合部に作用するせん断力に対する耐力を増大することができる。
【0015】
この発明の態様として、前記結合棒状体を、長手方向の付着の小さな丸鋼で構成することができる。あるいは、前記結合部材は、前記定着部として機能する節を周面に形成した異形棒鋼で構成してもよい。
【0016】
この発明により、一般的に広く流通している周面が平滑な低付着形状の結合棒状体と、定着部とを組付けて結合部材を構成するため、安価で安定した品質の結合部材を構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明により、プレキャストコンクリート部材と現場打ちコンクリート部材とを高い施工性でヒンジ結合できる接合コンクリート構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1乃至
図7に示す接合コンクリート構造体1は、例えば、送水路などを構成するために用いられ、プレキャストコンクリートブロックを組付けるとともに、一部を現場打ちコンクリートで構成する接合コンクリート構造体である。
【0020】
なお、
図1は接合コンクリート構造体1の一部斜視図を示し、
図2は接合コンクリート構造体1の説明図を示し、
図3は接合コンクリート構造体1の分解斜視図を示している。なお、
図2(a)は接合コンクリート構造体1の断面図を示し、
図2(b)は
図2(a)におけるa部の拡大断面図を示し、
図2(c)は
図2(a)におけるa部の拡大平面図を示している。
【0021】
また
図2(c)では、接合コンクリート構造体1におけるプレキャストコンクリート部材10の1ブロック分、すなわち奥行き方向Lの一部のみを切り出して図示しているが、奥行き方向Lに所定長さ分同じ構成が繰り返し配置されている。後述する
図8(b)、
図9(a),(b)も同様に、接合コンクリート構造体1におけるプレキャストコンクリート部材10の1ブロック分、すなわち奥行き方向Lの一部のみを切り出して図示している。
【0022】
さらに、
図4は接合コンクリート構造体1の施工フロー図を示し、
図5乃至
図7は接合コンクリート構造体1の施工説明図を示している。詳述すると、
図5(a)は基礎工・定規工について図示し、
図5(b)はプレキャストコンクリート部材据付について図示し、
図6(a)は奥行き方向連結工及び接合部材連結工について図示し、
図6(b)は接合部材連結工について図示している。
図7(a)は配筋工について図示し、
図7(b)は現場打ちコンクリート部材構築工について図示している。
【0023】
接合コンクリート構造体1は、側壁部1a及び床版部1bとで構成し、内部空間Xを有するU型断面のコンクリート構造体であり、奥行き方向Lに所定長さを有している。
より具体的には、接合コンクリート構造体1は、プレキャスト製のプレキャストコンクリート部材10と、現場打ちコンクリートで構成する現場打ちコンクリート部材20とを床版部1bの床版接合部2で接合して構成し、内部空間Xを有するU型断面のコンクリート構造体である。また、接合コンクリート構造体1は、複数プレキャストコンクリート部材10を奥行き方向Lに並べて連結するとともに、奥行き方向Lに所定長さの現場打ちコンクリート部材20を構築し、床版部1bにおける床版接合部2で接合して構成している。
【0024】
なお、床版接合部2は、幅方向Wのヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合補助棒部材40を、床版接合部2を跨ぐとともに、奥行き方向Lに所定間隔を隔てて配置し、ヒンジ接合構造Pを構成している。
【0025】
ヒンジ接合棒部材30は、周面に節が形成されるとともに、降伏耐力が高い高降伏耐力材で構成し、床版側方部12に配置されたブロック側異形棒体32と、現場打ちコンクリート部材20に配置される中央側異形棒体33と、ブロック側異形棒体32と中央側異形棒体33とを連結する連結治具31とで構成している。なお、連結治具31は、ブロック側異形棒体32とともに床版側方部12に配置され、連結治具31の端面が対向端面12aに露出するように配置されている。
【0026】
ヒンジ接合補助棒部材40は、周面に節が形成されるとともに、降伏耐力が高い高降伏耐力材で構成し、床版側方部12に配置されたブロック側補助異形棒体42と、周面が平滑な棒状体である中央側周面平滑棒体43と、ブロック側補助異形棒体42と中央側周面平滑棒体43とを連結する連結治具41とで構成したスリップバーである。なお、連結治具41は、ブロック側補助異形棒体42とともに床版側方部12に配置され、連結治具41の端面が対向端面12aに露出するように配置されている。
【0027】
プレキャストコンクリート部材10は、側壁部1aにおいて、鉛直方向の側壁本体部11と、床版部1bの側部である床版側方部12とで構成するプレキャスト製のL型コンクリートブロックである。
【0028】
プレキャストコンクリート部材10の側壁本体部11の高さ方向中央付近には、奥行き方向LのPC鋼棒51を挿通する挿通孔13を有している。また、側壁本体部11における内部空間X側の面には、挿通孔13に挿通したPC鋼棒51を連結するための連結凹部14を形成している。
【0029】
床版側方部12は、連結治具31及びブロック側異形棒体32、並びに連結治具41及びブロック側補助異形棒体42が奥行き方向Lにおいて所定間隔を隔てて内在しており、床版側方部12の対向端面12aに連結治具31,41の端面が露出している。
【0030】
より詳しくは、床版側方部12における奥行き方向Lの中央付近に、2本の連結治具41及びブロック側補助異形棒体42が所定間隔を隔てて配置され、その奥行き方向Lの両側に連結治具31及びブロック側異形棒体32が配置されている。
【0031】
また、
図11に示すように、接合コンクリート構造体1と同断面形状であり、床版接合部2に対応する箇所が剛結された従来構造の剛結接合コンクリート構造体100の床版部1bに作用する曲げモーメントMの正負が変化する正負変化点Maに対応する位置の近傍に床版接合部2が配置されるように床版側方部12の幅方向Wの長さを形成している。
【0032】
現場打ちコンクリート部材20は、幅方向Wに所定間隔を隔てて対向する向きで配置したプレキャストコンクリート部材10における床版側方部12同士の間を埋めるように構築された、現場打ちの鉄筋コンクリート構造の床版部材である。
【0033】
なお、現場打ちコンクリート部材20の幅方向Wの両側において、プレキャストコンクリート部材10の床版側方部12に配置した連結治具31,41に対応する位置に、中央側異形棒体33及び中央側周面平滑棒体43が配置されている。
【0034】
また、現場打ちコンクリート部材20の幅方向Wの両端部における上下の角部22には、奥行き方向Lに沿う、断面略矩形状で緩衝材50が設置されている。
なお、緩衝材50は、弾性ゴム、発泡ウレタン、あるいは目地材などの弾性体や発泡体などの緩衝作用のある部材で構成している。
【0035】
このように、プレキャストコンクリート部材10及び現場打ちコンクリート部材20で構成した接合コンクリート構造体1において、プレキャストコンクリート部材10と現場打ちコンクリート部材20とは、ヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合補助棒部材40で連結されているだけで、構造的に一体化していない。
【0036】
つまり、接合コンクリート構造体1の床版部1bにおける床版接合部2は、床版側方部12の対向端面12aと、現場打ちコンクリート部材20の対向端面20aとが対向する床版接合部2を跨ぐヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合補助棒部材40によって回転可能に構成されているため、高さ方向Hのせん断力Hv及び幅方向Wの外側向きの引張力Wpに抗するとともに、曲げ方向の負荷(曲げ負荷Mp)を伝達しないヒンジ接合構造Pを構成している。
【0037】
続いて、このように構成する接合コンクリート構造体1を構築するための施工方法について、施工フロー図を示す
図4、及び各施工状態を示す
図5乃至
図7とともに説明する。
【0038】
まず、
図5(a)に示すように、接合コンクリート構造体1を構築する箇所に、L型アングル構成する定規材71を用いて、基礎砕石72を敷設し、そのうえに基礎コンクリート73を打設して基礎70を構築するとともに、基礎70の上面におけるプレキャストコンクリート部材10を配置する箇所に敷きモルタル74で所定の高さに調整する(ステップs1)。
【0039】
敷きモルタル74によって高さ調整された設置箇所に、
図5(b)に示すように、吊り治具60に対して、側壁本体部11に設けた吊り金具63に接続したワイヤーロープ61と、床版側方部12に設けた吊り金具63に接続し、図示省略するレバーブロック(登録商標)を設けたワイヤーロープ62とで、側壁本体部11が垂直となるように吊り下げたプレキャストコンクリート部材10を据え付ける。このとき、床版側方部12同士が対向する向きとなるように、左右対称な向きで2つのプレキャストコンクリート部材10を所定箇所に設置する(ステップs2)。
【0040】
なお、奥行き方向Lに隣接するプレキャストコンクリート部材10が既に据え付けられていた場合(ステップs3:Yes)、
図6(a)に示すように、挿通孔13にPC鋼棒51を挿通するとともに、ジャッキ52を用いて、奥行き方向Lに隣接するプレキャストコンクリート部材10をPC鋼棒51で連結する(ステップs4)。
【0041】
なお、挿通孔13は、側壁本体部11の高さ方向の中央程度の位置に形成されているため、PC鋼棒51を用いた連結作業自体は、低い脚立などを用いた作業で行えるため、その施工は安全かつ施工性が高い。
【0042】
仮に、既に据え付けられたプレキャストコンクリート部材10がない場合(ステップs3:No)や、隣接するプレキャストコンクリート部材10同士をPC鋼棒51を用いて奥行き方向Lに連結した後、プレキャストコンクリート部材10の据付(ステップs2乃至s4)を、奥行き方向Lに所定数配置するまで繰り返す(ステップs5:No)。
【0043】
所定数の配置が完了後(ステップs5:Yes)、
図6(a)におけるb部拡大図及び
図6(b)に示すように、据え付けたプレキャストコンクリート部材10の床版側方部12の対向端面12aに露出する連結治具31,41に対して中央側異形棒体33及び中央側周面平滑棒体43を取付けてヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合補助棒部材40を構成する(ステップs6)。さらに、側壁本体部11及び床版側方部12に設けた吊り金具63を取り外した当該箇所、及び側壁本体部11の高さ方向中央付近に形成した連結凹部14にモルタルを充填して埋める(ステップs7)。
【0044】
このようにして、ヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合補助棒部材40を構成してから、
図7(a)に示すように、左右のプレキャストコンクリート部材10の床版側方部12の対向端面12a同士の間に鉄筋21を配筋するとともに(ステップs8)、緩衝材50を所定箇所に配置してから、
図7(b)に示すように、コンクリートを打設して現場打ちコンクリート部材20を構築し(ステップs9)、現場打ちコンクリート部材20の強度が発現したら接合コンクリート構造体1の構築は完了する。
【0045】
上述したような施工方法で構築するとともに、上述した構成の接合コンクリート構造体1は、側壁本体部11と床版側方部12とが一体構成され、プレキャストコンクリートで構成した、幅方向Wの両側のプレキャストコンクリート部材10と、現場打ちコンクリートで構成した現場打ちコンクリート部材20とで構成し、床版接合部2をヒンジ接合構造Pで接合したことにより、プレキャストコンクリートブロックを用いながら、より高い施工性と経済性とを両立することができる。
【0046】
詳述すると、接合コンクリート構造体1を、側壁本体部11と床版側方部12とが一体構成され、プレキャストコンクリートで構成した、両側のプレキャストコンクリート部材10を備えるとともに、作業性の高い床版部1bにおいて経済性の高い現場打ちコンクリートで構成する現場打ちコンクリート部材20を構築するため、より高い施工性と経済性とを両立することができる。
【0047】
また、側壁部1aを構成するプレキャストコンクリート部材10を、側壁本体部11と床版側方部12とを一体構成しているため、施工中において、プレキャストコンクリート部材10は床版側方部12によって自立し、容易に施工することができる。
【0048】
さらにまた、床版接合部2を、ヒンジ接合棒部材30とヒンジ接合補助棒部材40とを用いてヒンジ接合構造Pで構成することによって、仮にプレキャストコンクリート部材10における床版側方部12と、現場打ちコンクリート部材20とを一体化する、つまり、機械式継ぎ手などを用いて、プレキャストコンクリート部材10における床版側方部12の鉄筋と、現場打ちコンクリート部材20の鉄筋21とを連結して一体化する場合のように床版側方部12の対向端面12aの目荒らし等を行うことなく、容易に施工することができる。
【0049】
なお、プレキャストコンクリート部材10を所定位置に据付け(ステップs2)、プレキャストコンクリート部材10の床版側方部12同士の間に、床版接合部2をヒンジ接合構造Pで構成するように、ヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合補助棒部材40を構成してから(ステップs6)、現場打ちコンクリートで現場打ちコンクリート部材20を構築するため(ステップs9)、例えば、現場打ちコンクリート部材20を構築してから、プレキャストコンクリート部材10の据付を行う場合に比べて現場打ちコンクリート部材20に作用する負荷を低減することができる。
【0050】
詳述すると、例えば、現場打ちコンクリート部材20を構築してから、プレキャストコンクリート部材10の据付を行う場合、プレキャストコンクリート部材10の重量によって現場打ちコンクリート部材20に大きな反力が作用するが、プレキャストコンクリート部材10の据付(ステップs2)を行ってから、現場打ちコンクリート部材20を構築するため(ステップs9)、つまりプレキャストコンクリート部材10が地盤で支持された状態で現場打ちコンクリート部材20を構築するため、プレキャストコンクリート部材10の重量による反力が現場打ちコンクリート部材20に作用することがなく、現場打ちコンクリート部材20の強度を低減、つまり床版部1bの厚みを薄くすることができる。
【0051】
さらには、床版接合部2をヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合補助棒部材40を用いてヒンジ接合構造Pで構成するため、U型断面のコンクリート構造体としての曲げ負荷Mpが現場打ちコンクリート部材20に伝達されず、現場打ちコンクリート部材20の強度をさらに低減、つまり現場打ちコンクリート部材20の厚みをさらに薄くすることができる。
【0052】
また、床版接合部2が剛結された従来構造の剛結接合コンクリート構造体100(
図11参照)の床版部1bに作用する曲げモーメントMの正負が変化する正負変化点Maに対応する位置の近傍に床版接合部2を配置する、つまり当該箇所に床版接合部2が配置されるように床版側方部12を形成することにより、床版接合部2に作用する曲げモーメントMが小さく、ヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合補助棒部材40をコンパクトに構成することができる。
【0053】
また、プレキャストコンクリート部材10を奥行き方向Lに複数配置するとともに、奥行き方向Lに配置したプレキャストコンクリート部材10の側壁本体部11を奥行き方向Lに連結することにより、容易かつ安全に、ブロック同士を奥行き方向Lに連結する連結施工を行うことができる。
【0054】
詳述すると、奥行き方向Lに配置したプレキャストコンクリート部材10の側壁本体部11を奥行き方向Lに連結する連結作業は比較的低い位置での施工となり、安全性や施工効率を向上することができる。
【0055】
なお、上述の説明では、床版接合部2を跨ぐヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合補助棒部材40を用いてヒンジ接合構造Pを構成したが、
図8に示すように、上述のヒンジ接合補助棒部材40と、ヒンジ接合棒部材90とを組み合わせヒンジ接合構造Pを構成してもよい。
【0056】
具体的には、ヒンジ接合棒部材90は、降伏耐力が高い高降伏耐力材で構成し、端部に定着体94を備えるとともに、床版側方部12に配置された、周面が平滑なブロック側周面平滑定着棒体92と、現場打ちコンクリート部材20に配置され、端部に定着体94を備えた中央側周面平滑定着棒体93と、ブロック側周面平滑定着棒体92と中央側周面平滑定着棒体93とを連結する連結治具91とで構成したアンボンドバーである。なお、連結治具91は床版側方部12の対向端面12aに露出するように配置されている。
【0057】
また、
図9に示すように、ヒンジ接合棒部材30及びヒンジ接合棒部材90において、連結治具31及び連結治具91を用いないで構成してもよい。
具体的には、
図9(a)に示すように、ブロック側異形棒体32と中央側異形棒体33とを連結治具31で連結したヒンジ接合棒部材30と同じ長さの異形棒体34のみでヒンジ接合棒部材30を構成してもよく、
図9(b)に示すように、ブロック側周面平滑定着棒体92と中央側周面平滑定着棒体93とを連結治具91で連結したヒンジ接合棒部材90と同じ長さの周面平滑定着棒体95のみでヒンジ接合棒部材90を構成してもよい。
【0058】
これらの場合、床版側方部12の対向端面12aから、ヒンジ接合棒部材30(90)を構成する異形棒体34(周面平滑定着棒体95)が突出することとなるが、上述の床版接合部2と同様の効果を奏することができる。
【0059】
このように、ヒンジ接合構造Pを、床版側方部12と現場打ちコンクリート部材20の両方のそれぞれに定着する節(定着体94)を有するとともに、床版接合部2を跨ぐように、床版接合部2が離間する方向に沿って配置する棒状の異形棒体32,33,34(周面平滑定着棒体92,93,95)で構成するヒンジ接合棒部材30(90)で構成することにより、床版接合部2を介した曲げ負荷Mpの伝達を抑制するとともに、床版接合部2に作用するせん断力Hvに対して異形棒体32,33,34(周面平滑定着棒体92,93,95)で抗し、引張力Wpに対して異形棒体32,33,34の節(定着体94)で抗することができる。したがって、コンクリート構造体の基本性能を維持しながら、曲げ負荷Mpの伝達を抑制できるヒンジ接合構造Pを有する接合コンクリート構造体1を構築することができる。
【0060】
また、異形棒体32,33,34(周面平滑定着棒体92,93,95)を降伏耐力が高い高降伏耐力材で構成しているため、床版接合部2に作用するせん断力Hvに対して、少ない本数で抗することができる。
【0061】
また、床版接合部2を跨ぐように、床版接合部2が離間する方向である幅方向Wに沿って直線状に配置するとともに、プレキャストコンクリート部材10の床版側方部12及び現場打ちコンクリート部材20の少なくとも一方に対して長手方向の付着の小さな棒状のヒンジ接合補助棒部材40を備えることにより、せん断力Hvに対する耐力を向上させながら、確実に曲げ負荷Mpの伝達を抑制できるヒンジ結合を構成することができる。
【0062】
詳述すると、プレキャストコンクリート部材10における床版側方部12の幅方向Wの内側端部である対向端面12aと、現場打ちした現場打ちコンクリート部材20の幅方向Wの外側端部である対向端面20aとを接合した床版接合部2には大きなせん断力Hvが作用するが、大きなせん断力Hvに抗するためにたくさんのヒンジ接合棒部材30(90)を配置すると、大きなせん断力Hvに抗することができるものの、床版接合部2を跨いで定着された結合部材によって、床版接合部2の剛性が増大してヒンジ接合構造Pでなくなり、床版接合部2は曲げ負荷Mpが伝達されるおそれがある。
【0063】
これに対し、床版側方部12及び現場打ちコンクリート部材20の少なくとも一方に対して長手方向の付着の小さな棒状のヒンジ接合補助棒部材40を備えることにより、床版接合部2に作用する大きなせん断力Hvに抗する耐力を有するとともに、曲げ負荷Mpや引張力Wpが作用した場合、長手方向の付着の小さな棒状のヒンジ接合補助棒部材40の中央側周面平滑棒体43は床版側方部12や現場打ちコンクリート部材20から抜け出すため、曲げ負荷Mpの伝達を抑制させながら、床版接合部2に作用するせん断力Hvに対する耐力を増大することができる。
【0064】
また、床版接合部2を、従来構造の剛結接合コンクリート構造体100における床版部1bに作用する曲げモーメントMの正負変化点Maに配置することにより、床版接合部2を跨ぐように配置したヒンジ接合棒部材30(90)及びヒンジ接合補助棒部材40に作用する曲げ負荷Mpを低減することができる。したがって、例えば、強度の低い材質や径の異形棒体32,33,34(周面平滑定着棒体92,93,95)を使用したり、あるいは、結合部材の本数を低減することができる。
【0065】
また、ヒンジ接合棒部材90において、周面平滑定着棒体92,93,95を、長手方向の付着の小さな周面平滑状で形成しているため、一般的に広く流通している周面が平滑な周面平滑状の周面平滑定着棒体92,93,95と、定着体94とを組付けて結合部材を構成するため、安価で安定した品質の結合部材を構成することができる。
【0066】
なお、このように、ヒンジ接合棒部材30とヒンジ接合補助棒部材40との組み合わせ、あるいはヒンジ接合補助棒部材40とヒンジ接合棒部材90との組み合わせを床版接合部2に配置してヒンジ接合構造Pを構成したが、ヒンジ接合棒部材30やヒンジ接合棒部材90のみで、あるいはヒンジ接合棒部材30とヒンジ接合棒部材90とを組み合わせて、さらにそれにヒンジ接合補助棒部材40を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
また、このように、ヒンジ接合棒部材30とヒンジ接合補助棒部材40との組み合わせ、ヒンジ接合補助棒部材40とヒンジ接合棒部材90との組み合わせ、ヒンジ接合棒部材30とヒンジ接合棒部材90との組み合わせ、ヒンジ接合棒部材30とヒンジ接合補助棒部材40とヒンジ接合棒部材90との組み合わせ、さらにはヒンジ接合棒部材30やヒンジ接合棒部材90のみを床版接合部2を跨ぐように配置して構成したヒンジ接合構造Pは、上述のような接合コンクリート構造体だけでなく、
図10(a)に示すL型断面や
図10(b)に示す逆T型断面など様々な形状における接合部をヒンジ接合構造Pとして構築するために用いることができ、その場合であっても上述の効果を奏することができる。
【0068】
この発明の構成と、実施形態との対応において、この発明のプレキャストコンクリート部材における端部と現場打ちコンクリート部材の端部とによる接合部は、床版接合部2に対応し、
以下同様に、
結合棒状体は、異形棒体32,33,34あるいは周面平滑定着棒体92,93,95に対応し、
定着部は、ブロック側異形棒体32や中央側異形棒体33の節あるいは定着体94に対応し、
結合部材は、ヒンジ接合棒部材30またはヒンジ接合棒部材90に対応し、
低付着形状は、周面平滑状に対応し、
補助結合部材は、ヒンジ接合補助棒部材40に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0069】
例えば、ヒンジ接合補助棒部材40の中央側周面平滑棒体43を周面が平滑な棒状体で構成することでスリップバーを構成したが、現場打ちコンクリート部材20に配置した鞘管に対して、床版側方部12に付着させた棒状体を、床版接合部2を跨いで挿入して、入れ子構造の二部材で構成してもよい。