【実施例1】
【0013】
図1は、本発明が適用される乗客コンベアの一実施例に係る概略構成図である。
【0014】
本実施例においては、建屋の下階の床面F1と上階の床面F2との間に、2基の乗客コンベア100A、100Bが並設されている。乗客コンベア100Aは上り用であり、乗客コンベア100Bは下り用である。各コンベア100A,100Bは、それぞれ下階の床面F1と上階の床面F2との間に架け渡された枠体1と、下階の床面F1及び上階の床面F2にそれぞれ設置された乗降床2と、枠体1内に配置され、無端状に連結されて各乗降床2の間を循環する踏段3と、この踏段3を駆動する図示しない駆動装置と、枠体1に取り付けられ、踏段3の進行方向に沿って両側に配置された欄干4と、下階の天井部Cに取り付けられ、この天井部Cと上り用の乗客コンベア100Aの欄干4との間に形成される第1の三角交差部S1に配置される第1の三角ガード板5と、下り用の乗客コンベア100Bの枠体1に取り付けられ、この下り用の乗客コンベア100Bの枠体1と上り用の乗客コンベア100Aの欄干4との間に形成される第2の三角交差部S2に配置される第2の三角ガード板6とを備えている。
【0015】
第1の三角ガード板5は、天井部Cと上り用の乗客コンベア100Aの欄干4との交差部に近い位置に取り付けられる固定保護板11と、上り用の乗客コンベア100Aの移動方向において、前記交差部よりも前方側に配置された可動式警告板12とからなっている。
【0016】
第2の三角ガード板6も第1の三角ガード板5と同様であって、下り用の乗客コンベア100Bの枠体1と上り用の乗客コンベア100Aの欄干4との交差部に近い位置に取り付けられる固定保護板21と、上り用の乗客コンベア100Aの移動方向において、前記交差部よりも前方側に配置された可動式警告板22とからなっている。
【0017】
なお、本明細書においては、踏段3の循環する方向を乗客コンベア100A,100Bの長手方向或いは循環方向(走行方向)と呼び、この長手方向に垂直で且つ踏段3の踏み面に平行な方向を幅方向と呼ぶ。
【0018】
図2は、本発明の第1実施例に係る乗客コンベアの三角ガード板を示す図である。
図3は、第1実施例に係る三角ガード板の形状例を示す縦断面図である。
図4は、第1実施例に係る三角ガード板の形状例を示す縦断面図である。
【0019】
本実施例の可動式警告板12,22は、板状部材31と、この板状部材31の前縁部に取り付けられる円筒状部材32と、板状部材31の下縁部に取り付けられる円筒状部材33とから構成されている。
【0020】
板状部材31は、板面が枠体1の長手方向に沿うように配置される。板状部材31の下縁部は上り用の乗客コンベア100Aの欄干4の傾斜に沿って傾斜した形状である。従って、円筒状部材33も、板状部材31の下縁部の傾斜に沿って取り付けられている。板状部材31及び円筒状部材32,33は、例えばアクリル等のプラスチック材料をもって作製される。
【0021】
円筒状部材33は、板状部材31の下縁部に設けられる曲面体(曲面部)を構成している。ここでは、可動式警告板12,22の下縁部に円筒状部材33を取り付けた例を示したが、固定保護板11、21の下縁部に円筒状部材を取り付けることも勿論できる。
【0022】
図2では、可動式警告板22の可動式警告板12と異なる部位を、一点鎖線で示している。可動式警告板22は、下り用の乗客コンベア100Bの枠体1に吊り下げられるため、上縁部22cが乗客コンベア100Bの枠体1の傾斜に沿って傾斜した形状である。可動式警告板12において吊り下げ金具が掛け止められる掛止部12a,12bは、可動式警告板22では掛止部22a,22bの位置に設けられる。
【0023】
円筒状部材32と円筒状部材33とは、曲り部34により連結され、一体的に形成されている。曲り部34は、円筒状部材32と円筒状部材33との間を、曲線で接続している。また、円筒状部材32と円筒状部材33とは、板状部材31の板厚よりも大きい外径を有している。板状部材31の前縁部に設けられる円筒状部材32と板状部材31の下縁部に設けられる円筒状部材33とが一体的に形成された状態で連結されていることにより、継ぎ目のない滑らかな形状にすることができる。
【0024】
これにより、
図3に示すように、円筒状部材33及び円筒状部材33は、乗客コンベア100A,100Bの長手方向に垂直な断面(幅方向断面)において、円筒状部材32及び円筒状部材33の全幅寸法t33が、板状部材31の板厚寸法t31よりも大きい。すなわち、円筒状部材33及び円筒状部材33は、板状部材31の板厚方向における全幅寸法t33が、板状部材31の板厚寸法よりも大きい。
【0025】
図3に示すように、円筒状部材32及び円筒状部材33の各中心線を含む平面上に板状部材31が位置するように、円筒状部材32及び円筒状部材33を板状部材31に対して取り付けてもよい。この場合、板状部材31を円筒状部材32及び円筒状部材33の内部に延長すると、円筒状部材32及び円筒状部材33の各中心線は板状部材31に含まれることになる。
【0026】
或いは
図4に示すように、円筒状部材32及び円筒状部材33の外周面に接する接平面を形成するように、板状部材31を円筒状部材32及び円筒状部材33に対して取り付けてもよい。なお
図4の場合も、円筒状部材32及び円筒状部材33の全幅寸法t33は、板状部材31の板厚寸法t31よりも大きい。
【実施例2】
【0027】
図5は、本発明の第2実施例に係る乗客コンベアの三角ガード板を示す図である。
図6は、第2実施例に係る三角ガード板の形状例を示す縦断面図である。
図7は、第2実施例に係る三角ガード板の形状例を示す縦断面図である。
図8は、第2実施例に係る三角ガード板の形状例を示す縦断面図である。なお
図5では、
図2と同様に、可動式警告板22の可動式警告板12と異なる部位を、一点鎖線で示している。
【0028】
第2実施例の可動式警告板12,22は、板状部材41と、この板状部材41の前縁部に取り付けられる円筒状部材42とから構成されている。板状部材41の下縁部は湾曲するように曲げられ、半円形状部(円弧部)43が成形されている。なお、本実施例では、半円形状部43が、下縁部に設けられる曲面体(曲面部)を構成している。また、ここでは、可動式警告板12、22の下縁部に半円形状部43を成形した例を示したが、固定保護板11、21の下縁部に半円形状部を成形することも勿論できる。
【0029】
半円形状部43は、
図6に示すように、幅方向断面における形状を略J字状の断面としてもよい。或いは
図7に示すように、より大きなR部を有する略J字状の断面としてもよい。具体的には、
図6では半円形状部43の断面が半円よりも小さい円弧を成しており、
図7では半円形状部43の断面が半円の円弧を成している。或いは
図8に示すように、略円形の断面としたりすることができる。
【0030】
なお
図8では、半円形状部43の断面が完全な円形を描いておらず、円弧部の端部43aと端部43bとの間に隙間が存在する。円弧部の端部43aと端部43bとが接触するまで半円形状部43を湾曲させ、完全な円形を描くようにしてもよい。この場合、第1実施例の形状とほとんど変わらない形状にすることができる。
【0031】
図6の可動式警告板12,22では、半円形状部43の端部43aが可動式警告板12,22の最下端に位置する形状である。これに対して
図7及び
図8の可動式警告板12,22では、半円形状部43の端部43aが可動式警告板12,22の最下端から上方に向けて折り返した形状である。半円形状部43の端部43aが可動式警告板12,22の最下端から上方に向けて折り返した形状にすることにより、可動式警告板12,22の下方に潜り込むようにして挟み込まれた衣服やバッグを引き戻すときの摺接抵抗が小さくなる。このため、衣服やバッグをより容易に引き戻すことができる。
【0032】
半円形状部43の端部43aは、乗客コンベアの幅方向において板状部材41の板面部41aよりも外側に位置するように、乗客コンベアの幅方向外側に向けて曲げられていることが望ましい。これにより、半円形状部43の端部43aの端面が衣服やバッグ、或いは乗客と直接接触するのを防ぐことができる。或いは、半円形状部43の端部43aが板状部材41の板面部41aよりも内側に位置する場合であっても、半円形状部43の端部43aを
図8に示す位置まで、すなわち半円形状部43の全幅寸法が最大となる位置まで端部43aを折り返すことにより、端部43aの端面が衣服やバッグ、或いは乗客と直接接触するのを防ぐことができる。
【0033】
本実施例においても、
図6〜8に示すように、幅方向断面において、半円形状部43の全幅寸法(板状部材31の板厚方向における全幅寸法)t43は、板状部材41の板厚寸法t41よりも大きい。
【0034】
図9は、本発明との比較例における、乗客コンベアの三角ガード板を示す図である。
【0035】
比較例の三角ガード板200は、厚みが6mm以上の角がない板状部材201と、この板状部材201の前縁側に取り付けられた、板状部材201の板厚よりも内径が大きい円筒状部材202とから構成されている。板状部材201及び円筒状部材202は、例えばアクリル等のプラスチック材料をもって作製される。
【0036】
本比較例では、板状部材201の前縁側には円筒状部材202が設けられているものの、板状部材201の下縁部には円筒状部材が設けられていない。このため、板状部材201の下縁部が三角ガード板200の外縁を成している。
【0037】
衣服やバッグが比較例の三角ガード板200の下方に潜り込むようにして挟み込まれた場合、衣服やバッグを欄干側へと引き戻す際、衣服やバッグは三角ガード板200の下縁部に摺接する。このため、衣服やバッグを引き戻すのに時間がかかる。
【0038】
また比較例の三角ガード板200では、衣服やバッグの挟み込みを防ぐために、円筒状部材202の下端を下方に延長した延長部202aを設けている。このため、人や物が触れて三角ガード板200が乗客コンベアの幅方向に揺れた際に、円筒状部材202の下端部が周囲の構造物に接触し易くなる。円筒状部材202の下端部の構造物への接触を防ぐためには、周囲の構造物との間に十分な間隔を置いて、乗客コンベアを配置する必要がある。
【0039】
本発明の第1及び第2実施例によれば、三角ガード板5、6の下縁部に曲面体(曲面部)、すなわち、円筒状部材33及び半円形状部43を設けたことにより、三角ガード板5、6の下方に潜り込むようにして挟み込まれた衣服やバッグを欄干4側へと引き戻す際、衣服やバッグは下縁部の曲面体に摺接する。このため、衣服やバッグをより容易に引き戻すことができ、これによって、安全性の向上を図ることができる。
【0040】
また本発明に係る三角ガード板5、6では、円筒状部材33及び半円形状部43を設けたことにより、円筒状部材32,42の下端を下方に延長する必要がない。このため、三角ガード板5、6の上下方向の寸法を短くすることができる。従って、三角ガード板5、6が乗客コンベアの幅方向に揺れた際に周囲の構造物に接触し難くなり、乗客コンベアと周囲の構造物との間の隙間を広くする必要がない。
【0041】
乗客コンベアと周囲の構造物との間の隙間を広くできる場合は、円筒状部材32,42の下端を下方に延長してもよい。
【0042】
なお、本発明は、上記の実施形態例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記の実施形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。