【文献】
STRAETEMANS, Trudy et al.,TCR Gene Transfer: MAGE-C2/HLA-A2 and MAGE-A3/HLA-DP4 Epitopes as Melanoma-Specific Immune Taegets,Clinical and Developmental Immunology,2012年 1月 1日,Volume 2012,Article ID 586314,doi:10.1155/2012/586314
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)配列番号3のα鎖相補性決定領域 (CDR) 1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列、配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含む単離若しくは精製されたTCR、又は
(b)(a)の機能的変異体であって、ここで、該機能的変異体が、
(I)配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号29のα鎖CDR3アミノ酸配列、配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列、
ここで、
(1)配列番号29において、Xaa4がAlaであり、Xaa5がSerであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrである、
(2)配列番号29において、Xaa4がSerであり、Xaa5がAlaであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrである、
(3)配列番号29において、Xaa4がSerであり、Xaa5がSerであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がAlaである、若しくは、
(4)配列番号29において、Xaa4がValであり、Xaa5がSerであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrである、又は、
(II)配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列、配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号30のβ鎖CDR3アミノ酸配列、
ここで、
(1)配列番号30において、Xaa4がAlaであり、Xaa5がThrであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がProである、若しくは、
(2)配列番号30において、Xaa4がArgであり、Xaa5がAlaであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がProである、
を含み、
かつ該TCR及び該機能的変異体が、HLA-DPβ1*04と関連してMAGE-A3243-258に対する抗原特異性を有する、
単離若しくは精製されたTCR又は機能的変異体。
(a)配列番号29であって、Xaa4がAlaであり、Xaa5がSerであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrであるもの、又は(b)配列番号29であって、Xaa4がSerであり、Xaa5がAlaであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrであるものを含む、請求項1に記載の機能的変異体。
(a)配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、並びに配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖、
(b)配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号29のα鎖CDR3アミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、並びに配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖、
ここで、
(1)配列番号29において、Xaa4がAlaであり、Xaa5がSerであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrである、
(2)配列番号29において、Xaa4がSerであり、Xaa5がAlaであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrである、
(3)配列番号29において、Xaa4がSerであり、Xaa5がSerであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がAlaである、若しくは、
(4)配列番号29において、Xaa4がValであり、Xaa5がSerであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrである、又は、
(c)配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、並びに配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号30のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖、
ここで、
(1)配列番号30において、Xaa4がAlaであり、Xaa5がThrであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がProである、若しくは、
(2)配列番号30において、Xaa4がArgであり、Xaa5がAlaであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がProである、
を含み、
該第一のポリペプチド鎖がTCRのα鎖、及び該第二のポリペプチド鎖がTCRのβ鎖であり、
かつ該TCRが、HLA-DPβ1*04と関連してMAGE-A3243-258に対する抗原特異性を有する、
単離又は精製されたタンパク質。
請求項1〜8のいずれか一項に記載のTCR若しくは機能的変異体、請求項9〜14のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項15〜23のいずれか一項に記載のタンパク質、をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸。
前記ヌクレオチド配列が、a)配列番号37及び38、b)配列番号41及び42、並びにc)配列番号43及び44からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項24に記載の単離又は精製された核酸。
請求項1〜8のいずれか一項に記載のTCR若しくは機能的変異体、請求項9〜14のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項15〜23のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項24若しくは25に記載の核酸、請求項26に記載の組換え発現ベクター、請求項27若しくは28に記載の宿主細胞、請求項29に記載の細胞集団、又は請求項30に記載の抗体若しくはその抗原結合部分と、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物。
請求項1〜8のいずれか一項に記載のTCR若しくは機能的変異体、請求項9〜14のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項15〜23のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項24若しくは25に記載の核酸、請求項26に記載の組換え発現ベクター、請求項27若しくは28に記載の宿主細胞、請求項29に記載の細胞集団、又は請求項30に記載の抗体若しくはその抗原結合部分を含む、哺乳動物における癌の治療又は予防のための医薬。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、MAGE-A3に対する抗原特異性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)並びにその機能的部分及び機能的変異体であって、ここで、該TCRが、HLA-DPβ1
*04と関連してMAGE-A3を認識するものを提供する。本発明の一実施態様において、単離又は精製されたTCRは、MAGE-A3
243-258及びMAGE-A6に対する抗原特異性を有する。
【0011】
MAGE-A3及びMAGE-A6は、12の相同タンパク質のMAGE-Aファミリーのメンバーであり、該ファミリーには、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11及びMAGE-A12も含まれる。MAGE-Aタンパク質は癌精巣抗原(CTA)であり、これは、腫瘍細胞、並びにMHCを発現しない精巣及び胎盤生殖細胞にのみ発現する。MAGE-Aタンパク質は、メラノーマ、乳癌、白血病、甲状腺癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌(例、肝細胞癌)、肺癌(例、非小細胞肺癌)、卵巣癌、多発性骨髄種、食道癌、腎臓癌、頭部癌(例、扁平上皮細胞癌)、頸部癌(例、扁平上皮細胞癌)、前立腺癌、滑膜細胞肉腫及び尿路上皮癌を含む様々なヒト癌で発現するが、これらに限定されない。
【0012】
本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、養子細胞移入のために使用される場合を含む、多くの利点を提供する。例えば、HLA-DPβ1
*04と関連して提示されるMAGE-A3を標的とすることにより、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、他のHLA分子(例えば、HLA-A
*02、HLA-A
*01又はHLA-C
*07)と関連して提示されるMAGE抗原を標的とするTCRを用いて治療することが不可能な患者を治療することが可能となる。HLA-DPβ1
*04は、癌患者集団の約70%〜約80%で発現する、高頻度でみられる(highly prevalent)アレルである。従って、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、有利には、治療され得る患者集団を大幅に拡大する。さらに、特定の理論に拘束されるものではないが、MAGE-A3及び/又はMAGE-A6は、複数(multiple)の癌種の細胞で発現することから、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、複数の種類の癌細胞を破壊し、それゆえ複数の種類の癌を治療又は予防する能力を有利に提供すると考えられる。さらに、特定の理論に拘束されるものではないが、MAGE-Aタンパク質は癌精巣抗原であり、これは、腫瘍細胞、並びにMHCを発現しない精巣及び胎盤生殖細胞にのみ発現することから、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、正常な非癌性細胞の破壊を最小化又は排除し、それにより、毒性を低下させながら、例えば、最小化又は排除しながら、癌細胞の破壊を有利に標的化すると考えられる。
【0013】
本明細書で使用する場合、語句「抗原特異性」とは、TCRが、高い結合活性(avidity)で、MAGE-A3及び/又はMAGE-A6と特異的に結合し、免疫学的に認識できることを意味する。例えば、TCRを発現するT細胞が、低濃度のMAGE-A3及び/又はMAGE-A6ペプチド(例えば、約0.05 ng/ml〜約5 ng/ml、0.05 ng/ml、0.1 ng/ml、0.5 ng/ml、1 ng/ml、又は5 ng/ml)をパルスした抗原陰性HLA-DPβ1
*04+ 標的細胞との共培養時に、少なくとも約200 pg/ml以上(例えば、200 pg/ml以上、300 pg/ml以上、400 pg/ml以上、500 pg/ml以上、600 pg/ml以上、700 pg/ml以上、1000 pg/ml以上、5,000 pg/ml以上、7,000 pg/ml以上、10,000 pg/ml以上、又は20,000 pg/ml以上)のIFN-gを分泌する場合、TCRはMAGE-A3及び/又はMAGE-A6に対して「抗原特異性」を有すると考えてよい。代替的又は追加的に、TCRを発現するT細胞が、低濃度のMAGE-A3及び/又はMAGE-A6ペプチドをパルスした抗原陰性HLA-DPβ1
*04+ 標的細胞との共培養時に、形質導入されていないPBLのバックグラウンドレベルのIFN-γよりも少なくとも2倍多いIFN-γを分泌する場合、TCRはMAGE-A3及び/又はMAGE-A6に対して「抗原特異性」を有すると考えてよい。本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)はまた、より高濃度のMAGE-A3及び/又はMAGE-A6ペプチドをパルスした抗原陰性HLA-DPβ1
*04+ 標的細胞との共培養時にIFN-γを分泌してもよい。
【0014】
本発明の一実施態様は、任意のMAGE-A3タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに対する抗原特異性を有するTCR(その機能的部分及び変異体を含む)を提供する。本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、配列番号1を含むか、配列番号1からなるか又は実質的に配列番号1からなるMAGE-A3タンパク質に対する抗原特異性を有してよい。本発明の好ましい実施態様において、TCR(その機能的部分及び変異体を含む)は、KKLLTQHFVQENYLEY(配列番号2)を含むか、該配列からなるか又は実質的に該配列からなるMAGE-A3
243-258ペプチドに対する抗原特異性を有する。
【0015】
本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、ヒト白血球型抗原(HLA)-DPβ1
*04依存性の様式で、MAGE-A3を認識することができる。本明細書で使用する場合、「HLA-DPβ1
*04依存性の様式」とは、TCRが、HLA-DPβ1
*04分子との関連の中で、MAGE-A3タンパク質、ポリペプチド又はペプチドとの結合時に免疫応答を引き起こすことを意味する。本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、HLA-DPβ1
*04分子により提示されるMAGE-A3を認識でき、MAGE-A3に加えてHLA-DPβ1
*04分子と結合し得る。本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)がMAGE-A3を認識することに関連する、例となるHLA-DPβ1
*04分子には、HLA-DPβ1
*0401及び/又はHLA-DPβ1
*0402アレルによりコードされるものが含まれる。
【0016】
本発明の一実施態様は、任意のMAGE-A6タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに対する抗原特異性を有するTCR(その機能的部分及び変異体を含む)を提供する。本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、配列番号45を含むか、配列番号45からなるか又は実質的に配列番号45からなるMAGE-A6タンパク質に対する抗原特異性を有してよい。本発明の好ましい実施態様において、TCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、KKLLTQYFVQENYLEY(配列番号46)を含むか、該配列からなるか又は実質的に該配列からなるMAGE-A6
243-258ペプチドに対する抗原特異性を有する。
【0017】
本発明は、2つのポリペプチド(すなわち、ポリペプチド鎖)、例えば、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖、又はそれらの組み合わせなどを含むTCRを提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRがHLA-DPβ1
*04と関連してMAGE-A3に対する抗原特異性を有するならば、任意のアミノ酸配列を含み得る。
【0018】
本発明の一実施態様において、TCRは、2つのポリペプチド鎖であって、そのそれぞれがTCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2及びCDR3を含む可変領域を含む、鎖を含む。本発明の一実施態様において、TCRは、配列番号3又は13のアミノ酸配列を含むCDR1(α鎖のCDR1)、配列番号4又は14のアミノ酸配列を含むCDR2(α鎖のCDR2)、及び配列番号5又は15のアミノ酸配列を含むCDR3(α鎖のCDR3)を含む第一のポリペプチド鎖と、配列番号6又は16のアミノ酸配列を含むCDR1(β鎖のCDR1)、配列番号7又は17のアミノ酸配列を含むCDR2(β鎖のCDR2)、及び配列番号8又は18のアミノ酸配列を含むCDR3(β鎖のCDR3)を含む第二のポリペプチド鎖とを含む。この点について、本発明のTCRは、配列番号3〜5、6〜8、13〜15及び16〜18のいずれか1つ以上からなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つ以上を含み得る。好ましくは、TCRは、配列番号3〜8又は13〜18のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、TCRは、配列番号3〜8のアミノ酸配列を含む。
【0019】
代替的又は追加的に、TCRは、上記CDRを含むTCRの可変領域のアミノ酸配列を含み得る。この点について、TCRは、配列番号9若しくは19(α鎖の可変領域)、又は10若しくは20(β鎖の可変領域)、配列番号9及び10の両方、又は配列番号19及び20の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号9及び10の両方のアミノ酸配列を含む。
【0020】
代替的又は追加的に、TCRは、TCRのα鎖及びTCRのβ鎖を含み得る。本発明のTCRのα鎖及びβ鎖はそれぞれ、任意のアミノ酸配列を独立して含み得る。好ましくは、α鎖は、上記α鎖の可変領域を含む。この点について、本発明のTCRは、配列番号11又は21のアミノ酸配列を含み得る。このタイプのα鎖は、TCRの任意のβ鎖とペアとなり得る。好ましくは、本発明のTCRのβ鎖は、上記β鎖の可変領域を含む。この点について、本発明のTCRは、配列番号12又は22のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明のTCRは、配列番号11、12、21若しくは22、配列番号11及び12の両方、又は配列番号21及び22の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号11及び12の両方のアミノ酸配列を含む。
【0021】
本発明の範囲には、本明細書に記載の本発明のTCRの機能的変異体が含まれる。本明細書で使用する場合、用語「機能的変異体(functional variant)」とは、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と実質的又は顕著な配列同一性又は類似性を有するTCR、ポリペプチド又はタンパク質であって、該機能的変異体がTCR、ポリペプチド又はタンパク質(該機能的変異体はその変異体である)の生物学的活性を保持するものをいう。機能的変異体は、例えば、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と類似の程度に、同程度に、又はより高い程度に、MAGE-A3及び/又はMAGE-A6(親TCRが抗原特異性を有するか、又は親ポリペプチド若しくはタンパク質が特異的に結合する)と特異的に結合する能力を保持する、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド又はタンパク質(親TCR、ポリペプチド又はタンパク質)の変異体を包含する。親TCR、ポリペプチド又はタンパク質に関連して、機能的変異体は、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質に対して、アミノ酸配列において、例えば、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上同一であり得る。
【0022】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は、当分野で公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸での置換(例えば、Asp又はGlu)、非極性側鎖を有するアミノ酸の、非極性側鎖を有する別のアミノ酸での置換(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Valなど)、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸での置換(Lys、Argなど)、極性側鎖を有するアミノ酸の、極性側鎖を有する別のアミノ酸での置換(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)などであり得る。
【0023】
代替的又は追加的に、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が、機能的変異体の生物学的活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と比較して機能的変異体の生物学的活性が増加するように、機能的変異体の生物学的活性を増強する。
【0024】
この点について、本発明の実施態様は、(a)配列番号3〜8若しくは(b)配列番号21〜22を含む単離若しくは精製されたTCR、又は(a)若しくは(b)の機能的変異体であって、ここで、該機能的変異体が、(a)のいずれか1つ以上若しくは(b)のいずれか1つ以上において少なくとも1つのアミノ酸置換を有する(a)若しくは(b)を含み、かつ該機能的変異体が、HLA-DPβ1
*04と関連してMAGE-A3に対する抗原特異性を有するもの、を提供する。好ましくは、アミノ酸置換は、α又はβ鎖のCDR3領域、好ましくはα鎖のCDR3領域に位置する。いくつかの実施態様において、機能的変異体(又はその機能的部分)は、親TCRアミノ酸配列と比較して、MAGE-A3に対する反応性の増加を提供する。一般に、置換されたα鎖アミノ酸配列である配列番号29、31及び33は、天然の置換されていない配列番号11(TCR α鎖)の全部又は一部に対応し、配列番号29、31及び33は、配列番号11と比較した場合、少なくとも1つの置換を有する。好ましくは、天然のSer116、Ser117、Gly118及びThr119の1つ以上が置換される。同様に、置換されたβ鎖アミノ酸配列である配列番号30、32及び34は、天然の置換されていない配列番号12(TCR β鎖)の全部又は一部に対応し、配列番号30、32及び34は、配列番号12と比較した場合、少なくとも1つの置換を有する。好ましくは、天然のArg115、Thr116、Gly117及びPro118の1つ以上が置換される。
【0025】
特に、本発明は、(i)配列番号29であって、Xaa4がSer、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa5がSer、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa6がGly、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;かつXaa7がThr、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであるもの、及び/又は(ii)配列番号30であって、Xaa4がArg、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa5がThr、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa6がGly、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;かつXaa7がPro、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであるもの、を含むTCRの機能的変異体を提供する。配列番号29は、配列番号29においてSer4、Ser5、Gly6及びThr7の1つ以上が置換されていることを除いて、一般に、天然の置換されていない配列番号11の113〜123位に相当する。好ましくは、機能的変異体は、(a)配列番号29であって、Xaa4がAlaであり、Xaa5がSerであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrであるもの、又は(b)配列番号29であって、Xaa4がSerであり、Xaa5がAlaであり、Xaa6がGlyであり、かつXaa7がThrであるものを含む。いくつかの実施態様において、配列番号29は野生型CDR3αである配列番号5を含んでよいが、好ましくは、配列番号29は配列番号5を含まない。配列番号30は、配列番号30においてArg4、Thr5、Gly6及びPro7の1つ以上が置換されていることを除いて、一般に、天然の置換されていない配列番号12の112〜126位に相当する。いくつかの実施態様において、配列番号30は野生型CDR3βである配列番号8を含んでよいが、好ましくは、配列番号30は配列番号8を含まない。
【0026】
本発明はまた、(i)配列番号31であって、Xaa116がSer、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa117がSer、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa118がGly、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;かつXaa119がThr、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであるもの;及び/又は(ii)配列番号32であって、Xaa115がArg、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa116がThr、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa117がGly、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;かつXaa118がPro、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであるもの、を含むTCRの機能的変異体を提供する。配列番号31は、配列番号31においてSer116、Ser117、Gly118及びThr119の1つ以上の1つ以上が置換されていることを除いて、一般に、天然の置換されていない配列番号11の1〜134位に相当する。好ましくは、機能的変異体は、(a)配列番号31であって、Xaa116がAlaであり、Xaa117がSerであり、Xaa118がGlyであり、かつXaa119がThrであるもの、又は(b)配列番号31であって、Xaa116がSerであり、Xaa117がAlaであり、Xaa118がGlyであり、かつXaa119がThrであるものを含む。いくつかの実施態様において、配列番号31は野生型CDR3αである配列番号5を含んでよいが、好ましくは、配列番号31は配列番号5を含まない。配列番号32は、配列番号32においてArg115、Thr116、Gly117及びPro118の1つ以上の1つ以上が置換されていることを除いて、一般に、天然の置換されていない配列番号12の1〜137位に相当する。いくつかの実施態様において、配列番号32は野生型CDR3βである配列番号8を含んでよいが、好ましくは、配列番号32は配列番号8を含まない。
【0027】
本発明はまた、(i)配列番号33であって、Xaa116がSer、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa117がSer、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa118がGly、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;かつXaa119がThr、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであるもの;及び/又は(ii)配列番号34であって、Xaa115がArg、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa116がThr、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;Xaa117がGly、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであり;かつXaa118がPro、Ala、Leu、Ile、Val若しくはMetであるもの、を含むTCRの機能的変異体を提供する。配列番号33は、配列番号33においてSer116、Ser117、Gly118及びThr119の1つ以上の1つ以上が置換されていることを除いて、一般に、天然の置換されていない配列番号11の1〜275位に相当する。好ましくは、機能的変異体は、(a)配列番号33であって、Xaa116がAlaであり、Xaa117がSerであり、Xaa118がGlyであり、かつXaa119がThrであるもの、又は(b)配列番号33であって、Xaa116がSerであり、Xaa117がAlaであり、Xaa118がGlyであり、かつXaa119がThrであるものを含む。いくつかの実施態様において、配列番号33は野生型CDR3αである配列番号5を含んでよいが、好ましくは、配列番号33は配列番号5を含まない。配列番号34は、配列番号34においてArg115、Thr116、Gly117及びPro118の1つ以上の1つ以上が置換されていることを除いて、一般に、天然の置換されていない配列番号12の1〜313位に相当する。いくつかの実施態様において、配列番号34は野生型CDR3βである配列番号8を含んでよいが、好ましくは、配列番号34は配列番号8を含まない。
【0028】
本発明のTCRと同様に、本明細書に記載の機能的変異体は、2つのポリペプチド鎖であって、そのそれぞれがTCRのCDR1、CDR2及びCDR3を含む可変領域を含む、鎖を含む。好ましくは、第一のポリペプチド鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR1(α鎖のCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR2(α鎖のCDR2)、及び配列番号29のアミノ酸配列を含む置換されたCDR3(α鎖の置換されたCDR3)を含み、かつ第二のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1(β鎖のCDR1)、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2(β鎖のCDR2)、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3(β鎖のCDR3)を含む。別の実施態様において、第一のポリペプチド鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR1(α鎖のCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR2(α鎖のCDR2)、及び配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR3(α鎖のCDR3)を含み、かつ第二のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1(β鎖のCDR1)、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2(β鎖のCDR2)、及び配列番号30のアミノ酸配列を含む置換されたCDR3(β鎖の置換されたCDR3)を含む。この点について、本発明のTCRの機能的変異体は、配列番号3〜5;配列番号3〜4及び29;配列番号6〜8;並びに配列番号6〜7及び30、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、TCRの機能的変異体は、配列番号3〜4、29及び6〜8;配列番号3〜7及び30;又は配列番号3〜4、29、6〜7及び30のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、TCRの機能的変異体は、配列番号3〜4、29及び6〜8のアミノ酸配列を含む。
【0029】
代替的又は追加的に、TCRの機能的変異体は、上記CDRを含むTCRの可変領域の置換されたアミノ酸配列を含み得る。この点について、TCRは、配列番号31の置換されたアミノ酸配列(α鎖の置換された可変領域)、10(β鎖の可変領域)、配列番号31及び10の両方、配列番号32の置換されたアミノ酸配列(β鎖の置換された可変領域)、9(α鎖の可変領域)、配列番号9及び32の両方、又は配列番号31及び32の両方を含み得る。好ましくは、本発明のTCRの機能的変異体は、配列番号31及び10、又は配列番号32及び9のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、本発明のTCRの機能的変異体は、配列番号31及び10のアミノ酸配列を含む。
【0030】
代替的又は追加的に、TCRの機能的変異体は、TCRの置換されたα鎖、及びTCRのβ鎖を含み得る。本発明のTCRのα鎖及びβ鎖はそれぞれ、任意のアミノ酸配列を独立して含み得る。好ましくは、置換されたα鎖は、上記α鎖の置換された可変領域を含む。この点について、本発明のTCRの置換されたα鎖は、配列番号33のアミノ酸配列を含み得る。このタイプの本発明の置換されたα鎖は、TCRの任意のβ鎖とペアとなり得る。好ましくは、本発明のTCRのβ鎖は、上記β鎖の可変領域を含む。この点について、本発明のTCRは、配列番号12のアミノ酸配列、又は置換されたアミノ酸配列である配列番号34を含み得る。このタイプの本発明の置換されたβ鎖は、TCRの任意のα鎖とペアとなり得る。この点について、本発明のTCRは、配列番号11又は33のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明のTCRの機能的変異体は、配列番号11、12、33、34、配列番号33及び34の両方;配列番号11及び34の両方;又は配列番号12及び33の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRの機能的変異体は、配列番号11及び34、又は配列番号12及び33のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、TCRの機能的変異体は、配列番号12及び33のアミノ酸配列を含む。
【0031】
本発明の一実施態様において、TCR(又はその機能的変異体)は、ヒト定常領域を含んでよい。この点について、TCR(又はその機能的変異体)は、配列番号23若しくは35(ヒトα鎖定常領域)、配列番号24若しくは36(ヒトβ鎖定常領域)、配列番号23及び24の両方、又は配列番号35及び36の両方を含むヒト定常領域を含み得る。好ましくは、TCR(又はその機能的変異体)は、配列番号23及び24の両方を含む。
【0032】
本発明の別の実施態様において、TCR(又はその機能的変異体)は、ヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体)を含み得る。この点について、TCR(又はその機能的変異体)は、配列番号25(マウスα鎖定常領域)、配列番号26(マウスβ鎖定常領域)、又は配列番号25及び26の両方を含むマウス定常領域を含み得る。好ましくは、TCR(又はその機能的変異体)は、配列番号25及び26の両方を含む。
【0033】
本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、上記CDRのいずれかを含み得る。この点について、本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、配列番号3〜5;配列番号13〜15;配列番号16〜18;配列番号3〜4及び29;配列番号6〜8;並びに配列番号6〜7及び30、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、配列番号3〜8;配列番号13〜18;配列番号3〜4、29及び6〜8;配列番号3〜7及び30;又は配列番号3〜4、29、6〜7及び30のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、ヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分は、配列番号3〜4、29及び6〜8、又は配列番号3〜8のアミノ酸配列を含む。
【0034】
代替的又は追加的に、ヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、上記可変領域のいずれかを含み得る。この点について、本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、配列番号31の置換されたアミノ酸配列(α鎖の置換された可変領域)、配列番号10若しくは20(β鎖の可変領域)、配列番号32の置換されたアミノ酸配列(β鎖の置換された可変領域)、配列番号9若しくは19(α鎖の可変領域)、配列番号9及び32の両方、配列番号31及び32の両方、配列番号31及び10の両方、配列番号9及び10の両方、又は配列番号19及び20の両方を含み得る。好ましくは、本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、配列番号31及び10、配列番号9及び10、又は配列番号32及び9のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、本発明のTCRの機能的変異体又は機能的部分は、配列番号31及び10、又は配列番号9及び10のアミノ酸配列を含む。
【0035】
代替的又は追加的に、ヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、TCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)のα鎖、及びTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)のβ鎖を含み得る。本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)のα鎖及びβ鎖はそれぞれ、任意のアミノ酸配列を独立して含み得る。好ましくは、α鎖は、上記α鎖の可変領域を含む。この点について、本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、配列番号27のアミノ酸配列を含み得る。このタイプの本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、TCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)の任意のβ鎖とペアとなり得る。好ましくは、本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)のβ鎖は、上記β鎖の可変領域を含む。この点について、本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、配列番号28のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明のヒト/マウスキメラTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)は、配列番号27若しくは28、又は配列番号27及び28の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号27及び28のアミノ酸配列を含む。
【0036】
本発明はまた、本明細書に記載のTCR又は機能的変異体のいずれかの機能的部分を含むポリペプチドを提供する。本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」は、オリゴペプチドを含み、1以上のペプチド結合により結合されたアミノ酸の単一鎖をいう。
【0037】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分は、該機能的部分がMAGE-A3及び/又はMAGE-A6と特異的に結合するならば、TCR(又はその機能的変異体)(機能的部分はその一部である)の連続アミノ酸を含む任意の部分であり得る。用語「機能的部分(functional portion)」とは、TCR(又はその機能的変異体)に関して用いられる場合、本発明のTCR(又はその機能的変異体)の任意の部分又は断片であって、その部分又は断片がTCR(又はその機能的変異体)(その部分又は断片はその一部である)(親TCR又はその親機能的変異体)の生物学的活性を保持するものをいう。機能的部分は、例えば、親TCR(又はその機能的変異体)と類似の程度に、同程度に、又はより高い程度に、MAGE-A3(例えば、HLA-DPβ1
*04依存性の様式で)若しくはMAGE-A6と特異的に結合する能力、又は癌を検出、治療若しくは予防する能力を保持する、TCR(又はその機能的変異体)の部分を包含する。親TCR(又はその機能的変異体)に関連して、機能的部分は、例えば、親TCR(又はその機能的変異体)の約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%又はそれ以上を含み得る。
【0038】
機能的部分は、該部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端又は両端に、更なるアミノ酸であって、親TCR又はその機能的変異体のアミノ酸配列には見られないものを含み得る。望ましくは、更なるアミノ酸は、機能的部分の生物学的機能(例えば、MAGE-A3及び/若しくはMAGE-A6と特異的に結合する;並びに/又は癌を検出、癌を治療若しくは予防する能力を有するなど)を妨害しない。さらに望ましくは、更なるアミノ酸は、親TCR又はその機能的変異体の生物学的活性と比較して、その生物学的活性を増強する。
【0039】
ポリペプチドは、本発明のTCR又はその機能的変異体のα及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分、例えば、本発明のTCR又はその機能的変異体のα鎖及び/又はβ鎖の可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3の1つ以上(one of more)を含む機能的部分などを含み得る。この点について、ポリペプチドは、配列番号3若しくは13(α鎖のCDR1)、4若しくは14(α鎖のCDR2)、5、15若しくは29(α鎖のCDR3)、6若しくは16(β鎖のCDR1)、7若しくは17(β鎖のCDR2)、8、18若しくは30(β鎖のCDR3)、又はそれらの組み合わせのアミノ酸配列を含む機能的部分を含み得る。好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号3〜5;3〜4及び29;6〜8;6〜7及び30;13〜15;16〜18;配列番号3〜8の全て;配列番号13〜18の全て;配列番号3〜4、29及び6〜8の全て;配列番号3〜7及び30の全て;又は配列番号3〜4、29、6〜7及び30の全てを含む機能的部分を含む。より好ましくは、ポリペプチドは、配列番号3〜8の全て、又は配列番号3〜4、29及び6〜8の全てのアミノ酸配列を含む機能的部分を含む。
【0040】
代替的又は追加的に、本発明のポリペプチドは、例えば、上記CDR領域の組み合わせを含む本発明のTCR又はその機能的変異体の可変領域を含み得る。この点について、ポリペプチドは、配列番号9、19若しくは31(α鎖の可変領域)、配列番号10、20若しくは32(β鎖の可変領域)、配列番号9及び10の両方、配列番号19及び20の両方;配列番号31及び32の両方;配列番号9及び32の両方;又は配列番号10及び31の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号9及び10の両方、又は配列番号10及び31の両方のアミノ酸配列を含む。
【0041】
代替的又は追加的に、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCR又はその機能的変異体の1つのα又はβ鎖の全長を含み得る。この点について、本発明のポリペプチドは、配列番号11、12、21、22、27、28、33又は34のアミノ酸配列を含み得る。或いは、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCR又はその機能的変異体のα及びβ鎖を含み得る。例えば、本発明のポリペプチドは、配列番号11及び12の両方、配列番号21及び22の両方、配列番号33及び34の両方、配列番号11及び34の両方、配列番号12及び33の両方、又は配列番号27及び28の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号11及び12の両方、配列番号33及び12の両方、又は配列番号27及び28の両方のアミノ酸配列を含む。
【0042】
本発明はさらに、本明細書に記載のポリペプチドの少なくとも1つを含むタンパク質を提供する。「タンパク質」とは、1つ以上のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。
【0043】
一実施態様において、本発明のタンパク質は、配列番号3〜5、配列番号13〜15、又は配列番号3〜4及び29のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、並びに配列番号6〜8、配列番号16〜18、又は配列番号6〜7及び30のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。代替的又は追加的に、本発明のタンパク質は、配列番号9、19又は31のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号10、20又は32のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。本発明のタンパク質は、例えば、配列番号11、21、27又は33のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号12、22、28又は34のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。この場合、本発明のタンパク質はTCRであり得る。或いは、例えば、タンパク質が配列番号11、21、27若しくは33、及び配列番号12、22、28若しくは34を含む単一のポリペプチド鎖を含むか、又はタンパク質の第一及び/若しくは第二のポリペプチド鎖が他のアミノ酸配列(例えば、免疫グロブリンをコードするアミノ酸配列又はその部分)をさらに含む場合には、本発明のタンパク質は融合タンパク質であり得る。この点について、本発明はまた、本明細書に記載の本発明のポリペプチドの少なくとも1つを、少なくとも1つの他のポリペプチドとともに含む融合タンパク質を提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の別個(separate)のポリペプチドとして存在し得、或いは本明細書に記載の本発明のポリペプチドの1つとインフレーム(タンデムに)で発現するポリペプチドとして存在し得る。他のポリペプチドは、限定されないが、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子(例えば、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dなど)を含む、任意のペプチド性若しくはタンパク質性分子、又はその部分をコードし得る。
【0044】
融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの1以上のコピー、及び/又は他のポリペプチドの1以上のコピーを含み得る。例えば、融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの及び/又は他のポリペプチドの1、2、3、4、5又はそれ以上のコピーを含み得る。融合タンパク質を作製するのに適した方法は当分野で公知であり、例えば、組換え方法が含まれる。例えば、Choi et al., Mol. Biotechnol. 31:193-202(2005)を参照。
【0045】
本発明のいくつかの実施態様において、本発明のTCR(並びにその機能的部分及び機能的変異体)、ポリペプチド及びタンパク質は、α鎖及びβ鎖を連結するリンカーペプチドを含む単一のタンパク質として発現してよい。この点について、配列番号11、21、27又は33、及び配列番号12、22、28又は34を含む、本発明のTCR(並びにその機能的変異体及び機能的部分)、ポリペプチド及びタンパク質は、リンカーペプチドをさらに含んでよい。リンカーペプチドは、宿主細胞における、組換えTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド及び/又はタンパク質の発現を有利に促進してよい。リンカーペプチドを含む構築物の宿主細胞による発現に際し、リンカーペプチドを切断し、分離したα及びβ鎖をもたらしてよい。
【0046】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載の本発明のポリペプチドの少なくとも1つを含む組換え抗体であり得る。本明細書で使用する場合、「組換え抗体」とは、本発明のポリペプチドの少なくとも1つ、及び抗体のポリペプチド鎖又はその部分を含む組換え(例えば、遺伝子操作された)タンパク質をいう。抗体のポリペプチド又はその部分は、重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変若しくは定常領域、一本鎖可変断片(scFv)、又は抗体のFc、Fab若しくはF(ab)
2’断片などであり得る。抗体のポリペプチド鎖又はその部分は、組換え抗体の別個のポリペプチドとして存在し得る。或いは、抗体のポリペプチド鎖又はその部分は、本発明のポリペプチドとインフレーム(タンデムに)で発現するポリペプチドとして存在し得る。抗体のポリペプチド又はその部分は、任意の抗体又は任意の抗体断片(本明細書に記載の抗体及び抗体断片のいずれかを含む)のポリペプチドであり得る。
【0047】
TCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク質は、TCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク質の他の構成要素(例えば、他のアミノ酸)がTCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性を物質的に変化しないように、実質的に、本明細書に記載の特定のアミノ酸配列(単数又は複数)からなり得る。この点について、本発明のTCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク質は、例えば、実質的に、配列番号11、12、21、22、27、28、33及び34、配列番号11及び12の両方、配列番号21及び22の両方、配列番号27及び28の両方、配列番号33及び34の両方、配列番号11及び34の両方、又は配列番号12及び33の両方のアミノ酸配列からなり得る。また、例えば、本発明のTCR(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド又はタンパク質は、実質的に、配列番号9、10、19、20、31、32、配列番号9及び10の両方、配列番号19及び20の両方、配列番号31及び32の両方、配列番号9及び32の両方、配列番号10及び31の両方のアミノ酸配列からなり得る。さらに、本発明のTCR(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド又はタンパク質は、実質的に、配列番号3若しくは13(α鎖のCDR1)、配列番号4若しくは14(α鎖のCDR2)、配列番号5、15若しくは29(α鎖のCDR3)、配列番号6若しくは16(β鎖のCDR1)、配列番号7若しくは17(β鎖のCDR2)、配列番号8、18若しくは30(β鎖のCDR3)、又はそれらの任意の組み合わせ、例えば、配列番号3〜5;6〜8;3〜8;13〜15;16〜18;13〜18;3〜4及び29;6〜7及び30;3〜4、29及び6〜8;3〜7及び30;又は3〜4、29、6〜7及び30などのアミノ酸配列からなり得る。
【0048】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的変異体を含む)は、TCR、ポリペプチド又はタンパク質(又はその機能的変異体)がそれらの生物学的活性(例えば、MAGE-A3及び/若しくはMAGE-A6と特異的に結合する能力;哺乳動物において癌を検出する能力;又は哺乳動物において癌を治療若しくは予防する能力など)を保持するならば、任意の長さのものであり得、すなわち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上のアミノ酸長など、約50〜約5000のアミノ酸長の範囲であり得る。この点について、本発明のポリペプチドはまた、オリゴペプチドも含む。
【0049】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的変異体を含む)は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は、当分野で公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0050】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化(例えばジスルフィド架橋を介して)、又は酸付加塩に変換され、且つ/或いは任意選択で二量体化若しくは重合化、又はコンジュゲート化され得る。
【0051】
本発明のTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質(その機能的変異体を含む)は、当分野で公知の方法により得ることができる。ポリペプチド及びタンパク質をde novo合成する適した方法は、例えば以下の参考文献に記載されている:Chan et al.,
Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis, Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2005;
Peptide and Protein Drug Analysis, ed. Reid, R., Marcel Dekker, Inc., 2000;
Epitope Mapping, ed. Westwoood et al., Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2000;及び米国特許第5,449,752号。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え方法を用いて、本明細書に記載の核酸を使用して組換え産生され得る。例えば、Sambrook et al.,
Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3
rd ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY 2001;及びAusubel et al.,
Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, NY, 1994を参照。さらに、本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的変異体を含む)のいくつかは、植物、細菌、昆虫、哺乳動物(例えば、ラット、ヒトなど)などの供給源から単離及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は当分野で周知である。或いは、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質(その機能的変異体を含む)は、Synpep(Dublin, CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg, MD)及びMultiple Peptide Systems(San Diego, CA)などの企業によって商業的に合成され得る。これに関して、本発明のTCR(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド及びタンパク質は、合成、組換え、単離及び/又は精製され得る。
【0052】
本発明の範囲内には、本発明のTCR、ポリペプチド若しくはタンパク質(その機能的変異体のいずれかを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分のいずれかを含むコンジュゲート(例えば、バイオコンジュゲート)が含まれる。コンジュゲート、及び通常のコンジュゲートの合成方法は、当分野で公知である(例えば、Hudecz, F., Methods Mol. Biol. 298:209-223 (2005)及びKirin et al., Inorg Chem. 44(15):5405-5415 (2005) を参照)。
【0053】
本明細書で使用する場合、「核酸」とは、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」を含み、一般にDNA又はRNAの重合体を意味し、これは一本鎖の又は二本鎖の、合成された又は天然の供給源から得た(例えば、単離及び/又は精製された)ものであり得、天然、非天然又は変更された(altered)ヌクレオチドを含み得、修飾されていないオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見いだされるホスホジエステル結合の代わりに、天然、非天然又は変更されたヌクレオチド間結合(例えば、ホスホロアミデート(phosphoroamidate)結合又はホスホロチオエート結合など)を含み得る。一般に、核酸は、挿入、欠失、逆位及び/又は置換を何れも含まないことが好ましい。しかし、本明細書で論じるように、ある場合には、核酸が1つ以上の挿入、欠失、逆位及び/又は置換を含むことが適切であるかもしれない。
【0054】
好ましくは、本発明の核酸は組換え体である。本明細書で使用する場合、用語「組換え体(recombinant)」とは、(i)天然若しくは合成の核酸セグメントを、生きた細胞中で複製できる核酸分子と連結することにより、生きた細胞の外側で構築された分子、又は(ii)上記(i)に記載した分子の複製から生じる分子をいう。本明細書の目的のために、複製は、in vitro複製又はin vivo複製であり得る。
【0055】
核酸は、当分野で公知の手順を使用して、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Sambrook et al.(上記)及びAusubel et al.(上記)を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増加させるように若しくはハイブリダイゼーションの際に形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計された多様な修飾ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して、化学的に合成され得る。核酸を生成するために使用され得る修飾ヌクレオチドの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン(beta-D-galactosylqueosine)、イノシン、N
6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N
6-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N
6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル及び2,6-ジアミノプリン。或いは、本発明の核酸の1つ以上は、Macromolecular Resources(Fort Collins, CO)及びSynthegen(Houston, TX)などの企業から購入できる。
【0056】
核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、又はその機能的な機能的変異体のいずれかをコードする、任意のヌクレオチド配列を含み得る。例えば、核酸は、配列番号37〜44のヌクレオチド配列のいずれか1つ以上を含むか、該配列からなるか、又は実質的に該配列からなり得る。
【0057】
本発明はまた、本明細書に記載のいずれかの核酸のヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載のいずれかの核酸のヌクレオチド配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、核酸も提供する。
【0058】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に強い量でターゲット配列(本明細書に記載のいずれかの核酸のヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件には、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又は数個の散らばったミスマッチのみを含むポリヌクレオチドを、ヌクレオチド配列にマッチした数個の小領域(例えば、3〜10塩基)を偶然有するランダム配列から識別し得る条件が含まれる。かかる相補的な小領域は、14〜17又はそれ以上の塩基の全長相補体よりも容易に融解され、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションにより、それらを容易に識別できる。比較的高ストリンジェンシーの条件には、例えば、低塩及び/又は高温条件(例えば、約0.02〜0.1 MのNaCl又は等価物、約50〜70℃の温度により提供される)が含まれ得る。かかる高ストリンジェンシー条件は、存在したとしても、ヌクレオチド配列とテンプレート鎖又はターゲット鎖との間のミスマッチをほとんど許容せず、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のいずれかの発現を検出するのに特に適している。条件は、増加量のホルムアミドの添加によって、よりストリンジェントになり得ることが一般に理解される。
【0059】
本発明はまた、本明細書に記載の核酸のいずれかと少なくとも約70%又はそれ以上、例えば、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。
【0060】
本発明の核酸は、組換え発現ベクター中に組み込まれ得る。この点について、本発明は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書の目的のために、用語「組換え発現ベクター」とは、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現を可能にする遺伝子改変オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド構築物を意味し、この場合、構築物は、mRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ベクターは、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現させるのに十分な条件下で細胞と接触させられる。本発明のベクターは、全体としては天然に存在するものではない。しかし、ベクターの一部は天然に存在するものであり得る。本発明の組換え発現ベクターは、DNA及びRNA(一本鎖又は二本鎖であり得、合成されるか、又は一部を天然供給源から得ることができ、天然、非天然又は変更されたヌクレオチドを含み得る)を含む(これらに限定されない)、任意のタイプのヌクレオチドを含み得る。組換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合若しくは天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方のタイプの結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しない又は変更されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写も複製も妨害しない。
【0061】
本発明の組換え発現ベクターは、任意の適した組換え発現ベクターであり得、任意の適した宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするために使用され得る。適したベクターとしては、増殖(propagation)及び増大(expansion)のため、若しくは発現のため、又はそれら両方のために設計されたベクター(例えば、プラスミド及びウイルス)が挙げられる。ベクターは、以下からなる群から選択され得る:pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, CA)、pETシリーズ(Novagen, Madison, WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)及びpEXシリーズ(Clontech, Palo Alto, CA)。バクテリオファージベクター(例えば、λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149)もまた使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは、組換え発現ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター)である。
【0062】
本発明の組換え発現ベクターは、例えば、Sambrook et al.(上記)及びAusubel et al.(上記)に記載された標準的な組換えDNA技術を使用して調製できる。環状又は線状の発現ベクターの構築物は、原核生物又は真核生物の宿主細胞において機能的な複製系を含むように調製され得る。複製系は、例えば、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルスなどに由来し得る。
【0063】
望ましくは、組換え発現ベクターは、必要に応じて、そのベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞タイプ(例えば、細菌、真菌、植物又は動物)に特異的な調節配列(例えば、転写及び翻訳の開始及び終止コドンなど)を含む。
【0064】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子としては、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質、重金属などに対する耐性)、栄養要求性宿主細胞における原栄養を提供する補完などが挙げられる。本発明の発現ベクターに適したマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0065】
組換え発現ベクターは、TCR、ポリペプチド若しくはタンパク質(その機能的変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列、又はTCR、ポリペプチド若しくはタンパク質(その機能的変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列と相補的であるか若しくはそれにハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、天然又は非天然のプロモーターを含み得る。プロモーターの選択(例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的及び発生特異的)は、当業者の技術範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターとの組み合わせ(combining)もまた、当業者の技術範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター又はウイルスプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、及びマウス幹細胞ウイルスの長い末端反復配列中に見出されるプロモーター)であり得る。
【0066】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定な発現のため、又はその両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現又は誘導性発現のために製造され得る。さらに、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように製造され得る。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「自殺遺伝子」とは、その自殺遺伝子を発現する細胞を死に至らしめる遺伝子をいう。自殺遺伝子は、その遺伝子が発現される細胞に対し薬剤(例えば、薬物)に対する感受性を付与し、細胞がその薬剤と接触したとき又はその薬剤に曝露されたときに細胞を死に至らしめる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は当分野で公知であり(例えば、
Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews, Springer, Caroline J. (Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research, Sutton, Surrey, UK), Humana Press, 2004を参照)、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ(daminase)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0068】
本発明の別の実施態様はさらに、本明細書に記載の組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」とは、本発明の組換え発現ベクターを含み得る任意のタイプの細胞をいう。宿主細胞は、真核生物細胞(例えば、植物、動物、真菌又は藻類)であり得、或いは原核生物細胞(例えば、細菌又は原生生物)であり得る。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞(すなわち、ヒトなどの生物から直接単離されたもの)であり得る。宿主細胞は、接着細胞又は浮遊細胞(すなわち、懸濁物中で増殖する細胞)であり得る。適した宿主細胞は当分野で公知であり、例えば、DH5α E. coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞などが挙げられる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は、好ましくは、原核生物細胞(例えば、DH5α細胞など)である。組換えTCR、ポリペプチド又はタンパク質を産生する目的のために、宿主細胞は好ましくは哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。宿主細胞は任意の細胞タイプのものであり得、任意の組織タイプに由来し得、任意の発生段階のものであり得るが、宿主細胞は、好ましくは、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PMBC)である。より好ましくは、宿主細胞はT細胞である。
【0069】
本明細書の目的のために、T細胞は、例えば、培養T細胞(例えば初代T細胞)、又は培養T細胞株(例えば、Jurkat、SupT1など)由来のT細胞、又は哺乳動物から得られたT細胞など、任意のT細胞であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、多数の供給源(血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又は他の組織若しくは体液を含むが、これらに限定されない)から得ることができる。T細胞はまた、濃縮(enriched)又は精製され得る。好ましくは、T細胞はヒトT細胞である。より好ましくは、T細胞は、ヒトから単離されたT細胞である。T細胞は、任意のタイプのT細胞であり得、任意の発生段階のものであり得、これには、CD4
+/CD8
+ダブルポジティブT細胞、CD4
+ヘルパーT細胞(例えば、Th
1及びTh
2細胞)、CD4+ T細胞、CD8
+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞)、ナイーブT細胞などが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明はまた、本明細書に記載の少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞集団も提供する。細胞集団は、少なくとも1つの他の細胞(例えば、組換え発現ベクターをいずれも含まない宿主細胞(例えばT細胞)、又はT細胞以外の細胞(例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞など))に加えて、記載の組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む、不均質な集団であり得る。或いは、細胞集団は、実質的に均質な集団であり得、この場合、該集団は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例えば、実質的に該宿主細胞からなる)。集団はまた、細胞のクローン集団でもあり得、この場合、集団の全ての細胞は、組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであり、その結果、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む。本発明の一実施態様において、細胞集団は、本明細書に記載されるような組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0071】
本発明はさらに、本明細書に記載のTCR(又はその機能的変異体)のいずれかの機能的部分と特異的に結合する、抗体又はその抗原結合部分を提供する。好ましくは、機能的部分は癌抗原と特異的に結合し、例えば、機能的部分は、配列番号3若しくは13(α鎖のCDR1)、4若しくは14(α鎖のCDR2)、5、15若しくは29(α鎖のCDR3)、6若しくは16(β鎖のCDR1)、7若しくは17(β鎖のCDR2)、8、18若しくは30(β鎖のCDR3)、配列番号9、19若しくは31(α鎖の可変領域)、配列番号10、20若しくは32(β鎖の可変領域)、又はそれらの組み合わせ(例えば、3〜5;6〜8;3〜8;13〜15;16〜18;13〜18;3〜4及び29;6〜7及び30;3〜4、29及び6〜8;又は3〜7及び30;3〜4、29、6〜7及び30)のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、機能的部分は、配列番号3〜8、又は配列番号3〜4、29及び6〜8のアミノ酸配列を含む。好ましい実施態様において、抗体又はその抗原結合部分は、エピトープと結合し、これは6つのCDR(α鎖のCDR1〜3、及びβ鎖のCDR1〜3)全てにより形成される。抗体は、当分野で公知の任意のタイプの免疫グロブリンであり得る。例えば、抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMなど)のものであり得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然に存在する抗体、例えば、哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒトなど)から単離及び/又は精製された抗体であり得る。或いは、抗体は、遺伝子操作された抗体、例えば、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。抗体は、モノマー又はポリマー形態であり得る。また、抗体は、本発明のTCR(又はその機能的変異体)の機能的部分に対し、任意のレベルの親和性又は結合活性を有し得る。望ましくは、抗体は、他のペプチド又はタンパク質と最小限の交差反応性であるように、本発明のTCR(又はその機能的変異体)の機能的部分に対し特異的である。
【0072】
本発明のTCRの任意の機能的部分又は機能的変異体と結合する能力について抗体を試験する方法は、当分野で公知であり、任意の抗体-抗原結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降及び競合阻害アッセイなどを含む(例えば、Janeway et al.(下記)及び米国特許出願公開公報第2002/0197266 A1号を参照)。
【0073】
抗体を製造するのに適した方法は、当分野で公知である。例えば、標準的なハイブリドーマ法は、例えば、Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol., 5, 511-519 (1976), Harlow and Lane (eds.), Antibodies:A Laboratory Manual, CSH Press (1988)、及びC.A. Janeway et al. (eds.), Immunobiology, 5
th Ed., Garland Publishing, New York, NY (2001))に記載されている。或いは、他の方法、例えば、EBV-ハイブリドーマ法(Haskard and Archer, J. Immunol. Methods, 74(2), 361-67 (1984)、及びRoder et al., Methods Enzymol., 121, 140-67 (1986))、及びバクテリオファージベクター発現系(例えば、Huse et al., Science, 246, 1275-81 (1989) を参照)などが当分野で公知である。さらに、非ヒト動物において抗体を産生する方法が、例えば、米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号及び同第5,714,352号、並びに米国特許出願公開公報第2002/0197266 A1号に記載されている。
【0074】
さらにファージディスプレイが、本発明の抗体を産生するために使用され得る。この点について、抗体の抗原結合可変(V)ドメインをコードするファージライブラリーが、標準的な分子生物学及び組換えDNA技術を使用して作製され得る(例えば、Sambrook et al. (eds.), Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3
rdEdition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001) を参照)。所望の特異性を有する可変領域をコードするファージが、所望の抗原への特異的結合について選択され、選択された可変ドメインを含む完全又は部分抗体が再構成される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、適した細胞株(例えば、ハイブリドーマ産生に使用されるミエローマ細胞)中に導入され、その結果、モノクローナル抗体の特徴を有する抗体がこの細胞によって分泌される(例えば、Janeway et al.(上記)、Huse et al.(上記)及び米国特許第6,265,150号を参照)。
【0075】
抗体は、特定の重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるトランスジェニックマウスにより産生され得る。かかる方法は当分野で公知であり、例えば、米国特許第5,545,806号及び同第5,569,825号、並びにJaneway et al.(上記)に記載されている。
【0076】
ヒト化抗体を産生する方法は当分野で周知であり、例えば、Janeway et al.(上記)、米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号及び同第5,693,761号、欧州特許第0239400 B1号、並びに英国特許第2188638号に詳細に記載されている。ヒト化抗体はまた、例えば、米国特許第5,639,641号及びPedersen et al., J. Mol. Biol., 235, 959-973(1994)に記載された抗体リサーフェシング(resurfacing)技術を使用して生成され得る。
【0077】
本発明はまた、本明細書に記載の抗体のいずれかの抗原結合部分を提供する。抗原結合部分は、少なくとも1つの抗原結合部位を有する任意の部分(例えば、Fab、F(ab’)
2、dsFv、sFv、ダイアボディ(diabodies)及びトリアボディ(triabodies))であり得る。
【0078】
一本鎖可変領域断片(sFv)抗体断片(これは、合成ペプチドを介して抗体軽鎖の可変(V)ドメインに連結された抗体重鎖のVドメインを含む、切断型Fab断片からなる)は、慣用的な組換えDNAテクノロジー技術を使用して生成され得る(例えば、Janeway et al.(上記)を参照)。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得る(例えば、Reiter et al., Protein Engineering, 7, 697-704(1994)を参照)。しかし、本発明の抗体断片は、これらの例示的な抗体断片タイプに限定されない。
【0079】
また、抗体又はその抗原結合部分は、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)及び元素粒子(例えば、金粒子)など)を含むように改変され得る。
【0080】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質(その機能的変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)は、単離及び/又は精製され得る。本明細書で使用する場合、用語「単離され」とは、その天然の環境から取り出されていることを意味する。本明細書で使用する場合、用語「精製され」とは、純度が増加していることを意味し、ここで、「純度」とは相対的な用語であって、必ずしも絶対的純度と解釈されない。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、60%、70%、80%、90%、95%より高くてもあり得、又は100%であり得る。
【0081】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質(その機能的変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)(これらは全て、本明細書中以下、集合的に「本発明のTCR材料」と称す)は、医薬組成物などの組成物へと製剤化され得る。この点について、本発明は、TCR、ポリペプチド、タンパク質、機能的部分、機能的変異体、核酸、発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)のいずれかと、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含む本発明の医薬組成物は、1種より多い本発明のTCR材料(例えば、ポリペプチド及び核酸)又は2種以上の異なるTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)を含み得る。或いは、医薬組成物は、他の医薬上活性な薬剤又は薬物(例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど)と組み合わせて、本発明のTCR材料を含み得る。
【0082】
好ましくは、担体は医薬上許容される担体である。医薬組成物に関して、担体は、考慮中の特定の本発明のTCR材料について従来使用される担体のいずれかであり得る。かかる医薬上許容される担体は、当業者に周知であり、公に容易に入手可能である。医薬上許容される担体は、使用条件下で有害な副作用も毒性もない担体であることが好ましい。
【0083】
担体の選択は、本発明の特定のTCR材料によって、及び本発明のTCR材料を投与するために使用される特定の方法によって、一部決定されよう。従って、本発明の医薬組成物の適した製剤は多様である。適した製剤には、経口、エアロゾル、非経口、皮下、静脈内、筋内、動脈内、髄腔内、又は腹腔内(interperitoneal)投与のためのもののいずれかが含まれてよい。本発明のTCR材料を投与するために2以上の経路が使用され得、ある場合には、特定の経路が、別の経路よりも迅速且つ有効な応答を提供し得る。
【0084】
好ましくは、本発明のTCR材料は、注射により、例えば静脈内に投与される。本発明のTCR材料が、本発明のTCR(又はその機能的変異体)を発現する宿主細胞である場合には、注射用の細胞のための医薬上許容される担体は、任意の等張性の担体、例えば、生理食塩水(水中約0.90% w/vのNaCl、水中約300 mOsm/LのNaCl、又は水1リットル当たり約9.0 gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott, Chicago, IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter, Deerfield, IL)、水中約5%のデキストロース、又は乳酸リンゲル液などを含んでよい。一実施態様において、医薬上許容される担体には、ヒト血清アルブメン(albumen)が補充される。
【0085】
本発明の一実施態様において、医薬組成物はさらに、MHCクラスI拘束性TCR、若しくはポリペプチド、タンパク質、核酸、又はMHCクラスI拘束性TCRをコードする組換え発現ベクター、又はMHCクラスI拘束性TCRを発現する宿主細胞若しくは細胞集団を含んでよい。特定の理論に拘束されるものではないが、MHCクラスI拘束性CD8+ T細胞は、MHCクラスII拘束性CD4+ T細胞の反応性を増強し、MHCクラスII拘束性CD4+ T細胞が癌を治療又は予防する能力を高めると考えられる。
【0086】
本発明の目的のために、投与される本発明のTCR材料の量又は用量(例えば、本発明のTCR材料が1以上の細胞である場合には、細胞数)は、合理的な時間枠にわたって対象又は動物において、例えば治療応答又は予防応答などをもたらすのに十分でなければならない。例えば、本発明のTCR材料の用量は、投与時点から約2時間又はそれ以上、例えば、12〜24又はそれ以上の時間の期間において、癌抗原と結合するため、又は癌を検出、治療若しくは予防するために、十分でなければならない。特定の実施態様において、この期間はさらに長くてもよい。用量は、本発明の特定のTCR材料の効力、及び動物(例えば、ヒト)の状態、並びに治療されるべき動物(例えば、ヒト)の体重によって決定されるだろう。
【0087】
投与される用量を決定するための多くのアッセイが当分野で公知である。本発明の目的のために、本発明のTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)、ポリペプチド又はタンパク質を発現するT細胞の所与の用量を哺乳動物に投与した際に、かかるT細胞によってターゲット細胞が溶解される又はIFN-γが分泌される程度を、種々の用量のT細胞をそれぞれ与えた哺乳動物のセット間で比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与されるべき出発用量を決定するために使用され得る。特定の用量の投与の際にターゲット細胞が溶解される又はIFN-γが分泌される程度は、当分野で公知の方法によってアッセイできる。
【0088】
本発明のTCR材料の用量はまた、本発明の特定のTCR材料の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度によっても決定されよう。典型的には、処方医師は、様々な因子(例えば、年齢、体重、全身健康状態、食事、性別、投与されるべき本発明のTCR材料、投与経路、及び治療されるべき状態の重篤度)を考慮して、個々の患者それぞれを治療するための本発明のTCR材料の投与量を決定するだろう。本発明のTCR材料が細胞集団である一実施態様において、注入当たり投与される細胞数は、変動してよく、例えば、約1×10
6〜約1×10
11細胞又はそれ以上などであってよい。
【0089】
当業者は、本発明のTCR材料が、本発明のTCR材料の治療効力又は予防効力を改変によって増加させるように、任意の数の方法で改変され得ることを容易に理解するであろう。例えば、本発明のTCR材料は、直接的、又は架橋を介して間接的にかのいずれかで、標的化部分(targeting moiety)にコンジュゲート化され得る。化合物(例えば、本発明のTCR材料)を標的化部分にコンジュゲート化する実務は、当分野で公知である。例えば、Wadwa et al., J. Drug Targeting 3:111(1995)及び米国特許第5,087,616号を参照。本明細書で使用する場合、用語「標的化部分」とは、細胞表面受容体を特異的に認識し、結合する任意の分子又は薬剤をいい、その結果、標的化部分によって、本発明のTCR材料のデリバリーが、受容体を表面に発現する細胞集団へと向けられる。標的化部分としては、抗体又はその断片、ペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカイン、及び任意の他の天然又は非天然リガンドであって、細胞表面受容体(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、CD28、血小板由来成長因子受容体(PDGF)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)など)と結合するものなどが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、用語「架橋(bridge)」とは、本発明のTCR材料を標的化部分と繋げる任意の薬剤又は分子をいう。架橋及び/又は標的化部分が、本発明のTCR材料と結合した場合に、本発明のTCR材料の機能(すなわち、MAGE-A3若しくはMAGE-A6と結合する能力;又は癌を検出、治療若しくは予防する能力)を妨げないことを条件として、本発明のTCR材料の機能に必要ではない、本発明のTCR材料における部位が、架橋及び/又は標的化部分を結合するための理想的部位であると当業者は理解する。
【0090】
本発明の医薬組成物、TCR(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団は、癌を治療又は予防する方法で使用され得ることが企図される。特定の理論に拘束されるものではないが、本発明のTCR(及びその機能的変異体)は、TCR(又は関連する本発明のポリペプチド若しくはタンパク質、及びその機能的変異体)が、細胞により発現された場合に、MAGE-A3又はMAGE-A6を発現する標的細胞に対して免疫応答を媒介できるように、MAGE-A3及び/又はMAGE-A6と特異的に結合すると考えられる。この点について、本発明は、哺乳動物において癌を治療又は予防する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物、TCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞集団を、哺乳動物において癌を治療又は予防するのに有効な量で、哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0091】
本発明の一実施態様において、本発明の癌を治療又は予防する方法はさらに、MHCクラスI拘束性TCR、若しくはポリペプチド、タンパク質、核酸、又はMHCクラスI拘束性TCRをコードする組換え発現ベクター、又はMHCクラスI拘束性TCRを発現する宿主細胞若しくは細胞集団を哺乳動物に共投与することを含んでよい。
【0092】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」及び「予防する」並びにそれらの派生語は、100%又は完全な治療又は予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的利益又は治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物における癌の任意のレベルの治療又は予防の任意の量を提供し得る。さらに、本発明の方法により提供される治療又は予防は、治療又は予防される疾患(例えば、癌)の1つ以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、疾患、又はその症状若しくは状態の発症を遅延させることを包含し得る。
【0093】
また、哺乳動物において癌の存在を検出する方法も提供する。該方法は、(i)本明細書に記載の本発明のTCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分のいずれかと、癌細胞を含むサンプルとを接触させ、それにより複合体を形成すること、及び該複合体を検出することを含み、ここで、該複合体の検出が、哺乳動物における癌の存在を示す。
【0094】
哺乳動物において癌を検出する本発明の方法に関して、癌細胞のサンプルは、全細胞、その溶解物又は全細胞溶解物の画分(fraction)(例えば、核若しくは細胞質画分、全タンパク質画分又は核酸画分)を含むサンプルであり得る。
【0095】
本発明の検出方法の目的のために、接触は、哺乳動物に関してin vitro又はin vivoで行うことができる。好ましくは、接触はin vitroである。
【0096】
また、複合体の検出は当分野で公知の、任意の数の方法を通して起こり得る。例えば、本明細書に記載の本発明のTCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分は、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例えば、金粒子)などの検出可能な標識で標識され得る。
【0097】
宿主細胞又は細胞集団が投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、哺乳動物に対して同種又は自己の細胞であり得る。好ましくは、細胞は、哺乳動物に対して自家性(autologous)である。
【0098】
本発明の方法に関して、癌は、以下のいずれかを含む、任意の癌であり得る:肉腫(例、滑膜肉腫、骨肉腫、子宮平滑筋肉腫(leiomyosarcoma uteri)及び胞巣状横紋筋肉腫)、リンパ腫(例、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、肝細胞癌、神経膠腫、頭部癌(例、扁平上皮細胞癌)、頸部癌(例、扁平上皮細胞癌)、急性リンパ球性癌(acute lymphocytic cancer)、白血病(例、急性骨髄性白血病及び慢性リンパ球性白血病)、骨癌、脳腫瘍、乳癌、肛門、肛門管又は肛門直腸の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部、胆嚢又は胸膜の癌、鼻、鼻腔又は中耳の癌、口腔の癌、外陰部の癌、慢性骨髄性癌(chronic myeloid cancer)、大腸癌(例、結腸癌)、食道癌、子宮頸癌、胃癌(gastric cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、下咽頭癌、喉頭癌、肝臓癌(例、肝細胞癌)、肺癌(例、非小細胞肺癌)、悪性中皮腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、網及び腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌(例、腎細胞癌)、小腸癌、軟組織癌、胃癌(stomach cancer)、精巣癌、甲状腺癌、並びに尿路上皮癌(例、尿管癌及び膀胱癌)。好ましくは、癌は、メラノーマ、乳癌、肺癌、前立腺癌、滑膜細胞肉腫、頭頸部癌、食道癌、又は卵巣癌である。
【0099】
本発明の方法で言及する哺乳動物は、任意の哺乳動物であり得る。本明細書で使用する場合、用語「哺乳動物」とは、任意の哺乳動物をいい、Rodentia目の哺乳動物(例えば、マウス及びハムスター)、及びLogomorpha目の哺乳動物(例えばウサギ)を含むが、これらに限定されない。哺乳動物は、Carnivora目(Felines(ネコ)及びCanines(イヌ)を含む)由来であることが好ましい。哺乳動物は、Artiodactyla目(Bovines(ウシ)及びSwines(ブタ)を含む)由来又はPerssodactyla目(Equines(ウマ)を含む)のものであることがより好ましい。哺乳動物は、Primates目、Ceboids若しくはSimoids(サル)のもの、又はAnthropoids目(ヒト及び類人猿)のものであることが最も好ましい。特に好ましい哺乳動物はヒトである。
【0100】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、当然ながら、その範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0101】
実施例1A
本実施例は、T細胞クローンからのTCRの単離を実証する。
【0102】
抗MAGE-A3
243-258 CD4+ エフェクタークローンR12C9及び抗MAGE-A3
243-258 Tregクローン6F9を、ペプチド(MAGE-A3
243-258)をパルスしたEBV B細胞とともに培養した。サイトカイン分泌、抑制された指標細胞(indicator cells)のパーセンテージ、FOXP3+ Treg細胞のパーセンテージ、及び非メチル化FOXP3配列のパーセンテージを測定した。非メチル化FOXP3イントロン1配列は、安定したTreg表現型に対するマーカーであると考えらえる。6F9及びR12C9クローンに関する結果を表1A及び1Bに示す。
【0103】
【表1A】
【0104】
【表1B】
【0105】
Tregクローンは、適切なペプチドによる刺激後、指標細胞の増殖を阻害し得る。表1Aに示すように、クローン6F9はTregクローンである。
【0106】
配列番号21及び22を含むTCRを抗MAGE-A3
243-258 CD4+ エフェクタークローンR12C9からクローニングした(「R12C9 TCR」)。配列番号11及び12を含むTCRを抗MAGE-A3
243-258 Tregクローン6F9からクローニングした(「6F9 TCR」)。
【0107】
実施例1B
本実施例は、実施例1の6F9 TCR又はR12C9 TCRをコードするヌクレオチド配列を形質導入したPBMCの形質導入効率を実証する。
【0108】
R12C9及び6F9のTCRα鎖及びβ鎖をコードする転写産物を、P2A自己切断ペプチドをコードする配列と連結し、MSGV1レトロウイルスベクターにクローニングした。3人の患者由来のPBMCをOKT3で刺激し、2日目に一過性のレトロウイルス上清で形質導入し、7日目にCD4+ T細胞を濃縮(enriched)した。6F9又はR12C9 TCRをそれぞれ検出する抗Vβ22又はVβ6.7で形質導入細胞を染色することによりTCR発現レベルを評価した。患者1由来のPBMCの分析により、25〜35%のT細胞に個々のTCRが形質導入されたことが示され、患者2及び3由来のPBMCでも同様の形質導入レベルが得られた。
【0109】
実施例2
本実施例は、実施例1の抗MAGE-A3
243-258 TCRをコードするヌクレオチド配列を形質導入したT細胞が、MAGE-A3の293-クラスII主要組織適合遺伝子複合体トランスアクチベーター(CIITA)トランスフェクタント、及びペプチドパルスした標的を認識することを実証する。本実施例はまた、6F9 TCRが、MAGE-A3及びMAGE-A6の293-CIITAトランスフェクタントを認識することも実証する。
【0110】
2人のヒトドナー由来のCD4+ 濃縮末梢血リンパ球(PBL)に、F5(抗MART-1)TCR、R12C9 TCR若しくは6F9 TCRを形質導入したか、又は形質導入しなかった(UT)。この細胞を、MAGE-A3
243-258(配列番号2)ペプチドをパルスした293-CIITAトランスフェクト標的細胞ともに培養した。293-CIITA細胞は、クラスII主要組織適合遺伝子複合体トランスアクチベータータンパク質をコードするヒト遺伝子であるCIITAを形質導入した293細胞である。6F9及びR12C9 TCRを形質導入した細胞を用いて得られた結果を表2及び
図10Aに示す。R12C9 TCR又は6F9 TCRを形質導入したPBLは、MAGE-A3
243-258ペプチドをパルスしたHLA-DP
*0401+ 標的細胞を認識した。MAGE-A3
243-258ペプチドのタイトレーションにより、6F9又はR12C9 TCRを形質導入したCD4
+ T細胞が、最小で0.001と0.01 mg/mlの間のMAGE-A3:
243-258ペプチドをパルスした標的に応答して、同程度のレベルのIFN-γを放出したことが示された。第3のヒトドナー由来のPBLを用いて実験を繰り返し、同様の結果を得た。
【0111】
【表2】
【0112】
293-CIITA標的細胞に、全長MAGE-A3タンパク質若しくはMAGE-A6タンパク質(1つの位置(249)のみが異なる)、又は全長MAGE-A1タンパク質若しくはMAGE-A12タンパク質をコードするDNA構築物(pCDNA3ベクター)をトランスフェクトした。形質導入していないPBL及び形質導入したPBLを、トランフェクトされた293-CIITA細胞と共培養し、インターフェロン(IFN)ガンマ分泌を測定した。結果を
図1A、1B及び10Aに示す。
【0113】
図1A、1B及び10Aに示すように、R12C9 TCR又は6F9 TCRを形質導入したT細胞は、ペプチドパルスした標的を認識したものの、6F9 TCRを形質導入したPBLが、MAGE-A3及びMAGE-A6 293-CIITAトランスフェクタントのそれぞれに対して最も高い反応性であった。R12C9 TCRではなく6F9 TCRを形質導入したCD4
+ T細胞は、MAGE-A3又はMAGE-A6をコードする遺伝子をトランスフェクトしたHLA DP
*0401
+ 293-CIITA細胞を認識し、MAGE-A1又はA12についてはしなかった。MAGEファミリーメンバーの対応する領域のアミノ酸配列を比較することにより、MAGE-A3及びMAGE-A6は、1つの位置(残基249)で異なるのみである一方、他のMAGEファミリーメンバーはMAGE-A3と2つの位置(MAGE-A12
243-258(配列番号70))又は3つの位置(MAGE-A1
243-258(配列番号71))で異なることが示された。さらに、R12C9 TCRではなく6F9 TCRを形質導入したCD4
+ T細胞は、MAGE-A3
+/HLA-DP
*0401
+ メラノーマ細胞株1359 mel-CIITAを認識し、MAGE-A3
+/HLA-DP
*0401
-メラノーマ細胞株624 mel-CIITAを認識できなかった。R12C9 TCRを形質導入したCD4
+ T細胞は、試験したメラノーマ細胞株のどちらも認識できなかった。MART-1反応性TCR DMF5を形質導入した細胞は、トランスフェクトされた293-CIITA細胞又はMAGE-A3:
243-258パルス標的細胞を認識できなかったが、HLA-A
*0201+ 及びMART-1+ 細胞株624 mel-CIITAを認識した。第3のヒトドナー由来のPBLを用いて実験を繰り返し、同様の結果を得た。6F9 TCRは、免疫活性の抑制に関与するTregクローンから得られたことから、6F9 TCRの反応性は驚きであり、予期できないものであった。これらの結果から、6F9又はR12C9を形質導入したCD4
+T細胞は、ペプチドパルスした標的細胞を認識した一方、6F9 TCRを形質導入した細胞のみが、トランスフェクトされた標的細胞、並びにMAGE-A3
+ 及びHLA-DP
*04
+腫瘍細胞を認識したことが示された。
【0114】
実施例3
本実施例は、6F9を形質導入したPBLが、HLA-DP4+ B細胞によりプロセシングされ提示されるMAGE-A3全長タンパク質に対して高い反応性を示すことを実証する。
【0115】
2人のヒトドナー由来のPBLに、6F9 TCRをコードするヌクレオチド配列を形質導入したか、又は形質導入しなかった。この細胞を、全長MAGE-A3タンパク質(配列番号1)をプロセシングし提示するHLA-DP4+ B細胞と共培養した。結果を表3及び
図10Aに示す。表3及び
図10Aに示すように、6F9を形質導入したPBLは、HLA-DP4+ B細胞によりプロセシングされ提示されるMAGE-A3全長タンパク質に対して高い反応性であった。
【0116】
【表3】
【0117】
実施例4
本実施例は、6F9 TCRを形質導入したPBLが、MAGE-A3タンパク質の内在性クラスII提示を有する腫瘍株に対して反応性であることを実証する。
【0118】
2人のヒトドナー由来のPBLに、6F9 TCR若しくはF5 TCRをコードするヌクレオチド配列を形質導入したか、又は形質導入しなかった。この細胞を、単独で培養するか(T細胞のみ)、又は624-CIITA細胞、526-CIITA細胞若しくはH1299-CIITA細胞(CIITAがトランスフェクトされた腫瘍細胞株)と共培養した。結果を表4に示す。表4に示すように、6F9 TCRを形質導入したPBLは、MAGE-A3タンパク質の内在性クラスII提示を有する腫瘍株に対して反応性であった。
【0119】
【表4】
【0120】
実施例5
本実施例は、6F9 TCRがMAGE-A3特異的であることを実証する。
【0121】
ヒトドナー由来のPBLをCD4+濃縮し、細胞数を急速に拡大した(27日目)。細胞に、F5 TCR若しくは6F9 TCRを形質導入するか、又は形質導入せず、526-CIITA細胞若しくはH1299-CIITA細胞のみ、又は抗MAGE-A3 siRNA若しくは抗MART-1 siRNAを有する526-CIITA細胞若しくはH1299-CIITA細胞と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を
図2A及び2Bに示す。
【0122】
図2A及び2Bに示すように、抗MAGE-A3 siRNAは、6F9-TCR形質導入細胞の反応性を低下させた。従って、siRNAノックダウンアッセイにより、6F9 TCRがMAGE-A3特異的であることが確認された。
【0123】
実施例6
本実施例は、6F9 TCRが、HLA-DP拘束性の様式でMAGE-A3を認識することを実証する。
【0124】
624、526、1359、H1299、1300、1764、3071、397、2630及び2984腫瘍細胞株に、CIITAを形質導入し(624-CIITA、526-CIITA、1359-CIITA、H1299-CIITA、1300-CIITA、1764-CIITA、3071-CIITA、397-CIITA、2630-CIITA及び2984-CIITA)、HLA-DP発現をフローサイトメトリーにより測定した。DP4及びMAGE-A3発現を表5Aに示す。
【0125】
【表5A】
【0126】
6F9を形質導入したPBLを、単独で培養するか(T細胞のみ)、又は3071細胞、3071-CIITA細胞、397細胞、397-CIITA細胞、2630細胞、2630-CIITA細胞、2984細胞及び2984-CIITA細胞と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を
図3に示す。
図3に示すように、6F9を形質導入したPBLは、CIITAを発現する腫瘍細胞株と反応性であった。
【0127】
624-CIITA、526-CIITA、1359-CIITA、H1299-CIITA、SK37-CIITA、1764-CIITA、3071-CIITA、397-CIITA、2630-CIITA及び2984-CIITAを含む腫瘍細胞株のパネルに対する、2人の患者PBMCから分離したCD4
+ 及びCD8
+ T細胞の反応性を測定することにより、6F9 TCRをさらに評価した。MAGE-A3及びHLA-DP
*0401を発現する5つのメラノーマ細胞株(2630-CIITA、397-CIITA、2984-CIITA、526-CIITA及び1359-CIITA)、並びに非小細胞肺癌細胞株H1299 NSCLC-CIITAは、形質導入されたCD4
+ 及びCD8
+ T細胞により認識されたが、とはいえ、CD4
+T細胞は、腫瘍標的に応答して、形質導入されたCD8
+ T細胞よりも多い量のサイトカインを分泌した。
【0128】
H1299-CIITA及び526-CIITA細胞に抗HLA-DP又は抗HLA-DR siRNAをトランスフェクトして、HLA-DP又はHLA-DR発現をノックダウンした。3071-CIITA及び526-CIITA細胞に、抗HLA-DQ siRNAをトランスフェクトして、HLA-DQ発現をノックダウンした。HLA-DP、HLA-DR又はHLA-DQのノックアウトをフローサイトメトリーにより確認した。
【0129】
ヒトドナー由来のPBLをCD4+ について濃縮し、細胞数を急速に拡大した(30日目)。この細胞に6F9 TCRを形質導入したか、又は形質導入しなかった。細胞を、単独で培養するか(T細胞のみ)、又は非処理のH1299-CIITA細胞、抗HLA-DP若しくは抗HLA-DR siRNAをトランスフェクトしたH1299-CIITA、非処理の526-CIITA細胞、若しくは抗HLA-DP若しくは抗HLA-DR siRNAをトランスフェクトした526-CIITAと共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を
図4に示す。
図4に示すように、抗HLA-DP siRNAは、6F9-TCRを形質導入した細胞の反応性を低下させた。
【0130】
抗体を用いた更なる研究により、6F9 TCRが、HLAクラスII拘束性の様式でMAGE-A3を認識することを確認した。6F9 TCRを形質導入したPBLを、表5Bに記載の細胞と共培養し、表5Bに記載の抗体でブロッキングした。IFN-γを測定し、結果を表5Bに記載する。
【0131】
【表5B】
【0132】
表5Bに示すように、抗体ブロッキング研究により、6F9 TCRは、HLAクラスII拘束性の様式でMAGE-A3を認識し、HLA-DR拘束性の様式又はHLAクラスI拘束性の様式ではないことが示された。
【0133】
実施例7
本実施例は、6F9 TCRのα鎖の116位又は117位でのアラニン置換が6F9 TCRの反応性を増加させることを実証する。
【0134】
8つの異なる置換型(substituted)TCRであって、それぞれ6F9 TCRのCDR3領域の異なる位置に1つのアラニン置換を有するものを表6に記載するように調製した。
【0135】
【表6】
【0136】
ヒトドナー由来のPBLに、野生型(wt)6F9 TCR、若しくは表6の8つの置換型TCRそれぞれの1つを形質導入するか、又は形質導入しなかった。細胞を、単独で培養するか(T細胞のみ)、又は624-CIITA、526-CIITA、1359-CIITA、H1299-CIITA若しくは1764-CIITAと共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を
図5に記載する。
図5に示すように、a1及びa2置換型TCRは、wt 6F9 TCRと比較して、増加した反応性を実証した。
【0137】
形質導入されたCD4+ 濃縮PBLを用いた別箇実験によっても、a1及びa2置換型TCRの優れた反応性が確認された(
図6)。
図6に示すように、a1及びa2置換型TCRは、wt 6F9 TCRと比較して、およそ2倍高い抗腫瘍活性を示した。a1及びa2置換型TCRはまた、フローサイトメトリーにより測定されるように、wt 6F9 TCRと比較して良好なテトラマー(配列番号2)結合性も示した。
【0138】
実施例8
本実施例は、置換された6F9 TCRの反応性を実証する。
【0139】
8つの異なる置換型TCRであって、それぞれ6F9 TCRのα鎖のCDR3領域の異なる位置に1つのアミノ酸置換を有するものを表7に記載するように調製した。
【0140】
【表7】
【0141】
ヒトドナー由来のPBLに、野生型(wt)6F9 TCR、若しくは8つの置換型TCRそれぞれの1つを形質導入するか、又は形質導入しなかった。細胞を、単独で培養するか(T細胞のみ)、又は624-CIITA、526-CIITA、1359-CIITA、H1299-CIITA若しくは1764-CIITAと共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を
図7に記載する。
図7に示すように、a1、a2及びa1-3置換型TCRは、CIITA-腫瘍細胞株に対する反応性を実証した。
【0142】
実施例9
本実施例は、6F9 TCRの天然の定常領域をマウス(murine)定常領域と置換することにより、6F9 TCRの反応性が増加することを実証する。
【0143】
wt 6F9 TCRのα及びβ鎖の可変領域、並びにマウス定常領域を含むTCRを調製した(6F9mC TCR)(配列番号27及び28)。
【0144】
6F9mC TCRは、フローサイトメトリーにより測定されるように、wt 6F9 TCRと比較して、良好なMAGE-A3テトラマー及びVβ染色を実証した。特定の理論に拘束されるものではないが、6F9mC TCRが、TCRα及びβ鎖の対合の改善をもたらすと考えられる。
【0145】
ヒトドナー由来のPBLに、wt 6F9 TCR若しくは6F9mC TCRを形質導入するか、又は形質導入せず、これを単独で培養するか(T細胞のみ)、又は624-CIITA、1300-CIITA、526-CIITA、1359-CIITA、H1299-CIITA、397-CIITA、2630-CIITA、2984-CIITA、3071-CIITA若しくは1764-CIITA細胞と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を
図8に示す。
図8に示すように、6F9mCを形質導入した細胞は、wt 6F9 TCRを形質導入した細胞と比較して、2〜5倍高い抗腫瘍活性を示した。
【0146】
形質導入されていない細胞、6F9 TCRを形質導入した細胞、又は6F9mC TCRを形質導入した細胞をCD8又はCD4について濃縮し、単独で培養するか(T細胞のみ)、又は624-CIITA、SK37-CIITA、526-CIITA、1359-CIITA、H1299-CIITA、397-CIITA、2630-CIITA、2984-CIITA、3071-CIITA若しくは1764-CIITA細胞と共培養した。インターフェロン-ガンマ分泌を測定した。結果を
図9A及び9Bに示す。
図9A及び9Bに示すように、CD8及びCD4濃縮した6F9mC形質導入細胞は、複数の細胞株について、6F9 TCR形質導入細胞と比較して、より高い抗腫瘍活性を維持し、これにより、コレセプターとは独立した6F9mC TCRの高い親和性が示された。第2のヒトドナー由来のPBLを用いて実験を繰り返し、同様の結果を得た。野生型(Wt)6F9 TCRを形質導入したCD4+ T細胞の応答と、6F9mC TCRを形質導入した細胞の応答とを比較することにより、マウス定常領域が、評価した7つのMAGE-A3
+及びHLA-DP
*0401
+ 標的に対する、形質導入されたT細胞の反応性において2〜5倍の増強をもたらすことが示された。さらに、6F9mcを形質導入したCD8
+ T細胞の応答は、wt 6F9 TCRを形質導入した細胞で見られるものよりも2〜10倍高く増大した。6F9mcを形質導入したCD8
+ T細胞の応答は、通常、このTCRを形質導入したCD4
+ T細胞よりも低くなるが、とはいえ、いくつかの腫瘍標的に応答して、同程度のサイトカイン応答が観察された。
【0147】
実施例10
本実施例は、腫瘍刺激時に、6F9mC TCRを形質導入した細胞が、高レベルのIFN-γ及びTNF-αを産生し、高活性化された表現型を示す(4-1BB、CD25及びCD69発現の増加により測定されるように)ことを実証する。
【0148】
細胞をCD4又はCD8濃縮し、6F9mC TCRを形質導入した。形質導入された細胞を腫瘍株624-CIITA、2630-CIITA、2984-CIITA又はWhitington-CIITAと6時間共培養し、次いで細胞内IFN-γ、インターロイキン(IL)-2、又は腫瘍壊死因子(TNF)-αについて染色した。6F9mC TCRを形質導入した細胞は、腫瘍刺激時に、特異的な細胞内IFN-γ産生を示した。6F9mC TCRを形質導入した細胞は、CD4濃縮画分において、腫瘍刺激時に、検出可能なIL-2産生及び特異的な高TNF-α産生を示した。
【0149】
細胞をCD4濃縮し、6F9mC TCRを形質導入した。形質導入された細胞を腫瘍株624-CIITA、2630-CIITA、2984-CIITA又はWhitington-CIITAと一晩共培養し、次いで4-1BB、CD25及びCD69について染色した。一晩腫瘍刺激後、6F9mC TCRを形質導入した細胞の大多数は、高レベルの4-1BB(抗原特異的活性化を示す)、CD25及びCD69を発現した。
【0150】
実施例11
本実施例は、6F9 TCRが腫瘍細胞認識を媒介することを実証する。
【0151】
PBLに、野生型6F9 TCRを形質導入するか又は形質導入せず、これを単独で培養するか、又は非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株H11299、若しくはメラノーマ細胞株526 mel、624 mel若しくは1359 melと共培養した。MAGE-A3及びDP
*04発現を表8に示す。
【0152】
【表8】
【0153】
IFN-γ発現を測定した。結果を
図10Bに示す。
図10Bに示すように、6F9 TCRは腫瘍細胞認識を媒介する。
【0154】
実施例12
本実施例は、6F9及び6F9mc TCRが、MAGE-A3:
248-258ペプチドに対して高度の特異性を有することを実証する。
【0155】
6F9及び6F9mc TCRを形質導入した細胞により媒介される抗原認識の微細(fine)特異性を評価するために、HLA-DP
*0401
+標的細胞に、MAGE-A3:
243-258ペプチド又はMAGEファミリーメンバーの関連ペプチドのトランケーションをパルスした。ネガティブセレクションにより、2人の患者のPBMC(PBMC-1又はPBMC-2)から単離したCD4+ T細胞に、6F9 TCR、6F9mc TCRのいずれかを形質導入するか、又は形質導入せず、表9に示すペプチド(10 mg/ml)をパルスした293-CIITA細胞に対するそれらの応答について、OKT3刺激から10日後にアッセイした。
【0156】
形質導入されたCD4
+ PBMCの2つの培養物からの、切断型MAGE-A3ペプチドに対する応答の分析により、MAGE-A3タンパク質のアミノ酸248〜258に対応する11-merペプチドQHFVQENYLEY(配列番号54)が、MAGE-A3:
243-258ペプチドにより引き起こされる応答と同程度の応答を引き起こす最小のペプチドを表すことが示された(表9)。MAGE-A3:
243-258ペプチドは、エピトープ予測アルゴリズムを用いて、HLA-DP
*0401に対して高親和性を有することが予測され、さらに、切断型MAGE-A3ぺプチドの認識は、T細胞認識と相関するように見えた(表9)。249位のヒスチジンのチロシンへの単一置換を含むMAGE-A6:
248-258ペプチドについては有意な認識が観察されたが、MAGE-A3:
248-258ペプチドと2〜5個の差を有する遺伝子産物の、追加のMAGEファミリーメンバーに対しては最小の反応性が観察された。NCBIデータベースのBLASTサーチにより、最も密接に関連するペプチドは、タンパク質necdinに由来することが明らかとなった。このペプチドは、MAGE-A3:
248-258ペプチドと5個の差を有しており、これもまた、6F9又は6F9mc TCRを形質導入したT細胞により認識されなかった。これらの発見は、6F9 TCRがMAGE-A3:
248-258ペプチドに対して高度の特異性を有することを示しており、かつこのTCRを形質導入したT細胞は、追加のヒトタンパク質由来のペプチドとの交差反応性をほとんど又は全く有さない可能性があることを示唆する。
【0157】
【表9】
【0158】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0159】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ(at least one)」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1つ以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項から選択される1つの事項(A又はB)、又は列挙した事項のうち2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特記のない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書に特記のない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的用語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の全ての用語は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0160】
発明を実施するために発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施態様が本明細書に記載される。これらの好ましい実施態様のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。