【実施例】
【0105】
実施例1
この実施例は、下の実施例2〜5において用いる材料および方法を記載する。
【0106】
HIV抗体は、以前に記載されているようなgp140特異的単一B細胞捕捉(Mouquet,H.et al.PLoS One 6,e24078(2011);Tiller,T.et al.J Immunol Methods 329,112−24(2008);およびScheid,J.F.et al.Nature 458,636−40(2009))に従ってクローニングし、生成した。PGT121
GMおよび10−1074
GM「グリコミュータント」抗体は、HC位置32、53、54、58、97、100lにおける10−1074残基をPGT121に置換することによっておよびその逆によって産生させた。抗gp140−抗体のHIV Envタンパク質への結合特性は、以前に記載されている(Scheid,J.F.et al.Science 333,1633−7(2011);Walker,L.M.et al.Nature 477,466−70(2011);およびMouquet,H.et al.PLoS One 6,e24078(2011))ようにELISA、SPRおよびグリカンマイクロアレイアッセイによって分析された。中和は、(i)TZM.bl細胞におけるルシフェラーゼベースの分析、および(ii)以前に記載されている(Li,M.et al.J Virol 79,10108−25(2005);Euler,Z.et al.Journal of virology 85,7236−45(2011);およびBunnik,E.M.et al.Nature medicine 16,995−7(2010))ような一次HIV−1変異体での感染を用いるPBMCベースの分析を用いて評価した。PGT121(「リガンドを持たない」および「リガンドを持つ」)、10−1074およびGL Fab断片の構造を、それぞれ2.8Å、2.3Å、1.8Åおよび2.4Å分解能への分子置換によって解明した。
【0107】
単一B細胞RT−PCRおよびIg遺伝子分析
患者10(pt10;Nature 477(7365):466−470では患者17と呼ばれている)PBMCからのgp140
+CD19
+IgG
+B細胞の単一細胞選別、cDNA合成およびIg遺伝子のネステッドPCR増幅は、以前の研究(PLoS One 6(9):e24078)で行った。PGT121クローナル変異体によって発現されたIgλ遺伝子を、突然変異を受ける可能性のある領域(31)を避けるためにリーダー領域内のさらに上流のフォワードプライマー(L−Vλ3−21
*02:5’CTGGACCGTTCTCCTCCTCG 3’)を使用してPCR増幅した。すべてのPCR産物をシークエンシングし、Ig遺伝子使用、CDR3分析およびVH/Vκ体細胞超変異数について分析した(IgBLAST;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblastおよびIMGT(登録商標);http://www.imgt.org)。ClustalW分析機能(デフォルトパラメータ)を有するMacVectorプログラム(v.12.5.0)を用いて多重配列アラインメントを行い、また、それらを用いて、隣接結合法によって(ベストツリーモードおよび外群付根法で)系統樹を生成した。あるいは、UPGMA法を(ベストツリーモードで)用いて系統樹を生成した。
【0108】
PGT121様および10−1074様抗体の生殖細胞系(GL)前駆体遺伝子セグメントを、IgBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast)およびIMGT(登録商標)/V−QUEST(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)を使用してV
H4−59
*01、J
H6
*03、V
L3−21
*02およびJ
L3
*02として同定した。(これらの遺伝子セグメントは、ヒト抗体のレパートリーの中で最も頻繁に使用されるものである(PLoS One 6(8):e22365;Immunogenetics 64(5):337−350)。代表GL祖先配列を構築するために、我々は、IgBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast)を使用して、10−996(最少体細胞超変異を含有する抗体)のIgHおよびIgL配列をGL配列にアラインした。GL IgH配列は、成熟V
HおよびJ
H遺伝子セグメントをそれらのGL対応部分で置換し、N領域ヌクレオチドおよびD
H遺伝子セグメントを含むCDRH3領域のために10−996配列を使用することによって構築した。GL IgL配列は、V
L3−21
*02およびJ
L3
*02遺伝子セグメント配列から構築した。
【0109】
抗体のクローニングおよび生産
精製され消化されたPCR産物をヒトIgγ
1発現またはIgλ発現ベクター(J Immunol Methods 329(1−2):112−124)にクローニングした。その後、IgHおよびIgλ遺伝子を含有するベクターをシークエンシングし、元のPCR産物配列と比較した。PGT121および10−303は、同じIgλ遺伝子を共有し、IgH遺伝子の位置2での1つのアミノ酸の違いを有した(
図4);それ故、PGT121 IgGを生産するために、我々は、部位特異的突然変異(QuikChange Site−Directed Mutagenesis Kit;Stratagene)により10−303IgH遺伝子に単一置換(V2M)を導入することによって生成した10−303IgλおよびPGT121 IgH遺伝子を使用した。Hisタグ付きFabを生成するために、IgG1 C
H1ドメイン、続いて6x−Hisタグをコードするために我々の標準Igγ
1ベクター(Science 301(5638):1374−1377)を修飾することにより、PGT121および10−1074 V
H遺伝子を6xHis−IgCγ1発現ベクターにサブクローニングした。PGT121
GM(S32Y、K53D、S54R、N58T、H97R、T100lY)および10−1074
GM(Y32S、D53K、R54S、T58N、R97H、Y100lT)突然変異体抗体をコードするIgH DNA断片を、合成ミニ遺伝子(IDT)として得、Igγ
1発現ベクターにサブクローニングした。
【0110】
10−1074
GMについての重鎖配列を下に列挙し、突然変異に下線を引く。10−1074
GMの軽鎖配列は、10−1074と同じである。
QVQLQESGPGLVKPSETLSVTCSVSGDSMNN
SYWTWIRQSPGKGLEWIGYIS
KSESA
NYNPSLNSRVVISRDTSKNQLSLKLNSVTPADTAVYYCATAR
HGQRIYGVVSFGEFF
TYYSMDVWGKGTTVTVSS。
【0111】
抗体およびFab断片は、ポリエチレンイミン(PEI)−沈殿法(PLoS One 6(9):e24078)を用いてIgHおよびIgL発現プラスミドの指数成長HEK293T細胞(ATCC、CRL−11268)への一過性トランスフェクションにより生産した。プロテインGセファロースビーズ(GE Healthcare)をその製造業者の説明書に従って使用してIgG抗体を親和性精製した。下で説明するようにHisPur(商標)コバルト樹脂(Thermo scientific)を使用してFab断片を親和性精製した。
【0112】
HIV−1 Envタンパク質
QuikChange Site−Directed Mutagenesisキット(Stratagene)をその製造業者の説明書に従って使用して、アラニン突然変異をpYU−2 gp120ベクター(J.Sodroski,Harvard Medical Schoolからの贈与品)の位置301から303(Asn−Asn−Thr)、324から325(Gly−Asp)および332(Asn)(HXBc2アミノ酸番号付け)に導入した。同じ手順を用いて、pYU−2 gp120
N332AベクターにおけるAsn262
gp120とAsn406
gp120の間に位置する各PNGSに単一アラニン突然変異を導入することによって「二重グリカン」突然変異体を生成した。部位特異的突然変異をDNAシークエンシングによって確認した。
【0113】
YU−2 gp140(Journal of virology 74(12):5716−5725)、YU−2 gp120、HXB2c gp120
コア(Nature 393(6686):648−659)、HXB2c 2CCコア(PLoS Pathog 5(5):e1000445)タンパク質、およびYU−2 gp120突然変異体タンパク質をコードする発現ベクターを使用して、HEK 293T細胞をトランスフェクトした。高マンノースのみのYU−2 gp120タンパク質(gp120
kif)を生産するために、25μMキフネシン(Enzo Life Sciences)をトランスフェション時に添加した。培養上清を回収し、10mMイミダゾール、50mMリン酸ナトリウム、300mM塩化ナトリウム;pH7.4への試料の緩衝液交換を可能にする遠心分離ベースの濾過装置(Vivacell 100、Sartorius Stedim Biotech Gmbh)を使用して濃縮した。HisPur(商標)コバルト樹脂(Thermo scientific)をその製造業者の説明書に従って使用してアフィニティークロマトグラフィーによってタンパク質を精製した。
【0114】
脱グリコシル化反応のために、PBS中の50μgのHEK 293T細胞生産YU−2 gp120を一晩、37℃で、変性剤を含有しないそれぞれの反応バッファー中の200UのPNGase F(New England Biolabs)または10,000UのEndo H
f(New England Biolabs)で消化した。遠心濾過機(Amicon(登録商標)Ultra、Millipore)を使用してバッファーをPBSに交換した後、グリコシダーゼ処理されたgp120(200ng)を、4〜12%NuPAGEゲル(Invitrogen)を使用するSDS−PAGE、続いて銀染色(Pierce Silver Stain Kit、Thermo Scientific)によって検査した。
【0115】
ELISAs
高結合性96ウェルELISAプレート(Costar)を一晩、PBS中の100ng/ウェルの精製gp120で被覆した。洗浄後、プレートを2時間、2%BSA、1μM EDTA、0.05%Tween−PBS(ブロッキングバッファー)でブロックし、その後、2時間、26.7nM(またはYU−2 gp120二重グリカン突然変異体を使用するELISAについては427.2nM)の濃度のIgGとともにインキュベートし、PBSで7回連続的に1:4希釈した。洗浄後、ヤギHRP結合抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoReseach)(ブロッキングバッファー中0.8μg/mLで)との1時間のインキュベーションにより、およびHRP色素原基質(ABTS溶液、Invitrogen)(PLoS One 6(9):e24078)の添加によりプレートを進めた。選択されたgp120
V3オーバーラッピングペプチドへの抗体結合を、前に説明したペプチド−ELISA法を用いて試験した。
【0116】
競合ELISAsのために、gp120被覆プレートを2時間、ブロッキングバッファーでブロックし、その後、PBS中の抗体競合物質の1:2系列希釈液(5.2から667nMのIgG濃度範囲)中、ビオチン化抗体(PGT121については26.6nM、10−1074については0.21nM、10−996については0.43nM、および10−1369については1.67nMの濃度で)とともに2時間インキュベートした。HRP結合ストレプトアビジン(Jackson ImmunoReseach)を(ブロッキングバッファー中、0.8μg/mLで)使用して、上で説明したようにプレートを進めた。すべての実験を少なくとも繰り返しで行った。
【0117】
グリカンマイクロアレイ分析
脂質に結合したグリカンプローブ(ネオ糖脂質)を、2つのレベル(2および5fmol/スポット)で、繰り返し、ニトロセルロース被覆スライドガラスにロボット制御でプリントすること(Methods Mol Biol 808:117−136)により、マイクロアレイを生成した。高マンノースおよび複合型のNグリカンに由来する15のネオ糖脂質を含有するマイクロアレイを用いて、結合アッセイを行った。プローブの配列を
図7Aに示す。簡単に言うと、抗体を50μg/mLで試験し、結合をビオチン化抗ヒトIgG(Vector)、続いてAlexaFluor 647標識ストレプトアビジン(Molecular Probes)で検出した。
【0118】
表面プラズモン共鳴
Biacore T100(Biacore,Inc)(Nature 467(7315):591−595)を用いて実験を行った。簡単に言うと、YU−2 gp140およびgp120タンパク質を300RUのカップリング密度でCM5チップ(Biacore,Inc)上に第一級アミンカップリングさせた。抗gp120 IgGおよび生殖細胞系前駆体(GL)を、35μL/分の流量と3分の会合相および5分の解離相で、1μMおよび10μMでそれぞれフローセル上に注入した。10mMグリシン−HCl pH2.5の50μL/分の流量での30秒の注入によって、センサー面を再生した。解離(k
d(秒
−1))、会合(k
a(M
−1秒
−1)および結合定数(K
D(M)またはK
A(M
−1)を、バルク反射係数(RI)補正のない1:1結合モデルを使用して、背景差分後、動態解析から算定した(Biacore T100 Evaluationソフトウェア)。1:1結合モデルを使用して算定した二価IgGについての結合定数を、K
D値が潜在的結合活性効果(avidity effects)を含むことを強調するために、本文書では「見かけの」親和性と呼ぶ。
【0119】
中和アッセイ
TZM.bl細胞におけるルシフェラーゼベースのアッセイ(J Virol 79(16):10108−10125)を用いて、ウイルス中和を評価した。試験したHIV−1シュードウイルスは、主に、tier−2およびtier−3ウイルス(Journal of virology 84(3):1439−1452)を含有した(表4および5)。高マンノースのみのシュードウイルスを、25μMキフネシンで処理された野生型細胞(Enzo Life Sciences)において(
図8C)またはHEK293S GnTI
−/−細胞において(
図8D)生産した。非線形回帰分析を用いて、最大半量の阻害が観察された濃度(IC
50値)を算定した。1985年と1989年の間のセロコンバージョン日が判っているクレードB感染ドナー(「過去の抗体陽転者」、n=14)または2003年と2006年のセロコンバージョン日が判っているクレードB感染ドナー(「現在の抗体陽転者」、n=21)から単離した一次HIV−1変異体(n=95)での感染を用いて、以前に特性付けされたPBMCに基づくアッセイ(Journal of virology 85(14):7236−7245;Nat Med 16(9):995−997)でも中和活性を評価した。各抗体の中和活性を、中和されたウイルスの割合を0.001から50μg/mLの範囲のIC
50値にフィッティングするGraphPad Prismソフトウェア(v5.0b)を使用してベストフィット曲線下面積として算定した。(10−1074で得られた)最高値によってすべてのAUC値を正規化することにより、相対曲線下面積(RAUC)値を導出した。
【0120】
統計分析
統計分析をGraphPad Prismソフトウェア(v5.0b)で行った。gp120およびgp140に対する抗体の見かけの結合親和性に対する、選択された9ウイルス株パネルに対するTZM−blアッセイにおける中和効力を、スピアマン相関検定を用いて分析した。マン・ホイットニー検定を用いて、(i)PGT121または10−1074群に属する抗体のgp120/gp140に対する親和性、および(ii)過去および現在の抗体陽転者から単離されたウイルスに対する中和活性を比較した。
【0121】
結晶化および構造決定
結晶化のために6x−Hisタグ付きPGT121、10−1074および10−996GL Fabを発現させた。Fabを一過性トランスフェクトHEK293−6E細胞の上清から逐次的Ni
2+−NTAアフィニティー(Qiagen)およびSuperdex200 10/300(GE Healthcare)サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。リガンドを持たないPGT121 Fabの結晶については、PGT121 IgGを一過性トランスフェクトHEK293−6E細胞の上清からプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(Pierce)によって単離し、そのIgGのパパイン切断によってFab断片を得、Superdex200 10/300(GE Healthcare)サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。
【0122】
精製されたFabをPBSバッファー中8〜20mg/mL(「リガンドを持たない」PGT121、8mg/mL;10−1074およびGL、20mg/mL)に濃縮した。3倍モル過剰のNA2グリカンと混合し、20℃で2時間インキュベートしたタンパク質試料(最終濃度:15mg/mL)から、「リガンドを持つ」PGT121 Fab結晶を調製した。20℃で、1:1のタンパク質対リザーバ比を用いて、400nL液滴で、Mosquito(登録商標)結晶化ロボット(TTP labs)で、結晶化状態をスクリーニングした。「リガンドを持たない」PGT121 Fabの結晶(P2
12
12
1;a=56.8、b=74.7、c=114.9Å)を、24%PEG 4,000、0.1M Tris−HCl pH8.5、10mM CuCl
2中で得、「リガンドを持つ」PGT121 Fabの結晶(P2
12
12
1;a=67.8、b=67.8、c=94.1Å)を、17%PEG 10,000、0.1M Bis−Tris pH5.5、0.1M CH
3COOHNH
4中で得た。10−1074 Fabの結晶(P2
1;a=61.4、b=40.3、c=84.5Å;β=95.39°)を、25%PEG 3,350、0.1M Bis−Tris pH5.5、0.2M NaCl中で得、GL Fabの結晶(P2
1;a=54.9、b=344.7、c=55.2Å;β=91.95°)は、20%PEG 3,350、0.24Mマロン酸ナトリウムpH7.0、10mM MnCl
2中で得た。20%グリセロール(「リガンドを持たない」および「リガンドを持つ」PGT121 Fab)または20%エチレングリコール(10−1074FabおよびGL Fab)を含有する母液に浸漬し、その後、液体窒素でフラッシュ冷却することによって、結晶を凍結保護した。
【0123】
Stanford Synchrotron Radiation Lightsource(SSRL)においてPilatus 6Mピクセル検出器(Dectris)を用いてビームライン12−2(波長=1.029Å)で回折データを収集した。XDSを使用してデータにインデックスを付け、統合し、スケール化した。「リガンドを持たない」PGT121 Fab結晶から得たデータを用い、我々は、Phenixを使用して、CDRH3およびCDRL3ループ内の残基を除去した後の2つの検索モデル、すなわち、PGT128 FabのC
H−C
Lドメイン(PDBコード3PV3)および2F5のV
H−V
Lドメイン(PDBコード3IDJ)を用いて1つの非対称ユニット(重および軽鎖についての鎖HおよびL、それぞれ)につき1つのFabの分子置換ソリューションを見つけた。その後、我々は、「リガンドを持たない」PGT121構造を検索モデルとして用いて、「リガンドを持つ」PGT121 Fab(1つの非対称ユニットにつき1つのFab)、10−1074 Fab(1つの非対称ユニットにつき1つのFab)およびGL(1つの非対称ユニットあたり4つのFab)についての分子置換ソリューションを見つけた。
【0124】
Phenixを用いて反復改良(GLについての非結晶学的対称拘束を含む)を行い、Cootを用いてモデルを電子密度マップに手動でフィッティングした。原子モデルをPGT121 Fabについては3.0Å分解能(R
work=21.6%、R
free=26.4%)に、10−1074 Fabについては、1.9Å分解能(R
work=18.7%、R
free=22.3%)に、4つのGL Fab分子については2.4Å分解能(R
work=19.4%、R
free=23.7%)におよび「リガンドを持つ」PGT121 Fabについては2.4Å分解能(R
work=20.1%、R
free=24.9%)に改良した。PGT121 Fabの原子モデルは、ラマチャンドランプロットの好適、許容および非許容領域内に95.2%、4.9%および0.0%の残基をそれぞれ含有する(10−1074 Fab:98.8%、0.9%、0.2%;GL Fab:96.0%、3.8%、0.23%;「リガンドを持つPGT121 Fab:96.7%、3.1%、0.2%)。PyMOLを分子可視化のために、およびFab構造の図を生成するために使用した。埋まっている表面積の算定は、1.4Åプローブを使用してAreaimol(CCP4スイート)で行った。
【0125】
PyMOLのSuperスクリプトを用いてFab構造を整合した。PDBeFoldを用いて、ペアワイズCαアラインメントを行った。
【0126】
実施例2 PGT121クローン型の優勢および多様性
YU−2 gp140三量体を「ベイト」として使用してクレードA感染アフリカ人ドナーからgp140特異的IgGメモリーB細胞を単離した。23のユニークなクローンファミリーに対応する、87のマッチする免疫グロブリン重(IgH)および軽(IgL)鎖遺伝子を同定した。IgH抗gp140レパートリーでは1つのクローンファミリーが優勢であり、それはすべての増殖B細胞クローンの約28%に相当する。このB細胞ファミリーは、PGT121−123と同じクローンに対応し(Nature 477(7365):466−470)、38メンバーを含有し、そのうち29は、ヌクレオチドレベルでユニークな変異体であった(表3)。それらのIgHヌクレオチド配列に基づき、PGT121ファミリーは、2群に分かれる:PGT121−123および9つの近縁変異体を含有するPGT121様群と、20メンバーを含有する、10−1074様の、第二の群。我々の旧来のプライマー(J Immunol Methods 329(1−2):112−124;Science 301(5638):1374−1377)は、フレームワーク領域1をコードする領域でのヌクレオチド欠失のためPGT121B細胞クローンによって発現されるIgL遺伝子を増幅しなかったが、大きく体細胞突然変異した遺伝子を増幅するように設計された新たなIgλ特異的プライマーを使用して38Igλ遺伝子のうちの24の遺伝子を得た(表3)。IgH遺伝子の高い超突然変異レベル(平均でVH遺伝子の18.2%)と一致して、増幅されたIgλ遺伝子は、非常に突然変異しており(平均でVλ遺伝子の18.2%)、フレームワーク領域1(FWR1)にヌクレオチド欠失(12から21ヌクレオチド)をおよびフレームワーク領域3(FWR3)に9ヌクレオチド挿入を有した(
図3Bおよび表3)。
【0127】
3つのPGT抗体(PGT−121、−122および−123)、11のPGT121および10−1074クローナル変異体(10−259、10−303、10−410、10−847、10−996、10−1074、10−1121、10−1130、10−1146、10−1341、10−1369、および10−1074GM、)、推定生殖細胞系(GL)、およびコンセンサス配列の配列アラインメントを
図3(a)および3(b)に示す。IMGTおよびKABT両方のシステムに従って、対応する重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖CDRおよび軽鎖CDRについての配列を下の表1に収載する。KABTシステムに従って配列に割り当てられた配列識別番号を下の表2に収載する。
【0128】
【表1-1】
【0129】
【表1-2】
【0130】
【表1-3】
【0131】
【表1-4】
【0132】
【表2】
【0133】
11の新規のユニークな変異体を発現させ(表3)、ELISAおよび表面プラズモン共鳴(SPR)によってYU−2 gp120およびgp140への結合を実証した。別段の注記がない限り、これらおよび他の実験についてのgp120およびgp140タンパク質は、複合型Nグリカンまたは高マンノースNグリカンのいずれかをPNGSに結合させることができる哺乳動物細胞において発現させた。gp120との反応性レベルは、PGT121および10−1074群に属する抗体間で異なり、後者のほうが、主として10−1074類縁抗体についてのgp120/gp140からの遅い解離(
図4B)のため、高い見かけの親和性を呈示した(
図3A)。
【0134】
実施例3 PGT121および10−1074エピトープ
V3ループステムの近傍のAsn332
gp120は、PGT121による結合およびウイルス中和に極めて重要であると報告されており(Nature 477(7365):466−470)、それ故、我々は、PGT121様および10−1074様抗体による抗原認識におけるV3の役割を調査した。V1−V3ループを欠く(gp120
コア)またはV3の一部分を保持する(2CC−コア)HXB2 gp120「コア」タンパク質を使用し、およびV3ステムに二重アラニン置換を有するYU−2 gp120突然変異体タンパク質(gp120
GD324−5AA)を使用して、ELISAを行った。試験した抗体は、インタクトYU−2 gp120と比較してV3ループを欠く変異体およびgp120
GD324−5AAに対する減少した反応性を示し、10−1074群抗体の結合が最も影響を受けた(
図5AおよびB)。これらの結果は、両方の抗体群による認識が、V3ループの近傍のタンパク質決定基を必要とすることを示唆する。V3に及ぶオーバーラッピングペプチドに結合した抗体はなく、これは、標的エピトープが、不連続であること、および/または単離されたペプチドによって達成されない特定の高次構造を必要とすることを示唆する(
図5C)。
【0135】
Asn332
gp120(以前の番号付け(J Proteome Res 7(4):1660−1674)ではAsn337
gp120)は、配列Asn−X−Ser/Thrと定義された有望なN−グリコシル化部位(PNGS)のN末端残基である。Asn332
gp120および/またはそのN結合グリカンが、新規PGT121群および10−1074群抗体のgp120反応性に必要とされるかどうかを判定するために、我々は、ELISAによってYU−2gp120
N332Aへのそれらの結合を試験した。N332A置換は、PGT121およびすべての新規抗体変異体の結合を減少させたが、隣接グリコシル化部位を欠く突然変異体gp120(gp120
NNT301−3AAA突然変異体)に対するそれらの反応性は不変であった。Asn332
gp120PNGSに加えて、PNGSが、新規抗体による認識に影響を及ぼすかどうかを判定するために、我々は、YU−2 gp120におけるN332A突然変異をAsn262
gp120とAsn406
gp120間に位置するPNGSの突然変異と組み合わせた一連の11の二重グリカン突然変異体を構築した。PGT121様および10−1074様抗体のすべてが、gp120
N332Aに対する親和性について匹敵する親和性で二重グリカン突然変異体の各々に結合した。
【0136】
PGT121様および10−1074様抗体による全グリカン認識を比較するために、我々は、複合型N−グリカンと高マンノースN−グリカンの両方を切断するPNGase Fで処理したYU−2 gp120へのそれらの結合を調査した。gp120は、それが変性されない限り、酵素的により完全に脱グリコシル化され得ないので、PNGase F処理は、天然にフォールディングされたgp120の部分的な脱グリコシル化をもたらした(
図6)。それにもかかわらず、前記2群の抗体の反応性は、PNGase Fによるgp120の部分的脱グリコシル化が、すべてのPGT121様抗体の結合活性を減少させたが、いずれの10−1074様抗体の結合活性も減少させなかった点で異なった(
図6C)。高マンノースN−グリカンを切断するが複合型N−グリカンを切断しないEndo Hで処理したYU−2 gp120を用いて行った類似の実験は、PGT121様抗体より10−1074様抗体の結合に影響を及ぼした(
図6D)。
【0137】
N−グリカンマイクロアレイにより、7つの試験したPGT121様抗体のうちの6つは、ガラクトースまたはα2−6結合シアル酸を末端に有する複合型モノまたはバイアンテナN−グリカンへの検出可能な結合を示すが、高マンノース型グリカンへの検出可能な結合を示さないことが明らかになった。これは、PGT121−123の高マンノースNグリカンへの結合がない、ならびにgp120結合についてのMan
4およびMan
9デンドロンによる競合がないという以前の報告を確証し、拡張する(
図7)。対照的に、10−1074様抗体による無タンパク質のグリカンへの検出可能な結合はなかった(
図7)。PGT121様抗体は、無タンパク質の複合型N−グリカンに結合し、高マンノースN−グリカンには結合しなかったが、PGT121様抗体は、PNGSへの高マンノースグリカンの排他的結合をもたらすマンノシダーゼ阻害剤であるキフネシンで処理した細胞において生産されたYU−2 gp120(gp120
kif)への結合を保持した(
図8B)。PGT121様抗体の大部分は、gp120
kifへの結合に、小さいが再現性のある減少を呈示した。一方、10−1074様抗体は、gp120
kifへの完全結合を保持した(
図8B)。これらの結果は、高マンノースNグリカンはもちろん、複合型N−グリカンも、PGT121様抗体のエピトープに関与し得るという仮説と一致する。
【0138】
各群の2つの代表メンバー(PGT121様群についてはPGT121および10−1369;10−1074様群については10−1074および10−996)を用いて競合ELISAによりエピトープマッピング実験を行った。4つすべての抗体が交差競合を示したが、PGT121は、10−996および10−1074のgp120への結合を逆の場合より穏やかに阻害した。標的エピトープをさらにマッピングするために、我々は、V3ループのクラウン(
図5)、CD4bs、共受容体結合部位(CD4誘導型;CD4i)、一群の高マンノースN−グリカン(2G12)(Journal of virology 76(14):7293−7305;Proc Natl Acad Sci USA 102(38):13372−13377))または位置301および332のV3ループおよびN結合グリカン(PGT128)を認識する抗gp120抗体を使用した。抗V3クラウン抗体は、PGT121および10−1369の結合を阻害したが、10−996および10−1074の結合に干渉しなかった。PGT128、およびより少ない程度に2G12は、4つすべての抗体のgp120への結合を減少させたが、CD4bsおよびCD4i抗体は、減少させなかった。
【0139】
考え合わせると、これらのデータは、PGT121クローンメンバーが、V3ループおよびAsn332
gp120関連グリカンの近傍のタンパク質決定基を含む部位を認識することを示唆する。しかし、クローンは、gp120に対する親和性が異なるとともにエピトープ形成におけるグリカンの役割が異なる2つのファミリー、PGT121様群および10−1074様群、に分かれる。
【0140】
実施例4 広域かつ強力なHIV中和
新規PGT121変異体の中和活性を評価するために、我々は、gp120位置332のPNGSを欠くR1166.c1を含む10のウイルス株を使用して、TZM−bl細胞のHIV感染を阻害するそれらの能力を測定した。10−1074様抗体を含めて、すべてのPGT121変異体は、9つのシュードウイルスを中和し、およびいずれもR1166.c1コントロールを中和しなかった(
図1Aおよび表4)。中和活性は、HIVスパイクに対する親和性と相関し、10−1074群は、PGT121群よりわずかに大きい効力を示した(
図1Bおよび
図4C)。PGT121/10−1074抗体クローン型の代表的な生殖細胞系バージョン(GL)は、gp120/gp140を結合することができず、そのパネル内のいずれのウイルスも中和することもできなかった。これは、体細胞突然変異が結合および中和には必要であることを含意する。GL軽鎖と突然変異10−1074−または10−996−群重鎖の対合は、結合または中和をレスキューすることができなかった。これは、両方の突然変異鎖が抗体パラトープの正しい構築に寄与することを示唆する。
【0141】
119の中和困難シュードウイルス(tier−2およびtier−3として分類される)の拡張パネルに対するPGT121の中和活性と2つの10−1074様抗体(10−996および10−1074)の中和活性を比較するために次のアッセイを行った(表4および5)。10−996および10−1074は、PGT121に類似した中和効力および幅を示した(
図1C、
図9ならびに表5および6)。予想どおり、gp120位置332および/または334(Asn332−X−Ser334/Thr334PNGSに及ぶ)のアミノ酸変化を有する大部分のウイルスは、中和に対して耐性であった(83.8%がPGT121に対して耐性であり、100%が10−1074および10−996に対して耐性であった)。中和に対して耐性のウイルスの大部分(10−996については68.5%、10−1074については72.5%およびPGT121については60.8%)が、このPNGSでの突然変異に起因した(表7)。匹敵する中和活性がIgGおよびFab形態のPGT121および10−1074について観察された。これは、二価がそれらの活性にとって重要でないことを示唆する(
図1D)。
【0142】
PGT121および10−1074による中和におけるHIVエンベロープ上の複合型N−グリカンの潜在的役割を評価するために、我々は、2つの異なる方法で、高マンノースのみのビリオンを生産した:キフネシンで処理した細胞におけるシュードウイルスの構築による、結果としてMan
9GlcNAc
2N結合グリカンが得られる方法、またはHEK293S GnTI
−/−細胞における構築による、結果としてMan
5GlcNAc
2N結合グリカンが得られる方法。我々は、PGT121が、3つのキフネシン由来PGT121感受性/10−1074耐性株のうちの2つを、野生型細胞において生産されたそれらの対応物と等価に中和することを発見した(
図8C)。GnTI
−/−細胞において生産された2つのPGT121感受性/10−1074耐性ウイルス株は、野生型細胞において生産されたそれらの対応物と同等にPGT121および10−1074に対して感受性があった。複合型N−グリカンは、CD4結合部位が抗体結合しないようにある程度保護するという以前の報告と一致して、GnTI
−/−細胞において生産されたウイルスは、CD4結合部位抗体(NIH45−46
G54Wおよび3BNC60)に対してより感受性があった(
図8D)。
【0143】
実施例5 新規伝染HIV−1
次に、我々は、伝染始祖(transmitted founder)ウイルスに対するPGT121および10−1074の活性を、1985年と1989年の間に抗体陽転した個体(「過去の抗体陽転者」、n=14)または2003年と2006年の間に抗体陽転した個体(「現在の抗体陽転者」、n=25)のコホートから単離した95のクレードBウイルスを使用して末梢血単核細胞(PBMC)ベースのアッセイで中和を評価することによって調査した(51、52)。我々は、PGT121および10−1074を、抗CD4bs bNAbおよび他のbNAb(VRC01、PG9/PG16、b12、2G12、4E10および2F5を含む)と比較した。中和活性のクラスター化分析は、2つの群への分離を示した;PGT121/10−1074群は、抗CD4bsおよびPG9抗体を含む最も活性の高いHIV中和剤を含んだ(表8)。驚くべきことに、10−1074は、このクレードBウイルスパネルに対して非常に優れた中和効力を示し、試験したすべてのbNAbについて0.1μg/mLで最大幅(95のクレードBウイルスの67%)を呈示した(表8)。10−1074は、現在のクレードBウイルスに対してPGT121より高い効力(〜20倍差)を示したが、両方の抗体は、現在のウイルスより過去のウイルスに対して有効であった(
図1Eおよび
図10)。
【0144】
実施例6 PGT121、10−1074およびGLの結晶構造
PGT121様抗体と1074様抗体間の差の構造決定因子を調査するために、我々は、PGT121、10−1074および代表的な生殖細胞系前駆体(GL)のFab断片の結晶構造をそれぞれ3.0Å、1.9Åおよび2.4Å分解能で解明した(表9)。前記3つのFabの中での重および軽鎖可変ドメイン(V
HおよびV
L)の重ね合わせにより、主鎖構造の保存とともにGLに対する差が親和性成熟FabのCDRH3およびCDRL3ループの小さな変位に限定されることが明らかになった(表10)。
【0145】
抗体により共有される珍しい特徴は、それらの長い(25残基)CDRH3ループであり、このループは、V
HドメインFおよびG鎖を伸長する2本鎖逆平行βシートを形成する。各Fabにおいて、伸長CDRH3ループの先端は、主として非極性残基を含有する。類似の構造的特徴が、エピトープがgp120 V1V2ループを含む炭水化物感受性抗体であるPGT145のCDRH3について観察された。しかし、PGT145のCDRH3の伸長された2本鎖βシートは、先端に2つの硫酸化チロシンを含む、負の電荷を有する残基を主として含有する。PGT121およびPGT145のV
H−V
Lのアラインメント(表10)は、CDRH3
PGT145が以前のCDRH3
PGT121を伸長すること、ならびにその先端とV
Hドメインは整列されるが、PGT121、10−1074およびGLのCDRH3はV
Lの方に傾くことを示す。V
Lの方へのCDRH3
PGT121/CDRH3
10−1074/CDRH3
GLの傾きは、CDRH2とCDRH3間のクレフトを開き、これは、類縁の抗体では共有されない特徴である。
【0146】
PGT121および10−1074は、GLに対しておよび互いに大きく異なる(132残基のうち、PGT121
VHは、10−1074
VHおよびGL
VHとそれぞれ36および45残基異なり、10−1074
VHとGL
VHは29異なる)。これらのPGT121/10−1074の差の大部分は、CDR
VHループおよびCDRL3にある。興味深いことに、CDRH3における6つの置換(残基100d、100f、100h、100j、100l、100n)は、2残基ごとに置換されるように交互になっており、その結果、V
LへのCDRH3の傾きに起因してCDRH2とCDRH3間のクレフトが再び表面に現れることになる。この領域は、PGT121および10−1074の異なる微細な特異性の一因となる可能性が高い。重鎖フレームワーク領域3(FWR3
HC)における5つの他の溶媒曝露置換(残基64、78、80−82;鎖DおよびE)は、HIV抗体におけるフレームワーク領域がgp120と接触できることを考えると、潜在的抗原接触部位である。微細な特異性差の一因となり得る他の差としては、10−1074またはGLには存在しないAsp56
HCの近傍のPGT121上の負のパッチ(10−1074およびGLにおけるSer56
HC)、ならびにGLの類似した表面では見いだせないCDRL1およびCDRL3上の正のパッチが挙げられる。
【0147】
PGT121および10−1074に共通の体細胞突然変異は、それらのエピトープの共有の特徴に関与し得る。PGT121および10−1074の重鎖は、(36のPGT121−GL差および29の10−1074−GL差のうち)3つの共通の突然変異しか共有しない。対照的に、PGT121および10−1074は、(37のPGT121−GL差および36の10−1074−GL差のうち)18の共通の軽鎖突然変異を共有し、それらには、鎖DおよびEを接続するループの膨隆の原因となる、軽鎖FWR3内への挿入、および低負電荷の表面をもたらす、CDRL2
GL内のAsp50
LC−Asp51
LCのPGT121と10−1074両方におけるAsn50
LC−Asn51
LCへの置換が含まれる。LC
PGT121およびLC
10−1074に導入される多数の共通の置換(LC置換のおおよそ50%)は、PGT121および10−1074によって共有されるエピトープの潜在的接触領域としてCDRL1、CDRL2およびFWR2
LCを指摘する。
【0148】
次に、Asn332
gp120結合およびAsn301
gp120結合グリカンならびにV3を認識するPGT128であって、複合型N−グリカン変性タンパク質を生産することができない細胞において発現される外部ドメイン/ミニV3ループ gp120との複合体として解明されたものであるPGT128の構造との比較を行った。PGT121および10−1074のCDRH3ループとは異なり、PGT128
CDRH3は、PGT128
VLの方に傾いておらず、CDRH3
PGT128は、2本鎖βシートを含まない。加えて、CDRH3
PGT128(18残基)は、PGT121および10−1074(24残基)のCDRH3より短いが、CDRH2
PGT128は、PGT121または10−1074においても見られない6残基挿入を含有する。これらの差のため、PGT128ではCDRH2が最も顕著な特徴であるのに対し、PGT121および10−1074ではCDRH3が最も顕著である。CDRH2
PGT128およびCDRL3
PGT128は一緒に、Asn332
gp120に結合しているMan
8/9を認識し、CDRH3
PGT128は、V3ループ基部と接触する。このgp120認識モードは、PGT121および10−1074には、それらのCDRH2およびCDRH3ループの構造的特徴がPGT128のものと有意に異なるので、不可能であり、これは、無タンパク質高マンノースグリカンを認識する、PGT121および10−1074ではなく、PGT128の能力(
図7)と一致する。
【0149】
実施例7 PGT121−グリカン複合体の結晶構造
複合型シアル化バイアンテナグリカンを伴うPGT121の2.4Å分解能構造を、NA2、複合型アシアリルバイアンテナグリカン(
図7)を含む条件下で得た結晶を使用して解明した(表9)。驚くべきことに、我々の結晶構造におけるPGT121に結合したグリカンは、NA2ではなく、むしろ、結晶格子内の隣接PGT121 Fabからの複合型Nグリカン、具体的にはAsn105
HCに結合しているN−グリカンであった。このグリカン同一性は、Asn105
HCへのグリコシド結合についてのおよびManα1−3Manアンテナ上の末端シアル酸についての電子密度があるため、明らかである(Manα1−6Manアンテナのガラクトースおよびシアル酸部分は、未解明であった)。結合グリカンの組成は、マイクロアレイ実験においてPGT121により結合されたα2−6シアル化A2(2−6)グリカンの部分に対応し(
図7)、かつ、HEK293T細胞において発現されたタンパク質上のPNGSに結合している複合型N−グリカンでの予想したシアリル結合に対応した。この構造(「リガンドを持つ」PGT121)のV
H−V
Lドメインは、結合N−グリカンのないPGT121構造(「リガンドを持たない」PGT121)のV
H−V
Lドメインに有意差なく重なり合う(
図10)が、エルボ屈曲角(elbow bend angle)(V
H−V
LとC
H1−C
L擬二分子(pseudo−dyad)間の角度)は構造間で異なる。この差は、結晶格子力に依存して変動し得るエルボ屈曲角をFabにとらせる柔軟性を反映する可能性が高い。
【0150】
ある結晶構造(「リガンドを持つ」PGT121構造)では複合型N−グリカンの結合が観察され、別の構造(「リガンドを持たない」PGT121構造)では観察されなかったことを考えると、我々は、gp120に結合していない複合型N−グリカンに対するPGT121の親和性は、結晶中のPGT121の濃度(〜10mM)の範囲内であると推測する。単離されたグリカンを結合するためのK
Dが、Man
5GlcNAc
2−AsnへのPG9結合について得られた1.6mM K
Dに匹敵する、1〜10mMの範囲内であると仮定すると、単離されたグリカンのPGT121結合についてのK
Dは、gp120に対するPGT121の親和性、nM範囲である、へのほんの小さな寄与を表す(
図4A)。
【0151】
「リガンドを持つ」PGT121構造内のグリカンは、V
Hドメインと排他的に相互作用し、3つすべてのCDR内の残基と広範に接触する(PGT121
HC上の埋まっている表面積=600Å
2)。接触は、9つのアミノ酸での10の直接の水素結合および18の水媒介水素結合(
図11)を含み、枝分かれ部位のマンノースに結合したN−アセチルグルコサミン部分と1−3アンテナ上の末端シアル酸との間にグリカンを固定している。Asp31
HCとの水媒介水素結合に加えて、PGT121残基Asp31
HCおよびHis97
HCとの3つの直接の水素結合を含む、PGT121とのいくつかの接触がこのシアル酸によってなされる。シアル酸は、水媒介グリカン内水素結合ネットワークにも寄与する。シアル酸との直接の接触は、我々のグリカンマイクロアレイ分析におけるPGT121のシアル化A2(2−6)グリカンに対する、非シアル化NA2グリカンに対するよりも強い結合(
図7)の説明になり得る。1−3アンテナのN−アセチルグルコサミンおよびガラクトース部分により確立される広範な水媒介タンパク質接触により、非シアル化モノおよびバイアンテナグリカンについてPGT121への観察された結合を説明することができるだろう(
図7)。
【0152】
グリカンへの直接のまたはおそらくアミノ酸側鎖の接触に寄与する残基のうちの6つ(Ser32
HC−CDRH1、Lys53
HC−CDRH2、Ser54
HC−CDRH2、Asn58
HC−CDRH2、His97
HC−CDRH3、Thr100l
HC−CDRH3)は、10−1074のもの(Tyr32
HC−CDRH1、Asp53
HC−CDRH2、Arg54
HC−CDRH2、Thr58
HC−CDRH2、Arg97
HC−CDRH3、Tyr100l
HC−CDRH3)と異なり、PGT121様抗体間で高度に保存されるが、10−1074様抗体間ではされない。10−1074残基には、観察されたグリカン接触をなすための、または立体的衝突の原因となる嵩高い側鎖を有するための、対応する官能基がない。これらの残基のうちの4つは、GLのもの(Tyr32
HC−CDRH1、Tyr53
HC−CDRH2、Gln97
HC−CDRH3、Tyr100l
HC−CDRH3)とも異なり、これは、我々のグリカンマイクロアレイにおける無タンパク質複合型グリカンへの10−1074様抗体およびGLの結合の欠乏が、水素結合および/または立体的衝突(例えば、Arg97
10−1074対してHis97
PGT121;Tyr100l
10−1074対してThr100l
PGT121)の欠如に起因することを示唆する。CDRHループにおいて、PGT121と10−1074群の間の配列の差の大部分のように、特に、我々が結合した複合型N−グリカンを観察したCDRH2とCDRH3の間のクレフトの表面について、gp120上の複合型グリカンの異なる認識は、観察されたそれらの微細な特異性の差のいくつかまたはすべての主要因でありうる。
【0153】
実施例8 グリカン含有抗体残基の置換は中和に影響を及ぼす
「リガンドを持つ」PGT121構造から同定された複合型N−グリカン含有残基の寄与を評価するために、我々は、複合型グリカン含有残基をPGT121と10−1074間で交換するように設計した2つの突然変異体抗体、すなわち、PGT121残基(IgH Y32S、D53K、R54S、T58N、R97H、Y100lTにおける6置換)を有する10−1074 IgG、および相互置換を有するPGT121 IgGを産生した。「グリコミュータント」抗体(10−1074
GMおよびPGT121
GM)は、SPRによって測定したとき、YU−2 gp120/gp140に対して野生型に近い見かけの親和性を呈示した(
図2A)。これは、前記置換は、PGT121および10−1074両方によって中和されたウイルス株に由来するエンベロープスパイクへの結合を破壊しなかったこと(
図1A)の証拠になる。PGT121複合型N−グリカン含有残基を、両方の野生型抗体により結合されたgp120/gp140への結合を破壊することなく10−1074バックグラウンド内に適応させることができることは、微細な特異性差にもかかわらず抗原結合が総体的に類似していることを含意する。
【0154】
野生型PGT121とは異なり、PGT121
GMは、マイクロアレイ実験においてグリカン結合を示さなかった。これは、置換位置の10−1074残基が無タンパク質グリカン結合と適合性を有さないこと(
図2B)を確証し、および「リガンドを持つ」PGT121構造内のグリカンと接触している残基が前記マイクロアレイにおける複合型グリカンの認識に関与するという示唆を裏付ける。10−1074
GMもまた無タンパク質グリカンへの結合を示さなかった(
図2B)。これは、無タンパク質複合型N−グリカンのための結合部位の生成に、置換されたものの他にも残基が関与することを示す。
【0155】
次に、TZM−blベースのアッセイを用いて、野生型抗体と「グリコミュータント」抗体の中和を比較した。我々は、PGT121または10−1074に対して異なる耐性を有する株ならびに両方の野生型抗体に感受性の株を含む、40のウイルス株を試験した(
図2Cおよび表12)。精製YU−2エンベロープタンパク質へのPGT121
GMおよび10−1074
GMの結合と一致して、両方の突然変異体はYU−2ウイルスを中和したが、PGT121感受性株の64%は、PGT121
GMに対して耐性であった(
図2Cおよび表12)。これは、「リガンドを持つ」PGT121構造において同定されたグリカン含有残基が、PGT121の中和活性に関係があることを示唆する。逆に、10−1074
GMは、4つの10−1074感受性株(WITO4160.33、ZM214M.PL15、Ce1172_H1、および3817.v2.c59)に対する3倍より大きい効力増加を含めて、10−1074感受性株に対して野生型10−1074より高い平均効力を呈示した(
図2Cおよび表12)。一般に、10−1074へのPGT121置換は、PGT121感受性/10−1074耐性株では10−1074
GMに対する感受性を付与しないが、これらの株のうちの2つ(CNE19および62357_14_D3_4589)は、10−1074
GMに対して感受性になった(それぞれ、IC
50=0.19μg/mLおよび40.8μg/mL)。興味深いことに、これらは、インタクトAsn332
gp120結合PNGSを含む唯一のPGT121感受性/10−1074耐性株である。他のPGT121感受性/10−1074耐性株は、Asn332
gp120結合グリカンを欠き、かつPGT121
GMおよび10−1074
GMに対して耐性であり、これは、野生型PGT121に対するそれらの感受性が、隣接N−グリカン、および/またはエピトープのタンパク質部分による補償を必要とすることを含意する。機能の劇的な獲得が、1つの株(CNE19)に対する10−1074
GMについてのみ観察されたが、この結果は、10−1074感受性株に対して10−1074
GMについて観察された一般的改善(
図2C)とともに、結晶学的に同定されたグリカン含有残基がある状況ではPGT121様認識特性を10−1074に移入する場合があり、および/または他の状況ではその効力に影響を及ぼす場合があるという解釈と一致する。加えて、PGT121感受性株に対するPGT121
GMの中和活性の喪失は、PGT121の中和活性は、「リガンドを持つ」PGT121構造において複合型N−グリカンと接触すると同定された残基を必要とすることの証拠となる。
【0156】
結果
PGT121は、2つのクローン的に関連したメンバーのみを生じさせる、元をただせば機能性スクリーニングにおいてクレードA感染ドナーの血清中で同定された、グリカン依存性bNAbである。gp140三量体を、単一細胞選別のための「ベイト」として使用して、29の新たなクローナル変異体を単離した。PGT121クローンファミリーは、近縁抗体のはっきりと異なる群、PGT121群および10−1074群、を含む。結果は、両方の群のエピトープが、Asn332
gp120およびV3ループの基部にPNGSを含むことを示唆する。PGT121様および10−1074様抗体群は、アミノ酸配列、gp120/gp140結合親和性、および中和活性が異なり、10−1074様抗体は、中和がAsn332
gp120におけるインタクトPNGSに完全に依存するが、PGT121様抗体は、Asn332
gp120PNGSを欠く一部のウイルス株を中和することができた。
【0157】
2つの抗体群間の注目に値する差は、PGT121様抗体が炭水化物アレイにおいて複合型N−グリカンを結合したのに対して、10−1074様抗体が試験したいずれの無タンパク質N−グリカンにも検出可能な結合を示さなかったことである(
図7)。抗HIV抗体による無タンパク質グリカン結合は、常に検出されるとは限らない;例えば、PG9は、gp120結合高マンノースグリカンを認識するが、マイクロアレイではいずれの無タンパク質グリカンへの結合も検出されなかった。したがって、グリカンマイクロアレイにおける陽性結果は、抗体エピトープの特定のグリカンの関与を含意するが、陰性結果は、グリカン認識を排除しない。例えば、たとえグリカンマイクロアレイ実験において検出可能でなくても、高マンノースグリカンは、PGT121エピトープに関与することがあり、これは、高マンノースのみの形態のgp120タンパク質およびビリオンの結合および中和と一致する(
図8)。
【0158】
PGT121、10−1074およびそれらのGL前駆体の間の差についての分子的基礎をそれらの結晶構造によって一部明らかにした。軽鎖体細胞突然変異体の大部分はPGT121および10−1074間で共有されるが、重鎖の突然変異は異なるという発見は、軽鎖がgp120エピトープの共有部分と接触し、重鎖がはっきりと異なる特徴部を認識することを示唆する。これらの三つの抗体のすべては、潜在エピトープの接近を可能にし得る非極性の先端を有する伸長したCDRH3を呈示する。2つの成熟Fabの抗原結合部位の差は、主として、CDRH2と伸長したCDRH3の間のクレフトに限局された。興味深いことに、CDRH2とCDRH3間の推定抗原結合クレフトは、PGT121および10−1074の代表的な生殖細胞系前駆体においても見つけられた。
【0159】
V
Hドメイン残基に結合している複合型シアル化N−グリカンが隣接PGT121Fabの結合部位と相互作用する結晶構造からPGT121様抗体によるグリカン認識に関する構造情報を得た。「リガンドを持つ」PGT121構造のいくつかの特徴は、それが、PGT121様抗体によるgp120上の複合型N−グリカンの認識を理解するために適していることを示唆する。第一に、α2−6シアル化グリカンA2(2−6)PGT121に対応する構造におけるグリカンは、マイクロアレイにおいて結合する(
図7)。第二に、前記グリカンは、エピトープ認識に関与することが構造分析により示唆されたCDRH3とCDRH2間のクレフトを用いてPGT121と相互作用し、このことは、PGT121および10−1074構造におけるV
Lの方へのCDRH3の異常な傾きを潜在的に説明する。第三に、グリカンと相互作用すると同定されたV
H残基の大部分は、PGT121と10−1074間で異なり、これにより、グリカンマイクロアレイにおける異なる結合プロファイルが合理的に説明され、およびタンパク質結合実験において明らかになった異なる微細な特異性を潜在的に説明する。第四に、PGT121と10−1074間の結晶学的に同定されたグリカン接触残基の交換は、一部分、それらの特性を転移した:PGT121
GMは、10−1074同様、無タンパク質グリカンに結合しなかったが、PGT121
GMおよび10−1074
GMの両方が、精製YU−2 gp120/gp140への野生型に近い結合を保存した。PGT121
GMは、野生型PGT121および10−1074によって中和された一部のウイルス株を中和する能力を保持したが、PGT121感受性/10−1074耐性である株を中和することはできなかった。これは、グリカン結合モチーフが、10−1074耐性株に対するPGT121の中和活性にとって不可欠であることの証拠となる。相互交換のため、結晶学的に同定されたグリカンモチーフの転移と一致して、ならびにPGT121様および10−1074様抗体のエピトープが類縁であるという仮説と一致して、10−1074
GMの中和効力は、10−1074に対して増加され、または影響を受けず、およびある場合には、10−1074
GMは、PGT121感受性/10−1074耐性株を強力に中和した。PGT121様および10−1074様抗体に対して感受性のウイルスについてのAsn332gp120におけるPNGSとの相互作用以外、PGT121中和データを入手できる株からのgp120配列の分析において、10−1074耐性株には一般にAsn332gp120関連PNGSがないことを除き、ウイルス株の異なるカテゴリー(PGT121感受性/10−1074感受性、PGT121感受性/10−1074耐性、PGT121耐性/10−1074感受性)についてPNGS利用の明確なパターンは出てこない。
【0160】
実施例9 抗HIV−1中和mAbのインビボでの受動伝達
5つの単離された強力かつ広域作用性の抗HIV中和モノクローナル抗体をアカゲザルに投与し、24時間後にそれらのアガケザルを2つの異なるSHIVのいずれかで直腸内にチャレンジ感染した。チャレンジ感染した60匹の動物から得た結果を併せることにより、曝露されたサルの50%においてウイルス獲得を予防する血漿中の防御中和力価は、おおよそ1:100であった。
【0161】
動物実験
この研究において用いたマカクは、MHCクラスIMamu−A
*01対立遺伝子について陰性であった。
【0162】
R5指向性SHIVDH12−V3AD8の構築
SHIVAD8EO(PNAS 109,19769−19774(2012))gp120 V3コード領域の5’および3’の半分に対応するプライマー(フォワードプライマー:AGAGCATTTTATACAACAGGAGACATAATAGGAGATATAAGACAAGCACATTGCAACATTAGTAAAGTAAAATGGC、およびリバースプライマー:TCCTGGTCCTATATGTATACTTTTCCTTGTATTGTTGTTGGGTCTTGTACAATTAATTTCTACAGTTTCATTC)でのPCR突然変異誘発を用いて、これらのV3配列をpSHIVDH12_CL7分子クローンの遺伝的背景(J.of Virology 78,5513−5519(2004))に、Platinum PFX DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を使用して導入した。ゲル精製後、PCR産物をT4ポリヌクレオチドキナーゼ(GibcoBRL)で処理し、平滑末端結合してpSHIVDH12_V3AD8を生成し、それを使用してコンピテント細胞を形質転換させた。
【0163】
ウイルス
先ず、リポフェクタミン2000(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を使用して293T細胞をSHIVAD8EOまたはSHIVDH12−V3AD8分子クローンでトランスフェクトすることにより、ウイルスストックを調製した。48時間後に培養上清を回収し、アリコートを使用するまで−80℃で保管した。コンカナバリンA刺激性アカゲザルPBMC(500μL中、2×10
6細胞)を1時間のスピノキュレーション(J.of Virology 74,10074−10080(2000))によりトラスフェクト細胞上清で感染させ、同数/体積の活性化PBMCと混合し、培養培地を毎日置換して少なくとも12日間、培養物を維持した。上清培地の試料をピークRT生産時あたりでプールして個々のウイルスストックを調製した。
【0164】
抗体
11のモノクローナル抗体(VRC01、NIH45−46、45−46G54W、45−46m2、3BNC117、12A12、1NC9、および8ANC195、10−1074、PGT121、およびPGT126)を単離し、生産した。DEN3、デングウイルスNS1特異的ヒトIgG1モノクローナル抗体(PNAS 109,18921−18925(2012))、または対照ヒトIgG(NIH Nonhuman Primate Reagent Resource http://www.nhpreagents.org)を陰性対照抗体としてこの研究で使用した。曝露前受動伝達に選択したモノクローナル抗体を、ウイルスチャレンジ感染の24時間前に静脈内投与した。
【0165】
血漿ウイルスRNAレベルの定量
血漿中のウイルスRNAレベルをリアルタイム逆転写−PCR(ABI Prism 7900HT配列検出システム;Applied Biosystems)によって決定した。
【0166】
血漿中の抗体濃度
サル血漿中の投与したモノクローナル抗体の濃度を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により、組換えHIV−1JRFL gp120(Progenics Pharmaceuticals)またはHIVIIIB(Advanced Biotechnology inc)(J.of Virology 75,8340−8347(2001))を使用して測定した。簡単に言うと、マイクロタイタープレートをHIV−1 gp120(2μg/mL)で被覆し、一晩、4℃でインキュベートした。プレートをPBS/0.05%Tween−20で洗浄し、1%(容量/容量)BSAでブロックした。ブロッキング後、抗体または血漿試料の系列希釈物をそのプレートに添加し、1時間、室温でインキュベートした。アルカリホスファターゼに結合したヤギ抗ヒトIgG F(ab)2断片(Pierce)で結合を検出し、SIGMAFAST OPD(Sigma−Aldrich)で視覚化した。中和モノクローナル抗体の減衰半減期を、抗体投与後第5日または第7日で開始する血漿濃度に基づく単一指数減衰式によって算定した(J.of Virology 84,1302−1313(2010))。
【0167】
中和アッセイ
アカゲザルから採取した血漿試料中に存在する各mAbのインビトロ効力および中和活性を、2タイプの中和アッセイによって評価した;1)偽型チャレンジ感染ウイルスでのTZM−blエントリアッセイ(AIDS Res Hum Retroviruses 26,89−98(2010))または2)複製可能なウイルスでの14日PBMC複製アッセイ(J.of virology 76,2123−2130(2002))。TZM−blアッセイのために、SHIVAD8EOまたはSHIVDH12_V3AD8に由来するenv遺伝子を発現する偽型ウイルスであって、それぞれのエンベロープタンパク質を発現するpNLenv1およびpCMVベクターで293T細胞をコトランスフェクトすることによって調製したものである偽型ウイルス(J.of Virology 84,4769−4781(2010))とともに、系列希釈mAbまたは血漿試料をインキュベートした。50%中和阻害用量(IC50)力価を、細胞対照RLU減算後、ウイルス対照ウェル中のレベルと比較した相対発光単位(RLU)の50%低下を生じさせる希釈度として算定した(J.of Virology 84,1439−1452(2010))。サブタイプB HIV−1単離体に対して広範な中和活性を呈示する(J.of General Virology 91,2794−2803(2010))、コホート研究からの血漿試料を使用して、TZM−bl細胞アッセイにより、SHIVDH12_V3AD8分子クローンの中和表現型(力価レベル)を決定した。
【0168】
動物防御力価の決定および統計分析
ウイルスチャレンジ感染した動物の50または80%のウイルス獲得を予防する結果となる、各R5 SHIVに対する血漿中の中和力価の算定を、リードおよびミュンヒの方法(Am J Hyg 27,493−497(1938))を用いて行った。1つの有意な異常値の動物(DEW7)は、算定から割愛した。60匹すべての受動免疫サルを使用してインビボで滅菌免疫性(sterilizing immunity)を付与するために要する血漿中の力価(Cambridge University Press,Cambridge,England,ed.3rd,2007)の間の関係を、尤度比検定に基づくこのモデルからのp値を含んで、モデル化するために、プロビット回帰を用いた。様々なインビボ防御レベル(33%、50%、80%、90%および95%)に必要な血漿力価をプロビッドモデル推定値から決定し、ブートストラップ法を用いて、90%信頼区画を構築した。
【0169】
結果:
SHIVDH12_V3AD8は、SHIVAD8EO同様、Tier2抗HIV−1中和感受性特性を有した(表13)。SHIVDH12_V3AD8を静脈内にまたは直腸内に接種したアカゲザルは、感染後(PI)第2から3週の時点で血漿の105から107ウイルスRNAコピー/mLの範囲でピークのウイルス血症を呈示した。大部分のSHIVDH12_V3AD8感染動物において、血漿ウイルス負荷量は、第8から20週PIの間にバクグラウンドレベルに低下する。
【0170】
11の最近報告された広域反応性抗HIV−1 mAbに対するSHIVAD8EOの中和感受性を、最初にTZM−blアッセイシステムにおいて判定した(
図11AおよびB)。これらの抗体のうちの8つ、VRC01、NIH45−46(23)、45−46G54W、45−46m2、3BNC117、12A12、1NC9および8ANC195は、gp120 CD4 bsを標的にし(Science 333,1633−1637(2011))、ならびに3つ、10−1074、PGT121およびPGT126(Nature 477,466−470(2011))は、HIV−1 gp120 N332グリカンの存在に依存した。SHIVAD8EOに対して試験したとき、3つのグリカン依存性mAbすべてが、CD4 bs mAbより大きい効力を呈示した(
図11A)。gp120 N332グリカンを標的にする前記3つのmAbについてのIC50値は、0.09から0.15μg/mLの範囲であった。CD4 bs mAbは、最も強力である3BNC117により、はるかに広範囲(0.14から6.34μg/mL)のIC50中和活性を呈示した。中和mAb効力の同様の序列(グリカン依存性>CD4 bs依存性)が、SHIVDH12−V3AD8でも観察されたが、その中和活性は、SHIVAD8EOについて観察されたIC50値と比較してはるかに広い(>100倍)範囲にわたって分布した(
図11B)。SHIVDH12−V3AD8は、SHIVAD8EOより、グリカンターゲッティングmAbに対して多少感受性が高く、CD4 bs中和mAbに対して耐性が高かった。
【0171】
図11に示した結果に基づき、5つの中和mAbを曝露前受動伝達研究に選択した:VRC01(これは、特性付けすべき新たに単離された広域作用性NAbの第一のCD4bs NAbであったので);CD4 bs mAb 45−46m2および3BNC117(これらの両方は、SHIVAD8EOおよびSHIVDH12−V3AD8に対して強い中和活性を呈示した);ならびにgp120 N332グリカン依存性mAb、PGT121および10−1074。
【0172】
受動伝達実験についてのプロトコルは、漸減量の中和mAbの静脈内投与および24時間後の動物への直腸内チャレンジ感染であった。目標は、ウイルス獲得を阻止することであり、個々のマカクへのヒト化抗HIV mAbの反復投与がそれらの効力を低下させることがあり得、および/またはことによると、アナフィラキシー反応を誘導することがあり得るという知識を加味して、単回接種後にインビボ感染を確立するために十分なサイズのSHIVチャレンジ感染用量を選択した。これに関して、我々は、アカゲザルにおいてSHIVAD8の直腸内力価測定を以前に行い、アカゲザルPBMCにおけるエンドポイント希釈によって決定した1×103 TCID50の接種が、おおよそ3の動物感染用量50(AID50)を投与することと等価であることを報告した(J.of virology 86,8516−8526(2012))。実際、3 AID50の単回直腸内接種は、10匹のアカゲザルのうちの10匹においてSHIVAD8EOおよびSHIVDH12−V3AD8での感染の確立に成功する結果となった。
【0173】
第一の受動伝達実験の対照として、抗デングウイルスNS1 IgG1 mAbを動物に静脈内投与し、24時間後にSHIVAD8EOでチャレンジ感染した。両方のサル(ML1およびMAA)が急速に感染し、第2週PIに血漿ウイルス血症のピークレベルを生じた。VRC01は、ウイルス獲得に対する防御について試験した第一の抗HIV−1中和mAbであり、それを50mg/kgの用量で2匹のマカクに投与した。接種を受けた2匹のマカクのうちの1匹(DEGF)は、SHIVAD8EOチャレンジ感染から完全に防御され、45週の観察期間にわたって血漿ウイルス血症の形跡も細胞随伴性ウイルスDNAの形跡もなかった。他方の50mg/kg VRC01レシピエント(DEH3)は感染したが、ピークの血漿ウイルス血症が第5週PIまで遅延された。より少量(20mg/kg)のVRC01を投与した追加の二匹のマカクは、SHIVAD8EOチャレンジ感染から防御されなかった。これらの結果を表13に要約する。
【0174】
SHIVAD8EOチャレンジ感染に対するPGT121の防御特性を次に調査した。PGT121は、TZM−blアッセイにおいて測定された最も強力なグリカン標的化中和mAbの1つであった(
図11)。VRC01で得た結果に基づき、20mg/kgでのインビボPGT121 mAb力価測定から始めることを選択した。チャレンジ感染を受けた2匹のサル(KNXおよびMK4)は、SHIVAD8EOチャレンジ感染に耐えた。より少ない量(すなわち、5mg/kg、1mg/kg、または0.2mg/kg)のPGT121を投与したとき、2匹動物のうち1匹、2匹動物のうち2匹、および2匹の動物のうち0匹が、それぞれ防御された(表13)。
【0175】
SHIVDH12−V3AD8獲得を阻止するVRC01およびPGT121 mAbの能力を同様に評価した(表13)。VRC01で得られた結果は、SHIVAD8EOチャレンジ感染で観察されたものに匹敵した:30mg/kgの2匹のレシピエントのうちの1匹は、SHIVDH12−V3AD8感染の確立から防御された。PGT121 mAbは、SHIVDH12−V3AD8獲得の予防においてVRC01より著しく高かった:0.2mg/kg PGT121の2匹のレシピエントのうちの2匹が感染に耐えた。PGT121は、SHIVAD8EOインビボ感染に対して、SHIVDH12−V3AD8の予防において多少有効であるようでもあった(表13)。この結果は、インビトロアッセイにおける2つのSHIVの中和についてのPGT121のIC50値の8倍差(
図11)と一致する。
【0176】
アカゲザルへの10−1074、3BNC117または45−46m2中和mAbの受動伝達、続いてのSHIVAD8EOまたはSHIVDH12−V3AD8いずれかでのチャレンジ感染の結果を表13に要約する。10−1074 mAbは、両方のSHIVのインビボ獲得を強力に阻止した。CD4bs 3BNC117および45−46m2 mAbを、
図11に示すインビトロ中和実験における両方のSHIVに対するそれらのIC50値に基づいて、マカクへの受動伝達に選択した。3BNC117は、5mg/kgで2匹のサルのうちの2匹においてSHIVAD8EO感染の阻止に成功したが、1mg/kgの用量を与えた他の2匹の動物では阻止に成功しなかった(表13)。これは、同じ量の3BNC117を、SHIVDH12−V3AD8チャレンジ感染を受けたマカクに投与したときに観察された結果(2匹のうちの1匹が5mg/kgで感染し、2匹のうちの1匹が1mg/kgで感染した)に類似していた。
【0177】
受動伝達を受けたマカクから様々な時点で採取した血漿試料をHIV−1 gp120 ELISAによって分析して中和mAb濃度を決定した。一般に、チャレンジ感染の時点(抗体投与の24時間後)の各mAbの血漿濃度は、投与した抗体の用量と相関した(表13)。
【0178】
血漿mAb濃度とインビボ防御の関係を
図12に示す。評価した5つの中和mAbのうち、PGT121は、両方のウイルスに対して明らかに最も有効であり、SHIVDH12−V3AD8は、このmAbに対してのほうが多少大きい感受性を呈示した(2匹のサルのうちの2匹が0.2μg/mLの血漿濃度で防御された)。対照的に、ほぼ400μg/mLのVRC01の血漿濃度が、同じSHIVDH12−V3AD8チャレンジ感染ウイルスから2匹の動物のうちの1匹を防御するために必要であった(表13)。この研究でマカクに投与した最も強力なCD4 bs mAb、3BNC117は、いずれかのSHIVの獲得を予防する点でもVRC01よりおおよそ6から10倍有効であった(
図12、表13)。
【0179】
PGT121、10−1074、3BNC117およびVRC01 mAbの循環半減期は、かなり似ていた:それぞれ3.5日、3.5日、3.3日および3.1日。対照的に、45−46m2の半減期は極度に短く、決定することができなかった。20mg/kgのヒト化中和mAb投与の24時間後の数匹のマカクにおける血漿mAb濃度(すなわち、おおよそ250μg/mL[表13])に基づき、20mg/kgの45−46m2を受けた2匹のサルは、15.0および17.6μg/mLの血漿mAb濃度しか有さず、これは、24時間での他の中和mAbに比べて95%より大きな減衰であった。
【0180】
マカクをSHIVAD8EOおよびSHIVDH12−V3AD8でチャレンジ感染したとき、mAb投与の24時間後に採取した血漿試料を用いて中和力価を測定した。表13に示すように、抗ウイルス血漿中和力価とSHIV感染からの防御との間に良好な相関関係が観察された。2つのグリカン依存性mAb(PGT121および10−1074)の投与の結果、ウイルスチャレンジ感染時に抗HIV−1中和活性の最高力価が明確に得られた。45−46m2 mAbのレシピエントにおいて測定された力価は、その極度に短いインビボ半減期のため、検出限界であったかまたは検出不能であった。
【0181】
チャレンジ感染を受けたサルの50%においてウイルス獲得を予防するために必要とされる、血漿中で測定される、中和力価を、ReedおよびMuenchにより記載された方法(Am J Hyg 27,493−497(1938))を用いて算定した。SHIVAD8EOでチャレンジ感染した28匹のサル、またはSHIVDH12−V3AD8でチャレンジ感染した32匹のサルについて、これらの防御力価を別々に導出した(表15および16)。SHIVAD8EOまたはSHIVDH12−V3AD8でチャレンジ感染した動物の50%を防御するために要する血漿中和力価をそれぞれ1:115および1;96であると算定した。これらの類似した力価が、1)同一の経路および接種サイズによるSHIVチャレンジ感染および2)同じ中和mAb集団の投与後に得られたので、60匹すべての動物からの中和データを併せ、プロビット回帰に付して、血漿中和力価とインビボ防御との関係を調査した。さらなる確認として、SHIVウイルスについての項を60匹すべてのマカクに関するプロビット回帰モデルに含めたとき、2つのSHIVウイルス間の差の証拠はなかった(p=0.16)。60匹のマカクの群全体に適用したとき、プロビット回帰は、1:104の血漿中和力価が動物の50%においてウイルス獲得を予防すると推定した。データのプロビッド分析により、1:57または1:329の50%血漿中和力価が、被曝動物のそれぞれ33%または80%を防御することも推定した。
【0182】
実施例10 慢性感染のHIVインビボモデルへの中和mABの投与
方法の要約:SHIVAD8EOに対する広域作用性3BNC11724および10−107423中和mAbの中和活性を、最初に、SHIVAD8EOに対するTZM−bl細胞システムで判定した。R5指向性SHIVAD8EOでチャレンジ感染した慢性感染の動物におけるウイルス獲得を阻止するまたは血漿ウイルス血症を制御するそれらの能力を、血漿ウイルス負荷量および細胞随伴性ウイルス核酸をモニターすることにより評価した;CD4+ T細胞サブセットのレベルをフローサイトメトリーによって測定した。循環ウイルス変異体のSGA分析および血漿中の抗体レベルの決定。NAbの血漿濃度を、10−1074または3BNC117のいずれかにのみ感受性があるHIV−1シュードウイルス調製物に対する中和活性を測定することによって決定した。
【0183】
結果:
慢性感染マカクの2つの群を評価した。159週間感染しており、循環CD4+ T細胞の類似したおよび有意な減少を続けた2匹の臨床的に無症状の動物(DBZ3およびDC99A)からなる第一の群(表17)。進行中のSHIV感染を治療するための治療法は、101074と3BNC117の10mg/kg用量での併用投与であった。mAb投与時、マカクDBZ3およびDC99Aにおける血漿ウイルス負荷量は、それぞれ1.08×104および7.6×103RNAコピー/mLであった。両方のサルは、併用抗HIV−1 mAb治療に応答し、血漿ウイルス血症が直ぐにおよび急速に低減されて7から10日以内に検出不能レベルになった。2つのmAbの単回投与後の、マカクDBZ3およびDC99Aの血漿中の測定可能なSHIVAD8EOの抑制は、それぞれ、27および41日続いた。各場合において、血漿ウイルス血症は、治療前のレベルに逆戻りした。
【0184】
各々が同じく3年より長くSHIVAD8EOに感染しており、ならびに間欠性下痢およびまたは食欲低下の臨床な症状があった3匹の動物(DBX3、DCF1およびDCM8)の第二の群を、2つの中和抗体で治療した(表17)。mAb投与時、マカクDCM8における循環CD4+ T細胞のレベルは、43細胞/μLしかなく、動物DCF1(105細胞/μL)およびDBXE(158細胞/μL)でのほうが多少高かった。血漿ウイルス負荷量は、動物DBXEおよびDCF1では105RNAコピー/mLを超えており、サルDCM8では有意に、より低かった(1.59×103 RNAコピー/mL)。2つのmAbのサルDBXEへの投与は、第0日での2.0×105 RNAコピーから第20日での検出不能な血漿中レベルへの二相性の低下をもたらした。この後、数日以内に、DBXEでは高い循環ウイルスレベルが復活した。より少量の血漿ウイルス負荷量および非常に少ない循環CD4+ T細胞数を有するマカクDCM8は、mAb処置開始後第6日と第20日の間にウイルス血症の検出不能なレベルへの急速な低下を経験した。最後に、広域反応性抗HIV−1 NAbを産生することが以前に報告されている動物DCF1は、併用mAb療法に応答して第6日までに血漿ウイルス血症の一時的および比較的ささやかな27倍の低下を呈示した後、ウイルス負荷量が、高い治療前レベルに戻った。
【0185】
PBMC随伴性ウイルスRNAおよびDNAレベルも抗体投与前および後に決定した(表18)。各動物について、mAb治療は、血漿ウイルス負荷量測定値とよく相関して細胞随伴性ウイルスRNAレベルの低下をもたらした。抗体治療の結果として細胞随伴性ウイルスDNAレベルについて一貫したパターンは観察されなかった。慢性SHIVAD8EO感染サルへの中和mAbの投与も、特に、非常に高いウイルス負荷量を有する動物では、循環CD4+ T細胞レベルに有益な効果を及ぼした。マカクDBXEおよびDCF1におけるCD4+ T細胞数は、mAb媒介ウイルス抑制期間には2から3倍増加したが、ウイルス血症が再び検出可能になるにつれて治療前のレベルに徐々に減少した。
【0186】
各mAbの血漿濃度を、一方または他方に感受性だが両方の抗体には感受性でない選択HIV−1シュードウイルス株に対する血漿中和活性を測定することによって決定した(
図13A)。すべての治療動物において、SHIVAD8EOウイルス血症の抑制が、おおよそ1から3μg/mLの閾血漿mAb濃度に達するまで維持された(
図13Bおよび13C)。これは、血漿ウイルスRNAレベルのささやかな一時的低下が観察されたマカクDCF1にも当てはまった。興味深いことに、臨床症状のあるマカクDCM8およびDCF1に投与されたmAbは、半減期を短縮したか、または検出不能であった。前に述べたように、マカクDCM8は、極度に低いCD4+ T細胞レベル(43細胞/μL血漿))を有し、マカクDCF1は、その悪化する臨床状態のため、治療開始後第56日に安楽死させなければならなかった。DCF1の剖検は、播種性胃腸クリプトスポリジウム症、膵炎および胆管炎を特徴とする、重度の腸症を明らかにした。
【0187】
SGA分析を用いて、アミノ酸置換が、10−1074または3BNC117 mAbに対する感受性に影響を及ぼすと以前に示されたgp120領域において起こったかどうかを判定した。各場合、免疫治療後に血漿中に存在するリバウンドウイルスは不変であった。再出現ウイルスの感受性をさらに試験するために、10−1074と3BNC117の併用療法(各々の10mg/kg)を2匹の臨床的に無症状のサル(DBZ3およびDC99A)に再び投与した。各動物のウイルス負荷量は、再び急速に降下し、第二免疫治療サイクルの第7日の時点で検出不能になった。ウイルス血症は、マカクDBZ3において7日間、およびサルDC99Aにおいて21日より長く抑制された。考え合わせると、これらの結果は、これらの2匹の動物における第一処置サイクル後のウイルスの再出現は、抗体選択ウイルス耐性ではなくインビボでの不十分なmAbレベルを表したことを示唆する。
【0188】
【表3】
【0189】
【表4】
【0190】
【表5】
【0191】
【表6】
【0192】
【表7】
【0193】
【表8】
【0194】
【表9】
【0195】
【表10】
【0196】
【表11】
【0197】
【表12】
【0198】
【表13】
【0199】
【表14】
【0200】
【表15】
【0201】
【表16】
【0202】
【表17】
【0203】
【表18】
【0204】
好ましい実施形態の上述の実施例および説明は、クレームによって定義される本発明を制限するものではなく、例証するものと考えるべきである。容易に理解されるように、上記の特徴の非常に多くの変形形態および組み合わせを、クレームに記載の本発明から逸脱することなく用いることができる。かかる変形形態は、本発明の範囲からの逸脱とはみなされず、すべてのかかる変形形態は、後続のクレームの範囲内に含まれると解釈される。本明細書において引用するすべての参考文献は、それら全体が参照により本明細書に援用されている。