特許第6461864号(P6461864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461864
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】射出成形機の加熱筒装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/74 20060101AFI20190121BHJP
【FI】
   B29C45/74
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-135678(P2016-135678)
(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公開番号】特開2018-1713(P2018-1713A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2017年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 勇一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】甲田 貴浩
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−136852(JP,A)
【文献】 実開昭58−190122(JP,U)
【文献】 特開2016−083866(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1132440(KR,B1)
【文献】 特開平05−269797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/72−45/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒本体における外周面に少なくとも複数の加熱部を軸方向に沿って付設した温調機構を有する加熱筒及びこの加熱筒を覆う加熱筒カバーを備える射出成形機の加熱筒装置において、前記加熱筒に取付けることにより前記温調機構との間に所定の遮蔽空間を形成して前記加熱筒の上半部を覆う形状に形成したカバー体部,及びこのカバー体部の内面から前記温調機構に向けて突出し、前記遮蔽空間を複数の閉空間に分割する複数の仕切部とを一体に設けた保温カバー部と、前記加熱筒の下半部を覆う少なくとも一部に多孔面を形成した下保護カバー部とを有する加熱筒カバーを備えることを特徴とする射出成形機の加熱筒装置。
【請求項2】
前記カバー体部は、一枚のプレート部材を用いた単層構造,又は複数のプレート部材を所定の隙間を介して積層した複層構造により構成することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の加熱筒装置。
【請求項3】
前記仕切部は、前記加熱筒における異なる加熱領域毎に配することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の加熱筒装置。
【請求項4】
前記仕切部は、先端部の少なくとも一部を、前記加熱部の前記軸方向における相互間に生じる隙間に介在させることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の加熱筒装置。
【請求項5】
前記閉空間は、前記加熱筒における異なる加熱領域毎に設定することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の加熱筒装置。
【請求項6】
前記温調機構は、前記外周面の周方向に沿って付設したバンドヒータを用いた加熱部を備えることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の加熱筒装置。
【請求項7】
前記温調機構は、前記外周面と前記バンドヒータ間に設けた空気通路により構成する空冷式の冷却部を備えることを特徴とする請求項6記載の射出成形機の加熱筒装置。
【請求項8】
前記加熱筒カバーは、前記カバー体部の外方に配設して当該カバー体部の一部又は全部を覆う少なくとも一部に多孔面を形成した保護カバー部を備えることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の加熱筒装置。
【請求項9】
前記保護カバー部は、前記加熱筒の径方向における左右両側に、前記加熱筒側に取付ける取付部を備えるとともに、少なくとも当該左右両側における操作面を配した側の取付部は、外方に突出部を生じない係止構造に構成することを特徴とする請求項8記載の射出成形機の加熱筒装置。
【請求項10】
前記下保護カバー部は、前記加熱筒の径方向における左右両側に、前記加熱筒側に取付ける取付部を備えるとともに、少なくとも当該左右両側における操作面を配した側の取付部は、外方に突出部を生じない係止構造に構成することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の加熱筒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱筒本体の外周面に少なくとも複数の加熱部を軸方向に沿って付設してなる射出成形機の加熱筒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機の射出装置を構成する加熱筒は、内部に供給される樹脂材料を溶融状態に維持するため、外周面に、軸方向に沿って複数の加熱部を付設することにより、300〔℃〕前後の高温状態に加熱するとともに、軸方向に最適な温度分布が得られるように各加熱領域毎に温度制御が行われる。このため、保温性を確保して省エネルギ性を高めるとともに、オペレータに対する接触防止を目的として、加熱筒の周囲を覆う加熱筒カバーを付設している。
【0003】
従来、この種の加熱筒カバー類としては、特許文献1に開示される加熱筒保温装置、特許文献2に開示される加熱筒保護カバー、特許文献3に開示される保温方法、特許文献4に開示される温調機構が知られている。
特許文献1の加熱筒保温装置は、プラスチック成形機の消費電力を低減すると共に保温効果を高めることを目的としたものであり、具体的には、ステンレス材を用い2重構造とした保温カバー表面を鏡面に仕上げ、加熱筒表面から放射された熱線(電磁波)を加熱筒に向かって反射させ、また、内側の反射板より反加熱筒側に放射された熱線(電磁波)を外側の反射板で加熱筒側に反射させると共に空気層が保温材の役割を兼ね備え効率的な保温状態を保つようにしたものである。
【0004】
特許文献2に開示される加熱筒保護カバーは、カバーの表面から外気への放熱能力を増加させて、カバーの表面温度を低く抑えることを目的としたものであり、具体的には、ノズルを装着した加熱筒が取り付けられた樹脂射出機構部と、加熱筒で加熱され溶融された溶融樹脂がキャビティ内に注入される金型のうち固定側金型が取り付けられる固定プラテンと、樹脂供給口から投入された材料を加熱溶融する加熱筒の外周を覆う加熱筒保護カバーとを備え、その加熱筒保護カバーの外側表面の少なくとも一部に放熱塗料が塗布されたものである。
【0005】
特許文献3に開示される保温方法は、射出シリンダの外周面に断熱カバーを巻き付けて保温する場合に比べて射出シリンダを高い精度で温度制御し、高品質の成形品を成形するとともに、射出シリンダに対して保温ジャケットを簡易に着脱可能にして成形作業を効率化することを目的としたものであり、具体的には、ノズルタッチ部を除いた射出シリンダの外周面に対し、断熱材が内包された保温ジャケットを、所要幅の空隙を介して全体的に巻き付けて射出シリンダの各部位を所定の設定温度に保つようにしたものである。
【0006】
特許文献4に開示される温調機構は、断熱材を用いて省エネ効果が得られながらも、簡易にオーバーシュートを抑制できるようにすることを目的としたものであり、具体的には、ヒータにより加熱されると共に内部で樹脂を溶融させて、溶融樹脂を吐出させる加熱シリンダと、少なくともヒータの配置部分において、加熱シリンダの周方向全周を覆う断熱材と、加熱シリンダの温度に応じて、断熱材の少なくとも一部を加熱シリンダから剥離させる調温機構と、を備えて構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−291545号公報
【特許文献2】特開2013−226816号公報
【特許文献3】特開2010−083090号公報
【特許文献4】特開2009−172957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した特許文献1〜4に開示される従来の加熱筒カバー類は、次のような問題点があった。
【0009】
即ち、いずれの加熱筒カバー類も、断熱性を確保し、保温性を高めることにより、消費電力を低減し、省エネルギ性を高めることを企図しているが、保温性を高めることは、反面、温度を速やかに低下させることができないことを意味するため、制御性(応答性)を確保する観点からはマイナス要因となる。このため、特許文献3及び4のように、断熱性能をいわば調整できるようにした構造も提案されているが、構造が複雑化するとともに、煩わしい操作を伴うなど、必ずしも適切な改善策とは言い難い。
【0010】
また、通常、加熱筒の軸方向に沿って配した複数の加熱部により、軸方向に最適な温度分布が得られるように各加熱領域毎に温度制御を行っているが、保温性を高めることは、加熱筒カバー類の内側に高温の空気を閉じ込めることになり、軸方向の温度分布(温度勾配)を平均化させる作用も強くなる。結局、この場合、正規の温度分布を維持しようとする制御作用により消費電力が大きくなるなど、必ずしも十分な消費電力の低減及び省エネルギ性が図られているとは言い難い。
【0011】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の加熱筒装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る射出成形機Mの加熱筒装置Hは、上述した課題を解決するため、加熱筒本体2mにおける外周面2msに少なくとも複数の加熱部3a,3b,3c…を軸方向Fsに沿って付設した温調機構3mを有する加熱筒2及びこの加熱筒2を覆う加熱筒カバーを備える加熱筒装置を構成するに際して、加熱筒2に取付けることにより温調機構3mとの間に所定の遮蔽空間Sを形成して加熱筒2の上半部2uを覆う形状に形成したカバー体部5m,及びこのカバー体部5mの内面から温調機構3mに向けて突出し、遮蔽空間Sを複数の閉空間Sab,Scd…に分割する複数の仕切部5a,5bc,5de…とを一体に設けた保温カバー部5と、加熱筒2の下半部2dを覆う少なくとも一部に多孔性を有する下保護カバー部14とを有する加熱筒カバー1を備えてなることを特徴とする。
【0013】
この場合、発明の好適な態様により、加熱筒カバー1を構成するに際し、カバー体部5mは、一枚のプレート部材を用いた単層構造,又は複数のプレート部材11p,11qを所定の隙間Spを介して積層した複層構造11により構成することができる。また、仕切部5a,5bc…(閉空間Sab,Scd…)は、加熱筒2における異なる加熱領域Zf,Zm…毎に設けることができる。他方、加熱筒装置Hを構成するに際しては、仕切部5a,5bc…は、先端部の少なくとも一部を、加熱部3a,3b…の軸方向Fsにおける相互間に生じる隙間Sg…に介在させることができる。なお、温調機構3mには、外周面2msの周方向Ffに沿って付設したバンドヒータB…を用いた加熱部3a,3b…を設けることができるとともに、外周面2msとバンドヒータB…間に設けた空気通路により構成する空冷式の冷却部4a,4b,4c…を設けることができる。また、加熱筒カバー1には、保温カバー部5の外方に配設してカバー体部5mの一部又は全部を覆う少なくとも一部に多孔性を有する保護カバー部12を設けることができる。この保護カバー部12の取付けに際しては、加熱筒2の径方向Fdにおける左右両側に、加熱筒2側に取付ける取付部13f…,13r…を設けるとともに、少なくとも当該左右両側における操作面100を配した側の取付部13f…は、外方に突出部を生じない係止構造に構成することができる。また、下保護カバー部14の取付けに際しては、加熱筒2の径方向Fdにおける左右両側に、加熱筒2側に取付ける取付部15f…,15r…を設けるとともに、少なくとも当該左右両側における操作面100を配した側の取付部15f…は、外方に突出部を生じない係止構造に構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
このような構成を有する本発明に係る射出成形機Mの加熱筒装置Hによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0015】
(1) 加熱筒カバー1は、加熱筒2に取付けることにより温調機構3mとの間に所定の遮蔽空間Sを形成して加熱筒2の上半部2uを覆う形状に形成したカバー体部5m,及びこのカバー体部5mの内面から温調機構3mに向けて突出し、遮蔽空間Sを複数の閉空間Sab,Scd…に分割する複数の仕切部5a,5bc,5de…とを一体に設けた保温カバー部5を備えるため、基本的な作用効果である、保温性の向上による消費電力の低減及び省エネルギ性の向上を図れることに加え、特に、加熱部3a,3b…による空気の対流(移動)が仕切部5a,5bc…により阻止及び断熱されるため、任意の閉空間Sab,Scd…による他の閉空間Sab,Scd…への影響(干渉)を大きく低減できる。この結果、各閉空間Sab,Scd…単位における温度制御の応答性を高めることができるとともに、軸方向Fsの温度分布(温度勾配)に対する制御性を高めることができる。しかも、結果的に更なる消費電力の低減による省エネルギ性の向上にも寄与できる。
【0016】
(2) 加熱筒カバー1に、加熱筒2の下半部2dを覆う少なくとも一部に多孔性を有する下保護カバー部14を設けたため、オペレータに対する下半部高温部位からの保護を図ることができる。これにより、より安全性を高めることができるとともに、特に、高温の空気が対流しない加熱筒2の下半部2dは保温機能が不要になり、下保護カバー部14のみで足りるため、構成部材の削減による低コスト性及び組立性の向上に寄与できる。
【0017】
(3) 好適な態様により、カバー体部5mは、一枚のプレート部材を用いた単層構造,又は複数のプレート部材11p,11qを所定の隙間Spを介して積層した複層構造11により構成できるなど、全体の保温性(断熱性)を任意に設定できるため、様々なグレードや性能要求に対して柔軟に応えることができる。
【0018】
(4) 好適な態様により、仕切部5a,5bc…における先端部の少なくとも一部を、加熱部3a,3b…の軸方向Fsにおける相互間に生じる隙間Sg…に介在させるようにすれば、仕切部5a,5bc…を加熱部3a,3b…に対して径方向Fdにオーバーラップさせ、仕切部5a,5bc…により形成される閉空間Sab,Scd…の閉塞性をより高めることができるため、更なる制御の応答性及び制御性の向上に寄与できるとともに、組付性及び組付強度の向上にも寄与できる。
【0019】
(5) 好適な態様により、仕切部5a,5bc…(閉空間Sab,Scd…)を、加熱筒2における異なる加熱領域Zf,Zm…毎に設ければ、各加熱領域Zf,Zm…毎に設定される設定温度に対する追従性(制御性)をより高めることができる。
【0020】
(6) 好適な態様により、温調機構3mに、外周面2msの周方向Ffに沿って付設したバンドヒータB…を用いた加熱部3a,3b…を設ければ、従来より一般的に用いられている加熱部3a,3b…に対してそのまま適用できるとともに、従来の加熱筒カバーを構成部品の一部として利用できるなど、実施に際しての変更や追加がほとんど不要になるため、汎用性を確保できるとともに、容易かつ低コストに実施できる。
【0021】
(7) 好適な態様により、温調機構3mに、外周面2msとバンドヒータB…間に設けた空気通路により構成する空冷式の冷却部4a,4b…を設ければ、冷却側に対する制御の応答性及び制御性を高めることができるため、全体の制御性をより高めることができる。
【0022】
(8) 好適な態様により、加熱筒カバー1を構成するに際して、保温カバー部5の外方に配設してカバー体部5mの一部又は全部を覆う少なくとも一部に多孔性を有する保護カバー部12を設けて構成すれば、オペレータに対する高温部分からの保護を図れるため、より安全性を高めることができるとともに、保温性の安定化及び更なる保温性の向上にも寄与できる。
【0023】
(9) 好適な態様により、保護カバー部12の取付けに際して、加熱筒2の径方向Fdにおける左右両側に、加熱筒2側に取付ける取付部13f…,13r…を設けるとともに、少なくとも当該左右両側における操作面100を配した側の取付部13f…を、外方に突出部を生じない係止構造に構成すれば、オペレータが作業するエリアにおける無用な突出部分を排除できるため、作業性及び安全性、更にはデザイン性(形状性)の向上に寄与できる。
【0024】
(10) 好適な態様により、下保護カバー部14の取付けに際して、加熱筒2の径方向Fdにおける左右両側に、加熱筒2側に取付ける取付部15f…,15r…を設けるとともに、少なくとも当該左右両側における操作面100を配した側の取付部15f…を、外方に突出部を生じない係止構造に構成すれば、オペレータが作業するエリアにおける無用な突出部分を排除できるため、作業性及び安全性、更にはデザイン性(形状性)の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の好適実施形態に係る加熱筒装置の一部抽出拡大図を含む一部断面側面図、
図2】同加熱筒装置の図3中A−A線の一部抽出拡大図を含む断面正面図、
図3】同加熱筒装置の全体を示す外観側面図、
図4】同加熱筒装置を備える射出装置の制御系を含む全体構成図、
図5】同加熱筒装置に備える加熱筒カバーを部品単位で分解した斜視図、
図6】同加熱筒装置の加熱筒カバーを構成するカバー体部の内面斜視図、
図7】同加熱筒装置を用いた成形時におけるショット数に対する加熱筒電力量の変化特性図、
図8】同加熱筒装置を用いた成形時におけるショット数に対するヒータ出力率の変化特性図、
図9】同加熱筒装置を用いた成形時におけるショット数に対する樹脂温度の変化特性図、
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係る加熱筒装置Hの構成について、図1図6を参照して具体的に説明する。
【0028】
図4中、Miは射出装置であり、この射出装置Miと不図示の型締装置により射出成形機Mが構成される。本実施形態に係る加熱筒装置Hは、この射出装置Miの概ね前半部分が含まれる。
【0029】
加熱筒装置Hは、大別して、加熱筒2及びこの加熱筒2を覆う加熱筒カバー1を備える。この場合、加熱筒2には、加熱筒本体2m及びこの加熱筒本体2mの外側に配した温調機構3mが含まれる。
【0030】
加熱筒本体2mは、前端に射出ノズル2nを有するとともに、加熱筒本体2mの後端は、加熱筒本体2mの内部に成形材料を供給するホッパー21hを有する材料供給部21に結合する。また、加熱筒本体2mの内部にはスクリュ22を挿入し、このスクリュ22の後端は、材料供給部21の後方に延出することにより、当該スクリュ22を回転駆動及び進退駆動する詳細を省略したスクリュ駆動部23に接続する。
【0031】
そして、加熱筒本体2mの外周面2ms及び射出ノズル2nの外周面2nsに温調機構3mを付設する。温調機構3mは、射出ノズル2nの外周面2nsに付設した加熱部3sを備えるとともに、加熱筒本体2mの外周面2msの軸方向Fsに沿って付設した複数の加熱部3a,3b,3c,3d,3e,3f及び冷却部4a,4b,4c,4d,4e,4fを備える。この場合、各加熱部3a,3b…3fには、外周面2msの周方向Ffに沿って付設した(巻いた)バンドヒータB…を用いる。一般に、加熱部3a,3b…3fには、従来よりバンドヒータB…が用いられている。本実施形態に係る加熱筒装置Hは、このようなバンドヒータB…を用いた加熱部3a,3b…3fに対してそのまま最適な形態により適用できる。したがって、後述するように、従来の加熱筒カバーを構成部品の一部として利用できるなど、実施に際しての変更や追加がほとんど不要になるため、汎用性を確保できるとともに、容易かつ低コストに実施できる利点がある。
【0032】
また、冷却部4a,4b…4fには、外周面2msとバンドヒータB…間に設けた空気通路(エアジャケット)により空冷式により構成する。この空気通路は、図示を省力したが、図2及び図5に示すように、例えば、冷却部4e(他の冷却部4a,4b…も同じ)の場合には、外周面2msとバンドヒータB間に、ジグザグパターン又は平行に配した多数のパターンなどのスリットを形成したプレート部材Cを介在させ、このスリットの一端に連通するエア供給口32を設けて構成する。なお、スリットの他端は不図示のエア排出口に連通させることにより大気に開放される。このような冷却部4a,4b…4fを設ければ、冷却側に対する制御の応答性及び制御性も高めることができるため、全体の制御性をより高めることができる利点がある。図2中、33は熱電対を用いた温度センサT(図4参照)の取付口(挿入口)を示す。
【0033】
この場合、加熱部3sは射出ノズル2n(ノズル加熱領域)を、また、冷却部4aを含む加熱部3a及び冷却部4bを含む加熱部3bは、加熱筒本体2mの前部(前部加熱領域Zf)を、冷却部4cを含む加熱部3c及び冷却部4dを含む加熱部3dは、加熱筒本体2mの中間部(中間部加熱領域Zm)を、冷却部4eを含む加熱部3eは、加熱筒本体2mの後部前側(後部前側加熱領域Zrf)を、冷却部4fを含む加熱部3fは、加熱筒本体2mの後部後側(後部後側加熱領域Zrr)を、それぞれ加熱又は冷却(空冷)する。このように、加熱筒本体2mにおける異なる加熱領域となる、前部加熱領域Zf,中間部加熱領域Zm,後部前側加熱領域Zrf,後部後側加熱領域Zrrに、冷却部4a…を含む加熱部3a…を設ければ、特に、スクリュ22の回転により樹脂材料が剪断される際の剪断熱の発生部位における無用な温度上昇を抑制できるため、良好な温度制御を実現し、成形品質の向上に寄与できる。
【0034】
なお、図4中、Dは本実施形態に係る加熱筒装置Hに対する駆動制御系を示す。41は、コンピュータシステムにより構成した成形機コントローラであり、射出成形機Mにおける全体の制御を司る機能を備える。42は給電部であり、この給電部42の出力部は各加熱部3a,3b…を構成するバンドヒータB…に接続するとともに、給電部42の制御入力部は成形機コントローラ41に接続する。43はエアポンプ及びバルブを含むエア供給部であり、このエア供給部43の出力部は各冷却部4a,4b…のエア供給口32…に接続するとともに、エア供給部43の制御入力部は成形機コントローラ41に接続する。また、加熱筒本体2mにおける各部位の温度を検出する温度センサT…は成形機コントローラ41に接続する。そして、成形機コントローラ41から、給電部42に対して加熱制御信号が付与されるとともに、エア供給部43に対して冷却制御信号が付与される。
【0035】
次に、本実施形態に係る加熱筒装置Hに備える加熱筒カバー1の構成について、図1図6を参照して具体的に説明する。
【0036】
加熱筒カバー1は、大別して、保温カバー部5,保護カバー部(上保護カバー部)12,下保護カバー部14を備える。この場合、保温カバー部5は、本発明の要部を構成し、加熱筒2の上半部2uを覆う形状を有するとともに、上保護カバー部12は、この保温カバー部5の外方に配設して当該保温カバー部5を覆う形状を有し、さらに、下保護カバー部14は、加熱筒2の下半部2dを覆う形状を有する。
【0037】
最初に、保温カバー部5の構成について説明する。保温カバー部5は、加熱筒2に取付けることにより温調機構3mとの間に所定の遮蔽空間Sを形成して加熱筒2の上半部2uを覆うカバー体部5mを備えるとともに、このカバー体部5mの内面5miから温調機構3mに向けて突出し、遮蔽空間Sを複数の閉空間Sab,Scd,Se…に分割する複数の仕切部5a,5bc,5de…とを一体に設けて構成する。
【0038】
カバー体部5mは、図2及び図5に示すように、二枚のプレート部材11p,11qを所定の隙間Spを介して積層した複層構造(二層構造)11により構成する。この場合、一方が内側に配する内プレート部材11pとなり、他方が外側に配する外プレート部材11qとなる。各プレート部材11p,11qの形成素材は、高温環境に晒されるため、耐熱性を有する金属素材が望ましいが、特定の素材に限定されるものではない。例示の場合、内プレート部材11pにはスチール素材を使用し、外プレート部材11qにはステンレス素材を用いた。厚さは、いずれの場合も強度や加工性等を考慮して任意に選定することができる。
【0039】
なお、実施形態で示したカバー体部5mは、二枚のプレート部材11p,11qを所定の隙間Spを介して積層した二層構造11としたが、一枚のプレート部材を用いた単層構造であってもよいし、必要により、三枚以上のプレート部材11p…を所定の隙間Sp…を介して積層した複層構造であってもよく、特定の層数に限定されるものではない。このように、カバー体部5mは、様々な層数構造により実施できるため、全体の保温性(断熱性)を任意に設定できるなど、様々なグレードや性能要求に対して柔軟に応えることができる。
【0040】
また、内プレート部材11pは、加熱筒2における前側の加熱部3aから後側の加熱部3fを覆う長さに選定するとともに、断面形状は図2に示すように、加熱筒2の上半部2uを覆う形状に形成する。例示の形状は、半八角形となるが、その他の半多角形や半円形など、同様の機能を有する各種形状を選定可能である。一方、カバー体部5mの内面となる内プレート部材11pの内面5miには、図1及び図6に示すように、この内面5miから温調機構3mに向けて略直角に突出し、遮蔽空間Sを複数(例示は四つ)の閉空間Sab,Scd,Se,Sfに分割する複数(例示は五つ)の仕切部5a,5bc,5de,5ef,5fを一体に設ける。
【0041】
この場合、内プレート部材11pの前端と後端に位置する仕切部5aと仕切部5fは、内プレート部材11pに兼用し、この内プレート部材11pの前端部分と後端部分をプレス加工等により折曲して一体形成できるとともに、中間に位置する仕切部5bc,5de,5efは、別途形成したU形プレート部材を溶接等により固定できる。したがって、中間に位置する各仕切部5bc,5de,5efは、内プレート部材11pと同一素材(同一の厚さ)により形成する。これにより、内プレート部材11pに対して、各仕切部5a,5bc,5de,5ef,5fは一体となる。
【0042】
さらに、この内プレート部材11pは、加熱筒本体2m側に直接取付けて使用する。この場合、図1に示すように、前端の仕切部5aの内端辺5asを、加熱部3a(冷却部4a)の前側に位置する加熱筒本体2mの外周面2msに当接(係止)させるとともに、内プレート部材11pの後端部内面を、図5に示す加熱筒本体2mの後端に設けたこの加熱筒本体2mよりも大径となるフランジ部2mfの外周面2mfsに載置し、図3に示すように、固定ボルト51…により固定することができる。したがって、後端の仕切部5fは、フランジ部2mfの後端面に対向して位置する。
【0043】
また、他の仕切部5bc,5de,5efは、図1及び図3に示すように、各加熱部3a,3b,3c…の軸方向Fsにおける相互間に生じる隙間Sg…に介在させる。この場合、各冷却部4a…を含む各加熱部3a…は、加熱筒本体2mにおける加熱領域、即ち、前部加熱領域Zf,中間部加熱領域Zm,後部前側加熱領域Zrf,後部後側加熱領域Zrrに対応して設けられるため、通常、図1に示すように、各加熱部3a…の軸方向Fsにおける相互間に隙間Sg…が生じるとともに、この隙間Sg…の深さ、即ち、加熱筒本体2mの外周面2msと加熱部3a…の外周面間の深さはLmとなる。このため、例えば、仕切部5bcは、図1に示すように、加熱部3bと3c間の隙間Sgに介在させることができる。他の仕切部5de,5efも同様であり、仕切部5deは、図1に示すように、加熱部3dと3e間の隙間Sgに介在させることができるとともに、仕切部5efは、図4に示すように、加熱部3eと3f間の隙間Sgに介在させることができる。この際、各仕切部5bc,5de,5efの内端辺は、加熱筒本体2mの外周面2msに当接(係止)させてもよいし、図1に示すように離間した(浮いた)状態であってもよい。
【0044】
このように取付ければ、仕切部5a,5bc…を加熱部3a,3b…に対して径方向Fdにオーバーラップさせ、仕切部5a,5bc…により形成される閉空間Sab,Scd…の閉塞性をより高めることができるため、更なる制御の応答性及び制御性の向上に寄与できるとともに、組付性及び組付強度の向上にも寄与できる利点がある。
【0045】
一方、内プレート部材11pの外面には、外プレート部材11q間に対する隙間Spを形成するための前後一対のセパレータ部材52,53を固定する。この場合、前側のセパレータ部材52は、内プレート部材11pの外面であって、軸方向Fsにおける加熱部3aと3b間に位置させるとともに、後側のセパレータ部材53は、内プレート部材11pの外面であって、軸方向Fsにおける加熱部5fとフランジ部2mf間に位置させる。各セパレータ部材52,53は、周方向Ffのほぼ全幅に沿って配することが望ましい。
【0046】
そして、この内プレート部材11pのセパレータ部材52,53に対して、略相似形に形成した外プレート部材11qの内面を載置し、固定ボルト55…等によりセパレータ部材52,53上に固定する。以上により、保温カバー部5が構成される。
【0047】
次に、保温カバー5に付属する上保護カバー部12及び下保護カバー部14について説明する。
【0048】
上保護カバー部12は、図2及び図5に示すように、保温カバー部5の外方に配設してカバー体部5mを覆う形状に形成するとともに、一部(又は全部)に多孔面55…を形成する。例示の場合、上保護カバー部12における傾斜面を含む上面に多孔面55…を設けることにより、十分な通気性を確保している。この場合、上保護カバー部12によりカバー体部5mを覆う範囲は、一部であってもよいし全部であってもよく、その範囲は安全性等を考慮して任意に選定できる。このような上保護カバー部12を設ければ、オペレータに対する高温部分からの保護を図れるため、より安全性を高めることができるとともに、保温性の安定化及び更なる保温性の向上にも寄与できる利点がある。
【0049】
また、上保護カバー部12の取付けに際しては、加熱筒2の径方向Fdにおける左右両側に、加熱筒2側に取付ける取付部13f…,13r…を設ける。この場合、加熱筒2側となる加熱筒2に取付けた内プレート部材11pにおける左右両側における操作面100を配した側に取付部13f…を設け、他の側に取付部13r…を設ける。取付部13f…は、図2に示すように、外方に突出部を生じない係止構造により構成する。即ち、例示の場合、内プレート部材11pの側面における前後位置に差込用のスリット62s…を形成するとともに、上保護カバー部12の側面における下端部に、内側に略直角に折曲した折曲部を形成し、この折曲部の先端に、当該スリット62s…に差し込む突起片62p…を一体形成した。また、他方の取付部13r…は、図2に示すボルトナット61…を用いた一般的な取付構造を採用できる。
【0050】
このように、上保護カバー部12の取付けに際し、加熱筒2の径方向Fdにおける左右両側に、加熱筒2側に取付ける取付部13f…,13r…を設けるとともに、少なくとも当該左右両側における操作面100を配した側の取付部13f…を、外方に突出部を生じない係止構造に構成すれば、オペレータが作業するエリアにおける無用な突出部分を排除できるため、作業性及び安全性、更にはデザイン性(形状性)の向上に寄与できる利点がある。
【0051】
他方、下保護カバー部14は、図2及び図5に示すように、加熱筒2の下半部2dを覆う形状に形成するとともに、一部又は全部に多孔面56…を形成する。例示の場合、下保護カバー14の傾斜面を含む下面に多孔面56…を設けることにより、十分な通気性を確保している。このように、加熱筒2の下半部2dに対するカバーとしては下保護カバー部14のみで足りる。この場合、下保護カバー部14により加熱筒2の下半部2dを覆う範囲は、一部であってもよいし全部であってもよく、その範囲は安全性等を考慮して任意に選定できる。これにより、オペレータに対する下半部高温部位からの保護を図れるため、より安全性を高めることができるとともに、特に、高温の空気が対流しない加熱筒2の下半部2dは保温機能が不要になり、下保護カバー部14のみで足りるため、構成部材の削減による低コスト性及び組立性の向上に寄与できる利点がある。
【0052】
また、下保護カバー部14の取付けに際しては、基本的に、上述した上保護カバー部12と同様に取付けることができる。即ち、加熱筒2の径方向Fdにおける左右両側に、加熱筒2側に取付ける取付部15f…,15r…を設ける。この場合、加熱筒2側となる加熱筒2に取付けた内プレート部材11pにおける左右両側における操作面100を配した側に取付部15f…を設け、他の側に取付部15r…を設ける。取付部15f…は、図2に示すように、外方に突出部を生じない係止構造により構成する。例示の場合、内プレート部材11pの側面における前後位置に差込用のスリット66s…を形成するとともに、下保護カバー部14の側面における上端部に、内側に略直角に折曲した折曲部を形成し、この折曲部の先端に、当該スリット66s…に差し込む突起片66p…を一体形成した。また、他方の取付部15r…は、図2に示すボルトナット65…を用いた一般的な取付構造を採用できる。
【0053】
このように、下保護カバー部14の取付けに際し、加熱筒2の径方向Fdにおける左右両側に、加熱筒2側に取付ける取付部15f…,15r…を設けるとともに、少なくとも当該左右両側における操作面100を配した側の取付部15f…を、外方に突出部を生じない係止構造に構成すれば、オペレータが作業するエリアにおける無用な突出部分を排除できるため、作業性及び安全性、更にはデザイン性(形状性)の向上に寄与できる利点がある。
【0054】
次に、本実施形態に係る加熱筒装置Hに備える加熱筒カバー1の機能(作用)について、図1図9を参照して説明する。
【0055】
射出成形機Mの場合、生産時における運転中は加熱筒装置Hにおける加熱筒本体2mにおける各加熱領域Zf,Zm,Zrf,Zrrが各加熱部3a…と冷却部4a…により、設定温度となるように温調制御される。即ち、各加熱領域Zf,Zm,Zrf,Zrrの加熱温度が温度センサT…により検出され、検出された加熱温度が設定温度となるように、成形機コントローラ41により給電部42とエア供給部43がフィードバック制御が行われる。この場合、加熱制御時には、加熱部3a…のバンドヒータB…が給電部42により通電制御され、冷却制御時には、冷却部4a…に対する通気量がエア供給部43により制御される。
【0056】
一方、加熱筒2の周囲に放熱が行われるが、断熱性を有する保温カバー部5により放熱が阻止(断熱)される。即ち、保温カバー部5は、加熱筒2に取付けることにより温調機構3mとの間に所定の遮蔽空間Sを形成して加熱筒2の少なくとも上半部2uを覆うカバー体部5mと、このカバー体部5mの内面5miから温調機構3mに向けて突出し、遮蔽空間Sを複数の閉空間Sab,Scd…に分割する複数の仕切部5a,5bc…とを一体に有する基本構造を備えるため、保温性の向上による消費電力の低減及び省エネルギ性の向上を図れるという基本的な作用効果を得ることができる。
【0057】
加えて、加熱部3a,3b…による空気の対流(移動)が仕切部5a,5bc…により阻止及び断熱されるため、任意の閉空間Sab,Scd…による他の閉空間Sab,Scd…への影響(干渉)が大きく低減される。この結果、各閉空間Sab,Scd…単位における温度制御の応答性が高められるとともに、軸方向Fsの温度分布(温度勾配)に対する制御性も高められる。しかも、結果的に更なる消費電力の低減による省エネルギ性の向上も図られる。また、閉空間Sab,Scd…は、加熱筒2における異なる加熱領域Zf,Zm,Zrf,Zrr毎に設定されるため、各加熱領域Zf,Zm…毎に設定される設定温度に対する追従性(制御性)もより高められる。
【0058】
図7図9は、本実施形態における加熱筒カバー1を用いた場合と従来の加熱筒カバー(各仕切部5a…が無いカバー)を用いた場合における各特性に対する影響を示した試験結果(データ)を示す。
【0059】
図7は、ショット数〔回〕に対する加熱筒2における電力量〔Wh〕の変化特性を示し、Piが本実施形態における加熱筒カバー1を用いた場合の特性線、Pnが従来の加熱筒カバーを用いた場合の特性線をそれぞれ示している。本実施形態における加熱筒カバー1を用いることにより、消費電力を低減し、省エネルギ性が高められることを確認できる。従来の加熱筒カバーに対する改善率(削減率)は概ね2.3〔%〕となる。
【0060】
また、図8は、ショット数〔回〕に対する加熱筒2におけるヒータ出力率〔%〕の変化特性を示し、Qmiが本実施形態における加熱筒カバー1を用いた加熱筒2における中間部加熱領域Zmの特性線、Qmnが従来の加熱筒カバーを用いた加熱筒2における中間部加熱領域Zmの特性線、Qriが本実施形態における加熱筒カバー1を用いた加熱筒2における後部前側加熱領域Zrfの特性線、Qrnが従来の加熱筒カバーを用いた加熱筒2における後部前側加熱領域Zrfの特性線をそれぞれ示している。本実施形態における加熱筒カバー1を用いることにより、中間部加熱領域Zm及び後部前側加熱領域Zrfのいずれにおいてもヒータ出力率〔%〕が低い状態を維持し、安定性が確保されていることを確認できる。
【0061】
さらに、図9は、ショット数〔回〕に対する樹脂温度〔℃〕の変化特性を示し、Riが本実施形態における加熱筒カバー1を用いた場合の特性線、Rnが従来の加熱筒カバーを用いた場合の特性線をそれぞれ示している。本実施形態における加熱筒カバー1を用いることにより、樹脂温度〔℃〕の安定化が図られていることを確認できる。
【0062】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0063】
例えば、仕切部5a,5bc…により遮蔽空間Sを四つの閉空間Sab,Scd…に分割した場合を例示したが、閉空間Sab,Scd…(仕切部5a,5bc…)の数は任意である。一方、加熱部3a…と冷却部4a…を組合わせた例を示したが、加熱部3a…のみであってもよい。この際、加熱部3a…としてバンドヒータB…を例示し、冷却部4a…として空冷式を例示したが、例示のものに限定されるものではない。また、仕切部5a,5bc,5de…は、先端部の少なくとも一部を、加熱部3a,3b,3c…の軸方向Fsにおける相互間に生じる隙間Sg…に介在させる場合を例示したが、介在させない場合を排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る加熱筒装置は、加熱筒本体の外周面に少なくとも複数の加熱部を付設してなる加熱筒を備える各種射出成形機に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1:加熱筒カバー,2:加熱筒,2m:加熱筒本体,2ms:加熱筒本体の外周面,2u:加熱筒の上半部,2d:加熱筒の下半部,3a:加熱部,3b:加熱部,3c…:加熱部,3m:温調機構,4a:冷却部,4b:冷却部,4c…:冷却部,5:保温カバー部,5a:仕切部,5bc:仕切部,5de:仕切部,5m:カバー体部,5mi:カバー体部の内面,11:複層構造,11p:プレート部材(内プレート部材),11q:プレート部材(外プレート部材),12:保護カバー部(上保護カバー部),13f:取付部,13r:取付部,14:下保護カバー部,15f:取付部,15r:取付部,100:操作面,M:射出成形機,H:加熱筒装置,Fs:軸方向,Fd:径方向,Ff:周方向,B…:バンドヒータ,S:遮蔽空間,Sab:閉空間,Scd…:閉空間,Sp:隙間,Sg:隙間,Zf:前部加熱領域,Zm:中間部加熱領域,Zrf:後部前側加熱領域,Zrr:後部後側加熱領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9