(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461867
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】電気駆動ポンプおよび電気駆動ポンプを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
F04D 13/06 20060101AFI20190121BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20190121BHJP
F04D 29/22 20060101ALI20190121BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20190121BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20190121BHJP
H02K 1/27 20060101ALI20190121BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
F04D13/06 A
F04D29/00 B
F04D13/06 H
F04D29/22 C
F04D29/60 E
H02K7/14 B
H02K1/27 501A
H02K1/27 501G
H02K15/02 K
H02K15/02 A
H02K15/02 Z
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-141151(P2016-141151)
(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公開番号】特開2017-61924(P2017-61924A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年11月30日
(31)【優先権主張番号】201510443549.2
(32)【優先日】2015年7月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511102675
【氏名又は名称】浙江三花汽車零部件有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】殷炳玖
(72)【発明者】
【氏名】黄治平
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3112216(JP,B2)
【文献】
実開昭63−98496(JP,U)
【文献】
特開2012−139070(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0077191(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102010050934(DE,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第2461462(EP,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0239748(US,A1)
【文献】
特開2013−204811(JP,A)
【文献】
特開平7−111751(JP,A)
【文献】
特開2010−261436(JP,A)
【文献】
特開2010−242521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/06
F04D 29/22、29/60
H02K 1/27、15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハウジングと、第2のハウジングと、隔壁と、固定子組立体と、回路基板と、回転子組立体とを備える電気駆動ポンプであって、前記電気駆動ポンプはポンプ室を備え、前記ポンプ室が、前記第1のハウジングと前記第2のハウジングとによって画定される空間を備え、前記ポンプ室が、前記隔壁によって、乾室と湿室とに分割され、前記回転子組立体が前記湿室に配置され、前記固定子組立体および前記回路基板が前記乾室に配置され、ここで
前記回転子組立体は、別々に形成されたインペラと、回転子と、軸スリーブ組立体とを備え、前記軸スリーブ組立体は軸スリーブを備え、前記インペラは前記軸スリーブの一端に配置され、前記回転子は前記軸スリーブの他端に配置され、
前記回転子は、永久磁石と、回転子コアと、遮蔽体とを備え、前記永久磁石が前記回転子コアに固定され、前記回転子コアが前記軸スリーブに固定され、前記軸スリーブと前記遮蔽体とはともに金属で作られており、閉ざされた受入部が、前記遮蔽体と前記軸スリーブの外周面とによって、溶接により形成されており、前記永久磁石が前記受入部に固定的に配置され、
前記遮蔽体が、スリーブと少なくとも1つの端板とを備え、前記スリーブおよび前記端
板がステンレス鋼で作られ、前記スリーブが溶接によって前記端板に固定され、前記端板が溶接によって前記軸スリーブに固定されており、前記スリーブの内周面が、前記永久磁石の外周面の一部と接触しており、中心穴が前記端板に形成され、前記軸スリーブが前記中心穴を通過している、電気駆動ポンプ。
【請求項2】
前記端板が、前記中心穴周りに配置される第1のフランジングと、前記端板の外側縁に
形成される第2のフランジングとを有し、前記端板は、前記第1のフランジングを介して前記軸スリーブの外周面に嵌まり、前記端板は、前記第2のフランジングを介して、前記遮
蔽体の前記スリーブの内周面または外周面に嵌まり、前記軸スリーブの前記外周面が、溶接によって、前記第1のフランジングに固定され、前記第2のフランジングが、溶接によって、前記スリーブの前記内周面または前記外周面に固定される、請求項1に記載の電気駆
動ポンプ。
【請求項3】
前記回転子コアが突出リブを備え、前記突出リブが、前記回転子コアの外周面に形成され、前記回転子コアの前記外周面に沿って均一に分配され、前記永久磁石が、隣接する前記突出リブ間に配置され、前記永久磁石の数が前記突出リブの数と等しい、請求項1または請求項2に記載の電気駆動ポンプ。
【請求項4】
前記回転子コアが、前記回転子コアの周囲方向において均一に分配された複数の貫通孔を備え、前記貫通孔が、前記回転子コアの2つの端部を通過するように配置され、前記貫
通孔の数が前記突出リブの数以下であり、前記貫通孔の各々が、前記回転子コアの中心と、隣接する前記突出リブ間の間隔の中間とを結ぶ連結線の位置に位置付けられ、前記貫通孔の各々が、前記連結線周りで対称であるように配置される、請求項3に記載の電気駆動
ポンプ。
【請求項5】
前記回転子コアが、前記貫通孔を形成するように構成される第1の部分および第2の部分を備え、前記第1の部分および前記第2の部分は前記連結線について対称であり、前記第1
の部分および前記第2の部分は、前記回転子コアの内周面から前記外周面に向かう方向に
延び、
円が、前記回転子コアの中心を円中心として取り入れることで画定され、前記円が、前記第1の部分および前記第2の部分とそれぞれ交差し、前記第1の部分と交差する前記円の
交差位置が第1の交差位置であり、前記第2の部分と交差する前記円の交差位置が第2の交
差位置であり、前記第1の交差位置と前記第2の交差位置との間の弧の長さが、前記回転子コアの前記内周面から前記外周面へと徐々に縮小される、請求項4に記載の電気駆動ポン
プ。
【請求項6】
前記永久磁石が第1の面と第2の面とを備え、前記第1の面が、凹面であり、前記回転子
コアの前記外周面と接触しており、前記第2の面が、前記第1の面に対して前記回転子コアから離れて位置付けられ、
前記第2の面が、第1の凸面部と、第2の凸面部と、平面部とを備え、前記平面部が前記
第2の面の中間部に配置され、前記第1の凸面部および前記第2の凸面部が、前記平面部の2つの側部にそれぞれ配置される、請求項1、2、または4に記載の電気駆動ポンプ。
【請求項7】
前記インペラがブッシングを備え、前記ブッシングが金属から作られ、平面およびフランジが前記ブッシングの外周面に形成され、前記ブッシングの内周面が円筒面であり、前記ブッシングの前記内周面が前記軸スリーブと一致し、前記ブッシングの前記外周面が、前記インペラの射出成形体に固定的に連結される、請求項1、2、または4に記載の電気駆動ポンプ。
【請求項8】
前記軸スリーブ組立体が軸受をさらに備え、前記軸受が、第1の軸受と第2の軸受とを備え、第1の段差部および第2の段差部が前記軸スリーブに形成され、前記第1の段差部が、
前記インペラの近くに配置され、前記第2の段差部が、前記回転子の近くに配置され、前
記第1の段差部が第1の段差面と第1の側壁とを備え、前記第2の段差部が第2の段差面と第2の側壁とを備え、前記第1の軸受が前記第1の段差部に取り付けられ、前記第2の軸受が前
記第2の段差部に取り付けられる、請求項1、2、または4に記載の電気駆動ポンプ。
【請求項9】
前記軸スリーブ組立体が緩衝部をさらに備え、前記緩衝部が、前記第1の軸受と前記軸
スリーブとの間に、もしくは、前記第2の軸受と前記軸スリーブとの間に配置される、ま
たは、前記緩衝部の数が2つであり、一方の緩衝部が前記第1の軸受と前記軸スリーブとの間に配置され、他方の緩衝部が前記第2の軸受と前記軸スリーブとの間に配置され、前記
緩衝部が隙間構造体を有し、突出構造体が前記緩衝部の内周面に形成され、前記突出構造体が、前記軸受の外周面と接触しており、前記緩衝部の外周面が前記軸スリーブと接触している、請求項8に記載の電気駆動ポンプ。
【請求項10】
前記回転子組立体が平衡スリーブをさらに備え、前記平衡スリーブが金属から作られ、前記平衡スリーブが前記軸スリーブに嵌め付けられ、前記平衡スリーブが前記インペラと前記回転子との間に配置され、
外側段差面が前記軸スリーブの外周面に形成され、前記平衡スリーブが、前記外側段差面に当接する一端面と、前記インペラを軸方向に取り付ける際の位置決め部として機能する他端面とを有する、請求項1に記載の電気駆動ポンプ。
【請求項11】
電気駆動ポンプを製造するための方法であって、前記電気駆動ポンプが回転子組立体を備え、前記回転子組立体が、回転子と、インペラと、軸スリーブ組立体とを備え、前記回転子が、回転子コアと、永久磁石と、遮蔽体とを備え、前記インペラが上方板と下方板とを備え、前記軸スリーブ組立体が軸スリーブと軸受とを備え、前記回転子組立体の製造工程が、
前記回転子コアと、前記永久磁石と、前記遮蔽体と、前記インペラと、前記軸スリーブと、前記軸受とを含む部品を加工または準備するステップ1と、
前記回転子を組み立てることを含む、前記部品を組み立てるステップ2であって、前記
回転子の前記組立てが、
前記回転子コアと前記軸スリーブとの間に締り嵌めを形成するために、前記回転子コアを前記軸スリーブに嵌めることと、
前記永久磁石を前記回転子コアに固定することと、
前記永久磁石の外周面上に前記遮蔽体を被うことと、
前記遮蔽体を溶接によって前記軸スリーブに固定することと
を含む、ステップ2と、
前記回転子が固定される前記軸スリーブの一端と反対の前記軸スリーブの他端に、前記インペラをしっかりと押し付けることと、前記軸受を前記軸スリーブに押し付けて固定することとを含む、回転子組立体を組み立てるステップ3と
を含み、
前記遮蔽体がスリーブと端板とを備え、ステップ1が、前記スリーブと前記端板とを形
成することを含み、前記端板が溶接によって前記スリーブに固定され、前記端板が溶接によって前記軸スリーブに固定される、電気駆動ポンプを製造するための方法。
【請求項12】
ステップ1において、前記回転子コアが、複数のケイ素鋼板を重ねてリベット留めする
ことで形成され、前記回転子コアが、前記回転子コアの外周面に均一に分配される突出リブを有する、請求項11に記載の、電気駆動ポンプを製造するための方法。
【請求項13】
前記回転子組立体が緩衝部をさらに備え、前記緩衝部が前記軸スリーブと前記軸受との間に配置され、ステップ1が、前記緩衝部を準備することをさらに含み、ステップ3が、前記緩衝部を前記軸スリーブと前記軸受との間に嵌めることをさらに含む、請求項11に記載の、電気駆動ポンプを製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、車両の作動媒体循環システムに関し、特には、作動媒体循環システムにおける電気駆動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年において、電気駆動ポンプが従来の機械式ポンプに徐々に取って代えられてきており、車両の熱放散および熱循環のシステムにおいて幅広く用いられている。電気駆動ポンプは、電磁気干渉がほとんどないという利点を有し、効率的で環境に優しく、無段階の速度調節など、市場の要求を良好に満たすことができる。
【0003】
電気駆動ポンプは、電気駆動ポンプの水力効率とモータ効率とに影響を持つ回転子組立体を備えている。回転子組立体の構造および製造工程は、電気駆動ポンプの性能および製造コストに直接的な影響を持つ。
【0004】
そのため、上記の技術的課題に対処するために、従来の技術を向上することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の目的は、簡単な製造工程と簡単な構造とを有する回転子組立体を有する電気駆動ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本出願では以下の技術的解決策が採用されている。第1のハウジングと、第2のハウジングと、隔壁と、固定子組立体と、回路基板と、回転子組立体とを備える電気駆動ポンプが提供される。電気駆動ポンプはポンプ室を備える。ポンプ室は、第1のハウジングと第2のハウジングとによって画定される空間を備え、隔壁は、ポンプ室を乾室と湿室とに分割する。回転子組立体は湿室に配置され、固定子組立体および回路基板は乾室に配置される。回転子組立体は、インペラと、回転子と、軸スリーブ組立体とを備える。軸スリーブ組立体は軸スリーブを備え、インペラは軸スリーブの一端に配置され、回転子は軸スリーブの他端に配置される。回転子は、永久磁石と、回転子コアと、遮蔽体とを備える。永久磁石は回転子コアに固定され、回転子コアは軸スリーブに固定される。受入部が遮蔽体と軸スリーブとの間に形成され、永久磁石が受入部に固定的に配置される。
【0007】
本出願による電気駆動ポンプを製造するための方法が、さらに提供される。電気駆動ポンプは回転子組立体を備え、回転子組立体は、回転子と、インペラと、軸スリーブ組立体とを備える。回転子は、回転子コアと、永久磁石と、遮蔽体とを備える。インペラは上方板と下方板とを備え、軸スリーブ組立体は軸スリーブと軸受とを備える。回転子組立体の製造工程が、以下のステップ、すなわち、
回転子コアと、永久磁石と、遮蔽体と、インペラと、軸スリーブと、軸受とを含む部品を加工または準備するステップ1と、
回転子を組み立てることを含む、部品を組み立てるステップ2であって、回転子の組立てが、回転子コアと軸スリーブとの間に締り嵌めを形成するために、回転子コアを軸スリーブに嵌めることと、永久磁石を回転子コアに固定することと、永久磁石の外周面上に遮蔽体を被うことと、遮蔽体を溶接によって軸スリーブに固定することとを含む、ステップ2と、
回転子が固定される軸スリーブの一端と反対の軸スリーブの他端に、インペラを押し付けることと、軸受を軸スリーブに押し付けて固定することとを含む、回転子組立体を組み立てるステップ3と
を含む。
【0008】
本出願による電気駆動ポンプは、回転子組立体を備える。回転子組立体では、永久磁石を受け入れるための受入部が、遮蔽体と、軸スリーブの外周面とによって形成され、したがって、永久磁石が作動媒体によって腐食されるのを防止でき、電気駆動ポンプの耐用年数を延ばすことができる。さらに、本出願による回転子組立体は、簡単な構造を有し、製造するのが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本出願の実施形態による電気駆動ポンプの構造を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図1の回転子組立体の概略的な分解図である。
【
図3】
図1の回転子組立体の構造を示す概略的な断面図である。
【
図4】
図1の回転子組立体の回転子コアの端面の構造を示す概略図である。
【
図6】
図2の回転子の構造を示す概略的な断面図である。
【
図7】実施形態によるインペラのブッシングの構造を示す概略図である。
【
図8】
図7のブッシングの構造を示す概略的な正面図である。
【
図9】
図8における線B-Bに沿って切り取られた、ブッシングの構造を示す概略的な断面図である。
【
図10】
図2の緩衝部の端面の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願は、以後において、図面および実施形態と併せてさらに説明されている。
【0011】
図1は、電気駆動ポンプ100の構造を示す概略的な断面図である。電気駆動ポンプ100は、車両冷却循環システムを含む作動媒体循環システムに適用される。電気駆動ポンプ100は、第1のハウジング10と、隔壁20と、第2のハウジング30と、軸材40と、回転子組立体50と、固定子組立体60と、回路基板70と、熱放散組立体80とを備えている。ポンプ室が、第1のハウジング10と第2のハウジング30との間に画定された空間を含んでいる。ポンプ室は、隔壁20によって、湿室91と乾室92とに分割されている。電気駆動ポンプ100が運転するとき、作動媒体は湿室91を通って流れ、回転子組立体50は湿室91に配置されている。作動媒体は乾室92を流れず、固定子組立体60および回路基板70は乾室92に配置されている。軸材40は、射出成形によって隔壁20に固定されている。回転子組立体50は、軸材40周りで回転可能である。回転子組立体50は、隔壁20によって、固定子組立体60から分離されている。固定子組立体60は、回路基板70に電気接続されている。回路基板70は外部回路に連結される。熱放散組立体80は、回路基板70によって発生される熱を移動および放散するように構成されており、熱放散組立体80は、第2のハウジング30に固定的に取り付けられている。この実施形態では、電気駆動ポンプ100は、インナーロータ型の電気駆動ポンプであり、インナーロータ型の電気駆動ポンプは、軸材40が中心軸として採用されている場合、回転子組立体50が固定子組立体60より軸材40の近くとなるように配置されているポンプとなる。
【0012】
図2〜
図10は、回転子組立体50の構造または回転子組立体50の構成部品および部品を示す概略図であり、
図2は、回転子組立体50の分解図である。
図2を参照すると、回転子組立体50は、回転子1と、インペラ2と、軸スリーブ組立体3と、平衡スリーブ4とを備えている。軸スリーブ組立体3は、軸スリーブ31と、第1の軸受32と、第2の軸受33と、緩衝部34とを備えている。軸スリーブ31は金属で作られており、回転子1は軸スリーブ31に固定されており、インペラ2は、圧入によって、軸スリーブ31に固定されている。平衡スリーブ4は、軸スリーブ31の外周面に嵌め付けられ、回転子1とインペラ2との間に配置されている。
【0013】
図3、
図4、
図5、および
図6を参照すると、回転子1は、回転子コア11と、永久磁石12と、遮蔽体13とを備えている。永久磁石12は、回転子コア11の外周面周りに配置されている。遮蔽体13は永久磁石12の外周面を被っており、比較的閉ざされた受入部が、遮蔽体13と軸スリーブ31の外周面とによって、溶接により形成されている。この実施形態では、遮蔽体13は金属で作られており、明らかに、遮蔽体は他の材料で作られてもよい。
【0014】
図4を参照する。回転子コア11は複数のケイ素鋼板を備えており、それらは、重ねてリベット留めすることで固定される。回転子コア11は、取付穴111と、永久磁石取付部112と、複数の貫通孔113とを備えている。取付穴111は、円形になっており、回転子コア11の中心の近くであるように配置され、軸スリーブ31は取付穴111を通過し、取付穴111の側壁は軸スリーブ31の外周面と締り嵌めとなるように構成されている。
【0015】
この実施形態では、間隔を置いて配置されて均一に分配された複数の突出リブ114が、回転子コア11の外周面に形成されており、永久磁石取付部112が、隣接する突出リブ114間の空間によって画定されている。永久磁石取付部112は、永久磁石12の厚さのおおよそ半分である深さと、永久磁石12の幅より若干大きい幅とを有しているため、永久磁石12を永久磁石取付部112に容易に取付けることができる。永久磁石12は、永久磁石取付部112に固定および接着されているため、回転子コア11に固定されている。
【0016】
この実施形態では、複数の貫通孔113が、回転子コア11の2つの端面を通過するように配置されている。貫通孔113は、取付穴周りに等間隔で分配されている。貫通孔113の配置は、回転子1の重量および回転の慣性を小さくできるため、回転子1の始動性能の向上を容易にする。貫通孔113の数は、永久磁石取付部112の数と同じであり、突出リブ114の数と同じである。
図6を参照する。回転子コア11の中心軸に垂直な平面が画定されており、断面が、この平面を用いて回転子コア11を切断することで、画定されている。断面では、永久磁石取付部112の中間点と回転子コア11の中心とを連結する連結線が画定されており、すなわち、隣接する突出リブ114間の間隔の中間点と回転子コア11の中心とを連結する連結線が画定されており、貫通孔113の各々は、連結線周りで対称であるように構成されている。回転子コア11は、連結線周りで対称である第1の部分118および第2の部分119を備えている。第1の部分118および第2の部分119は、回転子コア11の内周面から回転子コア11の外周面に向かって延びている。第1の部分118および第2の部分119の各々は、平面、室、または、平面および室の組合せを含む。円が、回転子コアの中心を中心として取り入れることで画定され、円は、第1の部分118および第2の部分119とそれぞれ交差し、第1の部分118と交差する円の交差位置が第1の交差位置であり、第2の部分119と交差する円の交差位置が第2の交差位置であり、第1の交差位置と第2の交差位置との間の弧の長さが、回転子コアの内周面から外周面へと徐々に縮小される。回転子コア11の中心軸に垂直な平面が画定されており、断面が、この平面を用いて回転子コア11を切断することにより、画定されている。この断面では、各々の貫通孔113は、主要部と連結部とを備えている。この実施形態では、貫通孔113の各々の主要部は、おおよそ二等辺三角形となっており、二等辺三角形は2つの辺を備え、二等辺三角形の2つの辺は面取りされるか、または円弧によって連結されている。具体的には、二等辺三角の等しい長さを有する2つの辺が、貫通孔113の主要部であり、円弧または面取り部が貫通孔113の連結部である。明らかに、貫通孔113の各々の主要部は台形であってもよく、すべての形は、第1の交差位置と第2の交差位置との間の弧の長さが、回転子コア11の内周面から回転子コア11の外周面まで徐々に縮小される条件をその形が満たす限り、この実施形態の範囲にある。永久磁石12の磁力線の分配は、実質的に、
図6の矢印による線分のセットによって指し示されている。回転子コア11の外周面117に近い位置では、隣接する永久磁石12の磁力線が集中し、高い密度を有する一方、回転子コアの中心では、より少ない磁力線が通過する。したがって、このようにして配置された貫通孔113は、磁束にほとんど悪影響がない。
【0017】
図5を参照する。永久磁石12は、特定の厚さを持つ磁気タイルとして具現化されている。この実施形態による永久磁石12の材料は、ネオジウム鉄ボロン(NdFeB)を含んでいる、または、他の材料が採用されてもよい。永久磁石12は、大きい面積を有する第1の面121および第2の面122と、第1の面121と第2の面122とを連結するように構成されている第1の側部および第2の側部を備えている。第1の面121は凹面であり、第2の面122は凸面である。永久磁石12は回転子コア11と共に組み立てられた後、第1の面121は回転子コア11と接触しており、第2の面122は、第1の面121に対して回転子コア11から離れている。第2の面122は、平面部1221と、平面部1221の2つの側部にそれぞれ位置付けられた凸部1222とを備えている。平面部1221の面積は、少なくとも第2の面122の面積の半分を占め、このようにして配置された平面部1221は、永久磁石12の磁束密度を高めることができるため、永久磁石12によって元々示されるような正弦波形態の波高点を平らにして方形波に近付けることができ、これは、永久磁石12に小さい変化だけしかもたらされないような、方形波駆動の要件を満たすことができる。
【0018】
図3を参照する。この実施形態では、遮蔽体13が、ステンレス鋼などの金属で作られている。遮蔽体13は、上方端板131と、下方端板132と、スリーブ133とを備えており、それらのすべてがステンレス鋼から作られている。上方端板131、下方端板132、スリーブ133、および、軸スリーブ31の外周面は、回転子コア11および永久磁石12を、遮蔽体13および軸スリーブ31によって形成された受入部で固定させることができるように、溶接によって固定的に連結されており、したがって、回転子コア11および永久磁石12を受け入れるように構成される比較的閉ざされた受入部が形成されている。
【0019】
回転子組立体50および固定子組立体60がそれらの間に小さい空隙を有することを確保するために、スリーブ133の厚さは、できるだけ薄くするべきである。この実施形態では、上方端板131の厚さはスリーブ133の厚さとおおよそ等しい。上方端板131が、第1のフランジング1311と、第2のフランジング1312と、第1のフランジング1311と第2のフランジング1312との間に配置された平板1313とを備えている。上方端板131は中心穴を備えており、第1のフランジング1311は中心穴周りに配置されている。上方端板131は、中心穴を通って軸スリーブ31の外周面に嵌め付けられている。第2のフランジング1312は、上方端板131の外側縁に形成されている。上方端板131は、第1のフランジング1311を介して、軸スリーブ31の外周面に接触している。第1のフランジング1311は、軸スリーブ31の外周面と締り嵌めであるように構成されており、平板1313に実質的に垂直である。このようにして、第1のフランジング1311は、嵌合面の長さを増大させることができ、上方端板131は嵌合面によって軸スリーブ31に嵌まり、これにより嵌め合わせの安定性が増加され得る。第1のフランジング1311は、溶接によって軸スリーブ31に固定されている。第2のフランジング1312は、スリーブ133の内周面または外周面と一致してもよく、第2のフランジング1312は、実質的に、平板1313に垂直である。第2のフランジング1312は、スリーブ133に嵌まる上方端板131の嵌合長さを増大でき、第2のフランジング1312は、溶接によってスリーブ133に固定されている。当然ながら、第1のフランジング1311の延在方向は、第2のフランジング1312の延在方向と同じであっても同じでなくてもよく、それらの両方が嵌合長さを増大させることができる。この実施形態では、第1のフランジング1311と第2のフランジング1312とは、工程を単純にするために、同じ延在方向に構成されている。また、この実施形態では、上方端板131および下方端板132の構造は同じであり、これにより、部品および鋳型を減らすことができ、製造コストを低減できる。この実施形態では、遮蔽体13は、上方端板131と、スリーブ133と、下方端板132とを備えており、それらは別々に形成されている。明らかに、スリーブ133は、上方端板131または下方端板132と一体的に形成されてもよく、これにより、溶接個所を一つ減らすことができる。この実施形態では、別々に形成された上方端板131、下方端板132、およびスリーブ133が採用されており、このようなやり方の遮蔽体13は、好都合に軸スリーブ31に取り付けられよう。当然ながら、上方端板131および下方端板132の厚さが大きい場合では、上方端板131および下方端板132はフランジングを備えなくてもよい。
【0020】
図3を参照する。インペラ2は、上方板21と、下方板22と、ブッシング23とを備えている。ブッシング23は金属で作られており、下方板22を含む下方板組立体は、挿入体としてブッシング23を取り入れた射出成形によって形成されてもよい。上方板21は、ブッシング23および下方板22を含む下方板組立体に、超音波溶接によって固定されている。
【0021】
図7〜
図9を参照する。ブッシング23は第2の中心穴231を有しており、第2の中心穴231の軸に対して均一に分配された平面232が、ブッシング23の外周面に形成されている。この実施形態では、平面232の数は2つであり、2つの平面232は、概して、第2の中心穴231の軸周りで対称であり、これによりインペラ2の動的バランスを保つことができる。明らかに、平面232の数は、平面232をブッシング23の外周面に均一に分配させることができるように、4つまたは他の偶数であってもよい。ブッシング23には、平面232の各々の2つの端部においてフランジ233が設けられており、このようにして、下方板組立体が、ブッシング23を挿入体として取り入れた射出成形によって形成される場合、平面232は、周囲方向での下方板22に対するブッシング23の回転を抑制でき、フランジ233は、軸方向での下方板22に対するブッシング23の移動を抑制できる。
【0022】
図2および
図3を参照する。軸スリーブ組立体3は、軸スリーブ31と、第1の軸受32と、第2の軸受33と、緩衝部34とを備えている。インペラ2と回転子1とは、軸スリーブ31によって全体として連結されており、軸スリーブ31は、ここでは連結部材である。回転子組立体50は、第1の軸受32および第2の軸受33によって、軸材40の周囲面に嵌め付けられており、軸材40の周りに回転することができる。軸スリーブ31の2つの端部における内周面の各々は、内側段差部を有しており、第1の軸受32と第2の軸受33とは、対応する内側段差部によってそれぞれ制限されている。この実施形態では、第1の軸受32の外周面と軸スリーブ31の内周面との間と、第2の軸受33の外周面と軸スリーブ31の内周面との間とにそれぞれ配置されている2つの緩衝部34が、備えられている。
【0023】
図10を参照する。緩衝部34は、ステンレス鋼から作られており、概して円筒形である。緩衝部34は、隙間部341を有しており、内周面342と外周面343とを備えている。また、緩衝部は特定の弾性を有している。複数の突起が緩衝部34の内周面342に分配されており、突起は、緩衝部34の軸方向に延びる突出リブ345を備えており、突出リブ345の各々は、緩衝部34の内周面342から緩衝部の内部へと突出するように構成されている。2つの緩衝部34の外周面は、軸スリーブ31のそれぞれの段差部の側壁と接触しており、2つの緩衝部34の内周面における突出リブ345は、第1の軸受32の外周面および第2の軸受33の外周面とそれぞれ接触している。このようにすると、緩衝部34はいくらかの弾性を有しているので、軸材40は、突出リブ345によって、第1の軸受32および第2の軸受33と接触している。回転子組立体50が回転際、および、組み立ての際に、小さな撓みが回転子組立体50に生じる場合に、緩衝部34は、その弾性によって、回転子組立体50に心出しを実施できると共に、回転子組立体50の若干の振動を吸収でき、これは騒音の低減を容易にする。
【0024】
回転子組立体は平衡スリーブ4をさらに備えている。
図2および
図3を参照すると、平衡スリーブ4は、軸スリーブ31の外周面に嵌め付けられ、回転子1とインペラ2との間に配置されている。平衡スリーブ4は金属で作られており、真鍮材料が代替で選択されてもよい。外側段差面が、軸スリーブ31の外周面に形成されている。平衡スリーブ4は、軸スリーブ31の外側段差面に当接する一端面と、インペラ2に当接する他端面とを有している。平衡スリーブ4が真鍮で作られているため、回転子組立体50の質量分配が、平衡スリーブ4における打ち抜き穴によって調節でき、回転子組立体50のさらなる動的バランスが調節される。
【0025】
回転子組立体は、回転子と、インペラと、軸スリーブ組立体とを備えている。回転子は、回転子コアと、永久磁石と、遮蔽体とを備えている。インペラは上方板組立体と下方板組立体とを備えており、軸スリーブ組立体は軸スリーブと軸受とを備えている。回転子組立体を製造するための方法は、以下のステップを含んでいる。
【0026】
ステップ1は、部品の加工または準備を含む。部品は、回転子コアと、永久磁石と、遮蔽体を構成するための部品と、インペラと、軸スリーブと、軸受とを含む。
【0027】
ステップ2は、部品の組み立てるを含み、回転子の組み立てを主に含む。回転子の組み立ては、回転子コアと軸スリーブを組み立てて回転子コアと軸スリーブとの間に締り嵌めを形成することと、永久磁石を回転子コアに固定することと、永久磁石および回転子コアによって形成された組み立てられたユニットと遮蔽体を組み立てることと、遮蔽体の部品を溶接によって固定し、遮蔽体を溶接によって軸スリーブに固定することとを含む。
【0028】
ステップ3は、回転子組立体を組み立てることを含み、これは、回転子が固定される軸スリーブの端と反対にある軸スリーブの他端に、インペラを押し付けることと、軸受を軸スリーブと圧入して固定すること、または、軸受を緩衝部および軸スリーブに圧入して固定することとを含む。
【0029】
ステップ1では、回転子コアは、複数のケイ素鋼板を重ねてリベット留めすることによって形成され、回転子コアは、回転子コアの外周面に均一に分配される永久磁石位置制限溝を有する。
【0030】
また、回転子組立体は緩衝部をさらに備えてもよく、緩衝部は、軸スリーブと軸受との間に配置される。この場合、ステップ1は、緩衝部を準備することをさらに含み、ステップ3は、緩衝部を軸スリーブと軸受との間に嵌めることをさらに含む。
【0031】
加えて、回転子組立体は平衡スリーブをさらに備えてもよく、平衡スリーブは真鍮から作られ、平衡スリーブは軸スリーブに固定的に嵌め付けられる。平衡スリーブはインペラと回転子との間に配置され、軸スリーブには外側段差部が設けられ、平衡スリーブは、外側段差部と接触している一端面と、インペラが回転子に組み付けられるときに軸方向の位置決め部として機能できる他端面とを有している。
【0032】
遮蔽体はスリーブと端板とを備えてもよく、したがってステップ1は、スリーブと端板とを形成することを含み、端板は溶接によって軸スリーブに固定され、端板は溶接によってスリーブに固定される。
【0033】
上記の実施形態は、本出願を説明することが意図されているだけであり、本出願の技術的解決策に限定するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。本出願は上記の実施形態と併せて詳細に記載されているが、当業者は本出願に改良または均等な置換えを加えることができ、本出願の精神および範囲から逸脱することなしに、本出願の任意の技術的解決策および改良も、請求項によって規定される本出願の範囲にあることを、当業者は理解されたい。
【符号の説明】
【0034】
1 回転子
2 インペラ
3 軸スリーブ組立体
4 平衡スリーブ
10 第1のハウジング
11 回転子コア
12 永久磁石
13 遮蔽体
20 隔壁
21 上方板
22 下方板
23 ブッシング
30 第2のハウジング
31 軸スリーブ
32 第1の軸受
33 第2の軸受
34 緩衝部
40 軸材
50 回転子組立体
60 固定子組立体
70 回路基板
80 熱放散組立体
91 湿室
92 乾室
100 電気駆動ポンプ
111 取付穴
112 永久磁石取付部
113 貫通孔
114 突出リブ
118 第1の部分
119 第2の部分
121 第1の面
122 第2の面
131 上方端板
132 下方端板
133 スリーブ
231 第2の中心穴
232 平面
233 フランジ
341 隙間部
342 内周面
343 外周面
345 突出リブ
1221 平面部
1222 凸部
1311 第1のフランジング
1312 第2のフランジング
1313 平板