(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粉末吸入により肺感染の治療に用いるための、コリスチンメタナトリウムの微細化粉末粒子であって、少なくとも50体積%の前記微細化粉末粒子が7μm未満で3μm以上の直径を有し、この粉末が5〜10重量%の全水分量を有し、前記コリスチンメタナトリウムが構成成分の形態へと分離されたものではない、コリスチンメタナトリウムの微細化粉末粒子。
(a)粉末吸入により肺感染の治療に用いるための、コリスチンメタナトリウムの微細化粉末粒子であって、少なくとも50体積%の前記微細化粉末粒子が7μm未満で3μm以上の直径を有し、前記粉末が5〜10重量%の全水分量を有し、前記コリスチンメタナトリウムが構成成分の形態へと分離されたものではない、コリスチンメタナトリウム微細化粉末粒子と;
(b)前記コリスチンメタナトリウムの微細化粉末粒子用の容器と
を含む、乾燥粉末吸入器とともに使用するために適した医薬剤型。
前記容器が、PEGを基材とするゼラチンから形成されたカプセル、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から選択される水溶性セルロース誘導体から形成されたカプセルである、請求項3に記載の医薬剤型。
粉末吸入により肺感染の治療に用いるための、コリスチンメタナトリウムの微細化粉末粒子含有医薬カプセルであって、少なくとも50体積%の前記微細化粉末粒子が7μm未満で3μm以上の直径を有し、この粉末が5〜10重量%の全水分量を有し、前記コリスチンメタナトリウムが構成成分の形態へと分離されたものではない、微細化粉末粒子含有医薬カプセル。
前記カプセルが、PEGを基材とするゼラチンから形成されているか、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から選択される水溶性セルロース誘導体から形成されている、請求項6に記載の医薬カプセル。
気道のグラム陰性菌感染の治療に使用するための、コリスチンメタナトリウムの微細化粉末粒子であって、少なくとも50体積%の前記微細化粉末粒子が7μm未満で3μm以上の直径を有し、この粉末が5〜10重量%の全水分量を有し、前記コリスチンメタナトリウムが構成成分の形態へと分離されたものではない、コリスチンメタナトリウムの微細化粉末粒子。
前記グラム陰性菌感染が緑膿菌、大腸菌及びクレブシエラ属菌を有するグループから選択される病原性微生物により引き起こされている、請求項12に記載の微細化粉末粒子。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、微細化されたコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの粒子径測定結果を示す。
【
図2】
図2は、ナトリウムイオンを伴うコリスチンメタンスルホン酸の構造を示す。
【
図3】
図3は、USP5,767,068に記述されている、中和されたコリスチン塩基を示す。
【
図4】
図4は、時間、相対湿度及び保存条件に応じたコリスチンメタナトリウムの水分量を示す。
【
図5】
図5は、様々な保存条件及び相対湿度条件でのコリスチンメタナトリウムの水分量を示す。
【
図6】
図6は、時間及び保存条件に応じたゼラチンカプセルの穿孔でのカテゴリー3の頻度を示す。
【
図7】
図7は、ゼラチンカプセルの穿孔でのカテゴリー3の減少を示す。
【0023】
(定義)
「呼吸用の乾燥粉末」という用語は、比較的自由に流動し、(i)吸入器内で容易に分散すること、及び(ii)肺胞への浸透を可能にするために少なくとも粒子の一部が肺に到達できるように患者が吸入することができる微細な分散型粒子を有する組成物をいう。乾燥粉末は、結晶、非結晶または両者の混合(部分結晶)であってもよい。このような粉末は、「呼吸用」または「吸入用」であってもよく、特に肺への送達に好適である。好ましい実施形態は、コリスチンメタナトリウムの呼吸用の乾燥粉末製剤を対象にしているが、本発明は、経口投与のような他の投与経路を意図した製剤でもよい。
【0024】
「放出用量」または「ED」という用語は、噴霧または分散した後に適切な吸入器からの送達される製剤の指標をいう。特に、コリスチンメタナトリウムの剤型にとって、EDとは、1回服用量の容器及び吸入器のマウスピースから引き出される粉末の割合の測定単位である。
【0025】
「エアロゾル化」という用語は、微細な乾燥粉末または液体粒子のガス状の浮遊物をいう。エアロゾル化した薬剤は、乾燥粉末吸入器、定量噴霧式吸入器またはネブライザーによって発生させてもよい。
【0026】
「分散性」粉末という用語は、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%のED値を有する粉末のことをいう。
【0027】
用語の「分散剤」は、呼吸用の乾燥粉末製剤の構成成分のことであり、コリスチンメタナトリウムの呼吸用乾燥粉末製剤の分散性は、分散剤が組成物の0.01〜99重量%、好ましくは0.01〜70重量%存在する場合、分散剤を含まない呼吸用乾燥粉末製剤の分散性に比べ、放出用量測定により測定される時に少なくとも10%増加することから効果的である。当技術分野で公知の任意の好適な分散剤を用いてもよい。
【0028】
コリスチンメタナトリウムの最大臨界水分量は、コリスチンメタナトリウム粉末が化学的及び物理的安定性(エアロゾル特性を含む)ならびに保存安定性を失う点である。コリスチンメタナトリウムの最小臨界水分量は、コリスチンメタナトリウム乾燥粉末がその力学的な完全性及び/または分散性を失う点であり、乾燥粉末の性能が悪影響を受ける。コリスチンメタナトリウム乾燥粉末ごとに異なる(最大または最小)の臨界水分量は、所定の実験方法を用いて当業者が容易に測定することができる。最小RH及び最大RHは、臨界水分点に相当する相対湿度のレベルを参照する。
【0029】
カプセルの最大臨界水分量は、コリスチンメタナトリウムを有するカプセルがその化学的及び物理的安定性を失い始める点である。カプセルの最小臨界水分量は、コリスチンメタナトリウムを有するカプセルがその力学的な完全性を失い始める点である。コリスチンメタナトリウム乾燥粉末製剤ごとに及びカプセルの型ごとに変動する(最大または最小)臨界水分量は、所定の実験法を使用することで、当業者が容易に測定することができる。カプセルのRHは、臨界水分点に相当する相対湿度のレベルを参照する。
【0030】
乾燥剤としても知られている「防湿剤」という用語は、吸収剤または水分吸収剤であり、環境の湿度を除去するために用いられる。防湿剤は、必然的に水に対して高い親和性を有している。例として、酸化カルシウム、モレキュラーシーブ及びシリカゲルが挙げられる。防湿剤は、主として乾燥粉末の十分な「乾燥」(例えば、臨界水分点未満)を保つために作用する。
【0031】
ジェットネブライザー治療は成功していることが見出されているが、噴霧化技術にはいくつかの欠点がある。ジェットネブライザーは、薬液をスプレーに変換するために圧縮ガス(通常は、空気)を利用する。圧縮ガスは、狭いベンチュリオリフィスを通り、負圧を発生させる。供給チューブフラグメントを介して流体リザーバから引き出された液体は液滴となり、その液滴質量の99%以上はバッフルまたはネブライザーに衝撃を与えるのに十分な速度まで加速され、液滴は合体し、流体リザーバの中に逆流する。エアロゾル質量の1%のみが、ネブライザーから直接出ていく。出ていく空気は、ネブライザー内に保持されている液体から生じる水で飽和する。このことは、2つの重大な結末をもたらす。第一に、ネブライザーが冷却され、周囲温度の約10℃以下の平衡温度に到達し、その結果、患者が、比較的冷たいスプレーを吸入することになること。第二に、水の蒸発が時間の経過とともに溶質濃度の増加を引き起こすことである。
【0032】
市販されている多くの異なる設計のネブライザーは、異なる流速の圧縮ガスを用いている。これらのネブライザーからの噴霧量はすべて異なり、その結果、患者に一定用量の投与が困難となる。ネブライザー自体は、必要なコンプレッサーが原因でかさばっている。可搬型であると記載されているにも関わらず、ネブライザー/コンプレッサーシステムは、実際には運搬できない。患者が治療を受ける場合、正確な用量が投与されることを確実にし、治療を完了するのに患者はネブライザーのマウスピースに約20分間つながれたままになる必要がある。さらに、ネブライザーを駆動するために、電源の供給が必要である。
【0033】
驚くべきことにそして予想外なことに、微細化コリスチンメタナトリウムの約0.1重量%〜約10重量%の水分量は最終物の安定性に悪影響を及ぼすことなく、肺への粉末の流量を改善する。さらに、微細製剤の流動性は、製剤の製造及び梱包の間の相対湿度及び/または温度条件を変えることでも改善できる。流動性は、充填前にコリスチンメタナトリウム粉末を周囲条件に曝すことでも改善できる。驚くべきことにそして予想外なことに、カプセルの破損率及び/または機能不全率は、カプセルの性質を注意深くコントロールすることにより減少する。上述したコリスチンメタナトリウムの流動性の改善方法とカプセルの破損率の防止方法は、本発明の独立した実施形態と考えられる。
【0034】
ネブライザーを正しく機能させるために、吸入可能なコリスチンメタナトリウム粉末は、注意深く調製し、調合しなければならない。限定されるものではないが、コリスチンメタナトリウム粉末の水分量、粉末の吸湿性ならびに製造及び梱包の間の環境条件のような特性は、注意深くコントロールしなければならない。コリスチンメタナトリウムの水分量の変化は、吸入可能な粉末の流動性に影響する。コリスチンメタナトリウム粉末を有するカプセルの水分量の変化は、カプセルの脆弱性を変え、カプセルの破損及び/または機能不全を引き起こす。
【0035】
図1は、微細化コリスチンメタナトリウムの粒度分析を示す。コリスチンメタナトリウムは、正に帯電したナトリウムの対イオンを有する、負に帯電した分子イオンである。
図2は、コリスチンメタナトリウムの構造を示す。5つのスルホメタン基(CH
2−OS0
2-)が存在する。一方、US5,767,068は、
図3に示す中性塩基を開示する。US特許第5,767,068号は、可変基R
x及びR
2に言及し、R
xは、6−メチルオクタノイル基または6−メチルヘプタノイル基と特定され、R
2は、sec−ブチル基、イソブチル基またはイソプロピル基と特定される。コリスチンメタナトリウムが少なくも10個の構成成分の混合物であることが見いだされている。抗菌性の防腐剤の混合物について行ったテストでは、コリスチンメタナトリウムに見いだされる構成成分の混合物がグラム陰性微生物に対して活性の相乗作用を示すことが示されている。
【0036】
本発明の微細化コリスチンメタナトリウムは、粉末であり、約90体積%の粉末が約10μm未満の直径を有する粒子である。好ましくは、約50体積%の粉末が約7μm未満の直径を有し、約3μm以上の直径を有する粒子であり、約10体積%の粉末が約3μm未満の直径を有し、約1.5μm以上の直径を有する粒子である。血流への吸収が望まれないので、負に帯電したイオンがコリスチン塩基に好ましい。
【0037】
吸入投与のための薬剤は、肺への最大の浸透を達成するために、コントロールされた粒径であるべきである。好適な粒径は、約0.01〜10μm、好ましくは約1〜8μmである。粒径は、レーザ光回折または顕微鏡分析のような多くの方法により測定してもよい。微細化コリスチンメタナトリウムは、液体エネルギー粉砕、ボールミル粉砕、スプレードライまたは沈殿反応によって調製すればよい。
【0038】
驚くべきことに、コリスチンメタナトリウムの微細化粉末は、互いにくっつかず、微細化粒子を肺の肺胞へ送達することができる。微細化粉末による水の吸収は、例えば普通の大気条件下でおよそ約0.1重量%〜10重量%と比較的低い。微細化コリスチンメタナトリウム粉末が約5重量%、約5.5重量%、約6重量%、約6.5重量%、約6.75重量%、約7重量%、約7.25重量%、約7.5重量%、約7.75重量%または約8重量%の水分量である場合に、負に帯電したコリスチンメタンスルホン酸、好ましくはそのナトリウム形態は、肺に送達される。微細化コリスチンメタナトリウム粉末は、約0.1重量%〜約10重量%の範囲の水分量で存在してもよい。実際の水分量は、範囲内であれば任意の刻み幅の中にあってもよい。
【0039】
他の態様において、微細化コリスチンメタナトリウム粉末が約0.1重量%の最小臨界水分量及び約10重量%の最大臨界水分量とともに存在する場合、負に帯電したコリスチンメタンスルホン酸、好ましくはそのナトリウム形態は、肺に送達される。いくつかの実施形態では、最小臨界水分量は約4重量%であり、最大臨界水分量は約10重量%である。他の実施形態では、最小臨界水分量は約5重量%であり、最大臨界水分量は約10重量%である。微細化コリスチンメタナトリウム粉末は、約6重量%の最小臨界水分量及び約10重量%の最大臨界水分量とともに存在していてもよい。他の実施形態では、最小臨界水分量は約6.5重量%であり、最大臨界水分量は約10重量%である。いくつかの実施形態では、微細化コリスチンメタナトリウム粉末は、約5重量%の最小臨界水分量及び約9重量%の最大臨界水分量とともに存在する。他の実施形態では、最小臨界水分量は約5重量%であり、最大臨界水分量は約8重量%である。さらに他の実施形態では、微細化コリスチンメタナトリウム粉末は、約5.5重量%の最小臨界水分量及び約8重量%の最大臨界水分量とともに存在する。
【0040】
最小相対湿度(RH)は、約2%RH±5%RHより高ければよい。特定の実施形態では、最小相対湿度(RH)は、23℃±2℃、±5%RHで約2%RHより高く、約4%RHより高く、約6%RHより高く、約10%RHより高く、約12%RHより高く、約15%RHより高く、約25%RHより高く、約30%RHより高く、約40%RHより高く、約45%RHより高く、約60%RHより高い。他の実施形態では、最小相対湿度は、±2℃で、26℃、27℃、28℃または30℃での相対湿度である。
【0041】
いくつかの実施形態では、最大相対湿度は、75%RH±5%RHより低ければよい。例えば、最大相対湿度は、23℃±2℃、±5%RHで50%RHより低く、40%RHより低く、30%RHより低く、20%RHより低く、10%RHより低い。いくつかの実施形態では、最大相対湿度は、±2℃で、約26℃、27℃、28℃または30℃での相対湿度である。相対湿度は、約2%RH〜約75%RHの範囲であればよい。実際の相対湿度は、範囲内であれば任意の刻み幅の中にあってよい。
【0042】
相対湿度は、コリスチンメタナトリウム粉末の水分量の平衡がその最大臨界水分量未満かつ最小臨界水分量以上であり、室温でのコリスチンメタナトリウム粉末の流動性と保存安定性を確保するように選択してもよい。
【0043】
本発明は、微細化コリスチンメタナトリウムと任意の担体を混合する本発明の組成物を調製する方法も提供する。コリスチンメタナトリウムと担体は、当技術分野において公知であるドラム、フープまたはYコーンブレンダで混合すればよい。
【0044】
コリスチンメタナトリウムは、担体と合わせて投与してもよい。担体は、コリスチンメタナトリウムに化学的に不活性な非毒性の材料であればよく、吸引または投与に許容されるものであればよい。担体の例としては、限定されるものではないが、塩化ナトリウムまたは炭酸カルシウムのような無機塩;酒石酸ナトリウムまたは乳酸カルシウムのような有機塩;尿素のような有機化合物;ラクトース、アラビノースまたはグルコースのような単糖類;マルトースまたはショ糖のような二糖類;デンプンまたはデキストランのような多糖類を含む。
【0045】
担体は、コリスチンメタナトリウム粉末と同じ粒子径仕様を有する。担体を用いる場合、吸入装置からの送達を促進し、肺のより細い気道に沈着しないために、担体は、コリスチンメタナトリウムの粒径より大きい粒径を有することが好ましい。担体を包含することにより、カプセルの中への医薬品及び担体の調剤が容易になる。好ましくは、少なくとも約50体積%、より好ましくは少なくとも約70体積%の担体粒子が約30μm〜約150μmの範囲、好ましくは約30μm〜約80μmの範囲の有効な粒径を有している。医薬品と担体の混合は、担体を約75重量%まで、より好ましくは約50%まで含んでよい。一般的に、コリスチンメタナトリウムの割合は、約5:1〜1:2、より好ましくは4:1〜1:1である。
【0046】
微細化コリスチンメタナトリウム、賦活剤及び任意の担体に加え、医薬組成物は、吸引用組成物に存在していてもよい、着色料またはサッカリンのような香味料のような他の成分を含んでいてもよい。GB2269992(Rhone−Poulenc Rorer社)に記載されているように、帯電防止剤を添加してもよい。本粉末製剤は、例えばサルブタモールのような気管支拡張剤のような他の医薬成分を有していてもよい。このような他の医薬成分は、コリスチンの粒径に似た粒径を有するのが好ましい。気管支拡張剤は、極めて少量(mg)で送達される。例えば、カプセルは、約50mg〜約150mg、例えば125mgのコリスチンメタナトリウムと約1mg〜約250mg、例えば200mgのサルブタモールを有していてもよい。
【0047】
本微細化粉末は、特殊な粉末吸引装置を介して、肺に送達してもよい。好ましくは、本粉末医薬品は、ハードカプセル内またはブリスターパッケージ内にある。カプセルまたはブリスターは、吸入装置で破断または穴を開けられ、空気が吹きこまれるので、マウスピースを介して粉末の吸入が可能となる。
【0048】
カプセルが吸引装置を用いて操作される場合、カプセルシェルの水分量は、カプセルの穿孔及び/または機能に直接影響する。驚くべきことにそして予想外なことに、カプセルの破損率及び/または機能不全率は、制限されないが、カプセルの水分量、相対湿度、及び/またはカプセル及び/またはブリスターを充填する条件のようなカプセルの性質を注意深くコントロールすることで減少する。同様に、コリスチンメタナトリウム粉末の流動性は、制限されないが水分量と相対湿度のようなコリスチンメタナトリウムの物理的及び化学的特性を注意深くコントロールすることで、コリスチンメタナトリウム粉末の流動性が向上する。
【0049】
本発明の実施形態によれば、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを含むカプセルの単位剤型を提供する。カプセルは、ゼラチンまたはプラスチック材料で形成してもよい。本発明に用いるより好ましいカプセルは、PEGを基材とするゼラチンから形成されるカプセルまたは水溶性セルロース誘導体から形成されるカプセルである。水溶性セルロース誘導体の例は、微結晶セルロース、アルキル基、特にC
1〜C
4の低級アルキル基及び/またはヒドロキシアルキル基、特にC
1〜C
4の低級ヒドロキシアルキル基で置換したセルロースエステルを含む。特定の例においては、これらに限定されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルメチルセルロースを含む。好ましいセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0050】
カプセル材料は、さらに重合用添加剤を有していてもよい。ここで述べる必要な化学的及び物理的特性を有する限り、カプセル材料に特に制限はない。No.00、No.1、No.2及びNo.3カプセルを含む種々の大きさのカプセルが本発明に適する。水溶性セルロース誘導体を用いて作られたカプセルは、異なる色彩、不透明及びグレードのものが利用でき、これらの全ては、本発明による使用のために検討される。本発明で使用するための粉末製剤は、当技術分野において公知である。このような製剤は、当技術分野において公知である活性剤、分散剤及び賦形剤を含んでいてもよい。
【0051】
本発明のカプセルは、水溶性セルロース化合物及びゲル化剤を含んでいてもよい。アルキル基及びヒドロキシアルキル基の少なくとも一つの基で置換したセルロースエステルは、本発明で使用に適した水溶性セルロース化合物として挙げられる。「アルキル基」及び「ヒドロキシアルキル基」は、1〜6の炭素原子好ましくは1〜4の炭素原子を有する直鎖状または分岐した低級アルキル基に属し、特にメチル基、エチル基、ブチル基及びプロピル基が挙げられる。水溶性セルロース化合物の特別な例は、メチルセルロースなどのような低級アルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのような低級ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのような低級ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを含む。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、低水分条件下での製膜性と機械的な強度のため、特に適している。
【0052】
カラギーナン、タマリンド種子多糖類、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、ゼラチン、ファーセレニウム(fur selenium)、寒天、ゲランガムなどが単独または組み合わせて、有効なゲル化剤である。カラギーナンは上述したゲル化剤の中で、少量にて特定のイオンと組み合わせて用いる場合に、ゲル強度が大きく、優れたゲル化能を示す。
【0053】
用いるゲル化剤の種類により、ゲル化助剤を用いることもできる。以下のゲル化助剤は、ゲル化剤のカラギーナンと組み合わせて使用するとよい。κ−カラギーナンについて、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム及び塩化カルシウムのような、水中で1つ以上の種類のカリウムイオン、アンモニウムイオン及びカルシウムイオンを発生する化合物を使用してもよい。ι−カラギーナンについて、塩化カルシウムのような、水中でカルシウムイオンを発生する化合物を使用してもよい。ゲル化剤のゲランガムと組み合わせて使用するゲル化助剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムのような、水中で1つ以上の種類のナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを発生させる化合物を使用してもよい。さらに、クエン酸またはクエン酸ナトリウムもそれらの有機酸または水溶性塩として使用できる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースを水溶性セルロース化合物として使用し、カラギーナンをゲル化剤及びゲル化助剤として使用するのが好ましい。
【0054】
上述した化合物に加え、可塑剤、例えば塗料、顔料、不透明化剤などの着色剤、または着香料を必要により添加してもよい。医薬品または食品に用いることができる限りにおいて、限定なく、いかなる可塑剤を使用してもよい。例えば、ジオクチルアジペート、アジピン酸ポリエステル、エポキシ化大豆油、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル、カオリン、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ごま油、ポリジメチルシロキサン−二酸化ケイ素混合物、D−ソルビトール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、コーンスターチ由来糖アルコール溶液、トリアセチン、濃縮グリセリン、ひまし油、フィトステロール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシ−プロピレン(5)グリコール、ポリソルベート80、マクロゴール1500、マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール600、マクロゴール6000、イソプロピルミリステート、綿実油−大豆油混合物、モノステアリン酸グリセリン、リノール酸イソプロピルを可塑剤として使用してもよい。医薬品または食品に用いることができる限りにおいて、限定なく、いかなる着色剤を使用してもよい。例えば、粉末の阿仙薬タンニン酸、ウコンエキス、塩化メチルロザニリン、鉄黄、黄色三二酸化鉄、オレンジ精油、酸化鉄粉、カーボンブラック、カラメル、カルミン、カロテン液、β−カロテン、感光素201号、甘草エキス、金箔、クマザサ抽出物、鉄黒、軽質無水ケイ酸、ケッケツ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化第二鉄、ジスアゾイエロー、食用青色1号及びそのアルミニウムレーキ、食用青色2号及びそのアルミニウムレーキ、食用黄色4号及びそのアルミニウムレーキ、食用黄色5号及びそのアルミニウムレーキ、食用緑色3号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色2号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色3号、食用赤色102号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色104号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色105号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色106号及びそのアルミニウムレーキ、水酸化ナトリウム、タルク、銅クロロフィンナトリウム、銅クロロフィル、ライ麦緑葉ジュース粉末、ライ麦緑葉抽出物、フェノールレッド、フルオレセインナトリウム、d−ボルネオール、マラカイトグリーン、ミリスチン酸オクチルドデシル、メチレンブルー、薬用炭、酪酸リボフラビン、リボフラビン、粉末緑茶、リン酸マンガンアンモニウム、リン酸リボフラビンナトリウム、バラ油、ウコン色素、クロロフィル、カルミン酸色素、食用赤色40号及びそのアルミニウムレーキ、水溶性アナトー、鉄−クロロフィンナトリウム、ドナリエラカロテン、パプリカ色素、ニンジンカロテン、ノルビキシンカリウム、ノルビキシンナトリウム、パーム油カロテン、ビートレッド、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、紅麹色素、ベニバナ赤色色素、ベニバナ黄色色素、マリーゴールド色素、リン酸リボフラビンナトリウム、アカネ色素、アルカネット色素、アルミニウム、ポテトカロテン、エビ色素、オキアミ色素、オレンジ色素、カカオ色素、カカオ炭末色素、牡蠣色素、カニ色素、イナゴマメ色素、魚鱗箔、銀、草木色素、クチナシ青色色素、クチナシ赤色色素、クチナシ黄色色素、コーロー色素、クロロフィン、コウリャン色素、骨炭色素、ササ色素、シアの実色素、紫紺根色素、シタン色素、野菜カーボンブラック、スオウ色素、スピルリナ色素、タマネギ色素、タマリンド色素、コーン色素、トマト色素、ピーナッツ色素、ファフィア色素、ペカンナッツ色素、紅麹黄色、粉末アナトー、ヘマトコッカス藻色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、紅イモ色素、植物油煤色素、ラック色素、ルチン、エンジュ抽出物、ソバ抽出物、アカミノキ色素、赤キャベツ色素、赤米色素、赤色色素、アズキ色素、アジサイ葉抽出物、セピア色素、ウグイスカグラ色素、エルダーベリー色素、オリーブ茶、カウベリー色素、グースベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、ストロベリー色素、ダークスイートチェリー色素、チェリー色素、木苺色素、デベリー色素、パイナップルジュース、ハックルベリージュース、グレープジュース色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、プラム色素、ブルーベリー色素、ベリージュース、ボイセンベリー色素、ビルベリー色素、マルベリー色素、モレロチェリー色素、ラスプベリー色素、レッドカーラント色素、レモンジュース、ローガンベリー色素、粉末クロレラ、ココア、サフラン色素、シソ色素、チコリ色素、レイヤー色素、ハイビスカス色素、麦芽抽出物、粉末パプリカ、ビートレッドジュース、ニンジンジュースを着色剤として用いてもよい。医薬品または食品に用いることができる限りにおいて、限定なく、いかなる不透明化剤または着香剤を使用してもよい。不透明化剤としては例えば、酸化チタン、酸化第二鉄、黄色鉄三二酸化物、黒色酸化鉄、食用青色1号のアルミニウムレーキ、食用青色2号のアルミニウムレーキ、食用黄色4号のアルミニウムレーキ、食用黄色5号のアルミニウムレーキ、食用緑色3号のアルミニウムレーキ、食用赤色2号のアルミニウムレーキ、食用赤色3号のアルミニウムレーキ、食用赤色102号のアルミニウムレーキ、食用赤色104号のアルミニウムレーキ、食用赤色105号のアルミニウムレーキ、食用赤色106号のアルミニウムレーキ、食用赤色40号のアルミニウムレーキを不透明化剤として使用してもよい。
【0055】
本発明のカプセルは、平衡水分量が低い。カプセルが、特定の相対湿度下に置かれる場合、カプセルの平衡水分量はカプセルフィルムの水分量から算出することができる。
【0056】
水溶性セルロース化合物は、約5〜30重量%、好ましくは約10〜28重量%、さらに好ましくは約16〜24重量%である。ゲル化剤は、約0.01〜0.5重量%、好ましくは約0.02〜0.45重量%、さらに好ましくは約0.03〜0.4重量%である。添加する場合、ゲル化助剤は、約0.01〜0.5重量%、好ましくは約0.02〜0.45重量%、さらに好ましくは約0.03〜0.4重量%である。
【0057】
本明細書に記載されるように、カプセルシェルの水分量は、カプセルの穿孔及び機能に直接影響する。一つの実施形態では、限定するものではないが、カプセルの水分量、相対湿度、及び/またはカプセル及び/またはブリスターを充填する際の条件のようなカプセルの物理的及び化学的特性を変更することにより、カプセルの破損をコントロールすることができる。他の実施形態では、限定するものではないが、水分量及び相対湿度などコリスチンメタナトリウム粉末の物理的及び化学的特性をコントロールすることにより、カプセルの破損をコントロールすることができる。
【0058】
ゼラチンカプセルは、水分を容易に吸収し、環境湿度条件と平衡する。本明細書に記載されるように、微細化コリスチンメタナトリウム粉末を有するゼラチンカプセルは、約6重量%の水分量を有する。他の実施形態では、約7重量%、約7.25重量%、約7.5重量%、約7.7重量%、約8重量%、約8.5重量%または約9重量%の水分量を有していてもよい。ゼラチンカプセルは、約6重量%〜約16重量%の範囲の水分量を有していてもよい。カプセルの実際の水分量は、この範囲内であれば任意の刻み幅の中にあってよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、微細化コリスチンメタナトリウム粉末を有するゼラチンカプセルは、約6重量%の最小臨界水分量と約16重量%の最大臨界水分量を有していてもよい。他の実施形態では、ゼラチンカプセルは、約6重量%の最小臨界水分量と約12重量%の最大臨界水分量を、または約8重量%の最小臨界水分量と約10重量%の最大臨界水分量を有していてもよい。
【0060】
ゼラチンカプセル中の微細化コリスチンメタナトリウム粉末は、約0.1重量%の最小臨界水分量と約16重量%の最大臨界水分量を、約5重量%の最小臨界水分量と約16重量%の最大臨界水分量を、または約6重量%の最小臨界水分量と約10重量%の最大臨界水分量を有していてもよい。
【0061】
ある実施形態では、ゼラチンカプセルの最小RHは、23℃±2℃、±5%RHで例えば約2%RHより高く、約4%RHより高く、約6%RHより高く、約10%RHより高く、約12%RHより高く、約15%RHより高く、約25%RHより高く、約30%RHより高く、約40%RHより高く、約48%RHより高いように、約2%RH±5%RHより高ければよい。いくつかの実施形態において、カプセルの最小RHは、±2℃で、25℃、26℃、28℃または30℃での相対湿度である。
【0062】
ゼラチンカプセルの最大RHは、23℃±2℃で、±5%RHで例えば50%RHより低く、40%RHより低く、30%RHより低く、20%RHより低く、10%RHより低く、50%RHより低いように75%RH±5%RHより低ければよい。いくつかの実施形態では、カプセルの最大相対RHは、±2℃で、約25℃、26℃、28℃または30℃での相対湿度である。実際の相対湿度は、範囲内であれば任意の刻み幅の中にあってもよい。
【0063】
コリスチンメタナトリウム粉末の水分量がその最大臨界水分量を超えないことを確実にするために、ゼラチンカプセルは、ほぼ最大RHで前平衡するべきである。好ましくは、前平衡RHは、カプセルの機械的性能が損なわれないように、最大RHより低くなるように選択する。カプセル充填環境は、低いRHで維持するか、少なくとも24時間カプセルを前平衡RHで維持する。
【0064】
他の実施形態では、ゼラチンカプセルはPEGを基材としてもよい。このようなコリスチンメタナトリウム粉末を有するPEGを基材とするゼラチンカプセルは、約5重量%、約5.5重量%、約5.9重量%、約6.5重量%、約7重量%、約7.5重量%、約7.75重量%、約8重量%または約9重量%の水分量を有すればよい。PEGを基材とするゼラチンカプセルは、約5重量%〜約15重量%の範囲の水分量を有すればよい。カプセルの実際の水分量は、範囲内であれば任意の刻み幅の中にあってもよい。
【0065】
ある実施形態においては、コリスチンメタナトリウム粉末を有するPEGを基材とするゼラチンカプセルは、約5重量%の最小臨界水分量と約15重量%の最大臨界水分量を有すればよい。他の実施形態では、カプセルの最小臨界水分量は約6重量%であり、カプセルの最大臨界水分量は約14重量%である。カプセルの最小臨界水分量は約7重量%であってもよく、カプセルの最大臨界水分量は約12重量%であってもよい。カプセルの最大臨界水分量は約10重量%であってもよい。
【0066】
PEGを基材とするゼラチンカプセルの最小RHは、例えば23℃±2℃、±5%RHで約2%RH、±5%より高く、約4%RHより高く、約6%RHより高く、約10%RHより高く、約12%RHより高く、約15%RHより高く、約25%RHより高く、約35%RHより高く、約45%RHより高いように、約2%RH±5%RHより高ければよい。いくつかの実施形態では、カプセルの最大相対湿度は、±2℃で、約25℃、26℃、28℃または30℃での相対湿度である。
【0067】
カプセルの最大RHは、例えば23℃±2℃で、±5%RHで50%RHより低く、40%RHより低く、30%RHより低く、20%RHより低く、10%RHより低く、5%RHより低いように50%RH±5%RHより低ければよい。いくつかの実施形態では、カプセルの最大RHは、±2℃で、約25℃、26℃、28℃または30℃での相対湿度である。相対湿度は、約2%RH〜約75%RH範囲にあればよい。実際の相対湿度は、範囲内であれば任意の刻み幅の中にあってもよい。
【0068】
本発明の一実施形態において、微細化コリスチンメタナトリウム粉末を有するHPMCカプセルは、約0.5重量%、約1重量%、約1.4重量%、約2重量%、約2.25重量%、約2.8重量%、約3重量%、約3.5重量%、約3.75重量%、約4重量%、約4.5重量%、約5重量%、約5.5重量%、約5.8重量%、または約7重量%の水分量を有すればよい。HPMCカプセルは、約0.1重量%〜約10重量%の範囲の水分量を有すればよい。実際の水分量は、範囲内であれば任意の刻み幅の中にあってもよい。
【0069】
他の実施形態において、カプセルは、約0.1重量%の最小臨界水分量と約10重量%の最大臨界水分量を有するコリスチンメタナトリウム粉末を有するHPMCカプセルであればよい。また、HPMCカプセルの最小臨界水分量は約1重量%であってもよく、HPMCカプセルの最大臨界水分量は約8重量%であってもよい。コリスチンメタナトリウム粉末を有するHPMCカプセルの最小臨界水分量は約1重量%であってもよく、HPMCカプセルの最大臨界水分量は約5重量%であってもよく、または最小臨界水分量は約2.5重量%であってもよく、最大臨界水分量は約7重量%であってもよい。
【0070】
HPMCカプセルの最小臨界水分量は、約0.5重量%、約0.75重量%、約1重量%、約2重量%または約3重量%であってもよい。
【0071】
HPMCカプセルの最大臨界水分量は、約10重量%、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%または約5重量%であってもよい。
【0072】
HPMCカプセルの最小RHは、23℃で、±5%RHで例えば2%RHより高く、4%RHより高く、6%RHより高く、10%RHより高く、12%RHより高く、15%RHより高く、25%RHより高く、35%RHより高く、45%RHより高いように、2%RH±5%RHより高くてもよい。いくつかの実施形態では、カプセルの最小RHは、±2℃で、25℃、26℃、28℃または30℃での相対湿度である。
【0073】
HPMCカプセルの最大RHは、23℃で、例えば±5%RHで50%RHより低く、40%RHより低く、30%RHより低く、20%RHより低く、10%RHより低く、5%RHより低いように50%RH±5%RHより低ければよい。いくつかの実施形態では、カプセルの最大RHは、±2℃で、約25℃、26℃、28℃または30℃での相対湿度である。相対湿度は、約2%RH〜約75%RHの範囲にあればよい。実際の相対湿度は、範囲内であれば任意の刻み幅の中にあってもよい。
【0074】
カプセルに充填する際の条件を注意深くコントロールすることで、コリスチンメタナトリウム粉末の最終水分レベルを、約15重量%より少なく、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%に保つことができる。湿度レベルは、好ましくは約45%RHより低く、より好ましくは約35%RHより低く、最も好ましくは約30%RHより低い。最小の静的効果で生産物を充填することが可能となるので、低い湿度レベルは製品の安定性にとって重要である。
【0075】
カプセル内に含まれる組成物の量は、望まれる用量に依存する。好ましくは、カプセルは、約10mg〜約200mg、より好ましくは約30mg〜約150mg、最も好ましくは約120mg〜約130mgのコリスチンメタンスルホン酸ナトリウム粉末を有する。コリスチンメタナトリウムは、担体とともに、または担体なしで送達する。担体を用いる場合、担体とコリスチンメタナトリウムの多量の混合物が必要である。好ましくは、カプセルは、肺に実際に送達される量より多くの用量の薬剤を有するべきである。
【0076】
1回分の投薬量は、「国際単位」または「IU」で表現する。80mgのコリスチンメタンスルホン酸は約100万IUのコリスチンメタンスルホン酸にあたる。1単位のコリスチンメタンスルホン酸は、コリスチンメタンスルホン酸の最初の国際標準品(1996)の0.00007874mgを含む。嚢胞性繊維症に罹患した子供は、1日に2回、500,000単位のレベルの噴霧化コリスチンメタナトリウムで治療してもよい。通常のネブライザー(CR50システム22)からの呼吸可能画分は、500,000単位用量から、約9mgのコリスチンメタナトリウムである。これは、マルチステージリキッドインピンジャーを用い、ステージ3と4で集めた質量を測定することで、テストできる。
【0077】
本発明による医薬組成物を送達する好ましい装置は、PH&T製のターボスピン(登録商標)である。この装置は、1本の金属針により、底部で穿孔されるゼラチンカプセルを用いる。患者がマウスピースから吸入をする場合、チャンバーの周囲で接線方向に配列したスリットを通して空気が取り込まれる。これによりカプセルが回転し、成分が気流中に投入される。装置の引上げ式の蓋には、3個のスペアのカプセルを保管することができる。
【0078】
医薬組成物を送達する他の好ましい装置は、Boehringer Ingelheim製のAerohaler(登録商標)である。この装置は、カプセルの横で2つの金属針により穿孔されるハードゼラチンカプセルを用いる。患者がマウスピースから吸入すると、チャンバーの底に空気が入り、カプセルが回転し、成分が気流中に投入される。装置は、回転カートリッジ内に6個のカプセルを保管することができる。吸入によりカプセル化した粉末を送達する当技術分野において公知である他の装置を使用することができる。
【0079】
カプセルは、好ましい水分量と流動性の形態で粉末を保つ。カプセルは、好ましくはその成分を光から保護するように設計され、すなわち、カプセルは不透明である、またはカプセルが半透明であれば、着色またはカバーされた容器または金属箔などの不透明な容器に詰める及び/または保管すればよい。
【0080】
装置内のカプセルの適切な配置だけでなく装置により用いられる穿孔方法には、例えば穿孔カプセルの破損率を減少させうる、角のある穿孔、カプセルの頭部を下にする配置、カプセルの平面部を下にする配置、平面部への穿孔が含まれてもよい。各実施例は、本発明と切り離した実施形態の例である。
【0081】
伝統的に、コリスチンメタナトリウムは、気密容器内で水分のない状態で保管されなければならない。しかし、臨界レベルの水分は、流動性を改善し、化合物の安定性に影響しないことが現在見いだされている。欧州薬局方(第7版、2013、1762〜1763頁)によれば、コリスチンメタナトリウムの微細化されていない原材料の水分量の最大限度が約5.0重量%である。約0.1重量%〜約10重量%の水分量で保管された本発明に記載される微細化粉末産物は、試験により、5年間にわたる保管で機能を失わず、安定であることが示された。
【0082】
本発明は、さらに以下の実施例を参照することにより更に詳述され、以下の図面により図示される。以下の実施例は、単なる例示であり、実施例によって包含される多くの変更や等価物は、本開示を読む当業者に明らかになるので、決して実施形態の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0083】
実施例
(実施例1)
Dumex Pharmaceuticals社から供給された平均粒径約100μmの粉末コリスチンメタナトリウムを、Hosokawa Alpine製ミルを用いて、気体のエネルギーにより粉砕して、微細化コリスチンメタナトリウムを製造した。微細化コリスチンメタナトリウムのサンプルをクロロホルム中に分散させ、粒径はレーザカウンタで分析した。
図1は、微細化コリスチンの粒径の範囲を示す。
【0084】
(実施例2)
ゼラチン医薬用カプセル(標準サイズ2)をShionogi Qualicaps社から購入した。カプセルは、コントロールした温度及び湿度条件(17℃、10%〜15%RH)下で標準的な充填機(Zanassi LZ64)を用いて充填された。コリスチンメタナトリウムは、純粋な微細化粉末としてまたは賦形剤のラクトース担体(Borculo Whey products社製で医薬品グレードのlactochem、ラクトース一水和物)とともにカプセルに充填した。充填物を表1に示す。
(表1)
【0085】
コリスチンメタナトリウムを単独で用いる場合、コリスチンメタナトリウムは良く流出する。充填量は標準的である。試験番号2のコリスチンとラクトースの混合物を用いる場合、混合粉末は機械を通過して良く流出するが、カプセル充填機内で成分が固着する。試験番号3と4では、固着は減少する。試験では、16〜20mgの範囲で呼吸可能分画が見いだされた。これは、コリスチンメタナトリウムの質量がマルチステージリキッドインピンジャーのステージ3と4で集められ、約3〜4μm未満の大きさを有する粒子に相当する。
【0086】
(実施例3)
上記試験番号1〜4から製造した充填カプセルを様々な湿度条件で9カ月保管した。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの変質や凝集を生じなかった。カプセル壁上にコリスチンメタナトリウムの顕著な凝集は生じなかった。
【0087】
(実施例4)
微細化コリスチンメタナトリウム粉末を水分量8重量%で、25℃、60%RHでの密閉状態で5年間保管した。有害な分解物である遊離コリスチン量は約5重量%未満で、分解が非常に低量であることを示唆する。
【0088】
(実施例5)
ゼラチンカプセル内にカプセル化したコリスチンメタナトリウムの一部を周囲温度条件で相対湿度が約20%RH〜約80%RHの範囲で保管した。カプセル化したコリスチンメタナトリウムを複数の時点で水分量と穿孔性能の試験をした。例えば、23℃ 30%RHで、23℃ 40%RHで、23℃ 48%RHで、23℃ 75%RHで、1,2,4及び24時間など複数の時点でカプセルを試験した。保管条件は、目標温度23℃±2℃及び設定相対湿度±5%RHで設定する適正化した安定性チャンバーを用いて、保管条件を生成した。実験室の周囲条件は約23℃±2℃、48%RHで決定した。周囲条件は、校正したNIST自記温湿度計を用いて確認した。ゼラチンカプセルの水分量と同様にコリスチンメタナトリウムの平均水分量は、カールフィッシャー法を用いて測定した。
【0089】
表2下は、様々な保管条件におけるコリスチンメタナトリウム粉末とゼラチンカプセルの水分量(KF)を示す。
図4は、時間、相対湿度及び保管条件を関数としたコリスチンメタナトリウムの水分量の例を示す。
図5は、様々な保管条件及び相対湿度条件でのゼラチンカプセルの水分量の例を示す。
(表2)
【0090】
カプセルシェルの穿孔を測定するために、ゼラチンカプセルを試験する。観察したカプセルシェルの穿孔を3つのクラスに分類した。カテゴリー1において、カプセルの力学的な完全性を保ちつつ、作動時にカプセル本体に、または頭部に形成された2つのきれいな穴を示すために、カプセルを穿孔した。カテゴリー2において、わずかなひび割れを有する2つのきれいな穴を有するように、カプセルを穿孔した。カテゴリー3において、カプセルに大きな穴またはカプセルの破砕を起こすように、カプセルを穿孔した。一旦、例えばターボスピン(Turbospin(商標))装置のような装置でカプセルを穿孔すると、カプセルは開口し、視認することができ、ここで述べるカテゴリー化した評定尺度に基づいて格付けした。表3は、時点及び条件によるカプセルの穿孔カテゴリーを示す。
図6は、時間と相対湿度の機能としてのゼラチンカプセルを穿孔するカテゴリー3の頻度の例を示す。
(表3)
【0091】
表4下は、カテゴリー3の穿孔の減少の程度及びコリスチンメタの水分量に基づく、保管条件ごとの平衡時間を示す。
(表4)
【0092】
(実施例6)
実施例5及び
図4〜6に示すように、カプセルシェルの水分量は、コリスチンメタナトリウム粉末を有するゼラチンカプセルのカプセルシェルの穿孔に直接影響を与える。
図7は、ゼラチンカプセルにおいて、カテゴリー3の穿孔の大きな減少を観察した範囲の例を示す。
図7は、カテゴリー3の穿孔の発生率に対するカプセルの水分量も示している。ゼラチンカプセルの水分量が約12重量%以上になるとカプセルシェルの弾力は作動ピンの力に耐えるのに十分となり、カテゴリー3の穿孔が観察されない。
図7に示すように、カテゴリー3の穿孔の出現率は、約10.5重量%未満の水分量で増加する。
【0093】
(実施例7)
カプセルの3つの異なる型のカプセルの破損率を測定した。表5は、カプセルシェルの水分量とカプセルの平均破損率を示す。
(表5)
【0094】
カプセルを異なる相対湿度と保管条件にさらした。例えば、カプセルを25℃で11%RH〜43%RHの範囲の条件にさらした。各々のカプセルの型のカプセルシェルの水分量を測定した。
【0095】
同一の条件下で、カプセルシェルの水分量は、ゼラチンカプセルが最も高く、PEGを基材とするゼラチンカプセル、及びHPMCカプセルと続いた。ほぼ同じ水分量では、PEGを基材とするゼラチンカプセルに比べてゼラチンカプセルの破損率がより高かった。HPMCカプセルは、表5に示すように、非常に低い水分量で破損が少なかった。
【0096】
(実施例8)
一つの臨床試験において、粉末化したコリスチンメタナトリウムの肺の気道への吸収を測定した(特異的気道コンダクタンス)。コリスチンメタナトリウムの微細化乾燥粉末を吸入した患者の80%で、80mgの薬剤、すなわち1メガ単位を動員できることが見いだされた。これは、粉末薬剤からは予想以上の非常に高い取り込みである。粉末は、肺に刺激を起こさず、それゆえコンストラクションを起こさない。第2の試験において、サルブタモール200mgを患者に前投薬投与した。これにより、気道コンダクタンスは改善するように思われた。代替の薬剤投与では、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムと同じカプセルにサルブタモールを混合することができる。さらなる試験では、全身プレスチモグラフィーにより測定される特異的気道コンダクタンスを従来の噴霧化コリスチンメタナトリウムと乾燥粉末で比較したが、試験はいかなる顕著な差も示さなかった。
【0097】
(等価物)
実施形態を、例示的な実施形態を参照することにより示し、説明してきたが、このような参照は、範囲の限定を意味するものではなく、このような限定が推測されるべきではない。実施形態は、本開示の利益を有する関連技術分野の通常の当業者に想起されるような、形態及び機能における相当の変更、改変、及び等価物とすることができる。
【0098】
示され、説明された実施形態は、例示的なものに過ぎず、範囲を網羅するものではない。
【0099】
本明細書に引用される全ての参考文献は、本明細書にその全体が参考により援用される。