特許第6461921号(P6461921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461921
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】熟成監視装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/38 20060101AFI20190121BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20190121BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20190121BHJP
【FI】
   G01M3/38 K
   G01N21/03 B
   G01N21/3504
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-514481(P2016-514481)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公表番号】特表2016-519319(P2016-519319A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】GB2014051568
(87)【国際公開番号】WO2014188195
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】1309232.5
(32)【優先日】2013年5月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514010047
【氏名又は名称】エム スクエアード レーザーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】M SQUARED LASERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マーカー,ガレス トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルコム,グレーム ペーター アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ニコルズ,ジョン
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−510486(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/008003(WO,A1)
【文献】 米国特許第07749446(US,B1)
【文献】 米国特許第02212211(US,A)
【文献】 特開平11−108831(JP,A)
【文献】 特開2012−255702(JP,A)
【文献】 特開2006−300760(JP,A)
【文献】 特開平03−269232(JP,A)
【文献】 特表2001−509595(JP,A)
【文献】 特開2000−206035(JP,A)
【文献】 特開平11−344434(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第2571382(FR,A1)
【文献】 特開平01−314939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
G01N 21/00−21/01;21/17−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熟成プロセス中に1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視する装置であって、
1またはそれ以上の流体管およびポンプと連通するマルチパス吸収セルを備え、前記1またはそれ以上の流体管の遠位端が前記1またはそれ以上の樽の外周の周囲に配置されており、前記ポンプが、前記1またはそれ以上の流体管を介して前記1またはそれ以上の樽の外周から前記マルチパス吸収セル内に流体サンプルを引き込むための手段を提供し、
当該装置がさらに、前記マルチパス吸収セル内の流体サンプルを監視する監視システムを備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記マルチパス吸収セルが、Herriot型セルを含むことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
前記マルチパス吸収セルが、White型セルを含むことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、
前記マルチパス吸収セルが、Pfund型セルを含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置において、
前記監視システムが、光源および検出器を備え、前記検出器が、前記光源から発せられた光を、前記マルチパス吸収セルを通って伝播した後に、受信するように配置されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記光源が、中赤外レーザ源を含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置において、
前記マルチパス吸収セルと連通するように配置されたパージ源をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項8】
熟成プロセス中に1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視する方法であって、
前記1またはそれ以上の樽の外周の周囲に1またはそれ以上の流体管の遠位端を配置するステップと、
前記1またはそれ以上の流体管を介して前記1またはそれ以上の樽の外周の周りから取った流体サンプルを、マルチパス吸収セルに与えるステップと、
前記マルチパス吸収セルを通って伝播した後の光照射野を監視するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視する方法において、
流体サンプルをマルチパス吸収セルに与えるステップが、前記1またはそれ以上の樽の外周の周りから前記マルチパス吸収セル内に蒸気をポンプで送り込むステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視する方法において、
前記マルチパス吸収セルを通って伝播した後の光照射野を監視するステップが、光源により生成されたの吸収または出力を測定するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8乃至10の何れか一項に記載の1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視する方法において、
不活性ガスで前記マルチパス吸収セルをパージするステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熟成プロセスで使用する装置および方法に関し、特に、熟成プロセス中に1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視するための装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スコッチモルトウィスキーの製造は、幾つかの段階を伴い、そのうち最も重要なのは、ほぼ間違いなく熟成プロセスであり、そのプロセスによって、新たに作られたウィスキーは、木製の樽内で数年間熟成される。
【0003】
ウィスキーは、樽に入れられたときは、一般に、〜60%の水、〜40%のエタノール、(および〜0.1%のその他の成分)であるが、熟成プロセス中(通常は10乃至20年かかる)、樽内の流体量の一部が大気中に失われる。これは、その業界において親しみを込めて“天使の取り分”と呼ばれている。
【0004】
天使の取り分は、スコットランドでは、1年につき約2体積%であるのが一般的である。世界の他の場所では、喪失は、1年につき5体積%程度となる場合もある。幾つかのウィスキー製造業者は、常に、1000万個の熟成中のウィスキー樽を有することもあり、その喪失は、明らかにかなりの量となる。実際に、天使の取り分は、製造コストの10乃至15%程度かかると報告されている。
【0005】
また、ワイン、コニャック、アルマニャック、シェリー酒、ポートワイン、ウィスキー(例えば、バーボン)およびビールも(バルサミコ酢のように)樽で熟成されることがあり、天使の取り分の喪失問題は、(程度の差はあるが)それらの熟成プロセスにも影響を与えることが知られている。したがって、これは、広い範囲に及ぶ問題であり、問題を少なくとも部分的に解決する解決策は、大きな経済的な恩恵を与えるものとなる。
【0006】
そのような流体喪失を防止するために、ウィスキー樽を収縮包装する実験が行われている。そのようなプロセスによって流体喪失は排除(または大幅に低減)される一方で、対応する空気進入の排除(または大幅な低減)が生じ、それが、熟成プロセス、ひいては最終製品の味にも悪影響を与えると考えられている。
【0007】
本発明者等は、以前に、国際特許出願番号PCT/GB2012/051621において詳細に記載されているように、熟成プロセス中の樽からの流体喪失を低減するための別の方法および装置を開発している。この装置は、樽を密封状態で収容するために用いられる容器を備え、それにより樽の周囲に膨張空間を与え、蒸気の漏れを蓄積する手段を提供する。その後、膨張空間を通る光の相対透過率を測定するために、光源と検出器に基づく監視システムが用いられ、それにより樽からの流体喪失の測定値が提供される。
【0008】
実際のところ、上記容器を配置することは、必ずしも好都合ではなくまたは実際的に可能ではない。さらに、一旦配置されると、流体喪失の速度は低くなり、そのため、膨張空間内に十分な流体喪失が蓄積されて監視システムによって検出されるまでに長い時間かかる可能性がある。それらの問題は、特に、複数の樽を受け入れるように設計された容器に当てはまる。
【0009】
本発明においては、熟成プロセスからの製品の喪失量を迅速かつ正確に監視することができる装置および方法を提供することにより、大きな利点が得られると認識される。
【0010】
このため、本発明の一態様の目的は、従来知られている熟成監視装置および方法の上述した問題点を未然に防止または少なくとも軽減することにある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1態様によれば、熟成プロセス中に1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視する装置であって、1またはそれ以上の流体管およびポンプと連通するように配置されたマルチパス吸収セル(multi-pass absorption cell)と、マルチパス吸収セル内の流体を監視するように配置された監視システムとを備える装置が提供される。
【0012】
ポンプおよび流体管は、マルチパス吸収セルに蒸気サンプルを提供するために用いることができ、蒸気サンプルは、その後、監視システムによって監視され得る。これは、従来知られているシステムよりも、携帯性に優れ、操作時間が短く、高い感度を示す装置をもたらすものとなる。
【0013】
最も好ましくは、マルチパス吸収セルは、Herriot型セルを含む。代替的には、マルチパス吸収セルは、White型セルを含む。更なる代替として、マルチパス吸収セルは、Pfund型セルを含む。
【0014】
監視システムは、光源および検出器を備えることができ、検出器は、光源から発せられた光を、マルチパス吸収セルを通って伝播した後に、受信するように配置されている。
【0015】
任意には、光源は、中赤外レーザ源を含む。
【0016】
上記装置は、マルチパス吸収セルと連通するように配置されたパージ源をさらに備えることができる。
【0017】
本発明の第2態様によれば、熟成プロセス中に1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視する方法であって、1またはそれ以上の樽の外周の周りから取った流体サンプルを、マルチパス吸収セルに与えるステップと、マルチパス吸収セルを通って伝播した後の光照射野(light field)を監視するステップとを備える方法が提供される。
【0018】
流体サンプルをマルチパス吸収セルに与えるステップは、1またはそれ以上の樽の外周の周りからマルチパス吸収セル内に蒸気をポンプで送り込むことを含むことができる。
【0019】
マルチパス吸収セルを通って伝播した後の光照射野を監視するステップは、光源により生成された光照射野の吸収または出力を測定することを含むことができる。
【0020】
上記方法は、不活性ガスでマルチパス吸収セルをパージするステップをさらに備えることができる。
【0021】
本発明の第2態様の実施形態は、本発明の第1態様またはその実施形態の特徴に対応する1またはそれ以上の特徴を含むことができ、また、逆の場合も同様である。
【0022】
本発明の第3態様によれば、熟成プロセス中に1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視する装置が提供され、この装置は、1またはそれ以上の流体管およびポンプと連通するように配置されたマルチパス吸収セルを備え、ポンプが、1またはそれ以上の流体管の遠位端からマルチパス吸収セル内に流体サンプルを引き込むための手段を提供し、当該装置がさらに、マルチパス吸収セル内の流体サンプルを監視する監視システムを備える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ほんの一例として、本発明の様々な実施形態を、以下の図面を参照しながら説明することとする。
【0024】
図1図1は、本発明の一態様に係るウィスキー熟成プロセスを監視する装置を概略的な形式で示している。
図2図2は、図1の装置によって用いられるHerriot型セルの概略図を示している。
図3図3は、ウィスキー熟成プロセスの監視に含まれる方法のフローチャートを示している。
【0025】
以下の説明において、明細書および図面を通して、同様の部品には同じ符号が付されている。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明の実施形態の細部と特徴をよりよく示すために、特定の部品の大きさが誇張されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の実施例は、ウィスキー樽中におけるウィスキーの熟成と関連させて説明されるが、本発明は、例えば、ワイン、コニャック、アルマニャック、シェリー酒、ポートワイン、ウィスキー(例えば、バーボン)、ビールおよびバルサミコ酢といった他の熟成プロセスに有用性を見い出すことが理解されよう。さらに、木製樽が一般的に採用されるが、他の材質でできた樽(ワインの熟成で増々使用されるプラスチックまたは金属や、白酒の熟成に使用される土器など)も、ここで説明された保護の範囲を逸脱するものでないことが理解されよう。
【0027】
図1は、熟成プロセス中に樽2からの流体喪失を監視する装置1の概略図を示している。ウィスキー樽2は、縦に置いた状態で示されているが、当然のことながら、樽2は水平または他の向きに置くようにしてもよく、また、規則的または不規則な形状を呈するものであってもよい。
【0028】
装置1は、ハウジング3を備え、このハウジング内には、マルチパス吸収セル4が配置されていることが分かる。このマルチパス吸収セルの詳細は、図2を参照して後述することとする。ハウジング3からは、4本の流体管5が延びている(それらのうち3本のみが図1において見られる)。各流体管内に配置されるバルブ6は、流体管5とマルチパス吸収セル4を分離する手段を提供する。
【0029】
開口部7は、光がハウジング3に出入することを可能にする。開口部7は、当該開口部に取り付けられたフッ化カルシウム(CaF)の窓によってシールされているが、任意の適当な材質を窓に使用することができる。
【0030】
ポンプ8は、マルチパス吸収セル4と連通するように配置されている。バルブ9は、ポンプ8とマルチパス吸収セル4を分離する手段を提供する。この実施形態では、ポンプ8およびバルブ9がハウジング3の外部にあるものとして示されている。
【0031】
また、パージ源10、例えば、窒素またはその他の不活性ガスも、マルチパス吸収セル4と連通するように配置されている。バルブ11は、パージ源10とマルチパス吸収セル4を分離する手段を提供する。
【0032】
装置1は、マルチパス吸収セル4内の流体(例えば、蒸気)の存在を監視するように配置された監視システム12をさらに含むことが分かる。監視システム12は、中赤外レーザ源13および検出システム14を備える。これらについては後で詳細に説明することとする。ビーム操縦ミラー15は、マルチパス吸収セル4に対して入力光16を与えるために、検出システム14を経由させて、レーザ源13から出る光を導く手段を提供する。検出システム14は、入力光16がマルチパス吸収セル4を通って伝播したら(以下、出力光17と称する)、その光を分析するように配置されている。
【0033】
図2によれば、マルチパス吸収セル4は、Herriott型セルを含むことが分かる。Herriot型セルは、光キャビティ20を形成するように配置された2つの対向する球面鏡18,19から構成されている。開口部21は、第1の球面鏡内に形成されており、それにより、入力光16および出力光17が光学キャビティ20に入り、光学キャビティから出ることが可能となっている。その結果、マルチパス吸収セル4は、キャビティ20内に含まれるサンプル空間内で入力ビーム16の全光路長を増大させることにより、検出感度を改善する手段を提供する。これは、後で詳細に述べるように、装置1に対してより大きな検出感度をもたらす。入力ビーム16の横断回数、すなわち装置1の感度は、球面鏡18,19間の分離距離を単に調節するだけで制御することができる。
【0034】
適当な中赤外レーザ源13は、国際公開番号WO2006/061567に詳細が記載されているように、キャビティ内光パラメトリック発振器(OPO)である。記載されているOPOは、携帯型のレーザ源を提供し、このレーザ源は、約70mWの出力、100kHzを超えるパルス繰り返し周波数、5GHz以下のスペクトル線の幅を有するパルス出力フィールドを示し、2乃至6ミクロンに波長を調整することができる。したがって、キャビティ内OPO13は、3306nmの出力波長がエタノールのO−HおよびC−H伸縮の吸収帯と一致するため、樽2から流体が漏れたときに吸光分光法を実行するための理想的な源である。よって、マルチパス吸収セル4を通る伝播は、セル4内のエタノールの存在の指標を与える。
【0035】
適当な検出システム14は、同様に国際公開番号WO2006/061567に詳細が記載されているように、ラスター走査および検出システムである。このシステムは、マルチパス吸収セル4から戻る後方散乱吸収信号17を収集、記録および分析することができ、出力光17の出力を時間の関数として記録することを可能にする。
【0036】
代替的な実施形態では、検出システム14は、この場合も時間の関数として出力光17の出力を記録することを可能にするために、データロガー、例えば、適当なデータ収集カードを有するPCに接続されたレーザパワーメータを含むことができる。
【0037】
さらに、当然のことながら、この装置において、代替のマルチパス吸収セル4を用いることもできる。例えば、Herriott型セルは、伝播中に作動するもの、すなわち、第2球面鏡が開口部を有し、レーザ源13および検出システム14がセルの両側に配置されるものであってもよい。代替的には、マルチパス吸収セル4は、従来より知られているようなWhite型セルまたはPfund型セルを含むものであってもよい。
【0038】
上記実施形態では、ポンプ8、バルブ6,9,11、パージ源10、レーザ源13、検出システム14およびビーム操作ミラー15すべてが、ハウジング3の外側にあるものとして示されている。当然のことながら、代替的な実施形態では、それら構成要素の1またはそれ以上が、ハウジング3それ自体の内部に配置されるものであってもよい。
【0039】
流体の減少を監視する方法
ここで、図3を参照しながら、樽2からの流体喪失を監視する方法を述べることとする。
【0040】
先ず、マルチパス吸収セルに、1またはそれ以上の樽の外周の周りから取った蒸気サンプルが与えられる。これは、監視される樽の外面と連通するように装置を配置することによって達成される。実際には、これは、樽の外周の周囲に流体管の端部を位置させることによって達成される。その後、空気のサンプルが、マルチパス吸収セル4の光学キャビティ内に引き込まれる。これは、ポンプバルブ9および流体管バルブ6を開位置にしてポンプ8を作動させることによって達成される。
【0041】
その後、例えば、レーザ源13により生成される光の吸収またはパワーを測定することによって、マルチパス吸収セル4を通って伝播した後の入力光16を監視するために、中赤外レーザ源13および検出システム14が用いられる。これは、ポンプバルブ9および管バルブ6を開位置にして、すなわち、マルチパス吸収セル4を通る一定流量または空気で、実行されるものであってもよい。代替的には、それらバルブ6,9は、出力の記録が固定サンプルから取られるように、所定時間後に閉じられるものであってもよい。
【0042】
出力記録を取る前に、マルチパス吸収セル4をパージすることが好ましい。これは、流体管5の遠位端を樽2から離すように移動させた後、ポンプバルブ9および流体管バルブ6をそれぞれの開位置にしてポンプ8を作動させることによって達成することができる。しかしながら、“天使の取り分”が存在しないことにオペレータが自信を持つことができる環境内に、流体管5の遠位端を簡単に移動させることは、必ずしも可能であるわけではない。これは、ウィスキー樽が貯蔵されるウィスキー蒸留所または同様の場所でテストを実行する場合に、特に当てはまる。マルチパス吸収セル4をパージするための好ましいオプションは、窒素ガスが装置1を通って流れるように、流体管バルブ6,ポンプバルブ9およびパージ源バルブ11を開放することである。
【0043】
上記装置および方法を単一の樽2に関して説明してきたが、当然のことながら、流体管5の遠位端の位置により規定されるように、2またはそれ以上の樽に装置が配置されるものであってもよい。
【0044】
当然のことながら、流体管5の数は、上記実施形態で説明したように、4に制限されるものではない。装置は、単一の流体管5を使用して前に述べたように機能するものとなる。
【0045】
レーザ源13および検出システム14を使用して容器空間内におけるエタノールの存在を監視するものとして例示的な実施形態を説明してきたが、マルチパス吸収セル4内の大気組成を分析するために、分光計または分光光度計を用いて、その他の有用な情報が収集されるものであってもよい。分光計は、任意の適当な種類のもの、例えば、国際公開番号WO2006/061567に記載されているような波長可変ダイオードレーザ吸収分光計またはアクティブ赤外線ハイパースペクトル画像システムであってもよい。したがって、マルチパス吸収セル4内の大気組成の詳細な分析は、リアルタイムで判定されるものであってもよい。
【0046】
上述した装置および方法は、1またはそれ以上の樽から漏れるエタノール蒸気のレベルを監視するための手段を提供する。任意には、大気組成も測定されるものであってもよい。さらに、装置は、周知のシステムよりも遥かに携帯性に優れているが、短い操作時間で、高い感度を示すものとなる。
【0047】
本発明は、熟成プロセス中に1またはそれ以上の樽からの流体喪失を監視する装置および方法を提供する。この装置は、1またはそれ以上の流体管およびポンプと連通するように配置されたマルチパス吸収セルと、監視システムとを含む。ポンプおよび流体管は、流体サンプル(例えば、蒸気サンプル)をマルチパス吸収セルに移送する手段を提供する。監視システムは、マルチパス吸収セル内の流体を検出および識別する手段を提供する。上記装置は、従来から知られているシステムよりも、携帯性に優れ、操作時間を低減し、高い感度を示す。
【0048】
明細書を通して、文脈が他を要求しなければ、「備える」若しくは「含む」という用語、または「備え」若しくは「備えている」、「含み」若しくは「含んでいる」のような活用形は、記載した数または数の群を包含するが、他の数または数の群の除外を意味するものではないと理解されるべきである。
【0049】
さらに、詳細な説明における先行技術に対する言及は、先行技術が通常の一般知識の一部を構成していることを示していると受け取るべきではない。
【0050】
本発明の上記詳細な説明は、例示および説明の目的のために示され、排他的なものではなく、または本発明を開示された正確な形態に限定すべきものではない。記載された実施形態は、本発明の原理およびこれらの実際の適用を最良に説明するために選択されて説明され、これらによって他の当業者が、考えられる特定の使用に適した様々な変更を伴う本発明の様々な実施形態を最適に利用することが可能になる。したがって、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、さらなる変更または改良が包含される。
図1
図2
図3