特許第6461930号(P6461930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461930
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】スラリーの移送法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/56 20060101AFI20190121BHJP
   B01D 15/20 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   G01N30/56 A
   B01D15/20
【請求項の数】19
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-518082(P2016-518082)
(86)(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公表番号】特表2016-533479(P2016-533479A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】SE2014051107
(87)【国際公開番号】WO2015047172
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年9月25日
(31)【優先権主張番号】1351136-5
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ビーヨルリング,ミーカイル
(72)【発明者】
【氏名】エドブラド,ベングト・ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】カールベルグ,ペル
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,ヨーナス
(72)【発明者】
【氏名】ルンクビスト,ヨーアキム
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−520485(JP,A)
【文献】 特表2011−525988(JP,A)
【文献】 特表2011−522248(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0100932(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0073213(US,A1)
【文献】 特表2010−520992(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0217248(US,A1)
【文献】 特開2012−159462(JP,A)
【文献】 特開平06−066779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/93
B01D 15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリータンク(3)からクロマトグラフィーカラム(9)へとクロマトグラフィー媒体スラリーを移送するための方法であって、前記移送中に前記スラリータンク(3)内の前記スラリーの含有量をモニタすること、および前記スラリータンク(3)内の前記スラリーの含有量に応じて、前記クロマトグラフィーカラム(9)への前記スラリーの移送を制御することを含み、
前記クロマトグラフィーカラム(9)への前記スラリーの移送の制御が、前記スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、移送速度を低下させることを含む方法。
【請求項2】
前記スラリー含有量情報を制御システム(11)で受け取ること、および前記制御システム(11)から前記クロマトグラフィーカラム(9)への前記スラリーの移送を制御することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロマトグラフィーカラム(9)への前記スラリーの移送の制御が、前記スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、前記スラリーの移送を中止することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記スラリータンクの内壁をすすぐことを更に含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、液体またはガスを前記スラリータンク(3)内に噴霧することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記モニタリングが、前記スラリータンク(3)のスラリーレベルを測定すること、または前記スラリータンク(3)の重量を測定することを含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記モニタリングが、前記スラリータンク(3)から前記クロマトグラフィーカラム(9)へと前記スラリーを移送するために使用される移送チューブ(7a)の空気含有量を測定することを含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記クロマトグラフィーカラム(9)のアダプタを上昇させることにより、前記スラリータンク(3)から前記クロマトグラフィーカラム(9)へと前記スラリーを移送することを更に含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
クロマトグラフィー媒体スラリーを含むスラリータンク(3)、前記スラリータンク(3)のスラリー含有量をモニタするように構成されているモニタリング手段(5、5’)、前記スラリータンク(3)からクロマトグラフィーカラム(9)へと前記スラリーを移送するように構成されている移送チューブ(7a)および移送制御手段(7b)、ならびに前記モニタリング手段(5、5’)および前記移送制御手段(7b)に接続された制御システム(11)を備え、前記制御システム(11)が、前記スラリータンク(3)内の前記スラリーの含有量に応じて、前記クロマトグラフィーカラム(9)への前記スラリーの移送を制御するように配置され
前記制御システム(11)が、前記スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、移送速度を低下させるように更に配置されている、スラリータンクシステム(1)。
【請求項10】
前記制御システム(11)に接続されており、残留スラリーが前記スラリータンク(3)の底部に落ちてしまうように、前記スラリータンク(3)の内壁をすすぐように構成されている、すすぎ制御手段(13)を更に含む、請求項に記載のスラリータンクシステム(1)。
【請求項11】
前記制御システム(11)が、前記スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、前記スラリータンク(3)の前記すすぎの開始を制御するように配置されている、請求項10に記載のスラリータンクシステム(1)。
【請求項12】
前記すすぎ制御手段(13)が、液体またはガスを前記スラリータンク(3)の内壁に噴霧するように構成されている噴霧ボール(15)に接続されている、請求項10または11に記載のスラリータンクシステム(1)。
【請求項13】
前記制御システム(11)が、前記スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、前記スラリーの移送を中止するように更に配置されている、請求項乃至12のいずれか1項に記載のスラリータンクシステム(1)。
【請求項14】
前記モニタリング手段(5、5’)が、前記スラリータンク(3)のスラリーレベルまたは前記スラリータンク(3)の重量を測定するように配置されている、請求項乃至13のいずれか1項に記載のスラリータンクシステム(1)。
【請求項15】
前記モニタリング手段(5、5’)が、前記移送チューブ(7a)の空気含有量を測定するように配置されている、請求項乃至14のいずれか1項に記載のスラリータンクシステム(1)。
【請求項16】
前記制御システム(11)が、前記クロマトグラフィーカラム(9)のアダプタを上昇させることにより、前記スラリータンク(3)から前記クロマトグラフィーカラム(9)への前記スラリーの移送を制御するように更に配置されている、請求項乃至15のいずれか1項に記載のスラリータンクシステム(1)。
【請求項17】
スラリータンク(3)のスラリー含有量をモニタするように構成されているモニタリング手段(5、5’)に接続されている制御システム(11)であって、前記制御システム(11)が、前記スラリータンク(3)とクロマトグラフィーカラム(9)との間の移送チューブ(7a)での移送を制御するように構成されている移送制御手段(7b)に更に接続されており、前記制御システム(11)が、前記スラリータンク(3)内のスラリーの含有量に応じて、前記クロマトグラフィーカラム(9)への前記スラリーの移送を制御するように配置されており、
前記制御システム(11)が、前記スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、移送速度を低下させるように更に配置されている、制御システム(11)。
【請求項18】
前記制御システム(11)が、前記スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、前記スラリーの移送を中止するように配置されている、請求項17に記載の制御システム(11)。
【請求項19】
前記制御システム(11)が、残留スラリーが前記スラリータンク(3)の底部に落ちてしまうように前記スラリータンク(3)の内壁をすすぐように構成されているすすぎ制御手段(13)に更に接続されており、前記制御システム(11)が、前記スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、前記スラリータンク(3)の前記すすぎの開始を制御するように配置されている、請求項17乃至18のいずれか1項に記載の制御システム(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー媒体スラリーを、スラリータンクからクロマトグラフィーカラムへと、スラリータンクシステムへと、および上記スラリータンクシステムの制御システムへと移送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーで使用されるカラムは、典型的には、多孔性クロマトグラフィー媒体の充填床が収納されている管状体を備えており、そこをキャリア液体が流れ、キャリア液体と多孔性媒体の固相との間で物質が回収されることにより分離が生じる。典型的には、媒体は、カラムにポンプで注入されるか、流し込まれるか、または吸引されるスラリーとして知られている分散粒子の懸濁液を圧密化することにより形成される充填床としてカラムに収納される。スラリーの圧密化による充填床の圧密化は、重力の影響下でスラリーを沈降させて沈殿床を形成させた場合に占めるであろう容積よりも小さい容積にスラリーが充填されるように、スラリーを圧縮することにより達成される。その後のクロマトグラフィー分離の効率は、1)充填床の流体入口および出口での液体分配および回収システム、2)充填床における媒体粒子の空間的配向性(充填幾何構造としても知られている)、および3)充填床の圧縮に強く依存する。充填床の圧縮が低すぎると、その床で実施されるクロマトグラフィー分離は「テーリング」を起こしてしまい、このような圧縮不十分の床は、一般的に不安定である。充填床の圧縮が高すぎると、その床で実施されるクロマトグラフィー分離は「リーディング」を起こしてしまい、そのような過剰圧縮の床は、処理量および結合量に影響を及ぼし、一般的に作動圧が非常に高くなる場合がある。圧縮が最適であれば、使用中に形成される分離ピークは、リーディングまたはテーリングが非常に少なく、実質的に対称性である。カラムに必要とされる最適な圧縮度は、各カラムサイズ(幅または直径)、床の高さ、および媒体の種類毎に実験的に決定される。
【0003】
いかなる分離プロセスでも始める前には、カラムに導入する必要がある粒子のスラリーから開始して、床を準備する必要がある。床形成のプロセスは、「充填手順」と呼ばれ、適切な床の充填は、充填床の性能に影響を及ぼす重要な要因である。充填手順の主要目標の1つは、最適な圧縮量で、つまり最適圧縮率で圧縮された床を提供することである。最適圧縮時の床の高さは、ユーザが設定することが多く、目標圧縮床高と呼ばれる。
【0004】
大規模カラムは、媒体粒子の濃度が特定されている所定の容積のスラリーをカラムに吸引または注入することにより準備することができる。所定の容積のスラリーをカラムに送達したら、それを圧密または圧縮する必要がある。これは、例えば、可動アダプタを、カラムの縦軸に沿って下方へカラムの底部に向けて、通常は等速で移動させ、液体および粒子を両方ともカラムの底部に向けて押し込むことにより達成することができる。この手順中、過剰な液体は、カラム出口で放出されるが、媒体粒子は、小さすぎて媒体粒子が通過できない細孔を有するフィルター材、いわゆる「床支持体」により保持される。充填床を最適な圧縮度で圧縮したら、充填プロセスは完了である。別の充填法もある。例えば、アダプタを下方に移動させる代わりに、流動を加えてスラリーの粒子をカラムの出口に向けて移動させてもよい。更なる代替法は、噴霧ノズルを使用して、充填床が完成するまでスラリーを噴霧して入れることである。充填プロセスは、圧縮床が、良好でロバストなクロマトグラフィー性能を可能にした場合に成功したとみなされる。しかしながら、このようなクロマトグラフィー媒体の最適圧縮床を、手動手段でクロマトグラフィーカラムに充填するのは、最終充填床の品質が作業者の技能に大きく依存するという事実のため、実際には達成が容易ではない。カラムを満たし、その後充填している間、作業者は、バルブ位置、ポンプ速度、アダプタの移動速度等の充填パラメータを全て手動で選択および調節する。作業者は、カラムに満たすべきスラリーの量を決定するために、スラリー濃度を測定する必要がある。スラリー濃度の測定が正確でないと(スラリー濃度を正確に測定するのは難しいため、測定は正確でないことが多い)、カラムに満たされるスラリーの容積が最適ではなく、圧密床は、予想(スラリーの測定濃度から算出したもの)とは異なる床高に沈降することになり、そのため目標床高では目標充填率を達成することができない。更に、作業者は、アダプタが床を圧縮し始める地点も判断しなければならない。この地点を使用して、必要な圧縮量を得るためにアダプタをあとどれくらい更に移動させる必要があるかを計算する。通常、充填パラメータは、どの選択を誤っても、カラムの性能低下につながる。更に、床の圧縮が実際に開始される時点を目で判断することは、透明チューブを備えるカラムでも困難な場合があり、ステンレス鋼等の不透明チューブを備えるカラムでは不可能であり、その時点は誤差が大きくなるため、最適圧縮床を得ることは不可能である。
【0005】
ユーザが誤った判断をすると、媒体およびカラムを破損するリスクもある。
【0006】
クロマトグラフィー媒体スラリーは、スラリータンクからクロマトグラフィーカラムへと供給される。クロマトグラフィー媒体は高価であり、タンク内にあるスラリーを全てカラムに移送することができれば有利であろう。しかしながら、カラムへの空気の導入は、回避する必要がある。カラム内に空気があると、クロマトグラフィー性能に悪影響を及ぼす場合がある。
【0007】
したがって、スラリータンクからクロマトグラフィーカラムへのスラリー移送を向上させるシステムおよび方法の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2009157853号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、クロマトグラフィーカラムを充填する際に、スラリータンク内のスラリーをできるだけ余らせずに使用すると共に、カラムへの空気導入のリスクを最小限に抑えるスラリー移送法およびスラリー移送システムを提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、スラリーが良好に使用され、カラムへの空気導入のリスクがないことを保証する、スラリーをクロマトグラフィーカラムへと移送するための完全自動化法を提供することである。
【0011】
これは、請求項1に記載の方法、請求項10に記載のスラリータンクシステム、および請求項19に記載の制御システムで達成される。
【0012】
これにより、スラリーの移送は、タンク内のスラリーの含有量に応じて行われる。したがって、カラムへの空気導入のリスクを伴わずに、そのスラリーをより多く使用することが可能になる。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、カラムへのスラリーの移送、およびスラリータンクの含有量のモニタリングは、制御システムにより自動的に実施される。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、カラムへのスラリーの移送の制御は、スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、スラリーの移送を中止することを含む。これにより、空気がカラムに導入されることになるリスクは非常に小さくなる。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、カラムへのスラリーの移送の制御は、スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、移送速度を低下させることを含む。これにより、カラムへの空気導入のリスクが、より一層低減され、スラリー移送を制御する可能性が向上する。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、スラリータンクの内壁は、スラリー含有量が所定の閾値レベル未満になったら、液体またはガスをスラリータンク内に噴霧することによりすすがれる。これにより、スラリータンクの内壁にある残留媒体も全て使用することができ、媒体は無駄にされない。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、モニタリングは、スラリータンクのスラリーレベルを測定すること、またはスラリータンクの重量を測定することを含む。
【0018】
別の実施形態では、モニタリングは、スラリータンクからクロマトグラフィーカラムへとスラリーを移送するために使用される移送チューブ内の空気含有量を測定することを含む。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、スラリータンクからクロマトグラフィーカラムへのスラリーの移送は、クロマトグラフィーカラムのアダプタを上昇させることにより実施される。
【0020】
本発明のこうした利点および他の利点は、添付の図面と共に以下の説明を読むとより明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の1つの実施形態による、クロマトグラフィーカラムに接続されたスラリータンクシステムの模式図である。
図2】本発明の1つの実施形態によるスラリー移送法を記述するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の現在の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。好ましい実施形態の説明は例示であり、本発明の範囲を制限することは意図されていない。
【0023】
図1は、本発明の1つの実施形態による、クロマトグラフィーカラム9に接続されたスラリータンクシステム1の模式図である。スラリータンクシステム1は、クロマトグラフィー媒体スラリーを含むスラリータンク3を備える。スラリータンクシステム1は、モニタリング手段5、5’を更に備える。この模式図では、モニタリング手段5、5’の2つの異なる考えられ得る位置が示されている。モニタリング手段5は、例えば、重量測定手段5であってもよい。重量測定手段は、典型的には、スラリータンクの重量を測定することができるように、スラリータンク3に接続した状態でスラリータンク3の下に位置決めされる。別の実施形態では、モニタリング手段5は、空気感知器5であってもよい。この空気感知器は、スラリーと共に空気が進入し始める時点、つまりスラリータンク3がほとんど空になった時点を測定するために、スラリータンクの出口に適切に位置決めされる。別の実施形態では、モニタリング手段5’は、スラリータンク3のスラリーレベルを検出するための、例えば超音波測定または分光測定を使用するレベル検出器5’であってもよい。
【0024】
スラリータンクシステム1は、スラリータンク3からクロマトグラフィーカラム9へとスラリーを移送するように構成されている移送チューブ7aを更に備える。移送チューブ7aは、スラリータンク3の出口およびクロマトグラフィーカラム9のスラリー入口に接続される。移送チューブ7aは、移送制御手段7bにより制御される。これは、カラムのアダプタを制御するモータであってもよい。この例では、スラリーは、アダプタがカラム内部で上昇する際に、底部バルブからカラム内へと吸引される。別の実施形態では、移送制御手段7bは、移送チューブ7aに沿って設けられたポンプ、または移送チューブ7aからクロマトグラフィーカラム9内へとスラリーを押し出すためにスラリータンク内に圧力を付与するための手段であってもよい。
【0025】
更に、スラリータンクシステムは、制御システム11を備える。この制御システム11は、モニタリング手段5、5’および移送制御手段7bの両方に接続されている。制御システム11は、スラリータンク3内のスラリーの含有量に応じて、カラムへのスラリーの移送を制御するように配置されている。制御システム11は、モニタリング手段5、5’から、スラリータンク3内のスラリーの含有量に関する情報を受け取る。制御システム11は、例えば、スラリーの含有量の様々な閾値レベル、およびそうした様々な閾値レベル間で移送を行うためのプログラムを用いてプログラムされている。例えば、移送速度は、1つの実施形態では、1つの特定の閾値レベルに到達した後で低下させてもよい。または、移送速度は、スラリー含有量の所定の閾値レベルから開始し、所定の数式に従って、例えば線形に低下させていってもよい。つまり、移送速度は、スラリー含有量が閾値レベル未満に減少したと測定された時点で、数式に従って低下していくことになる。更なる閾値レベルを提供することもできる。1つの閾値レベルは、移送の完全な中止を引き起こすべきである。
【0026】
本発明の1つの実施形態では、スラリータンクシステム1は、制御システム11に接続されており、スラリータンク3のすすぎを制御するように構成されているすすぎ制御手段13を更に備える。すすぎは、主に、スラリーを全て効率的に使用しカラムへと移送することができるように、スラリータンク3の内壁をすすぐことが目的である。1つの実施形態では、すすぎ制御手段13は、スラリータンク3内部に設けられている噴霧ボール15に接続されている。噴霧ボールは、壁面に残留するスラリーがスラリータンク3の底部に落ちてしまうように、液体またはガスをスラリータンク3の内壁に噴霧することができる。液体は、例えば、水であってもよく、または充填緩衝液であってもよい。ガスは、例えば、空気であってもよく、またはヘリウムであってもよい。スラリータンクをすすぐための別の代替法は、タンク全体を振とうすることであろう。つまり、すすぎ制御手段13は、スラリータンクの内壁に残留するスラリーがタンクの底部に落ちてしまうようにスラリータンクを振動させるように構成されている、ある種の振動手段に接続されていてもよい。適切には、このスラリータンク3のすすぎは、モニタリング手段5、5’により、スラリータンク3内のスラリーの含有量が所定の閾値レベル未満であると検出された際になされる。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、あらゆるスラリー希釈を考慮することができるように、追加する液体を測定することになる。あるいは、液体を追加する際には、スラリー濃度を絶えず測定する。閾値濃度に到達したら、クロマトグラフィーカラムへのスラリーの移送を終了する。濃度測定法は、ラマン分光計であってもよく、または超音波であってもよい。
【0028】
図2は、本発明の1つの実施形態によるスラリー移送法を記述するフローチャートである。この方法のステップを、以下において順に記載する。
【0029】
S1:スラリータンク3内の含有量をモニタする。1つの実施形態では、モニタリングは、タンクの重量を測定することにより実施される。別の代替モニタリングは、例えば、超音波または抵抗によりタンクのレベルを測定することである。
【0030】
S3:スラリータンク内のスラリーの含有量に応じて、カラムへのスラリーの移送を制御する。制御は、1つの実施形態では、所定の閾値レベルを使用し、それにより特定の閾値レベルに到達したら、つまりスラリータンク内のスラリー含有量が特定の閾値レベル未満になったら、移送速度を低下または停止または変化させることにより、もたらすことができる。
【0031】
S5:随意に、スラリータンク内のスラリーの含有量が特定の閾値レベル未満であると測定されたら、スラリータンク3の内壁をすすぐ。すすぎは、例えば、壁面の残留スラリーがタンクの底部に落ちてしまうように、液体またはガスを内壁に噴霧することより達成してもよく、またはその代わりにスラリータンクを振動させてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 スラリータンクシステム
3 スラリータンク
5 重量測定手段、空気感知器、モニタリング手段
5’ レベル検出器、モニタリング手段
7a 移送チューブ
7b 移送制御手段
9 クロマトグラフィーカラム
11 制御システム
13 すすぎ制御手段
15 噴霧ボール
図1
図2