特許第6461949号(P6461949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6461949-フルオロポリマー繊維 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461949
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】フルオロポリマー繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/48 20060101AFI20190121BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20190121BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20190121BHJP
【FI】
   D01F6/48 C
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
   D04H1/728
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-526572(P2016-526572)
(86)(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公表番号】特表2016-532014(P2016-532014A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2014065080
(87)【国際公開番号】WO2015007706
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】13176447.4
(32)【優先日】2013年7月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】ベサーナ, ジャンバッティスタ
(72)【発明者】
【氏名】バッシ, マッティア
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】グアランディ, キアーラ
(72)【発明者】
【氏名】フォカルテ, マリア レティツィア
(72)【発明者】
【氏名】ズッケーリ, アンドレーア
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/121078(WO,A1)
【文献】 特開2002−249966(JP,A)
【文献】 特許第4803984(JP,B2)
【文献】 特開2008−243419(JP,A)
【文献】 特開2010−044935(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/033975(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/072216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00 − 6/96
D01F 9/00 − 9/04
D04H 1/00 − 18/04
H01M 2/14 − 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一または複数のフルオロポリマー繊維を製造する方法であって、以下のステップ:
(i)
− 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(FOH)]、および
− 少なくとも1種の有機溶媒[溶媒(S)]を含む液体媒体
を含む液体組成物[組成物(C1)]を得るステップと;
(ii)ステップ(i)で得られた組成物(C1)を、以下の式(I):
4−mAY (I)
(式中、Xは、炭化水素基であり、一または複数の官能基を任意選択により含み、mは、1〜4の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、かつYは、アルコキシ基、アシロキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基である)
の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]と接触させ、それにより、液体組成物[組成物(C2)]を得るステップと;
(iii)ステップ(ii)で得られた組成物(C2)を少なくとも部分的加水分解および/または重縮合に供し、それにより、少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物を含む液体組成物[組成物(C3)]を得るステップと;
(iv)ステップ(iii)で得られた組成物(C3)を電界紡糸により処理し、それにより、一または複数のフルオロポリマー繊維を得るステップと;
(v)ステップ(iv)で得られたフルオロポリマー繊維を乾燥させるステップと;
(vi)任意選択により、ステップ(v)で得られたフルオロポリマー繊維を50℃〜300℃の間に含まれる温度での圧縮にかけるステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(i)において、ポリマー(FOH)が、少なくとも1種のフッ素化モノマーおよび少なくも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1種のコモノマー[コモノマー(MA)]に由来する繰り返し単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コモノマー(MA)が、式(II−A):
(式中、R’、R’およびR’は、水素原子であり、かつR’OHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC〜C炭化水素部分である)
に従う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(i)において、ポリマー(FOH)が、
− 上で定義されたとおりの少なくとも1種のコモノマー(MA)、テトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)から選択される少なくとも1種のパー(ハロ)フルオロモノマー、ならびにエチレン、プロピレンおよびイソブチレンから選択される少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマー(FOH−1)であって、一または複数の追加のコモノマーを、典型的には、TFEおよび/またはCTFEならびに前記水素化モノマーの全量に基づいて、0.01モル%〜30モル%の量で任意選択により含有する、ポリマー(FOH−1)と;
− 上で定義されたとおりの少なくとも1種のコモノマー(MA)、フッ化ビニリデン(VDF)、および任意選択により、VDFとは異なる一または複数のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマー(FOH−2)と
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)において、組成物(C2)が、ポリマー(FOH)のヒドロキシル基の少なくとも一部を、化合物(M)の加水分解性基Yの少なくとも一部と反応させることによって得られ得、前記組成物(C2)は、
− 式−AYm−14−m(式中、Xは、炭化水素基であり、一または複数の官能基を任意選択により含み、mは、1〜4の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、かつYは、アルコキシ基、アシロキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基である)のペンダント基を含む少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(Fg)]、
− 少なくとも1種の有機溶媒[溶媒(S)]を含む液体媒体、ならびに
− 任意選択により、以下の式(I):
4−mAY (I)
(式中、Xは、炭化水素基であり、一または複数の官能基を任意選択により含み、mは、1〜4の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、かつYは、アルコキシ基、アシロキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基である)
の残量の少なくとも1種の化合物(M)
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(iv)において得られるフルオロポリマー繊維が、集められ、それにより、フルオロポリマー繊維束またはフルオロポリマーマットを与える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られ得るフルオロポリマー繊維。
【請求項8】
フルオロポリマー繊維であって、
− ポリマー(Fg)により得られ得る鎖からなるフルオロポリマードメイン、および化合物(M)により得られ得る残基からなる無機ドメインを含む、好ましくはそれらからなる少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機−無機複合物、
− 任意選択により、以下の式(I):
4−mAY (I)
(式中、Xは、炭化水素基であり、一または複数の官能基を任意選択により含み、mは、1〜4の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、かつYは、アルコキシ基、アシロキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基である)
の少なくとも1種の化合物(M)、ならびに
− 任意選択により、式(I)の少なくとも1種の化合物(M)の少なくとも部分的加水分解および重縮合により得られ得る少なくとも1種の誘導体
を含む、好ましくはそれらからなるフルオロポリマー繊維。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られ得るフルオロポリマーマット。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によってステップ(iv)〜(vi)のいずれか1つで得られるとおりのフルオロポリマー繊維および/またはフルオロポリマー繊維束を含む、好ましくはそれらからなる、請求項9に記載のフルオロポリマーマット。
【請求項11】
フルオロポリマーマットが、不織布である、請求項9または10に記載のフルオロポリマーマット。
【請求項12】
フルオロポリマーマットの全体積に基づいて、10%〜90%、好ましくは30%〜80%、より好ましくは50%〜70%の範囲の空隙率を有する、請求項9〜11のいずれか一項に記載のフルオロポリマーマット。
【請求項13】
多層集合体であって、
− 請求項9〜12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのフルオロポリマーマット、および
− 少なくとも1つの基材層
を含み、前記フルオロポリマーマットの少なくとも1つの面が、前記基材層の少なくとも1つの面に接着している、多層集合体。
【請求項14】
電気化学的デバイスのためのセパレータとしての、請求項9〜12のいずれか一項に記載のフルオロポリマーマットまたは請求項13に記載の多層アセンブリの使用。
【請求項15】
濾過膜としての、請求項9〜12のいずれか一項に記載のフルオロポリマーマットまたは請求項13に記載の多層集合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年7月15日に出願された欧州特許出願公開第131764474号に対する優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フルオロポリマー繊維、その製造方法および様々な用途における前記フルオロポリマー繊維の使用に関する。特に、本発明は、フルオロポリマーマット、その製造方法および様々な用途における前記フルオロポリマーマットの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
高エネルギー密度を有するリチウムイオン電池などの電気化学的デバイスを含めた、エネルギー貯蔵システムは、大型電気化学セルに対する高まる需要を満たすために安全要求事項にますます適合しなければならない。
【0004】
電気化学セルの安全性を確保するための最も決定的に重要な構成要素の1つはセパレータであり、その主たる機能は、電解質イオンがそれを通って流れることを可能にしながら、電気化学セルの正極と負極との間の物理的および電気的接触を防止することである。
【0005】
セパレータは、電解質および電極材料に対して化学的および電気化学的に安定でなければならず、電池組立作業中に生じる高い張力に耐えるために機械的に強くなければならない。また、その構造および特性は、エネルギー密度、出力密度、サイクル寿命および安全性を含めた、電池性能にかなりの影響を及ぼす。
【0006】
高いエネルギーおよび出力密度のために、セパレータは、非常に薄くかつ高度に多孔質である一方で、なお機械的に強いままであることが必要とされる。
【0007】
電池安全性のために、セパレータの寸法収縮または溶融を引き起こし、これにより電極の物理的接触がもたらされる熱暴走、および結果として生じる内部短絡が回避され得るように、セパレータは、過熱が起こる場合に電池を遮断し得るべきである。
【0008】
また、セパレータの厚さが低いことが、高いエネルギーおよび出力密度に必要とされる。しかしながら、これは、セパレータの機械的強度およびそれにより与えられる電池の安全性に悪影響を及ぼす。
【0009】
無機複合膜が、二次電気、特にリチウムイオン電池を含めた電気化学的デバイスのためのセパレータとして広く使用されてきた。
【0010】
無機粒子がポリマー結合剤マトリックスの全体にわたって分布している無機複合膜を製作するために、種々の無機充填剤材料が長く使用されてきた。
【0011】
無機複合膜は、電解質による優れた湿潤性、良好な熱安定性および高温での寸法収縮ゼロを与えるが、それらは、通常セル巻き取りおよび組立における取扱いに耐えるのに機械的に十分に強くない。
【0012】
多くの場合、無機複合膜は、非常に高い含有率の無機充填剤材料を含有する。一部の場合、そのように得られた無機複合膜は、不十分な機械的強度を示す。
【0013】
1つの特定の課題は、電気化学的デバイスにおいてセパレータとして好適に使用される許容できる厚さを有する多層複合膜を提供することであった。
【0014】
多層複合膜は、複数回コーティングステップを使用して得ることができる。しかしながら、複数回ステップは、処理コストを不利に増加させる。
【0015】
例えば、米国特許出願公開第2013/0023620号(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)2013年1月24日には、リチウムイオン電池用のセパレータの製造のためのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物の使用が開示されており、前記フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物は、ヒドロキシル基を有する官能性フルオロポリマーを、Si、TiまたはZrの加水分解性化合物と反応させることによって得られ得る。
【0016】
また、国際公開第2013/072216号(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)2013年5月23日には、ヒドロキシル基を有する官能性フルオロポリマーを、Si、TiまたはZrの加水分解性化合物と反応させることによって得られ得るフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物をベースとするポリマー電解質セパレータが開示されている。
【0017】
さらに、米国特許出願公開第2012/0003524号(KOREA INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY)2012年1月5日には、金属酸化物とポリマー樹脂溶液との混合物から超微細繊維複合セパレータを電界紡糸することによる製造方法が開示されている。
【0018】
同様に、MONTICELLI,O.,et al.Preparation,characterization and properties of nanofibers based on poly(vinylidene fluoride)and polyhedral oligomeric silsesquioxane.Polymers for Advanced Technologies.12/08/2011,vol.23,no.9,p.1252−1257には、ポリ(フッ化ビニリデン)およびエポキシシクロヘキシルイソブチルPOSSなどの多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)をベースとする電界紡糸複合ナノ繊維が開示されている。
【0019】
したがって、電気化学的デバイスにおいて、その動作中に卓越した熱機械的特性を維持しながら、セパレータとして好適に使用される、高い空隙率、したがって、高いイオン伝導性を有する膜を製造する代替方法に対する当技術分野における必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0020】
今や、フルオロポリマードメインおよび無機ドメインを含む、フルオロポリマーハイブリッド有機無機複合物を使用することによって、種々の用途で好適に使用されるための高い空隙率および良好な熱機械的特性を有するフルオロポリマーマットを有利にもたらす繊維が本発明の方法によって容易に形成され得ることが見出された。
【0021】
特に、本発明によるフルオロポリマーマットは、有利には、卓越した熱機械的耐性を示し、約300℃の温度までその固有の多孔性を保持しながら、高い含有率の無機ドメインを含有し、したがって、電気化学的デバイスにおけるセパレータとしての使用に特に適することが見出された。
【0022】
また、本発明によるフルオロポリマーマットは、有利には可撓性であり、低い圧縮率値を有し、したがって、特に取り扱うことが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ステップ(ii)の反応を示す。
図2】本発明のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の例において、本発明は、一または複数のフルオロポリマー繊維を製造する方法であって、以下のステップ:
(i)
− 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(FOH)]、および
− 少なくとも1種の有機溶媒[溶媒(S)]を含む液体媒体
を含む液体組成物[組成物(C1)]を得るステップと;
(ii)ステップ(i)で得られた組成物(C1)を、以下の式(I):
4−mAY (I)
(式中、Xは、炭化水素基であり、一または複数の官能基を任意選択により含み、mは、1〜4の整数であり、AはSi、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、かつYは、アルコキシ基、アシロキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基である)
の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]と接触させ、それにより、液体組成物[組成物(C2)]を得るステップと;
(iii)ステップ(ii)で得られた組成物(C2)を少なくとも部分的加水分解および/または重縮合に供し、それにより、少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物を含む液体組成物[組成物(C3)]を得るステップと;
(iv)ステップ(iii)で得られた組成物(C3)を電界紡糸により処理し、それにより、一または複数のフルオロポリマー繊維を得るステップと;
(v)ステップ(iv)で得られたフルオロポリマー繊維を乾燥させるステップと;
(vi)任意選択により、ステップ(v)で得られたフルオロポリマー繊維を50℃〜300℃の間に含まれる温度での圧縮にかけるステップと
を含む方法に関する。
【0025】
本発明の方法のステップ(ii)において、液体組成物[組成物(C2)]は、有利には、特に図1に図示されるとおりに、ポリマー(FOH)のヒドロキシル基の少なくとも一部を、化合物(M)の加水分解性基Yの少なくとも一部と反応させることによって得られ得、前記組成物(C2)は、
− 式−AYm−14−m(式中、Xは、炭化水素基であり、一または複数の官能基を任意選択により含み、mは、1〜4の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、かつYは、アルコキシ基、アシロキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基である)のペンダント基を含む少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(Fg)]、
− 少なくとも1種の溶媒(S)を含む液体媒体、ならびに
− 任意選択により、上で定義されたとおりの式(I)の残量の少なくとも1種の化合物(M)
を含む。
【0026】
本発明の方法のステップ(iii)において、液体組成物[組成物(C3)]は、有利には、化合物(M)の加水分解性基Yおよび/またはポリマー(Fg)の式−AYm−14−mのペンダント基(式中、X、A、Yおよびmは、上で定義されたのと同じ意味を有する)を反応させることによって得られ得、前記組成物(C3)は、
− ポリマー(Fg)により得られ得る鎖からなるフルオロポリマードメイン、および化合物(M)により得られ得る残基からなる無機ドメインを含む、好ましくはそれらからなる少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物、
− 少なくとも1種の溶媒(S)を含む液体媒体、ならびに
− 任意選択により、上で定義されたとおりの式(I)の少なくとも1種の化合物(M)および/または少なくとも部分的加水分解および/または重縮合により得られ得る、その誘導体
を含む。
【0027】
特に図2に図示されるとおり、本発明のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物は、ポリマー(Fg)により得られ得る鎖からなるフルオロポリマードメイン[ドメイン(2)]および化合物(M)により得られ得る残基からなる無機ドメイン[ドメイン(1)]を含む、好ましくはそれらからなることが理解される。
【0028】
加水分解および/または重縮合反応は、ポリマーのヒドロキシル基(FOH)の少なくとも一部を化合物(M)の加水分解性基Yの少なくとも一部と反応させながら、本発明の方法のステップ(ii)の間に開始されてもよい一方で、前記反応は、本発明の方法のステップ(iii)〜(vi)のいずれか1つの間に継続されてもよいことも理解される。
【0029】
第2の例において、本発明は、本発明の方法により得られ得る一または複数のフルオロポリマー繊維に関する。
【0030】
本発明の目的のために、用語「フルオロポリマー繊維」によって、有限長さを有する単一の連続フィラメントが意味される。
【0031】
本発明のフルオロポリマー繊維は、典型的には本発明の方法のステップ(v)または(vi)のいずれかで得られたとおりの少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物を含む、好ましくはそれらからなる。
【0032】
本発明のフルオロポリマー繊維は、典型的には
− ポリマー(Fg)により得られ得る鎖からなるフルオロポリマードメイン、および化合物(M)により得られ得る残基からなる無機ドメインを含む、好ましくはそれらからなる少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機−無機複合物、
− 任意選択により、上で定義されたとおりの式(I)の少なくとも1種の化合物(M)、ならびに
− 任意選択により、上で定義されたとおりの式(I)の少なくとも1種化合物(M)の少なくとも部分的加水分解および/または重縮合により得られ得る少なくとも1種の誘導体
を含む、好ましくはそれらからなる。
【0033】
上で定義されたとおりの式(I)の化合物(M)の少なくとも部分的加水分解および/または重縮合によって、前記化合物(M)の誘導体は、典型的には以下の式(I−a)〜(I−c):
(式中、X、YおよびAは、上で定義されたのと同じ意味を有し、式(I−a)において、m’は、0または1〜3の整数であり、かつn’は、1〜4の整数であり、但し、(m’+n’)の和は、1〜4の整数であり、式(I−b)において、m”は、0、1または2であり、かつn”は、1〜3の整数であり、但し、(m”+n”)の和は、1〜3の整数であり、および式(I−c)において、m”は、0、1または2である)
のいずれかを有して得られることが理解される。
【0034】
本発明のフルオロポリマー繊維は、通常50nm〜500nm、好ましくは100nm〜300nmの範囲の平均直径を有する。
【0035】
本発明の方法のある実施形態によれば、ステップ(iv)において得られるフルオロポリマー繊維は、集められ、それにより、フルオロポリマー繊維束またはフルオロポリマーマットを与える。
【0036】
本発明の目的のために、用語「フルオロポリマーマット」によって、無作為に分布したフルオロポリマー繊維および/または多数の細孔を形成するように一緒に保持されたフルオロポリマー繊維束からなる、有限厚さを有する布地が意味される。
【0037】
したがって、第3の例において、本発明は、上で定義されたとおりの、フルオロポリマー繊維および/またはフルオロポリマー繊維束を含む、好ましくはそれらからなるフルオロポリマーマットに関する。
【0038】
本発明のフルオロポリマーマットは、典型的には不織布である。
【0039】
「不織布」によって、機械的、熱的または化学的手段によって繊維を一緒に無作為にインターロックまたは結合することにより得られ得る平面テキスタイル構造を意味することが意図される。
【0040】
本発明のフルオロポリマーマットは、有利には本発明の方法によって得られ得る。
【0041】
本発明のフルオロポリマーマットは、通常2μm〜300μm、好ましくは5μm〜100μm、より好ましくは10μm〜50μmの範囲の厚さを有する。
【0042】
本発明のフルオロポリマーマットは、フルオロポリマーマットの全体積に基づいて、通常10%〜90%、好ましくは30%〜80%、より好ましくは50%〜70%の範囲の空隙率を有する。
【0043】
第4の例において、本発明は、様々な用途における本発明のフルオロポリマー繊維または本発明のフルオロポリマーマットのいずれかの使用に関する。
【0044】
特に、第5の例において、本発明は、多層集合体を製造するための本発明の方法のステップ(v)またはステップ(vi)のいずれかで得られるフルオロポリマーマットの使用に関する。
【0045】
したがって、本発明はまた、多層集合体であって、
− 本発明の方法のステップ(v)またはステップ(vi)のいずれかで得られるとおりの少なくとも1つのフルオロポリマーマット、および
− 少なくとも1つの基材層
を含み、前記フルオロポリマーマットの少なくとも1つの面は、前記基材層の少なくとも1つの面に接着している、多層集合体に関する。
【0046】
前記多層集合体の製造における使用に適した基材の非限定的な例には、多孔質基材、好ましくはポリオレフィンおよびフルオロポリマーなどのポリマーから作られている多孔質基材が含まれる。
【0047】
基材層は、典型的には2μm〜40μmの間に含まれる厚さを有する。
【0048】
本発明のフルオロポリマーマットまたは本発明の多層集合体は、有利には電気化学的デバイスのためのセパレータとして使用されてもよい。
【0049】
好適な電気化学的デバイスの非限定的な例には、特に、二次電池、とりわけ、アルカリもしくはアルカリ土類二次電池、例えばリチウムイオン電池、およびキャパシタ、とりわけ、リチウムイオンキャパシタが含まれる。
【0050】
本発明によるセパレータは、特に二次電池における使用に適する。
【0051】
第6の例において、本発明は、したがって、本発明によるセパレータを含む二次電池に関する。
【0052】
本発明の二次電池は、典型的には、以下の構成要素:
− 本発明によるセパレータ;
− 負極;
− 電荷輸送媒体および少なくとも1種の金属塩を含む電解質、ならびに
− 正極
を含む。
【0053】
本発明によるセパレータは、一般に二次電池の正極と負極との間に位置している。
【0054】
本発明のフルオロポリマーマットまたは本発明の多層集合体はまた、有利には濾過膜として使用されてもよい。
【0055】
本発明の方法を使用して製造され得る濾過膜の非限定的な例には、特に、精密濾過および限外濾過膜、とりわけ水濾過での使用のための多孔質中空繊維膜などの、様々な分離プロセスにおいて化学処理工業で使用され得る膜が含まれる。
【0056】
そのように製造された濾過膜は、例えば、血液透析、薬物の制御放出、腎臓、肺および膵臓などの人工組織および臓器用に、生物医学用途でも使用され得る。
【0057】
本発明の目的のために、用語「フルオロポリマー」によって、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーが意味される。
【0058】
本発明のポリマー(FOH)は、少なくとも1種のフッ素化モノマーおよび少なくも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1種のコモノマー[コモノマー(MA)]に由来する繰り返し単位を含む。
【0059】
用語「少なくとも1種のフッ素化モノマー」は、ポリマー(FOH)が1種または2種以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のために、複数形および単数形の両方で、すなわち、それらが、上で定義されたとおりの1種または2種以上のフッ素化モノマーの両方ともを意味すると理解される。
【0060】
用語「少なくとも1種のコモノマー(MA)」は、ポリマー(FOH)が、上で定義されたとおりの1種または2種以上のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含んでいてよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「コモノマー(MA)」は、本発明の目的のために、複数形および単数形の両方で、すなわち、それらが、上で定義されたとおりの1種または2種以上のコモノマー(MA)の両方ともを意味すると理解される。
【0061】
ポリマー(FOH)のコモノマー(MA)は、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むフッ素化モノマーおよび少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む水素化モノマーからなる群から選択されてもよい。
【0062】
用語「フッ素化モノマー」によって、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することが本明細書によって意図される。
【0063】
用語「水素化モノマー」によって、少なくとも1個の水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーを意味することが本明細書によって意図される。
【0064】
ポリマー(FOH)は、好ましくは少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の上で定義されたとおりの少なくとも1種のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0065】
ポリマー(FOH)は、好ましくは多くても20モル%、より好ましくは多くても15モル%、さらにより好ましくは多くても10モル%、最も好ましくは多くても3モル%の上で定義されたとおりの少なくとも1種のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0066】
ポリマー(FOH)中のコモノマー(MA)繰り返し単位の平均モルパーセントの決定は、任意の好適な方法によって行うことができる。例えば、アクリル酸含有量の決定によく適している酸塩基滴定法、側鎖に脂肪族水素を含むコモノマー(MA)の定量に適切なNMR法、ポリマー(FOH)製造中の全供給コモノマー(MA)および未反応残存コモノマー(MA)に基づく重量平衡法を特に挙げることができる。
【0067】
コモノマー(MA)は、典型的には少なくとも1個のヒドロキシル基を含む水素化モノマーからなる群から選択される。
【0068】
コモノマー(MA)は、好ましくは式(II)の(メタ)アクリルモノマーまたは式(III)のビニルエーテルモノマー:

(式中、R、RおよびRのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して水素原子またはC〜C炭化水素基であり、かつROHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC〜C炭化水素部分である)
からなる群から選択される。
【0069】
コモノマー(MA)は、より好ましくは上で定義されたとおりの式(II)に従う。
【0070】
コモノマー(MA)は、さらにより好ましくは式(II−A):
(式中、R’、R’およびR’は、水素原子であり、かつR’OHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC〜C炭化水素部分である)
に従う。
【0071】
コモノマー(MA)の非限定的な例には、特に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0072】
コモノマー(MA)は、最も好ましくは、以下:
− 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
− 式:
のいずれかの2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)
− およびそれらの混合物
のうちから選択される。
【0073】
ポリマー(FOH)は、非晶質であっても半結晶性であってもよい。
【0074】
用語「非晶質」は、ASTM D3418−08に従って測定して、5J/g未満、好ましくは3J/g未満、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(FOH)を意味することが本明細書によって意図される。
【0075】
用語「半結晶性」は、ASTM D3418−08に従って測定して、10〜90J/g、好ましくは30〜60J/g、より好ましくは35〜55J/gの融解熱を有するポリマー(FOH)を意味することが本明細書によって意図される。
【0076】
ポリマー(FOH)は、好ましくは半結晶性である。
【0077】
好適なフッ素化モノマーの非限定的な例には、特に、以下:
− テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロペンなどの、C〜Cパーフルオロオレフィン;
− フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレンおよびトリフルオロエチレンなどの、C〜C水素化フルオロオレフィン;
− 式CH=CH−Rf0(式中、Rf0は、C〜Cパーフルオロアルキルである)に従うパーフルオロアルキルエチレン;
− クロロトリフルオロエチレンのような、クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cフルオロオレフィン;
− 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C〜Cのフルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば、CF、C、Cである)に従う(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
− CF=CFOX(パー)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル(式中、Xは、C〜C12アルキル、またはC〜C12オキシアルキル、またはパーフルオロ−2−プロポキシ−プロピルのような、一または複数のエーテル基を有するC〜C12(パー)フルオロオキシアルキルである);
− 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C〜Cフルオロ−またはパーフルオロアルキル基、例えばCF、C、Cまたは−C−O−CFのような、一または複数のエーテル基を有するC〜C(パー)フルオロオキシアルキル基である)に従う(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
− 式CF=CFOY(式中、Yは、C〜C12アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル、またはC〜C12オキシアルキル、または一または複数のエーテル基およびカルボン酸もしくはスルホン酸基をその酸、酸ハロゲン化物もしくは塩形態で含むYを有するC〜C12(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う官能性(パー)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル;
− フルオロジオキソール、特にパーフルオロジオキソールが含まれる。
【0078】
好適な水素化モノマーの非限定的な例には、特に、エチレン、プロピレンなどの非フッ素化モノマー、酢酸ビニルなどのビニルモノマー、(メタ)アクリルモノマー、ならびにスチレンおよびp−メチルスチレンなどのスチレンモノマーが含まれる。
【0079】
ポリマー(FOH)は、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を、好ましくは25モル%超、好ましくは30モル%超、より好ましくは40モル%超含む。
【0080】
ポリマー(FOH)は、コモノマー(MA)とは異なる少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を、好ましくは1モル%超、好ましくは5モル%超、より好ましくは10モル%超含む。
【0081】
フッ素化モノマーは、一または複数の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含み得る。フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それはパー(ハロ)フルオロモノマーと称される。フッ素化モノマーが少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0082】
フッ素化モノマーが、水素含有フッ素化モノマー、例えばフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどである場合、ポリマー(FOH)は、上で定義されたとおりの少なくとも1種のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位に加えて、前記水素含有フッ素化モノマーのみに由来する繰り返し単位を含むポリマーであり得るか、またはそれは、上で定義されたとおりの少なくとも1種のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位、前記水素含有フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位および少なくとも1種の他のモノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーであり得る。
【0083】
フッ素化モノマーが、パー(ハロ)フルオロモノマー、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどである場合、ポリマー(FOH)は、上で定義されたとおりの少なくとも1種のコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位、前記パー(ハロ)フルオロモノマーに由来する繰り返し単位および前記コモノマー(MA)とは異なる少なくとも1種の他の水素化モノマー、例えば、エチレン、プロピレン、ビニルエーテル、アクリルモノマーなどに由来する繰り返し単位を含むポリマーである。
【0084】
好ましいポリマー(FOH)は、フッ素化モノマーがフッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択されるものである。
【0085】
ポリマー(FOH)は、より好ましくは
− 上で定義されたとおりの少なくとも1種のコモノマー(MA)、テトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)から選択される少なくとも1種のパー(ハロ)フルオロモノマー、ならびにエチレン、プロピレンおよびイソブチレンから選択される少なくとも1種の水素含有コモノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマー(FOH−1)であって、任意選択により一または複数の追加のコモノマーを、典型的には、TFEおよび/またはCTFEならびに前記水素化モノマーの全量に基づいて、0.01モル%〜30モル%の量で含有する、ポリマー(FOH−1);ならびに
− 上で定義されたとおりの少なくとも1種のコモノマー(MA)、フッ化ビニリデン(VDF)、および任意選択により、VDFとは異なる一または複数のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマー(FOH−2)
からなる群から選択される。
【0086】
上で定義されたとおりのポリマー(FOH−1)では、パー(ハロ)フルオロモノマー/水素化コモノマーのモル比は、典型的には、30:70〜70:30である。上で定義されたとおりのポリマー(FOH−1)では、水素化モノマーは、好ましくはエチレンを、任意選択により他の水素化コモノマーと組み合わせて含む。
【0087】
パー(ハロ)フルオロモノマーが主としてクロロトリフルオロエチレン(CTFE)であるポリマー(FOH−1)は、ECTFEコポリマーと本明細書において以下で特定され;パー(ハロ)フルオロモノマーが主としてテトラフルオロエチレン(TFE)であるポリマー(FOH−1)は、ETFEコポリマーと本明細書において以下で特定される。
【0088】
ECTFEおよびETFEコポリマー(FOH−1)は、好ましくは
(a)35モル%〜65モル%、好ましくは45モル%〜55モル%、より好ましくは48モル%〜52モル%のエチレン(E);
(b)65モル%〜35モル%、好ましくは55モル%〜45モル%、より好ましくは52モル%〜48モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびテトラフルオロエチレン(TFE)の少なくとも1種、またはそれらの混合物;
(c)0.01モル%〜20モル%、好ましくは0.05モル%〜18モル%、より好ましくは0.1モル%〜10モル%の上で定義されたとおりの少なくとも1種の式(II)の(メタ)アクリルモノマー
を含む。
【0089】
ポリマー(FOH−1)のうちで、ECTFEポリマーが好ましい。
【0090】
ポリマー(FOH−2)は、好ましくは
(a’)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF);
(b’)任意選択により、0.1モル%〜15モル%、好ましくは0.1モル%〜12モル%、より好ましくは0.1モル%〜10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)およびそれらの混合物から選択されるフッ素化モノマー;ならびに
(c’)0.01モル%〜20モル%、好ましくは0.05モル%〜18モル%、より好ましくは0.1モル%〜10モル%の上で定義されたとおりの少なくとも1種の式(II)の(メタ)アクリルモノマー
を含む。
【0091】
ポリマー(FOH)は、さらにより好ましくは上で定義されたとおりのポリマー(FOH−2)から選択される。
【0092】
式X4−mAY(I)の金属化合物は、基XおよびYのいずれかの上に、好ましくは少なくとも1個の基X上に一または複数の官能基を含み得る。
【0093】
上で定義されたとおりの式(I)の金属化合物が少なくとも1個の官能基を含む場合、それは官能性金属化合物と称され;基XおよびYのいずれも官能基を含まない場合、上で定義されたとおりの式(I)の金属化合物は非官能性金属化合物と称される。
【0094】
一または複数の官能性金属化合物および一または複数の非官能性金属化合物の混合物が、本発明の方法および本発明のハイブリッド複合物の製造において使用され得る。さもなければ、官能性金属化合物または非官能性金属化合物は、別個に使用され得る。
【0095】
官能性金属化合物は、有利には、本発明によるフルオロポリマーハイブリッド有機−無機複合物の化学および特性をさらに改変するために官能基を有するハイブリッド複合物を与え得る。
【0096】
化合物(M)は、好ましくは式(I−A):
R’4−m’E(OR’’)m’ (I−A)
(式中、m’は、1〜4、ある特定の実施形態によれば1〜3の整数であり、かつEは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、R’およびR’’は、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、一または複数の官能基を任意選択により含むC1〜18炭化水素基から独立して選択される)
に従う。
【0097】
官能基の非限定的な例としては、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩またハロゲン化物の形態の)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩またはハロゲン化物の形態の)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩またはハロゲン化物の形態の)、チオール基、アミン基、第四級アンモニウム基、エチレン性不飽和基(ビニル基など)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基を挙げることができる。
【0098】
親水性またはイオン伝導性に関して官能性挙動を示し得るフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物を製造することを目的として、式(I)の金属化合物の官能基は、好ましくはカルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩またはハロゲン化物の形態の)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩またはハロゲン化物の形態の)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩またはハロゲン化物の形態の)、アミン基および第四級アンモニウム基のうちから選択され;最も好ましいのは、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩またはハロゲン化物の形態の)およびスルホン酸基(その酸、エステル、塩またはハロゲン化物の形態の)である。
【0099】
化合物(M)が官能性金属化合物である場合、それは、より好ましくは式(I−B):
4−m*(ORm* (I−B)
(式中、mは、2〜3の整数であり、Eは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Rは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、一または複数の官能基を含むC1〜12炭化水素基であり;Rは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、C〜C直鎖もしくは分岐のアルキルラジカルであり、好ましくは、Rは、メチルもしくはエチルである)
に従う。
【0100】
官能性金属化合物の例は、特に、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のアミノエチルアミンプロピルメチルジメトキシシラン、式:
のアミノエチルアミンプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロイソブチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(n−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオールおよびそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、式HOSO−CHCHCH−Si(OH)の3−(トリヒドロキシシリル)−1−プロパン−スルホン酸、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレン−ジアミン三酢酸およびそのナトリウム塩、式:
の3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、式HC−C(O)NH−CHCHCH−Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(A)(OR)(式中、Aはアミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、かつxおよびyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0101】
非官能性金属化合物の例は、特に、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−イソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラ−n−ペンチルチタネート、テトラ−n−ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ−n−ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ−n−プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ−n−ブチルジルコネート、テトラ−sec−ブチルジルコネート、テトラ−tert−ブチルジルコネート、テトラ−n−ペンチルジルコネート、テトラ−tert−ペンチルジルコネート、テトラ−tert−ヘキシルジルコネート、テトラ−n−ヘプチルジルコネート、テトラ−n−オクチルジルコネート、テトラ−n−ステアリルジルコネートである。
【0102】
本発明の方法のステップ(ii)において、組成物(C2)は、典型的には上で定義されたとおりの少なくとも1種の式(I)の化合物(M)を組成物(C1)に添加することにより製造される。
【0103】
組成物(C2)は、典型的には上で定義されたとおりの式(I)の少なくとも1種の化合物(M)を、ポリマー(FOH)および化合物(M)の全重量に基づいて、0.1重量%〜95重量%の間、好ましくは1重量%〜75重量%の間、より好ましくは5重量%〜55重量%の間に含まれる量で含む。
【0104】
本発明の方法のステップ(ii)において、ポリマー(FOH)および上で定義されたとおりの式(I)の化合物(M)は、典型的には20℃〜100℃の間に含まれる温度で反応させる。20℃〜90℃の間、好ましくは20℃〜50℃の温度が好ましい。
【0105】
当業者は、溶媒(S)の沸点に応じて温度を適当に選択する。
【0106】
好適な溶媒(S)の非限定的な例には、特に、以下:
− 脂肪族、脂環式または芳香族エーテルオキシド、より詳細には、ジエチルオキシド、ジプロピルオキシド、ジイソプロピルオキシド、ジブチルオキシド、メチルテルチオブチルエーテル(methyltertiobutylether)、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルベンジルオキシド;ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、
− グリコールエーテル、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、
− グリコールエーテルエステル、例えば、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
− アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、
− ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、および
− 直鎖または環状エステル、例えば、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレート、g−ブチロラクトン;
− 直鎖または環状アミド、例えば、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドン、ならびに
− ジメチルスルホキシド
が含まれる。
【0107】
溶媒(S)は、典型的にはケトン、直鎖または環状アミド、ジメチルスルホキシド、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0108】
非常に良好な結果が、アセトンおよびジメチルスルホキシドを含む、好ましくはそれらかなる液体媒体を使用して得られた。
【0109】
意外なことに、本発明の方法の組成物(C1)中の一または複数の溶媒(S)の量を増加させることによって、本発明のステップ(iv)で得られるフルオロポリマー繊維は、有利には集合され、それにより、フルオロポリマー繊維および/またはフルオロポリマー繊維束が有利には互いに結合しているフルオロポリマーマットを与える。
【0110】
組成物(C1)は、少なくとも1種の無機充填剤[充填剤(F)]をさらに含んでもよい。
【0111】
無機充填剤[充填剤(F)]の選択は、特に限定されない。
【0112】
充填剤(F)は、典型的には、通常0.001μm〜100μm、好ましくは0.005μm〜50μm、より好ましくは0.005μm〜5μmの平均粒径を有する粒子の形態下で与えられる。
【0113】
組成物(C1)中の充填剤(F)の量は、ポリマー(FOH)および充填剤(F)の全重量に基づいて、好ましくは0.1重量%〜50重量%、より好ましくは0.5重量%〜30重量%である。
【0114】
本発明の方法で使用されるのに適した充填剤(F)のうちで、混合オキシドを含めた無機酸化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硫化物などを挙げることができる。
【0115】
本発明のこの実施形態に関連して特に良好な結果を与えた化合物のクラスは、特に、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムであり、すべてはナトリウム、カリウム、鉄またはリチウムなどの追加の金属を任意選択により含有する。
【0116】
すべてがナトリウム、カリウム、鉄またはリチウムなどの追加の金属を任意選択により含有する、これらのケイ酸塩、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムは、恐らくは天然起源の、特にスメクタイト粘土、例えば、特にモンモリロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイトであり得る。代替として、すべてがナトリウム、カリウム、鉄またはリチウムなどの追加の金属を任意選択により含有する、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムは、特にフルオロヘクトライト、ヘクトライト、ラポナイトのような合成粘土のうちから選択され得る。
【0117】
充填剤(F)はまた、イオン伝導性無機充填剤材料から選択されてもよい。
【0118】
用語「イオン伝導性」によって、電解質イオンがそれを通って流れることを可能にする材料を意味することが本明細書によって意図される。
【0119】
好適なイオン伝導性無機充填剤材料の非限定的な例には、特に、リチウムセラミック、例えばLiTaO−SrTiO、LiTi(PO−LiOおよびLiSiO−LiPOが含まれる。
【0120】
また、それらの表面上に、定義されたとおりの式(I)の化合物(M)に対して一または複数の反応性基を有する充填剤(F)が、本発明の方法で使用され得る。
【0121】
表面反応性基のうちで、特にヒドロキシル基が挙げられる。
【0122】
この理論によって拘束されないが、本出願人は、化合物(M)の加水分解性基Yの少なくとも一部と充填剤(F)の前記表面反応性基の少なくとも一部との反応は、化合物(M)の加水分解性基Yの少なくとも一部とポリマー(FOH)のヒドロキシル基の少なくとも一部との反応と同時に起こり得、その結果、その後の加水分解および/または重縮合において、ポリマー(FOH)と充填剤(F)との間の化学結合は、化合物(M)により得られ得る無機ドメインを介して恐らく達成されると考える。
【0123】
組成物(C2)は、:
− 前記組成物の全体積に基づいて、式−AYm−14−m(式中、m、Y、AおよびXは、上で定義されたのと同じ意味を有する)のペンダント基を含む1重量%〜50重量%、好ましくは5重量%〜20重量%の少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(Fg)]、
− 少なくとも1種の有機溶媒[溶媒(S)]を含む液体媒体、
− 任意選択により、残量の少なくとも1種の化合物(M)、および
− 任意選択により、少なくとも1種の無機充填剤[充填剤(F)]
を好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる。
【0124】
本発明の方法のステップ(iii)において、少なくとも部分的加水分解および/または重縮合反応後、化合物(M)に由来する無機ドメイン残基は、ポリマー(FOH)および前記化合物(M)に由来する無機ドメイン残基の全重量に基づいて、典型的には0.1重量%〜95重量%、好ましくは1重量%〜75重量%、より好ましくは5重量%〜55重量%の量で組成物(C3)中に存在する。
【0125】
特にAがSiである化合物(M)の場合、少なくとも部分的加水分解および/または重縮合により得られ得る前記無機ドメイン残基は、−O−Si−O−無機ドメインによって表されることが理解される。
【0126】
これが当業者によって理解されるとおりに、加水分解/重縮合反応は、通常、化合物(M)の性質に応じて、特に水またはアルコールであり得る低分子量副生成物を生成する。
【0127】
本発明の方法のステップ(iii)において、加水分解および/または重縮合は、通常室温でまたは100℃よりも低い温度で加熱後に行われる。温度は、溶媒(S)の沸点を考慮して選択される。20℃〜90℃、好ましくは20℃〜50℃の間の温度が好ましい。
【0128】
本発明の方法のステップ(iii)において、組成物(C3)は、少なくとも1種の酸触媒をさらに含んでもよい。
【0129】
酸触媒の選択は特には限定されない。酸触媒は、典型的には有機酸および無機酸からなる群から選択される。
【0130】
本発明の方法のステップ(iii)において、酸触媒は、典型的には0.5重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜5重量%の間に含まれる量で組成物(C2)に添加される。
【0131】
酸触媒は、好ましくは有機酸からなる群から選択される。
【0132】
非常に良好な結果が、HClによって得られた。
【0133】
本発明の方法のステップ(iv)において、組成物(C3)は、典型的には一または複数のフルオロポリマー繊維を延伸することにより、電界紡糸によって処理される。
【0134】
本発明の方法のステップ(iv)において、組成物(C3)は、典型的にはシリンジチップとコレクタとの間に電圧をかけることにより、電界紡糸によって処理される。
【0135】
本発明の方法のステップ(iv)において、組成物(C3)は、典型的には15℃〜50℃の間に含まれる温度で電界紡糸によって処理される。
【0136】
本発明の方法のステップ(iv)において、組成物(C3)は、典型的には50%未満の相対湿度で電界紡糸によって処理される。
【0137】
組成物(C3)は、好ましくは5kV〜50kV、好ましくは10kV〜30kVの範囲の電圧で電界紡糸によって処理される。
【0138】
組成物(C3)は、好ましくは5cm〜50cm、好ましくは10cm〜30cmの範囲の、シリンジチップとコレクタとの間の距離で電界紡糸によって処理される。
【0139】
組成物(C3)は、好ましくは0.001ml/分〜10ml/分、好ましくは0.005ml/分〜1ml/分の範囲の流量で電界紡糸によって加工される。
【0140】
本発明の方法のステップ(v)において、ステップ(iv)で得られたフルオロポリマー繊維は、典型的には25℃〜200℃の間に含まれる温度で乾燥させる。
【0141】
乾燥は、調整された雰囲気下で、例えば、不活性ガス下で、典型的には特に湿気を除いて(0.001v/v%未満の水蒸気含量)行うことができるか、または真空下で行うことができる。
【0142】
乾燥温度は、本発明の方法のステップ(iv)で得られたフルオロポリマー繊維からの一または複数の溶媒(S)を蒸発させることにより除去をもたらすように選択される。
【0143】
本発明の方法のステップ(vi)において、もしあれば、ステップ(v)で得られたフルオロポリマー繊維は、有利には、好ましくはカレンダー加工によって、圧縮にかけられる。
【0144】
カレンダー加工は、本発明の方法のステップ(v)で得られたフルオロポリマー繊維を、2本のロール間で50℃〜300℃の間に含まれる温度で加圧することによって行うことができる。
【0145】
本発明の方法のステップ(v)およびステップ(vi)のいずれか1つにおいて、化合物(M)の性質に応じて、特に水またはアルコールであり得る、加水分解および/または重縮合反応により生じた低分子量副生成物ならびに一または複数の溶媒(S)は、本発明の方法のステップ(iv)で得られたフルオロポリマー繊維から少なくとも部分的に除去され、熱および副生成物除去の合わせた作用によって、さらなる加水分解および/または重縮合を恐らくはさらに促進することが理解される。
【0146】
本発明のステップ(vi)において、ステップ(v)で得られたフルオロポリマー繊維を50℃〜300℃の間に含まれる温度で圧縮にかけることによって、それにより、自立性フルオロポリマーマットが得られ、これは有利には、卓越した熱機械的特性を示す一方で、その多孔質構造を保持することが見出された。
【0147】
本出願人は、これが本発明の範囲を限定することなく、本発明の方法のステップ(vi)で得られたフルオロポリマー繊維は、有利には集合され、それにより、上で定義されたとおりのフルオロポリマー繊維および/またはフルオロポリマー繊維束が有利には互いに結合しているフルオロポリマーマットを与えると考える。
【0148】
本発明の方法のステップ(vi)で得られたフルオロポリマーマットは、有利には10μm〜50μmの範囲の厚さを有する。
【0149】
本発明の方法のステップ(vi)で得られたフルオロポリマーマットは、有利にはフルオロポリマーマットの全体積に基づいて、50%〜70%の範囲の空隙率を有する。
【0150】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0151】
本発明は、これから以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0152】
原材料
ポリマー(FOH−A):9.3g/10分のメルトフローインデックス(ASTM D1238、5Kg、190°C)および166℃の融点を有するVDF−HEAコポリマー(HEA:0.8モル%)。
【0153】
ポリマー(FOH−B):15g/10分のメルトフローインデックス(ASTM D1238、2.16Kg、190°C)および154℃の融点を有するVDF−HFP−HEAターポリマー(HFP:2.3モル%;HEA:1モル%)。
【0154】
6.0g/10分のメルトフローインデックス(ASTM D1238、2.16Kg、230°C)および172℃の融点を有するSOLEF(登録商標)6008 PVDFホモポリマー。
【0155】
電界紡糸装置および一般手順
電界紡糸は、高電圧出力供給源(Spellman、SL 50 P 10/CE/230)、シリンジポンプ(KD Scientific 200シリーズ)、ガラスシリンジ、電源電極と接続されたステンレス鋼平滑末端注射針(内径=0.84mm)、および静電接地プレートアルミニウムコレクタ(10×10cm)から構成される自家装置を使用することによって行った。ポリマー溶液を、捕集プレート上に垂直に置いた注射針に、PTFEチューブを介して分注した。電界紡糸を、25〜30%の範囲の相対湿度およびほぼ20℃の温度で行った。特定されない場合、電界紡糸実験は、常に溶液調製直後に行った(溶液は20℃で維持した)。
【0156】
SiO含量の決定
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物中のSiOの量は、走査型電子顕微鏡(SEM)から得られた顕微鏡写真上のケイ素(Si)およびフッ素(F)のエネルギー分散型分光法(EDS)分析により測定した。SiO含量は、以下の等式(1):
SiO[%]=([SiO]/([SiO]+[F]))×100 (1)
[式中、等式(1)からの[SiO]および[F]は、それぞれ、以下の等式(2)および(3):
[SiO]=((SiEDS×60)/28) (2)
[F]=((FEDS×64)/38) (3)
(式中、
− SiEDSおよびFEDSは、EDSにより得られたSiおよびFの重量%であり、
− 60は、SiOの分子量であり、
− 28は、Siの原子量であり、
− 64は、CH=CFの分子量であり、かつ
− 38は、2個のF元素の原子量である)
を使用して計算する]
を使用することにより決定した。
【0157】
イオン伝導率の決定
膜を2つのステンレス鋼電極間に置き、容器中に密封した。膜の抵抗を測定し、イオン伝導率(σ)を、以下の等式:
イオン伝導率(σ)=d/(R×S)
(式中、dは、フィルムの厚さ[cm]であり、Rは、バルク抵抗[Ω×cm]であり、かつSは、ステンレス鋼電極の面積[cm]である)
を使用して計算した。
【0158】
繊維の平均直径の測定
繊維形態は、15kVの加速電圧でPhilips 515走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。SEM分析前に、試料を金でスパッターコーティングした。繊維の直径は、10000倍率でSEM画像中約100本の繊維での測定により得たデータを平均することにより評価した。
【0159】
マットの厚さの測定
電界紡糸で得られたマットの厚さは、直径12mmのプローブヘッド908Hを備えたMahrからのデジタルマイクロメータで決定した。0.1Nの力をプローブヘッドにかけ、マット上の5つの位置での測定値を平均することによって厚さを得た。プローブヘッドに0.3Nおよび0.8Nの力をかけることにより手順を繰り返した。次いで、それぞれのかけた力について得た値の直線回帰の0の力での切片としてマットの厚さを計算した。
【0160】
マットの圧縮率の測定
マットの圧縮率は、力の値に対する厚さから得た直線回帰の勾配によって決定した。このように規定された圧縮率(%/N)は、プローブヘッドに1Nをかけることによって得たマットの厚さの減少%を表す。圧縮率値が高ければ高いほど、より軟らかくなり、したがって、それにより得られたマットの取扱いはより困難になる。
【0161】
マットの空隙率の測定
マットの空隙率は、以下の等式:
空隙率[%]=100×[1−w/(δ×a×b×t)]
(式中、wは、重量[g]であり、aおよびb[cm]は、試験片の辺であり、tは、マットの厚さ[cm]であり、かつδ[g/ml]は、複合物の密度である)
を使用することにより膜の正方形試験片を秤量することによって測定した。以下の実施例において、δは、1.78g/mlであった。
【0162】
マットの寸法安定性の測定
2つの1×1cm正方形試験片をマットから切断し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中に1分間浸漬し、次いで、オーブン中で24時間乾燥させた。マットの収縮を、DMF中の処理の前後のこれら2つの四角形試験片の寸法の平均変化として測定した。
【0163】
実施例1 − フルオロポリマーマットの製造
磁気PTFE撹拌棒が入っているガラス製バイアル中に、
− 組成物の全容積に基づいて、10重量%のポリマー(FOH−A)、および
− アセトンおよびジメチルスルホキシドの容積で70:30の混合物
を含むフルオロポリマー組成物を供給した。それにより得られた組成物を300rpmで室温にて40分間撹拌した。次いで、この撹拌溶液にテトラエトキシシラン(TEOS)を滴下した。組成物中のポリマー(FOH−A)/TEOS比を重量で0.38に維持した。完全なTEOS加水分解/重縮合を仮定して計算した、−O−Si−O−無機ドメインの含量は、混合物の全固形分含量に関して43重量%であった。撹拌を室温でさらに10分間維持した。TEOSの加水分解/重縮合を促進するために、3mgの37w/v%HCl溶液をバイアルに添加した。この溶液を300rpmにて室温で一晩、電界紡糸直前に、300rpmにて40℃で10分間撹拌した。次いで、それにより得られたフルオロポリマー組成物を、以上に詳述した手順に従って、印加電圧19kV、流量0.01m/分およびシリンジチップとコレクタとの間の距離15cmで、24時間以内に電界紡糸により処理することによって、マットを製造した。次いで、それにより得られたマットをオーブン中150℃で3時間乾燥させた。繊維の平均直径は、210±40nmであった。−O−Si−O−無機ドメインの含量は、SEM/EDS分析により測定して、28重量%であった。マットの厚さは、53±5μmであった。マットの圧縮率は、41%/Nであった。マットの空隙率は、85%であった。マットのイオン伝導性は、1.9×10−3S/cmであった。23℃でのマットの機械的特性を以下の表1に示す。
【0164】
【0165】
機械的特性は、25.4mmのグリップ距離、21.5mmのL0および1〜50mm/分の試験速度で試験片タイプVを用いてASTM D638標準手順に従って23℃で測定した。試験を1mm/分の速度で開始して、弾性率を決定し、次いで、速度を50mm/分に移動して、表1に列挙した他の特性を決定した。
【0166】
実施例2 − フルオロポリマーマットの製造
実施例1で得られたフルオロポリマーマットを、プレス中に1.5トンの圧力下200℃で30分間置いた。熱処理後、マットの厚さは、22±2μmであった。マットの圧縮率は、17%/Nであった。マットの空隙率は、64%に減少したが、膜は有利にはその多孔質構造を維持した。マットのイオン伝導性は、1.02×10−4S/cmであった。
【0167】
実施例3 − フルオロポリマーマットの製造
磁気PTFE撹拌棒が入っているガラス製バイアル中に、フルオロポリマー組成物を供給し、前記組成物は、
− 組成物の全容積に基づいて、13重量%のポリマー(FOH−B)、および
− アセトンおよびジメチルスルホキシドの容積による80:20の混合物を含むフルオロポリマー組成物
を含んだ。それにより得られた組成物を300rpmにて室温で40分間撹拌した。次いで、この撹拌溶液にテトラエトキシシラン(TEOS)を滴下した。組成物中のポリマー(FOH−B)/TEOS比を重量により0.67に維持した。完全なTEOS加水分解/重縮合を仮定して計算した、−O−Si−O−無機ドメインの含量は、混合物の全固形分含量に関して30重量%であった。撹拌を室温でさらに10分間維持した。TEOSの加水分解/重縮合を促進するために、HClの0.1M溶液を2:1のHCl:TEOSモル比でバイアルに添加した。この溶液を室温で10分間撹拌した。次いで、それにより得られたフルオロポリマー組成物を、20kVの印加電圧、0.01ml/分の流量およびシリンジチップとコレクタとの間の20cmの距離で、以上で詳述した手順に従って、48時間以内に電界紡糸により処理することによって、マットを製造した。次いで、それにより得られたマットをオーブン中150℃で3時間乾燥させた。繊維の平均直径は、280±80nmであった。−O−Si−O−無機ドメインの含量は、SEM/EDS分析により測定して、30重量%であった。マットの厚さは、約20μmであった。マットの収縮率は、5%未満であった。
【0168】
実施例4 − フルオロポリマーマットの製造
実施例3で得られたフルオロポリマー組成物を多孔質ポリエチレンフィルム上に、40%の空隙率および電界紡糸装置の静電接地プレートアルミニウムコレクタに付着した約25μmの厚さを有して、以上に詳述した手順に従って、電界紡糸により処理することによって、マットを製造した。プレートは、電界紡糸処理の間、牛耕式軌道によって移動させた。このようにして得られたマットを、オーブン中80℃で3時間乾燥させ、次いで、プレス中に1トンの圧力下80℃で2時間置いた。多孔質ポリエチレンフィルムに対するフルオロポリマーの剥離強度は、マットの機械的強度よりも高かった。マットのイオン伝導性は、1.8×10−4S/cmであった。2時間後、マットの収縮率は、コーティングされていない多孔質ポリエチレンフィルムの寸法と比較して5%未満であった。電解質溶液中のマットの湿潤性は、コーティングされていない多孔質ポリエチレンフィルムの湿潤性よりも4.2倍高かった。湿潤性は、ウィッキング試験を使用することにより測定した:50×5mmのマット試験片を電解質溶液と接触させて垂直に置き、40分後、電解質溶液によるマットの湿潤レベルを記録した。基準に対して40分後のマットの湿潤レベルが高ければ高いほど、電解質溶液によるマットの湿潤性はより高かった。
【0169】
比較例1 − フルオロポリマーマットの製造
TEOSを添加することなくポリマー(FOH−A)を使用すること以外は、実施例1において詳述したのと同じ手順に従った。繊維の平均直径は、220±40nmであった。マットの厚さは、96±8μmであった。次いで、それにより得られたマットを実施例2におけるとおりに試験した。多孔質構造のない連続フィルムが得られた。
【0170】
比較例2 − フルオロポリマーマットの製造
SOLEF(登録商標)6008 PVDFホモポリマーを使用すること以外は、実施例1において詳述したのと同じ手順に従った。繊維の平均直径は、200±50nmであった。マットの厚さは、35±4μmであった。マットの圧縮率は、59%/Nであった。−O−Si−O−無機ドメインの含量は、SEM/EDS分析により測定して、10重量%であった。マットのイオン伝導性は、2.5×10−3S/cmであった。
【0171】
比較例3 − フルオロポリマーマットの製造
TEOSを添加することなくSOLEF(登録商標)6008 PVDFホモポリマーを使用すること以外は、実施例1において詳述したのと同じ手順に従った。繊維の平均直径は、210±40nmであった。次いで、それにより得られたマットを実施例2におけるとおりに試験した。多孔質構造のない連続フィルムが得られた。
【0172】
実施例5 − リチウムイオン電池におけるセパレータとしてのフルオロポリマーマットの使用
リチウム金属負極と、活物質としてLiFePO、結合剤としてSOLEF(登録商標)5130 PVDFおよびをSuper P(登録商標)Li伝導性カーボンブラックを含有する正極との間に実施例1によって調製した電界紡糸膜を置くことによって、コインセルを作製した。このコインセルに、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(1:1重量比)中LiPFの1M溶液からなる200μlのSelectilyte(登録商標)LP30電解質を充填した。種々の放電率でそのように得られたコインセルの放電能力値を、以下の表2に示す。
【0173】
【0174】
自立性フルオロポリマーマットは、有利にはポリマー(FOH)のヒドロキシル基の少なくとも一部を、化合物(M)の加水分解性基Yの少なくとも一部と反応させる、本発明による方法によって得られ、前記マットは、有利には、乾燥ステップおよび任意選択により、カレンダー加工ステップ後に、約300℃の温度まで卓越した熱機械的耐性を示す一方で、無機ドメインの高い含量を有することが見出された。
【0175】
自立性フルオロポリマーマットは、有利にはポリマー(FOH)のヒドロキシル基の少なくとも一部を、化合物(M)の加水分解性基Yの少なくとも一部と反応させる、本発明による方法によって得られ、前記マットは、有利にはより低い圧縮率値を示し、首尾よくは、乾燥および任意選択によりカレンダー加工ステップ後に、その繊維構造、したがって、その固有の空隙率を維持することも見出された。
図1
図2