【実施例】
【0027】
実施例1:ポリフルオレン誘導体
この実施例では、好ましい共役ポリマーの詳細を提供する。
【0028】
C
8乃至C
18の長さと、9位に2つのアルキル基とを有するポリフルオレンは、従来技術の方法(例えばDing 2002)から改造された鈴木・宮浦カップリング反応によって調製した。基本的な特性データと共に得られたポリマーは、スキーム1及び表1に記載される。表1において、T
d1%及びT
gは、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)曲線から測定された。
スキーム1 ポリフルオレンの構造:
【化1】
【0029】
表1 ポリフルオレンの特性データ
【表1】
【0030】
実施例2:ポリフルオレン誘導体による粗製SWCNTの濃縮
この実施例は、濃縮されたsc−SWCNT分散液を製造するために、共役ポリマーでsc−SWCNTとm−SWCNTとの混合物を抽出する詳細を提供する。
【0031】
典型的な濃縮は、レーザーアブレーションにより製造したSWCNT25mgを、20mgのポリフルオレンを有する50mLのトルエン内に分散することにより行われた。混合物を、40%のデューティ・サイクル及び50%の出力で動作された10mm先端部(tip)を備えたホーン超音波処理器(Branson Sonifier 250,最大電力200W)を使用して、30℃で30分間ホモジナイズした。その後、分散液を、相対遠心力(RCF)7600g(SS−34ローターにおいて8,000rpm)で30分間、遠心分離した。抽出されたSWCNTを収集するため、上澄みを、ポアサイズ0.2μmを有するTeflon(商標)膜を介して濾過した。遊離フルオレンを除去するため、収集されたSWCNTを、5mLトルエンで2回リンスし、それから、浴槽ソニケータを5乃至10分間使用して、5mLトルエン内に再分散した。多重抽出のため、沈殿物を再分散し、所望のSWCNT濃度及びポリマー:SWCNT比率を使用して、上記のプロセスを繰り返した。
【0032】
ポリマーの分子量、ポリマーの側鎖の長さ、ポリマー:SWCNT比率、及び多重抽出が行われるかどうかを包含する、多くのファクターが、濃縮プロセスに影響し得る。これらのファクターは評価され、且つ最適化された濃縮手順が発展した。
【0033】
分子量
異なる分子量を有する一連ポリフルオレンが、レーザーアブレーションにより製造された(レーザー)SWCNTを分散及び抽出するそれらの能力について試験された。8000Da未満の分子量を有するポリフルオレンは、レーザーSWCNTを分散する能力が低かった。この現象は、8以上の繰り返し単位を有するポリフルオレン系オリゴマーは小径SWCNTの良好な分散のために好ましいという観察と一致する。10,000Da超の分子量を有すると、sc−SWCNTを分散及び選択的に抽出する際に、明らかな違いはない。しかし、非常に高い分子量は、ポリマーでラップされたナノチューブの粘度を顕著に増加させるので、処理中の材料の取り扱いの実用的な制限につながる。従って、10,000乃至30,000Daの間の最適な数平均分子量(Mn)が野竿増しい。この分子量は、重合の供給内のジブロミドとビス(ボロン酸)モノマーの比率を単に調節することにより、容易に達成され得る。上記の表1は、SWCNTを濃縮するために使用されるポリマーの数平均分子量(M
n)及び多分散性指数(PDI)を示す。
【0034】
ポリマー側鎖の長さ
オクチル(PFO)、ヘキシル(PFH)、及び2−エチルヘキシル(PF2/6)を包含する短いアルキル鎖を有するフルオレンホモポリマーは、小直径を有するsc−SWCNT、例えばHiPco及びComoCatナノチューブを濃縮する高い可能性を示した。これらホモポリマーは、大直径SWCNTを効果的に分散させるのには有用ではない。ナノチューブの直径が約1.1nm以上であると、PFOの分散能力は低下する。従って、C
8からC18で変化する直鎖アルキル基を有する一連のフルオレンホモポリマーを、レーザーSWCNTを分散し、抽出するそれらの能力について試験した。PFO(C
8)、PFD(C
10)、PFDD(C
12)、PFTD(C
14)、及びPFOD(C
18)を調製し、トルエン中SWCNT濃度0.5mg/mL及びポリマー:SWCNT比率0.8におけるSWCNT抽出について試験した。試験は、PFOは、トルエン中の少量のナノチューブを抽出したこと示した。当該系例におけるその他の全ポリマーは、
図1において比較された濃縮サンプルの吸収スペクトルにおいて見られるように、sc−SWCNTを分散し、抽出するのにより効果的であることが証明された。
【0035】
図1は、PFD、PFDD、PFTD及びPFODにより濃縮されたナノチューブは、それぞれ収率(η)5.3%,6.8%,5.4%及び6.4%,及びピーク比率(φ
i)0.416,0.403,0.410及び0.404で、類似の吸収スペクトルを与えることを示す。収率と純度との間にトレードオフがある。sc純度を犠牲にしてでも(下記参照)、高いポリマー:SWCNT比を使用することにより、増大した収率が容易に得られる。
図1における吸収スペクトルは、完全に除去されたM
11ピークを有するsc−SWCNTの場合、非常に高いsc濃度を確認する。さらに、φ
i比は、粗製レーザーSWCNTサンプルの場合の0.086から、抽出SWCNTの場合の約0.41まで増大した。これは、抽出サンプル内の増大したsc−SWCNT純度の指標である。炭素数10以上のアルキル側鎖を有するフルオレンホモポリマーは、大直径SWCNTを分散させる際、より効果的であり、且つsc−ナノチューブをラッピングする際、高選択性を提供する。評価されたポリマーは、濃縮のために非常に類似した収率及び純度を与えたが、側鎖が長いほど、より大きい溶解性能力を与える。それにより、バンドルの形成を減らすことにより、ナノチューブ分散液の安定性が向上する。しかしながら、長鎖アルキル側鎖を有するナノチューブ分散液は、濃縮プロセスにおける濾過ステップを一層困難にする高粘性を有する。これらすべての効果を考慮して、C
12側鎖を有するPFDDが、さらに詳細な濃縮研究のために選択された。
【0036】
PFDD:SWCNT比率
一連のPFDD:SWCNT比0.25:1乃至8.0:1が、ナノチューブ濃縮について評価された。
図2は、比率0.5:1は、700nm周辺に最も深い谷を与えることを示し、この抽出試験において最善の結果を意味する。この濃縮サンプルのSWCNTピーク比φ
iは、0.403に達した。このピーク比率値は、sc−SWCNT含有量の99%以上を有すると思われる従来技術のサンプル場合のピーク比よりも高い。PFDD:SWCNT比率が増加すると、純度が次第に減少する。金属性ピークが徐々に646及び696nmに出現し、且つ700nm領域における吸収バックグラウンドが次第に強くなる。最低PFDD:SWCNT比率(0.25:1)における抽出は、最高純度を与えなかったことは興味深い。PFDD:SWCNT比0.5:1における値(0.403)よりも低い、僅か0.375のピーク比φ
iを有していた。この現象は、この抽出の低い収率(0.7%)に関連しているかもれしれない。このポリマー:SWCNT比率において、分散液からは、ごく少量の固体生成物が抽出された。これは、多くの非チューブ不純物、例えばフラーレン及び小さい炭素粒子不純物を含有するはずである。これらは、通常は粗製SWCNTサンプル内に存在し、トルエンで高い溶解性を有し、ポリマー抽出の際、容易に上澄内に入り込む。
【0037】
このシリーズのサンプルのsc−SWCNT純度はまた、ラマン研究によって調査された。785nmで励起されたスペクトルのRBMは、0.5:1のポリマー:SWCNT比率を有するサンプルは、135cm
−1及び175cm
−1の金属性領域においてほぼフラットなベースラインを有することを示した。高いsc純度を意味していた。ポリマー:SWCNT比率が0.5:1から8.0:1に変化したので、162cm
−1を中心とする広範囲の金属性バンドが徐々に現れ、且つピーク強度とφ
i値との良好な相関を示した。この結果は、吸収分光研究における観察を確認し、また、φ
iは、sc−SWCNTサンプルの純度の迅速な評価のための良い指標でないことをも証明した。
【0038】
一方、
図2に記載されているデータは、より高いポリマー:SWCNT比率と共に、収率が顕著に増加することを示している。比率が0.25:1から0.5:1に増加すると、収率は、0.7%から4.5%に急激に増加し、その後、比率がさらに8.0:1まで増加して増加すると、収率は20.4%に達した。従って、抽出中のポリマーの使用量の増加は、収率を促進する一方で、sc純度を犠牲にする。0.5:1乃至1.0:1のポリマー:SWCNT比率は、高純度及び単一抽出のための5乃至10%の妥当な収率を与える。
【0039】
多重抽出
上記のように、SWCNT濃度0.4mg/mL及びポリマー:SWCNT比率0.5:1乃至1.0:1における抽出は、高sc純度を与えた。但し、収率5乃至10%は、所望よりも低い。粗サンプルは、53%SWCNTを含有し、ナノチューブの約70%は半導体性であるいう事実を考慮するならば、単一の抽出サイクルは、原材料(source material)中に存在するsc−ナノチューブのほんの一部分をもたらすだけである。従って、合計収率を促進するための多重抽出プロセスが試みられた。
図3は、8回の連続抽出を行った結果の(但し、当該連続抽出は、先の抽出の残りに対して適用された)吸収スペクトルを表す。各抽出について算出された収率及びφ
i比はまた、
図3に記載されている。最初の3回の抽出は、SWCNT濃度1.0mg/mL及びポリマー:SWCNT比率0.8:1においてなされたこと、及び高属の5回の抽出は、SWCNT濃度0.33mg/mL及びポリマー:SWCNT比率0.4:1を使用して行われたことに留意すべきである。これは、抽出残渣における減少したsc−SWCNT含有量の影響を克服するために行われた。高選択性及び妥当な収率を保持するために、抽出残渣は、その後の抽出のために使用された。
【0040】
図3は、最初の3回の抽出の生成物は、完全に消失したM
11ピークと共に高sc純度を有していたことを示す。0.38乃至0.40のピーク比φ
iを示す。しかしながら、抽出数が増えると、646nm及び696nmにおける2つの金属性ピークが、次第に現れた。それと共に、ピーク比φ
iは、第1の抽出の場合の0.40から最後の抽出の場合の0.28に減じた。これは、sc−SWCNT純度の緩やかな減少を意味する。最初の3回の抽出の収率はわずか8.5%の組合せであって比較的低い。但し、4回目の抽出の収率は7.4%と非常に高くなる。これは、より大量の溶媒の使用(3倍)に起因すると思われる。最後の3回の抽出の場合の収率は、大幅に低下した。これは、ごく少量のアクセス可能なsc−ナノチューブが、プロセスのこのステージで残されたことを意味する。全8回の抽出の組合せ収率は、24.8%であり、粗製(crude)材料中に期待されるsc含有量よりも少ない。これは、原料内のしっかりと保持されたSWCNTのバンドルに起因する可能性がある。非常にタイトなバンドル内のSWCNTは、ポリマーの抽出にアクセスできなくなる。アグレッシブなホーン超音波処理は、第1の抽出プロセスのための粗製サンプル分散のためだけに使用した一方で、穏やかな浴槽超音波処理は、1ミクロンを超えるSWCNTの平均長さを維持するのを助けるために、後続の抽出において使用されたことに留意すべきである。この超音波処理パワーは、タイトなバンドルを解離するのに十分な強度ではないかもしれない。この過程は、雑賀の抽出後の残渣の吸収スペクトル(res)と、原料の吸収スペクトル(raw)とを比較することにより検証された(
図3参照)。それは、残渣は、S
11及びS
22ピークについて有意に減少した強度を有するが、M
11ピーク強度は同じままであることを確かに示している。これは、多重抽出によりアクセス可能なナノチューブの殆どが抽出されたことを意味する。近アームチェアキラリティへの高選択性に起因して、ポリマーは、どうやら全てのナノチューブを抽出するとともに、それが親和性を有する全ナノチューブを抽出するらしいこと留意すべきである。
【0041】
最適化された濃縮手順
前述の評価に基づき、高純度及び妥当な収率の濃縮sc−SWCNT分散液を製造するために最適化された手順は、約0.4mg/mL乃至約1.0mg/mLの範囲の濃度、及び約0.5:1乃至約1.0:1の範囲のポリマー:SWCNT比率でトルエン中に分散された粗製SWCNTを抽出するため、ポリ(9,9−ジドデシルフルオレン)(PFDD)を、共役ポリマーとして使用するステップを有する。最適化されたプロセスは、3つのステップを有する。当該3つのステップは、超音波処理を使用するナノチューブ分散と、遠心分離を使用する分離と、濾過を使用する収集とを包含する。より具体的には、粗製SWCNT材料は、トルエン中のPFDDとPFDD:SWCNT重量比0.8:1及びSWCNT濃度0.5mg/mLにおいて混合された。ポリマーラッピングを促進するため、混合物は、30℃で30分間のホーン超音波処理によってホモジナイズされた。ホモジナイズされた分散液を、RCF7,600gで30分間遠心分離した。得られる上澄を濾過して、黒い固体を収集した。濃縮sc−SWCNTから遊離ポリマーを除去するため、前記黒い固体を、トルエンでリンスした。5乃至10分間の浴槽超音波処理により、この濃縮サンプルをトルエン中に再分散させ、その吸収スペクトルを収集し、
図4に示した(Enriched)。比較のために、ろ液(Filtrate)及び遠心分離前のホモジナイズした粗製分散液(Crude)の吸収スペクトルもまた収集し、
図4において比較した。これら2つの溶液は、吸収測定のために20倍に希釈された。ろ液のスペクトルにおいてSWCNTシグナルは見られない。これは、0.2μmTeflon(商標)を貫通する濾過は、分散された全ナノチューブを効率的に収集できたことを意味する。この結果は、SWCNTの長さを維持したことと一致する。一方、ろ液の380nmにおけるPFDD吸収バンドの強度は、粗製SWCNTの吸収バンドのわずか約63%である。これは、大量のPFDDが分散液中のSWCNTの上でラップされている(is wrapped)ことを意味する。濃縮サンプルから、十分に分離したS
11及びS
22及びS
33ピークが見られる。約670nmにおける粗製サンプル内のM
11ピークは、濃縮サンプルにおいて完全に除去されていること、及び約1700nm及び1300nmにおける複数の谷間は、粗製材料の場合の0.086から濃縮sc−SWCNTの場合の0.406に増加するピーク比φ
iで、分離後にもっと深くなることもまた見える。これは、高sc純度を確認する。
【0042】
sc−SWCNTを濃縮した、粗製サンプルは、ラマン散乱によっても特徴化された。薄膜サンプルからの785nm励起を使用して、スペクトルを収集した。薄膜サンプルは、濃縮sc−SWCNT及び粗製サンプルの分散液をガラススライド上にキャストすることにより調製された。ラマンスペクトルのRMB領域における金属性ピークは、濃縮後に完全に除去される。これは、
図4における紫外可視近赤外(UV-vis-NIR)分光吸収分光法と一致する。濃縮サンプルのGバンドが、粗製サンプルのGバンド(1594cm
−1)よりもわずかに高く1600cm
−1に現れた。この結果は、sc−SWCNTの選択的抽出が、PFDDによるsc−SWCNTを優先ラッピングに起因することを確認した。
【0043】
S
11(1400〜1900nm)、S
22(700〜1100nm)及びS
33(450〜550nm)波長範囲における狭い、且つ十分に定義されたピークが、吸収スペクトルにおいて観察され得る(
図4)。これは、限られた数のキラリティがサンプル内に存在するという良い指標である。フォトルミネッセンス励起(PLE)マッピング(
図8)は、この結果を確認する。約8個の十分に定義されたピークが、S
11=1570nm及びS
22=910nmにおいて1個のドミナントなピークを有するPLEにおいて同定され得る。このピークは、(10,9)キラリティに割り当てられ、その強度は、その他の可視ピークよりもおおよそ2倍は大きい。近アームチェアキラリティに向かってPFの観察された選択性は、当該技術で知られている。その他7個のキラリティの存在は、1.25乃至1.35nmの極めて狭い直径分布を意味する(
図9)。PLEマッピング(
図8)のPL発光及び励起スライスを積分し、得られる曲線を吸収スペクトルと重ね合わせた(
図10)。発光スライスの合計については、溶液内のナノチューブ間において無視できる量のエネルギー移動が存在するという仮定の下で期待されるように、E
11吸収との1対1対応が存在する。換言すると、吸収及び発光シグナルは、個別のナノチューブにより支配される。少しでも分散液中に存在するのであれば、バンドル化が弱いことを意味する。
【0044】
実施例3:無機吸着媒体によるポリフルオレン誘導体濃縮、大直径sc−SWCNTの純度促進
本実施例は、sc−SWCNTの純度をさらに高めるために、非極性溶媒中で、実施例1からの濃縮sc−SWCNT分散液を無機吸着媒体に曝露するステップの詳細を提供する。本実施例で使用される無機吸着性媒体は、非変性シリカゲル及び種々の官能基で変性されたシリカゲル、すなわち、3−シアノプロピルトリエトキシシラン(CPTES)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、及び0.1%ポリ−L−リジンであった。シリカゲル(Macherey−Nagel社、60Åのポアサイズ)は、Rose Scientific Ltd.から購入した。3−シアノプロピルトリエトキシシラン(CPTES)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、及び0.1%ポリ−L−リジン水溶液は、Sigma−Aldrichから入手し、受け取ったままの状態で使用した。
【0045】
シリカゲル及び表面変性シリカゲルの調製
4つの異なる表面を有するシリカゲルは、約0.75mL/gのポア容積を有する230乃至400メッシュのMacherey−Nagelシリカゲル60Åから調製した。これらは、SiO
2−CPTES、SiO
2−APTES、SiO
2−PLL、むき出しのSiO
2(SiO
2-bare)である。SiO
2−CPTESは、シリカゲル(2.5g)を無水トルエン中の10mLの1%CPTES溶液に添加することにより調製された。混合物を5μLの濃HClと共に添加し、120分間振盪した。固体を濾過により収集し、トルエン(50mL)でリンスし、そして120℃オーブン中で30分間乾燥した。SiO
2−APTESは、1%APTES溶液を使用して、同様に調製した。SiO
2−PLLは、10gのシリカゲル及び3mLのPLL(0.1%)溶液を、10mLのH
2Oに添加することにより製造した。5分間の振盪後、混合物を濾過し、50mLの水でリンスした。その固体を高真空下で乾燥させた。表面改質なしでむき出しの(bare)シリカゲル(SiO
2−bare)も、使用前に真空下で乾燥させることにより調製された。CPTESは、3−シアノプロピルトリエトキシシラン(CPTES)であり、且つPLLはポリ−L−リジンである。
【0046】
シリカゲルを使用する吸着試験
濃縮sc−SWCNT分散液を、実施例2に従ってPFDDにより、レーザーSWCNTの抽出により調製した。濃縮sc−SWCNTは、ピーク比φ
i0.309、ポリマー:SWCNT比率3.7:1、及び濃度約0.10mg/mLを有した。1.5mLの濃縮sc−SWCNT分散液及び1.5mLのトルエンを、0.025gの吸収剤と共に混合した。混合物を25分間超音波処理した後、遠心分離した。吸収スペクトル収集のため、上澄を採取した。異なる吸着剤により処理したサンプルのため、
図11においてこれら吸収スペクトルを比較した。処理前及び処理後のサンプルの936nmにおけるピーク強度を比較することにより、この処理の収率は算出された。結果と実験条件は、表2に示される。結果は、全処理は、SiO
2−APTESを除き、0.400より大きいφ
i値を有する高純度を与えることを示す。SiO
2−APTESはわずかに低い純度を生成した。これは、アミン基の劣化に起因するに違いない。アミン基は、減少した選択性をひき起こす表面処理におけるHClの使用のせいで、塩形態に変換され得る。表面変性は、生成物の純度に対して有意な効果を有しないが、収率に対する効果を有する。むき出しのシリカゲルは、SWCNTを結合するため細孔の容量を有する。同一の条件下でシリカゲルが存在しない対照実験は、沈殿をもたらさず、ピーク比における変化をもたらさない。
【0047】
表2−シリカゲルを使用する純度促進試験の実験条件及び結果
【表2】
【0048】
吸着剤用量の効果
この試験は、PFDD濃縮sc−SWCNT分散液(φ
i=0.352;ポリマー:SWCNT=35:1;約0.0059mg/mLの濃度)に対してなされた。トルエン中10mLのsc−SWCNT分散液を、80mg、40mg、20mgもしくは10mgのSiO
2−CPTESに添加し、25分間超音波処理した。次いで、混合物を、いずれの固体粒子を除去するために遠心分離し、上澄をUV分光法によって分析した。UVスペクトルは
図12に示され、結果は、実験条件と共に表3に要約される。本試験において、各元の状態の(original)サンプルにおけるSWCNT含有量は、0.059mgであり、表面変性シリカゲルの含有量は、80mg、40mg、20mg及び10mgであり、それぞれシリカゲル:SWCNT比率1400:1、700:1、350:1及び170:1に対応する。結果は、80mgの変性シリカゲルを使用した場合、殆どすべてのナノチューブは吸収されので、純度を測定するには低すぎる濃度になり、一方40mg及び20mgを使用した場合、吸着は、妥当な収率(40%)及び優れた純度(約0.410のφ
i)を与えることを表す。変性シリカゲルの含有量を10mgまでさらに減らすと、収率を増加させたが、純度をわずかに低減させた。この結果は、約350:1のSiO
2−CPTES:SWCNT比率は、収量を維持しながら、純度促進のためには良いことを意味する。他方、最後の段落に示されるように、むき出しのシリカゲルは、SWCNT結合において高容量を有する。この吸着試験のために使用される場合、最適SiO
2/SWCNT比率は、80:1であることが分かった。この比率は、収率84%及びφ
i値0.406を与える。
【0049】
表3−吸着剤用量試験の実験条件及び結果
【表3】
【0050】
大規模精製
蒸気結果を、大規模試験を使用して検証した。異なるsc純度を有する以下の2つのPFDD濃縮sc−SWCNT分散液を、90mLスケールで試験した。
1. サンプル−a40:φ
i=0.365; ポリマー:SWCNT=130:1; SWCNT濃度 約0.012mg/mL
2. サンプル−a05:φ
i=0.391; ポリマー:SWCNT=30:1; SWCNT濃度 約0.008mg/mL
【0051】
これら2つの分散液は、上記試験のために使用される分散液よりも高sc純度を有するので、わずかに低いSiO
2−CPTES:SWCNT比率(約150:1)を使用した。従って、0.18gのSiO
2−CPTESを90mLのサンプル−a40に添加し、0.09gのSiO
2−CPTESを90mLのサンプル−a05に添加した。両サンプルは、25分間浴槽超音波処理し、それから上澄(sup)及び沈殿物(ppt)を分離するため、7600gで10分間遠心分離した。上澄みのUVを直接測定し、ラマンスペクトルをフィルムから収集した。フィルムは、溶液の液滴をガラススライド上にキャストすることにより調製された。上澄(ppt)のラマンスペクトルは、SWCNTを吸着したSiO
2パウダーから直接収集された一方、pptのUVスペクトルは、単離SWCNTから収集された。単離SWCNTは、吸収剤から単離された。これを達成するため、沈殿物は、5mLの48%HF水溶液に添加された。そうすると、SWCNTは5分以内で溶液内に浮遊し、且つ浮遊する黒い固体は、収集され、水、次いでアセトン、次いでトルエンでリンスされた。得られたSWCNTを、UV測定のための0.1mg/mL PFDD溶液内に分散させた。出発物質(orig)及び上澄(sup)からの生成物及び沈殿物(ppt)からの生成物のUVスペクトルを、
図13において、表4に要約された関連結果と比較した。この吸着プロセスは、ことなるsc純度を有する2つの(both)出発物質から高度に純粋な生成物を70%超の収率で生成することがわかる。ハイブリッドプロセスの組合せ収率は、a40の場合7.8%であり、a05の場合3.2%である。この結果は、この追加の吸着プロセスが、PFDD濃縮sc−SWCNTのsc純度を、最低限の収量損失で効果的に促進することを証明する。他方、抽出プロセスのため比較的高いポリマー/SWCNT比率を使用する良い戦略として、それが類似のsc純度を有するハイブリッドプロセスからの高収率の最終生成物で終わることを実証する。
図13は、吸着剤表面から単離されたSWCNTサンプルは、650nm周辺において強い金属性ピーク、及び非常に高いバックグラウンド強度を有することをも示す。これは、元の状態の(original)サンプルよりもはるかに低いsc純度を意味する。これは、m−SWCNT及びその他の不純物を選択的に吸着するシリカゲルの強い能力を実証する。
【0052】
表4−元の状態の(original)分散液及びシリカ吸着による大規模純度促進の生成物の特性データ
【表4】
* 組み合わせた収率の計算のための抽出ステップの収率
** カッコ内のデータは、沈殿物由来である。
【0053】
この結果を検証するため、元の状態の(original、orig)濃縮sc−SWCNT分散液、上澄み(sup)のからの生成物及び沈殿物(ppt)からの生成物のラマンスペクトル(
図14)が、785nmのRBM領域及び633nmのGバンド領域において収集された。陰影部分は、金属性領域を表す。ラマンスペクトルは、m−SWCNTからの散乱は、上澄内で完全に除去された一方、m−SWCNTは、沈殿物内で高度に濃縮されていることを表す。これは、シリカゲルが、m−SWCNTを有意に吸着し得ることを確認する。
【0054】
以下の結論に達し得る。m−SWCNTに起因するRBM領域内のピークは、完全に除去されたことは、シリカゲル吸着は、純粋な(φ
i=0.391)及び純粋でない(φ
i=0.365)サンプル2種(both)からm−SWCNTを効率的に除去することを意味する。PFDD濃縮からの純粋な方のサンプルの場合でさえ、m−SWCNTに起因するRBM領域内のピークは、シリカゲル上に吸着された沈殿物材料内で依然として見られた。これは、このプロセスは、高度に純粋なsc−SWCNTからm−SWCNTを除去可能であることを意味する。有意なm−SWCNT濃縮が、シリカゲル上の材料において見られ、吸着プロセスのm−SWCNTに対する大きな選択性を意示す。φ
i値、785nmスペクトルのRBM領域におけるピーク及び633nmスペクトルのGバンド領域におけるピークの強度は、良い相関を表す。
【0055】
実施例4:ハイブリッド2ステッププロセスにより製造されたレーザーsc−SWCNTに基づく、薄膜トランジスタ(TFT)
実施例3のSiO
2処理サンプルの高sc純度を、TFTデバイス試験によりさらに検証した。TFTデバイスは、厚さ100nmの熱酸化物層を有するシリコンウエハ上で製造された。チップを、最初にピラニア溶液により80℃で30分間浄化し、それから0.1%ポリ−L−リジン(PLL)溶液内に5分間浸漬した。蒸留水及びイソプロパノール完全にリンスした後、チップを、N
2を使用して吹き付け乾燥し、それから本プロセスにより製造された濃縮SWCNTのトルエン溶液内に10分間浸漬した(SWCNTの濃度は、20乃至30μg/mLの範囲内であり、PFDD/SWCNTの重量比は、約4:1乃至7:1である)、次いで5mLのトルエンでリンスした。被覆されたチップを、200℃で1時間アニール処理した。その後、電子ビーム蒸発装置を使用するシャドウマスクを介して、トップ接点(5nm Ti次いで100nm Pt)が沈殿された。アクティブチャネル幅は、100μmであり、長さは100μm、75μm、50μmもしくは25μmである。プローブステーションにおいて、I−V曲線が収集され、且つ移動度は、平行プレートモデルに基づく線形レジームにおけるI
sd−V
g伝達曲線から算出された(Bisri 2012)。
【0056】
濃縮sc−SWCNTサンプル(a05−Sol)から調製されるTFTデバイスは、25μmのチャネル長さ及び100μmのチャネル幅を有する1デバイス当たり、7.2×10
5のオン/オフ電流比及び61cm
2/Vsの移動度を示した。代表的出力曲線(A)及び伝達曲線(B)は、
図15に見られる。さらに、1チップに対する全25個のデバイスの試験は、全デバイスは、10
4を超えるオン/オフ比と25cm
2/Vsを超える移動度という良好なトランジスタ性能を示した一方で、吸着処理前の同一サンプル(a05-orig)からの25個中わずか12個のデバイスは、10乃至30cm
2/Vsの移動度及び約10
4のオン/オフ比という通常のTFT特性を示した。ただし、UV測定は、この処理の前及び後に小さなφ
i値変化を示しただけである(0.381と0.408との対比)。同様のデバイス性能が、低sc純度から精製その他のサンプルからも得られた(a40-sup)。この処理前のサンプルからは(0.365のφ
iを有するa40-org)、最善のデバイスから28cm
2/Vsの移動度及び約3のオン/オフ比が得られただけである。この結果は、ハイブリッド精製sc−SWCNTの高品質を再度確認した。
【0057】
表5:シリカ吸着処理の前及び後、0.365及び0.391のφ
iを有する2種のPFDD濃縮サンプル(a40及びa05)TFTデバイス性能
【表5】
【0058】
参考文献:これらの各々の全体の内容は、参照することにより本書に含まれる。
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【0059】
新規特徴は、記載を検討した当業者には明らかであろう。特許請求の範囲は実施例により限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体の文言と一致した最も広い解釈が与えられるべきであることが理解されるべきである。