特許第6461963号(P6461963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6461963素管を管に成形するための冷間ピルガー圧延ミル及び方法
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  • 6461963-素管を管に成形するための冷間ピルガー圧延ミル及び方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6461963
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】素管を管に成形するための冷間ピルガー圧延ミル及び方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 21/04 20060101AFI20190121BHJP
   B21B 37/78 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   B21B21/04
   B21B37/78
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-537213(P2016-537213)
(86)(22)【出願日】2014年8月14日
(65)【公表番号】特表2016-531757(P2016-531757A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2014067414
(87)【国際公開番号】WO2015028317
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】102013109218.7
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515157459
【氏名又は名称】サンドヴィック マテリアルズ テクノロジー ドイチュラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フロベーゼ, トーマス
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−159204(JP,A)
【文献】 特開昭59−076603(JP,A)
【文献】 特開平02−052109(JP,A)
【文献】 特開昭51−029359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 21/00,21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延スタンド(1)に回転可能に取り付けられた一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)と、素管(11)を受け取るためのフィードクランピングキャリッジ(5)及び冷間ピルガー圧延ミルの運転の間に素管(11)が一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)の方向に段階的に進むように、フィードクランピングキャリッジ(5)を動かすように配置されるフィードクランピングキャリッジ(5)のための駆動部(6)とを備える、素管(11)を管(50)に成形するための冷間ピルガー圧延ミルであって、冷間ピルガー圧延ミルが、制御部(12)及び冷間ピルガー圧延ミルの運転の間に一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)により素管(11)に及ぼされる力の量を検知するためのセンサ(16)を更に備え、制御部(12)が駆動部及びセンサ(16)に接続され、冷間ピルガー圧延ミルの運転の間、力の量の関数として、駆動部(6)が一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)上にフィードクランピングキャリッジ(5)を動かす前進ステップ当りのステップ長さを調節するように、制御部(12)が配置されることを特徴とする、冷間ピルガー圧延ミル。
【請求項2】
冷間ピルガー圧延ミルの運転の間に、一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)により素管(11)上に及ぼされる力、及びセンサ(16)の測定から得られるか又は導き出される力が、所定の閾値を下回るように、前進ステップ当りのステップ長さを調節するように、制御部(12)が配置されることを特徴とする、請求項1に記載の冷間ピルガー圧延ミル。
【請求項3】
冷間ピルガー圧延ミルの運転の間、前進ステップ当りのステップ長さが最大となるように、フィードクランピングキャリッジ(5)の前進ステップ当りのステップ長さを制御するように、制御部(12)が配置されることを特徴とする、請求項2に記載の冷間ピルガー圧延ミル。
【請求項4】
駆動部(6)の静止状態及び一組のロール(2、3)での圧延の間、制御部(12)が、一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)により素管(11)に及ぼされる力の量を検知し、検知された量から得られるか又は導き出される力及び一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)により素管(11)に及ぼされる力が所定の閾値を上回る場合に、制御部(12)がステップ長さを縮めるように配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の冷間ピルガー圧延ミル。
【請求項5】
センサが、フィードクランピングキャリッジ(5)の実際の位置を検知する位置センサ(16)であり、制御部(12)が、センサ(16)により検知されるフィードクランピングキャリッジ(5)の実際の位置をフィードクランピングキャリッジ(5)の名目上の位置と比較するように配置され、実際の位置と名目上の位置との差異が、一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)により素管(11)に及ぼされる力の量であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の冷間ピルガー圧延ミル。
【請求項6】
フィードクランピングキャリッジ(5)の実際の位置とフィードクランピングキャリッジ(5)の名目上の位置との間の差異が、所定の閾値より小さいように、冷間ピルガー圧延ミルの運転の間、フィードクランピングキャリッジ(5)の前進ステップ当りのステップ長さを制御するように、制御部(12)が配置されることを特徴とする、請求項5に記載の冷間ピルガー圧延ミル。
【請求項7】
一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)により素管(11)に及ぼされる力が駆動部(6)の保持力を超える場合に、前進の方向に抗する方向へのフィードクランピングキャリッジの逸脱する動きを許容するように、駆動部(6)が配置されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の冷間ピルガー圧延ミル。
【請求項8】
フィードクランピングキャリッジ(5)のための駆動部(6)が、少なくとも一つの直接電気機械式リニアドライブ(6)を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の冷間ピルガー圧延ミル。
【請求項9】
駆動部(6)が、液圧式又は空気圧式ブレーキを備えることを特徴とする、請求項8に記載の冷間ピルガー圧延ミル。
【請求項10】
圧延スタンド(1)に回転可能に取り付けられた一組のロール(2、3)及び圧延マンドレル(4)と、内部に受け入れられた素管(11)を有するフィードクランピングキャリッジ(5)及びフィードクランピングキャリッジ(5)のための駆動部(6)とを備える冷間ピルガー圧延ミルを提供する工程;
素管(11)が一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)の方向に段階的に進むように、駆動部(6)でフィードクランピングキャリッジ(5)を動かす工程
を含む素管(11)を管(50)に成形するための方法であって、
センサ(16)で一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)により素管(11)に及ぼされる力の量を検知し、制御部(12)で、力の量の関数として駆動部(6)が素管(11)を一組のロール(2,3)及び圧延マンドレル(4)に動かす前進ステップ当りのステップ長さを調節する工程
を更に備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
素管(11)の前進ステップ当りのステップ長さが、センサ(16)の測定から得られるか又は導き出される力が所定の閾値を下回るように調節されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
素管(11)の前進ステップ当りのステップ長さが、ステップ長さが最大となるように調節されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、圧延スタンドに回転可能に取り付けられた一組のロール及び工具としての圧延マンドレルと、素管を受け取るためのフィードクランピングキャリッジ及び冷間ピルガー圧延ミルの運転の間に素管が工具の方向に段階的に進むためにフィードクランピングサドルを動かすように配置されるフィードクランピングサドルのための駆動部とを備える、素管を管に成形するための冷間ピルガー圧延ミルに関する。
【0002】
本発明は、以下の工程で素管を管に成形するための方法に更に関する:圧延スタンドに回転可能に取り付けられた一組のロール及び工具としての圧延マンドレルと、内部に受け入れられた素管を備えるフィードクランピングサドル及びフィードクランピングサドルのための駆動部とを備える、冷間ピルガー圧延ミルを提供する工程;素管が工具の方向に段階的に進むように駆動部によりフィードクランピングサドルを動かす工程。
【0003】
特に高級鋼からなる精密な金属管を製造するために、展伸された、中空の、素管とも呼ばれる管状のブランクは、完全な冷間状態において圧力緊張(pressure tensions)により、縮径される。素管は、それにより、規定される縮径された外径及び規定される肉厚を有する管に成形される。
【0004】
最も一般的な管のための縮径方法は、素管が仕上り管の内径を有する調整された圧延マンドレル上で押され、仕上り管の外径を規定する二つの調整されたロールにより外側から囲まれ、圧延マンドレル上で長手方向に圧延される、冷間ピルガー法として知られている。
【0005】
冷間ピルガー法の間、素管は、圧延マンドレルの方向に及びそれを超えて、段階的な前進を履む。二つの前進ステップの間、ロールは、マンドレル上で、したがって素管上で回転しながら動かされ、素管を圧延する。圧延スタンドの各反転地点において、ロールは、素管を離し、後者はマンドレルの方向に更に一ステップ押される。
【0006】
マンドレル上の素管の前進は、直動駆動フィードクランピングキャリッジにより行われる。フィードクランピングキャリッジは、フィードクランピングサドルとも呼ばれ、圧延マンドレルの軸に平行な方向に並進の運動を実行し、後者を素管に移す。
【0007】
圧延の間、フィードクランピングキャリッジは、実質的に固定であり、工具、すなわちロール及び圧延マンドレルにより及ぼされる力を素管に伝える。
【0008】
冷間ピルガー圧延の間、正しい速度の選択、特に、しかしながら、素管が工具の方向に前進されるステップ長さ(step length)は、工具により素管に及ぼされる力、したがって、仕上り管の品質及び前進駆動部、すなわち、フィードクランピングキャリッジの耐用年数に相当な影響を有することが示されてきた。
【0009】
したがって、本発明の目的は、制御された工具により素管上に及ぼされる力で、素管を管に成形することを可能にする、素管を管に成形するための冷間ピルガー圧延ミルを提供することが本発明の目的である。特に、改善された品質で管を製造することを可能にする冷間ピルガー圧延ミルを提供することも本発明の目的である。更には、改善された耐用年数を有する冷間ピルガー圧延ミルを提供することが本発明の目的である。
【0010】
前述の目的の少なくとも一つは、圧延スタンド上に回転可能に固定された一組のロール及び工具としての圧延マンドレルと、素管を受け取るためのフィードクランピングキャリッジ及び冷間ピルガー圧延ミルの運転の間に素管が工具上である方向に段階的に動くためにそれが動くように配置されたフィードクランピングキャリッジのための駆動部とを備える、素管を成形するための冷間ピルガー圧延ミルにより達成され、該冷間ピルガー圧延ミルは、制御部及び冷間ピルガー圧延ミルの運転の間に、工具により素管に及ぼされる力の量を検知するためのセンサを更に備え、該制御部は、駆動部及びセンサに接続され、かつ、該制御部は、冷間ピルガー圧延ミルの運転の間に駆動部が力の量の関数として工具上でフィードクランピングキャリッジを動かす前進ステップ当りのステップ長さ(step length per advance step)を調節するように配置され、その量はセンサにより決定される。
【0011】
冷間ピルガー圧延ミルを用いた圧延の間、工具、特にロールは、フィードクランピングキャリッジを介して駆動部により素管に及ぼされる保持力に抗する力を素管に及ぼす。工具により素管に及ぼされる力は、特に縮径される素管の寸法の関数であるが、素管が工具上でロールの間に向けて押される前進ステップ当りのステップ長さの関数でもある。
【0012】
前進ステップ当りのステップ長さが短縮されるとき、圧延の間に工具により素管に及ぼされる力が、減少されることが示されてきた。本発明は、圧延の間、この力の量の関数として、前進ステップ当りのフィードクランピングキャリッジのステップ長さを調節するというこの洞察を利用し、その量はセンサにより検知される。
【0013】
本発明の意味における、前進ステップ当りのステップ長さは、素管及びフィードクランピングキャリッジが二つの圧延路の間を単一の段階的な前進ステップの間に進む、並進経路である。
【0014】
工具により素管上に及ぼされる力の量を検知するためのセンサは、例えば、この力を直接測定するロードセルである。他の実施態様では、この力は、フィードクランピングキャリッジの位置測定から得られ得る。
【0015】
冷間ピルガー圧延の間、素管は、駆動部により駆動されるクランピングキャリッジにより、圧延マンドレルの方向に段階的な前進を履み、それを超え、キャリッジは冷間ピルガー圧延ミルにおいてフィードクランピングキャリッジとも呼ばれる。二つの前進ステップの間、ロールは、マンドレル上で、したがって素管上で回転しながら動かされる。ロールの水平方向の動きは、ロールが回転可能に支持される圧延スタンドにより、ここで設定される。
【0016】
圧延スタンドは、クランクドライブにより圧延マンドレルと並行な方向に往復動され、一方、ロール自体は、圧延スタンドに対して相対的に固定で、かつ、ラック歯がロール軸エンゲージに堅固に接続された、歯車付きラックにより、それらの回転運動を典型的に受ける。ロールは、圧延スタンドの各反転地点で素管を離し、素管は更なる前進ステップにより工具上に進められる。同時に、均一な形状の仕上り管を達成するために、素管はその軸周りの回転を履む。
【0017】
ロールにより形成される所謂「ピルガーマウス(pilger mouth)」が素管を掴み、ロールは、小さな金属の起伏を外側へ押し出し、ロールのスムージングキャリバー及び圧延マンドレルにより、ロールのアイドルキャリバーが仕上り管を離すまで、意図された肉厚に延伸される。ロールがアイドルキャリバーに達した後、素管は、フィードクランピングキャリッジにより圧延マンドレル上に更に一ステップ押される。その後、圧延スタンドを備えるロールは、それらの水平方向の初期位置に戻り、それにより、素管を再度圧延する。均一な内径及び外径と同様に、管の均一な肉厚及び真円度も、各管区間上での複数の圧延により達成される。
【0018】
本発明の一実施態様では、駆動部は、素管上に及ぼされる力が駆動部の保持力を超える場合、前進の方向に抗する方向のフィードクランピングキャリッジの逸脱する動きを許容するように配置される。この補償する動きの長さは、特に、工具により素管上に及ぼされる力の量である。そのような補償する動きは、フィードクランピングキャリッジ及び駆動部への損傷も防ぐ。
【0019】
フィードクランピングキャリッジのための駆動部が、冷間ピルガー圧延ミル中のスピンドルドライブを介して慣例的に行われる一方で、本発明の一実施態様は、少なくとも一つの直接電気機械式リニアドライブを備えるフィードクランピングキャリッジのための駆動部で行われることが好ましい。
【0020】
電気機械式リニアドライブは、本発明の意味において、回転運動を並進運動に変換することなしに、進む経路及び十分な位置決め精度を可能にする全てのリニアモータ及びリニアアクチュエータを意味する。電気力学的作用原理を有するリニアモータに加え、それらは、圧電式、静電式、電磁式、磁歪式又は熱電式作用原理を有するリニアアクチュエータである。
【0021】
そのような直接電気機械式リニアドライブ、特にリニアモータは、フィードクランピングキャリッジに直接的に作用し、接触なく稼働し、したがって、ほぼ完全に摩耗がないという利点を有する。
【0022】
前進力は、リニアドライブにより直接的にフィードクランピングキャリッジに導入される。伝動装置、スピンドル及びスピンドルナットを介したサーボドライブの回転運動の並進運動への変換は、スピンドルドライブなどにおいて除去される。したがって、機械的構成要素の数は、明らかに削減され、それは、とりわけ、交換部品の保管により生じる費用を削減する。
【0023】
しかしながら、本発明に関して、そのようなフィードクランピングキャリッジのための直接電気機械式リニアドライブは、前進ステップ当りのステップ長さに関して、直接的に及び非常に正確に制御され得るという利点を特に有する。
【0024】
一実施態様では、直接電気機械式リニアドライブは、前進の方向と反対のフィードクランピングキャリッジの変位に抗する液圧式又は空気圧式ブレーキを更に備える。電気機械式リニアドライブの静的な保持力は、圧延の間、そのようなブレーキにより補われる。更に、そのような液圧式又は空気圧式ブレーキは、上記のように、規定された限度内でフィードクランピングキャリッジの補償的な動きを許容するという利点を有する。
【0025】
本発明の一実施態様では、前進ステップ当りの素管のステップ長さは、センサの測定から得られる又は導き出される力が所定の閾値を下回るように調節される。
【0026】
同時に、本発明の一実施態様では、冷間ピルガー圧延ミルの前進ステップ当りのステップ長さは、最大限の生産性の意味において、可能な限り大きく選択される。
【0027】
このため、制御部は、センサの測定から得られる又は導き出される力が所定の閾値を下回る限り、ステップ長さが増加するように、冷間ピルガー圧延ミルの運転の間、クランピングキャリッジの前進ステップ当りのステップ長さを制御するように、本発明の一実施態様では配置される。
【0028】
本発明の一実施態様では、冷間ピルガー圧延ミルの運転において、工具により素管上に及ぼされる力の量を検知するためのセンサは、フィードクランピングキャリッジの実際の位置を検知する位置センサであって、該制御部は、センサにより検知された実際の位置とフィードクランピングキャリッジの名目上の位置とを比較するように配置され、実際の位置と名目上の位置の間の差異は、工具により素管上に工及ぼされる力の量である。
【0029】
圧延の間、フィードクランピングキャリッジが駆動部により静的に保持される逆の力が知られていると想定される場合、工具が素管に作用する力は、フィードクランピングキャリッジの予定される名目上の位置と現在の実際の位置との間の差異から導き出され得る。
【0030】
上記のように、工具により素管に及ぼされる力は、とりわけ、前進ステップ当りのステップ長さの関数であるため、フィードクランピングキャリッジのステップ長さは、一実施態様では、実際の位置と名目上の位置との間の差異が、最小であり、所定の閾値を下回るか、所定の許容範囲内にあるように、調節され得る。
【0031】
開始後、クランピングキャリッジのステップ長さが工具により素管に及ぼされる力と処理時間との間の最適なバランスであるようにミルが駆動部を調節する、ミルの自動運転を可能にするように、一実施態様では最大限のステップ長さが調整され、予め決められる。
【0032】
他の実施態様では、本発明による調節は、特に、素管の寸法における変動を補償する。圧延される素管が、例えば、拡大された肉厚を有する区間を有する場合、これは、素管の他の区間に比べ、工具により素管に及ぼされる力が、この区間の圧延の間、増加する結果となる。この力の増加に抗するために、ステップ長さは、センサの測定から得られる又は導き出される力が、所定の閾値未満に戻るまで短縮される。本発明の一実施態様によれば、制御部は、同時に、ミルの生産性を最大化するために、ステップ長さをできる限り長く保とうと試みる。通常の寸法(増肉区間と比べて)を有する管区間に達した際、素管上に工具により及ぼされる力の急落が検知された後すぐに、制御部は、ステップ長さを再度増加する。
【0033】
本発明の一実施態様では、制御部は、フィードクランピングキャリッジの実際の位置とその名目上の位置との間の差異が、所定の閾値より小さいか、所定の許容範囲内にあるように、冷間ピルガー圧延ミルの運転の間、前進ステップ当りのフィードクランピングキャリッジのステップ長さを制御するように設定される。
【0034】
許容範囲の上方及び下方境界特性のためのこの閾値のレベルは、一実施態様では、冷間成形された管の品質要求に依存する。フィードクランピングキャリッジの実際の位置と名目上の位置との間のずれがより小さい程、管の品質はより良いとここではみなされる。さらに、駆動部の寸法取りも、予め設定される特定への影響を有する。目標は、予め設定された工具により素管に及ぼされる力の限界を超えることにより引き起こされる駆動部への損傷を防ぐことである。
【0035】
本発明の上記の目的の少なくとも一つは、以下の工程を含む、素管を管に成形するための方法によっても達成される:圧延スタンドに回転可能に取り付けられた一組のロール及び工具しての圧延マンドレルと、内部に受け入れられた素管を有するフィードクランピングキャリッジ及びフィードクランピングキャリッジのための駆動部とを備える冷間ピルガー圧延ミルを提供する工程、素管が工具上である方向に段階的に動かされるように、駆動部によりフィードクランピングキャリッジを動かす工程を含む方法であって:センサで工具により素管に及ぼされる力の量を検知し、制御部により、センサにより検知される力の量の関数として、駆動部が素管を工具上へ進める前進ステップ当りのステップ長さを調節する工程を更に備える方法。
【0036】
有利には、素管の寸法における変動は、本方法により、補償される。
【0037】
有利には、制御部に対して未知の寸法取りを有する素管の成形のための冷間ピルガー圧延ミルの運転は、本方法により開始される。
【0038】
本発明の態様が、冷間ピルガー圧延ミルに関して既に前述された限りにおいて、それらも素管を管に成形するための対応する方法に適用し、逆もまた同様である。本方法が、本発明による冷間ピルガー圧延ミルで行われる限りにおいて、それは、このために対応する装置を有する。特に、冷間ピルガー圧延ミルの実施態様は、記載された本方法の実施態様を実施するためにも適している。
【0039】
本方法の前述の実施態様が、少なくとも部分的に理解され得る限りにおいて、ソフトウエア制御のデータ処理ユニットが用いられ、そのようなソフトウエア制御を可能にするコンピュータプログラム及びそのようなコンピュータプログラムが保存される記録媒体は、本発明の態様と考えられることは明らかである。
【0040】
本発明を用いることの更なる利点、特徴及び可能性は、以下の好ましい実施態様の記載及び関連する図を用いて明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の実施態様による冷間ピルガー圧延ミルの構造の模式的側面図である。
【0042】
冷間ピルガー圧延ミルの構造は、図1の側面図に模式的に示されている。圧延ミルは、ロール2、3を備える圧延スタンド1、調整された圧延マンドレル4、及びフィードクランピングキャリッジ5からなる。ロール2、3は、圧延マンドレル4と共に本発明の意味における冷間ピルガー圧延ミルの工具を形成する。図1において、圧延マンドレル4の位置は、素管11の内側から見られ得ないことに留意されたい。
【0043】
示された実施態様では、冷間ピルガー圧延ミルは、図1の参照番号6により示されるリニアモータを備える。リニアモータ6は、フィードクランピングキャリッジ5のための直接駆動部を形成し、ロータ7及びステータ8により構成される。図1に示される圧延ミルにおける冷間ピルガー圧延の間、素管11は、圧延マンドレル4の方向に、及びそれを超えて、段階的な前進を履む。ロール2、3は、マンドレル4上で、したがって素管11上で回転する間、水平に前後動される。この時間の間、ロール2、3の水平方向の動きは、ロール2、3が回転可能に取り付けられた圧延スタンド1により設定される。圧延スタンド1は、クランクドライブ10により、圧延マンドレルに平行な方向に前後動される。圧延スタンドに対して固定であり、歯車がロールシャフトエンゲージに強固に接続する歯付ラックから、ロール2、3は、それらの回転運動を受ける。
【0044】
素管11の前進は、リニアモータ6により駆動される圧延マンドレルの軸に平行な方向の並進運動を可能にするフィードクランピングキャリッジ5により、圧延スタンド1の反転地点で行われる。ロールにより形成される所謂「ピルガーマウス」は、各前進の後に素管11を掴み、ロール2、3が小さな金属の起伏を外側から押し、ロール2、3のアイドルキャリバーが仕上り管を再度離すまで、ロール2、3のスムージングキャリバー及び圧延マンドレル4により、意図される肉厚に延伸される。
【0045】
素管11は、ロール2、3のアイドルキャリバーに達した後、フィードクランピングキャリッジ5による圧延マンドレルに向かう更なるステップにより前進される。同時に、仕上り管の均一な形状を達成するために、素管11はその軸周りの回転を履む。均一な内径及び外径と同様に、管の均一な肉厚及び真円度が各管区間上の複数の圧延により達成される。
【0046】
中央シーケンス制御部12は、初期は独立である圧延ミルの駆動部6、10を制御し、圧延プロセスの前述の進行が達成される。制御部12は、素管11を前進するためのリニアモータ6の前進ステップの開放から始まる。前進位置、すなわち、前進ステップの終わりに達した際、リニアモータ6は、フィードクランピングキャリッジ5を静的に保持するように制御され、クランクドライブの回転の速度は、各前進ステップの終わりの後、圧延スタンド1が素管11上を水平方向に押されるように制御され、ロール2、3が素管11を圧延する。
【0047】
その制御タスクを満たすために、シーケンス制御部12、例えば、工業用PCは、制御線13、14を介してクランクドライブ10のための駆動モータ及びリニアモータ6にも接続される。さらに、シーケンス制御部12は、測定線15により、ロータ7上に取り付けられたフィードクランピングキャリッジ5の実際の位置を検知し、その位置はリニアモータ6内の位置センサ16により検知される。
【0048】
工具2、3、4により素管11に及ぼされる力は、特に素管の性質、とりわけその寸法に依存する。力のこの作用が所定の閾値を下回る場合、素管の十分な品質が保証され得、フィードクランピングキャリッジ5又は駆動部6へのダメージが防止され得る。しかしながら、工具2、3、4により素管11に及ぼされる力も、フィードクランピングキャリッジ5とそれにより素管11とが前進ステップ毎に工具2、3、4に動かされるステップ長さに依存する。
【0049】
素管11への工具2、3、4の力の作用が非常に大きい場合、ロータ7上のフィードクランピングキャリッジ5は、制御線14を介して連続制御部12により与えられる名目上の位置から前進の方向とは反対に変位される。すなわち、リニアモータ6により及ぼされる保持力は、工具2、3、4により素管11に及ぼされる力より小さい。この事実により、圧延の間、リニアモータ6により与えられるフィードクランピングキャリッジ5の名目上の位置と制御線15により検知されるフィードクランピングキャリッジ5の実際の位置との間のずれという結果となる。名目上の位置と実際の位置との間のずれ又は差異は、その後、工具2、3、4により素管11に及ぼされる力の量である。
【0050】
フィードクランピングキャリッジ5の名目上の位置と実際の位置との間の差異が所定の閾値を超える場合、圧延スタンド1の後の管の十分な品質をなお保証するために、管素管11への工具2、3、4の力の作用が大き過ぎると推定される。工具2、3、4により素管11に及ぼされる力を低減するために、シーケンス制御部12は、その後、フィードクランピングキャリッジ5が工具2、3、4上に前進ステップ当り動かされるステップ長さを縮める。工具2、3、4により素管11に及ぼされる力も、フィードクランピングキャリッジ5の速度が小さくなるにつれて減少するであろうし、フィードクランピングキャリッジ5の名目上の位置と実際の位置との間の差異は、再度、必要な品質を保証するための閾値を下回るであろう。しかしながら、同時に、必要な品質に加え、ミルの必要な生産性を保証するために、制御部12は、フィードクランピングキャリッジ5のステップ長さを最大に保持しようと試みる。この目的のために、制御部は、フィードクランピングキャリッジの実際の位置と名目上の位置との間の差異についての上方の閾値だけでなく、共に許容範囲を規定する下方の閾値も有する。フィードクランピングキャリッジの名目上の位置と実際の位置との間のずれが下閾値を下回った場合、ステップ長さは、ミルの生産性を保持するために、再度増加され得る。
【0051】
本願明細書、図面及び請求項から当業者にとって明白である全ての特徴は、それらが特定の他の特徴と併せて具体的に記載されていても、これが明確に除外されていないか、又はそのような組み合わせが技術的事実から不可能若しくは不合理でない限り、ここに開示される他の特徴又は特徴の群と個別に又は任意の組み合わせで、組み合わされ得ることが、原開示の目的のために示される。全ての考えられる特徴の組合せの包括的で明白な表現は、明細書の簡潔さ及び読み易さのために、ここでは与えられない。
【0052】
本発明が図面及び前記明細書において詳細に表される場合、この表現及び明細書は、単に例として行われ、請求項により定義される保護の範囲の制限を意図するものではない。本発明は、開示された実施態様に限定されない。
【0053】
開示された実施態様への変更は、図面及び明細書の記載から当業者にとって明白である。請求項において、「含む(comprises)」という単語は、他の要素又は工程を排除せず、かつ、不定冠詞「a」又は「one」は複数形を除外しない。特定の特徴が異なる請求項内で請求されているという単なる事実は、それらの組合せを排除しない。請求項における参照番号は、保護の範囲の限定を意図するものではない。
【符号の説明】
【0054】
1 圧延スタンド
2、3 ロール
4 圧延マンドレル
5 フィードクランピングキャリッジ
6 リニアモータ
7 ロータ
8 ステータ
9 チャック
10 クランクドライブ
11 素管
12 制御部
13、14 制御線
15 測定線
16 位置センサ
50 高級鋼管
図1