(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記交連部位置特定装置が、前記弁輪形成用インプラントのガイド手段を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の送達のための送達システム。
前記クリップガイドは、前記シースの半径方向に反対側の外縁に配置され、前記長手方向に延長する第1のクリップガイド(105)及び第2のクリップガイド(105')を備えることを特徴とする請求項15に記載の送達のための送達システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の具体的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、多数の異なる形態で具現化することが可能であり、本発明を、本明細書に記載の実施形態に限られると解釈してはならず、むしろ以下の実施形態は、本明細書の開示が
詳細かつ完全なものとなり、当業者に本発明の技術的範囲を充分に伝達するように提供されている。添付の図面に示される実施形態の詳細な説明において使用される専門用語は、本
発明を限定しようとするものではない。図面において、類似の構成要素は、類似の番号で
指し示されている。
【0016】
以下の説明は、医療送達システムに適用可能な本発明の実施例、とりわけ、弁輪形成用インプラントの送達のための医療送達システムに焦点を当てている。
【0017】
図1及び2には、弁輪形成用インプラントの送達のための送達システム1の実施例が図示されている。送達システム1は交連部の位置を特定するための交連部位置特定装置10、及び、冠状静脈洞(CS)に一時的に挿入するための冠状静脈洞縮小手段を備えるとともに、活性化状態へと一時的に移行可能な変位手段301を有し、ここでは心臓弁の弁輪形状が、弁輪形成用インプラントによって保持される、修正形状(A’)に修正される(
図5b)。交連部位置特定装置は、延長部材13及びカテーテル12を備え、延長部材13は、心臓弁の少なくとも1つの交連部の位置の特定を目的として、カテーテル12に対して延伸可能である。交連部位置特定装置10及び冠状静脈洞縮小手段20を使用することにより、手術者は、容易及び迅速な方法で弁輪形成用インプラントを移植するための所望の場所を見つけ、同時に僧帽弁を小型化することができ、その結果、交連部位置特定装置の補助により適所にガイドされるインプラントにより、所望の形状の固定できる。上記は、弁輪形成用インプラントを僧帽弁の、より良好かつ確実な適合を提供し、それによって、弁機能を復元する際、患者の安全を高める結果となる。よって、相乗効果が得られるとともに、冠状静脈洞縮小手段によって提供される小型化は、交連部位置特定装置によって提供されるインプラントの正確かつ安定的な配置のおかげで(以下でさらに説明される)、さらに、交連部位置特定装置によって提供される弁構造の安定性及び改良されたインプラントの配置のおかげで、最適に使用されることが可能であることから、冠状静脈洞縮小手段は、生体構造を小型化する量をより制御可能とし、及び、ユーザによって限定可能なものとする。システム1は
図7でさらに図示されており、以下にさらに説明される。
【0018】
図8(及び
図7)に図示される実施例では、送達システム1は、インプラント送達回収装置30も備える。インプラント送達回収装置30を使用することにより、迅速かつ容易な方法で、僧帽弁の所望の位置に、弁輪形成用インプラントを配置することが可能であり、必要に応じて、弁輪形成用インプラントを再配置することも可能である。
【0019】
図10に図示される実施例では、送達システムは、僧帽弁に弁輪形成用インプラントを最終的に固定するためのステイプル手段40(stapling device、締結手段)をさらに備える。ステイプル手段40は、弁輪形成用インプラントの容易かつ迅速な固定を可能にする。
【0020】
送達システム1の個別の構成要素の更なる実施例が、以下に挙げられる。
【0021】
交連部位置特定装置(commissure locator device)
交連部位置特定装置は、近位端(proximal、基端)及び遠位端(distal、先端)を含むカテーテル12を備える。交連部位置特定装置10は、手術者側の端部(operator end)及び計測側の端部(measurement end)を備えるカテーテル12内部に、少なくとも部分的に配置された延長部材13をさらに備え、延長部材13の計測側の端部は、例えば患者の僧帽弁のような、心臓弁の少なくとも1つの交連部に並置されるカテーテル12の遠位端から延伸可能であり、弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズの選択に係る計測は、少なくとも、心臓弁に配置されたカテーテル12の遠位端から少なくとも1つの交連部までの、延長部材13の計測側の端部の延長長さに基づいている。弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズの選択に関する計測を行う交連部位置特定装置10を使用することによって、交連部位置特定装置10の手術者は、容易かつ信頼性の高い方法で、弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズを決定しやすくなる。
【0022】
本発明に使用されるカテーテル12は、よく知られたタイプのものであり、カテーテル12は、少なくとも、本発明に従った延長部材13を備えることが可能である。さらに、カテーテル12は、手術者により、心臓弁の位置で回転可能であり、及び/又は、体内又は体外の所望の位置から心臓弁の位置に向かって操縦する(steer)ことが可能である。
【0023】
ある実施例では、延長部材13は、カテーテル12内部に配置可能な、円筒状、円形、四角形又は長方形の基部を備えるロッド(棒)又はポール、及び/又は異なる長尺で細い部材である。ある実施例では、延長部材13は、カテーテル12から外部に向かって交連部の方向に垂直に延びるロッドである。別の実施例では、延長部材13は木の葉形のような半円形状であり、この半円形状は少なくとも1つの交連部の方向に向かい、少なくとも1つの交連部に配置されるばね動作(spring action)を有する。延長部材13の別の実施例では、延長部材13は少なくとも1つの交連部と並置される楕円円錐形を有する。実施例では、楕円円錐形は少なくとも1つの延長シート(薄板)で形成される。別の実施例では、楕円円錐形は複数の網状の、拡張した、又は織り合わせた形状の部材により形成される。
【0024】
別の実施例では、延長部材13は、少なくとも1つの交連部と並置されるカテーテル12内に回転配置される。別の実施例では、延長部材13はカテーテル12内に摺動自在に配置される。これらの配置により、延長部材13及びカテーテル12の容易な使用及び動作が可能となる。又は、この配置は、互いに独立した容易な使用及び動作を可能にする。
【0025】
延長部材13はチタン、ニチノール、ポリマー、炭素繊維、繊維など、カテーテル12及び心臓への使用に適した、適切な材料で作られており、いずれも中空ではない形態(solid form)であるか、又は網状、又はサンドイッチ構造の形式などである。延長部材13は、少なくともカテーテル12と同じ長さ、及び、カテーテル12から少なくとも1つの交連部までの長さである。好適には、延長部材13は、手術者側の端部で、カテーテル12の近位端によって操作するのに十分な長さであり、及び、カテーテル12の遠位端の計測側の端部でさらに延長するのに十分な長さである。すなわち、延長部材13は、手術者の使用時、カテーテル12の両端で、カテーテル12から外側方向へと延長する。
【0026】
別の実施例では、延長部材13は、延長部材13の計測側の端部が、カテーテル12の遠位端から外側へと延長するにとどまり、延長部材13の手術者側の端部はカテーテル12の近位端の位置に配置される。すなわち、延長部材13は、手術者の使用時、カテーテル12の遠位端で、カテーテル12から延長するのみである。操作が容易な延長部材13を使用することにより、手術者は、心臓弁のカテーテル12から少なくとも1つの交連部までの距離を計測し、弁輪形成用インプラントのサイズ及び/又は形状は、その距離を根拠とする。
【0027】
1つの実施例では、弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズに関する計測は、延長部材13の手術者側の端部で示される。延長部材13の手術者側の端部で弁輪形成用インプラントのサイズ及び/又は形状に関する計測が示されることにより、手術者はどの弁輪形成用インプラントを選択すべきか、迅速かつ容易に、視覚的に見ることができる。
【0028】
延長部材13の計測側の端部の別の実施例は、僧帽弁の各交連部に向かって分離可能な2つの部分a、bを備える。僧帽弁で交連部に向かって分離可能な2つの部分a、bを使用することにより、2つの交連部間の距離が即座に計測され、かつ、2つの分離可能な部分a、bを使用せずに延長部材13を使用する場合よりも速く計測される。
【0029】
別の実施例では、2つの分離可能な部分a、bは、カテーテル12から延長するとき、カテーテル12の近位端の方向に沿って延長する平面上に位置合わせする。2つの分離可能な部分a、bを、カテーテル12の方向に平行する平面上に位置合わせし、且つ延長させることにより、2つの部分a、bは、カテーテル12の方向に共通した位置合わせ(shared alignment、整合)のおかげで、制御しやすくなるであろう。延長部材13の分離可能な部分a、bは、bにおいて、カテーテル12に対して垂直に分離されることができる。
【0030】
さらに、別の実施例では、2つの分離可能な部分a、bは、反対方向に傾斜する分離角度で分離する。2つの分離可能な部分a、bを、反対方向に傾斜する分離角度で分離させることにより、2つの分離可能な部分a、bは交連部の方向に外向きに、同一の距離で延長する。従って、同期化された延長のおかげで2つの交連部を並置させることがより容易となる。
【0031】
1つの実施例では、2つの分離可能な部分a、bは延長部材13の一体化した連続から成る。2つの分離可能な部分a、bを延長部材13の一体化した連続とすることにより、2つの分離可能な部分a、bは、手術者によって実施される、延長部材13の回転及び/又は延長などの操作に対して、より良好に反応する。さらに、延長部材13及び2つの分離可能な延長部分が一体として製造されるため、延長部材13の製造要件が各段に減る。1つの実施例では、延長部材13と2つの分離可能な部分a、bは、互いに依存したサイズ及び/又は形状をしているため、2つの分離可能な部分a、b及び延長部材13の、耐折損性の向上及び/又は回転力の向上といった力学的側面は各段に改善される。
【0032】
あるいは、2つの分離可能な部分a、bは、延長部材13の計測側の端部に接合される。2つの分離可能な部分a、bを延長部材13の計測側の端部に接合させることにより、当該部分は延長部材13とは異なる材料で製造されてもよく、従って、曲げ、回転及び/又は生体適合性に関する別の材料特性を有することができる。
【0033】
別の実施例では、延長部材13は、C字型又は鉤爪形状の端部をさらに備える、2つの分離可能な部分a、bを備える。この鉤爪形状の端部は、少なくとも1つの交連部で位置合わせされるとき、弁尖の端部を包含するに足る大きさであり、その結果、延長部材13は、少なくとも1つの交連部でさらに固定される。
【0034】
1つの実施例では、交連部位置特定装置10は、延長部材13に課される操作に係る力(manoeuvre force)を検出するための、延長部材13に結合された力検出装置をさらに備える。延長部材13に課される操作に係る力を検出するための力検出装置を使用することにより、延長部材13が少なくとも1つの交連部と並置される、又は接触しているとき、より信頼性の高い数値表示を得ることが可能である。
【0035】
延長部材13のさらなる実施例では、延長部材13の計測側の端部は、弁輪形成用インプラントのために、少なくとも1つの交連部でアンカーを取り付ける定着手段を含む。あるいは、1つのアンカーが1つの交連部に取り付けられる。弁輪形成用インプラントのために、アンカーを取り付ける定着手段を備える延長部材13を有することにより、少なくとも1つの交連部の位置を検出するとともに、位置の特定に続いて交連部にアンカーを取り付けることが可能となり、その結果、弁輪形成用インプラントが固定可能となる。上記により、少なくとも1つの交連部が発見され、弁輪形成用インプラントのサイズ及び/又は形状が選択された後、弁輪形成用インプラントを迅速に配置することが可能となる。本実施例では、定着手段は、鉤爪又はアンカーを把持できる同等物である。
【0036】
1つの実施例では、
図1bに見られるように、アンカーは少なくとも1つのガイド装置8を備えている。アンカーとして、少なくとも1つのガイド装置又はリングを使用することにより、好適にはらせん状リングの弁輪形成用インプラントは、アンカーを使用して心臓弁の所定の位置に向かって回転する。例えば、アンカーとしてリングを使用する場合、弁輪形成用インプラントは、弁輪形成用インプラントを交連部に固定するリングに挿入され、及びその中を滑動する。ある実施例では、アンカーは心房に配置され、らせん状リングの上部を掴み、ガイドする。別の実施例では、アンカーは心室に配置され、らせん状リングの下部を掴み、ガイドする。さらに別の実施例では、アンカーは心房及び心室の両方に配置され、らせん状リングの両方の部分、及び弁輪の一部をつかむ。上記は、らせん状リングが、交連部の異なる進入箇所から異なる経路で定着させることを可能にし、適切な場所にらせん状リングを安定させる。
【0037】
上述のとおり、1つの実施例では、定着手段は、少なくとも1つの交連部における弁輪形成用インプラントのためのガイド、すなわちガイド手段として使用されるアンカーを備える。別の実施例では、代替的に、及び/又は追加的に、アンカーは、アンカーが少なくとも1つの交連部に配置される前に、少なくとも1つの交連部で弁輪形成用インプラントをガイドする手段として使用される。上記により、ユーザが、交連部位置特定装置10が少なくとも1つの交連部に配置されているとき、交連部位置特定装置10を除去することなく、弁輪形成用インプラントの正しいサイズを計測すること、及び、弁輪形成用インプラントを容易な方法で所定の位置にガイドすることのいずれをも可能にし、同時に、少なくとも1つの交連部でアンカーが付着するのを防ぎ、従って、患者の体内に弁輪形成用インプラントを配置する時間を低減する。この実施例では、ガイド手段は一般に開口形状をしているか、又はC字型をしている。このような形状により、弁輪形成用インプラントは、ガイド手段が少なくとも1つの交連部で付着することなく、心臓内の所定の位置にガイドされることが可能となる。さらに、弁輪形成用インプラントが患者の体内に埋め込まれた後、C字型の開口部を介してガイド手段が取り除かれるのを可能にする。このように、延長部材13は、インプラントを所定の位置にガイドするために、一般に開口形状であるか、C字型のガイド手段を備えることができる。使用可能なその他の形状は、図aに示されるように、実質的にループ構造、三角形状、リング状であるか、弁輪形成用インプラントを所定の位置にガイドできる、及び/又は弁輪形成用インプラントが心臓内に埋め込まれたとき、ガイド手段を取り除くことができる、その他の適切な形状である。延長部材13は、交連部に配置される、延長部材13の2つの外側部のそれぞれにガイド手段を有していてもよい。
【0038】
延長部材13のさらなる実施例では、延長部材13の計測側の端部は1つの一貫した部材として成形及び/又は形成されている。よって、延長部材13は連続する単一の、又は一体のループ構造、すなわち閉構造として形成されてもよい。一体の閉構造に形成された延長部材13を使用することにより、部材は構造上、格段に安定性を増し、心臓内での操作がより容易となる。さらに、連続するループ構造は、生体構造のとりわけ効果的な安定性を提供するとともに、インプラントが弁に配置される際の正確性を向上させる。さらに、連続するループ構造は、突起部、縁部、ねじれなどがある場合にリスクとなる可能性のある心臓内の腱による、好ましくない干渉を最小限に抑える。延長部材13は、カテーテル12の遠位端から外側に湾曲する遠位部を有する連続するループ構造を含んでいてもよい。かかる湾曲形状は、滑らかな形状のおかげで、腱を傷めるリスクをさらに低減する。図aの実施例では、遠位部分は、延長部材13の2つのガイド手段をつないでいる(bridge)。非侵襲的延長部材13は、弁を効果的に安定させると同時に、一方でインプラントのためのガイド手段となる。使用及び使用モードの原則は、本出願に記載される延長部材13の他の実施例と同じである。したがって、計測、展開(expansion)、材料などは同じであり、同様に動作するものである。
【0039】
別の実施例では、延長部材13は
図1aに図示される弁尖リミッタ(leaflet limiter)9を備える。弁尖リミッタは一貫した延長部材13にのみ使用を制限されるものではなく、本出願にて開示される、別のタイプの延長部材13も弁尖リミッタを有していても良い。弁尖リミッタは、例えば逸脱(prolapse)といった、弁尖が心房に入り込む異常な動作を制限する。かかる異常な動作は、通常、弁尖の動作を制限する腱又は複数の腱が完全に破壊され、弁尖が左心房及び/左心室に自由に移動してしまう場合に発生する可能性がある。弁尖リミッタは延長部材13とともに拡張する材料でできており、延長部材13と同じ材料でできていてもよい。弁尖リミッタは、カテーテル12の中に曲げられ、ねじ込まれ、又は折り畳まれ、次いでカテーテル12から放出されたときに所望の形状をとる仕様であってもよい。あるいは、弁尖リミッタは、延長部材13とともにカテーテル12から脱出する時、ばねの復元運動及び/又は復元力によって拡張される。
図1aに図示される弁尖リミッタの実施例は、延長部材13の2つの定着位置の間に延長するクロスバーであり、延長部材13の定着位置の交差面から横方向に突出している。弁尖リミッタは一体であってもく、又は複数の部品から形成されていてもよく、及び/又は多数の異なる形状を有していてもよく、及び/又は様々な配置を有していてもよい。弁尖が心房への動きを妨げる場合に、弁尖を制御するが損傷を与えない形状の1つの実施例は、鈍端を有し、延長部材13から弁尖に向かう、外側方向の単純な直進する突起(straight projection)であろう。これは、弁尖が心房への動きを妨げるとき、弁尖を制御するが損傷を与えない。好適には、延長部材13が交連部に取り付けられるとき、延長部材13は2つの弁尖リミッタを有するとともに、各弁尖リミッタにつき、延長部材13の各側の1つを有する。ただし、1つの弁尖リミッタのみを有してもよい。これは、弁輪形成用インプラントのサイズを計測、及び/又は決定する手順を開始したときに、1つの弁尖がすでに損傷していることが分かっている場合に該当する。
【0040】
本発明に従った実施例では、弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズの選択を容易にする方法が開示されている。本方法は、上述のとおり、弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズの選択を容易にする交連部位置特定装置10のような、交連部位置特定装置10を提供する工程を含む。本方法は、患者の心臓弁に、交連部位置特定装置10のカテーテル12の遠位端を、好適には侵襲性を最小限としながら配置する工程をさらに含む。本方法は、延長部材13の計測側の端部を、カテーテル12の遠位端から延長し、計測側の端部を前記患者の僧帽弁などの心臓弁の少なくとも1つの交連部と並置するように至らせる工程をさらに含む。また、本方法は、弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズについて、カテーテル12の遠位端から少なくとも1つの交連部までの、少なくとも延長部材13の延長された長さを根拠とする工程を含む。カテーテル12及び延長部材13を備え、弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズの選択を容易にする交連部位置特定装置10を使用することにより、弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズに基づいて、カテーテル12の遠位端の相対的な位置からの、延長部材13の延長を容易にすることが可能である。
【0041】
1つの実施例では、カテーテル12は心臓弁の実質的に中央位置に配置される。次いで、手術者が、延長部材131をカテーテル12の近位端から、カテーテル12を通り、カテーテル12の遠位端へと押し出すことにより、延長部材13はカテーテル12の遠位端から延長される。延長された延長部材13の計測側の端部は、交連部に位置するか、交連部と並置されるか、交連部に接触する。
【0042】
延長部材13の配置は、例えば、延長部材13をカテーテル12に対して回転する、延長部材13をカテーテル12内部で摺動するといった、数多くの方法によって実施され、また、延長部材13の配置は、カテーテル12と延長部材13の同期運動、及び/又は、延長部材13とカテーテル12が係合し、その結果、カテーテル12の動作が実施されるとき、延長部材13がカテーテル12と同様に動くとされる、カテーテル12及び延長部材13の同期運動によって実施される。
【0043】
手術者は、実質上中央位置から交連部までの、延長部材13の延長された長さで、弁輪形成用インプラントのサイズ及び/又は形状の計測値を得る。1つの実施例では、延長された長さは、弁輪形成用インプラントの半径の基準として使用される。別の実施例では、心臓弁は延長部材13の延長された長さと対称関係にある、という前提が、弁輪形成用インプラントの幅の基準として使用される。
【0044】
弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズの選択を容易にする方法の別の実施例では、弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズの基準は、延長部材13の計測側の端部をカテーテル12から2つの交連部まで延長することによって計測された、心臓弁の2つの交連部の間の弁の幅に基づく。2つの交連部の間の距離に基づく弁輪形成用インプラントの選択により、1つの交連部のみを使用する場合と比較して、さらに適合する弁輪形成用インプラントがもたらされる。1つの実施例では、2つの交連部の間の幅は、1つの交連部から別の交連部に、延長部材13を動かす(sweep、掃引する)ことにより計測される。
【0045】
別の実施例では、交連部の方向に分離可能な、延長部材13の2つの分離可能な部分a、bを配置することにより、2つの交連部の間の幅が計測される。交連部の方向に分離可能な、2つの分離可能な部分a、bを備える延長部材13を使用すると、結果として、現在知られている方法で行うよりもより正確かつ迅速に、交連部間の幅が計測される。2つの分離可能な部分a、bを備える延長部材13を使用することにより、交連部間の幅を計測するとき、手術者は心臓弁にカテーテル12を配置し、延長部材13を延長する。2つの分離可能な部分a、bは、手術者が延長部材13を、カテーテル12の近位端からカテーテル12を通過して押し込むことにより、それら2つの部分がカテーテル12の遠位端を通過するときに、交連部に向かって外向きに分離する。延長部材13の押された距離に応じて、つまり、延長部材13及び2つの分離可能な部分a、bの延長された距離に応じて、交連部の幅が把握される。2つの分離可能な部分a、bの分離は、好適には予め定められた角度で行われ、及び/又は、交連部の間の幅を計測するとき、予め定められた角度で確定する。カテーテル12からの延長部材13の延長は、カテーテル12の近位端から、及び/又は、近位端で、カテーテル12の側壁を通って、など、幾つかの方法で実施されることができる。
【0046】
1つの実施例では、本方法は、延長部材13に印加される操作の力(manoeuvre force)を計測する一方で、計測側の端部を少なくとも1つの交連部に並置するように操作する工程と、計測された印加操作強さに基づき、計測側の端部が少なくとも1つの交連部に並置されたときに表示する工程をさらに含む。手術者によって延長部材13に印加された操作強さを計測することにより、少なくとも1つの交連部の検出時の表示が、延長部材13による接触性表示(tactile indication)を使用するよりも、より信頼性の高い形で実施される。印加される操作力の計測は、例えば力検出装置で計測されてもよい。
【0047】
1つの実施例では、力検出装置が使用される場合、その力検出装置は、計測側の端部が少なくとも1つの交連部と並置されたとする表示を動作させることを目的とした計測された印加操作強さを、所定の交連部値と比較することにより、少なくとも1つの交連部と並置したとする表示を基準として用いる。
【0048】
弁輪形成用インプラントの形状及び/又はサイズの選択を容易にする方法の別の実施例では、表示は、2つの交連部の間で延長部材13を伸張させるための、計測された力に基づく。2つの交連部は、心房内の他の組織と比較して、柔軟性において差異があるため、延長部材13を2つの交連部に向かって外側方向に延長及び/又は伸張するのに必要な力を計測することにより、2つの交連部がいつ見つかったのかを検出することができる。
【0049】
さらに別の実施例では、方法は定着方法を含む延長部材13の使用により、少なくとも1つの交連部で、少なくとも1つのアンカーを定着する工程を含む。延長部材13の使用により、少なくとも1つの交連部で、少なくとも1つのアンカーを使用することにより、手術者は、弁輪形成装置のアンカーを1回で取り付けることができ、同じ装置を用いれば、アンカーを取り付けるための第2の道具を使用する必要がある場合に比べて時間を短縮できる。1つの実施例では、定着手段は、アンカー又はガイド手段を含み、ガイド手段は、少なくとも1つの交連部で弁輪形成用インプラントをガイドするために使用される。別の実施例では、アンカーは、アンカーが少なくとも1つの交連部に取り付けられる前に、少なくとも1つの交連部で弁輪形成インプランドをガイドする手段として、代替的に及び/又は追加的に使用される。これにより、ユーザが、弁輪形成用インプラントの正しいサイズを計測すること、及び、交連部位置特定装置10が少なくとも1つの交連部で配置される場合に、交連部位置特定装置10を取り除くことなく、容易な方法で所定の位置にガイドすることのいずれもが可能となり、同時に、少なくとも1つの交連部でアンカーが付着するのを避けることが可能となり、このようにして、患者に弁輪形成用インプラントを配置する時間を短縮する。この実施例では、ガイド手段はC字型であることが好ましい。C字型は、ガイド手段が少なくとも1つの交連部に付着することなく、心臓内の所定の位置に弁輪形成用インプラントをガイドさせ、弁輪形成用インプラントが患者に移植された後、C字型の開口部を介してガイド手段を取り除くことを可能にする。使用可能な他の形状は、ループ構造、リング状、又は弁輪形成用インプラントを所定の位置にガイドでき、及び/又は弁輪形成用インプラントが心臓内に移植されたとき、ガイド手段を取り除くことが可能な、その他の適切な形状である。
【0050】
送達回収装置(Delivery and retrieval device)
医療用インプラントの送達回収装置30が、
図7から
図9に図示されている。当該装置はシース(sheath、被覆部材)101と、遠位端103を有し、且つシース101の内腔104でシースの長手方向105に移動可能なワイヤ102と、を備える。
図9aから9bに示されるように、遠位端103は、医療用インプラント200の相補的な突き合わせ面108を受容し、かみ合わせる(interlock)ための固定構造部(locking structure、ロック構造部)を備える。固定構造部107は、インプラント200が固定構造部107に受容されるとき、長手方向105、すなわち縦軸105の周囲でインプラント200の回転動作を抑制する(ロックする)ように、(
図8において破線矢印で示される)第1の半径方向(R)に位置合わせされる第1のロック面109を備える。固定構造部107は、第1の半径方向(R)とは異なる、第2の半径方向(R’)に向くように位置合わせされた、第2のロック面110を備え、インプラント200が固定構造部107で受容されるとき、インプラント200の長手方向に対して横断する方向(横断方向)の動作を抑える。このようにして、第2のロック面110は、インプラント200の、例えば第2の半径方向(R’)の直角方向の動作を阻止し、その一方で、第1のロック面109は、インプラントが軸105周囲を回転するのを妨害する。インプラント200は、装置100の第1のロック面109及び第2のロック面110と対向して、すなわち平行に配置される、第1のロック面209及び第2のロック面210を備える相補的な突き合わせ面108を有する。異なる半径方向に向く2つのロック面109及び110を有することにより、インプラントの操作時、位置を変えることなく、インプラント200は装置100によって所定の位置に効率的に保持されることができる。例えば、第1のロック面109のおかげで、トルクがワイヤ102からインプラント200へと効率的に伝送され、一方で、インプラント200を縦軸105に対して直角方向、例えば半径方向に固定する第2のロック面110のおかげで、インプラント200は、縦軸105に対して中央位置に、すなわち軸105に対して同軸位置に、確実に保持されることができる。上記は、ワイヤ102に対する望ましくない動作を生ずることなく、インプラント200がワイヤ102に対して適切に確定された固定位置に保持されることから、インプラント200の向上した操縦性を提供する。第2のロック面110は、縦軸105に対して直角な、幾つかの方向の位置に固定すること、すなわち、第2のロック面110の方向を向いた角度を有する、つまり、第2のロック面110に平行ではない、あらゆる直角方向の位置に固定することを提供する。半径方向のインプラントの位置は、例えば、方向(R’)又はその他の直角方向に、縦軸105に向かう半径方向のベクトル成分を用いて制御できるため、第2のロック面110は、手術中に再配置又はその他の調節が必要となった場合に、インプラント200の確実な回収を提供する。インプラントを取り除くため、又は、上述のように、単にインプラント200を縦方向のロック位置に保持するために、半径方向に位置を固定することにより、インプラント200をシース101に向かって容易に引き抜くことが可能となる。この実施例では、第2のロック面110によって提供されるように、インプラント200の位置が第2の半径方向に固定されていない場合、インプラント200をシース101に向かって引き抜くことはより困難であるか、不可能であろう。ここで注目すべきは、第1のロック面109は、インプラント200の回転動作を防止することとは別に、インプラント200の半径方向の動作を阻止することであり、この半径方向は、第2のロック面110が動作を阻止する(第2の)半径方向とは異なる。本発明の半径方向は、縦軸105の周囲0°から360°のあらゆる角度を有する方向として解釈されるべきである。例えば、第1のロック面109が0°の半径方向(R)を向いて並ぶ場合、第2のロック面は、
図8で例示されるように、90°の半径方向(R’)を有するように並んでいてもよい。
【0051】
固定構造部107は、相補的な突き合わせ面108とかみ合うように構成されるくぼみ106を含んでもよく、固定構造部107において長手方向105に沿って受容されるとき、インプラント200の長手方向の動作を抑える。くぼみ106は相補的な突き合わせ面108の対応する突起とかみ合い、縦軸105に沿ってその位置を固定する。上記は、手術中、インプラント200を正確に送達、操作、及び、場合によっては回収するために、装置100でのインプラント200の配置を、より高度に制御する。くぼみ106は、インプラント200をシース101に引きこませる。固定構造部107は、固定構造部がシース101の外側に延長するとき、相補的な突き合わせ面108を受容するように配置されてもよく、及び、固定構造部がシ−ス101内に格納されるとき、固定構造部107は、相補的な突き合わせ面108とかみ合い、インプラント200の位置を固定構造部107に対して固定するように配置されてもよい。したがって、シース101は、引き抜かれた位置にあるとき、半径方向のインプラント200の動作を制限する。この状況において、インプラントは延長された位置で固定構造部107に受容される。
【0052】
第1の半径方向(R)及び第2の半径方向(R’)は実質的に垂直であってもよい。上記により、第1のロック面109及び第2のロック面110は、どの表面に対しても平行ではないあらゆる半径方向のベクター成分における動作を互いに制限するように補完するため、インプラント200とのより最適なロック係合を提供することができる。仮に、非垂直のロック面109及び110も、あらゆる角度の動作を対象とするとしても、垂直方向の配置は、固定構造部107と、インプラント200の相補的な突き合わせ面108との間の結合をより容易にすることができる。第2の半径方向(R’)は、第1の半径方向(R)及び縦軸105の両方に対して垂直であってもよい。ただし、第2のロック面110も、例えば、表面110が固定構造部107のテーパの遠位端の一部であるように、縦軸に対して角度を有するように、角度を形成してもよい(図示されず)。遠位端がインプラント200に向かってテーパである場合、固定構造部107の遠位部分へのインプラント200のガイドが、より容易となり得る一方で、同時に、上述のようにかみ合わされるときには、横向きの動作を抑える。代替的に、又は追加的に、第2の半径方向(R’)は、第1の半径方向(R)に対しあらゆる角度を有することができる。
【0053】
固定構造部107は、半径方向の相補的な突き合わせ面108を受容するように、半径方向に外側に向かって開口されていてもよい。上記により、インプラントは側面から接近し、半径方向に内側に向かってガイドされるため、インプラント200との都合の良いかみ合いが可能となる。
【0054】
第1のロック面109及び/又は第2のロック面110は実質的に平坦であってもよい。それゆえ、固定構造部107によりインプラント200の制御された固定を提供する。一方で、固定構造部107とインプラント108は、位置合わせされるべき最小限の結合部分を有し、これは突き合わせをより容易とし、とりわけ、インプラント200のその後の復旧が必要となる。
【0055】
代替的に、又は追加的に、第1のロック面109及び/又は第2のロック面110は湾曲しているか、又は湾曲部分を含むことができる。ロック面は正弦曲線形状であってもよい。ただし、凹型又は凸型、あるいはその組み合わせであってもよい。この実施例では、インプラント200は対応する相補的な曲線形状を有する。曲線部分の表面は変動する半径方向を指し示す正常方向(曲線の接線に対して垂直)を有する。
【0056】
第1のロック面109は第2のロック面110と連続していてもよい。かみ合った状態で配置されるときに、インプラントが沿うべき滑らかな経路がある場合、インプラント200を容易に捕獲及び回収できる。連続するロック面は、インプラントを所定の位置に摺動させる一方で、幾つかの方向には動かないように抑制する。第1のロック面109及び第2のロック面110は、長手方向105に重なっていてもよい。上記により、使用及び製造がより容易な、単純化された固定構造部108が実現可能となる。したがって、第1のロック面109及び第2のロック面110は単一の表面をなしてもよい。
【0057】
第1のロック面109及び第2のロック面110は、長手方向105に向かって、互いに距離(D)を置いてずらして配置されてもよい。上記により、インプラント200が各ロック面109、110で、長手方向105に沿ってロックされるため、長手方向105に安定性が増す。よって、偶発的に長手方向105に対して角度をつけるためにより大きな力が必要とされる場合がある。
【0058】
第2のロック面110は、第1のロック面109内のくぼみであってもよい。くぼみは第1の半径方向(R)とは別の第2の半径方向(R’)を向いた表面を有するであろう。結果的に、くぼみは、回転動作、及び、インプラント200の対応する合わせ面、すなわち突起とかみ合うとき、長手方向105に対する横方向の動作を阻止する際に効果的である。代替的に、又は追加的に、第2のロック面110も第1のロック面109における突起であってもよい。
【0059】
ワイヤ102は閉位置及び開位置を有する旋回可能なロック部(locking portion)を備えることができる。旋回可能なロック部の閉位置は、固定構造部107に受容されるとき、インプラント200の動作を半径方向で抑制する。半径方向は第1の半径方向(R)であってもよい。第1のロック面109が第1の半径方向(R)に向いているため、インプラント200の位置を、第1のロック面109に対して正常方向に固定することが望ましいことがある。上記により、インプラント200が、シース101内部に固定構造部107を格納する必要なく、すべての方向に固定される。さらに、旋回可能なロック部113は、回収される予定である場合、インプラント200を把持してもよい。このことは、シース101内部のインプラントを回収する前に、インプラントを係合し、インプラント200を正しい位置に固定することを容易にすることができるか、又は、標的部位で再配置される前に、インプラントを安定的に保持することを容易にすることができる。旋回可能なロック部が、第2の半径方向(R’)又はその他のあらゆる半径方向で位置をロックされるように配置されてもよい。旋回可能なロック部は、ワイヤ上で旋回軸周囲を回転するように取り付けられてもよい。また、角度をつけて、閉位置及び開位置の間で移動される、分離したロックワイヤ(図示されず)に係合されてもよい。1つの構成では、ロック部は、くぼみが付された固定構造部を有し、当該固定構造部は、第1のロック面、及び、インプラントの相補的な突き合わせ面と係合する第2のロック面を備える。このように、ワイヤの遠位端にロック面を有する代わりに、ロック面が旋回可能なロック部に備えられてもよい。インプラントを受容するワイヤの遠位端は、例えば、インプラントの対応する筒状部分を受容する部分的な筒状部分といったくぼみを有していてもよい。上記は、インプラントが、旋回可能なロック部によって所定の位置にロックされる前に、容易にワイヤと係合することを可能にする。代替的な配置では、第2のロック面は省略されてもよい。旋回可能なロック部の第1のロック面は、インプラントとかみ合い、長手方向に位置を固定するとともに、インプラントの回転動作を阻止する。一方で、部分的に筒状の部分といったワイヤのくぼみは、長手方向に向かって横向きの方向、例えば、長手方向に対して垂直方向、及び第1の半径方向(R)の、インプラントの動作を阻止する。上記は安定性を保ちつつ、インプラントの固定を容易にすることができる。
【0060】
医療用インプラントの送達回収装置100は、インプラント200が固定構造部107から離脱される際、固定構造部107及びインプラント200に結合する回収要素(図示されず)を備えることができる。よって、回収要素は、インプラントを固定構造部107の方向に適宜回収するために係合できる防護ワイヤ(security wire)として機能することができる。上記により、固定構造部107に向かってインプラント200を容易にガイドし、手術の安全性を高めることができる。
【0061】
代替的又は追加的に、固定構造部107は、磁石のような力でインプラントを付着させる要素(図示されず)を備えてもよい。また、磁力は、インプラント200を固定構造部から容易に取り外すことができるオフ状態に移行可能であってもよい。また、インプラントは、固定構造部107の内腔内で移動可能なプッシャー(図示されず)で、磁石から押し離されてもよい。さらに、インプラントは、磁石によって捕獲された後、再度インプラント200を係合から外すために、脱出し、及び遠位端を超えて延長してもよい。かかるプッシャーを固定構造部の中に挿入することで、第1及び第2のロック面は、インプラント200との係合が外されてもよい。
【0062】
シース101は、インプラント200の改良された送達及び/又は回収の角度を可能にするように操縦可能であるか、又はそのように成形されてもよい。その結果、インプラント200は、より容易かつ正確に配置される。シース101は、その遠位端を、定められた角度で配置するための三次元経路に沿って延長する送達構造を有することができる。よって、シース101は、弁輪形成リング又はらせんなどのインプラントの配置を最適化するような、所望の曲線となることができる。その結果として、インプラント200が送達される角度は平坦であり、弁に対してほぼ平行でもよく、インプラント200がシース101を脱出するとき、インプラント200の正確な配置、及び容易な挿入が可能となる。インプラント200は、ニチノールのような可撓性合金で形成されてもよい。インプラント200は、シース又はカテーテル101を脱出するときに所望の形状をなすように、熱処理によって予め形成されてもよい。さらに、インプラント200は、その遠位端で、部分的な球面部のような非侵襲性先端(atraumatic tip)を備えてもよく、組織を損傷することを回避する。
【0063】
医療用インプラントの送達回収装置100、及び弁輪形成リング又はらせんといった弁輪形成用インプラント200を備える1つの実施形態に準じたキットが開示されており、弁輪形成用インプラント200は、その端部に、医療用インプラントの送達回収装置100の固定構造部107をかみ合わせるための相補的な突き合わせ面108を備える。
【0064】
1つの実施形態に従い、例えば、長手方向105に沿って延長する、医療用インプラントの送達回収装置100の固定構造部107にかみ合わせるための、端部の相補的な突き合わせ面108を備える、弁輪形成リング又はらせんなどの、弁輪形成用インプラント200が、
図9aから9bに開示されている。突き合わせ面108は、第1の半径方向(R)に並ぶ第1のロック面209を備え、インプラント200が固定構造部107で受容されるとき、その回転動作を、長手方向105の周囲で抑制する。突き合わせ面108は、第1の半径方向(R)とは異なる、第2の半径方向(R’)に向くように並んだ第2のロック面210を備え、インプラント200が固定構造部107に受容されるとき、長手方向105に対する横断方向(横軸方向)の動作を抑制する。相補的な突き合わせ面108は、装置100の固定構造部107について上述されるような形状を反映して成形されることができる。
【0065】
本発明の実施例に従ったインプラントの配置及び/又は回収システムが、
図7aにさらに図示されている。カテーテル12’は近位端及び遠位端を有し、カテーテル12’は心臓弁に隣接した心臓部分内に配置可能であるように構成される。システムは、カテーテル12’の遠位端に配置された結合手段3をさらに備え、結合手段3は、心臓内の既知の方向(known direction)にカテーテル12’を結合し且つ位置合わせするための、少なくとも1つの予め定められた心内構造物(cardiac structure)に係合するように構成された結合部材を備える。結合手段3は、交連部の固定及び/又は安定化を目的とした交連部の位置特定及び配置に関して、上述のように、延長部材13を有する交連部位置特定装置10を備えることができる。カテーテル12’は、少なくとも1つの、角度がついたサイドポート(側壁口、side port)4をカテーテル12’の近位端と遠位端の間に有してもよい。サイドポート4は、カテーテル12’の内部からカテーテル12’の外部へと、あるいはその逆方向に通過する、例えばインプラント200(図示されず)のようなインターベンション装置に適応している。また、サイドポート4は、心臓内の所望の標的部位Aへのインプラントの操縦に適している。よって、インプラント200を保持する送達回収装置30は、サイドポート4を通過することができる。少なくとも1つの、角度がついたサイドポート4を備えるカテーテル12’、及び、その遠位端に結合手段3が配置されたカテーテル12’を使用することにより、結合手段を使用して、カテーテル12’を、心臓内の心内構造物に対して位置合わせ及び定着することが可能である。インターベンション装置は、角度の付いたサイドポートを通じて配置及び/又は回収され、その際、心臓内の好ましい標的部位Aに、高い正確性を以て到達及び/又は的中する。かかるインターベンション装置は、縫合装置、ステイプル手段40(
図10)、高周波電極、吸引装置、装置30(
図8)のような把持又は送達装置、弁輪形成用インプラント200、及び/又はインターベンション心臓手術で使用される他の工具からなる群から選択されてもよい。1つの実施例では、インターベンション装置に直接アクセスするために、追加のポート6がカテーテル12’の遠位端に配置される。
図7bを参照のこと。
図7bのカテーテル12’は、工具又はインプラントの配置又は送達のための、角度の付いた2つのサイドポート4及び4’を有する。適用に応じて、いくつのサイドポートが使用されてもよい。
【0066】
結合に使用することのできる心内構造物は、心房壁、心房中隔、弁輪、弁尖、弁交連部、弁の腱(valve chordae)、乳頭筋及び心室壁を含む。好適には、心臓弁の少なくとも1つの交連部が使用される。交連部は、心臓壁から突出し、弁尖の間でくさび形状をしており、操縦システムを既定の方法で位置合わせさせることができることから、交連部を使用することで、操縦システムの位置合わせ及び固定を目的とした、心臓内で容易に到達できる、及び認識できる構造の使用が可能となる。
【0067】
1つの実施例では、少なくとも角度がついたサイドポートは、心臓内の心内構造物に向かって角度が付されている。カテーテル12’及び心内構造物は、カテーテル12’及び結合手段が心臓に位置合わせ及び定着されるとき、互いに同調して移動するため、心内構造物の対象Aの方向にサイドポートの角度をつけることにより、インターベンション装置は容易かつ高精度で、この標的Aに対して操縦及び的中されよう。
【0068】
システム1の別の実施例では、角度がついたサイドポートは結合手段に向かって角度がついている。結合手段に向いた方向にサイドポートの角度をつけることにより、インターベンション装置は高精度かつ容易に結合手段に的中し、次いで、結合手段はインターベンション装置に移動し、さらに、標的部位への直接の経路の障害物が原因となり、カテーテル12’からの到達が容易ではないインターベンション装置を配置及び/又は回収する。代替的に、対象の解剖構造が結合手段と接触状態にあるとき、結合手段でのインターベンション装置の操縦は、より容易である。さらに別の実施例では、角度がついたサイドポートは、標的Aが、配置及び/又は回収に使用されるインターベンション装置の形状に基づいて到達されるような角度になされる。角度がついたサイドポートに、配置及び/又は回収に使用されるインターゲンション装置の形状を適合させることで、インターベンション装置の好適な形状を変えることなく、特定の標的Aに的中することが可能となる。インターベンション装置の代わりにサイドポートを単純に適用することで、操縦システムと共に装置が「形にとらわれずに」使用されることが可能となる。
【0069】
1つの実施例では、カテーテル12’は少なくとも2つの内腔を含む。2つの内腔を有することで、インターベンション装置がカテーテル12’の内部の1つの内腔において移動するとき、角度のついたサイドポート付近で、容易にインターベンション装置をガイドすることが可能となる。よって、カテーテル12’の内部から外部へ、あるいはその逆方向に、インターベンション装置を容易に配置及び/又は回収することができる。
【0070】
インターベンション装置をサイドポートに案内する、さらに容易な方法の1つの実施例では、カテーテル12’の遠位端が少なくとも2つの内腔のうち1つに結合され、角度のついたサイドポートは、少なくとも2つの内腔のうち、他方の端部に結合される。少なくとも2つの内腔のうち1つの端部を、角度がついたサイドポートに結合させることにより、極めて容易な方法で角度がついたサイドポートに装置をガイドすることが可能となる。これは、内腔が曲がるか、又は内腔が、角度がついたサイドポートで終結するように構成され、その結果、装置が内腔の経路を進み、角度がついたサイドポートに到達するためである。
【0071】
1つの実施例では、角度がついたサイドポートを通って配置及び/又は回収されるインターベンション装置は、弁輪形成用インプラント200である。サイドポート4及び4’を使用することで、弁輪形成用インプラントの配置が容易になる。これは、角度がついたサイドポートの方向が把握されているとともに、弁輪形成用インプラントの形状が把握されており、これら両方の把握が、弁輪形成用インプラントを配置する対象である標的Aへの的中を可能にするためである。別の実施例では、上述のように、最初に結合手段が標的とされ、次いで、結合手段は、交連部11又は複数の交連部を通って、僧帽弁11’の所定の位置に弁輪形成用インプラント200を方向付けるために使用される。
図7cを参照のこと。
図7cの実施例では、弁輪形成200は、心室内の弁の下部に位置する下方リング200、及び、心房に位置する上方リング201を備えたらせんリングであり、その間に弁組織を捕捉する。
【0072】
1つの実施例では、結合手段は、カテーテル12’の遠位端で、カテーテル12’内部からカテーテル12外部まで延伸可能である。結合手段をカテーテル12’から延伸可能とする、すなわち、折り畳み可能かつ拡張可能とすることで、より用途の広い操縦システムのために、結合手段とカテーテル12’の間の関係を調節することができる。上記は、第1に、結合手段の定着及び位置合わせを実現するように、手術者によって結合手段がカテーテル12’の後に(after the catheter 12’)配置、操作され、次いで、第2に、カテーテル12’を所定の位置で固定する操縦システムの容易な構築を実現する。かかるロック機構は、カテーテル12’内部又はカテーテル12’外部の結合手段のあらゆる種類の突起であってもよく、当該突起は、カテーテル12’上の、対応する、内側に伸びるもの(ingrowth)と係合し、その結果、係合時に2つがロックされる。
【0073】
1つの実施例では、結合手段の結合部材は、半径方向に外側に配置され、心内構造物を係合する、伸張性ワイヤ3’を備える。
図7dを参照のこと。伸張性ワイヤを結合部材として使用することで、容易であるが堅固で確実な結合手段が実現される。
【0074】
別の実施例では、結合部材は、少なくとも1つの半径方向に拡張可能な上ループ(superior loop)及び少なくとも1つの半径方向に拡張可能な下ループ(inferior loop)を備え、ループが、例えば交連部位置特定装置30などを用いて、ループの間で心内構造物の一部を捕捉するために拡張位置にあるとき、上ループは心内構造物の上面に接触し、下ループは心内構造物の下面に接触する。結合部材を「砂時計」のような形状とすることで、カテーテル12’及び結合手段を定着及び位置合わせするために、例えば交連部のような心内構造物の形状に適合する、容易ではあるが効果的な結合部材を有することが可能となる。ステント、ケージ(cage)、スネア、スクリューなど、心内構造物の他の形状により適した、他のタイプの結合部材も使用される。
【0075】
本発明の別によると、少なくとも1つのインターベンション心臓装置の配置及び/又は回収方法が心臓手術で使用され、方法は、カテーテル12を心臓内に、心臓弁に隣接して挿入する工程を含み、カテーテル12’は遠位端及び近位端を有する。カテーテル12’の遠位端に配置された結合手段を設置するさらなる工程は、カテーテル12’を心臓内の既知の方向に結合し且つ位置合わせするために、少なくとも1つの、予め決められた心内構造物と係合するように構成された、結合部材を備える。方法は、さらに、カテーテル12’上の、少なくとも1つの角度がつけられたサイドポートを通って、少なくとも1つのインターベンション心臓装置を回収及び/又は配置する工程を備え、角度がついたサイドポートは、カテーテル12’の近位端と遠位端の間に位置する。カテーテル12’及び結合手段を位置合わせ及び定着するために、上述の方法を使用することにより、インターベンション装置を配置及び/又は回収する、容易、迅速、及び信頼性の高い手法が実現される。
【0076】
1つの実施例では、回収及び/又は配置は、カテーテル12’の少なくとも1つの角度がついたサイドポートを通って、第2のカテーテル12’によって実施される。第2のカテーテル12’を使用することで、所望の標的Aに的中するための直線軌道が使用される。
【0077】
操縦システムを用いた、心臓に進入するための様々な方法が取られてもよく、カテーテル12’の心臓への挿入は、経中隔的、経大動脈的及び/又は経心尖的に実施されることができる。
【0078】
図7は、交連部位置特定装置30と共に使用される、システム1の冠状静脈洞縮小手段20を図示している。システム1の上述の構成要素の相乗効果については、すでに説明されている。冠状静脈洞縮小手段20の構成要素は、以下に詳述される。
【0079】
1つの実施例では、上記の発明に従った、弁輪形成手術を実施する完全な手順は、この工程が実施される順番の制限なく、以下の工程を含む。すなわち、大腿静脈を通って隔壁装置を隔壁に挿入する工程、隔壁装置で隔壁を刺し、左心房へのアクセスを可能にする工程、僧帽弁輪を形成するための冠状静脈洞収縮装置(contracting device)を挿入する工程、冠状静脈洞収縮装置で僧帽弁輪を形成する工程、隔壁穿刺を介して、交連部位置特定装置及び拡張装置、又は上述の操縦システムを挿入する工程、左心房にらせんリングを配置する工程、らせんリングを、後交連部の配置を介して所定の位置に操縦する工程、らせんリングを僧帽弁に対して垂直方向に緊締する工程、及び、装置を取り除き、らせんリングを所定の場所に固定して残す工程を含む。弁輪形成用インプラントを配置する上記の方法を使用して、迅速、容易及び信頼性の高い手法が実現される。方法1000は、
図11を参照してさらに説明されている。
【0080】
冠状静脈洞縮小手段
冠状静脈洞(CS)は僧帽弁(MV)に隣接し、MVの弁輪(A)の周囲の湾曲に沿って進んでいる。
【0081】
図2及び
図3から6の冠状静脈洞縮小手段20は、弁に隣接する冠状静脈洞(CS)に一時的に挿入する変位手段(displacement unit)301を備え、変位手段は前記CSに送達するための送達状態(
図5a)及び、変位手段が一時的及び可逆的に送達状態から移行可能な活性化状態を有する。この変位手段は、近位の可逆的拡張可能部302、変位手段の長手方向304を向いた近位の拡張可能部に関して、弁輪の形状が修正形状(A’)に修正される活性化状態に移行可能な遠位の定着部303(結果として、
図6a−6bに見られるように、2つの部分302、303の間の距離(L)が低減される)(
図5b)、及び、修正形状が得られたとき、弁の弁輪によって、僧帽弁輪で恒久的に固定するための弁輪形成装置102(
図5b)を備える。弁輪形成装置102は修正形状を維持するようになされた固定構造部103を含む。遠位の定着部303を、近位の拡張部302に向かって長手方向に移動させることにより、CS及び弁輪の湾曲部の半径を減少できる。次いで、弁輪の修正形状は、変位手段101を取り除く前に、弁輪形成装置102によって固定される。先行技術のCSへの挿入のための装置は、恒久的な移植を目的としており、当該装置は、取り除かれること、又は、弁輪形成装置102と共に使用されるように構成されていない。その代り、先行技術の装置はセグメント化された装置の曲げにのみ注目している。変位手段301の長さの低減、及び、定着部303に対して対抗力を効果的に提供する近位の拡張可能部302を有することの組み合わせは、小型化効果を大きく向上させる。近位の拡張可能部がない場合、小型化をとりわけ困難にするであろう。システム300は、CSを介する弁の効果的な小型化、及び、それに続く、弁自体の弁輪への固定のおかげで、罹患した弁をより効果的に治療することを可能にする。近位の拡張可能部302及び遠位の定着部303はいずれも、シース310からの送達及び回収を目的に、可逆的に拡張可能である。
図6aを参照のこと。1つの実施形態では、遠位の定着部303及び/又は近位の拡張可能部302は、シース310へ容易に格納されるために、長手方向304に向かって旋回することができる。
図2を参照のこと。遠位アンカーはCSに挿入及び固定され、近位の可逆的拡張可能部302はシース310から延伸して開かれ、これにより小型化が実現され、次いで、シース310内に折りたたまれ、格納される。
【0082】
インプラント200は、活性化状態での一時的な活性化の後、変位手段の送達状態において、弁輪の修正形状を保持するように構成される。インプラント200は、弁尖の組織を挟むらせんリングであってもよく、修正形状を保持するためのらせんリングの固定は、ステイプル手段40によって行うことができる。
【0083】
長手方向304における、近位の拡張可能部302と遠位の定着部303の間の距離(L)は、変位手段301が送達状態から活性化状態へと切り替えられるとき、減少距離(L’)まで減じられる。
図6aから6bを参照のこと。遠位の定着部303はCSに固定されるため、近位の拡張可能部302と遠位の定着部303の間の距離を減じることは、結果として、弁を小型化するであろうCSの湾曲部半径を減少させることとなる。よって、変位手段301の湾曲部半径は、変位手段が送達状態から活性化状態へと切り替えられるときに減じられる。
【0084】
図4に示されるように、近位の拡張可能部302は、CSの入り口で組織壁305に対して配置するための拡張状態に、可逆的に折りたたみ可能であってもよい。上記は、弁の小型化をより高度に制御するために、遠位の定着部303に対する近位の拡張可能部302の位置を極めて安定的に固定する。近位の拡張可能部302は、CSそのものの内部ではなく、CSの入り口で側壁305に対して配置するように形成されても良く、及び、そのように構成されることができるため、CSが損傷するリスクを低減する。また、近位の拡張可能部302は、CS外部に位置されるため、CSのサイズによって拘束されず、よって、大部分にわたり力を分散する直径に向かって可逆的に拡張されることができ、従って、組織への圧を減少させる。また、上記は、損傷のリスクを低減する。
【0085】
近位の拡張可能部302は、CSの入り口で、組織壁に対して配置するための拡張可能なワイヤローブ(wire lobe)306及び307を備えてもよい。
図4を参照のこと。ワイヤローブは、CS外部で組織壁に対して固定されるように構成され、安定的な固定点を提供する。ワイヤローブ306、307は、制御された配置を目的として力を分散するために、シース310のいずれかの側で拡張してもよい。上記の効果をもたらすために、バルーンなどのあらゆる拡張可能構造を、CSの入り口、すなわちCSの外部で、組織壁305に対する可逆的な拡張のために備えることができる。
【0086】
近位の拡張可能部302は、変位手段301の活性化状態において、遠位の定着部303よりも大きく拡張された直径を有することができる。上記は例えば
図3に図示されており、より制御された小型化のために、近位の拡張可能部302が、アンカー303に対してより堅固に位置されることを可能にする。
【0087】
遠位の定着部303は、変位手段301の活性化状態において、前記CSに対するアンカーまで拡張可能である。これにより、遠位の定着部303を近位の拡張可能部302に向かって引っ張るとき、近位の拡張可能部302に対して固定されるCSに十分な力を提供する。
【0088】
遠位の定着部303は拡張可能なコイルワイヤ(巻き線材)311を含むことができる。
図3を参照のこと。コイルワイヤは、コイル長さに沿って均等かつ円周方向に圧力が印加され、同時に、コイルを長手方向304に延長することによってシース310内に容易に格納できることから、CSに対して効果的に固定する。コイルワイヤは制御ワイヤ308に連結されてもよく、制御ワイヤ308は、遠位の定着部を減少させた直径の送達形状(reduced diameter delivery shape)に伸ばし、作業状態におけるコイルワイヤにおける張力を低下させて遠隔定着部を拡張するように構成される。したがって、コイルの張力を低下させることによって、遠位の定着部の容易な配置を可能とし、その結果、遠位の定着部は、CSに対する固定のために格納され、直径が拡張されることができる。さらに、コイル311は体の内腔を開口したままにすることができ、その結果、血流が保持される。
【0089】
変位手段301は、遠位の定着部303を送達するとともに、活性化状態において、遠位の定着303を活性化状態の近位の拡張部302に向かって引っ張り、それにより、
図18aから18bに図示されるように、遠位の定着部303と近位の拡張部302の間の距離(L)を、より短い距離(L’)に減少させて小型化するように構成された送達ワイヤ309を備えていてもよい。
図3及び6aから6bを参照のこと。定着部303のための制御ワイヤ308は、同時に、及び同じ置換動作によって引っ張られ、その結果、定着部は長手方向304の長さを維持する。
【0090】
近位の拡張部303は、可逆的に、拡張状態に折りたたみ可能である。拡張状態では、近位の拡張部303は、CSの直径よりも実質的に大きな直径を有する。これにより、上記の優位性を持つ、CS外部でのより安定的な固定が可能となる。
【0091】
定着部は、例えば、少なくとも1つのフックのような、組織保持部を備えることができる(図示されず)。組織保持部はCS内部で定着部303を効果的に保持し、それにより、弁輪の効果的な小型化を実現する。組織保持部は、手術の効率性を最適化するために、いくつ使用されてもよい。フックに加え、組織を把持する他の保持部材を備えることができる。保持部は、保持部を把持するために、より頑強なCSの心筋壁の方向に向く。
【0092】
定着部303は、例えば、少なくとも部分的に湾曲する、又は球状の表面といった組織非侵襲性表面を有する組織並置部(図示されず)を有することができる。組織並置部は、CS壁部に対する対向力を働かせ、定着部303を安定(固定)させ、保持部に、保持部に対して組織及びアンカーをより効果的に把持させる。また、CSの静脈を開口した状態を保つコイル311に加えて、組織並置部も、血流を持続させるために、CSの静脈を開口した状態を保つのに役立つ。組織非侵襲性表面を有することで、組織並置部は定着能力を向上させると同時に、CSの壁部への組織損傷のリスクを低減する。
【0093】
組織保持部は、長手方向304に対して実質的に垂直な方向に拡張可能であってもよい。よって、組織保持部はCS壁部に効果的に係合することができる。例えば、保持部は、組織に係合するために、外側方向に湾曲した形状を成したヒートセット形状(heat set shape)を有する金属合金で形成されてもよい。保持部は、送達ワイヤが近位の拡張可能部302に対して引き戻されるとき、保持部が組織を把持し、定着部を定着させ、組織を近位の拡張可能部302に対して引き戻して、減少距離(L’)及び小型化効果を実現するように、送達ワイヤ309に接続される。代替的に、又は追加的に、保持部は分離した制御ワイヤ(図示されず)に接続されてもよく、その結果、保持部の半径方向に外向きの拡張が、送達ワイヤ309の位置とは分離して制御可能となる。よって、保持部は、長手方向304に押し込まれる前に、例えばコイル311内で最初に回収されてもよい。この場合、保持部は、上述のように組織を把持するために、ヒートセットの半径方向に拡張した形状を構成することができる。
【0094】
組織並置部は、保持部について前項に記載されたのと同じ方法で、制御及び配置されてもよい。例えば、組織保持部が、CS全体に接触するために長手方向304に対して実質的に垂直な方向に拡張可能であるように、送達ワイヤ309又は分離した制御ワイヤ(図示されず)に接続される。
【0095】
組織保持部及び前記組織並置部は、実質的に反対方向に拡張可能であってもよい。これにより、組織並置部が、組織の効果的な把持、及び確実な定着を目的として、保持部に対して良好な対向力をもたらすことを可能にする。また、保持部がより丈夫な心筋壁の方向に向いている一方で、組織並置部313はCSのより傷つきやすい部位に対して配置される。
【0096】
変位手段は、その半径部分(radial portion)に、CS内の変位手段の回転方向の位置合わせ(rotational alignment)のための、少なくとも1つのX線不透過性マーカーを備えることができる。例えば、組織並置部は、心筋壁から離れた方向を向くのに役立つX線不透過性マーカーを有することができる。代替的に、又は追加的に、保持部はX線不透過性マーカー109を備えることができる。
【0097】
弁輪(A)を有する欠陥僧帽弁輪を治療する方法が開示されており、当該方法は、送達状態の、可撓性の取り外し可能な長尺の変位手段301を、弁に隣接する冠状静脈洞(CS)に挿入する工程と、CSの入り口で、近位の拡張可能部302を組織壁305に対して配置する工程と、CS内に遠位の定着部303を配置する工程と、活性化状態の変位手段を活性化し、それによって、弁輪の形状が修正形状(A’)に修正されるように、遠位の定着部が変位手段の長手方向304に移動して、遠位の定着部と近位の拡張可能部との間の距離を減少させる工程と、修正形状が得られたとき、僧帽弁輪で弁輪形成装置102を固定する工程であって、それにより、弁輪形成装置は、修正形状を保持するように構成された固定構造部103を備える工程と、活性化状態での一時的な活性化の後、長尺の変位手段を取り除く工程とを含む。
【0098】
ステイプル手段(締結手段)
クリップ205を用いてインプラント200を組織に固定するためのステイプル手段40が、
図10に示されている。ステイプル手段はクリップを送達する遠位端402を有するシース401及び、シースの長手方向404に沿って、シース内部で移動可能なプッシャー装置403及び403’を備える。遠位端はクリップガイド405及び405’を備え、当該クリップは長手方向に移動可能である。クリップガイドは、クリップガイドがクリップに拘束力を付加し、その結果、クリップは送達形状(delivery shape)を成すように構成された閉構造である。クリップガイド405及び405’は、クリップ205が弛緩形状(relaxed shape)を成す開構造も有する。プッシャー装置403及び403’は、クリップガイドが閉構造である近位部(P)から、プッシャー装置403及び403’がクリップガイド405及び405’に係合し、クリップガイドが開構造である遠位部へと移動可能である。
【0099】
近位部から遠位部へのプッシャー403、403’の単一工程動作(single step movement)により、クリップ205は送達形状から弛緩形状へと移行する。クリップ205が送達形状の組織に挿入される場合、クリップ205は好都合かつ迅速に、弛緩形状に移行することができ、その状況で、クリップ205は組織をしっかりと把持し(clamp)、例えば弁輪形成用インプラントのようなインプラントの位置を固定することができる。また、単一工程動作は、製造が単純かつ安価な装置、さらに、使い捨て装置として製造を可能にする。クリップ205はシース401に予め装着されていてもよい。プッシャー403及び403’が近位部にあるとき、クリップ205はすでに送達形状となっているため、クリップ205を係合して送達形状に移行するのに必要な追加動作がない。これにより、以下に説明されるように、クリップ205が送達形状にあるとき、長手方向404の向上した安定性を実現できるとともに、プッシャーが遠位部に係合されるとき、長手方向404のさらなるガイドを可能にする。
【0100】
よって、クリップ205がその中でシースの長手方向404に移動可能であり、その一方で閉構造から開構造に移行される、クリップガイド405及び405’を有することにより、クリップが弛緩形状に固定されるまで、クリップ205を送達形状に配置するとき、長手方向404のクリップの位置は、高い安定性及び正確性を確実に得ることができる。例えば、プッシャー403’が近位部(P)から遠位部(P’)に移動するとき、クリップ205はクリップガイド405及び405’の中で、長手方向404に移動する。プッシャーの近位端において、クリップ205が送達形状を成す状態が保たれるとき、クリップ205はクリップガイド405及び405’から十分に外側に延長する脚部200及び200’のおかげで、組織内に配置可能となる。この構造において、クリップガイドは長手方向のガイドとして機能し、結果としてクリップは、縦軸404に対して傾いたり、変位したりすることなく挿入されることが可能となるため、クリップガイドはクリップを強固に保持する。プッシャー403’が遠位部に移動するとき、クリップガイド405及び405’は長手方向にクリップ205をガイドし、安定した送達経路を維持し、一方でクリップは弛緩形状を成す。長手方向404の安定的な送達経路は、シースに対するクリップの位置における不確定性を確実になくすものであり、例えば困難な状況で手術するときに極めて重要である。クリップ205の弛緩形状は熱処理工程によって決定されることができる。また、クリップは、ニチノール又は他のヒートセットに適した材料で形成されることができる。組織からクリップに付加される対向力により、クリップ205が組織に挿入されるとき、クリップ205はその弛緩形状を完全には成さない場合がある。しかし、クリップは弛緩形状を成そうとし、結果としてクリップと組織の間の総合的な力をもたらすこととなろう。
【0101】
クリップガイド405及び405’はクリップトラック406及び406’を備えてもよく、クリップトラック406及び406’はクリップ205の脚部200及び200’を部分的に包囲するように配置され、上述の拘束力を付加し、それにより、クリップガイドが閉構造にあるとき、長手方向404にクリップを整列(位置合わせ)する。したがって、クリップが送達形状にあるとき、クリップガイドのクリップトラック406及び406’は、クリップ205の脚部200及び200’を、例えば長手方向など、特定の位置に押し込む。よって、クリップトラック406及び406’もこの方向に整列されてもよい。ただし、特定の応用において、クリップをシースに対して一定の角度で送達するために、クリップトラック406及び406’は、縦軸404に対して角度がついていてもよい。クリップトラック406及び406’を有することで、クリップはより良好に位置合わせが可能となり、結果として、脚部が保持される送達形状から弛緩形状へと移行されるとき、所望の経路をたどる。プッシャー403’を遠位端に移動し、クリップを弛緩形状に移行する際、クリップトラック406及び406’は、たとえクリップトラック406及び406’がクリップ205の脚部200及び200’を完全に包囲していなくても、所望の経路でクリップ205の脚部200及び200’を操縦し続けることができる。プッシャー403’はクリップトラック406及び406’の間、又はクリップトラック406及び406’の側で通過するように形成されてもよく、一方で、後者は、所望の経路に沿ってクリップのガイドをさらに提供する。
【0102】
クリップガイド405及び405’は、反対方向B及びB’に、ならびに長手方向404に対して垂直方向に分離可能な2つのガイド部分407、408、407’及び408’を備えていてもよい。2つのガイド部分407、408、407’及び408’は、クリップの拘束力を除去し、結果として、クリップは弛緩形状を成すことができる。上記は、クリップ205を送達形状から弛緩形状に移行するための、とりわけ改良された機能性をもたらす。例えば、反対方向に分離可能なクリップガイド405の2つのガイド部分407及び408を有することにより、力、及び、クリップの拘束力を解除する必要のある動作範囲が減少される。これは、各ガイド部分は、閉構造から開構造に移動されるとき、より小さな距離を移動しなければならないためである。また、対称的動作(symmetric action)は、クリップの拘束力が解除されるとき、とりわけ縦軸404に対して横軸となる方向に望ましくないずれが生じるリスクを低減する。
【0103】
プッシャー装置403’は、その遠位部G’で、上述の反対方向B及びB’に、ガイド部分407、408、407’及び408’を分離してもよく、それによって、クリップガイド405及び405’はその開構造となる。これにより、クリップ205を縦軸404に沿ってプッシャーと同時に移動させる、すなわち、標的部位でさらに組織の中に向かって移動させ、クリップガイドを閉構造から開構造に移動させ、その結果、クリップが組織を固定し、及び/又はインプラントを組織にしっかりと付着する、弛緩形状を成すことができる。このような単一工程動作でクリップ205を付着し、組織及びインプラントを固定することにより、より迅速で容易な手術が可能となる。プッシャー403’で作用する力は、連続する動作でクリップを前方に駆動するとともに、クリップを送達形状から弛緩形状に移行する。先行技術と比較すると、クリップを弛緩形状から送達形状に移行するために、第1に、プッシャーでクリップに力を付加する必要がないとともに、プッシャーがすでに第1の力でクリップに作用している間、クリップを弛緩構成に解除するためにクリップを挿入し、次いで装置に向かって異なる方向に第2の力を付加する必要がない。後者の実施例は、力が反作用することから、例えば、付加された第2の力のため、及び、第2の力が、クリップに作用する第1の力を超えるのに十分に大きくなければならないため、結果的に、ステイプル手段に付加される合力が増大することとなる、より複雑な装置を示唆している。上記はクリップに対する摩擦力の増大を引き起こし、手術者が装置に付加しなければならないかかる反作用力(counteracting force)は、操縦の精度を低下するものである。例えば周囲の生体構造の、動き(movement)の感度は、かかる上述の装置では低下する。上記は、上述の2つの機能を実現するように作用するプッシャーの力で、単一工程動作を以て解決される。
【0104】
2つのガイド部分407、408、407’及び408’は、シース401に対する接線409に沿って、B及びB’の方向に分離可能であってもよい。上記は、クリップガイド405及び405’が開位置にある場合であっても、動作が、シース401の限りなく近位の周辺で抑制されるため、シース401のコンパクトな外形を保つことを可能にする。
【0105】
2つのガイド部分407、408、407’及び408’のそれぞれは、クリップガイド405及び405’が閉構造であるとき、上述の拘束力を付加し、クリップ205を長手方向404に位置合わせするように、クリップ205の脚部200及び200’のいずれかの側に配置されたクリップトラック406及び406’を備えていてもよい。クリックトラックの脚部のいずれかの側にクリップを保持することにより、2つのガイド部分が、部分的に、脚部の一方の側でクリップを包囲できることから、クリップの位置合わせの精度が向上する。
【0106】
クリップガイド405及び405’は、閉構造から開構造に弾性的に移動可能であってもよい。上記は、プッシャー403’がクリップガイドに係合するとき、プッシャー403’の動作に作用する滑らかかつ予想可能な抵抗を与える。上記は、クリップを送達形状から弛緩形状へと移動させるとき、制御された動作及び制御された解除を可能にする。ステイプル手段40は、クリップガイド405及び405’に弾発力を付加するように配置された弾性装置410を備えていてもよい。弾性装置410はシース401周辺に備えられ、弾性装置310の弾性又は可撓性を変更することにより調整可能な既定の抵抗を以て、そこで動作に反作用を及ぼすように、クリップガイド405及び405’に接触することができる。弾性装置110は、半径内側方向の反作用力を付加するように、クリップガイド405及び405’の半径方向の外側に備えられることができる。弾性装置410は、シリコン又は他の可撓性ポリマー、もしくは、可撓性合金又は素材といった可撓性材料(flexible material)によるリングとすることができる。
【0107】
プッシャー装置403は、長手方向404に、クリップガイド405及び405’を通過して、クリップ205を押し込み、閉構造から開構造にクリップガイド405及び405’を移動するように配置された、遠位舌片403’を備えていてもよい。よって、クリップ205をプッシャーで縦軸404に沿って移動し、同時に、クリップガイドを閉構造から開構造に移動し、その結果、クリップは弛緩形状に固定されることが可能である。幅狭の遠位舌片403’により、開構造においても、クリップガイドのコンパクトな構造が可能となり、舌片403’は、コンパクトな外形を維持するために、シース401の直径に対してわずかな距離で、クリップガイドをずらすだけで済む。
【0108】
プッシャー装置403’が近位部から遠位部に移動されるとき、遠位舌片403’は、クリップガイド405及び405’の、長手方向404に対して角度のついた面(傾斜面、angled surface)412に係合することができる。その結果、クリップガイドが閉構造から開構造に移動させられる。傾斜面412は、舌片403’が正確な位置へと容易に摺動し、クリップガイド405及び405’を通過して移動することを可能にし、装置40の精度を向上させる。傾斜面412がプッシャー403’に対して、半径方向に徐々にずれながら摺動するため、閉構造から開構造に、より穏やかに移行できる。よって、クリップ205は、縦軸404に沿って前進するため、送達形状から弛緩形状に、より穏やかに移動されても良い。上記は、クリップ205の弛緩形状への動作を遅らせることが望ましい特定の状況において求められる。
【0109】
遠位舌片403’は、クリップ205と係合するために、クリップ205の一部を受容するくぼみを有する係合面に配置されることができる。くぼみが半径方向の動作を防止するため、クリップの半径方向の安定性が向上する。
【0110】
クリップガイド405及び405’は、シース401の半径方向に反対側の外縁に配置され、長手方向404に延長する、第1のクリップガイド405及び第2のクリップガイド405’を備えていてもよい。上記は、
図10の例示的実施形態に図示されており、クリップの両側でのガイドがシース401を半径方向に横切って配置されることを確実とすることによって、クリップを前方に移動させるときのクリップ205のガイドにおいて、向上した正確性を可能にする。クリップの傾斜又は転位が防止される。第1のクリップガイド405及び第2のクリップガイド405’は各々、クリップの第1の脚部200及び第2の脚部200’を部分的に包囲するとともに、クリップガイドが閉構造であるとき、長手方向404にクリップを位置合わせするように配置されることができる。上記は、シース401の周辺でのクリップの配置をさらに改良する。第1のクリップガイド405及び第2のクリップガイド405’は各々、
図10に図示されるように、2つの分離可能なガイド部分407、408、407’及び408’を備えることができる。
【0111】
プッシャー装置403’は、近位部から遠位部に移動されるとき、第1のクリップガイド405及び第2のクリップガイド405’を同時に係合することができる。それにより、第1のクリップガイド及び第2のクリップガイドの各々の、2つの分離可能なガイド部分407、408、407’及び408’は、開構造となるように分離される。クリップがクリップガイドを通って押されるため、クリップの脚部200及び200’の両方が同時に安定される。
【0112】
1つの実施形態に従ったステイプル用キットが開示されており、ステイプル用キットは、上述のステイプル手段401、及び脚部200及び200’を有するクリップ205を備える。クリップ205は、脚部が実質的に平行となる送達形状、及び、脚部が互いに交差する弛緩形状を有する。交差した脚部は、弁輪形成リングのようなインプラントの、組織への固定の強度を増大させ、インプラントを適切な位置に固定することにより、ずれを防止する。
【0113】
クリップ205は心臓弁組織の一方の側に位置する、らせん形状インプラントの第1のリング及び第2のリング周囲にループを形成するように構成されていてもよい。
【0114】
ステイプル手段40からクリップを解除する方法が開示されており、当該方法は、シースを有するステイプル手段40内に予め組み込まれたクリップ、及び、シースの遠位端にクリップガイドを提供する工程と、その中でクリップがシースの長手方向に移動可能なクリップガイドを係合するために、シース内部でプッシャー装置を近位部から遠位部へと移動する工程を含む。プッシャー装置を遠位部に移動する工程は、クリップガイドをクリップガイドがクリップに拘束力を付加するように構成され、結果としてクリップが送達形状となる閉構造から、クリップが弛緩形状となる開構造に移動する工程を含み、これにより、クリップが弛緩形状であるとき、クリップはステイプル手段40から解除される。
【0115】
上述のように、クリップをステイプル手段40から標的部位に送達する方法が開示されている。当該方法は、シース、及びシースの遠位端のクリップガイドを有するステイプル手段40の、予め組み込まれたクリップを提供する工程と、シースを心臓弁などの標的部位に操縦する工程と、組織を固定するため、及び/又は弁輪形成リングのようなインプラントを組織に固定するために、標的部位にクリップの一部を取り付ける工程と、シース内部のプッシャー装置を近位部から遠位部に移動し、クリップガイドを係合する工程を含む。プッシャーを遠位部に移動する工程は、クリップガイドが拘束力をクリップに付加するように構成され、その結果、クリップが前記クリップの一部を取り付けるための送達形状を成す閉構造から、クリップの脚部が交差構造を有する弛緩形状に、クリップが向かおうとする開構造に、クリップガイドを移動する工程を含む。クリップガイドを移動する工程は、クリップの残りの部分を標的部位に取付け、それによって、クリップの残りの部分が標的部位に取り付けられたとき、クリップは、弛緩形状に向かおうとし、組織、及び/又は組織を固定するためのインプラント、及び/又はインプラントに圧縮力を付加し、及び、クリップをステイプル手段40から解除する。
【0116】
クリップの前記残りの部分が組織に取り付けられると、クリップの脚部は、心臓弁組織の一方の側に位置するらせん形状インプラントの第1のリング及び第2のリングの周囲でループを形成することができる。
【0117】
方法
図4に図示されているのは、上述のシステムを備えた弁輪形成用インプラントの移植の方法1000の実施例である。第1に、大腿静脈の穿刺及び/又は挿管が実施される。
【0118】
次に、マリンズイントロデューサーシース(Mullins Introducer Sheeth)及び/又はブロッケンブロー針(Brockenbrough Needle)といった隔壁装置の挿入が実施される。
【0119】
次いで、心臓内の交連部を発見し、残りの手術の間、心臓を支持するために、交連部位置特定装置及び拡張装置が、隔壁装置を使用して適所に移動される(1001)。実施例では、送達シースは、装置が所定の位置に配置されると引き抜かれ、ニトロールワイヤに予め形成された形状に跳ね返りを起こさせ、交連部を完全伸展に拡張する。
【0120】
冠状静脈洞縮小手段、すなわち変位手段301が、例えば頸静脈を介して配置される(1002)。冠状静脈洞縮小手段20は、らせんリングの配置のために、確実に僧帽弁輪を前尖に接近させる。実施例では、静脈洞縮小手段は、交連部安定装置と並列して使用され、及び/又は、冠状静脈洞縮小手段20は、交連部位置特定装置が交連部に配置される前に、CS内に配置される。
【0121】
変位手段は活性化状態で活性化され(1003)、それにより、弁輪の形状は修正形状(A’)に修正される。
【0122】
次いで、左心房を介した、例えばらせんリングのような弁輪形成リングの段階的な配置(1004)が実施される。リングは、インプラント送達回収装置30を使用して、後交連部の配置を通じて適所に配置される。
【0123】
次に、手術者は、修正形状(A’)を保持するためのステイプル手段40を使用して、僧帽弁輪の周辺のリングを留める(1005)。
【0124】
最後に、変位手段を含む装置は除去され(1006)、リングを僧帽弁の適所に固定して残す。
【0125】
活性化状態で変位手段を活性化する工程は、CSの入り口で、組織壁305に対して近位の拡張可能部302を配置する(1007)工程と、CS内で遠位の定着部303を配置する(1008)工程と、活性化状態で変位手段を活性化する(1009)工程を含み、それにより、弁輪の形状が前記修正形状(A’)に修正されるように遠位の定着部と近位の拡張可能部の間の距離を減少するために、遠位の定着部は変位手段の長手方向304に移動される。上記は弁輪の効果的な小型化をもたらす。
【0126】
前記インプラントを心臓弁の弁輪周囲に挿入する工程は、交連部に配置されるべき部分の交連部位置特定装置に配置されたガイド手段により、前記インプラントを適所にガイドする(1010)工程を含んでいてもよい。上記はインプラントの配置を容易にする。
【0127】
方法1000は、挿入されるインプラントのサイズを決定するための測定値を受領する前記交連部位置特定装置によって、交連部の間の距離を計測する工程(1011)を含んでいてもよい。これにより、手術中、インプラントの正確なサイズが、同時に、有利な形で決定可能である。
【0128】
本発明を、特定の実施例を参照して上述した。しかしながら、上述した実施例以外の他の実施例も、本発明の技術的範囲において、同様に可能である。本発明の種々の特徴及び工程を、特定の実施例に関して説明した組み合わせ以外の組み合わせにて組み合わせることが可能である。実施例の各特徴を、好都合に入れ換えたり、組み合わせたりすることが可能である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。