特許第6462010号(P6462010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6462010PVCを着色するためのコーティングされた顔料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462010
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】PVCを着色するためのコーティングされた顔料
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/24 20060101AFI20190121BHJP
   C09C 1/04 20060101ALI20190121BHJP
   C09C 1/22 20060101ALI20190121BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20190121BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20190121BHJP
   C01G 49/06 20060101ALI20190121BHJP
   C01G 49/02 20060101ALI20190121BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20190121BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20190121BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C09C1/24
   C09C1/04
   C09C1/22
   C09C3/06
   C09C3/08
   C01G49/06 A
   C01G49/02 A
   C08L27/06
   C08L101/00
   C08K3/22
   C08K9/04
   C08K5/098
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-573793(P2016-573793)
(86)(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公表番号】特表2017-526756(P2017-526756A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2015063630
(87)【国際公開番号】WO2015193390
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】14173003.6
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クシシュトフ・クロペック
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−136038(JP,A)
【文献】 特開昭53−106748(JP,A)
【文献】 特開昭50−019844(JP,A)
【文献】 特公昭42−018817(JP,B1)
【文献】 特表2016−506425(JP,A)
【文献】 特表2017−526758(JP,A)
【文献】 特開昭50−141645(JP,A)
【文献】 水谷 久一,PVC安定剤の理論について,日本ゴム協会誌,1956年,第29巻 第8号,第692-698頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00〜3/12
C08K 3/18〜3/26、9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される少なくとも1種の無機化合物を含む顔料であって、前記少なくとも1種の無機化合物が、少なくとも、
少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物、および
一般式C2n+1COOH(I)、C2n−1COOH(II)、C2n−3COOH(III)および/またはC2n−5COOH(IV)(ここでn=10〜20)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩、
を含むコーティングを備えている、
前記少なくとも1種の無機化合物のコーティングが、外側層および内側層からなっており、ここで
A)前記2層のうちの1層が、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物を含み、かつ
B)前記2層のうちの他の層が、一般式C2n+1COOH(I)、C2n−1COOH(II)、C2n−3COOH(III)および/またはC2n−5COOH(IV)(ここでn=10〜20)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩を含み、
前記A)の層が内側層である、顔料。
【請求項2】
前記コーティングが、前記少なくとも1種の無機化合物に直接結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の顔料。
【請求項3】
前記顔料が、元素のマグネシウムおよびカルシウムの含量の合計として計算して、0.3重量%〜30重量%のマグネシウムおよびカルシウム、ここで前記元素のマグネシウムおよびカルシウムの含量の総合計は前記顔料の全重量を規準としたものである、請求項1または2に記載の顔料。
【請求項4】
プラスチック製品であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも1種の顔料、および
少なくとも1種のポリマー(ここで前記ポリマーの少なくとも50重量%が、塩化ビニルモノマーから形成されている)
を含み、
上述の成分が、前記プラスチック製品の全重量を規準にして、合計して40重量%〜100重量%となる、プラスチック製品。
【請求項5】
10重量%〜90重量%の、請求項1〜3のいずれか一項に記載の顔料を含む、請求項4に記載のプラスチック製品。
【請求項6】
前記プラスチック製品の中に存在しているポリマーの量を基準にして、可塑剤の含有量が0重量%〜15重量%である、請求項4および5のいずれか一項に記載のプラスチック製品。
【請求項7】
粉体状のポリマーと請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも1種の顔料との混合物であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載のプラスチック製品。
【請求項8】
なくと
)前記無機化合物に対して、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを適用し、次いで、一般式C2n+1COOH(I)、C2n−1COOH(II)、C2n−3COOH(III)および/またはC2n−5COOH(IV)(ここでn=10〜20)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩のコーティングを適用する工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の顔料を製造するための方法。
【請求項9】
請求項1に記載の顔料を製造するための方法であって、
少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物からなる前記コーティングが内側層であり、少なくとも以下の工程、
a)酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される少なくとも1種の無機化合物の水性懸濁液を準備する工程、
および
b)工程a)からの前記懸濁液に対して、マグネシウム塩および/またはカルシウム塩を溶解させた形で添加し、次いで、その懸濁液に対して、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアンモニアの群から選択される沈降剤を、溶解させた形で添加することによって、前記無機化合物の上に、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを沈降させる工程、または
b’)工程a)からの前記懸濁液に対して、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、およびアンモニアの群から選択される沈降剤を、溶解させた形で添加し、次いで、その懸濁液に対して、マグネシウム塩および/またはカルシウム塩を、溶解させた形で添加することによって、前記無機化合物の上に少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを沈降させる工程、
および
c)工程b)またはb’)からの前記顔料を、一般式(I)、(II)、(III)および/または(IV)(ここでn=10〜20)の少なくとも1種の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩、ステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムと、工程c)で使用される脂肪酸塩の融点よりも高い温度で混合することによって、一般式(I)、(II)、(III)および/または(IV)(ここでn=10〜20)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩を含む、ステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムを含む、前記コーティングを適用する工程、
を含む、前記コーティングされた顔料を得るための、方法。
【請求項10】
i)前記顔料を単離する工程、ii)前記顔料を洗浄する工程、iii)前記顔料を乾燥する工程、およびiv)前記顔料を微粉砕する工程のうちの、1工程、2工程、3工程、または4工程をさらに含む、請求項9に記載の顔料を製造するための方法。
【請求項11】
600℃より高温での焼成工程を実施しない、請求項8〜10のいずれか一項に記載の顔料を製造するための方法。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の顔料と共に、ポリマーを混練加工または押出し加工することによる、請求項4〜6のいずれか一項に記載のプラスチック製品を製造するための方法。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも1種の顔料と粉体状のPVCとを混合することによる、前記構成成分を前記PVCの融点よりも0.5〜20K低い温度で混合することによる、請求項7に記載のプラスチック製品を製造するための方法。
【請求項14】
PVCを着色するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の顔料の使用。
【請求項15】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1種のプラスチック製品を含む製品。
【請求項16】
前記製品が、窓用形材、パイプ、床材、絶縁材料、または屋根用シートを含む、請求項15に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンからなる群から選択される少なくとも1種の無機化合物(ここで、その少なくとも1種の無機化合物は、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物ならびに少なくとも1種の脂肪酸塩を含むコーティングを備えている)を含む顔料、それらを製造するためのプロセス、ポリ塩化ビニル(PVC)を着色するためのそれらの使用、ならびに、PVCを着色するためのプロセスおよびそのような顔料を用いて着色されたPVC、さらにはそのような顔料を含むプラスチック製品に関する。
【背景技術】
【0002】
PVCは主として、建築分野において、たとえば窓用形材、パイプ、床材、および屋根用シートのための基礎原料として使用されている。PVCからは、硬質膜および軟質膜も同様に製造されている。PVCはさらに、電気ケーブルのため、および配電箱、ケーブルのための収縮チューブ、ケーブルダクト、またはケーブルカバーのための絶縁材料として使用されることも多い。
【0003】
PVCは、非晶質熱可塑性ポリマーの群に属している。このプラスチックは典型的には、硬くて脆く、通常は、可塑剤および安定剤を添加することによって広く各種の用途に採用されている。
【0004】
PVCは、典型的には、可塑剤をさまざまな量で添加して用いられる。0%〜12%の可塑剤含量を有するPVCは、硬質PVCとも呼ばれている。12%を超える可塑剤含量を有するPVCは、軟質PVCとも呼ばれている(非特許文献1)。一般的には、可塑剤含量は、重量パーセントで表される。
【0005】
PVCは多くの場合、有機顔料および無機顔料を用いて着色される。使用される有機顔料は、たとえば、イソインドール、ナフトールAS、銅フタロシアニン顔料、またはモノアゾカルシウム塩である。使用されることが多い無機顔料の群からの顔料は、たとえばニッケルルチル顔料、クロムルチル顔料、亜クロム酸鉄、逆コバルトもしくは銅スピネル、または鉄コバルトクロマイトスピネルなどの、混合相金属酸化物顔料である。それらの顔料は、耐候安定性および光安定性が極めて高いが、それらがその他の鉄含有無機顔料よりも数倍も高価であるという欠点を有している。
【0006】
たとえば、酸化鉄もしくはオキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、亜鉄酸マグネシウムもしくは亜鉄酸マンガンなどの無機顔料を用いてPVCを着色することもまた公知である。酸化鉄およびオキシ水酸化鉄は、耐光堅牢性が特に高い顔料として知られており、広く各種の耐候性条件下においても、長期間にわたって一定の色を維持する。しかしながら、従来技術に従って、酸化鉄もしくはオキシ水酸化鉄、酸化亜鉛、亜鉄酸亜鉛、亜鉄酸マグネシウムまたは亜鉄酸マンガンを用いてPVCを着色した場合には、必要とされる高温で加工している際や、成形したプラスチックを光、UV光、または熱に曝露させた場合のいずれにおいても、均質または不均質な変色が起きる。この望ましくない現象は、硬質PVCの場合にははるかに深刻であるが、その理由は、硬質PVCから製造される製品は、多くの場合屋外で使用され、そこでは、耐候性に関連した影響が、より強烈であることは言うまでもないからである。主として屋内で使用される軟質PVCからの製品の場合においても、たとえば加工した直後に、場合によってはそのような同様の変色が起きる。これらの好ましくない現象は、ずっと以前から公知であり、たとえば次の文献に記載されている:(非特許文献2)または(非特許文献3)。
【0007】
(特許文献1)には、熱可塑性ポリマーを着色するための、一般式[AlO]PO[OH]x−3のリン酸アルミニウム水酸化物を用いてコーティングした、耐熱性黄色顔料が記載されている。しかしながら、社内で実験したところでは、それらのコーティングされた顔料を用いて着色されたPVCは、コーティングされていない顔料を用いて着色したPVCに比較して、十分に高い熱安定性を有していないということが明らかになった。社内で実験したところではさらに、その他の無機アルミニウム化合物たとえば、酸化アルミニウムもしくは水酸化アルミニウム、またはリン酸マグネシウムを用いてコーティングされた酸化鉄によって着色されたPVCも同様に、コーティングされていない酸化鉄によって着色されてPVCよりも、高い熱安定性を有している訳ではないということも見いだされた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第3539306A1号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Roempp Chemielexikon[Roempp’s Chemical Dictionary],Online Version 3.28,記事最終更新:2009年12月,文書識別番号:RD−16−03650
【非特許文献2】S.S.Lele,J.Vinyl Tech.,1984,vol.6,no.2,p.77〜81
【非特許文献3】P.Carty et al.,Polymer,1992,vol.33,no.13,p.2704〜2708
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンからなる群から選択される少なくとも1種の無機化合物顔料であって、プラスチック製品の形態またはそれらから製造された製品の形態のいずれにおいても、それらを用いて着色したPVCが、望ましくない均質もしくは不均質な変色を起こさない顔料を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことには、
酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される少なくとも1種の無機化合物を含み、その少なくとも1種の無機化合物が、以下
・ 少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物、および
・ 一般式C2n+1COOH(I)、C2n−1COOH(II)、C2n−3COOH(III)および/またはC2n−5COOH(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩、
のものを含むコーティングを備えている顔料が、この目的を達成し、上述のような従来技術の顔料の欠点を克服できることが今や見出された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の顔料の中に存在させる酸化鉄の例としては、ヘマタイト(赤色酸化鉄(iron oxide red)、α−Fe)、マグヘマイト(褐色酸化鉄(brown iron oxide)、γ−Fe)、またはマグネタイト(黒色酸化鉄(iron oxide black)、Fe)、好ましくはヘマタイト(赤色酸化鉄、α−Fe)が挙げられる。
【0013】
オキシ水酸化鉄の群からは、本発明の顔料には、たとえば、ゲータイト(黄色酸化鉄(iron oxide yellow)、α−FeOOH)、またはレピドクロサイト(γ−FeOOH)が含まれる。
【0014】
亜鉄酸亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンは、一般式MFe3−x(式中、MはZn、Mg、またはMnであり、xには、0より大で、1以下の数値が含まれる)の混合相の顔料の群に属している。本発明の顔料にはさらに、先に挙げたものからの1種または複数の異なった混合相顔料が含まれていてもよい。
【0015】
本発明の文脈においては、酸化亜鉛はZnOである。
【0016】
本発明の顔料が、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される、ただ1種だけの無機化合物を含んでいるのが好ましい。
【0017】
本発明の顔料の中に存在させるコーティングが、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される少なくとも1種の無機化合物に、直接結合されているのが好ましい。この文脈において「直接(directly)」という用語は、そのコーティングと、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される無機化合物との間に、さらなる中間層が存在していないということを意味している。これに関連して、「中間層(interlayer)」とは、本発明のコーティングとは別の、その他各種のコーティングを意味している。
【0018】
好ましくは、その少なくとも1種の無機化合物のコーティングが、外側層と内側層とからなっており、ここで
A)それら2層のうちの1層が、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物を含み、かつ
B)それら2層のうちの他の層が、一般式C2n+1COOH(I)、C2n−1COOH(II)、C2n−3COOH(III)および/またはC2n−5COOH(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩を含むが、
ここで、A)に相当する層が内側層であるのが好ましい。
【0019】
そのコーティングは、たとえば、その顔料の電子顕微鏡写真によって検出することができる。
【0020】
一般式C2n+1COOH(I)の脂肪酸は、飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩がステアリン酸(n=17)であるのが好ましい。一般式C2n−1COOH(II)の脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸、たとえば、オレイン酸(n=17)である。一般式C2n−3COOH(III)の脂肪酸は、ジ不飽和脂肪酸、たとえば、リノール酸(n=17)である。一般式C2n−5COOH(IV)の脂肪酸は、トリ不飽和脂肪酸、たとえば、カレンデュラ酸(calendulic acid)(n=17)である。ステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムが特に好ましい。
【0021】
本発明の文脈においては、「脂肪酸塩」という用語は、「一般式(I)、(II)、(III)および/または(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の脂肪酸のカルシウム塩またはマグネシウム塩」と同義である。
【0022】
本発明の顔料には、元素のマグネシウムおよびカルシウムの含量の合計として計算して、好ましくは0.3重量%〜30重量%、より好ましくは0.5重量%〜25重量%、最も好ましくは1重量%〜20重量%のマグネシウムおよびカルシウムを含むが、ここで元素のマグネシウムおよびカルシウムの総合計は、本発明の顔料の総重量を規準にしたものである。
【0023】
さらに好ましい実施態様においては、本発明の顔料には、0.2重量%〜15重量%の少なくとも1種の脂肪酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムが含まれるが、ここで、その重量パーセントは、本発明の顔料の総重量に対する、脂肪酸塩の重量の総合計の比率である。元素のマグネシウムおよびカルシウムの含量は、特に断らない限り、誘導結合プラズマで励起させた後の発光分光法(ICP−OES)で測定している。元素のマグネシウムおよびカルシウムの含量は、その他の定量試験法、たとえば原子吸光分析法(AAS)によって求めることも可能である。
【0024】
本発明の顔料における脂肪酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムの含量は、たとえば、近赤外(NIR)または中赤外分光光度法(MIR)で測定される。この場合その測定は、試料について直接実施することができる。脂肪酸塩、好ましくはカルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムの存在は、適切な定性試験法、たとえば質量分析法またはNMR分光光度法で実施することができる。この目的のためには、たとえばそのコーティングの中に存在している脂肪酸塩を顔料から分離するといったような、試料の加工が必要となることもある。これは、たとえば溶媒の手段によるか、および/またはアルカリ性の液相、たとえば水酸化ナトリウム溶液を用いることによって実施される。アルカリ性の液相の中では、脂肪酸が、溶解された形では塩として、たとえばナトリウム塩として存在しているが、酸性化の後では遊離の脂肪酸として有機相の中に抽出することが可能である。脂肪酸塩についてのそのような定性的および定量的試験は、当業者には公知であり、事前に必要とされる較正試験をした後では、試験法とは無関係に再現性のある結果が得られる。それら少なくとも1種の脂肪酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムは、ガスクロマトグラフ法/質量分析法の組合せ(GC−MS組合せ法)で検出することもまた可能である。この目的のためには、試験する試料の中に存在している少なくとも1種の脂肪酸塩をアルコール、たとえばブタノールと反応させて、対応するアルキルエステルとする。次いでそれを、GC−MS組合せ法により定性的および定量的に測定する。その少なくとも1種の脂肪酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムが、顔料のさらなるコーティングとして存在しているか、あるいはコーティングされた顔料の混合物の一成分として存在しているかは、試験する試料の電子顕微鏡写真で明白に区別することができる。コーティングの場合ならば、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物および少なくとも1種の脂肪酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムは、走査型電子顕微鏡法(SEM)をエネルギー分散型X線分光法(EDX)と組み合わせることによって、顔料粒子の表面上に検出することができる。混合物の場合ならば、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物および/または少なくとも1種の脂肪酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムは、顔料粒子の表面で明確に検出されることはないが、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される無機化合物の粒子の間の隙間に存在する個別の粒子の形で検出される。
【0025】
さらなる好ましい実施態様においては、本発明の顔料が、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される少なくとも1種の無機化合物からなり、その少なくとも1種の無機顔料が、マグネシウムおよび/またはカルシウムの水酸化物および/または酸化物を含む、より好ましくはマグネシウムおよび/またはカルシウムの水酸化物を含むコーティングと、さらに、少なくとも1種の脂肪酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムからなるコーティングとを備えている。
【0026】
本発明の顔料は、典型的には20〜40gオイル/100g試料の間、好ましくは23〜39gオイル/100g試料の間のオイル価(oil value)を有している。
【0027】
本発明には、各種の定義されたプロセス、物理的パラメーター、およびそれらの好ましい範囲について考え得るすべての組合せが包含される。
【0028】
驚くべきことには、本発明の顔料を用いて着色したPVCは、コーティングされていない相当する顔料を用いて着色したPVCよりも、高い熱安定性を有しているということが今や見いだされた。本発明の顔料を用いて着色されたPVCの熱安定性が高いことは、ニーダーを用いた熱処理の手段で、ニーダーのトルクの、時間と混練している製品の温度に対するプロットを記録し、各種の試料と比較することにより示すことができる。PVCの破壊(breakdown)の過程において、ポリマーの分解(degradation)が起こり、そのために、粘度が低下し、その結果ニーダーでのトルクが低下する。
【0029】
さらに、本発明の顔料を用いて着色したPVCの熱安定性が高いことは、Mathisオーブンにおける試験片の試験によっても測定することができる。この試験方法は、PCT/EP2013/076585号明細書に記載されている。その試験方法の詳細およびその評価方法は、「実施例および方法」のセクションに見ることができる。
【0030】
本発明はさらに、PVC、好ましくは硬質PVCを着色するための、本発明の顔料の使用にも関する。
【0031】
本発明はさらに、本発明の顔料を用いてPVC、好ましくは硬質PVCを着色する方法にも関する。その着色は、慣用される方法、たとえば、未着色のPVCを融解物の形で顔料と混合、混練、または押出し成形するか、または本発明の顔料を含むPVCのドライブレンド物を融解させることによって実施することができる。
【0032】
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の顔料を含み、それに加えて少なくとも1種のポリマーも含むプラスチック製品にも関するが、この場合、マスターバッチ、コンパウンド物、または着色最終製品という用語は、同意語として使用されている。
【0033】
その少なくとも1種のポリマーが、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%の、モノマーの塩化ビニルから形成されているのが好ましい。これは、第一には、そのポリマーが、塩化ビニルだけから形成されたのではなく、その他のモノマー、たとえば酢酸ビニルまたはアクリル酸ブチルからも形成されたPVCのコポリマーであるといった場合である。その場合においては、そのコポリマーが、少なくとも50重量%の程度まで、より好ましくは少なくとも80重量%の程度までは、モノマーの塩化ビニルから形成されているのが好ましい。そのポリマーが、各種のポリマーの混合物またはブレンド物を含み、そのポリマーの一つが、PVCホモポリマーまたはPVCコポリマーであるというのが、第二の場合である。その場合においては、その混合物またはブレンド物が、少なくとも50重量%の程度まで、より好ましくは少なくとも80重量%の程度までは、モノマーの塩化ビニルから形成されているのが好ましい。そのポリマーは、好ましくはPVC、より好ましくは硬質PVCである。
【0034】
本発明の文脈においては、「着色されたPVC」という用語は、本発明の顔料がポリ塩化ビニルのポリマーマトリックスの中に組み込まれているPVCを意味していると理解されたい。
【0035】
コンパウンド物にはさらに、たとえば、加工助剤、強化材、充填剤、染料、さらなる顔料、およびその他の有機および無機添加剤が含まれていて、それにより、たとえば押出し成形、射出成形、カレンダー成形、またはブロー成形などにより、広く各種の成形物を製造することが可能となる。それらの成形物は、一般的には、最終製品(本発明の文脈においては、製品と呼ぶ)、たとえば窓枠、パイプ、絶縁材料、フィルム、またはビンなどに相当する。PVCは、マスターバッチを添加するか、またはコンパウンド物に顔料を直接添加するかによって、着色される。
【0036】
本発明のプラスチック製品には、その末端用途に応じて、本発明の顔料が各種の量で含まれる。
【0037】
マスターバッチの群からのプラスチック製品は、典型的には、PVCまたはその他のプラスチック製品を着色するための「カラーコンセントレート(color concentrate)」の形で使用される。したがって、それらのプラスチック製品は、それぞれの場合においてプラスチック製品の全重量を規準にして、本発明の顔料が10重量%〜90重量%、より好ましくは20重量%〜70重量%の比較的高い顔料含量と、10重量%〜90重量%、好ましくは30重量%〜80重量%のポリマー含量とを有している。さらなる実施態様においては、そのマスターバッチには、ポリマーとして、ワックスを、場合によってはPVCとの混合物の形で、そうでなければ、PVCと混合することなしに含まれている。選択されるワックスは、たとえば、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、鉱物質ワックス、モンタンワックス、植物性ワックスおよび/または動物性ワックスである。上述の成分は、プラスチック製品の全重量を規準にして、合計して好ましくは40重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%となる。
【0038】
そのプラスチック製品が、すでにその中に、コンパウンド物として最終的に使用するための所望の色を有しているならば、それぞれの場合においてプラスチック製品の全重量を規準にして、本発明の顔料の含量が、好ましくは0.1重量%〜10重量%、より好ましくは0.5重量%〜5重量%であり、そのポリマー含量が、好ましくは60重量%〜99.9重量%、より好ましくは70重量%〜99.5重量%である。
【0039】
本発明はさらに、ポリマーを本発明の顔料と共に混練加工または押出し加工することによる、本発明のプラスチック製品、特にコンパウンド物およびマスターバッチを製造するためのプロセスにも関する。
【0040】
PVCは、本発明においては、さまざまな可塑剤含量で使用される。0%〜12%の可塑剤含量を有するPVCは、硬質PVCとも呼ばれている。12%を超える可塑剤含量を有するPVCは、軟質PVCとも呼ばれている(Roempp Chemielexikon,Online Version 3.28,記事最終更新:2009年12月,文書識別番号:RD−16−03650)。
【0041】
本発明はさらに、プラスチック製品の中に存在しているポリマーの量を基準にして、0重量%〜15重量%、好ましくは0重量%〜12重量%の可塑剤を含む、プラスチック製品にも関する。
【0042】
好適な可塑剤は、たとえば、一次(primary)可塑剤、二次(secondary)可塑剤、およびエクステンダーである。一次可塑剤は、たとえば、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、およびポリマー性可塑剤である。二次可塑剤は、たとえば、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、デカン二酸エステル、およびアルキル脂肪酸エステルである。エクステンダーの群としては、たとえば、芳香族炭化水素およびクロロパラフィンが挙げられる(Roempp Chemielexikon[Roempp’s Chemical Dictionary],Online Version 3.2.8,記事最終更新:2006年3月,文書識別番号:RD−23−00480より)。
【0043】
本発明はさらに、プラスチック製品にも関するが、それに対しては「PVCドライブレンド物」という用語も使用され、粉体状のポリマー、好ましくはPVC、より好ましくは硬質PVCと、本発明の顔料との混合物が含まれている。このタイプのPVCドライブレンド物には、コンパウンド物を製造するために必要とされる添加剤(たとえば、充填剤、安定剤、任意成分としてのさらなる可塑剤、染料、任意成分としてのさらなる顔料)をさらに含んでいてもよい。それらは、PVCと併置させる物質(substance alongside the PVC)として存在させてもよいし、あるいは、ドライブレンド物のPVCの中にあらかじめ組み込んでおいてもよい。ドライブレンド物は、典型的には、そのプラスチックの融点より0.5〜20K下で、上述の成分を強力に混合することによって製造される。それらのドライブレンド物は、PVCに対して慣用される加工方法、たとえば、押出し成形、射出成形、カレンダー成形、またはブロー成形によって製品を製造するために使用することができる。
【0044】
本発明はさらに、製品にも関し、それに対しては、本発明の文脈においては、「成形物(molding)」または「仕上げ商品(finished good)」という用語も同義語的に使用され、少なくとも1種の本発明のプラスチック製品が含まれている。このタイプの製品としては、たとえば、窓用形材、パイプ、床材、絶縁材料、または屋根用シートが挙げられる。
【0045】
本発明はさらに、本発明の顔料を製造するためのプロセスにも関する。
【0046】
本発明のプロセスには、少なくとも以下の工程が含まれる:
I)無機化合物に対して、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを適用し、次いで、一般式C2n+1COOH(I)、C2n−1COOH(II)、C2n−3COOH(III)および/またはC2n−5COOH(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩のコーティングを適用する工程、
または
II)無機化合物に対して、一般式C2n+1COOH(I)、C2n−1COOH(II)、C2n−3COOH(III)および/またはC2n−5COOH(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩のコーティングを適用し、次いで、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを適用する工程、
または
III)無機化合物に対して、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを適用し、それと同時に、一般式C2n+1COOH(I)、C2n−1COOH(II)、C2n−3COOH(III)および/またはC2n−5COOH(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩のコーティングを適用する工程。
【0047】
そのコーティングを適用するためには、無機顔料の上に上述のコンパウンド物のコーティングが得られるような、いかなるプロセスを採用することも可能である。それらには、それを用いて無機化合物をコーティングするコンパウンド物を、固体の形態または懸濁液の形態または溶液の形態のいずれかで、摩砕、沈降、または噴霧によって適用することが含まれる。
【0048】
少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングが内側層であるような本発明の顔料を製造するための好ましい実施態様においては、本発明の好ましいプロセスには、本発明の顔料を得る目的で、少なくとも以下の工程が含まれる:
a)酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される少なくとも1種の無機化合物の水性懸濁液を準備する工程、
および
b)工程a)からの懸濁液に対して、マグネシウム塩および/またはカルシウム塩を好ましくは溶解させた形で添加し、次いで、その懸濁液に対して、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアンモニアの群から選択される沈降剤を、好ましくは溶解させた形で添加することによって、無機化合物の上に、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを沈降させる工程、または
b’)工程a)からの懸濁液に対して、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、およびアンモニアの群から選択される沈降剤を、好ましくは溶解させた形で添加し、次いで、その懸濁液に対して、マグネシウム塩および/またはカルシウム塩を、好ましくは溶解させた形で添加することによって、前記無機化合物の上に少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを沈降させる工程、および
c)工程b)またはb’)からの顔料を、一般式(I)、(II)、(III)および/または(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の少なくとも1種の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムと、工程c)で使用される脂肪酸塩の融点よりも高い温度で混合することによって、一般式(I)、(II)、(III)および/または(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩を含む、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムを含む第二のコーティングを適用する工程。
【0049】
本発明の顔料を製造するための好ましいプロセスには、場合によってはさらに、i)顔料を単離する工程、ii)顔料を洗浄する工程、iii)顔料を乾燥する工程、およびiv)顔料を微粉砕する工程のうちの、1工程、2工程、3工程、または4工程が含まれる。
【0050】
好適なプロセスの工程a)において使用される顔料は、粉体状の顔料であるか、またはその顔料の製造操作から直接得られた顔料から作られたペーストである。ペーストは、顔料を含有する水性懸濁物である。
【0051】
さらなる実施態様(工程b”)においては、顔料懸濁液の最初の仕込み物に対して、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、およびアンモニアの群からの沈降剤を、好ましくは溶解させた形態で添加することと、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩を、好ましくは溶解させた形態で添加することを、同時に実施することもまた可能である。三者択一の工程b)、b’)またはb”)からは、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物を用いた無機化合物のコーティングが得られる。この実施態様において、工程b”)には、本発明においては、工程c)が続き、工程b”)からの顔料に対して、一般式(I)、(II)、(III)および/または(IV)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩を含む、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムを含む第二のコーティングが適用される。
【0052】
本発明のプロセスにおいて特に好ましい沈降剤は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである。
【0053】
工程b)、b’)またはb”)による実施態様においては、好ましくはマグネシウムおよび/またはカルシウムの塩、より好ましくはそれらの水溶液、最も好ましくは硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムを使用する。
【0054】
無機化合物に対してマグネシウムまたはカルシウムの、少なくとも1種の水酸化物または酸化物からなるコーティングを沈降的に適用する際、および場合によってはさらなる反応を実施する際には、好ましくは10〜99℃、より好ましくは20〜85℃、最も好ましくは20〜70℃の温度を選択する。
【0055】
反応混合物に対して沈降剤、またはマグネシウムおよび/またはカルシウムの塩のいずれかを添加する際の時間は、広い範囲で変化させることができる。
【0056】
工程b)、b’)またはb”)における反応成分を混合するのが好ましく、静的ミキサーまたは動的ミキサーの手段によるのが、より好ましい。この目的のためには、たとえば、スターラー、プロペラ、パドルおよび/またはポンプが使用される。
【0057】
工程b)、b’)またはb”)からの反応混合物は、構成成分を添加した後、場合によってはさらに混合することによって、無機化合物へのマグネシウムおよび/またはカルシウムの水酸化物および/または酸化物の沈降的適用が最大限度まで進行するようにする。そのさらなる反応のための時間は、その反応混合物のサイズに左右される。反応の完全さをチェックするためには、一定時間間隔でサンプルを採取し、それについて、マグネシウムおよび/またはカルシウムの含量を分析する。予想されるマグネシウムおよび/またはカルシウムの含量に達していたら、反応を終了させる。
【0058】
本発明の好ましいプロセスの工程c)においては、顔料の上への一般式(I)、(II)、(III)および/または(IV)の脂肪酸のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムを用いたコーティングの際に、そして適切であるならば、さらなる反応の際に、好ましくは80℃より高い温度、好ましくは90℃〜200℃の温度を選択する。好ましい実施態様においては、工程i)、ii)、iii)およびiv)を、工程b)、b’)またはb”)の後に実施して、それにより乾燥および微粉砕された顔料が得られるようにし、ついでそれを、本発明の好ましいプロセスの工程c)で使用する。
【0059】
工程c)においては、好ましくは加熱可能なミキサーの手段により、より好ましくはHenschelミキサーの手段により反応成分を混合する。工程c)は、典型的には300〜2500回転/分、好ましくは500〜1500回転/分(rpm)の速度で実施する。
【0060】
工程c)からの反応混合物は、成分を添加した後、場合によっては、さらなる混合にかけて、少なくとも1種の脂肪酸塩を含む、好ましくはステアリン酸マグネシウムおよび/またはステアリン酸カルシウムを含むコーティングが、完結するようにする。そのさらなる反応のための時間は、その反応混合物のサイズに左右される。反応の完全さをチェックする目的で、一定時間ごとにサンプルを採取し、好ましくはステアリン酸マグネシウムおよび/またはステアリン酸カルシウムを含む脂肪酸塩の含量について分析する。目的とする、ステアリン酸マグネシウムおよび/またはステアリン酸カルシウムの含量に達したら、反応を停止させる。工程c)の後に得られる本発明の製品は、工程a)で使用された顔料と同様に、典型的には粉体状の形態であり、従って、それ以上の仕上げ工程は必要としない。
【0061】
少なくとも1種の脂肪酸塩を含むさらなるコーティングを、湿式法で実施することもまた可能である。たとえば、ステアリン酸ナトリウム溶液を、すでに水酸化マグネシウムを用いてコーティングされた顔料の水性懸濁液に、撹拌しながら添加することも可能である。次いで、カルシウム塩またはマグネシウム塩(たとえば、硝酸カルシウムまたは硫酸マグネシウム)の溶液を撹拌しながら添加することによって、沈降反応を実施すると、そこで、水酸化マグネシウムでコーティングされた顔料へのステアリン酸カルシウムの第二のコーティングが実施される。反応が終了した後で、本発明の無機顔料を、場合によっては、慣用される方法、たとえば濾過法または遠心分離法によってその反応混合物から分離する。単離された固形物を、場合によっては、次いで水、好ましくは脱イオン水を用いて、好ましくはその濾液の導電率が2000μS/m以下、より好ましくは1500μS/m以下になるまで洗浄する。典型的には、洗浄に続けて、標準的な乾燥工程および摩砕工程を実施する。
【0062】
少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングが外側層であるような本発明の顔料を製造するためのさらに好ましい実施態様においては、本発明のプロセスには、本発明の顔料を得る目的で、少なくとも以下の工程が含まれる:
x)酸化鉄、オキシ水酸化鉄、亜鉄酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉄酸マグネシウム、および亜鉄酸マンガンの群から選択される少なくとも1種の無機化合物を、一般式(I)、(II)、(III)および/または(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の少なくとも1種の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムと、工程c)で使用される脂肪酸塩の融点よりも高い温度で混合することにより、一般式(I)、(II)、(III)および/または(IV)(ここでn=10〜20、好ましくは15〜19)の脂肪酸の少なくとも1種のカルシウム塩またはマグネシウム塩を含む、好ましくはステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムを含むコーティングを適用する工程、および
y)工程x)からの反応生成物の水性懸濁液を製造する工程、および
z’)工程y)からの懸濁液に対して、好ましくは溶解させた形で、マグネシウム塩および/またはカルシウム塩を添加、次いで、その懸濁液に対して、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアンモニアの群から選択される沈降剤を、好ましくは溶解させた形で添加することによって、水性懸濁液の中に存在している工程x)からの反応生成物の上に、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを沈降させる工程、
または
z”)工程y)からの懸濁液に対して、好ましくは溶解させた形で、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、およびアンモニアの群から選択された沈降剤を添加し、次いで、その懸濁液に、好ましくは溶解させた形で、マグネシウム塩および/またはカルシウム塩を添加することによって、水性懸濁液の中に存在している工程x)からの反応生成物の上に、少なくとも1種の、マグネシウムまたはカルシウムの水酸化物または酸化物のコーティングを沈降させる工程。
【0063】
別な方法として、その有機コーティングを、以下の方法で実施することもまた可能である。硫酸マグネシウムを、顔料の水性懸濁液に、第一の水酸化マグネシウム層および第二のステアリン酸マグネシウム層を形成させるに十分な量で添加する。その後で、顔料の表面上に水酸化マグネシウム層を形成させるのに適した量の水酸化ナトリウム溶液を、撹拌しながら滴下により添加する。次いで、撹拌しながら、溶液の中に存在している硫酸マグネシウムからステアリン酸マグネシウムの沈降反応をさせる、所定の量のステアリン酸ナトリウム溶液を添加する。反応が終了した後で、本発明の無機顔料を、場合によっては、慣用される方法、たとえば濾過法または遠心分離法によってその反応混合物から分離する。単離された固形物を、場合によっては、次いで水、好ましくは脱イオン水を用いて、好ましくはその濾液の導電率が2000μS/m以下、より好ましくは1500μS/m以下になるまで洗浄する。典型的には、洗浄に続けて、標準的な乾燥工程および摩砕工程を実施する。
【0064】
本発明のプロセスによる本発明の顔料の乾燥は、典型的には、80〜200℃の温度で、場合によっては周囲圧力よりも低い圧力で実施する。
【0065】
顔料を製造するためのプロセスにおいては、いくつかの場合においては、焼成工程が使用される。「焼成」とは、固形または半湿状態の顔料を600℃を超える温度で加熱処理することを意味していると理解されたい。このことは、顔料を脱水したり、別の多形相に転化させたりする場合には、必要となる可能性がある。本発明のプロセスにおいては、焼成工程はまったく必要ない。したがって、本発明のプロセスの好ましい実施態様においては、焼成工程は実施しない。したがって、本発明のプロセスの特に好ましい実施態様においては、600℃より高い温度での焼成工程は実施しない。
【0066】
本発明の顔料は、従来技術よりは改良されたものであるが、その理由は、本発明のコーティングされた顔料を用いて着色されたプラスチック製品およびPVCから製造された製品が、高い熱安定性および/またはUV安定性を有しているからである。
【実施例】
【0067】
実施例および方法
I.使用した測定方法および試験方法の説明
例についての測定結果を表1にまとめた。
【0068】
I.1.MgおよびCaの測定
顔料のマグネシウム含量およびカルシウム含量は、誘導結合プラズマで励起させた後の発光分光法(ICP−OES:誘導結合プラズマ−発光分光法)によって、元素の含量として測定した。
【0069】
I.2.オイル価
オイル価は、DIN ISO 787/5規格に準拠し、gオイル/100g試料の単位で求めた。「試料(sample)」という用語は、未コーティングの顔料または本発明の顔料のいずれかを意味している。
【0070】
I.3.Thermo Haake Rheomix 600pニーダーの手段によるPVCの安定性の試験(ニーダー安定性)
50重量%のVestolit B 7021 Ultraプラス50重量%のSorVyl DB 6668 Natur 3/03からなる粉体状のPVC混合物を、試験対象の粉体状の顔料サンプルと均質に混合する(100%PVC組成物を基準にして4重量%)。
【0071】
50重量%のVestolit B 7021 Ultraプラス50重量%のSorVyl DB 6668 Natur 3/03からなる粉体状のPVC混合物を、試験対象の粉体状の顔料サンプル(100%PVC組成物を基準にして4重量%)または試験対象の混合物と均質に混合する。
【0072】
その顔料処理されたPVC混合物を、ロータリーレオメーターを備え、190℃に予熱しておいた記録式ニーダー(Thermo Haake Rheomix 600p、R6ロールローター)の中に手作業で移す。記録プログラム(PolyLab Monitor)をスタートさせ、ロールローター上でのトルクとサンプルの温度とを、時間に対して記録させる。その顔料処理されたPVC混合物は、190℃、50rpmで混練させる。PVCの安定化に関連させた、コーティングされた顔料の適合性を求めるために、製品の最高温度が測定された点での、時間軸(単位:分)上の最大トルクを報告する。この最大トルクを過ぎると、トルクが顕著に低下するが、その理由は、この時間を過ぎるとPVCが分解し、その結果、混練している製品の粘度が急速に(to an increasing degree)低下するからである。これらの数値を、同一ではあるが、コーティングされていない顔料粉体についての対応する値と比較する。前記の最大値までの時間が長いほど、コーティングされた顔料を用いて着色されたPVCの安定性が高い。
【0073】
II:実施例
II.1.使用した無機顔料およびプラスチックの性質
Bayferrox(登録商標)110顔料粉体:LANXESS Deutschland GmbH製:ヘマタイト(赤色酸化鉄、α−Fe)、BET表面積(DIN ISO 9277):13〜16m/g。
Bayferrox(登録商標)920:ゲータイト、α−FeOOHのペースト:LANXESS Deutschland GmbH製、これを乾燥、摩砕することにより、Bayferrox(登録商標)920粉体が製造される。その粉体状の顔料は、11〜15m/gのBET表面積(DIN ISO 9277)を有している。別な方法として、粉体状のBayferrox(登録商標)920顔料を水と混合して、適切な顔料濃度を有するスラリーを得ることもまた可能である(実施例参照)。
ステアリン酸カルシウム:VWR BDH PROLABO(登録商標)からの粉体、Ca含量:9重量%〜11重量%(CaOとして計算)。
SorVyl DB 6668 Natur 3/03:硬質PVCコンパウンド物:Polymerchemie製(粉体の形態、Ca/Znを用いて安定化されており、ここで、ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)カルシウムの含量が1重量%未満、軟化点が120℃より高く、引火点が190℃よりも高く、発火温度が300℃よりも高く、密度(DIN EN ISO 1183−1、方法A)が1.39g/cm、嵩密度(DIN EN ISO 60)が0.54g/mL、熱安定性(DIN EN 60811−3−2)が25分以上)。
VESTOLIT(登録商標)B7021 Ultra:Vestolit製のMikro−S−PVCホモポリマー(粉体の形態、K値(DIN EN ISO 1628−2)=70、粘度数(DIN EN ISO 1628−2)=125cm/g、嵩密度(DIN EN ISO 60)=0.3g/cm、篩分析(0.063mmの篩上残渣)(DIN EN ISO 1624)<1%、水含量(K.Fischer法、DIN 53 715)≦0.3%、水性抽出物のpH(DIN EN ISO 1264)=8、1.5/sペースト粘度=1.8Pa・s、45/sペースト粘度=2.2Pa・s)。
【0074】
II.2.本発明実施例および比較例
例1(比較例)
145.5gのBayferrox(登録商標)110顔料および4.5gのステアリン酸カルシウムを、Henschel FM4ミキサーに加えた。それら2種の物質を合わせて、161℃、1000rpmで20分間かけて混合した。その粉体状の生成物を、さらに処理することなく、試験に使用する。
【0075】
例2(比較例)
141gのBayferrox(登録商標)110顔料および9gのステアリン酸カルシウムを、Henschel FM4ミキサーに加えた。それら2種の物質を合わせて、164℃、1000rpmで20分間かけて混合した。その粉体状の生成物を、さらに処理することなく、試験に使用する。
【0076】
例3および4のための出発物質1
Bayferrox(登録商標)110の水性懸濁液(6.26molのFe、pH:4.9)3.3dmに、60℃で撹拌しながら、1923mLのMgSO溶液(MgOとして2.58mol/dm)を添加した。次いで、Feの1moleあたり5.12molのNaOHを、溶液として、撹拌しながら30分以内で添加した(16.6mol/dmに濃縮して、2850g)。その懸濁液をさらに60分間撹拌した。その懸濁液のpHは11よりも高かった。反応が終了した後、その顔料は、サクションフィルターを通して濾過し、その濾液の導電率が300μS/cm未満になるまで洗浄し、乾燥キャビネット中120℃で恒量になるまで乾燥させ、Bauermeisterミル(シーブインサート付きクロス−ビーターミル、メッシュサイズ1mm)の中で摩砕した。
【0077】
例3(本発明実施例)
145.5gの顔料(出発物質1)および4.5gのステアリン酸カルシウムを、Henschel FM4ミキサーに加えた。それら2種の物質を合わせて、162℃、1000rpmで20分間かけて混合した。その粉体状の生成物を、さらに処理することなく、試験に使用する。
【0078】
例4(本発明実施例)
141gの顔料(出発物質2)および9gのステアリン酸カルシウムを、Henschel FM4ミキサーに加えた。それら2種の物質を合わせて、165℃、1000rpmで20分間かけて混合した。その粉体状の生成物を、さらに処理することなく、試験に使用する。
【0079】
それらの製品の性質を表1にまとめた。
【0080】
【表1】