【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Y
2Si
2O
7は希土類シリケートの中では比較的安価な材料であるので、航空機エンジン及び発電用ガスタービンなどの大型機械用のコーティング材料として有利である。Y
2Si
2O
7の熱膨張係数は3.7×10
−6/Kであり、SiC繊維強化SiC複合材料(3.5×10
−6/Kから4.5×10
−6/K)に近い。そのため、高温での使用中における熱応力を緩和することが可能である。しかし、Y
2Si
2O
7は1300℃近傍で体積変化を伴う相変態(γ→β)があるため、高温での使用中にコーティングが破損する恐れがあった。
【0007】
一方、Lu
2Si
2O
7及びYb
2Si
2O
7は1400℃以上の高温までβ相が安定して存在し相変態が起こらない。しかし、これらの希土類元素を含む原料は高価であるので、大面積部材にコーティング施行するには高コストになることが問題であった。
【0008】
特許文献3に記載される方法において、複数の希土類ダイシリケート(Lu
2Si
2O
7、Yb
2Si
2O
7、Y
2Si
2O
7)は単なる異結晶の混合状態となり、希土類元素が均一に分布し同一相として存在する状態(固溶体)とはなっていない。この場合、Y
2Si
2O
7の相安定性が向上しないという問題点があった。
【0009】
本発明は、高温環境で皮膜の損傷が抑制されて高い信頼性が得られ、かつ、低コストでコーティングを施工できるコーティング部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、Si基セラミックスまたはSiC繊維強化SiC複合材料からなる基材上に、ボンドコートと、トップコートが順次積層され、前記トップコートが、希土類ダイシリケートと希土類モノシリケートとの混合相からなる第1層を含み、前記希土類ダイシリケートが、(Y
1−aLn
1a)
2Si
2O
7固溶体(Ln
1はNd,Sm,Eu,Gdのうちのいずれかであり、aは、Ln
1がNd,Sm,Euの場合0.1以上0.5以下、Ln
1がGdの場合0.2以上0.5以下)であり、前記希土類モノシリケートが、Y
2SiO
5または(Y
1−bLn
1’
b)
2SiO
5固溶体(Ln
1’はNd,Sm,Eu,Gdのうちのいずれかであり、bは0より大きく0.5以下)であるコーティング部材である。
【0011】
本発明の第2の態様は、Si基セラミックスまたはSiC繊維強化SiC複合材料からなる基材上に、ボンドコートと、トップコートが順次積層され、前記トップコートが、希土類ダイシリケートと希土類モノシリケートとの混合相からなる第1層を含み、前記希土類ダイシリケートが、(Y
1−cLn
2c)
2Si
2O
7固溶体(Ln
2はSc,Yb,Luのうちのいずれかであり、cは、Ln
2がScの場合0.05以上0.5以下、Ln
2がYbまたはLuの場合
0.1以上0.5以下)であり、前記希土類モノシリケートが、Y
2SiO
5または(Y
1−dLn
2’
d)
2SiO
5固溶体(Ln
2’はSc,Yb,Luのうちのいずれかであり、dは0より大きく0.5以下)であるコーティング部材である。
【0012】
Y
2Si
2O
7のYの一部を上記の割合でNd,Sm,Eu,Gdで置換することにより、α相の安定領域が広がる。Y
2Si
2O
7のYの一部を上記の割合でSc,Yb,Luで置換することにより、β相の安定領域が広がる。このため、第1及び第2の態様で規定される組成の希土類ダイシリケートは、1300℃から1400℃程度の高温であっても相変態が起こらない。従って、航空機エンジンまたはガスタービンのコーティングに適用した場合に、相変態に伴う体積変化による皮膜損傷が防止できる。
【0013】
一般に、希土類モノシリケートの方が希土類ダイシリケートよりも熱膨張係数が高い。希土類モノシリケートと希土類ダイシリケートとの混合相の熱膨張係数は、混合比率に依存して変化する。基材とトップコートとの熱膨張係数差が大きいと、トップコート内に歪みが発生してトップコートが損傷する恐れがある。本発明のようにトップコートを希土類モノシリケートと希土類ダイシリケートとの混合相とすることにより、熱応力によるコーティングの損傷を防止できる熱膨張係数に調整することが可能である。
【0014】
第1及び第2の態様において、前記トップコートが前記第1層上に第2層を有し、前記第2層が、Re
2SiO
5(Reは希土類元素)からなることが好ましい。
希土類モノシリケートは希土類ダイシリケートに比べてSiO
2の活量が小さい。このため、希土類モノシリケートは耐水蒸気性に優れる。第2層として希土類モノシリケートの層を形成することにより、トップコートの耐水蒸気性を更に向上させることが可能である。
【0015】
第1及び第2の態様において、前記ボンドコートが積層された前記基材の熱膨張係数と前記第1層の熱膨張係数との差が3×10
−6/K以下であ
る。
第1及び第2の態様において、前記第1層の熱膨張係数と前記第2層の熱膨張係数との差が3×10
−6/K以下であることが好ましい。
【0016】
基材と第1層との熱膨張係数差が3×10
−6/K以下であれば、熱応力を緩和することができ、第1層の損傷を防止することができる。トップコートを2層構成とした場合には、第1層と第2層との熱膨張係数差が3×10
−6/K以下であれば、熱応力による第1層及び第2層の損傷を防止することが可能である。
【0017】
本発明の第3の態様は、Si基セラミックスまたはSiC繊維強化SiC複合材料からなる基材上に、ボンドコートが形成される工程と、前記ボンドコート上にトップコートが形成される工程とを含み、前記トップコートを形成される工程が、(Y
1−aLn
1a)
2Si
2O
7固溶体(Ln
1はNd,Sm,Eu,Gdのうちのいずれかであり、aはLn
1がNd,Sm,Euの場合0.1以上0.5以下、Ln
1がGdの場合0.2以上0.5以下)である希土類ダイシリケートの粉末と、Y
2SiO
5または(Y
1−bLn
1’
b)
2SiO
5固溶体(Ln
1’はNd,Sm,Eu,Gdのうちのいずれかであり、bは0より大きく0.5以下)である希土類モノシリケートの粉末とが混合されて溶射粒子が作製される工程と、前記溶射粒子が前記ボンドコートの表面に溶射されて、前記希土類ダイシリケートと前記希土類モノシリケートとの混合相からなる第1層が形成される工程とを含むコーティング部材の製造方法である。
【0018】
本発明の第4の態様は、Si基セラミックスまたはSiC繊維強化SiC複合材料からなる基材上に、ボンドコートが形成される工程と、前記ボンドコート上にトップコートが形成される工程とを含み、前記トップコートを形成される工程が、(Y
1−cLn
2c)
2Si
2O
7固溶体(Ln
2はSc,Yb,Luのうちのいずれかであり、cはLn
2がScの場合0.05以上0.5以下、Ln
2がYbまたはLuの場合0.1以上0.5以下)である希土類ダイシリケートの粉末と、Y
2SiO
5または(Y
1−dLn
2’
d)
2SiO
5固溶体(Ln
2’はSc,Yb,Luのうちのいずれかであり、
dは0より大きく0.5以下)である希土類モノシリケートの粉末とが混合されて溶射粒子が作製される工程と、前記溶射粒子が前記ボンドコートの表面に溶射されて、前記希土類ダイシリケートと前記希土類モノシリケートとの混合相からなる第1層が形成される工程とを含むコーティング部材の製造方法である。
【0019】
上述したように、(Y
1−aLn
1a)
2Si
2O
7固溶体(Ln
1:Nd,Sm,Eu,Gdのうちのいずれか)、または、(Y
1−cLn
2c)
2Si
2O
7固溶体(Ln
2:Sc,Yb,Luのうちのいずれか)で表される希土類ダイシリケートは高温での相安定性に優れる。
本態様では予め固溶体化された希土類ダイシリケート粒子を溶射粒子に用いているので、希土類の分布が均一なトップコートを形成することが可能である。この結果、希土類ダイシリケートの相安定性が向上して皮膜を長寿命化できる。
【0020】
第3及び第4の態様において、前記トップコートを形成する工程が、Re
2SiO
5(Reは希土類元素)からなる粒子が前記第1層の表面に溶射されて、第2層が形成される工程を含むことが好ましい。
第2層として希土類モノシリケートの層を形成することにより、耐水蒸気性を更に向上させることが可能である。
【0021】
第3及び第4の態様において、前記ボンドコートが積層された前記基材の熱膨張係数と前記第1層の熱膨張係数との差が3×10
−6/K以下となる比率で、前記希土類ダイシリケートの粉末と前記希土類モノシリケートの粉末とが混合され
る。
【0022】
第3及び第4の態様において、前記第1層の熱膨張係数と前記第2層の熱膨張係数との差が3×10
−6/K以下となる比率で、前記希土類ダイシリケートの粉末と前記希土類モノシリケートの粉末とが混合されることが好ましい。
【0023】
希土類モノシリケートと希土類ダイシリケートとの混合相の熱膨張係数は、混合比率に依存して変化する。本態様では、基材と第1層との熱膨張係数差が3×10
−6/K以下となるように希土類モノシリケートと希土類ダイシリケートとの混合比率を調整して作製した粒子を用いて第1層を形成するので、第1層の損傷を防止することができる。
トップコートを2層構成とする場合には、第1層と第2層との熱膨張係数差が3×10
−6/K以下となるように希土類モノシリケートと希土類ダイシリケートとの混合比率を調整して作製した粒子を用いて第1層を形成すれば、第1層及び第2層の損傷を防止することが可能である。