(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462012
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】警報方法およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20190121BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
B25J19/06
G08B21/02
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-575329(P2016-575329)
(86)(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公表番号】特表2017-520419(P2017-520419A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】EP2014064079
(87)【国際公開番号】WO2016000770
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2017年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ブールマイスター、ゼーレン
(72)【発明者】
【氏名】ホルツ、マルク
【審査官】
臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/089885(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/080882(WO,A1)
【文献】
特開2006−035408(JP,A)
【文献】
特開2009−123045(JP,A)
【文献】
特開平01−042797(JP,A)
【文献】
特開2004−027528(JP,A)
【文献】
特開2006−285635(JP,A)
【文献】
特開2012−236244(JP,A)
【文献】
特開2010−208002(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0302072(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0201292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/16−19/06
G05D 1/02
G08B 5/36−21/02
H04N 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の床セグメント(26)を含み、前記床セグメント(26)にそれぞれ1つの作業空間セグメント(24)が関連付けられた作業空間(20)内において、少なくとも1つの第1のロボット(10)を人に警報する方法であって、
a)前記少なくとも1つの第1のロボット(10)により、作業インターバル(50)内で実施されるロボットの動き(18)を予測するステップであって、前記作業インターバル(50)が、第1の時間空間(52)と、その後の第2の時間空間(54)とを含むステップと、
b)前記作業インターバル(50)中に前記少なくとも1つの第1のロボット(10)により走行される空間(19)を検出するステップと、
c)前記第1または第2の時間空間(52、54)内において少なくとも部分的に走行空間(19)内にある少なくとも1つの作業空間セグメント(24)を検出するステップと、
d)関連する前記作業空間セグメント(24)が前記第1の時間空間(52)内において走行されるときに床セグメント(26)に第1の視覚的警報(62)を出力するステップと、
e)関連する前記作業空間セグメント(24)が前記第2の時間空間(54)内において走行されるときに床セグメント(26)に第2の視覚的警報(64)を出力するステップと、を有し、
前記第1および第2の視覚的警報(62、64)の少なくとも一方が、相応する床セグメント(26)に配置された照明要素(30)によって出力される
方法。
【請求項2】
ステップd)およびe)がステップa)からc)のみに依存して実施されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップb)において、前記少なくとも1つの第1のロボット(10)および第1の搬送物(15)により一緒に走行される空間(19)が検出されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2の視覚的警報(62、64)が、それぞれ有色信号または照明パターンとして形成されることを特徴とする請求項1から3の1つに記載の方法。
【請求項5】
ステップc)が少なくとも1つの第3の時間空間(56)に対しても実施され、
少なくとも次のステップf)において関連する作業空間セグメント(24)が走行されるときに、床セグメント(26)に第3の視覚的警報(66)が出力されることを特徴とする請求項1から4の1つに記載の方法。
【請求項6】
方法ステップd)からf)までの1つにおいて、付加的に音響的警報(68)が出力せられる(68)ことを特徴とする請求項1から5の1つに記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2の視覚的警報(62、64)の少なくとも一方が、前記少なくとも1つの第1のロボット(10)の少なくとも1つのプロセスパラメータ(70)に関連して実施されることを特徴とする請求項1から4の1つに記載の方法、
前記第1、第2および第3の視覚的警報(62、64、66)の少なくとも1つが、前記少なくとも1つの第1のロボット(10)の少なくとも1つのプロセスパラメータ(70)に関連して実施されることを特徴とする請求項5記載の方法、
前記第1および第2の視覚的警報(62、64)、および、前記音響的警報(68)の少なくとも1つが、前記少なくとも1つの第1のロボット(10)の少なくとも1つのプロセスパラメータ(70)に関連して実施されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項を引用する請求項6記載の方法、
または、
前記第1、第2および第3の視覚的警報(62、64、66)、および、前記音響的警報(68)の少なくとも1つが、前記少なくとも1つの第1のロボット(10)の少なくとも1つのプロセスパラメータ(70)に関連して実施されることを特徴とする請求項5を引用する請求項6記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのプロセスパラメータ(70)が、前記少なくとも1つの第1のロボット(10)の運動速度および第1または第2の搬送物(15、17)の状況情報(72)、の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
次のステップg)において、それぞれ1つの床セグメント(26)に、関連する前記作業空間セグメント(24)が前記作業インターバル(50)中に前記少なくとも1つの第1のロボット(10)により走行されないときに、視覚的警報解除信号(69)が出力されることを特徴とする請求項1から8の1つに記載の方法。
【請求項10】
方法ステップa)からc)が付加的に少なくとも1つの第2のロボット(11)に対して実施されることを特徴とする請求項1から9の1つに記載の方法。
【請求項11】
制御ユニット(40)と、前記制御ユニット(40)に接続され作業空間(20)内に配置される少なくとも1つの第1のロボット(10)を含み、
前記作業空間(20)がそれぞれ1つの床セグメント(26)を付設する複数の作業空間セグメント(26)を含み、
少なくとも1つの照明要素(30)が、前記制御ユニット(40)に接続され、少なくとも1つの床セグメント(26)にそれぞれ視覚的警報(62、64、66)を出力するように構成されるロボットシステム(80)において、
前記制御ユニット(40)が請求項1から10の1つに記載の方法を実施するように構成されていることを特徴とするロボットシステム。
【請求項12】
少なくとも1つの第2のロボット(11)を含むことを特徴とする請求項11記載のロボットシステム(80)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの照明要素(30)が複数の照明セグメント(32)として構成され、
関連する前記床セグメント(26)上に接しているかまたはその上方に設置されていることを特徴とする請求項11または12記載のロボットシステム(80)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの照明要素(30)が、関連する前記床セグメント(26)の上方に配置された可制御画像プロジェクタ(34)として構成されていることを特徴とする請求項12または13記載のロボットシステム(80)。
【請求項15】
請求項11から14の1つに記載のロボットシステム(80)において、請求項1から10の1つに記載の方法を実施するのに適した、メモリまたはデータ媒体に記憶されているコンピュータプログラム(90)。
【請求項16】
請求項15に記載のコンピュータプログラム(90)を備え、少なくとも1つの第1のロボット(10)に接続された制御ユニット(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムおよび運転中にこのロボットシステムの領域内に滞在する人に警報するための方法に関する。さらに本発明は、ロボットシステムを本発明による警報方法を実施するように駆動するのに適したコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、一つの経路に沿って移動しその際とった経路区間を周囲の人に表示するようにした自走式のロボットが知られている。このため床表面には照明手段が設置され、これらは受信器に連結される。この自走式ロボットは照明制御手段を有しており、床面にある照明手段をON状態にしてロボットが通過する経路区間を照明するようにしている。この場合床面に配置される照明手段はほぼ1つのチェーンを形成している。
【0003】
特許文献2は、ロボット周囲の危険領域を照明装置により指示するモバイル形ロボットを開示している。このためロボットはロボットケースに取り付けられたプロジェクタを有する。ロボットは、危険領域の輪郭を検出しプロジェクタにより適切に形成された投影図を床面に形成ように構成されている。この場合ロボット自体の動きとロボットの一部、たとえばロボットアームの動きがともに考慮されている。
【0004】
特許文献3は、ロボット周囲の検出領域内に居る人を検出するためのセンサシステムを有するロボットを開示している。さらにロボットは計算ユニットを有しており、このユニットは少なくとも部分的に検出領域と重なる危険領域を明示するように構成されている。さらにロボットは画像判別装置を有しており、これにより人の身体部分、たとえば胴体、頭部または腕を判別できるようにされている。ロボットにより危険領域にあると判別された人の身体部分に応じて例えばロボットの走行速度を減少させるなど種々の安全対策が行われる。
【0005】
特許文献4から、一つの面上にレーザ光膜を形成するように構成された有色レーザ光源を備えた警報システムが知られている。特許文献4による警報システムはクレーンブームにある搬送物を動かすクレーンに取り付けられている。レーザ警報システムは搬送物の下側の危険領域を可視化するようにクレーンに取り付けられる。
【0006】
これらの特許文献により公知の警報システムの主要な欠点は、運転中にしばしばロボットと人との接近が生じ、事故がロボットの安全メカニズムの介入によってのみ回避できることにある。この場合ロボットは停止状態になるので、当面の作業プロセスに遅延が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−285635号公報
【特許文献2】国際公開第2009/0633181号
【特許文献3】国際公開第2014/036549号
【特許文献4】特開平05−229784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、公知文献の上述の欠点を克服するロボットシステムおよび関連する警報方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明方法は、作業空間内にある少なくとも1つの第1のロボットを人に警報するのに用いられる。作業空間は多数の作業空間セグメントに区分され、1つの作業空間セグメントには1つの床セグメントが関連するようにされている。本発明方法では、少なくとも1つのロボットの動きを予測する第1のステップが実施される。予測はこの場合少なくとも1つのロボットの制御プログラムの時間的にずれたシミュレーションまたはコード分析により行うことができる。この場合第1のステップでは1つの作業インターバルに対するロボットの動きが予測される。作業インターバルとは、選択可能な期間だけ未来に向かって延長される時間空間である。第2の方法ステップにおいては、少なくとも1つのロボットがこの作業インターバル中にロボットの動きの途中でどの空間を走行するかが検出される。この場合第2のステップで検出される走行空間は、ロボットの基体、および/またはロボットのアーム、および/またはロボットに取り付けられたマニピュレータにより走行される領域を含む。
【0010】
第3の方法ステップでは、少なくとも部分的にロボットにより走行される空間内にある少なくとも1つの作業空間セグメントが検出される。この場合同様に、この走行がそれぞれ第1および/または第2の時間空間内で行われるかどうかが検出される。予測されたロボットの動きが行われる作業インターバルは第1および第2の時間空間を含む。第1の時間空間は好適には未来における0から10秒の時間インターバルであり、第2の時間空間は好適には未来における10から20秒の時間インターバルである。第3の方法ステップでは、少なくとも1つの第1のロボットの作業インターバルにおける規定通りのプログラム経過の過程でいつどの作業空間セグメントに操作員に対する危険状況が存在するかの予測が行われる。これまでの方法ステップに基づき1つの作業空間セグメントが第1の時間空間内でロボットにより走行されることが検出されると、その作業空間セグメントに関連する床セグメントに第1の視覚的警報が出力される。これまでの方法ステップに基づき1つの作業空間セグメントが第2の時間空間内でロボットにより走行されることが検出されると、関連する床セグメントに第2の視覚的警報が出力される。
【0011】
本発明方法は、ロボットの動きの予測に際してロボットのプログラミングの時間的にずれたシミュレーションまたはコード分析に依拠することができる。時間シフトされたシミュレーションまたはロボットのプログラミングのコード解析は、計算能力の要求が低く、技術的に簡単な方法で迅速かつ確実に実行することができる。この場合ロボットの一時的な停止または遅延などの予期不能の外的現象を迅速に視覚的警報の実現化された発生に変換することができる。ロボットのプログラミングは動作指令のシーケンシャルな遂行をほぼ含むので、これによりロボットの動きの予測性はさらに容易化される。
【0012】
本発明方法は、未来の潜在的危険状況の差別化された画像を適切に伝達することを可能にする。これは実行されるロボットの動きの人による予見を容易化し、人はその動作をこれに適合させることができる。これにより簡単に少なくとも1つの第1のロボットへの人の接近が簡単に回避されるので、少なくとも1つの第1のロボットの運転経過の遅延が最小にされる。
【0013】
本発明方法の有利な一実施形態では、少なくとも1つの第1のロボットのほかに少なくとも第1のロボットにより動かされる第1の搬送物も考慮される。これにより少なくとも第1のロボットと第1の搬送物により一緒にとられる走行空間が検出される。これにより本発明方法により人に対する危険状況が存在する走行空間をより正確に検出することができる。この方法はこれにより現在の状況の検出をより差別化でき、人に対し信頼性のある警報方法を可能にするので、作業空間に必要な安全性が改良される。
【0014】
本発明の別の有利な実施形態では、第1および第2の視覚的警報はそれぞれ有色信号としてまたは照明パターンとして形成される。この場合第1および第2の視覚的警報はたとえば種々の色彩の定常的または周期的照明信号として形成することができる。同様に、第1および第2の視覚的警報はそれぞれたとえばスポットパターン、幾何学的フィギュアまたはシンボルなどの幾何学的形態としてそれぞれの床セグメントに形成することができる。この場合照明パターンは時間的に定常または変化するものとすることができる。時間的に変化する照明パターンとはたとえば動画である。本発明方法はこれにより人に対しさらに差別化された警報を発することができ、その明白性に基づき簡単に潜在的危険状況に関する的確な画像が提供される。
【0015】
さらに本発明方法は付加的に、少なくとも第3の時間空間において少なくとも部分的に走行空間内にある作業空間セグメントがあるかどうかを検出できる。少なくとも第3の時間空間内においてある作業空間が走行されることが検出されると、これに関連する床セグメントに第3の視覚的警報が出力される。第3の視覚的警報の発生のもとに第3の時間空間を考慮する警報方法は、現在の状況下において危険ポテンシャルの範囲をより差別化して検出および表示することを可能にする。これにより現況の安全性がさらに高められる。
【0016】
本発明方法の有利な一実施形態においては、第1、第2または第3の視覚的警報が出力される方法ステップにおいて、付加的に音響的警報を発生することができる。音響的警報の発生は危険ポテンシャルが高いという状況を警報することを可能にする。たとえば作業空間内において第1の時間空間内に少なくとも1つの第1のロボットにより走行される作業空間セグメントがもっぱら存在する場合には、これを警報音で知らせることができる。これにより少なくとも1つの第1のロボットの安全メカニズムが働いて遅延が生じるような運転状況が回避される。これは特に、ロボットが高い走行速度で使用されるような作業経過において有利である。
【0017】
本発明方法の別の特に有利な実施形態では、視覚的警報および/または音響的警報がさらに少なくとも1つのロボットの少なくとも1つのプロセスパラメータに関係して形成される。この場合視覚的または音響的警報は、その時の危険状況の大きさに応じて警報が形成されるように適合せしめられる。たとえば大きな危険ポテンシャルが存在すると変化した色調が選ばれ、視覚的警報は定常的から周期的な照明信号に移行するか、または面状の視覚的警報が照明パターンに移行するようにされる。この場合、それに応じて視覚的警報および/または音響的警報が適合せしめられるプロセスパラメータとしては、少なくとも1つの第1のロボットの走行速度とすることができる。作業インターバル中のロボットの走行速度が高い場合には走行速度が低い場合よりも危険ポテンシャルが大きい。さらにプロセスパラメータとしては第1の搬送物の状況情報も使用される。この場合第1の搬送物の状況情報は、第1の搬送物の物理的または化学的特性に基づきこの搬送物から人に対し大きな危険が発生するかどうかを表すものである。その状況情報が本発明方法により強められたまたはより明確な警報を生じるような搬送物とは、たとえば化学剤または溶融物を収容する容器や、尖った対象物、硬質材料からなる物品、または視覚的に知覚困難な材料、たとえばガラスやPMMAからなる物品などである。さらにプロセスパラメータとしては、少なくとも1つのロボットの安全メカニズムが作動するときに惹起される少なくとも1つのロボットの安全対策の態様および/または範囲に関する情報が使用される。たとえば安全メカニズムの作動が全製造ラインの停止に至るようなときには、第1および/または第2の視覚的警報または音響的警報が高められた強さで出力される。安全メカニズムの作動がそれほどの結果を伴わない遅延に至るようなときには、第1および/または第2の視覚的警報または音響的警報は弱められた強さで出力される。
【0018】
本発明方法の特に有利な実施形態では、別のステップにおいて作業空間セグメントが作業インターバル中に少なくとも1つの第1のロボットにより走行されないことが検出される。この場合には関連する床セグメントに視覚的警報解除信号が出力され、作業インターバル中に相応する作業空間セグメント内に危険状況が存在しないことを人に知らせる。これにより作業空間内の人には、少なくとも1つの第1のロボットの停止または遅延を考慮せずに、作業空間のどの領域が問題なく通行できるかが知らされる。これにより本発明方法の効率がさらに改良される。
【0019】
さらに本発明方法は、作業インターバル中のロボットの動きを予測し、この作業インターバル中の走行空間を検出し、作業空間セグメントが第1および第2の時間空間内において少なくとも部分的に走行空間内にあるかどうかを検出する方法ステップが、少なくとも1つの第2のロボットに対しても実施されるように拡張することができる。この場合には作業インターバル中の第2のロボットの動きが予測されるとともに第2のロボットにより走行される空間が別個に検出される。同様に、第1および第2の時間空間内において作業空間セグメントが少なくとも走行空間内にあるかどうかが、別個に検出される。ロボットの動きの予測、走行空間の検出、および少なくとも部分的に走行空間内にある作業空間セグメントの検出の各ステップは、この場合少なくとも1つの第1のロボットに関する対応方法ステップと同時に行われる。第1および第2のロボットに対してそれぞれ観察される作業インターバルは同一であり、並びにそれぞれ少なくとも1つの作業空間セグメントが少なくとも部分的に走行空間内にあるかどうかが検出される第1および第2の時間空間も同一である。これにより多数のロボットを有する作業空間に対しては存在する危険ポテンシャルは一緒に検出されるとともに、多数の第1および第2の視覚的警報を含むコヒーレントな警報画像の枠内で表示される。これにより多数のロボットが存在する環境内に居る人は、複雑な現況を迅速に簡単に検出でき、少なくとも1つのロボットの安全メカニズムが働く危険状況を回避し、これにより作業遂行の遅延を回避できる。本発明方法は、作業空間内における安全性を改良すると同時に、この中にあるロボットにより達成可能な生産性をも高めるものである。
【0020】
本発明はさらに、制御ユニットと、作業空間内にありこの制御ユニットに接続されている少なくとも1つの第1のロボットとを有するロボットシステムに関する。少なくとも1つの第1のロボットと制御ユニットとの接続はこの場合、少なくとも1つの第1のロボットと制御ユニットとの間に信号を交換することができるような各種のデータ接続法を使用することができる。少なくとも1つの第1のロボットが配置される作業空間はこの場合、この作業空間を相応に多数の領域に区分する多数の作業空間セグメントを含む。各作業空間セグメントはこの場合、輪郭が作業空間セグメントの形状に相応する床セグメントを有する。本発明によるロボットシステムはさらに、制御ユニットに接続された少なくとも1つの照明要素を有する。少なくとも1つの照明要素と制御ユニットとの間の接続としては、制御指令を制御ユニットから少なくとも1つの照明要素に伝達できるものであれば各種の接続法が可能である。詳細には接続はデータケーブルまたは無線接続として形成することができる。少なくとも1つの照明要素はこのため、少なくとも1つの床セグメントにそれぞれ視覚的警報を発するように構成される。本発明によるロボットシステムの制御ユニットはさらに、少なくとも1つの第1のロボットを人に警報する方法を実施する状態にあり、本発明による警報方法の特徴を有する。本発明によるロボットシステムは、複雑な作業行程を高められた速度で作業空間内で実施し、作業空間内に滞在し動いている人に対し高度な安全性を与えることができる。同時に少なくとも1つの第1のロボットの停止および遅延を低減するので高い生産性が得られる。
【0021】
本発明によるロボットシステムの有利な一実施形態においては、ロボットシステムは少なくとも1つの第2のロボットを有する。このような実施形態は、狭い空間に多数のロボットを設置し、これらのロボットを高速で運転するとともに複雑な生産行程も実施することができる。この場合少なくとも2つのロボットの協働により生じる複雑な危険状況は人が簡単に認識できるので、人間とロボットとの緊密で確実なネットワークが可能となる。本発明はロボットシステムにより達成可能な生産性をさらに高めることができる。本発明の有利な一実施形態においては、少なくとも1つの照明要素が種々の形状および配置で据え付け可能な多数の照明セグメントとして形成される。照明セグメントは特定の床セグメントに関連しており、それぞれ関連床セグメントに視覚的警報が出力されるように形成されている。照明セグメントはこの場合直接的に関連する床セグメントに取り付けられるかまたは関連する床セグメントの上方に取り付けられる。特に有利な実施形態では照明要素はデッキに取り付けられる。本発明によるロボットシステムの別の実施形態では、少なくとも1つの照明要素は可制御画像プロジェクタとして形成され、関連する床セグメントの上方に取り付けられる。可制御画像プロジェクタは、わずかな数のシステムコンポーネントで多数の床セグメントに1つの視覚的警報を発生することができる。これによりシステムの複雑化が減少され、ロボットシステムの信頼性がさらに高められる。さらに可制御画像プロジェクタではそのプログラミングを簡単に変更できるので、視覚的警報を種々の使用目的に容易に適合させることができる。さらに可制御画像プロジェクタでは定常的または時間的に変化する照明パターンを1つの床セグメント上に投影することができる。本発明によるロボットシステムはこれにより迅速かつ効率的に作業空間内における多様な形態に適合させることができ、多数の適宜な視覚的警報を生成することができる。
【0022】
本発明はさらに、データ担体に記憶され本発明による警報方法を本発明によるロボットシステムで実施するのに適したコンピュータプログラムに関する。この場合コンピュータプログラムは好適にはロボットシステムの制御ユニットのメモリに格納され、少なくとも1つのロボットのデータを検出して少なくとも1つの照明要素を制御するようにされる。
【0023】
本発明のその他の実施形態および利点は、以下に
図1から
図5において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は本発明によるロボットシステムの第1の実施形態の概略平面図を示す。
【
図2】
図2は本発明方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【
図3】
図3は本発明方法の別の実施形態の時間的経過を示す。
【
図4】
図4は本発明によるロボットシステムの第2の実施形態の概略平面図を示す。
【
図5】
図5は本発明によるロボットシステムの第3の実施形態の概略構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、可動マニピュレータを有し、作業空間20内に配置された第1のロボット10を有するロボットシステム80を示す。作業空間20の領域には、第1の搬送物15と第2の搬送物17が搬送方向13に沿って第1のロボット10に導かれる。第1のロボット10はこのため、マニピュレータ12により搬送物15、17を一個ずつ掴み、旋回運動で置き場23に搬送するように構成されている。この場合、第1のロボット10と置き場23は作業空間20内に設置されている。作業空間20はほぼ矩形の多数の作業セグメント24に区分され、これらのセグメントは分離線28に沿って互いに接している。作業セグメント24は詳細には示していないがほぼ直方体の空間セグメントであり、下面がそれぞれ作業空間の床22により境界づけられている。各作業空間セグメント24には相応に1つの床セグメント26が関連付けられており、これらの床セグメント26は同様に仮想分離線28に沿って互いに接している。さらに、床セグメント26はそれぞれ照明セグメントとして構成された照明要素30を備えている。照明セグメント32はそれぞれ、床セグメント26の表面上に照明により、視覚的な警報を出力するように構成されている。
【0026】
図1は、さらに経路27に沿って作業空間20内を動く人Pを示している。
図1には、第1のロボット10によりここには図示しない作業インターバル50で実施されるロボットの動き18が矢印で示されている。この場合、矢印方向はロボットの動き18の時間的経過を示す。第1のロボット10は、この場合ほぼ円弧状の形態を有する空間19を走行する。全体として走行空間19は多数の作業空間セグメント24にまたがっており、それらに関連する床セグメント26の上を通過するようになっている。
図1には、さらに関連する床セグメント26´を備えた作業空間セグメント24´が示されており、これはロボットの動き18の途中で第2の作業セグメント24´´および関連する床セグメント26´´の前で第1のロボットにより走行される。第1の床セグメント26´は
図1には示していない第1の時間空間26において第1のロボット10がその上を通るので、第1の視覚的警報62が第1の床セグメント26´に出力される。第2の床セグメント26´´はその後の図示しない第2の時間空間54において初めて第1のロボット10がその上を通るので、第2の床セグメント2´´には照明要素30により第2の視覚的警報64が出力される。さらに作業空間20は、作業インターバル50内では第1のロボット10により走行されない作業空間セグメント24を有している。これらの作業空間セグメント24では人Pに対しては何らの危険状況がないので、関連する床セグメント26には警報解除信号69が出力される。種々の視覚的警報62、64および警報解除信号69は、どのような危険ポテンシャルが作業空間20のどの領域に存在するかを人Pに指し示す。
【0027】
図2には本発明方法のフローチャートが示されている。第1のステップ110では少なくとも1つの第1のロボット10が作業インターバル50で実施するロボットの動き18の予測が行われる。この場合、少なくとも1つの第1のロボット10のプログラミングに基づき、その計画された動きの経過がその間に少なくとも1つの第1のロボット10の停止または遅延を生じさせるような現象が生じない、という推定のもとに予測される。次の方法ステップ120では、どの空間が少なくとも1つの第1のロボット10により分析されている作業インターバル50内で走行されるかが検出される。次の方法ステップ130では、作業空間セグメント24が少なくとも部分的に走行空間19内にあるかどうかが検出される。作業インターバル50中に少なくとも1つの第1のロボット10により走行される作業空間セグメント24は、この場合まず人Pに対する潜在的危険領域と特定される。さらに方法ステップ130では、第1または第2の時間空間52、54で相応する作業空間セグメント24が少なくとも1つの第1のロボット10により走行されるかどうかが検出される。後の時間空間における作業空間セグメントよりも先の時間空間で走行される作業空間24は、この場合より危険なものとして分類される。
【0028】
方法ステップ130の結果に応じて作業空間セグメント24に対しては第4の方法ステップ140または第5の方法ステップ150が行われる。先に行われた検出ステップ130において、作業空間セグメント24が第1の時間空間52中に少なくとも部分的にロボット10により走行される空間19内にあることが確認されると、関連する床セグメント26には第1の視覚的警報52が出力される。先に行われた方法ステップ130で作業空間セグメント24が第2の時間空間54中に少なくとも部分的に走行空間19内にあることが検出されると、関連する床セグメント26には第2の視覚的警報64が出力される。
【0029】
図3から本発明方法の別の実施形態の時間的経過が明らかにされる。出発点は作業インターバル50の開始を定義するスタート時点51である。
図3には、ほぼ同様にスタート時点51で始まる第1の時間空間52が示されている。ここには図示しない方法ステップ110、120、130中に同様に図示しない作業空間セグメント24が第1の時間空間52内で走行されることが確認されると、第4の方法ステップ140の枠内で第1の視覚的警報62が関連する床セグメント26に出力される。第1の時間空間52には第2の時間空間54が続く。作業空間セグメント24が第2の時間空間54中を走行すると、第5の方法ステップ150の枠内で、第2の視覚的警報64が出力される。この場合、第2の時間空間54は作業インターバル50の範囲内にある。第2の時間空間54には第3の時間空間56が続き、これはほぼ作業インターバル50の終了とともに同様に終了する。作業空間セグメント24が第3の時間空間56中を走行すると、第3の視覚的警報66が関連する床セグメント26に出力される。さらに
図3は、作業インターバル50の終了後の付加的な時間空間59も示されている。作業空間セグメント24が付加的時間空間59の開始までに走行されないと、関連する床セグメント26には警報解除信号69が出力される。矢印57は時間経過を示しているので、作業インターバル50、並びに時間空間52、54、59は常に観察の開始時点51と関連して理解される時間空間である。時間空間52、54、56、59は従って対応するロボットシステム80の運転経過において矢印57に沿って共に移動する。
図3に示した方法は個々の方法ステップ110、120、130、140、150の連続的な繰り返しのもとに行われる。
【0030】
図4は作業空間20における本発明によるロボットシステム80の別の実施形態を示す。作業空間20の領域内では第1の搬送物15と第2の搬送物17が搬送方向13に沿って第1のロボット10に案内される。第1のロボット10はこのため、マニピュレータ12により搬送物15、17を一個ずつ掴み、旋回運動で置き場23に搬送するように構成されている。この場合、第1のロボット10と置き場23は作業空間20内に設置される。作業空間20はほぼ矩形の多数の作業セグメント24に区分され、分離線28に沿って互いに接している。作業セグメント24は、この場合詳細には図示しないほぼ直方体の空間セグメントであり、下面がそれぞれ作業空間の床22により境界づけられている。各作業空間セグメント24には相応する床セグメント26が関連しており、床セグメント26は同様に仮想分離線28に沿って互いに接している。さらに、床セグメント26はそれぞれ照明要素30を備えており、これらは照明セグメントとして形成されている。照明セグメント32は、それぞれ床セグメント26の表面上に照明により視覚的警報を出力するように構成されている。
【0031】
図4は、さらに第2のロボット11を示しており、これはマニピュレータ12を有し置き場23の範囲で作業ステップを実施する。第1および第2のロボット10、11は、それぞれ同時に空間19を走行する動き18を実施する。この場合、作業空間セグメント24は少なくとも部分的にロボット10、11に対応する走行空間19内にある。動き18の方向は、
図4ではそれぞれ矢印で明示されている。矢印方向は、ここには図示しない作業インターバル50内のそれぞれの動き18の時間的経過に相応する。置き場23の範囲における作業空間セグメント24´´´は、作業インターバル50中に両ロボットにより走行される。第1のロボット10は、同様に図示しない第2の時間空間54における動き18の終了時に作業空間セグメント24´´´を走行する。さらに作業空間セグメント24´´´は第2のロボット11により作業インターバル50の開始時に、従って第1の時間空間52において走行される。ロボットシステム80は本発明による方法に基づき、作業空間セグメント24´´´において既に第1の時間空間52で危険ポテンシャルが存在することを検知し、対応する床セグメント26´´´に第1の視覚的警報62を出力する。第1の視覚的警報62は、この場合照明セグメント32として形成された照明要素30により出力される。
【0032】
同様に少なくとも部分的に走行空間19内にある別の作業空間セグメント24に対しては同様に本発明方法に基づき、第1または第2の時間空間52、54内に危険ポテンシャルが存在するかどうかおよび相応する第1または第2の視覚的警報62、64が出力されたかどうかが検出される。ロボット10、11により走行されない作業空間セグメント24では警報解除信号69が出力される。
【0033】
図5から2つのロボット10、11を含む本発明によるロボットシステム80の構成が概略的に明らかにされる。ロボット10、11は、それぞれアクチュエータ16を介して駆動されるマニピュレータ12を有している。ロボット10、11はそれぞれさらにセンサ機構14を備えており、これらはたとえば人の存在を検知して関連情報をロボット10、11の制御装置に伝達する働きをする。ロボット10、11は、作業空間20内に第1および第2の搬送物15、17の作業ステップを遂行するために配置される。搬送物15、17は、それぞれロボット10、11のセンサ機構14を介して検出することのできる状況情報72を有している。ロボット10,11は、検出された状況情報72を接続具42を介して制御ユニット40に伝送する状態にある。状況情報72のほかに、たとえばロボット10、11の運動速度のようなほかのプロセスパラメータ70も接続具42を介して制御ユニット40に伝達される。接続具42はデータの搬送に適したものであり、第1のロボット10と制御ユニット40の間でデータケーブル44として形成される。第2のロボット11は、無線接続用に形成された接続具42を介して制御ユニット40に接続されている。
【0034】
さらに
図5は、それぞれ詳細には示してない作業空間セグメント24に関連する多数の床セグメント26を概略的に示す。床セグメント26は照明要素30として用いられる照明セグメント32を有している。個々の照明セグメント32は、少なくとも1つの床セグメント26上に視覚的警報62、64、66または警報解除信号69を出力するのに適している。1つの床セグメント26は、無線接続具46を介して制御ユニット40に接続される。そのほかの床セグメント36は接続具42として用いられるデータケーブル44を介してビーマーとして形成される可制御画像プロジェクタ34に接続され、床セグメント26上に視覚的警報62、64、66も出力する状態にある。さらに可制御画像プロジェクタ34は、詳細には図示しない床セグメント26の上に照明要素30なしに視覚的警報62、64、66または警報解除信号69を出力するのに適している。可制御画像プロジェクタ34は制御ユニット40を介して、視覚的警報62、64、66または警報解除信号69として一定のまたは時間的に可変な照明パターンを出力するように制御され得る。視覚的警報62、64、66はこの場合種々の色を取ることができ、あるいは色の変化や静止画または動画のシンボルとして形成される。ロボットシステム80はまた音響的警報信号発信器36を備えており、この発信器はデータケーブル44を介して制御ユニット40に接続され、危険ポテンシャルが増大する状況下で付加的に音響的警報を作業空間20内の人に出力するのに適している。制御ユニット40は、ロボットシステム80内で本発明方法を実施するコンピュータプログラム90を実行可能に記憶しているメモリを有している。コンピュータプログラム90は、ロボット10、11に関して検出され接続具42を介してデータケーブル44または無線接続具46により送信される全ての情報、たとえばプロセスパラメータ70を本発明方法の枠内で処理し評価するように形成されている。コンピュータプログラム90はまた、制御信号を個々の照明要素30、可制御画像プロジェクタ34または音響的警報発信器36に伝送し、相応する視覚的警報62、64、66、音響的警報68および警報解除信号69を出力するのにも適している。
【符号の説明】
【0035】
10 第1のロボット
11 第2のロボット
12 マニピュレータ
13 搬送方向
14 センサ機構
15 搬送物
16 アクチュエータ
17 搬送物
18 ロボットの動き
19 ロボットの走行空間
20 作業空間
23 置き場
24 作業空間セグメント
26 床セグメント
28 仮想分離線
30 照明要素
32 照明セグメント
34 画像プロジェクタ
36 音響的警報発信器
40 制御ユニット
42 接続具
44 データケーブル
46 無線接続具
62、64、66 視覚的警報
69 警報解除信号
70 プロセスパラメータ
80 ロボットシステム
90 コンピュータプログラム