(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凝縮器水温設定点は、前記確率論的励起信号が画定する確率論的部分と、推定された勾配をゼロへと駆動することによって決定された非確率論的部分とを含む請求項1の極値探索制御システム。
前記極値探索制御器は、前記凝縮器水温設定点に対する前記電力消費の勾配を、指数関数的忘却を伴う再帰的最小二乗推定プロセスを行うことによって推定するように構成される請求項1の極値探索制御システム。
前記極値探索制御器は、前記凝縮器水温設定点に対する前記電力消費の勾配を、回帰プロセスを行うことによって推定するように構成される請求項1の極値探索制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面を全体的に参照すると、いくつかの実施形態に係る様々な極値探索制御(extremum−seeking control(ESC))のシステム及び方法が示される。一般に、ESCは、所定の性能指標を最適化するべく未知及び/又は時変のシステム入力を動的にサーチ可能な自己最適化制御方法の一区分である。ESCは、ディザ信号の使用を介した勾配サーチの動的な実現とみなすことができる。システム入力uに対するシステム出力yの勾配は、システム動作にわずかな摂動を加えて復調尺度を当てはめることにより得ることができる。
【0042】
閉ループシステムにおけるフィードバックループを使用して当該勾配をゼロへと駆動することにより、システム性能の最適化が得られる。ESCは、制御対象のシステムのためのモデルが、ESCのシステム最適化には必要とされないという意味で、非モデルベースの制御方法である。ESCの様々な実装は、特許文献1〜5、米国特許出願第14/495,773号明細書、米国特許出願第14/538,700号明細書、米国特許出願第14/975,527号明細書及び米国特許出願第14/961,747号明細書に詳述されている。これらの特許文献及び特許出願は、ここに参照として組み入れられる。
【0043】
いくつかの実施形態において、極値探索制御器は、プラントに供給される制御入力uに摂動を与えるべく確率論的励起信号qを使用する。制御器は、確率論的信号を生成するべく構成された確率論的信号生成器を含んでよい。確率論的信号は、ランダム信号(例えばランダムウォーク信号、ホワイトノイズ信号等)、非周期的な信号、予測不可能な信号、擾乱信号、又は他のタイプの非決定論的若しくは非反復性信号とすることができる。いくつかの実施形態において、確率論的信号は非ゼロ平均を有する。確率論的信号は、励起信号qを生成するべく積分することができる。
【0044】
確率論的励起信号qは、制御入力uに対するプラント出力(すなわち性能変数y)の勾配を推定するのに十分な制御入力uの変動を与えることができる。確率論的励起信号qは、伝統的な周期的ディザ信号vと比べ、いくつかの利点を有する。例えば、確率論的励起信号qは、伝統的な周期的ディザ信号vよりも知覚されにくい。このため、確率論的励起信号qが制御入力uに与える影響は、伝統的な周期的ディザ信号vによって引き起こされる周期的な振動よりも目立ちにくい。確率論的励起信号qの他の利点は、ディザ周波数ω
vがもはや必須パラメータではないことから、制御器のチューニングが単純化されることにある。したがって、制御器は、確率論的励起信号qを生成するときに、プラントの固有振動数を知り又は推定する必要がない。
【0045】
いくつかの実施形態において、極値探索制御器は、制御入力uに対する性能変数yの勾配を推定するべく再帰的推定法を使用する。例えば、制御器は、勾配dy/duの推定値を生成するべく再帰的最小二乗(RLS)推定法を使用することができる。いくつかの実施形態において、制御器は、RLS推定法の一部として指数関数的忘却を使用する。例えば、制御器は、再帰的推定法において使用される性能変数y、制御入力u及び/又は他の変数の指数加重移動平均(EWMA)を計算するべく構成することができる。指数関数的忘却は、(バッチプロセスに対する)データ記憶の必須量を低減するので、制御器は、最近のデータへの感受性を高く維持し、ひいては最適点のシフトに対する応答性が高い。
【0046】
いくつかの実施形態において、極値探索制御器は、性能変数yを制御入力uに関連づける正規化相関係数ρを推定する。相関係数ρは、性能勾配dy/duに関連づける(例えばdy/duに比例する)ことができるが、性能変数yの範囲に基づいてスケールが拡大又は縮小する。例えば、相関係数ρは、−1≦ρ≦1の範囲にスケールが合わせられた性能勾配dy/duの正規化尺度とすることができる。正規化相関係数ρは、性能変数y及び制御入力u間の共分散、性能変数yの分散、並びに制御入力uの分散に基づいて推定することができる。いくつかの実施形態において、正規化相関係数ρは、再帰的推定プロセスを使用して推定することができる。
【0047】
フィードバック制御器は、性能勾配dy/duの代わりに相関係数ρを使用することができる。例えば、フィードバック制御器は、相関係数ρをゼロへと駆動するべく制御入力uのDC値wを調整することができる。性能勾配dy/duの代わりに相関係数ρを使用することの一つの利点は、フィードバック制御器が使用するチューニングパラメータを、性能変数yのスケールに基づいてカスタマイズ又は調整する必要のない一般的なチューニングパラメータセットにできることにある。この利点により、フィードバック制御器に対して制御ループ固有のチューニングを行う必要がなくなるので、フィードバック制御器は、多くの異なる制御ループ及び/又はプラントに全体に対して適用可能となる一般的なチューニングパラメータセットを使用することができる。極値探索制御器の付加的な特徴及び利点が以下に詳述される。
【0049】
ここで
図1〜2を参照すると、極値探索制御システムが実装可能な、いくつかの実施形態に係る建物10及びHVACシステム20が示される。本開示のESCシステム及び方法は主に、建物HVACシステムの文脈で説明されるが、ESCが一般に、関心変数を最適化又は規制する任意タイプの制御システムにも適用可能であることを理解すべきである。例えば、本開示のESCシステム及び方法は、様々なタイプのエネルギー生成システム若しくは装置(例えば発電プラント、蒸気若しくは風力タービン、ソーラーパネル、燃焼システム等)によって生成される一定量のエネルギーを最適化するべく、及び/又は、様々なタイプのエネルギー消費システム若しくは装置(例えば、電子回路、機械設備、宇宙及び陸上車両、建物設備、HVAC装置、冷凍システム等)によって消費される一定量のエネルギーを最適化するべく、使用することができる。
【0050】
様々な実装において、ESCは、(例えば測定され又は計算された入力と設定点との差を最小化することにより)関心変数の設定点を達成するべく及び/又は関心変数を最適化(例えば出力変数を最大化又は最小化)するべく機能する任意タイプの制御器において使用することができる。意図されるのは、ESCが、様々なタイプの制御器(例えばモータ制御器、電力制御器、流体制御器、HVAC制御器、照明制御器、化学制御器、プロセス制御器等)、及び様々なタイプの制御システム(例えば閉ループ制御システム、開ループ制御システム、フィードバック制御システム、フィードフォワード制御システム等)において容易に実装可能なことである。かかる実装はすべて、本開示の範囲内とみなすべきである。
【0051】
特に
図1を参照すると、建物10の斜視図が示される。建物10にはHVACシステム20が与えられる。HVACシステム20は、チラー22、ボイラ24、屋上冷却ユニット26、及び複数の空気ハンドリングユニット(AHU)36を含むように示される。HVACシステム20は、建物10を加熱及び/又は冷却するべく流体循環システムを使用する。被循環流体は、冷却又は加熱が必須か否かに応じて、チラー22において冷却され又はボイラ24において加熱される。ボイラ24は、可燃性物質(例えば天然ガス)を燃焼させることにより、被循環流体に対し熱を加えることができる。チラー22は、被循環流体を、熱交換器(例えば気化器)において他の流体(例えば冷媒)との熱交換関係に置くことができる。冷媒は、気化プロセス中に被循環流体から熱を除去することによって被循環流体を冷却する。
【0052】
チラー22又はボイラ24からの被循環流体は、配管32を介してAHU36へと輸送することができる。AHU36は、被循環流体を、AHU36を通過する空気流との熱交換関係に置く。例えば、空気流は、被循環流体が通って流れるファンコイルユニット又は他の空調ターミナルユニットの配管を通過することができる。AHU36は、空気流を加熱又は冷却するべく、空気流及び被循環流体間の熱伝達を行うことができる。加熱又は冷却された空気は、空気供給ダクト38を含む空気分配システムを介して建物10へと送られ、空気戻りダクト40を介してAHU36へと戻される。
図1において、HVACシステム20は、建物10の各フロアに別個のAHU36を含むように示される。他の実施形態において、一つのAHU(例えば屋上AHU)が、多数のフロア又は領域に給気を行ってよい。AHU36からの被循環流体は、配管34を介してチラー22又はボイラ24へと戻ることができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、チラー22における冷媒は、被循環流体からの熱を吸収して蒸気になる。蒸気冷媒は、チラー22内の圧縮器に供給され、(例えば回転インペラー、スクリュー圧縮器、スクロール圧縮器、往復圧縮器、遠心圧縮器等の使用により)冷媒の温度及び圧力が増加する。圧縮された冷媒は、チラー22内の凝縮器へと吐出される。いくつかの実施形態において、水(又は他の冷流体)がチラー22の凝縮器の管を通るように流れ、冷媒蒸気から吸熱することにより、冷媒の凝縮が引き起こされる。凝縮器の管を通って流れる水は、チラー22から屋上冷却ユニット26へと配管28を介してポンプによりくみ上げられる。冷却ユニット26は、ファン駆動の冷却又はファン駆動の気化を使用して水から熱を除去する。屋上ユニット26にある冷却された水は、チラー22へと配管30を介して戻され、当該サイクルが繰り返される。
【0054】
ここで
図2を参照すると、いくつかの実施形態に係るHVACシステム20の一部分を例示するブロック図が詳細に示される。
図2において、AHU36は、エコノマイザー型空気ハンドリングユニットとして示される。エコノマイザー型空気ハンドリングユニットは、空気ハンドリングユニットが加熱又は冷却を目的として使用する外気及び還気の量を変化させる。例えば、AHU36は、建物10から還気ダクト40を介して還気82を受け取り、給気ダクト38を介して建物10へと給気86を送ることができる。AHU36は、組み合わされて給気86を形成する外気80及び還気82の量を制御するべく、排気ダンパー60、混合ダンパー62及び外気ダンパー64を動作させるように構成することができる。混合ダンパー62を通過することのない還気82はいずれも、排気ダンパー60を通してAHU36から排気84として排気される。
【0055】
ダンパー60〜64はそれぞれ、アクチュエータによって動作させることができる。
図2に示されるように、排気ダンパー60はアクチュエータ54により動作し、混合ダンパー62はアクチュエータ56により動作し、外気ダンパー64はアクチュエータ58により動作する。アクチュエータ54〜58は、通信リンク52を介してAHU制御器44と通信することができる。AHU制御器44は、アクチュエータ54〜58を制御する一以上の制御アルゴリズム(例えば、状態ベースのアルゴリズム、ESCアルゴリズム、PID制御アルゴリズム、モデル予測制御アルゴリズム等)を使用するべく構成されたエコノマイザー制御器とすることができる。AHU制御器44により使用可能なESC法の例は、
図8〜9を参照して詳述される。
【0056】
アクチュエータ54〜58は、AHU制御器44から制御信号を受信し、フィードバック信号をAHU制御器44に供給することができる。フィードバック信号は例えば、現行のアクチュエータ若しくはダンパー位置の表示、アクチュエータが及ぼすトルク若しくは力の量、診断情報(例えばアクチュエータ54〜58によって行われる診断試験結果)、状態情報、試運転情報、構成設定、較正データ、及び/又は他のタイプの、アクチュエータ54〜58による収集、記憶又は使用が可能な情報若しくはデータを含んでよい。
【0057】
なおも
図2を参照すると、AHU36が、冷却コイル68、加熱コイル70及びファン66を含むように示される。いくつかの実施形態において、冷却コイル68、加熱コイル70及びファン66が給気ダクト38の中に配置される。ファン66は、給気86が冷却コイル68及び/又は加熱コイル70を通るように強制するべく構成してよい。AHU制御器44は、給気86の流速を制御するべく、通信リンク78を介してファン66と通信することができる。冷却コイル68は、配管32を介してチラー22からの冷流体を受け取り、配管34を介して当該冷流体をチラー22へと戻すことができる。弁92は、冷却コイル68に供給される冷流体の量を制御するべく、配管32又は配管34に沿って配置してよい。加熱コイル70は、ボイラ24からの熱流体を、配管32を介して受け取り、当該熱流体を、配管34を介してボイラ24に戻すことができる。弁94は、加熱コイル70に供給される熱流体の量を制御するべく、配管32又は配管34に沿って配置してよい。
【0058】
弁92〜94はそれぞれ、アクチュエータによって制御することができる。
図2に示されるように、弁92はアクチュエータ88によって、弁94はアクチュエータ90によって制御される。アクチュエータ88〜90は、通信リンク96〜98を介してAHU制御器44と通信する。アクチュエータ88〜90は、制御信号をAHU制御器44から受信し、フィードバック信号を制御器44に供給する。いくつかの実施形態において、AHU制御器44は、給気ダクト38(例えば冷却コイル68及び加熱コイル70の下流)に配置された温度センサ72から、給気温度の測定値を受信する。しかしながら、温度センサ72は必須というわけではなく、いくつかの実施形態においては含まれなくともよい。
【0059】
AHU制御器44は、(例えば給気86の設定点温度を達成し又は給気86の温度を設定点温度範囲内に維持するため)給気86に供給される加熱量又は冷却量を変調するべく、アクチュエータ88〜90を介して弁92〜94を動かす。弁92〜94の位置は、冷却コイル68又は加熱コイル70によって給気86に供給される冷却量又は加熱量に影響を与え、所望給気温度を達成するべく消費されるエネルギー量に相関し得る。様々な実施形態において、弁92〜94は、AHU制御器44、又はHVACシステム20のための別個の制御器によって動かされてよい。
【0060】
AHU制御器44は、通信リンク96〜98を介して弁92〜94の位置を監視してよい。AHU制御器44は、ESC制御法を使用して変数を最適化するべく、弁92〜94の位置を使用してよい。AHU制御器44は、弁92〜94の最適位置又は標的位置を達成するべく、ダンパー60〜64の位置を決定及び/又は設定することができる。弁92〜94の最適位置又は標的位置は、設定点給気温度を達成するべくHVACシステム20が使用する機械的な加熱又は冷却の最小量(例えば弁92〜94を通る最小流体流)に対応する位置でよい。
【0061】
なおも
図2を参照すると、HVACシステム20が、監視用制御器42及びクライアント装置46を含むように示される。監視用制御器42は、企業レベルの制御器、アプリケーション若しくはデータサーバ、ヘッドノード、主制御器、又はHVACシステム20用の界磁制御器として機能する一以上のコンピュータシステム(例えばサーバ、BAS制御器等)を含んでよい。監視用制御器42は、同じ又は別個のプロトコル(例えばLON、BACnet等)に従う通信リンク50を介して多数の下流建物システム又はサブシステム(例えばHVACシステム、セキュリティシステム等)と通信することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、AHU制御器44は、監視用制御器42から情報(例えば指令、設定点、動作境界等)を受信する。例えば、監視用制御器42は、AHU制御器44にファン速度上限及びファン速度下限を与えることができる。下限により、コンポーネント及び電力の負担となる頻繁なファン起動を回避できる一方、上限により、ファンシステムの機械的又は熱的限界付近での動作を回避できる。様々な実施形態において、AHU制御器44及び監視用制御器42は、分離し(
図2に図示)又は一体にしてよい。一体型実装では、AHU制御器44は、監視用制御器42のプロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールとしてよい。
【0063】
クライアント装置46は、HVACシステム20、そのサブシステム及び/又は装置を制御し、閲覧し、又はこれらと相互作用をするための一以上のヒューマン・マシンインタフェイス又はクライアントインタフェイス(例えばグラフィカルユーザインタフェイス、レポーティングフェイス、テキストベースコンピュータフェイス、クライアント向けウェブサービス、ウェブクライアントにページを提供するウェブサーバ等)を含んでよい。クライアント装置46は、コンピュータワークステーション、クライアント端末、リモート若しくはローカルインタフェイス、又は任意の他のタイプのユーザインタフェイス装置としてよい。クライアント装置46は、固定型端末又は移動型装置としてよい。例えば、クライアント装置46は、デスクトップコンピュータ、ユーザインタフェイス付きコンピュータサーバ、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、PDA、又は任意の他のタイプの移動型又は非移動型装置としてよい。
【0064】
周期的ディザ信号を伴う極値探索制御システム
【0065】
ここで
図3を参照すると、いくつかの実施形態に係る、周期的ディザ信号を伴う極値探索制御(ESC)システム300のブロック図が示される。ESCシステム300は、極値探索制御器302及びプラント304を含むように示される。制御理論におけるプラントは、プロセスと、機械的に制御される一以上の出力との組み合わせである。例えば、プラント304は、機械的に制御される一以上のアクチュエータ及び/又はダンパーを介して建物空間内の温度を制御するべく構成された空気ハンドリングユニットとしてよい。様々な実施形態において、プラント304は、プラント304への入力変数(すなわち被操作変数u)がプラント304からの出力(すなわち性能変数y)に影響を与えるように調整されるチラー動作プロセス、ダンパー調整プロセス、機械的冷却プロセス、換気プロセス、冷凍プロセス、又は任意の他のプロセスを含んでよい。
【0066】
極値探索制御器302は、被操作変数uを変調するべく極値探索制御ロジックを使用する。例えば、制御器302は、被操作変数uの値に摂動を与えて性能勾配pを抽出するべく周期的な(例えば正弦波の)摂動信号又はディザ信号を使用してよい。被操作変数uは、フィードバック制御ループによって決定される性能変数uのDC値に周期的な振動を加えることによって摂動を受け得る。性能勾配pは、被操作変数uに対する性能変数yの勾配又は傾きを表す。制御器302は、性能勾配pをゼロへと駆動する被操作変数uの値を決定するべく極値探索制御ロジックを使用する。
【0067】
制御器302は、入力インタフェイス310を介したプラント304からのフィードバックとして受信された性能変数yの測定値又は他の表示に基づいて、被操作変数uのDC値を決定してよい。プラント304からの測定値は、センサから受信されるプラント304の状態に関する情報、又はシステム内の他の装置に送信される制御信号を含んでよいが、これらに限られない。いくつかの実施形態において、性能変数yは、弁92〜94の一つの測定又は観測された位置である。他の実施形態において、性能変数yは、電力消費、ファン速度、ダンパー位置、温度、又は任意の他の変数の測定若しくは計算された量であり、プラント304によって測定又は計算される。性能変数yは、極値探索制御器302が極値探索制御法を介して最適化しようとする変数としてよい。性能変数yは、プラント304により出力又はプラント304で観測され(例えばセンサを介して)、入力インタフェイス310において極値探索制御器に供給される。
【0068】
入力インタフェイス310は、性能勾配314を検出するべく、性能変数yを性能勾配プローブ312に供給する。性能勾配314は、関数y=f(u)の傾きを含んでよい。ここで、yはプラント304から受信された性能変数を表し、uはプラント304に供給される被操作変数を表す。性能勾配314がゼロのとき、性能変数yは極値値(例えば最大値又は最小値)を有する。したがって、極値探索制御器302は、性能勾配314をゼロへと駆動することにより、性能変数yの値を最適化することができる。
【0069】
被操作変数更新器316は、更新された被操作変数uを、性能勾配314に基づいて生成する。いくつかの実施形態において、被操作変数更新器316は、性能勾配314をゼロへと駆動する積分器を含む。被操作変数更新器316はその後、更新された被操作変数uを、出力インタフェイス318介してプラント304に供給する。いくつかの実施形態において、被操作変数uは、ダンパー60〜64(
図2)の一つ、又はダンパー60〜64に影響を与えるアクチュエータに、出力インタフェイス318を介して制御信号として供給される。プラント304は、ダンパー60〜64の位置を調整する設定点として被操作変数uを使用することにより、外気80と、温度が制御される空間に供給される再循環気83との相対比率を制御することができる。
【0070】
ここで
図4を参照すると、いくつかの実施形態に係る、周期的ディザ信号を伴う他のESCシステム400のブロック図が示される。ESCシステム400は、プラント404及び極値探索制御器402を含むように示される。制御器402は、プラント404からの出力として受信した性能変数yを最適化するべく、極値探索制御法を使用する。性能変数yを最適化することは、yを最小化すること、yを最大化すること、設定点が達成されるようにyを制御すること、又は他の方法で性能変数yの値を規制することを含んでよい。
【0071】
プラント404は、
図3を参照して述べたプラント304と同じか又はプラント304に類似かしてよい。例えば、プラント404は、プロセスと一以上の機械的制御出力との組み合わせでよい。いくつかの実施形態において、プラント404は、一以上の機械的制御アクチュエータ及び/又はダンパーを介して建物空間内の温度を制御するべく構成された空気ハンドリングユニットである。他の実施形態において、プラント404は、一以上の制御入力に基づいて出力を生成するチラー動作プロセス、ダンパー調整プロセス、機械的冷却プロセス、換気プロセス、又は任意の他のプロセスを含んでよい。
【0072】
プラント404は数学的に、入力ダイナミクス422、性能マップ424、出力ダイナミクス426及び擾乱dの組み合わせとして表すことができる。いくつかの実施形態において、入力ダイナミクス422は線形時不変(LTI)入力ダイナミクスであり、出力ダイナミクス426はLTI出力ダイナミクスである。性能マップ424は、静的非線形性能マップとしてよい。擾乱dは、プロセスノイズ、測定ノイズ、又は双方の組み合わせを含んでよい。プラント404のコンポーネントは
図4に示されるが、ESCを適用するには、プラント404の実際の数学モデルが既知である必要がないことに留意すべきである。
【0073】
プラント404は、制御入力u(例えば制御信号、被操作変数等)を極値探索制御器402から出力インタフェイス430を介して受信する。入力ダイナミクス422は、制御入力uを使用し、制御入力に基づく関数信号x(例えばx=f(u))を生成することができる。関数信号xは、出力信号zを関数信号の関数として生成する(すなわちz=f(x))性能マップ424へと渡される。出力信号zは、信号z’を生成する出力ダイナミクス426を通過することができる。信号z’は、擾乱dによる修正を受けて性能変数yを生成する(例えばy=z’+d)。性能変数yは、プラント404からの出力として供給され、極値探索制御器402において受信される。極値探索制御器402は、性能マップ424の出力z及び/又は性能変数yを最適化するx及び/又はuの値を見出そうとする。
【0074】
なおも
図4を参照すると、極値探索制御器402は、入力インタフェイス432を介して性能変数yを受信して当該性能変数yを制御器402内の制御ループ405に供給するように示される。制御ループ405は、ハイパスフィルタ406、復調素子408、ローパスフィルタ410、積分器フィードバック制御器412及びディザ信号素子414を含むように示される。制御ループ405は、ディザ・復調法を使用して性能変数yから性能勾配pを抽出するように構成してよい。積分器フィードバック制御器412は性能勾配pを分析し、性能勾配pをゼロへと駆動するようにプラント入力(すなわち変数w)のDC値を調整する。
【0075】
ディザ・復調法の第1ステップは、ディザ信号生成器416及びディザ信号素子414によって行われる。ディザ信号生成器416は、典型的には正弦波信号である周期的ディザ信号vを生成する。ディザ信号素子414は、ディザ信号vをディザ信号生成器416から受信し、プラント入力wのDC値を制御器412から受信する。ディザ信号素子414は、ディザ信号vをプラント入力wのDC値と組み合わせて、摂動を受けた制御入力uを生成し(例えばu=w+v)、プラント404に供給する。摂動を受けた制御入力uは、プラント404に供給され、前述したように性能変数yを生成するべくプラント404によって使用される。
【0076】
ディザ・復調法の第2ステップは、ハイパスフィルタ406、復調素子408及びローパスフィルタ410によって行われる。ハイパスフィルタ406は、性能変数yをフィルタリングし、フィルタリング済み出力を復調素子408に供給する。復調素子408は、位相シフト418が適用されたディザ信号vをフィルタリング済み出力に乗算することにより、ハイパスフィルタ406の出力を復調する。この乗算のDC値は、制御入力uに対する性能変数yの性能勾配pに比例する。復調素子408の出力がローパスフィルタ410に供給され、ここで、性能勾配p(すなわち復調された出力のDC値)が抽出される。その後、性能勾配pの推定値が、積分器フィードバック制御器412に供給され、ここで、プラント入力uのDC値wが調整されることにより、性能勾配推定値pがゼロへと駆動される。
【0077】
なおも
図4を参照すると、極値探索制御器402が増幅器420を含むように示される。望ましいのは、ディザ信号vの影響がプラント出力yにおいて十分に明白となる程度までディザ信号vの振幅が大きくなるように、ディザ信号vを増幅することである。大きな振幅のディザ信号vは、制御入力uのDC値wが一定のままであっても、制御入力uが大きく変動する結果をもたらし得る。周期的ディザ信号vにより引き起こされる周期的振動を伴う制御入力u及び性能変数yを例示するグラフが、
図6A〜6Bに示される(以下にさらに詳述する)。ディザ信号v周期的な性質に起因して、プラント入力uの大きな変動(すなわちディザ信号vによって引き起こされる振動)は、プラントのオペレータにとって目立つ場合が多い。
【0078】
加えて、ESC法の有効性を確保するには、ディザ信号vの周波数を慎重に選択することが望ましい。例えば、ディザ信号周波数ω
vは、性能変数yに対するディザ信号vの影響を高めるようにプラント304の固有振動数ω
nに基づいて選択することが望ましい。ディザ周波数ω
vを適切に選択することは、プラント404のダイナミクスに関する知識がなければ、困難かつ厳しくなり得る。こうした理由により、周期的ディザ信号vの使用は、伝統的なESCの欠点の一つとなっている。
【0079】
ESCシステム400において、ハイパスフィルタ406の出力は、以下の式に示されるように、性能変数yの値と性能変数yの予測値との差分として表すことができる。
ハイパスフィルタの出力:y−E[y]
ここで、変数E[y]は、性能変数yの予測値である。復調素子408が行う相互相関の結果(すなわち復調素子408の出力)は、以下の式に示されるように、ハイパスフィルタ出力と位相シフト済みのディザ信号との積として表すことができる。
相互相関の結果:(y−E[y])(v−E[v])
ここで、変数E[v]はディザ信号vの予測値である。ローパスフィルタ410の出力は、以下の式に示されるように、ディザ信号v及び性能変数yの共分散として表すことができる。
ローパスフィルタの出力:E[(y−E[y])(v−E[u])]≡Cov(v,y)
ここで、変数E[u]は制御入力uの予測値である。
【0080】
上式が示すのは、ESCシステム400が、ディザ信号v及びプラント出力(すなわち性能変数y)の共分散Cov(v,y)の推定を生成するということである。共分散Cov(v,y)は、ESCシステム400において、性能勾配pの代理として使用することができる。例えば、共分散Cov(v,y)は、ハイパスフィルタ406、復調素子408及びローパスフィルタ410によって計算し、フィードバック入力として積分器フィードバック制御器412へと与えることができる。積分器フィードバック制御器412は、共分散Cov(v,y)をフィードバック制御ループの一部として最小化するようにプラント入力uのDC値wを調整することができる。
【0081】
確率論的励起信号を伴う極値探索制御システム
【0082】
ここで
図5を参照すると、確率論的励起信号を伴う、いくつかの実施形態に係るESCシステム500のブロック図が示される。ESCシステム500は、プラント504及び極値探索制御器502を含むように示される。制御器502は、プラント504からのフィードバックとして入力インタフェイス526を介して性能変数yを受信し、出力インタフェイス524を介してプラント504に制御入力uを供給するように示される。制御器502は、
図3〜4を参照して述べた制御器302及び402と同様に動作してよい。例えば、制御器502は、プラント504からの出力として受信された性能変数yを最適化するべく、極値探索制御(ESC)法を使用してよい。しかしながら、制御器502は、制御入力uに周期的ディザ信号の摂動を与えるのではなく、制御入力uに確率論的励起信号qの摂動を与える。制御器502は、性能変数yの勾配をゼロへと駆動するように制御入力uを調整することができる。このようにして制御器502は、性能変数yの最適値(例えば最大値又は最小値)を達成する制御入力uの値を特定する。
【0083】
いくつかの実施形態において、制御器502によって実装されたESCロジックは、受信した制御信号(例えば、設定点、動作モード信号等)に基づいて制御入力uの値を生成する。制御信号は、ユーザ制御(例えば、サーモスタット、ローカルユーザインタフェイス等)、クライアント装置536(例えば、コンピュータ端末、移動型ユーザ装置、携帯電話機、ノートパソコン、タブレットパソコン、デスクトップパソコン等)、監視用制御器532、又は任意の他の外部システム若しくは装置から受信することができる。様々な実施形態において、制御器502は、外部システム及び装置と、(例えば、NFC(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)、WiFiダイレクト(登録商標)、ケーブル等を使用して)直接的に、又は有線又は無線電子データ通信を使用する通信ネットワーク534(例えば、BACnet(登録商標)ネットワーク、LonWorks(登録商標)ネットワーク、LAN、WAN、インターネット、セルラーネットワーク等)を介して通信することができる。
【0084】
プラント504は、
図4を参照して述べたプラント404に類似してよい。例えば、プラント504は、プロセスと一以上の機械的制御出力との組み合わせでよい。いくつかの実施形態において、プラント504は、一以上の機械的制御アクチュエータ及び/又はダンパーを介して建物空間内の温度を制御するべく構成された空気ハンドリングユニットである。他の実施形態において、プラント404は、一以上の制御入力に基づいて出力を生成するチラー動作プロセス、ダンパー調整プロセス、機械的冷却プロセス、換気プロセス、又は任意の他のプロセスを含んでよい。
【0085】
プラント504は、動的コンポーネントに直列する静的非線形性として数学的に表すことができる。例えば、プラント504は、定数利得ブロック518及び伝達関数ブロック520に直列する静的非線形関数ブロック516を含むように示される。プラント504のコンポーネントが
図5に示されてはいるが、プラント504の実際の数学的モデルは、ESCを適用するのに既知である必要がないことに留意すべきである。プラント504は、極値探索制御器502からの制御入力u(例えば、制御信号、被操作変数等)を、出力インタフェイス524を介して受信する。非線形関数ブロック516は、制御入力に基づく関数信号x(例えばx=f(u))を生成するべく制御入力uを使用することができる。関数信号xは、定数利得ブロック518へと渡すことができる。定数利得ブロック518は、出力信号zを生成するべく関数信号xに定数利得Kを乗算する(すなわちz=Kx)。出力信号zは、伝達関数ブロック520を通過させることにより、擾乱dにより修正されて性能変数yを生成する信号z’を生成することができる(例えばy=z’+d)。擾乱dは、プロセスノイズ、測定ノイズ、又はこれら双方の組み合わせを含んでよい。性能変数yは、プラント504からの出力として供給され、極値探索制御器502において受信される。
【0086】
なおも
図5を参照すると、制御器502は、通信インタフェイス530、入力インタフェイス526及び出力インタフェイス524を含むように示される。インタフェイス530及び524〜526は、情報及び/又は制御信号を通信するための任意数のジャック、ワイヤ端子、ワイヤポート、無線アンテナ、又は他の通信インタフェイスを含んでよい。インタフェイス530及び524〜526は、同じタイプの装置又は異なるタイプの装置でよい。例えば、入力インタフェイス526は、プラント504からアナログフィードバック信号(例えば出力変数、被測定信号、センサ出力、被制御変数)を受信するように構成できる一方、通信インタフェイス530は、ネットワーク534を介して監視用制御器532からデジタル設定点信号を受信するように構成できる。出力インタフェイス524は、デジタル制御信号(例えば被操作変数、制御入力)をプラント504に供給するべく構成されたデジタル出力(例えば光デジタルインタフェイス)としてよい。他の実施形態において、出力インタフェイス524は、アナログ出力信号を供給するべく構成される。
【0087】
いくつかの実施形態においてインタフェイス530及び524〜526は、3つの別個のインタフェイスとしてよりもむしろ一つ又は2つのインタフェイスとして結合することができる。例えば、通信インタフェイス530と入力インタフェイス526とは、監視用制御器532からネットワーク通信を受信するべく構成された一つのイーサネット(登録商標)インタフェイスとして組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、監視用制御器532は、イーサネットネットワーク(例えばネットワーク534)を介して設定点及びフィードバックの双方を供給する。かかる実施形態において、出力インタフェイス524は、プラント504の被制御コンポーネント専用とすることができる。他の実施形態において、出力インタフェイス524は、データ又は制御信号を通信するための、他の標準化された通信インタフェイスであってよい。インタフェイス530及び524〜526は、ここに記載される信号の通信を与え又は促進するべく構成された通信電子機器(例えば受信機、送信機、送受信機、変調器、復調器、フィルタ、通信プロセッサ、通信論理モジュール、バッファ、デコーダ、エンコーダ、暗号化器、増幅器等)を含んでよい。
【0088】
なおも
図5を参照すると、制御器502は、プロセッサ540及びメモリ542を有するプロセシング回路538を含むように示される。プロセッサ540は、汎用若しくは専用のプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、一以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、一群のプロセシングコンポーネント、又は他の適切なプロセシングコンポーネントであってよい。プロセッサ540は、メモリ542に記憶された又は他のコンピュータ可読媒体(例えばCDROM、ネットワーク記憶装置、遠隔サーバ等)から受け取ったコンピュータコード又は命令を実行するように構成される。
【0089】
メモリ542は、本開示に記載される様々なプロセスを完了し及び/又は促進するべくデータ及び/又はコンピュータコードを記憶する一以上の装置(例えばメモリユニット、メモリ装置、記憶装置等)を含んでよい。メモリ542は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードドライブ記憶装置、一時的記憶装置、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、光学メモリ、又は任意の他の、ソフトウェアオブジェクト及び/又はコンピュータ命令を記憶するのに適切なメモリを含んでよい。メモリ542は、本開示で述べられる様々なアクティビティ及び情報構造をサポートするデータベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、又は任意の他のタイプの情報構造を含んでよい。メモリ542は、プロセシング回路538を介してプロセッサ540に通信可能に接続されてよく、ここに記載の一以上のプロセスを(例えばプロセッサ540により)実行するためのコンピュータコードを含んでよい。
【0090】
なおも
図5を参照すると、極値探索制御器502は、入力インタフェイス526を介して性能変数yを受信し、性能変数yを制御器502内の制御ループ505に供給するように示される。制御ループ505は、再帰的勾配推定器506、フィードバック制御器508及び励起信号素子510を含むように示される。制御ループ505は、制御入力uに対する性能変数yの勾配dy/duを決定し、勾配dy/duをゼロへと駆動するべく制御入力uのDC値(すなわち変数w)を調整するように構成してよい。
【0092】
再帰的勾配推定器506は、制御入力uに対する性能変数yの勾配dy/duを推定するように構成してよい。勾配dy/duは、ESCシステム400において決定される性能勾配pに類似し得る。しかしながら、ESCシステム500とESCシステム400との根本的な差異は、勾配dy/duを取得する方法にある。ESCシステム400では、性能勾配pは、
図4を参照して記載される、共分散推定に類似するディザ・復調法を介して取得される。逆に、ESCシステム500の勾配dy/duは、制御入力uに対する性能変数yの傾きを推定する再帰的回帰法を行うことによって取得される。再帰的推定法は、再帰的勾配推定器506によって行うことができる。
【0093】
再帰的勾配推定器506は、勾配dy/duを推定するべく様々な再帰的推定法のいずれかを使用することができる。例えば、再帰的勾配推定器506は、勾配dy/duの推定値を生成するべく再帰的最小二乗(RLS)推定法を使用することができる。いくつかの実施形態において、再帰的勾配推定器506は、RLS推定法の一部として指数関数的忘却を使用する。指数関数的忘却は、バッチ処理と比べてデータ記憶の必須量を低減する。また、指数関数的忘却によりRLS推定法は、最近のデータへの感受性を高く、ひいては、シフトする最適点への応答性を高く維持することができる。再帰的勾配推定器506によって行われるRLS推定法の一例が以下に詳述される。
【0094】
再帰的勾配推定器506は、プラント504からの性能変数yと、励起信号素子510からの制御入力uとを受信しているように示される。いくつかの実施形態において、再帰的勾配推定器506は、性能変数y及び制御入力uの複数のサンプル又は測定値を、一定時間にわたって受信する。再帰的勾配推定器506は、以下の式に示される入力ベクトルx
kを構築するべく、時刻kにおける制御入力uのサンプルを使用してよい。
【数1】
ここで、u
kは、時刻kにおける制御入力uの値である。同様に、再帰的勾配推定器506は、以下の式に示されるパラメータベクトルθ
kハットを構築することができる。
【数2】
ここで、パラメータθ
2ハットは、時刻kにおける勾配dy/duの推定値である。
【0095】
再帰的勾配推定器506は、以下の線形モデルを使用して時刻kにおける性能変数ykハットを推定することができる。
【数3】
このモデルの予測誤差は、以下の式に示されるように、時刻kにおける実際値である性能変数y
kと、時刻kにおける推定値である性能変数y
kハットとの差分である。
【数4】
【0096】
再帰的勾配推定器506は、パラメータ値θ
kハットを決定するべく、RLS法における推定誤差e
kを使用してよい。様々なRLS法のいずれかを、様々な実装において使用してよい。再帰的勾配推定器506が行い得るRLS法の一例は、以下のとおりである。
【数5】
ここで、g
kは利得ベクトル、P
kは共分散行列、λは忘却因子(λ<1)である。いくつかの実施形態において、忘却因子λは以下のように定義される。
【数6】
ここで、Δtはサンプリング時間、τは忘却時定数である。
【0097】
再帰的勾配推定器506は、過去値である時刻k−1における共分散行列P
(k−1)と、時刻kにおける入力ベクトルx
kTの値と、忘却因子とに基づいて時刻kにおける利得ベクトルg
kを計算するべく、g
kの式を使用してよい。再帰的勾配推定器506は、忘却因子λと、時刻kにおける利得ベクトルg
kの値と、時刻kにおける入力ベクトルx
kTの値とに基づいて時刻kにおける共分散行列P
kを計算するべく、P
kの式を使用してよい。再帰的勾配推定器506は、時刻kにおける誤差e
kと時刻kにおける利得ベクトルg
kとに基づいて時刻kにおけるパラメータベクトルθ
kハットを計算するべく、θ
kハットの式を使用してよい。ひとたびパラメータベクトルθ
kハットが計算されると、再帰的勾配推定器506は、以下の式に示されるようにθ
kからθ
2ハットパラメータの値を抽出することにより、勾配dy/duの値を決定することができる。
【数7】
【0098】
様々な実施形態において、再帰的勾配推定器506は、dy/duを推定するべく、様々な他の再帰的推定法のいずれかを使用することもできる。例えば、再帰的勾配推定器506は、dy/duを推定するべく、カルマンフィルタ、正規化勾配法、非正規化勾配適応法、再帰的ベイズ推定法、又は様々な線形若しくは非線形フィルタのいずれかを使用してよい。他の実施形態において、再帰的勾配推定器506は、再帰的推定法よりもむしろ、バッチ推定法を使用してよい。このように、勾配推定器506は、再帰的勾配推定器よりもむしろ、バッチ勾配推定器としてよい。バッチ推定法において、勾配推定器506は、バッチ回帰アルゴリズムへの入力として、制御入力u及び性能変数yの過去値のバッチ(例えば過去値又は履歴値のベクトル又はセット)を使用してよい。適切な回帰アルゴリズムは例えば、通常の最小二乗回帰、多項式回帰、部分最小二乗回帰、リッジ回帰、主成分回帰、又は様々な線形若しくは非線形回帰法のいずれかを含んでよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、再帰的勾配推定器506は、再帰的推定法により得られるいくつかの利点ゆえに、バッチ推定法よりもむしろ、再帰的推定法を使用する方が望ましい。例えば、上述の再帰的推定法(すなわち指数関数的忘却を伴うRLS)は、勾配推定法の性能を、バッチ最小二乗法よりも大幅に改善するように示されている。指数関数的忘却を伴うRLS推定法は、必要とするデータ記憶がバッチ処理よりも少なくなることに加え、最近のデータへの感受性を高く維持し、ひいては最適点のシフトに対する応答性が高い。
【0100】
いくつかの実施形態において、再帰的勾配推定器506は、制御入力u及び性能変数y間の共分散を使用して勾配dy/duを推定する。例えば、最小二乗アプローチにおける傾きβハットの推定は、以下のように定義することができる。
【数8】
ここで、Cov(u,y)は制御入力u及び性能変数y間の共分散であり、Var(u)は制御入力uの分散である。再帰的勾配推定器506は、前式を使用して推定傾きβハットを計算し、当該推定傾きβハットを勾配dy/duの代理として使用することができる。とりわけ、推定傾きβハットは、制御入力u及び性能変数yのみの関数となる。これは、
図4を参照して述べた共分散導出法とは異なる。当該共分散導出法では、推定性能勾配pは、ディザ信号v及び性能変数y間の共分散の関数であった。ディザ信号vを制御入力uに置換することにより、制御器502は、ディザ信号v(
図4に示す)又は励起信号q(
図5に示す)をなんら知ることなく、傾きβハットの推定値を生成することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、再帰的勾配推定器506は、性能変数y
kハットを推定するのに線形モデルよりもむしろ、高次モデル(例えば、二次モデル、三次モデル等)を使用する。例えば、再帰的勾配推定器506は、以下の二次モデルを使用して、時刻kにおける性能変数y
kハットを推定してよい。
【数9】
これは、入力ベクトルx
k及びパラメータベクトルθ
kハットを以下のように更新することにより、y
kハット=x
kTθ
k−1ハットの形式に記載することができる。
【数10】
【0102】
再帰的勾配推定器506は、(直線というよりもむしろ)二次曲線を、様々な時刻kにおける制御入力u及び性能変数yの組み合わせによって画定されるデータ点にフィッティングさせる二次モデルを使用してよい。二次モデルは、線形モデルによっては得られない2次情報を与えるので、フィードバック制御器508の収束性を改善するために使用することができる。例えば、線形モデルによれば、再帰的勾配推定器506は、曲線沿いの特定箇所における(すなわち制御入力uの特定値に対する)勾配dy/duを計算し、フィードバック信号として勾配dy/duを供給することができる。y
kハットを推定するべく線形モデルを使用する実施形態にとって、勾配dy/du(すなわちuに対する線形モデルの微分係数)はスカラー値となる。制御器508が、勾配dy/duのスカラー値をフィードバック信号として受信すると、制御器508は、制御入力uの最適値(すなわち勾配dy/du=0となる制御入力uの値)に到達するまで、勾配dy/duをゼロに向けて駆動する方向へと制御入力uの値を徐々に増加させて調整することができる。
【0103】
二次モデルによれば、再帰的勾配推定器506は、フィードバック制御器508に対し、単純なスカラー値よりもむしろ、勾配dy/duの関数を供給することができる。y
kハットを推定するべく二次モデルを使用する実施形態にとって、勾配dy/du(すなわちuに対する二次モデルの微分係数)は、制御入力uの線形関数(例えばdy/du=2θ
3ハットu
k+θ
2ハット)となる。制御器508が、勾配dy/duの線形関数をフィードバック信号として受信すると、制御器508は、勾配dy/du=0となる制御入力uの最適値(例えばu
k,opt=−θ
2ハット/2θ
3ハット)を解析的に計算する。したがって、制御器508は、勾配dy/duがゼロに向かって動いているか否かを決定するための徐々に増加させる調整及び実験によることのない、最適値に迅速にアプローチするスマートなステップを使用して、制御入力uを調整することができる。
【0105】
なおも
図5を参照すると、極値探索制御器502が、確率論的信号生成器512及び積分器514を含むように示される。勾配dy/duを確実に推定するべく望ましいのは、性能変数yへと持ち込まれる制御入力uの十分な変動を与えることである。制御器502は、持続性励起信号qを生成するべく確率論的信号生成器512及び積分器514を使用してよい。励起信号qは、励起信号素子510において制御入力uのDC値wに加算され、制御入力uを形成することができる(例えばu=w+q)。
【0106】
確率論的信号生成器512は、確率論的信号を生成するように構成することができる。様々な実施形態において、確率論的信号は、ランダム信号(例えば、ランダムウォーク信号、ホワイトノイズ信号等)、非周期的な信号、予測不可能な信号、擾乱信号、又は任意の他のタイプの非決定論的信号若しくは非反復性信号としてよい。いくつかの実施形態において、確率論的信号は非ゼロ平均を有する。確率論的信号は、励起信号qを生成するべく積分器514によって積分されてよい。
【0107】
励起信号qは、再帰的勾配推定器506が勾配推定法を行うのに十分な変動を制御入力uに与えることができる。いくつかの例において、励起信号qの加算により、制御入力uがその最適値から逸れていくドリフトが生じる。しかしながら、フィードバック制御器508は、制御入力uがその最適値へと連続的に引き戻されるようにDC値wを調整することにより、かかるドリフトを補償することができる。伝統的なESCについては、励起信号qの振幅は、性能変数yに見られる任意の付加ノイズ(例えば、プロセスノイズ、測定ノイズ等)を克服するように(例えばユーザによる手動又は制御器502による自動で)選択することができる。
【0108】
極値探索制御器502が生成する確率論的励起信号qは、制御器402が生成する周期的ディザ信号vに対し、いくつかの利点を有する。例えば、確率論的励起信号qは、伝統的な周期的ディザ信号vよりも知覚されにくい。このため、確率論的励起信号qの制御入力uへの影響は、伝統的な周期的ディザ信号vが引き起こす周期的な振動よりも目立ちにくい。確率論的励起信号qが励起する制御入力uと、得られた性能変数yとを例示するグラフが
図7A〜7Bに示される(以下に詳述される)。
【0109】
確率論的励起信号qの他の利点は、ディザ周波数ω
vがもはや必須パラメータではないことから、チューニング制御器502が単純化されることにある。したがって、制御器502は、確率論的励起信号qを生成するときにプラント504の固有振動数を知る又は推定する必要がない。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、複数の制御入力uをプラント504に供給する。各制御入力は、別個の確率論的励起信号qによって励起してよい。各確率論的励起信号qはランダムなので、複数の確率論的励起信号qを確実に相関し合わないようにする必要性がない。制御器502は、周波数固有のディザ・復調法を行うことなく、各制御入力uに対する性能変数yの勾配dy/duを計算することができる。
【0111】
伝統的なESCに関する問題の一つは、性能勾配dy/duが性能変数yの範囲又はスケールの関数である点にある。性能変数yの範囲又はスケールは、プラント504の静的及び動的コンポーネントに依存し得る。例えば、プラント504は、定数利得K(すなわち定数利得ブロック518)に直列する非線形関数f(u)(すなわち関数ブロック516)を含むように示される。この表現から明らかなように、性能変数yの範囲又はスケールは定数利得Kの関数である。
【0112】
性能勾配dy/duの値は、非線形関数f(u)によって与えられる非線形性ゆえに、制御入力uの値に基づいて変わり得る。しかしながら、性能勾配dy/duのスケールもまた、定数利得Kの値に依存する。例えば、性能勾配dy/duは、以下の式を使用して決定することができる。
【数11】
ここで、Kは定数利得であり、f’(u)は関数f(u)の微分係数である。性能勾配dy/duは、一貫したフィードバック制御ループ性能を得るべく、(例えばスケーリングパラメータκを乗算することにより)スケーリング又は正規化することが望ましい。しかしながら、性能変数yのスケールを知らなければ(例えばプラント504が適用する定数利得Kを知らなければ)、スケーリングパラメータκの適切な値を決定することは厳しいものとなり得る。
【0113】
なおも
図5を参照すると、極値探索制御器502が相関係数推定器528を含むように示される。相関係数推定器528は、相関係数ρを生成して相関係数ρをフィードバック制御器508に供給するように構成してよい。相関係数ρは、性能勾配dy/duに関連づけられる(例えばdy/duに比例する)が、性能変数yの範囲に基づいてスケーリングされる。例えば、相関係数ρは、性能勾配dy/duの正規化された尺度としてよい(例えば範囲0≦ρ≦1にスケーリングされる)。
【0114】
相関係数推定器528は、制御入力u及び性能変数yを入力として受信するように示される。相関係数推定器528は、以下の式に示されるように、制御入力u及び性能変数yの分散及び共分散に基づいて相関係数ρを生成することができる。
【数12】
ここで、Cov(u,y)は制御入力u及び性能変数y間の共分散であり、Var(u)は制御入力uの分散であり、Var(y)は性能変数yの分散である。前式は、制御入力uの標準偏差σ
u及び性能変数yの標準偏差σ
yについて、以下のように書き直すことができる。
【数13】
ここで、Var(u)=σ
u2であり、Var(y)=σ
y2である。
【0115】
いくつかの実施形態において、相関係数推定器528は、再帰的推定法を使用して相関係数ρを推定する。例えば、相関係数推定器528は、以下の式を使用して、制御入力u及び性能変数yの指数加重移動平均(EWMA)を計算することができる。
【数14】
ここで、u
kバー及びy
kバーは時刻kにおける制御入力u及び性能変数yのEWMAであり、u
k−1バー及びy
k−1バーは時刻k−1における制御入力u及び性能変数yの過去のEWMAであり、u
k及びy
kは時刻kにおける制御入力u及び性能変数yの現行の値であり、kは各変数の収集完了サンプルの合計数であり、Wは忘却窓の持続時間である。
【0116】
同様に、相関係数推定器528は、以下の式を使用して、制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)及び共分散Cov(u,y)のEWMAを計算することができる。
【数15】
ここで、V
u,k、V
y,k及びc
kはそれぞれ、時刻kにおける制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)及び共分散Cov(u,y)のEWMAである。V
u,k−1、V
y,k−1及びc
k−1はそれぞれ、時刻k−1における制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)及び共分散Cov(u,y)のEWMAである。相関係数推定器528は、以下の式を使用して、これらの再帰的推定値に基づく相関係数ρの推定値を生成することができる。
【数16】
【0117】
いくつかの実施形態において、相関係数推定器528は、推定傾きβハットに基づいて相関係数ρを生成する。前述のとおり、推定傾きβハットは、以下の式を使用して計算することができる。
【数17】
ここで、Cov(u,y)は制御入力u及び性能変数y間の共分散であり、Var(u)は制御入力uの分散である(すなわちσ
u2)。相関係数推定器528は、以下の式を使用して傾きβハットから相関係数ρを計算することができる。
【数18】
前式からわかるのは、相関係数ρと推定傾きβハットとは、標準偏差σ
uとσ
yとが等しいとき(すなわちσ
u=σ
yのとき)に等しくなることである。
【0118】
相関係数推定器528は、再帰的勾配推定器506から推定傾きβハットを受信し、又は制御入力u及び性能変数yの一セットの値を使用して推定傾きβハットを計算する。例えば、u及びyが有限分散であると仮定すると、相関係数推定器528は、以下の最小二乗推定を使用して傾きβハットを推定することができる。
【数19】
【0119】
制御入力uの狭範囲に対しては、推定傾きβハットは、以下の式に示されるように、性能勾配の代理として使用することができる。
【数20】
前式に示されるように、推定傾きβハットは、未知であり得る定数利得Kを包含する。しかしながら、標準偏差σ
u及びσ
yにより得られる正規化は、定数利得Kの影響を相殺する。例えば、性能変数yの標準偏差σ
yは、以下の式に示されるように、制御入力uの標準偏差σ
uに関連づけられる。
【数21】
【0120】
相関係数ρを計算するべく推定傾きβハットに比σ
u/σ
yを乗算することは、定数利得Kを除算することと等しい。相関係数ρ及び推定傾きβハットは双方とも、制御入力uと性能変数yとの関連性の強さを示す。しかしながら、相関係数ρは正規化されることで、フィードバック制御ループのチューニングを大幅に簡略化するという利点を有する。
【0121】
いくつかの実施形態において、相関係数ρは、フィードバック制御器508によって、性能勾配dy/duの代わりに使用される。例えば、フィードバック制御器508は、相関係数ρをゼロへと駆動するように制御入力uのDC値wを調整することができる。性能勾配dy/duの代わりに相関係数ρを使用することの一つの利点は、フィードバック制御器508により使用されるチューニングパラメータが、性能変数yのスケールに基づいてカスタマイズ又は調整する必要がないチューニングパラメータの汎用セットとなり得ることにある。この利点により、フィードバック制御器508のための制御ループ固有のチューニングを行う必要性がなくなるので、フィードバック制御器508は、多くの異なる制御ループ及び/又はプラントすべてに適用可能なチューニングパラメータの汎用セットを使用することができる。
【0123】
ここで
図6A〜7Bを参照すると、いくつかの実施形態に係る極値探索制御器402及び極値探索制御器502の性能を比較するいくつかのグラフ600〜750が示される。制御器402及び502は、最適制御入力値u=2及び最適性能変数y=−10を有する動的システムを制御するべく使用された。制御器402及び502は双方とも、値u=4から開始し、
図4〜5を参照して述べた極値探索制御法を使用して制御入力uの値を調整することが許容された。制御器402が周期的ディザ信号vを使用する一方、制御器502は確率論的励起信号qを使用する。
【0124】
特に
図6A〜6Bを参照すると、グラフ600及び650が、
図4を参照して述べられた極値探索制御器402の性能を例示する。制御器402は、制御入力uに摂動を与えるべく周期的ディザ信号vを使用する。グラフ600が様々なサンプル時刻における制御入力uの値を示す一方、グラフ650は性能変数yの対応値を示す。制御入力uは、値u=4から開始し、周期的な(すなわち正弦波の)ディザ信号vを使用して摂動が与えられた。周期的ディザ信号vが引き起こす振動性の摂動は、制御入力u及び性能変数yの双方において可視である。
【0125】
特に
図7A〜7Bを参照すると、グラフ700及び750が、
図5を参照して述べた極値探索制御器502の性能を例示する。制御器502は、制御入力uに摂動を与えるべく確率論的励起信号qを使用する。グラフ700が様々なサンプル時刻における制御入力uの値を示す一方、グラフ750は性能変数yの対応値を示す。制御入力uは値u=4から開始し、確率論的励起信号qを使用して摂動が与えられる。確率論的励起信号qは、制御入力uにランダムウォークを適用する。しかしながら、確率論的励起信号qは非周期的かつ有効な小振幅なので、確率論的励起信号qによって引き起こされる摂動は、グラフ700及び750において識別することがほとんどできない。加えて、グラフ700の制御入力uは、グラフ600の制御入力よりも迅速に最適値に到達する。
【0127】
ここで
図8を参照すると、いくつかの実施形態に係る極値探索制御(ESC)法を例示するフロー
図800が示される。フロー
図800に示されるESC法は、プラント(例えばプラント504)を監視及び制御するフィードバック制御器(例えば制御器502)の一以上のコンポーネントによって行うことができる。例えば、制御器502は、プラント504に供給される制御入力uの最適値を、制御入力uに確率論的励起信号qの摂動を与えることによって決定するべく、ESC法を使用することができる。
【0128】
フロー
図800は、制御入力uをプラントに供給することと(ブロック802)、性能変数yをフィードバックとしてプラントから受信することと(ブロック804)を含むように示される。制御入力uは、極値探索制御器及び/又はフィードバック制御器によってプラントに供給してよい。制御器は、前述の制御器のいずれか(例えば、制御器302、制御器402、制御器502等)、又は制御入力uをプラントに供給する任意の他のタイプの制御器であってよい。いくつかの実施形態において、制御器は、制御入力uを調整することにより性能変数yの最適値を達成するように構成された極値探索制御器である。最適値は、性能変数yの極値(例えば最大値又は最小値)であってよい。
【0129】
制御理論におけるプラントは、プロセスと、機械的に制御される一以上の出力との組み合わせである。プラントは、前述のプラント(例えば、プラント304、プラント404、プラント504等)のいずれか、又は任意の他の制御可能なシステム若しくはプロセスであってよい。例えば、プラントは、一以上の機械的制御アクチュエータ及び/又はダンパーを介して建物空間内の温度を制御するべく構成された空気ハンドリングユニットであってよい。様々な実施形態において、プラントは、プラントへの制御入力uが性能変数yに影響するように調整されるチラー動作プロセス、ダンパー調整プロセス、機械的冷却プロセス、換気プロセス、冷凍プロセス、又は任意の他のプロセスを含んでよい。性能変数yは、プラントの一以上のセンサが観測した測定変数(例えば、測定された温度、測定された電力消費、測定された流速等)、測定値若しくは観測値(例えば、計算された効率、計算された電力消費、計算されたコスト等)に基づく計算された変数、又は制御入力uに応答してプラントの性能を示す任意の他のタイプの変数としてよい。
【0130】
フロー
図800は、制御入力uに対する性能変数yの勾配の推定を含むように示される(ブロック806)。いくつかの実施形態において、勾配は、
図4を参照して述べた性能勾配である。他の実施形態において、勾配は、
図5を参照して述べた性能勾配dy/du又は推定傾きβハットとしてよい。例えば、勾配は、関数y=f(u)が画定する曲線の、当該曲線沿いの特定箇所における(例えば特定値uにおける)傾き又は微分係数としてよい。勾配は、制御入力u及び性能変数yの値の一以上の対を使用して推定することができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、勾配は、再帰的勾配推定法を行うことによって推定される。再帰的勾配推定法は、性能変数yのモデルを、制御入力uの関数として取得することを含んでよい。例えば、勾配は、以下の線形モデルを使用して推定することができる。
【数22】
ここで、x
kは入力ベクトルであり、θ
kハットはパラメータベクトルである。入力ベクトルx
k及びパラメータベクトルθ
kハットは、以下のように定義できる。
【数23】
ここで、u
kは時刻kにおける制御入力uの値であり、パラメータθ
2ハットは時刻kにおける勾配dy/duの推定値である。
【0132】
このモデルの予測誤差は、以下の式に示されるように、時刻kにおける実際値である性能変数y
kと、時刻kにおける推定値である性能変数y
kハットとの差分である。
【数24】
推定誤差e
kは、再帰的勾配推定法においてパラメータ値θ
kハットを決定するべく使用することができる。パラメータベクトルθ
kハットの値を推定するべく、様々な回帰法のいずれかを使用してよい。
【0133】
いくつかの実施形態において、勾配を推定するには、線形モデルよりもむしろ、高次モデル(例えば、二次モデル、三次モデル等)を使用することができる。例えば、以下の二次モデルを使用して、当該モデルによって画定される曲線沿いの特定箇所における勾配dy/duを推定してよい。
【数25】
【0134】
いくつかの実施形態において、勾配は、指数関数的忘却を伴う再帰的最小二乗(RLS)推定法を使用して推定される。様々なRLS法のいずれかを、様々な実装において使用してよい。勾配を推定するべく行うことのできるRLS法の一例は、以下の式に示される。この式は、パラメータベクトルθ
kハットの値を決定するように解くことができる。
【数26】
ここで、g
kは利得ベクトル、P
kは共分散行列、λは忘却因子(λ<1)である。いくつかの実施形態において、忘却因子λは以下のように定義される。
【数27】
ここで、Δtはサンプリング時間、τは忘却時定数である。パラメータベクトルθ
kハットがひとたび計算されると、勾配は、θ
2ハットパラメータの値をθ
kハットから抽出することによって推定することができる。
【0135】
様々な実施形態において、勾配は、様々な他の再帰的推定法のいずれかを使用して推定してよい。例えば、勾配は、カルマンフィルタ、正規化勾配法、非正規化勾配適応法、再帰的ベイズ推定法、又は様々な線形若しくは非線形フィルタのいずれかを使用して推定してよい。いくつかの実施形態において、勾配は、再帰的推定法よりもむしろバッチ推定法を使用して推定してよい。バッチ推定法において、制御入力u及び性能変数yの過去値のバッチ(例えば過去値又は履歴値のベクトル又はセット)を、バッチ回帰アルゴリズムへの入力として使用することができる。適切な回帰アルゴリズムは例えば、通常の最小二乗回帰、多項式回帰、部分最小二乗回帰、リッジ回帰、主成分回帰、又は様々な線形若しくは非線形回帰法のいずれかを含んでよい。
【0136】
いくつかの実施形態において、勾配は、制御入力u及び性能変数y間の共分散を使用して推定することができる。例えば、最小二乗アプローチにおける傾きβハットの推定は、以下のように定義することができる。
【数28】
ここで、Cov(u,y)は制御入力u及び性能変数y間の共分散であり、Var(u)は制御入力uの分散である。推定傾きβハットは、前式を使用して計算し、勾配dy/duの代理として使用することができる。
【0137】
なおも
図8を参照すると、フロー
図800は、フィードバック制御器の出力を変調することにより、推定された勾配をゼロへと駆動することを含むように示される(ブロック808)。いくつかの実施形態において、フィードバック制御器は、
図5に示されるフィードバック制御器508である。フィードバック制御器は、推定された勾配を入力として受信し、その出力(例えばDC出力w)を、当該推定された勾配をゼロへと駆動するように変調することができる。フィードバック制御器は、DC出力wの値を、DC出力wの最適値が達成されるまで増加又は減少させてよい。DC出力wの最適値は、性能変数yの最適値(例えば最大値又は最小値)をもたらす値として定義してよい。性能変数yの最適値は、勾配がゼロのときに生じる。したがって、フィードバック制御器は、その出力wを変調して勾配をゼロへと駆動することにより、性能変数yの最適値を達成することができる。
【0138】
フロー
図800は、確率論的励起信号qを生成し(ブロック810)、フィードバック制御器の出力wに確率論的励起信号qが摂動を与えることにより新たな制御入力uを生成する(ブロック812)。確率論的励起信号qは、
図5を参照して述べたように、確率論的信号生成器512及び/又は積分器514によって生成することができる。様々な実施形態において、確率論的信号は、ランダム信号(例えば、ランダムウォーク信号、ホワイトノイズ信号等)、非周期的な信号、予測不可能な信号、擾乱信号、又は任意の他のタイプの非決定論的信号若しくは非反復性信号としてよい。いくつかの実施形態において、確率論的信号は非ゼロ平均を有する。確率論的信号は、励起信号qを生成するべく積分することができる。
【0139】
確率論的励起信号qは、新たな制御入力uを形成するべく、フィードバック制御器が生成するDC値wに加算してよい(例えばu=w+q)。新たな制御入力uは、生成された後にプラントへと供給され(ブロック802)、ESC制御法を繰り返すことができる。確率論的励起信号qは、ブロック806において性能勾配を推定するのに十分な程度の制御入力uの変動を与えることができる。いくつかの例において、励起信号qの加算により、制御入力uがその最適値から逸れていくドリフトが生じる。しかしながら、フィードバック制御器は、かかるドリフトを、制御入力uがその最適値に連続的に引き戻されるようにDC値wを調整することにより、補償することができる。伝統的なESCについては、励起信号qの振幅は、性能変数yに見られる任意の付加ノイズ(例えば、プロセスノイズ、測定ノイズ等)を克服するように(例えばユーザによる手動又は制御器による自動で)選択することができる。
【0140】
確率論的励起信号qは、周期的ディザ信号vに対していくつかの利点を有する。例えば、確率論的励起信号qは、伝統的な周期的ディザ信号vよりも知覚されにくい。このため、確率論的励起信号qが制御入力uに与える影響は、伝統的な周期的ディザ信号vによって引き起こされる周期的な振動よりも目立ちにくい。確率論的励起信号qの他の利点は、ディザ周波数ω
vがもはや必須パラメータではないことから、制御器のチューニングが単純化されることにある。したがって、制御器は、確率論的励起信号qを生成するときに、プラントの固有振動数を知り又は推定する必要がない。
【0141】
ここで
図9を参照すると、いくつかの実施形態に係る他の極値探索制御(ESC)法を例示するフロー
図900が示される。フロー
図900に示されるESC法は、プラント(例えばプラント504)を監視及び制御するべく、フィードバック制御器(例えば制御器502)の一以上のコンポーネントによって行うことができる。例えば、制御器502は、プラントに供給される制御入力uにプラントの出力(例えば性能変数y)を関連づける正規化相関係数ρを推定するべく、ESC法を使用することができる。制御器502は、正規化相関係数ρをゼロへと駆動することにより、制御入力uの最適値を決定することができる。
【0142】
フロー
図900は、制御入力uをプラントに供給することと(ブロック902)、性能変数yをプラントからのフィードバックとして受信することと(ブロック904)を含むように示される。制御入力uは、極値探索制御器及び/又はフィードバック制御器によってプラントに供給してよい。制御器は、前述の制御器のいずれか(例えば、制御器302、制御器402、制御器502等)、又は制御入力uをプラントに供給する任意の他のタイプの制御器であってよい。いくつかの実施形態において、制御器は、制御入力u調整することにより性能変数yの最適値を達成するように構成された極値探索制御器である。最適値は、性能変数yの極値(例えば最大値又は最小値)であってよい。
【0143】
制御理論におけるプラントとは、プロセスと一以上の機械制御出力との組み合わせである。プラントは、前述のプラント(例えば、プラント304、プラント404、プラント504等)のいずれか、又は任意の他の制御可能なシステム若しくはプロセスであってよい。例えば、プラントは、一以上の機械的制御アクチュエータ及び/又はダンパーを介して建物空間内の温度を制御するべく構成された空気ハンドリングユニットであってよい。様々な実施形態において、プラントは、プラントへの制御入力uが性能変数yに影響するように調整されるチラー動作プロセス、ダンパー調整プロセス、機械的冷却プロセス、換気プロセス、冷凍プロセス、又は任意の他のプロセスを含んでよい。性能変数yは、プラントの一以上のセンサが観測した測定変数(例えば、測定された温度、測定された電力消費、測定された流速等)、測定値若しくは観測値(例えば、計算された効率、計算された電力消費、計算されたコスト等)に基づく計算された変数、又は制御入力uに応答してプラントの性能を示す任意の他のタイプの変数としてよい。
【0144】
フロー
図900は、性能変数yを制御入力uに関連づける正規化相関係数ρの推定を含むように示される。相関係数ρは、性能勾配dy/duに関連づける(例えばdy/duに比例する)ことができるが、性能変数yの範囲に基づいてスケールが拡大又は縮小する。例えば、相関係数ρは、性能勾配dy/duの正規化された尺度としてよい(例えば範囲0≦ρ≦1にスケーリングされる)。
【0145】
いくつかの実施形態において、相関係数ρは、以下の式に示されるように、制御入力u及び性能変数yの分散及び共分散n基づいて推定することができる。
【数29】
ここで、Cov(u,y)は制御入力u及び性能変数y間の共分散であり、Var(u)は制御入力uの分散であり、Var(y)は性能変数yの分散である。前式は、以下のように、制御入力uの標準偏差σ
u及び性能変数yの標準偏差σ
yについて書き直すことができる。
【数30】
ここで、Var(u)=σ
u2であり、Var(y)=σ
y2である。
【0146】
いくつかの実施形態において、相関係数ρは、再帰的推定法を使用して推定される。再帰的推定法は、制御入力u及び性能変数yの指数加重移動平均(EWMA)を計算することを含んでよい。例えば、制御入力u及び性能変数yのEWMAは、以下の式を使用して計算することができる。
【数31】
ここで、u
kバー及びy
kバーは時刻kにおける制御入力u及び性能変数yのEWMAであり、u
k−1バー及びy
k−1バーは時刻k−1における制御入力u及び性能変数yの過去のEWMAであり、u
k及びy
kは時刻kにおける制御入力u及び性能変数yの現行の値であり、kは各変数の収集完了サンプルの合計数であり、Wは忘却窓の持続時間である。
【0147】
EWMAはまた、制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)及び共分散Cov(u,y)に対し、以下の式を使用して計算することができる。
【数32】
ここで、V
u,k、V
y,k及びc
kはそれぞれ、時刻kにおける制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)及び共分散Cov(u,y)のEWMAである。V
u,k−1、V
y,k−1及びc
k−1はそれぞれ、時刻k−1における制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)及び共分散Cov(u,y)のEWMAである。相関係数ρは、これらの再帰的推定に基づき、以下の式を使用して推定することができる。
【数33】
【0148】
いくつかの実施形態において、相関係数ρは、推定傾きβハットに基づいて推定される。前述のとおり、推定傾きβハットは、以下の式を使用して計算することができる。
【数34】
ここで、Cov(u,y)は制御入力u及び性能変数y間の共分散であり、Var(u)は制御入力uの分散である(すなわちσ
u2)。相関係数ρは、以下の式を使用して傾きβハットから計算することができる。
【数35】
前式からわかるのは、相関係数ρと推定傾きβハットとは、標準偏差σ
uとσ
yとが等しいとき(すなわちσ
u=σ
yのとき)に等しくなることである。
【0149】
いくつかの実施形態において、推定傾きβハットは、制御入力u及び性能変数yの一セットの値を使用して計算することができる。例えば、u及びyが有限分散であると仮定すると、傾きβハットは、以下の最小二乗推定を使用して推定することができる。
【数36】
【0150】
制御入力uの狭範囲に対しては、推定傾きβハットは、以下の式に示されるように、性能勾配の代理として使用することができる。
【数37】
前式に示されるように、推定傾きβハットは、未知であり得る定数利得Kを包含する。しかしながら、標準偏差σ
u及びσ
yにより得られる正規化は、定数利得Kの影響を相殺する。例えば、性能変数yの標準偏差σ
yは、以下の式に示されるように、制御入力uの標準偏差σ
uに関連づけられる。
【数38】
【0151】
相関係数ρを計算するべく推定傾きβハットに比σ
u/σ
yを乗算することは、定数利得Kを除算することに等しい。相関係数ρ及び推定傾きβハットは双方とも、制御入力uと性能変数yとの関連性の強さを示す。しかしながら、相関係数ρは正規化されることで、フィードバック制御ループのチューニングを大幅に簡略化するという利点を有する。
【0152】
なおも
図9を参照すると、フロー
図900が、フィードバック制御器の出力を変調することによって、推定された相関係数ρをゼロへと駆動することを含むように示される(ブロック908)。いくつかの実施形態において、フィードバック制御器は、
図5に示されるフィードバック制御器508である。フィードバック制御器は、推定された相関係数ρを入力として受信してよく、推定された相関係数ρを、自身の出力(例えばDC出力w)を変調してゼロへと駆動してよい。フィードバック制御器は、DC出力wの値を、DC出力wの最適値が達成されるまで増加又は減少させてよい。DC出力wの最適値は、性能変数yの最適値(例えば最大値又は最小値)をもたらす値として定義してよい。性能変数yの最適値は、勾配がゼロのときに生じる。したがって、フィードバック制御器は、推定された相関係数ρをゼロへと駆動するように自身の出力wを変調することにより、性能変数yの最適値を達成することができる。
【0153】
フロー
図900は、励起信号を生成することと(ブロック910)、励起信号を使用してフィードバック制御器の出力wに摂動を与えることにより新たな制御入力uを生成することと(ブロック912)を含むように示される。様々な実施形態において、励起信号は、
図3〜4を参照して述べた周期的ディザ信号v、又は
図5を参照して述べた確率論的励起信号qとしてよい。励起信号は、フィードバック制御器が生成するDC値wに加算して新たな制御入力uを形成してよい(例えばu=w+q又はu=w+v)。新たな制御入力uが生成された後、新たな制御入力uはプラントへと供給され(ブロック902)、ESC制御法が繰り返される。
【0154】
励起信号は、ブロック906において相関係数ρを推定するのに十分な程度の制御入力uの変動を与えることができる。いくつかの例において、励起信号の加算により、制御入力uがその最適値から逸れていくドリフトが生じる。しかしながら、フィードバック制御器は、かかるドリフトを、制御入力uがその最適値に連続的に引き戻されるようにDC値wを調整することにより、補償することができる。励起信号の振幅は、性能変数yに見られる任意の付加ノイズ(例えばプロセスノイズ、測定ノイズ等)を克服するように(例えばユーザによる手動又は制御器による自動で)選択することができる。
【0156】
ここで
図10A〜16Cを参照すると、本開示の極値探索制御システム及び方法のいくつかの実装例が示される。
図10A〜16Cに示される実装は、極値探索制御器502が制御するプラント504の様々な実施形態と、極値探索制御器502がプラント504に供給し得る制御入力uと、極値探索制御器502がプラント504からフィードバックとして受信し得る性能変数yとを例示する。
【0158】
特に
図10Aを参照すると、いくつかの実施形態に係る冷水プラント1000が示される。冷水プラント1000は、チラー1002、冷却塔1004及び空気ハンドリングユニット(AHU)1006を含むように示される。チラー1002は、凝縮器1018、気化器1020及び圧縮器1034を含む。圧縮器1034は、冷媒ループ1026を介して凝縮器1018及び気化器1020間で冷媒を循環させるように構成される。チラー1002はまた、凝縮器1018及び気化器1020間の冷媒ループ1026に少なくとも一つの膨張弁を含む。チラー1002は、冷媒ループ1026の冷媒が気化器1020で吸熱して凝縮器1018で排熱する蒸気圧縮冷凍サイクルを使用して動作する。チラー1002は、チラー1002の冷凍サイクル動作を補助する任意数のセンサ、制御弁及び/又は他のコンポーネントを含んでよい。
【0159】
チラー1002は、凝縮器水ループ1022を介して冷却塔1004に接続される。凝縮器水ループ1022に沿って配置された水ポンプ1014が、凝縮器水ループ1022を介して冷却塔1004及びチラー1002間で凝縮器水を循環させる。ポンプ1014は、固定速度ポンプ又は可変速度ポンプとしてよい。凝縮器水ループ1022は、凝縮器1018を通るように凝縮器水を循環させる。凝縮器1018において凝縮器水は、冷凍ループ1026の冷媒から熱を吸収する。加熱された凝縮器水はその後、冷却塔1004へと送られる。冷却塔1004において凝縮器水は、周囲環境に排熱する。冷却塔ファンシステム1036は、冷却塔1004内の凝縮器水の冷却を容易にするべく、冷却塔1004を通る空気流を供給する。冷却された凝縮器水はその後、ポンプ1014によってチラー1002へと送り返される。
【0160】
チラー1002は、冷流体ループ1024を介してAHU1006に接続される。冷流体ループ1024に沿いに配置された冷流体ポンプ1016は、チラー1002及びAHU1006間で冷流体を循環させる。ポンプ1016は、固定速度ポンプ又は可変速度ポンプとしてよい。冷流体ループ1024は冷流体を、気化器1020を通るように循環させる。気化器1020において冷流体は、冷凍ループ1026の冷媒に排熱する。冷流体はその後、AHU1006に送られる。AHU1006において冷流体は、AHU1006を通過する給気から熱を吸収し、給気を冷却する。熱流体はその後、ポンプ1016によってチラー1002へと送り返される。
【0161】
図10Aに示される実施形態において、AHU1006は、エコノマイザー型空気ハンドリングユニットとして示される。エコノマイザー型AHUは、AHUが冷却に使用する外気及び還気の量を変化させる。AHU1006は、AHU1006のアクチュエータ及びダンパー又はファンに影響を与えるべく一以上のアルゴリズム(例えば、状態ベースのアルゴリズム、極値探索制御アルゴリズム等)を利用するエコノマイザー制御器1032を含むように示される。AHU1006に供給される冷流体の流れもまた、可変制御可能である。例えば、PI制御1008が、冷流体のAHU1006への流れを規制する弁1038を制御するように示される。PI制御1008は、設定点給気温度を達成するべく、AHU1006への冷流体の流れを制御してよい。エコノマイザー制御器1032、チラー用制御器1002及びPI制御1008は、一以上の建物管理システム(BMS)制御器1010によって監視することができる。
【0162】
BMS制御器は一般に、建物若しくは建物領域における又はこれらのまわりの設備を制御し、監視し、管理するべく構成されたコンピュータベースのシステムである。BMS制御器は、ジョンソンコントロールズ社が販売するMETASYS(登録商標)ブランドの建物制御器又は他の装置を含んでよい。BMS制御器1010は、BMS、そのサブシステム及び装置を制御し、閲覧し、又はこれらと相互作用をするための一以上のヒューマン・マシンインタフェイス又はクライアントインタフェイス(例えばグラフィカルユーザインタフェイス、レポーティングフェイス、テキストベースコンピュータフェイス、クライアント向けウェブサービス、ウェブクライアントにページを提供するウェブサーバ等)を与えてよい。例えば、BMS制御器1010は、ユーザが建物空間のための所望設定点温度を設定できるウェブベースのグラフィカルユーザインタフェイスを与えてよい。BMS制御器1010は、建物空間のための設定点温度が達成されているか否かを決定するべく、(有線又は無線のBMS又はITネットワークを介してBMS制御器1010に接続された)BMSセンサ1012を使用する。BMS制御器1010は、かかる決定を使用して、建物のHVACシステムのPI制御1008、チラー1002、エコノマイザー制御器1032、又は他のコンポーネントに指令を与える。
【0163】
いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、BMS制御器1010から制御指令を受信せず、又は自身の出力計算がBMS制御器1010からの入力に基づかないようにする。他の実施形態において、極値探索制御器502は、BMS制御器1010からの情報(例えば指令、設定点、動作境界等)を受信する。例えば、BMS制御器1010は、ファン速度上限及びファン速度下限を極値探索制御器502に与えてよい。下限により、コンポーネント及び電力の負担となる頻繁なファン起動を回避できる一方、上限により、ファンシステムの機械的又は熱的限界付近での動作を回避できる。
【0164】
極値探索制御器502は、冷却塔ファンシステム1036、凝縮器水ポンプ1014、及びチラー1002の圧縮器1034が消費する電力P
tower、P
pump及びP
chillerの合計を表す電力入力P
totalを受信するように示される(すなわちP
total=P
tower+P
pump+P
chiller)。
図10Aに例示されるように、電力入力P
tower、P
pump及びP
chillerは、合計電力P
totalを表す結合信号を供給するべく、極値探索制御器502の外部、すなわち加算ブロック1040において合計してよい。他の実施形態において、極値探索制御器502は、個々の電力入力P
tower、P
pump及びP
chillerを受信し、加算ブロック1040の加算を指揮する。いずれの場合も、極値探索制御器502は、合計システム電力を表す一つの加算又は結合信号P
totalとして電力入力が供給される場合であっても、電力入力P
tower、P
pump及びP
chillerを受信するといえる。
【0165】
いくつかの実施形態において、合計システム電力P
totalは、極値探索制御器502が最適化(例えば最小化)しようとする性能変数である。合計システム電力P
totalは、冷水プラント1000の一以上のコンポーネントの電力消費を含んでよい。
図10Aに示される実施形態において、合計システム電力P
totalは、P
tower、P
pump及びP
chillerを含む。しかしながら、様々な他の実施形態において、合計システム電力P
totalは、任意の組み合わせの電力入力を含んでよい。例えば、合計システム電力P
totalは、AHU1006内のファンの電力消費、冷流体ポンプ1016の電力消費、及び/又は冷水プラント1000内で生じる任意の他の電力消費を含んでよい。
【0166】
極値探索制御器502は、温度設定点T
spをフィードバック制御器1028に供給するように示される。いくつかの実施形態において、温度設定点T
spは、合計システム電力P
totalに影響を与えるべく極値探索制御器502が調整する被操作変数である。温度設定点T
spは、冷却塔1004からチラー1002に供給される凝縮器水の温度T
cwの設定点である。凝縮器水温T
cwは、冷却塔1004及びチラー1002間の凝縮器水ループ1022沿いに(例えばポンプ1014の上流又は下流に)配置された温度センサ1030によって測定することができる。フィードバック制御器1028は、凝縮器水温T
cwをフィードバック信号として受信するように示される。
【0167】
フィードバック制御器1028は、冷却塔ファンシステム1036及び/又は凝縮器水ポンプ1014を、極値探索制御器502が供給する温度設定点T
spを達成するように動作させることができる。例えば、フィードバック制御器1028は、凝縮器1018における冷媒からの除熱量を増加させるように凝縮器水ポンプ1014の速度を増加させ、又は凝縮器1018における冷媒からの除熱量を減少させるように凝縮器水ポンプ1014の速度を減少させることができる。同様に、フィードバック制御器1028は、冷却塔1004による凝縮器水からの除熱量を増加させるように冷却塔ファンシステム1036の速度を増加させ、又は冷却塔1004による凝縮器水からの除熱量を減少させるように冷却塔ファンシステム1036の速度を減少させることができる。
【0168】
極値探索制御器502は、最適に近い傾向を示すシステム性能(例えば合計電力消費P
total)を取得するべく、未知入力(例えば最適な凝縮器水温設定点T
sp)を動的にサーチする極値探索制御法を実装する。フィードバック制御器1028及び極値探索制御器502は別個の装置として示されるが、いくつかの実施形態においてフィードバック制御器1028及び極値探索制御器502が一つの装置(例えば極値探索制御器502及びフィードバック制御器1028双方の機能を果たす一つの制御器)に結合され得ることも意図される。例えば、極値探索制御器502は、冷却塔ファンシステム1036及び凝縮器水ポンプ1014を、中間フィードバック制御器1028を必要とすることなく直接的に制御するように構成してよい。
【0169】
ここで
図10B及び10Cを参照すると、いくつかの実施形態に係る冷水プラント1000における極値制御器502の動作を例示する一対のフロー
図1050及び1070が示される。フロー
図1050及び1070の双方において、極値探索制御器502は、冷水プラント1000における凝縮器水温T
cwを制御するように動作するフィードバック制御器1028に、温度設定点T
spを供給する(ブロック1052及び1072)。極値探索制御器502は、冷水プラント1000の合計電力消費P
totalをフィードバック信号として受信してよい(ブロック1054及び1074)。
【0170】
フロー
図1050において、極値探索制御器502は、凝縮器水温設定点T
spに対する合計電力消費P
totalの勾配を推定する(ブロック1056)。極値探索制御器502は、取得された勾配を、温度設定点T
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1058)、冷水プラント1000を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1060)、当該確率論的励起信号を使用して新たな凝縮器水温設定点T
spを生成する。例えば、極値探索制御器502は、確率論的励起信号を使用して凝縮器水温設定点T
spに摂動を与えることにより新たな温度設定点T
spを生成してよい(ブロック1062)。
【0171】
フロー
図1070において、極値探索制御器502は、合計電力消費P
totalを凝縮器水温設定点T
spに関連づける正規化相関係数を推定する(ブロック1076)。極値探索制御器502は、推定された相関係数を、温度設定点T
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1078)、冷水プラント1000を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、励起信号を生成し(ブロック1080)、当該励起信号を使用して新たな凝縮器水温設定点T
spを生成する。例えば、極値探索制御器502は、励起信号を使用して凝縮器水温設定点T
spに摂動を与えることにより新たな温度設定点T
spを生成してよい(ブロック1082)。
【0173】
ここで
図11Aを参照すると、いくつかの実施形態に係る他の冷水プラント1100が示される。冷水プラント1100は、
図10Aを参照して述べた冷水プラント1000のコンポーネントのいくつか又はすべてを含んでよい。例えば、冷水プラント1100は、チラー1102、冷却塔1104及び空気ハンドリングユニット(AHU)1106を含むように示される。チラー1102は、凝縮器水ループ1122を介して冷却塔1104に接続される。凝縮器水ループ1122沿いに配置された水ポンプ1114は、冷却塔1104及びチラー1102間で凝縮器水を循環させる。冷却塔ファンシステム1136は、冷却塔1104内の凝縮器水の冷却を容易にするべく、冷却塔1104を通る空気流を与える。チラー1002もまた、冷流体ループ1124を介してAHU1106に接続される。冷流体ループ1124沿いに配置された冷流体ポンプ1116は、チラー1102及びAHU1106間で冷流体を循環させる。
【0174】
極値探索制御器502は、冷却塔ファンシステム1136、凝縮器水ポンプ1114及びチラー1102の圧縮器1134が消費する電力P
tower、P
pump及びP
chillerの合計を表す電力入力P
totalを受信するように示される(すなわちP
total=P
tower+P
pump+P
chiller)。いくつかの実施形態において、合計システム電力P
totalは、極値探索制御器502が最適化(例えば最小化)しようとする性能変数である。
図11Aに示される実施形態において、合計システム電力P
totalは、P
tower、P
pump及びP
chillerを含む。しかしながら、様々な他の実施形態において、合計システム電力P
totalは、任意の組み合わせの電力入力を含んでよい。例えば、合計システム電力P
totalは、AHU1106内のファンの電力消費、冷流体ポンプ1116の電力消費、及び/又は冷水プラント1100内で生じる任意の他の電力消費を含んでよい。
【0175】
極値探索制御器502は、冷却塔ファンシステム1136のファン速度Fan
spを規制する第1制御信号と、凝縮器水ポンプ1114のポンプ速度Pump
spを規制する第2制御信号とを供給するように示される。いくつかの実施形態において、ファン速度Fan
sp及びポンプ速度Pump
spは、合計システム電力P
totalに影響を与えるべく極値探索制御器502が調整する被操作変数である。例えば、極値探索制御器502は、凝縮器1118における冷媒からの除熱量を増加させるようにポンプ速度Pump
spを増加させ、又は凝縮器1118における冷媒からの除熱量を減少させるようにポンプ速度Pump
spを減少させることができる。同様に、極値探索制御器502は、冷却塔1104による凝縮器水からの除熱量を増加させるようにファン速度Fan
spを増加させ、又は冷却塔1104による凝縮器水からの除熱量を減少させるようにファン速度Fan
spを減少させることができる。
【0176】
ここで
図11B及び11Cを参照すると、いくつかの実施形態に係る冷水プラント1100における極値制御器502の動作を例示する一対のフロー
図1150及び1170が示される。フロー
図1150及び1170の双方において、極値探索制御器502は、ファン速度制御信号Fan
spを冷却塔ファンシステムに、及びポンプ速度制御信号Pump
spを凝縮器水ポンプに供給する(ブロック1152及び1172)。極値探索制御器502は、冷水プラント1100の合計電力消費P
totalをフィードバック信号として受信してよい(ブロック1154及び1174)。
【0177】
フロー
図1150において、極値探索制御器502は、ファン速度Fan
spに対する合計電力消費P
totalの第1勾配と、凝縮器水ポンプ速度Pump
spに対する合計電力消費P
totalの第2勾配とを推定する(ブロック1156)。極値探索制御器502は、取得された勾配を、ファン速度Fan
sp及び凝縮器水ポンプ速度Pump
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1158)、冷水プラント1100を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、各速度制御信号に対して確率論的励起信号を生成し(ブロック1160)、当該確率論的励起信号を使用して新たな速度制御信号を生成する(ブロック1162)。例えば、極値探索制御器502は、第1確率論的励起信号を使用してファン速度制御信号Fan
spに摂動を与えることにより、新たなファン速度制御信号Fan
spを生成してよい。極値探索制御器502は、第2確率論的励起信号を使用してポンプ速度制御信号Pump
spに摂動を与えることにより、新たなポンプ速度制御信号Pump
spを生成してよい。
【0178】
フロー
図1070において、極値探索制御器502は、合計電力消費P
totalをファン速度Fan
spに関連づける第1正規化相関係数、及び合計電力消費P
totalを凝縮器水ポンプ速度Pump
spに関連づける第2正規化相関係数を推定する(ブロック1176)。極値探索制御器502は、推定された相関係数を、ファン速度Fan
sp及びポンプ速度Pump
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1178)、冷水プラント1100を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、各速度制御信号に対して励起信号を生成し(ブロック1080)、当該励起信号を使用して新たなファン速度及びポンプ速度を生成する(ブロック1182)。例えば、極値探索制御器502は、第1励起信号を使用してファン速度制御信号Fan
spに摂動を与えることにより、新たなファン速度制御信号Fan
spを生成してよい。極値探索制御器502は、第2励起信号を使用してポンプ速度制御信号Pump
spに摂動を与えることにより、新たなポンプ速度制御信号Pump
spを生成してよい。
【0180】
ここで
図12Aを参照すると、いくつかの実施形態に係る可変冷媒流(VRF)システム1200が示される。VRFシステム1200は、室外ユニット1202、いくつかの熱回収ユニット1204、及びいくつかの室内ユニット1206を含むように示される。いくつかの実施形態において、室外ユニット1202が建物の外に(例えば屋上に)配置される一方、室内ユニット1206は、建物全体に(例えば建物の様々な部屋又は領域に)分散される。いくつかの実施形態において、VRFシステム1200は、いくつかの熱回収ユニット1204を含む。熱回収ユニット1204は、室外ユニット1204及び室内ユニット1206間の冷媒の流れを(例えば弁の開閉により)制御し、室外ユニット1202が対応するべき加熱又は冷却負荷を最小限にすることができる。
【0181】
室外ユニット1202は、圧縮器1214及び熱交換器1220を含むように示される。圧縮器1214は、熱交換器1220及び室内ユニット1206間で冷媒を循環させる。熱交換器1220は、VRFシステム1200が冷却モードで動作するときは(冷媒が外気に排熱できる)凝縮器として、VRFシステム1200が加熱モードで動作するときは(冷媒が外気から吸熱できる)気化器として機能してよい。ファン1218は、熱交換器1220を通る空気流を供給する。ファン1218の速度は、熱交換器1220の冷媒への又は当該冷媒からの熱伝達速度を変調するべく調整することができる。
【0182】
各室内ユニット1206は、熱交換器1226及び膨張弁1224を含むように示される。各熱交換器1226は、室内ユニット1206が加熱モードで動作するときは(冷媒が部屋又は領域内の空気に排熱できる)凝縮器として、室内ユニット1206が冷却モードで動作するときは(冷媒が部屋又は領域内の空気から吸熱できる)気化器として機能してよい。ファン1222は、熱交換器1226を通る空気流を供給する。ファン1222の速度は、熱交換器1226の冷媒への又は当該冷媒からの熱伝達速度を変調するべく調整することができる。温度センサ1228は、室内ユニット1206内の冷媒の温度を測定するべく使用することができる。
【0183】
図12Aにおいて、室内ユニット1206は、冷却モードで動作するように示される。冷却モードでは、冷媒は、冷却ライン1212を介して室内ユニット1206に供給される。冷媒は、膨張弁1224によって低温かつ低圧の状態へと膨張され、(気化器として機能する)熱交換器1226を通るように流れて建物内の部屋又は領域から吸熱する。加熱された冷媒はその後、戻りライン1210を介して室外ユニット1202に戻るように流れ、圧縮器1214によって高温かつ高圧の状態へと圧縮される。圧縮された冷媒は、(凝縮器として機能する)熱交換器1220を通るように流れ、外気へ排熱する。冷却された冷媒はその後、冷却ライン1212を介して室内ユニット1206に戻るように供給され得る。冷却モードでは、流量制御弁1236を閉に、膨張弁1234を全開にしてよい。
【0184】
加熱モードでは、冷媒は、加熱ライン1208を介して、熱状態にある室内ユニット1206に供給される。熱い冷媒は、(凝縮器として機能する)熱交換器1226を通るように流れ、建物の部屋又は領域内の空気へ排熱する。冷媒はその後、冷却ライン1212を介して室外ユニットに戻るように(
図12Aに示される流れ方向の逆に)流れる。冷媒は、膨張弁1234によって低温かつ低圧の状態へと膨張し得る。膨張した冷媒は、(気化器として機能する)熱交換器1220を通るように流れて外気から吸熱する。加熱された冷媒は、圧縮器1214によって圧縮され、加熱ライン1208を介して室内ユニット1206へと戻されて熱圧縮状態にされてよい。加熱モードにおいて、流量制御弁1236は、圧縮器1214からの冷媒が加熱ライン1208へ流れるのを許容するべく全開にしてよい。
【0185】
極値探索制御器502は、室外ユニット1202が消費する合計電力P
outdoorと、各室内ユニット1206が消費する合計電力P
indoorとを表す電力入力P
totalを受信するように示される(すなわちP
total=P
outdoor+P
indoor)。室外ユニット電力P
outdoorは、圧縮器1214及び/又はファン1218の電力消費を含んでよい。室内ユニット電力P
indoorは、室内ユニット1206又は熱回収ユニット1204内にあるファン1222及び/又は任意の他の電力消費装置(例えば、電子弁、ポンプ、ファン等)の電力消費を含んでよい。
図12Aに例示されるように、電力入力P
outdoor及びP
indoorは、合計電力P
totalを表す結合信号を供給するべく、極値探索制御器502の外部、すなわち加算ブロック1230において合計してよい。他の実施形態において、極値探索制御器502は、個々の電力入力P
outdoor及びP
indoorを受信して加算ブロック1230の加算を指揮する。いずれの場合も、極値探索制御器502は、合計システム電力を表す一つの加算又は結合信号P
totalとして電力入力が供給される場合であっても、電力入力P
outdoor及びP
indoorを受信するといえる。
【0186】
いくつかの実施形態において、合計システム電力P
totalは、極値探索制御器502が最適化(例えば最小化)しようとする性能変数である。合計システム電力P
totalは、VRFシステム1200の一以上のコンポーネントの電力消費を含んでよい。
図12Aに示される実施形態において、合計システム電力P
totalはP
outdoor及びP
indoorを含む。しかしながら、様々な他の実施形態において、合計システム電力P
totalは、任意の組み合わせの電力入力を含んでよい。例えば、合計システム電力P
totalは、VRFシステム1200内で生じる熱回収ユニット1204、室内ユニット1206、室外ユニット1202、ポンプの電力消費、及び/又は任意の他の電力消費を含んでよい。
【0187】
極値探索制御器502は、圧力設定点P
spを室外ユニット制御器1232に供給するように示される。いくつかの実施形態において、圧力設定点P
spは、合計システム電力P
totalに影響を与えるべく極値探索制御器502が調整する被操作変数である。圧力設定点P
spは、圧縮器1214の吸入口又は吐出口における冷媒の圧力P
rの設定点である。冷媒圧力P
rは、圧縮器1214の吸入口(例えば圧縮器1214の上流)又は圧縮器1214の吐出口(例えば圧縮器1214の下流)に配置された圧力センサ1216によって測定してよい。室外ユニット制御器1232は、冷媒圧力P
rをフィードバック信号として受信するように示される。
【0188】
室外ユニット制御器1232は、極値探索制御器502が供給する圧力設定点P
spを達成するように室外ユニット1202を動作させることができる。動作室外ユニット1202は、圧縮器1214の速度及び/又はファン1218の速度の調整を含んでよい。例えば、室外ユニット制御器1232は、圧縮器吐出圧力を増加させ又は圧縮器吸入圧力を減少させるように圧縮器1214の速度を増加させてよい。室外ユニット制御器1232は、熱交換器1220内の熱伝達を増加させるべくファン1218の速度を増加させ、又は熱交換器1220内の熱伝達を減少させるべくファン1218の速度を減少させてよい。
【0189】
極値探索制御器502は、最適に近い傾向を示すシステム性能(例えば合計電力消費P
total)を取得するべく、未知入力(例えば圧力設定点P
sp)を動的にサーチする極値探索制御法を実装する。室外ユニット制御器1232及び極値探索制御器502は別個の装置として示されるが、いくつかの実施形態において室外ユニット制御器1232及び極値探索制御器502が一つの装置(例えば極値探索制御器502及び室外ユニット制御器1232双方の機能を行う一つの制御器)に結合され得ることも意図される。例えば、極値探索制御器502は、圧縮器1214及び/又はファン1218を、中間室外ユニット制御器1232を必要とすることなく直接的に動作させるように構成してよい。
【0190】
ここで
図12B及び12Cを参照すると、いくつかの実施形態に係るVRFシステム1200における極値制御器502の動作を例示する一対のフロー
図1250及び1270が示される。フロー
図1250及び1270の双方において、極値探索制御器502は、圧力設定点P
spを、VRFシステム1200の室外ユニット1202において冷媒圧力を制御するべく動作する制御器(例えば室外ユニット制御器1232)に供給する(ブロック1252及び1272)。冷媒圧力は、圧縮器吸入圧力又は圧縮器吐出圧力としてよい。極値探索制御器502は、VRFシステム1200の合計電力消費P
totalをフィードバック信号として受信してよい(ブロック1254及び1274)。
【0191】
フロー
図1250において、極値探索制御器502は、冷媒圧力設定点P
spに対する合計電力消費P
totalの勾配を推定する(ブロック1256)。極値探索制御器502は、取得された勾配を、圧力設定点P
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1258)、VRFシステム1200を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は確率論的励起信号を生成し(ブロック1260)、当該確率論的励起信号を使用して新たな冷媒圧力設定点P
spを生成する。例えば、極値探索制御器502は、確率論的励起信号を使用して冷媒圧力設定点P
spに摂動を与えることにより新たな圧力設定点P
spを生成してよい(ブロック1262)。
【0192】
フロー
図1270において、極値探索制御器502は、合計電力消費P
totalを冷媒圧力設定点P
spに関連づける正規化相関係数を推定する(ブロック1276)。極値探索制御器502は、推定された相関係数を、冷媒圧力設定点P
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1278)、VRFシステム1200を制御することができる。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、励起信号を生成し(ブロック1280)、当該励起信号を使用して新たな冷媒圧力設定点P
spを生成する。例えば、極値探索制御器502は、励起信号を使用して冷媒圧力設定点P
spに摂動を与えることにより新たな圧力設定点P
spを生成してよい(ブロック1282)。
【0194】
ここで
図13Aを参照すると、いくつかの実施形態に係る他の可変冷媒流(VRF)システム1300が示される。VRFシステム1300は、
図12Aを参照して述べたVRFシステム1200のコンポーネントのいくつか又はすべてを含んでよい。例えば、VRFシステム1300は、室外ユニット1302、いくつかの熱回収ユニット1304、及びいくつかの室内ユニット1306を含むように示される。
【0195】
室外ユニット1302は、圧縮器1314及び熱交換器1320を含むように示される。圧縮器1314は、熱交換器1320及び室内ユニット1306間で冷媒を循環させる。熱交換器1320は、VRFシステム1300が冷却モードで動作するときは(冷媒が外気に排熱できる)凝縮器として、VRFシステム1300が加熱モードで動作するときは(冷媒が外気から吸熱できる)気化器として機能してよい。ファン1318は、熱交換器1220を通る空気流を供給する。ファン1318の速度は、熱交換器1320の冷媒への又は当該冷媒からの熱伝達速度を変調するべく調整することができる。
【0196】
各室内ユニット1306は、熱交換器1326及び膨張弁1324を含むように示される。各熱交換器1326は、室内ユニット1306が加熱モードで動作するときは(冷媒が部屋又は領域内の空気に排熱できる)凝縮器として、室内ユニット1306が冷却モードで動作するときは(冷媒が部屋又は領域内の空気から吸熱できる)気化器として機能してよい。ファン1322は、熱交換器1326を通る空気流を供給する。ファン1322の速度は、熱交換器1326の冷媒への又は当該冷媒からの熱伝達速度を変調するべく調整することができる。温度センサ1328は、室内ユニット1306内の冷媒T
rの温度を測定するべく使用してよい。
【0197】
極値探索制御器502は、室外ユニット1302が消費する合計電力P
outdoorと、各室内ユニット1306が消費する合計電力P
indoorとを表す電力入力P
totalを受信するように示される(すなわちP
total=P
outdoor+P
indoor)。室外ユニット電力P
outdoorは、圧縮器1314及び/又はファン1318の電力消費を含んでよい。室内ユニット電力P
indoorは、室内ユニット1306又は熱回収ユニット1304内にあるファン1322及び/又は任意の他の電力消費装置(例えば、電子弁、ポンプ、ファン等)の電力消費を含んでよい。
【0198】
いくつかの実施形態において、合計システム電力P
totalは、極値探索制御器502が最適化(例えば最小化)しようとする性能変数である。合計システム電力P
totalは、VRFシステム1300の一以上のコンポーネントの電力消費を含んでよい。
図13Aに示される実施形態において、合計システム電力P
totalはP
outdoor及びP
indoorを含む。しかしながら、様々な他の実施形態において、合計システム電力P
totalは、任意の組み合わせの電力入力を含んでよい。例えば、合計システム電力P
totalは、VRFシステム1300内で生じる熱回収ユニット1304、室内ユニット1306、室外ユニット1302、ポンプの電力消費、及び/又は任意の他の電力消費を含んでよい。
【0199】
極値探索制御器502は、圧力設定点P
spを室外ユニット制御器1332に、過熱温度設定点T
spを室内ユニット制御器1338に供給するように示される。いくつかの実施形態において、圧力設定点P
sp及び過熱温度設定点T
spは、合計システム電力P
totalに影響を与えるべく極値探索制御器502が調整する被操作変数である。圧力設定点P
spは、圧縮器1314の吸入口又は吐出口における冷媒の圧力P
rの設定点である。過熱温度設定点T
spは、熱交換器1326の出口における冷媒の過熱量(すなわち冷媒T
rの温度マイナス冷媒飽和温度)の設定点である。
【0200】
冷媒圧力P
rは、圧縮器1314の吸入口(例えば圧縮器1314の上流)又は圧縮器1314の吐出口(例えば圧縮器1314の下流)に配置された圧力センサ1316によって測定してよい。室外ユニット制御器1332は、冷媒圧力P
rをフィードバック信号として受信するように示される。室外ユニット制御器1232は、極値探索制御器502が供給する圧力設定点P
spを達成するように室外ユニット1202を動作させることができる。動作室外ユニット1202は、圧縮器1214の速度及び/又はファン1218の速度の調整を含んでよい。例えば、室外ユニット制御器1232は、圧縮器吐出圧力を増加させ又は圧縮器吸入圧力を減少させるように圧縮器1214の速度を増加させてよい。室外ユニット制御器1232は、熱交換器1220内の熱伝達を増加させるべくファン1218の速度を増加させ、又は熱交換器1220内の熱伝達を減少させるべくファン1218の速度を減少させてよい。
【0201】
冷媒の過熱T
superは、冷媒T
rの温度から冷媒飽和温度T
satを減算することにより(室内ユニット制御器1338が)計算してよい(すなわちT
super=T
r−T
sat)。冷媒温度T
rは、熱交換器1326の出口に配置された温度センサ1328によって測定してよい。室内ユニット制御器1338は、冷媒圧力T
rをフィードバック信号として受信するように示される。室内ユニット制御器1338は、極値探索制御器502が供給する過熱温度設定点T
spを達成するように室内ユニット1306を動作させることができる。室内ユニット1306を動作させることは、ファン1322の速度の調整、及び/又は膨張弁1324の位置の調整を含んでよい。例えば、室内ユニット制御器1338は、熱交換器1226内の熱伝達を増加させるべくファン1322の速度を増加させ、又は熱交換器1226内の熱伝達を減少させるべくファン1322の速度を減少させてよい。同様に、室内ユニット制御器1338は、室内ユニット1306を通る冷媒流を増加させるべく弁1324を開位置へと動かし、又は室内ユニット1306を通る冷媒流を減少させるべく弁1324を閉位置へと動かしてよい。
【0202】
極値探索制御器502は、最適に近い傾向を示すシステム性能(例えば合計電力消費P
total)を取得するべく、未知入力(例えば圧力設定点P
sp及び/又は過熱温度設定点T
sp)を動的にサーチする極値探索制御法を実装する。室外ユニット制御器1332、室内ユニット制御器1338及び極値探索制御器502は別個の装置として示されるが、いくつかの実施形態において室外ユニット制御器1332、室内ユニット制御器1338及び極値探索制御器502が一つの装置(例えば、極値探索制御器502、室外ユニット制御器1332及び室内ユニット制御器1338の機能を果たす一つの制御器)に結合され得ることも意図される。例えば、極値探索制御器502は、圧縮器1314、ファン1318、ファン1322及び/又は弁1224を、中間室外ユニット制御器1332又は室内ユニット制御器1338を必要とすることなく直接的に動作させるように構成してよい。
【0203】
ここで
図13B及び13Cを参照すると、いくつかの実施形態に係るVRFシステム1300における極値制御器502の動作を例示する一対のフロー
図1350及び1370が示される。フロー
図1350及び1370の双方において、極値探索制御器502は、圧力設定点P
spを、VRFシステム1300の室外ユニット1302において冷媒圧力を制御するべく動作する制御器(例えば室外ユニット制御器1332)に供給する(ブロック1352及び1372)。冷媒圧力は、圧縮器吸入圧力又は圧縮器吐出圧力としてよい。極値探索制御器502はまた、VRFシステム1300の室内ユニットにおける冷媒温度を制御するべく動作する制御器(例えば室内ユニット制御器1338)に過熱温度設定点を供給する(ブロック1353及び1373)。極値探索制御器502は、VRFシステム1300の合計電力消費P
totalをフィードバック信号として受信してよい(ブロック1354及び1374)。
【0204】
フロー
図1350において、極値探索制御器502は、冷媒圧力設定点P
spに対する合計電力消費P
totalの第1勾配、及び冷媒過熱温度設定点T
spに対する合計電力消費P
totalの第2勾配を推定する(ブロック1356)。極値探索制御器502は、取得された勾配を、圧力設定点P
sp及び過熱温度設定点T
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1358)、VRFシステム1300を制御することができる。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1360)、当該確率論的励起信号を使用して新たな冷媒圧力設定点P
sp及び新たな冷媒過熱設定点T
spを生成する。例えば、極値探索制御器502は、第1確率論的励起信号を使用して冷媒圧力設定点P
spに摂動を与えることにより新たな圧力設定点P
spを生成してよく、第2確率論的励起信号を使用して温度設定点T
spに摂動を与えることにより新たな過熱温度設定点T
spを生成してよい(ブロック1362)。
【0205】
フロー
図1370において、極値探索制御器502は、合計電力消費P
totalを冷媒圧力設定点P
spに関連づける第1正規化相関係数、及び合計電力消費P
totalを冷媒過熱温度設定点T
spに関連づける第2正規化相関係数を推定する(ブロック1376)。極値探索制御器502は、推定された相関係数を、冷媒圧力設定点P
sp及び冷媒過熱温度設定点T
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1378)、VRFシステム1300を制御することができる。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、励起信号を生成し(ブロック1380)、当該励起信号を使用して新たな冷媒圧力設定点P
sp及び新たな冷媒過熱設定点T
spを生成する。例えば、極値探索制御器502は、第1励起信号を使用して冷媒圧力設定点P
spに摂動を与えることにより新たな圧力設定点P
spを生成してよく、第2励起信号を使用して温度設定点T
spに摂動を与えることにより新たな過熱温度設定点T
spを生成してよい(ブロック1382)。
【0207】
ここで
図14Aを参照すると、いくつかの実施形態に係る蒸気圧縮空調システム1400が示される。システム1400は、冷媒回路1410を含むように示される。冷媒回路1410は、凝縮器1412、気化器1414、膨張弁1424及び圧縮器1406を含む。圧縮器1406は、気化器1414及び凝縮器1412間で冷媒を循環させるように構成される。冷媒回路1410は、蒸気圧縮サイクルを使用して動作する。例えば、圧縮器1406は冷媒を、高温かつ高圧の状態へと圧縮する。圧縮された冷媒が凝縮器1412を通るように流れて排熱を行う。凝縮器ファン1422は、凝縮器1412内の熱伝達速度を変調するように使用することができる。冷却された冷媒は、膨張弁1424によって低圧かつ低温の状態へと膨張させられる。膨張した冷媒が気化器1414を通るように流れて熱を吸収する。気化器ファン1416は、気化器1414内の熱伝達速度を変調するように使用することができる。
【0208】
いくつかの実施形態において、冷媒回路1410は、
図14Aに示されるように、屋上ユニット1402(例えば屋上空気ハンドリングユニット)内に配置される。屋上ユニット1402は、空気ダクト1422を通って流れる給気1420を冷却するように構成してよい。例えば、気化器1414は、給気1420が気化器1414を通って流れて気化器1414内の膨張した冷媒への熱伝達により冷却されるように、空気ダクト1422の中に配置してよい。冷却された空気流はその後建物へと引き回され、当該建物の部屋又は領域を冷却する。給気1420の温度は、(例えばダクト1422内の)気化器1414の下流に配置された温度センサ1418によって測定することができる。他の実施形態において、冷媒回路1410は、蒸気圧縮サイクルを使用して熱を伝達する様々な他のシステム又は装置(例えば、チラー、ヒートポンプ、熱回収チラー、冷凍装置等)のいずれかにおいて使用してよい。
【0209】
極値探索制御器502は、圧縮器1406、気化器ファン1416及び凝縮器ファン1422が消費する電力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condの合計を表す電力入力P
totalを受信するように示される(すなわちP
total=P
comp+P
fan,evap+P
fan,cond)。
図14Aに例示されるように、電力入力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condは、合計電力P
totalを表す結合信号を供給するべく、極値探索制御器502の外部、すなわち加算ブロック1408において合計してよい。他の実施形態において、極値探索制御器502は、個々の電力入力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condを受信し、加算ブロック1408の加算を指揮する。いずれの場合も、極値探索制御器502は、合計システム電力を表す一つの加算又は結合信号P
totalとして電力入力が供給される場合であっても、電力入力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condを受信するといえる。
【0210】
いくつかの実施形態において、合計システム電力P
totalは、極値探索制御器502が最適化(例えば最小化)しようとする性能変数である。合計システム電力P
totalは、蒸気圧縮システム1400の一以上のコンポーネントの電力消費を含んでよい。
図14Aに示される実施形態において、合計システム電力P
totalは、P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condを含む。しかしながら、様々な他の実施形態において、合計システム電力P
totalは、任意の組み合わせの電力入力を含んでよい。例えば、合計システム電力P
totalは、屋上ユニット1402内の様々な他のファンの電力消費、流体ポンプの電力消費、及び/又は蒸気圧縮システム1400内で生じる任意の他の電力消費を含んでよい。
【0211】
極値探索制御器502は、温度設定点T
spをフィードバック制御器1404に供給するように示される。いくつかの実施形態において、温度設定点T
spは、合計システム電力P
totalに影響を与えるべく極値探索制御器502が調整する被操作変数である。温度設定点T
spは、気化器1414から離れる給気1420の温度の設定点である。給気温度T
saは、気化器1414の下流に配置された温度センサ1418によって測定することができる。フィードバック制御器1404は、給気温度T
saをフィードバック信号として受信するように示される。
【0212】
フィードバック制御器1404は、気化器ファン1416、凝縮器ファン1422及び/又は圧縮器1406を、極値探索制御器502が供給する温度設定点T
spを達成するように動作させることができる。例えば、フィードバック制御器1404は、気化器1414における給気1420からの除熱量を増加させるように気化器ファン1416の速度を増加させ、又は気化器1414における給気1420からの除熱量を減少させるように気化器ファン1416の速度を減少させることができる。同様に、フィードバック制御器1404は、凝縮器1412における冷媒からの除熱量を増加させるように凝縮器ファン1422の速度を増加させ、又は凝縮器1412における冷媒からの除熱量を減少させるように凝縮器ファン1422の速度を減少させることができる。
【0213】
極値探索制御器502は、最適に近い傾向を示すシステム性能(例えば合計電力消費P
total)を取得するべく、未知入力(例えば最適な給気温度設定点T
sp)を動的にサーチする極値探索制御法を実装する。フィードバック制御器1404及び極値探索制御器502は別個の装置として示されるが、いくつかの実施形態においてフィードバック制御器1404及び極値探索制御器502が一つの装置(例えば極値探索制御器502及びフィードバック制御器1404双方の機能を果たす一つの制御器)に結合され得ることも意図される。例えば、極値探索制御器502は、気化器ファン1416、凝縮器ファン1422及び/又は圧縮器1406を、中間フィードバック制御器1404を必要とすることなく直接的に制御するように構成してよい。
【0214】
ここで
図14B及び14Cを参照すると、いくつかの実施形態に係る、蒸気圧縮システム1400における極値制御器502の動作を例示する一対のフロー
図1450及び1470が示される。フロー
図1450及び1470の双方において、極値探索制御器502は、蒸気圧縮システム1400における給気温度T
saを制御するように動作するフィードバック制御器1404に、温度設定点T
spを供給する(ブロック1452及び1472)。極値探索制御器502は、蒸気圧縮システム1400の合計電力消費P
totalをフィードバック信号として受信してよい(ブロック1454及び1474)。
【0215】
フロー
図1450において、極値探索制御器502は、給気温度設定点T
spに対する合計電力消費P
totalの勾配を推定する(ブロック1456)。極値探索制御器502は、取得された勾配を、温度設定点T
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1458)、蒸気圧縮システム1400を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1460)、当該確率論的励起信号を使用して新たな給気温度設定点T
spを生成する。例えば、極値探索制御器502は、確率論的励起信号を使用して給気温度設定点T
spに摂動を与えることにより新たな温度設定点T
spを生成してよい(ブロック1462)。
【0216】
フロー
図1470において、極値探索制御器502は、合計電力消費P
totalを給気温度設定点T
spに関連づける正規化相関係数を推定する(ブロック1476)。極値探索制御器502は、推定された相関係数を、温度設定点T
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1478)、蒸気圧縮システム1400を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、励起信号を生成し(ブロック1480)、当該励起信号を使用して新たな給気温度設定点T
spを生成する。例えば、極値探索制御器502は、励起信号を使用して給気温度設定点T
spに摂動を与えることにより新たな温度設定点T
spを生成してよい(ブロック1482)。
【0218】
ここで
図15Aを参照すると、いくつかの実施形態に係る他の蒸気圧縮空調システム1500が示される。システム1500は、
図14Aを参照して述べた蒸気圧縮システム1400のコンポーネントのいくつか又はすべてを含んでよい。例えば、システム1500は、冷媒回路1510を含むように示される。冷媒回路1510は、凝縮器1512、気化器1514、膨張弁1524及び圧縮器1506を含む。圧縮器1506は、気化器1514及び凝縮器1512間で冷媒を循環させるように構成される。冷媒回路1510は蒸気圧縮サイクルを使用して動作する。例えば、圧縮器1506は冷媒を高温かつ高圧の状態へと圧縮する。圧縮された冷媒は、凝縮器1512を通るように流れて排熱する。凝縮器ファン1522は、凝縮器1512内の熱伝達速度を変調するべく使用することができる。冷却された冷媒は、膨張弁1524によって低圧かつ低温の状態へと膨張される。膨張した冷媒は、冷媒が吸熱する気化器1514を通るように流れる。気化器ファン1516は、気化器1514内の熱伝達速度を変調するように使用することができる。
【0219】
いくつかの実施形態において、冷媒回路1510は、
図15Aに示されるように、屋上ユニット1502(例えば屋上空気ハンドリングユニット)内に配置される。屋上ユニット1502は、空気ダクト1522を通って流れる給気1520を冷却するように構成してよい。例えば、気化器1514は、給気1520が気化器1514を通って流れて気化器1514内の膨張した冷媒への熱伝達により冷却されるように、空気ダクト1522の中に配置してよい。冷却された空気流はその後建物へと引き回され、当該建物の部屋又は領域を冷却する。給気1520の温度は、(例えばダクト1522内の)気化器1514の下流に配置された温度センサ1518によって測定することができる。他の実施形態において、冷媒回路1510は、蒸気圧縮サイクルを使用して熱を伝達する様々な他のシステム又は装置(例えば、チラー、ヒートポンプ、熱回収チラー、冷凍装置等)のいずれかにおいて使用してよい。
【0220】
極値探索制御器502は、圧縮器1506、気化器ファン1516及び凝縮器ファン1522が消費する電力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condの合計を表す電力入力P
totalを受信するように示される(すなわちP
total=P
comp+P
fan,evap+P
fan,cond)。
図15Aに例示されるように、電力入力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condは、合計電力P
totalを表す結合信号を供給するべく、極値探索制御器502の外部、すなわち加算ブロック1508において合計してよい。他の実施形態において、極値探索制御器502は、個々の電力入力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condを受信し、加算ブロック1508の加算を指揮する。いずれの場合も、極値探索制御器502は、合計システム電力を表す一つの加算又は結合信号P
totalとして電力入力が供給される場合であっても、電力入力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condを受信するといえる。
【0221】
いくつかの実施形態において、合計システム電力P
totalは、極値探索制御器502が最適化(例えば最小化)しようとする性能変数である。合計システム電力P
totalは、蒸気圧縮システム1500の一以上のコンポーネントの電力消費を含んでよい。
図15Aに示される実施形態において、合計システム電力P
totalは、P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condを含む。しかしながら、様々な他の実施形態において、合計システム電力P
totalは、任意の組み合わせの電力入力を含んでよい。例えば、合計システム電力P
totalは、屋上ユニット1502内の様々な他のファンの電力消費、流体ポンプの電力消費、及び/又は蒸気圧縮システム1500内で生じる任意の他の電力消費を含んでよい。
【0222】
極値探索制御器502は、ファン速度S
spを規制する制御信号を気化器ファン1516に供給するように示される。いくつかの実施形態において、ファン速度S
spは、合計システム電力P
totalに影響を与えるべく極値探索制御器502が調整する被操作変数である。ファン速度S
spを増加させることにより、気化器1514における給気1520からの除熱量が増加し、合計システム電力消費P
totalも増加する。同様に、ファン速度S
spを減少させることにより、気化器1514における給気1520のからの除熱量が減少し、合計システム電力消費P
totalも減少する。極値探索制御器502は、最適に近い傾向を示すシステム性能(例えば合計電力消費P
total)を取得するべく、未知入力(例えば最適な気化器ファン速度S
sp)を動的にサーチする極値探索制御法を実装する。
【0223】
ここで
図15B及び15Cを参照すると、いくつかの実施形態に係る蒸気圧縮システム1500における極値制御器502の動作を例示する一対のフロー
図1550及び1570が示される。フロー
図1550及び1570の双方において、極値探索制御器502は、蒸気圧縮システム1500の気化器ファン1516に、ファン速度S
spを規制する制御信号を供給する(ブロック1552及び1572)。極値探索制御器502は、蒸気圧縮システム1500の合計電力消費P
totalをフィードバック信号として受信してよい(ブロック1554及び1574)。
【0224】
フロー
図1550において、極値探索制御器502は、気化器ファン速度S
spに対する合計電力消費P
totalの勾配を推定する(ブロック1556)。極値探索制御器502は、取得された勾配を、気化器ファン速度S
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1558)、蒸気圧縮システム1500を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1560)、当該確率論的励起信号を使用して新たな気化器ファン速度S
spを生成する。例えば、極値探索制御器502は、確率論的励起信号を使用して気化器ファン速度S
spに摂動を与えることにより新たな気化器ファン速度S
spを生成してよい(ブロック1562)。
【0225】
フロー
図1570において、極値探索制御器502は、合計電力消費P
totalを気化器ファン速度S
spに関連づける正規化相関係数を推定する(ブロック1576)。極値探索制御器502は、推定された相関係数を、気化器ファン速度S
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1578)、蒸気圧縮システム1500を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、励起信号を使用し(ブロック1580)、当該励起信号を使用して、気化器ファンのための新たな制御信号を生成する。例えば、極値探索制御器502は、励起信号を使用して気化器ファン速度S
spに摂動を与えることにより新たな速度制御信号を生成してよい(ブロック1582)。
【0227】
ここで
図16Aを参照すると、いくつかの実施形態に係る蒸気圧縮空調システム1600が示される。システム1600は、冷媒回路1610を含むように示される。冷媒回路1610は、凝縮器1612、気化器1614、膨張弁1624及び圧縮器1606を含む。圧縮器1606は、気化器1614及び凝縮器1612間で冷媒を循環させるように構成される。冷媒回路1610は、蒸気圧縮サイクルを使用して動作する。例えば、圧縮器1606は、冷媒を高温かつ高圧の状態へと圧縮する。圧縮された冷媒は、凝縮器1612を通るように流れて排熱する。凝縮器ファン1622は、凝縮器1612内の熱伝達速度を変調するべく使用することができる。冷却された冷媒は、膨張弁1624によって低圧かつ低温の状態へと膨張される。膨張した冷媒が気化器1614を通るように流れて熱を吸収する。気化器ファン1616は、気化器1614内の熱伝達速度を変調するように使用することができる。
【0228】
いくつかの実施形態において、冷媒回路1610は、
図16Aに示されるように、屋上ユニット1602(例えば屋上空気ハンドリングユニット)の中に配置される。屋上ユニット1602は、空気ダクト1622を通って流れる給気1620を冷却するように構成してよい。例えば、気化器1614は、給気1620が気化器1614を通って流れて気化器1614の膨張した冷媒への熱伝達により冷却されるように、空気ダクト1622の中に配置してよい。冷却された空気流はその後建物へと引き回され、当該建物の部屋又は領域を冷却する。給気1620の温度は、(例えばダクト1622内の)気化器1614の下流に配置された温度センサ1618によって測定することができる。他の実施形態において、冷媒回路1610は、蒸気圧縮サイクルを使用して熱を伝達する様々な他のシステム又は装置(例えば、チラー、ヒートポンプ、熱回収チラー、冷凍装置等)のいずれかにおいて使用してよい。
【0229】
極値探索制御器502は、圧縮器1606、気化器ファン1616及び凝縮器ファン1622が消費する電力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condの合計を表す電力入力P
totalを受信するように示される(すなわちP
total=P
comp+P
fan,evap+P
fan,cond)。
図16Aに例示されるように、電力入力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condは、合計電力P
totalを表す結合信号を供給するべく、極値探索制御器502の外部、すなわち加算ブロック1608において合計してよい。他の実施形態において、極値探索制御器502は、個々の電力入力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condを受信し、加算ブロック1608の加算を指揮する。いずれの場合も、極値探索制御器502は、合計システム電力を表す一つの加算又は結合信号P
totalとして電力入力が供給される場合であっても、電力入力P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condを受信するといえる。
【0230】
いくつかの実施形態において、合計システム電力P
totalは、極値探索制御器502が最適化(例えば最小化)しようとする性能変数である。合計システム電力P
totalは、蒸気圧縮システム1600の一以上のコンポーネントの電力消費を含んでよい。
図16Aに示される実施形態において、合計システム電力P
totalは、P
comp、P
fan,evap及びP
fan,condを含む。しかしながら、様々な他の実施形態において、合計システム電力P
totalは、任意の組み合わせの電力入力を含んでよい。例えば、合計システム電力P
totalは、屋上ユニット1602内の様々な他のファンの電力消費、流体ポンプの電力消費、及び/又は蒸気圧縮システム1600内で生じる任意の他の電力消費を含んでよい。
【0231】
極値探索制御器502は、温度設定点T
spをフィードバック制御器1604に、及びファン速度S
spを規制する制御信号を凝縮器ファン1622に供給するように示される。いくつかの実施形態において、温度設定点T
sp及び凝縮器ファン速度S
spは、合計システム電力P
totalに影響を与えるべく極値探索制御器502が調整する被操作変数である。温度設定点T
spは、気化器1614から離れる給気1620の温度の設定点である。給気温度T
saは、気化器1614の下流に配置された温度センサ1618によって測定することができる。フィードバック制御器1604は、給気温度T
saをフィードバック信号として受信するように示される。ファン速度S
spは凝縮器ファン1622の速度である。
【0232】
フィードバック制御器1604は、気化器ファン1616及び/又は圧縮器1606を、極値探索制御器502が供給する温度設定点T
spを達成するように動作させることができる。例えば、フィードバック制御器1604は、気化器1614における給気1620からの除熱量を増加させるように気化器ファン1616の速度を増加させ、又は気化器1614における給気1620からの除熱量を減少させるように気化器ファン1616の速度を減少させることができる。同様に、極値探索制御器502は、凝縮器ファン速度S
saを変調して凝縮器1612における冷媒からの除熱量を(例えば凝縮器ファン速度S
saを増加させることにより)増加させ、又は凝縮器1612における冷媒からの除熱量を(例えば凝縮器ファン速度S
saを減少させることにより)減少させることができる。
【0233】
極値探索制御器502は、最適に近い傾向を示すシステム性能(例えば合計電力消費P
total)を取得するべく、未知入力(例えば最適な給気温度設定点T
sp及び/又は最適凝縮器ファン速度S
sa)を動的にサーチする極値探索制御法を実装する。フィードバック制御器1604及び極値探索制御器502が別個の装置として示されるが、いくつかの実施形態においてフィードバック制御器1604及び極値探索制御器502を一つの装置(例えば極値探索制御器502及びフィードバック制御器1604双方の機能を果たす一つの制御器)に結合され得ることも意図される。例えば、極値探索制御器502は、気化器ファン1616、凝縮器ファン1622及び/又は圧縮器1606を、中間フィードバック制御器1604を必要とすることなく直接的に制御するように構成してよい。
【0234】
ここで
図16B及び16Cを参照すると、いくつかの実施形態に係る、蒸気圧縮システム1600における極値制御器502の動作を例示する一対のフロー
図1650及び1670が示される。フロー
図1650及び1670の双方において、極値探索制御器502は、温度設定点T
spを、蒸気圧縮システム1600の給気温度T
saを制御するべく動作するフィードバック制御器1604に供給する(ブロック1652及び1672)。極値探索制御器502はまた、ファン速度を規制する制御信号を、蒸気圧縮システム1600における凝縮器ファン1622に供給する(ブロック1653及び1674)。極値探索制御器502は、蒸気圧縮システム1600の合計電力消費P
totalをフィードバック信号として受信してよい(ブロック1654及び1674)。
【0235】
フロー
図1650において、極値探索制御器502は、給気温度設定点T
spに対する合計電力消費P
totalの第1勾配、及び凝縮器ファン速度S
spに対する合計電力消費P
totalの第2勾配を推定する(ブロック1656)。極値探索制御器502は、取得された勾配を、温度設定点T
sp及び/又は凝縮器ファン速度S
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1658)、蒸気圧縮システム1600を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1660)、当該確率論的励起信号を使用して新たな給気温度設定点T
sp、及び凝縮器ファン速度S
spを規制する新たな制御信号を生成する。例えば、極値探索制御器502は、第1確率論的励起信号を使用して給気温度設定点T
spに摂動を与えることにより新たな温度設定点T
spを生成してよく、第2確率論的励起信号を使用して凝縮器ファン速度S
spに摂動を与えることにより凝縮器ファン1622の新たな制御信号を生成してよい(ブロック1662)。
【0236】
フロー
図1670において、極値探索制御器502は、合計電力消費P
totalを給気温度設定点T
spに関連づける第1正規化相関係数、及び合計電力消費P
totalを凝縮器ファン速度S
spに関連づける第2正規化相関係数を推定する(ブロック1676)。極値探索制御器502は、推定された相関係数を、温度設定点T
sp及び/又は凝縮器ファン速度S
spを変調してゼロへと駆動することにより(ブロック1678)、蒸気圧縮システム1600を制御してよい。いくつかの実施形態において、極値探索制御器502は、励起信号を生成し(ブロック1680)、当該励起信号を使用して新たな給気温度設定点T
sp、及び凝縮器ファン速度S
spを規制する新たな制御信号を生成する。例えば、極値探索制御器502は、第1励起信号を使用して給気温度設定点T
spに摂動を与えることにより新たな温度設定点T
spを生成してよく、第2励起信号を使用して凝縮器ファン速度S
spに摂動を与えることにより凝縮器ファン1622の新たな制御信号を生成してよい(ブロック1682)。
【0238】
様々な典型的な実施形態に示されるシステム及び方法の構造及び配列は、例示にすぎない。本開示では、ほんのわずかの実施形態が説明されたが、多くの修正が可能である(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び比率のバリエーション、パラメータの値、搭載配列、材料の使用、色、配向等)。例えば、要素の位置は、逆にしたり、他の態様で変更してよく、別個の要素又は位置の性質又は数を改変又は変更してよい。したがって、かかる修正すべてが本開示の範囲内に含まれることが意図される。いずれのプロセス又は方法ステップの順序又はシーケンスも、代替実施形態に従って変更又は再シーケンス化してよい。典型的な実施形態の設計、動作条件及び配列において、本開示の範囲から逸脱することなく他の代替、修正、変更及び省略も可能である。
【0239】
本開示は、様々な動作を遂行するための方法、システム、及び任意の機械可読媒体上のプログラム製品を意図する。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、又は当該目的若しくは他の目的で組み込まれた若しくはハードワイヤードシステムによる適切なシステムのための専用のコンピュータプロセッサにより、実装可能である。本開示の範囲内にある実施形態は、機械実行可能命令又はデータ構造が担持又は記憶された機械可読媒体を含むプログラム製品を含む。かかる機械可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータ又は他のプロセッサ付き機械によってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体である。例えば、かかる機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM若しくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置若しくは他の磁気記憶装置、又は、汎用若しくは専用のコンピュータ若しくはプロセッサ付き機械がアクセス可能な機械実行可能命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを担持若しくは記憶するべく使用可能な任意の他の媒体を含んでよい。上記の組み合わせも、機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能命令は例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は専用処理機械に所定の一機能又は一群の機能を行わせる命令及びデータを含む。
【0240】
図面は方法ステップの特定の順序を示すが、当該ステップの順序は描かれたものと異なってよい。2以上のステップはまた、同時に又は一部同時に行うこともできる。かかるバリエーションは、選択されたソフトウェア及びハードウェアシステムに並びに設計者の選択に依存する。かかるバリエーションはすべて、本開示の範囲内にある。同様に、ソフトウェア実装は、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ及び決定ステップを達成するべく、ルールベースのロジック及び他のロジックを伴う標準プログラミング法によって達成してよい。