特許第6462030号(P6462030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6462030オキシトシン/バソプレッシンV1aレセプターのアンタゴニストとしてのピロリジン誘導体を含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462030
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】オキシトシン/バソプレッシンV1aレセプターのアンタゴニストとしてのピロリジン誘導体を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/22 20060101AFI20190121BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20190121BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190121BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20190121BHJP
   A61P 15/06 20060101ALI20190121BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   C07D207/22CSP
   A61K31/40
   A61P43/00 111
   A61P15/00
   A61P15/06
   A61P15/08
【請求項の数】30
【外国語出願】
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-76326(P2017-76326)
(22)【出願日】2017年4月6日
(62)【分割の表示】特願2016-535134(P2016-535134)の分割
【原出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2017-141281(P2017-141281A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年7月25日
(31)【優先権主張番号】13183723.9
(32)【優先日】2013年9月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516058551
【氏名又は名称】オブセヴァ エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ショレ、アンドレ
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−533828(JP,A)
【文献】 特表2007−524702(JP,A)
【文献】 特開平03−218355(JP,A)
【文献】 特開平08−333333(JP,A)
【文献】 特表2004−534804(JP,A)
【文献】 特開2008−189732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物
[式1]
【化1】
を合成するための方法であって、
前記方法は、
式2で表わされる前駆体のメチル−(2S,4Z)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)−カルボニル]−4−メトキシイミノピロリジン−2−カルボン酸塩
[式2]
【化2】
を還元する段階を備え、
これによって式1で表される前記化合物とそのジアステレオマー(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムとの混合体を生産
その後、式1で表される前記化合物を、トルエン及びメタノールを含む混合物を溶離液として用いる液体クロマトグラフィ処置により、前記ジアステレオマーから分離し、前記トルエン及びメタノールを含む混合物は、トルエン:メタノール比率が96:4(v/v)〜99:1(v/v)であり、これにより式1で表される化合物を少なくとも85%の純度で生成する、
方法。
【請求項2】
式2で表わされる前記前駆体は、
式2aで表わされるジアステレオマーのメチル−(2S,4E)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)−カルボニル]−4−メトキシイミノピロリジン−2−カルボン酸塩
[式2a]
【化3】
を含む混合物中に存在する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元する段階は、
式2で表わされる前記前駆体を、
水素化ホウ素リチウムと、
反応させる段階を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
メタノールとテトラヒドロフランを含む溶媒中で、
式2で表わされる前記前駆体を、
前記水素化ホウ素リチウムと、
反応させる段階を有する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式3で表わされる前駆体
[式3]
【化4】
をO−メチル化する段階により、
式2で表わされる前記前駆体を合成する段階を備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記O−メチル化する段階は、
式3で表わされる前記前駆体を、
硫酸ジメチルと、
反応させる段階を有する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
塩基の存在下で、
式3で表わされる前記前駆体を、
前記硫酸ジメチルと、
反応させる段階を有する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基は、炭酸カリウムである、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式4で表わされる前駆体
[式4]
【化5】
を、
メトキシアミンまたはその塩と、
反応させる段階により、
式3で表わされる前記前駆体を合成する段階を備える、
請求項5に記載の方法。
【請求項10】
式4で表わされる前記前駆体を、
メトキシアミン塩酸塩と、
反応させる段階を備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式5で表わされる前駆体
[式5]
【化6】
を酸化する段階により、
式4で表わされる前記前駆体を合成する段階を備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化する段階は、
式5で表わされる前記前駆体を、
三酸化硫黄ピリジンと、
反応させる段階を備える、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式5で表わされる前記前駆体は、
式5aで表わされる前駆体
[式5a]
【化7】
である、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
式6で表わされる前駆体
[式6]
【化8】
を、
式7で表わされる前駆体
[式7]
【化9】
と反応させる段階により、
式5aで表わされる前記前駆体を合成する段階を備える、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
炭酸カリウムの存在下で、
式6で表わされる前記前駆体を、
式7で表わされる前記前駆体と反応させる段階を備える、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式8で表わされる前駆体
[式8]
【化10】
を、
塩化チオニルと反応させる段階により、
式7で表わされる前記前駆体を合成する段階を備える、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
鈴木反応条件下で、
式9で表わされる前駆体
[式9]
【化11】
を、
式10で表わされる前駆体
[式10]
【化12】
とカップリングさせる段階により、
式8で表わされる前記前駆体を合成する段階を備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カップリングさせる段階は、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの存在下で、
式9で表わされる前記前駆体を、
式10で表わされる前記前駆体と反応させる段階を備える、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式1で表される前記化合物が少なくとも90%の純度で生成される、
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
式1で表される前記化合物が少なくとも95%の純度で生成される、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
式1で表される前記化合物が90%から99.9%までの純度で生成される、
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
式1で表される前記化合物が95%から99.9%までの純度で生成される、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
胚移植手順の対象者における胚着床不全の治療および予防の少なくとも一方使用するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、活性成分として式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および医薬的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤を含有し、
前記化合物は、前記医薬組成物内に、少なくとも85%から99.9%の範囲にある純度で存在する、
医薬組成物。
【請求項24】
体外受精−胚移植(IVF−ET)法による不妊治療において使用するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、活性成分として式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および医薬的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤を含有し、
前記化合物は、前記医薬組成物内に、少なくとも85%から99.9%の範囲にある純度で存在する、
医薬組成物。
【請求項25】
胚移植処置を受けている対象において、胚着床不全の可能性を低くするのに使用するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、活性成分として式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および医薬的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤を含有し、
前記化合物は、前記医薬組成物内に、少なくとも85%から99.9%の範囲にある純度で存在する、
医薬組成物。
【請求項26】
経口、経膣、または静脈内投与のために製剤される、
請求項23から25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記化合物は少なくとも90%の純度で前記医薬組成物中に存在する、
請求項23から25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記化合物は少なくとも95%の純度で前記医薬組成物中に存在する、
請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記化合物は90%から99.9%の純度で前記医薬組成物中に存在する、
請求項23から25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記化合物は95%から99.9%の純度で前記医薬組成物中に存在する、
請求項29に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシトシンレセプターおよび/またはバソプレッシンV1aレセプターにアンタゴニスト作用を有する、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物、それらの調製のためのプロセス、それらを含有する医薬組成物、およびそれらの医薬における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシトシン(OT)は、アルギニンバソプレッシンレセプターに似たGタンパク質共役レセプターの分類に属する細胞膜レセプターであるところの、オキシトシンレセプター(OT−R)の活性化を介して生理的活性を媒介する環状ノナペプチドである。オキシトシン(OT)の重要な作用の一つは、分娩中に哺乳類の子宮を収縮させることである。反復される規則的な協調性の子宮収縮は、子宮頸部の拡張、胎膜の破断を引き起こし、そして胎児の排出に至る。早産とは、これら収縮が正規の妊娠期間前に生ずる場合をいう。子宮活動の早期の増加は、早期分娩のもっとも一般的な兆候である。
【0003】
早産は、望ましくない未熟児出産や、周産期死亡率と重大な罹患率、特に、満期産児よりも早産児においてはるかに多くみられる呼吸窮迫症候群、脳室内出血、気管支肺異形成症、および壊死性腸炎の、依然として主要な原因である深刻な健康問題に至る。脳性小児まひ、視力障害そして聴覚障害といった長期障害もまた、早産児により多くみられる。今日、早産は、先進国において相変わらず乳児の死亡と罹患の主要な原因であり、それらの国で、産科医療における目覚しい改善にもかかわらず、未熟児の新生児集中治療のための高いコストを引き起こしている。呼吸窮迫症候群、心臓病、脳性小児まひ、てんかん、重度の学習障害といった早産関連病のヘルスケア提供を考慮に入れると、実際のコストは社会にとってずっと高いものとなる。早期分娩の管理は、産科学分野における重要な課題を示す。
【0004】
OT/OT−Rシステムは哺乳類、とりわけヒトにおいて陣痛の開始に重要な役割を果たしている。OT−Rの密度は、陣痛の始まり前とその最中に子宮筋層において著しく増加する。また、局所的なOTペプチドホルモン濃度も、ヒトにおいて分娩前に著しく増加すると考えられている。プロゲステロンの高い血中濃度は、子宮静止化を引き起こす一方で、子宮は収縮能を得る。出産予定日直前に、血漿中のプロゲステロン濃度は落ち、子宮内のOT−R発現は著しく増加し、OTが放出されて子宮収縮活動が増加する。分娩日には、収縮は次第に強くなり、2つの相互作用するポジティブフィードバックループの結果として出産という結果に至る。1つめは、局所的な子宮ループである:子宮自体内で、OTと子宮収縮に応答して、収縮性のプロスタグランジンが生成されて放出される。これらプロスタグランジンは、子宮頸部の成熟と胎膜の弱化に更なる役割を果たし得る。2つめのループは視床下部に関する:子宮収縮と膣および子宮頸部の膨張に応じて、視床下部にある巨細胞性オキシトシンニューロンはその活動を増加させ、脳下垂体後葉にあるその軸索末端からのOTの放出へと至る。放出されたOTは子宮に作用して、プロスタグランジンのさらなる生産を刺激するとともに、子宮の収縮にさらに寄与する。
【0005】
したがって、OT−Rに拮抗することでOTの効果を阻害することは、OT−R活性、とりわけ早期分娩に関連する疾病の治療に対する魅力的な療法となるかもしれない。
【0006】
子宮収縮抑制薬、すなわち子宮弛緩剤は、早期分娩の医薬治療のための臨床研究において用いられてきた。これら薬剤の大半は、適応外に使用されている。それらは、もしあるとするならば、長期在胎における非常に限定的な有効性を示したが、新生児転帰の改善について明白な証拠があるわけではない。現在の子宮収縮抑制薬は、非常に多くの場合、女性、胎児、または新生児に対する望ましくない悪影響と関連している。そのような子宮収縮抑制薬は、ベータ−2−アドレナリンアゴニスト、プロスタグランジン合成阻害剤、硫酸マグネシウム、一酸化窒素ドナー、およびカルシウムチャネル阻害剤を含む。リトドリンまたはテルブタリンといったベータ−2−アドレナリンアゴニストは、母体頻脈、動悸、低血圧、甲状腺機能の変化、および胎児と新生児の血糖低下、頻脈を含めた、多数の心循環系と代謝系の副作用を引き起こす。リトドリンはもはやFDAに認可されていない。カルシウムチャネル阻害剤であるニフェジピンもまた、収縮を止める試みに用いられる薬である。発生し得る副作用の中には、顔面紅潮、頭痛、吐き気、動悸、および頭部のふらふら感が含まれる。総合的なプロスタグランジン合成阻害剤(NSAID)であるインドメタシンが使用されてきた。それは、動脈管の収縮、肺高血圧、羊水過少を伴う腎機能低下、脳室内出血、高ビリルビン血症、壊死性腸炎といった、胎児に深刻な影響を与える可能性もある。母体側の副作用には、母体においての、腹部不快感、吐き気、嘔吐、鬱、そしてめまい発作が含まれる。別のNSAIDはスリンダクであるが、これはインドメタシンに似た副作用プロファイルを持つ。硫酸マグネシウムに対して、メタ分析はそれを子宮収縮抑制剤として支持しなかった。女性たちは、顔面紅潮、無気力、頭痛、筋力低下、肺水腫、それに心拍停止といった重大な副作用を報告した。硫酸マグネシウムにさらされた新生児は、無気力、低血圧症、呼吸抑制、骨の問題、骨減少症および骨折を示す可能性がある。最近、FDAはヘルスケアの専門家に、早期分娩を止めようとして女性に5〜7日より長期にわたって硫酸マグネシウム注射を使用することのないようにアドバイスしている。
【0007】
アトシバン、すなわちバソプレッシンV1aレセプターとOT−Rの双方に対するアンタゴニストは、EUにおいて販売されており、収縮を止めて2、3日だけ早期出産を遅らせるために用いられている。アトシバンは、経口投与が可能ではなく、非経口的に投与されなくてはならないペプチドである。それは、循環中に酵素によって急速に分解され、その使用は最大48時間までに限定されている。
【0008】
さらに非ペプチドOT−Rアンタゴニストは、異性体の混合物として、ピロリジン誘導体(国際公開01/72705、国際公開02/102799、国際公開2002/074741、国際公開2004/005249)のように開発されてきた。
【0009】
OT−R活性、とりわけ早期分娩に関連する疾病治療のための効率的かつ経口の、選択的OT−Rアンタゴニストに対して、未だ対処されていない需要は相当に残されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を提供する。
【0011】
本発明はまた、医薬および上記化合物を含有する医薬組成物としての使用のための、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を提供する。
【0012】
また、オキシトシンレセプター活性および/またはバソプレッシンV1aレセプター活性と関連する疾患の治療および/または予防のための、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を提供する。
【0013】
本発明はさらに、実質的に純粋な形態で、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を、調製および分離する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A麻酔下にある出産間近の妊娠ラットにおける自発性の子宮収縮の抑制に対する、経口ルートにより投与されたZ異性体の投与反応効果を示している。
図1B麻酔下にある出産間近の妊娠ラットにおける自発性の子宮収縮の抑制に対する、経口ルートにより投与されたE異性体の投与反応効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物に関し、当該化合物はO−メチルオキシム官能基におけるZ異性体の立体配置にある。
【0016】
式(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物は、O−メチルオキシム官能基がE異性体の立体配置にある点で、本発明の化合物とは異なる。
【0017】
本明細書で用いられる用語「その活性代謝物」は、特定の化合物、この場合においては、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの体内における代謝を通じて、またはin vitroで生成される生産物を指し、それは(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムと同じ生物活性を示す。
【0018】
(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの活性代謝物は、当該分野において知られているルーチン技術を用いて識別されてよく、それらの活性は本明細書で説明されるような試験を用いて決定されてよい。そのような代謝物は、例えば、投与されたZ形態についての、酸化、グルクロン酸抱合あるいは他の結合、加水分解、還元等からもたらされ得る。従って、本発明の化合物を、その代謝産物を生じさせるのに十分な期間にわたって哺乳類に接触させることを備える工程によって生成される化合物を含めた、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの活性代謝物を含む。そのような代謝物は、対応する(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの酸化、還元、加水分解、グルクロン酸抱合あるいは他の抱合変換により、in vitroで生成されてもよい。(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの活性代謝物の例は、以下に示される構造の化合物を含む:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0019】
受容者への投与にあたり、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/または、上述のようなその活性代謝物に変換可能な化合物は、"プロドラッグ"として知られる。例えば、プロドラッグは体内で、血中での加水分解等により、医学的効果を有する活性型に変換されてもよい。医薬的に許容されるプロドラッグは、T. Higuchi and V. Stella, Prodrugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A. C. S. Symposium Series (1976); "Design of Prodrugs" ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985; および in Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987において説明されており、それらは参照により本明細書に組み込まれている。
【0020】
本発明の化合物は、例えば、国際公開2004/005249と国際公開2005/082848において開示されているような方法で生成される。しかしながら、上記化合物は、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムと、(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムとを含む、(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの異性体混合物において合成されて得られるものである。
【0021】
したがって、本発明は、少なくとも85%から100%の、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物、好ましくは85%から99.9%、より好ましくは90%から99.9%、および更により好ましくは95%から99.9%の上記記化合物を有する、式(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物に関する。
【0022】
代わりに、本発明は、実質的に純粋な形態で提供される、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物に関する。
【0023】
本明細書で用いられる、用語「実質的に純粋な」は、実質的に他の化合物を含まない形態で与えられ化合物を指す。上記「他の化合物」の例には、(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オン、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オン−オキシム、(3R,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−3−メトキシアミノ−ピロリジン、(3S,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−3−メトキシアミノ−ピロリジン、(3Z,5S)−5−(O−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム、および(3E,5S)−5−(O−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムが含まれる。
【0024】
もっとも好ましくは、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物が、式(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物を実質的に含まない。
【0025】
一層より好ましくは、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物の、実質的に純粋な形態の純度が、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、あるいは、少なくとも100%であって、したがって、式(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物が実質的に含まれず、すなわち45%未満、35%未満、25%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満、より好ましくは2%未満、一層より好ましくは1%未満である。
【0026】
一層より好ましくは、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物の、実質的に純粋な形態の純度が、少なくとも85%から100%、好ましくは85%から99.9%、より好ましくは90%から99.9%、一層より好ましくは、95%から99.9%の範囲にあることである。
【0027】
用いられる学名によっては、本発明の化合物"(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム"は、"(4Z、2S)−2−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル−カルボニル)]ピロリジン−4−オンO−メチルオキシム"としても定義されうる。
【0028】
概ね、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物は、オキシトシンレセプターアンタゴニストである。
【0029】
本明細書で用いられる用語「オキシトシンレセプターアンタゴニスト」は、オキシトシンレセプター(OT−R)を(部分的に、あるいは完全に)抑制し、または阻害して、これによりオキシトシンによるレセプターの活性化を妨げることによって機能を発揮する化合物をいう。
【0030】
本発明は、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を提供するが、上記化合物は部分的なまたは完全なオキシトシンレセプターアンタゴニストであって、その阻害定数Kiはおよそ1μM未満である。好ましくは上記阻害定数Kiが、およそ0.1μM未満であって、より好ましくはおよそ0.06μM未満である。
【0031】
本発明はさらに、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物であって、上記化合物がオキシトシンレセプターアンタゴニストであり、その半数阻害濃度IC50がおよそ1μM未満であるものを提供する。好ましくは、上記IC50がおよそ0.1μM未満であり、より好ましくはおよそ0.09μM未満である。
【0032】
また概ね、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物は、バソプレッシンV1aレセプターアンタゴニストである。
【0033】
本明細書で用いられる用語「バソプレッシンV1aレセプターアンタゴニスト」は、バソプレッシンV1aレセプター(アルギニンバソプレッシンレセプター1Aとしても知られる)を(部分的にまたは完全に)抑制し、あるいは阻害して、これによりバソプレッシンによるレセプターの活性化を妨げることにより、機能を発揮する化合物を指す。バソプレッシンV1aレセプターは、ペプチドホルモンであるアルギニンバソプレッシンに対する3つの主要なレセプター型の1つであり、残り2つはV1bとV2レセプターである。
【0034】
好ましくは、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物および/またはその活性代謝物が、バソプレッシンV1aレセプターのアンタゴニストであって、その阻害定数Kiがおよそ1μM未満である。もっとも好ましくは、上記阻害定数Kiがおよそ0.5μM未満であって、さらにより一層好ましくはおよそ0.15μM未満である。
【0035】
本発明は、また、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物であって、オキシトシンレセプターのアンタゴニストであり、バソプレッシンV1aレセプターのアンタゴニストでもあるものに関する。
【0036】
通常、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物は、子宮収縮を抑制する。有利には、上記化合物は、投与してから2〜30分の時間経過のうちに、好ましくは5〜20分のうちに、子宮収縮を速やかに抑制する。
【0037】
驚くべきことに、その抑制的な活性が、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム、および/またはその代謝物の、実質的に純粋なZ形態に特有のものであることを本出願人らは明らかにした。実施例において示すように、式(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの実質的に純粋なE形態は、子宮収縮を抑制しないのでなんら有効性を示さない。
【0038】
本発明の化合物および/またはその活性代謝物に関する投与計画は、患者のタイプ、人種、年齢、体重、性別と健康状態;治療されるべき状態の深刻度;投与経路;患者の腎機能と肝機能;および使用される特定の化合物またはその活性代謝物を含めた様々な要素に応じて選択される。当業者である内科医は、状態の進行を妨げ、対抗し、または停止させるのに要する効果的な薬量を、容易に決定し処方することができる。
【0039】
有利には、本発明の化合物および/またはその活性代謝物は、単回投与されてもよいし、あるいは、全薬用量を日に2回、3回または4回に分けて投与されてもよい。
【0040】
好ましくは、本発明は、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を提供するが、上記化合物は50mgから900mgの単回投与量、より好ましくは100mgから600mgの単回投与量が対象に投与される。
【0041】
本発明の化合物および/またはその活性代謝物は、薬剤中の単一の活性成分として使用されてもよい一方で、その化合物を、少なくとも1つまたは複数のさらなる活性化合物と組み合わせて用いることも可能である。そのようなさらなる活性化合物は、本発明に係るさらなる化合物であってよく、あるいは、カルシウムチャネル阻害剤、硫酸マグネシウム、選択的プロスタグランジンモジュレータ、ベータ−2−アドレナリンアゴニスト、ベータ−3−アドレナリンレセプターアゴニスト、および/またはコルチコステロイドを含む群から選ばれる他の活性化合物であってもよい。
【0042】
代わりに、本発明の化合物および/またはその活性代謝物は、(ニフェジピンのような)カルシウムチャネル阻害剤、硫酸マグネシウム、(EP1、EP2、EP3、EP4、またはFPレセプターの何れかのアゴニストあるいはアンタゴニストのような)プロスタグランジンレセプターモジュレータ、(インドメタシン、ニメスリド、スリンダク、ロフェコキシブ、セレコキシブといった)プロスタグランジン合成阻害剤、(リトドリン、テルブタリン、サルブタモールといった)ベータ−2−アドレナリンアゴニスト、ベータ−3−アドレナリンレセプターアゴニスト、(硝酸グリセリンのような)一酸化窒素ドナーおよび/または(デキサメタゾンやベタメサゾンといった)コルチコステロイドを含む群から選択される少なくとも1つの化合物と併用して、または別々に投与され得る。
【0043】
本明細書で用いられる用語「併用」は、上記開示されている群から選択される、少なくとも1つの化合物の投与直前の、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物の投与を指す。
【0044】
本明細書に用いられる用語「別々に(連続的なまたは引き続いての投与を包含する)」は、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物の投与であって、中断期間を挟んだのちに、上記開示されている少なくとも1つの化合物の投与が続くことをいう。
【0045】
概ね、本発明の化合物は血漿中において安定である。本明細書で用いられる用語「安定」とは、投与後、対象の血漿中に式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物が存在し、上記化合物の異性体の相互変換が実質的に防げられていることを指す。
【0046】
概ね、本発明において、それを必要とする対象は好ましくは哺乳類であり、より好ましくはヒトであり、いっそう好ましくは女性であり、最も好ましくは出産適齢期にあるヒトの女性である。
【0047】
本発明はまた、医薬として使用される、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物に関する。
【0048】
また、本発明において、オキシトシンレセプター活性および/またはバソプレッシンV1aレセプター活性と関連する疾患の治療および/または予防に使用するための、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物が想定される。
【0049】
オキシトシンレセプター活性および/またはバソプレッシンV1aレセプター活性に関連する疾患は、早期分娩、未熟児出産、月経困難症、早漏、性的不全、子宮内膜症、子宮収縮による胚着床不全、不妊、良性前立腺過形成、神経精神障害、自閉症、社会的行動障害、心理社会的ストレス、および/または心血管障害を含む非限定的な群から選択される。
【0050】
早産ともいわれる用語「早期分娩」は、正常な妊娠期間の終了前に、子宮から生存する乳児を排出すること、あるいはより詳細には、妊娠37週前に子宮頸部の展退と拡張を伴う分娩が始まることを意味する。それは、膣からの出血あるいは破膜と関連してもよいし、しなくてもよい。
【0051】
用語「月経困難症」は、排卵周期間の月経に伴う周期的疼痛によって特徴づけられる疾患を指す。その疼痛は、子宮収縮と虚血から生ずると考えられている。
【0052】
用語「性的不全」とは、人間の性反応を特徴づける4つの段階−興奮期、平坦期、オーガスム期および消退期におけるいずれかの障害または変異をいう。
【0053】
本明細書で用いられる用語「神経精神障害」は、例えばうつ病や強迫性障害およびその他といった神経系の疾病に起因する精神障害を指す。
【0054】
本明細書で用いられる用語「社会的行動障害」は、情緒障害、行動や感情の不適切なタイプ、不幸感や鬱の蔓延するムード、および満足ゆく対人関係を築いたり維持したりすることの様々な知覚された困難性を指す。
【0055】
本明細書で用いられる用語「心理社会的ストレス」は、社会的地位、社会的尊重、自尊心、集団内での敬意または受け入れに対する知覚された脅威に起因し、体内におけるストレス応答の進行と身体症状に至るコンディションを指す。
【0056】
生殖補助医療は、不妊治療のためヒトに、および妊娠を引き起こすため動物に、適用される方法である。世界中でおよそ10%の人間の男女ペアに影響を与えている不妊は、体外受精と胚移植(IVF−ET)によって、あるいは複雑な場合でなければ人工受精によって治療され得る。概ね、胚移植が成功するか否かは、適切な着床と胚発達を司る最適条件を提供する子宮能力として定義されるものであるところの、子宮受容能にかかっている。子宮受容能の基本的な構成要素は、子宮収縮活動と子宮内膜のコンディションである。
【0057】
胚移植中に発生する子宮収縮は、子宮から膣または卵管の方へと胚を排出するかもしれず、このことは、治療がうまくいかない原因となったり、あるいは後者の場合には、重篤であって潜在的に生命を脅かす合併症である子宮外妊娠の原因であったりする。
【0058】
概ね、本発明は、生殖補助医療における使用のための、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物に関する。
【0059】
例えば、本発明は、体外受精−胚移植(IVF−ET)法による不妊治療のための、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物に関する。
【0060】
本発明はまた、子宮収縮による胚着床不全の低減に用いられるための、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物に関する。
【0061】
また、本発明においては、胚移植中に発生する収縮の低減に用いられる、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物が想定される。
【0062】
さらに、本発明は、オキシトシン誘発性の血管収縮、バソプレッシン誘発性の血管収縮、オキシトシン誘発性の筋収縮、バソプレッシン誘発性の筋収縮に関連する疾病の治療および/または予防に用いられる、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物に関する。
【0063】
本発明はさらに、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物、および医薬的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【0064】
本明細書で用いられる「医薬的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤」とは、生理的に活性な化学物質を患者に供給するために、当該分野においておおむね受け入れられている媒体である。当業者は、医薬組成物を製剤するに適切な、様々なキャリア、希釈剤または賦形剤について承知している(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Ed. Mack Publishing Company、1990、pp. 1289−1329を参照)。キャリア、希釈剤、あるいは賦形剤は、その配合中の他の含有物と適合し、製剤処方可能でなければならず、その受容者に有害であってはならない。
【0065】
従来使用されてきたキャリア、希釈剤または賦形剤とともに、本発明の化合物および/またはその活性代謝物は、医薬組成物とその単位剤形として製剤されてよい。そのような形態において、タブレットや充填カプセルといった固体として、または溶液、懸濁液、乳濁液、エリキシル剤あるいは上記を充填したカプセルといった液体として、すべて経口使用のために用いられてもよく、あるいは(皮下を含めた)非経口の使用のために滅菌された注射用の溶液の形態で用いられてもよい。そのような医薬組成物とその単位剤形は、追加の活性化合物または成分の有無を問わず、従来の比率において成分を含有してよく、そのような単位剤形は、採用される所期の1日用量の範囲に比例して、活性含有物質すなわち本発明の化合物の任意の適切な有効量を含んでもよい。
【0066】
本発明の医薬組成物は、経口、経直腸、経膣、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、および経鼻を含む様々な経路によって投与され得る。意図される供給経路次第では、それら化合物は、注射用または経口用組成物の何れかとして製剤化されることが好ましい。経口投与のための組成物は、バルク溶液または懸濁液、あるいは混合散剤という形態をとることができる。しかしながら、より一般的には、当該組成物は正確な投与を容易にするために単位剤形にて提供される。用語「単位剤形」は、被験者または他の哺乳類のための単一投与量として好適な物理的に離散したユニットを指し、各ユニットは、適切な医薬賦形剤と関連して所望される治療効果を生むために算出された予め定められた量の活性剤を含む。一般的な単位剤形は、液体組成物が充填されて予め量られたアンプルやシリンジ、あるいは固体組成物の場合におけるピル、タブレット、カプセルなどを含む。そのような組成物において、本発明の化合物は通常、微量成分であって(約0.1〜約50重量%、または好ましくは約1〜約40重量%)、残部は様々な媒剤またはキャリア、および所望される投与形態を成形するのに役立つ加工助剤である。
【0067】
式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物、および医薬的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤を含有する医薬組成物は、経口、経膣、または静注経路によって投与されることが好ましい。
【0068】
経口投与に適した液体形態は、緩衝液、懸濁および分注剤、着色剤、フレーバー剤などとともに、適切な含水または非水の媒剤を含んでもよい。固体の形態は、例えば、下記成分や同類の性質を有する化合物のいずれをも含んでよい:微結晶性セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンといった結合剤;澱粉やラクトースといった賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、またはコーンスターチといった崩壊剤;マグネシウムステアリン酸塩のような潤滑剤;コロイド状の二酸化ケイ素のような滑剤;スクロースやサッカリンといった甘味料;ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料といった香味料。
【0069】
注射用組成物は、通常、注射用の滅菌生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水、または当該分野において知られている他の注射用のキャリアをベースとする。
【0070】
また、本発明の化合物は、持続性放出の形態において、または持続性放出の薬物供給システムから投与され得る。代表的な持続性放出の物質についての説明は、Gennaro、A. R. et al、Remington's Pharmaceutical Sciences.18th ed. Easton: The Mack Publishing Company、1995においてもまた見出される。
【0071】
本発明はまた、下記段階を備え、実質的に純粋な形態で、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を、調製し分離するプロセスに関する。
【0072】
a)式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を含有する粗製の異性体混合物を、ゲルクロマトグラフィーカラムに装填する。
b)有機溶媒中で1%アルコールにより精製する。
c)有機溶媒中で2%アルコールにより精製する。
【0073】
本明細書で用いられる用語「粗製の異性体混合物」は、本明細書で説明される式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物の合成から結果として生じ、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物と、式(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物と、を含む化合物の混合物を指す。
【0074】
好ましくは、本発明は下記段階を備え、実質的に純粋な形態で、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を、調製および分離するプロセスに関する。
【0075】
a)式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物を含有する粗製の異性体混合物を、シリカゲルクロマトグラフィーカラムに装填する。
b)トルエン中にて1%メタノールで精製する。
c)トルエン中にて2%メタノールで精製する。
【0076】
好ましくは、シリカゲルクロマトグラフィーカラムは、Biotage(登録商標)Flash 150 flashクロマトグラフィーシステム、Biotage KP−SIL、Biotage KP−C18−HS、Biotage KP−C18−WP、Biotage KP−C−WP、Biotage FLASH−WAC 400(Biotage AB、751 03 ウプサラ、スウェーデン)の中から選ばれる。他のゲルクロマトグラフィーカラムには、Mitsubishi Diaion(商標) HP20またはHP20SS SDVBレジン(三菱化学株式会社、東京100−8251、日本)で充填されたカラムが含まれる。
【実施例】
【0077】
実施例1:(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの精製
【0078】
(1.1 (3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの合成)
本発明は、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムと、(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムと、を含む粗製の異性体混合物として得られる、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの合成および精製に関する。
【0079】
本発明の化合物の合成経路は、例えば、国際公開2004005249と国際公開2005082848に説明されているものである。
【0080】
例えば、本発明の化合物(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムは、下記に記載されるステージ1から7の段階を踏んで調製され得る。
【0081】
ステージ1:4−(2−メチルフェニル)安息香酸の調製
【化8】
炭酸カリウム(0.908Kg、6.57モル、2.06重量)の水溶液(2.20L、5.0容積)は、4−ブロモ安息香酸(0.441Kg、2.19モル、1.0重量)の水溶液(4.41L、15.0容積)のスラリーに、15〜25℃で加えられた。結果として得られたスラリーは、15〜25℃で撹拌され、真空−窒素パージサイクルを用いて3回脱気された。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.022Kg、0.019モル、0.05重量)が加えられ、真空−窒素パージサイクルが繰り返された。o−トリルボロン酸(0.313Kg、2.30モル、0.707重量)のメタノール溶液(3.53L、8.0容積)が、真空−窒素パージサイクルを用いて3回脱気され、それから、15〜25℃で4−ブロモ安息香酸のスラリーに加えられた。反応混合物は71〜78℃まで加熱され、反応完了(95%の転化率で反応が完了したとみなされる)まで、その温度で加熱還流を維持された。反応完了はH NMR分析(d6−DMSO)で判定され、通常1.5から2.5時間である。反応混合物は、40〜45℃の真空下で、15容積まで濃縮された。トルエン(4.41L、10.0容積)とテトラヒドロフラン(4.41L、10.0容積)が残留物に加えられた。結果として得られた混合物は激しく撹拌され、塩酸(6M、2.00L、4.5容積)で、pH1まで酸性化された。その内容物は30〜60分にわたって激しく撹拌され、複数の層に分離された。トルエン(2.20L、5.0容積)とテトラヒドロフラン(2.20L、5.0容積)が水相に加えられ、その混合物は5〜10分間撹拌された。複数の層に分離され、合一した有機相は濾過されて、35〜40℃の真空下で10.0容積まで濃縮された。トルエン(4.41L、10.0容積)がその残留物に加えられ、その反応生成物は35〜40℃の真空下で濃縮された。結果として得られたスラリーのテトラヒドロフラン含有量はH NMR分析(d6−DMSO)によって決定された(パスレベル:トルエンに対して1.0%w/w以下のテトラヒドロフラン)。スラリーは0〜5℃まで冷却されて30〜60分間熟成され、固体は濾過によって収集され、濾過ケークはトルエン(2.20L、5.0容積)で洗浄された。その固体を35〜40℃において真空オーブン内で乾燥させて、淡黄色の固体としての4−(2−メチルフェニル)安息香酸[0.438Kg、94.1%th、99.3%w/w、H NMR(d6−DMSO)で構造と一致]を得た。
【0082】
ステージ2:4−(2−メチルフェニル)塩化ベンゾイルの調製
【化9】
塩化チオニル(0.300L、4.11モル、0.685容積)が、10〜25℃で、トルエン(4.35L、10.0容積)中の、4−(2−メチルフェニル)安息香酸(0.435Kg、2.05モル、1.0重量)のスラリーに加えられた。その混合物は75〜80℃まで加熱され、H NMR分析(d6−ベンゼン)によって完了するまで、通常4〜5時間、その温度で維持された。反応完了は、濁りのある溶液の形成を伴った。反応生成物は35〜45℃での減圧下で、トルエンの除去により5.0容積まで濃縮された。トルエン(2.18L、5.0容積)が濃縮物に加えられ、その混合物は35〜45℃の減圧下で、トルエンの除去により4.0容積まで濃縮された。反応生成物はガラス繊維紙によって濾過され、濾過ケークはトルエン(0.44L、1.0容積)で洗浄された。4−(2−メチルフェニル)塩化ベンゾイル[0.439Kg、92.8%th、100.9%w/w、H NMR(d6−ベンゼン)にて構造と一致]のトルエン溶液が、ステージ3において直接使用された。
【0083】
ステージ3:(4R)−4−ヒドロキシ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4イル)−カルボニル]−L−プロリンの調製
【化10】
炭酸カリウム(0.526Kg、3.81モル、1.2重量)の水溶液(0.57L、1.3容積)が、15℃〜25℃で、テトラヒドロフラン(2.20L、5.0容積)と水(0.44L、1.0容積)中の、4−ヒドロキシ−L−プロリン(0.274Kg、2.09モル、0.625重量)溶液に加えられたのち、水(0.44L、1.0容積)でラインリンス(line rinse)が行われた。混合物は迅速に撹拌しつつ0〜5℃まで冷却され、4−(2−メチルフェニル)塩化ベンゾイル(0.438Kg、1.90モル、1.0重量)のトルエン溶液(2.19L、5.0容積)がその温度で加えられたのち、トルエン(0.44L、1.0容積)でラインリンスが行われた。反応混合物は、15〜25℃まで1〜2時間にわたり温められ、TLC分析による完了の判定がなされるまでこの温度で撹拌された。15〜25℃で水(2.20L、5.0容積)が反応混合物に加えられ、複数の層に分離された。水相は、15〜25℃において、塩酸(6M、0.66L、1.5容積)でpH5〜6まで酸性化され、その後、塩酸(2M、0.88L、2.0容積)でpH1まで酸性化された。混合物は0〜5℃まで冷却されて、30〜60分間熟成された。沈殿した固体は濾過により収集され、濾過ケークは水(2x1.75L、2x4.0容積)とトルエン(0.88L、2.0容積)で洗浄され、12〜24時間、フィルタ上で吸引乾燥された。収集された固体は40〜45℃の真空下で、KFによる含水量が0.2%w/w以下になるまで乾燥され、わずかに灰色がかった白色の固体としての(4R)−4−ヒドロキシ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリン[0.599Kg、97.0%th、136.8%w/w、H NMR(d−DMSO)で構造と一致]が得られた。
【0084】
ステージ4:1−(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル−4−オキソ−L−プロリンの調製
【化11】
トリエチルアミン(1.80L、13.56モル、3.0容積)が、15〜20℃で、ジメチルスルホキシド(4.42L、7.4容積)中の(4R)−4−ヒドロキシ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリン(0.598Kg、1.84モル、1.0重量)溶液に加えられた。三酸化硫黄ピリジン錯体(0.879Kg、5.52モル、1.47重量)が15〜25℃で一部ずつ加えられ、TLC分析によって反応完了が確認されるまで(通常1〜3時間)、反応混合物はその温度で撹拌された。反応は0〜30℃で塩酸(3M、4.80L、8.0容積)によりクエンチされ、テトラヒドロフラン(3.00L、5.0容積)とヘプタン(0.60L、1.0容積)が加えらえた。複数の層が分離され、水相はテトラヒドロフラン(2x3.00L、2x5.0容積)で抽出された。合一した有機相は、塩酸(1M、2x1.20L、2x2.0容積)と飽和塩化ナトリウム溶液(2x1.20L、2x2.0容積)で洗浄され、水性の洗浄液は混ぜ合わされて、テトラヒドロフラン(2x0.60L、2x1.0容積)で戻し抽出された。合一した有機物は、硫酸マグネシウム(1.794Kg、3.0重量)上で乾燥されて濾過され、濾過ケークはテトラヒドロフラン(0.60L、1.0容積)で洗浄された。そのろ液を40〜45℃の真空下で濃縮して、薄茶色の泡状物質を得た。酢酸エチル(6.00L、10.0容積)がその泡状物質に加えられ、溶解するまでその内容物は5〜10分撹拌され、40〜45℃の真空下で溶媒が除去された。テトラヒドロフランがH NMR分析(d−DMSO)で検出されなくなるまで、酢酸エチル(6.00L、5.0容積)を用いてこれを繰り返した。残留物は酢酸エチル(4.80L、8.0容積)でスラリーにされ、活性炭(0.084Kg、0.14重量)が加えられてから、酢酸エチル(3.00L、5.0容積)でラインリンスされた。生じた結果物は70〜80℃まで加熱されて、そのまま20〜30分間維持され、40〜55℃まで冷却された後、ガラス繊維紙で濾過された。濾過ケークは酢酸エチル(1.50L、2.5容積)で洗浄され、混ぜ合わされたろ液と洗浄液は、40〜45℃の真空下で2.5〜3.5容積まで濃縮された。濃縮中に結晶化が始まった。濃縮物は、酢酸エチル(0.30L、0.5容積)のラインリンスとともに適切な容器に移されて、70〜80℃まで加熱された。溶解させるために必要な、追加の酢酸エチル(0.30L、0.5容積)が加えられた。へプタン(1.80L、3.0容積)が70〜80℃で加えられ、その内容物は15℃と25℃の間になるまで1〜2時間にわたり放冷された。そのスラリーはさらに0〜5℃まで冷却され、その温度で2〜3時間かけて熟成されてから濾過された。濾過ケークは、0〜5℃で酢酸エチル:ヘプタン(1:1、0.60L、1.0容積)で洗浄され、引き続きヘプタン(3.0L、2.5容積)で洗浄された。収集された固体は40〜45℃の真空下で乾燥され、わずかに灰色がかった白色の固体である1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−4−オキソ−L−プロリン[0.444Kg、74.7%th、74.2%w/w、H NMR(d−DMSO)で構造と一致]が得られた。
【0085】
ステージ5:(4Z/E)−4−メトキシイミノ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリンの調製
【化12】
トリエチルアミン(0.40L、2.85モル、0.92容積)が、10〜25℃で、ジクロロメタン(4.40L、10.0容積)中の、1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−4−オキソ−L−プロリン(0.434Kg、1.34モル、1.0重量)溶液に加えられ、続いてジクロロメタン(0.43L、1.0容積)でラインリンスされた。メトキシルアミン塩酸塩(0.130Kg、1.56モル、0.30重量)が一部ずつ、10〜25℃で加えられから、ジクロロメタン(0.43L、1.0容積)でラインリンスされ、その反応混合物は、TLC分析(通常3〜5時間、TLC溶出液:ジクロロメタン:メタノール:酢酸(90:10:1);紫外線による視覚化)で反応完了が確認されるまで、10〜25℃で撹拌された。溶媒は35〜40℃の真空下で除去され、反応生成物は酢酸エチル(4.40L、10.0容積)に溶解されて、塩酸(1M、2x2.20L、2x5.0容積)で洗浄された。酸性洗浄液は酢酸エチル(2.20L、5.0容積)で戻し抽出された。合一した有機相は飽和塩化ナトリウム水溶液(3.10L、7.0容積)で洗浄されてから、硫酸マグネシウム(0.300Kg、0.69重量)上で乾燥されて、濾過され、その濾過ケークは酢酸エチル(2.20L、5.0容積)で洗浄された。ろ液と洗浄液は混ぜ合わされて、35〜40℃の真空下で濃縮され、わずかに灰色がかった白色の固体である、4−メトキシイミノ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリン[0.476Kg、100.6%th、109.6%w/w、H NMR(CDCl)で構造と一致]が得られた。
【0086】
ステージ6:(4Z/E、2S)−メチル−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)−カルボニル]−4−メトキシイミノピロリジン−2−カルボン酸塩の調製
【化13】
炭酸カリウム(0.476Kg、3.44モル、1.0重量)が、アセトン(4.75L、10.0容積)中の、4−メトキシイミノ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリン(0.475Kg、1.35モル、1.0重量)溶液に加えられ、その混合物は0〜10℃まで冷却された。硫酸ジメチル(0.128L、1.35モル、0.27容積)が0〜15℃で加えられて、その混合物は、TLC分析により反応完了が確認されるまで、通常3〜16時間、15〜25℃で撹拌された。溶媒は40〜45℃の真空下で除去され、反応生成物は酢酸エチル(3.80L、8.0容積)と水(3.80L、8.0容積)の間で分けられた。複数の層に分離し、有機相は飽和塩化ナトリウム水溶液(2.85L、6.0容積)で洗浄され、硫酸ナトリウム(0.953Kg、2.0重量)上で乾燥され、その後濾過された。濾過ケークは酢酸エチル(0.48L、1.0容積)で洗浄され、混ぜ合わされたろ液と洗浄液は40〜45℃の真空下で濃縮された。余分な酢酸エチルは、40〜45℃の真空下で、テトラヒドロフラン(2x0.95L、2x2.0容積)との共沸蒸留により除去され、(4Z/E、2S)−メチル−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)−カルボニル]−4−メトキシイミノピロリジン−2−カルボン酸塩[0.492Kg、99.6%th、103.6%w/w、H NMR(CDCl)で構造と一致]が、粘性のある褐色油として得られた。
【0087】
ステージ7:(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの調製
【化14】
水素化ホウ素リチウム(0.049Kg、2.26モル、0.1重量)が、一部ずつ、0〜30℃の窒素下で、テトラヒドロフラン(2.31L、4.7容積)とメタノール(2.31L、4.7容積)中の、(4Z/E、2S)−メチル−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)−カルボニル]−4−メトキシイミノピロリジン−2−カルボン酸塩(0.492Kg、1.34モル、1.0重量)の撹拌溶液に加えられた。TLC分析(溶出液:酢酸エチル;発色試薬:ニンヒドリン)で反応完了が確認されるまで、通常2時間から6時間、その混合物は15〜25℃で撹拌された。反応混合物は、15〜25℃で水(0.40L、0.8容積)によりクエンチされ、16〜20時間かけて15〜25℃で撹拌された。反応生成物は40〜45℃の真空下で濃縮され、その残留物は水(2.46L、5.0容積)と酢酸エチル(4.92L、10.0容積)との間で分けられた。複数の層に分離し、有機相は、塩酸(1M、2.46L、5.0容積)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2.46L、5.0容積)、飽和塩化ナトリウム水溶液(2.46L、5.0容積)で、連続して洗浄された。有機相は硫酸マグネシウム(0.985Kg、2.0重量)上で乾燥されてから濾過され、その濾過ケークは酢酸エチル(0.50L、1.0容積)で洗浄された。混ぜ合わされたろ液と洗浄液は真空下で濃縮されて、粘性のある褐色油としての(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムと、(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム[0.395Kg、86.9%th、80.3%w/w、H NMR(CDCl)で構造と一致;HPLCによる面積82.0%、71.4:28.6のZ/E比]と、を含有する粗製の異性体混合物が得られた。その油状物は、トルエン(生成物の重量に関して0.40L、1.0容積)で溶解されて、必要となるまで保存された。
【0088】
(1.2. 粗製の(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの乾式フラッシュクロマトグラフィー)
上述のプロトコルに従って得られた粗製の異性体混合物の乾式フラッシュクロマトグラフィー精製が、異なる溶出条件を用いて試みられた。乾燥するまで濃縮された(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの粗製混合物は、2容積のトルエン中で再溶解され、SiO(5重量)のパッドに装填され、25画分容積の溶出液で溶出された。
画分1〜5:純トルエンでの溶出
画分6〜10:トルエン/MeOH1%vol/volでの溶出
画分10〜15:トルエン/MeOH2%vol/volでの溶出
【表1】
【0089】
ZおよびE形態は網掛けによって示されている。画分8から13までが混ぜ合わされて、乾燥するまで濃縮された。結果は75%の回収率を示す。E/Z比の改善はなかった。異性体混合物(E+Z)の純度におけるおよそ4%の領域のわずかな増加が、乾式フラッシュクロマトグラフィーの前後で見られた(表2)。
【表2】
【0090】
粗製の異性体混合物の乾式フラッシュクロマトグラフィーでは、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムは精製できない。乾式フラッシュの前後でのE/Z比は、30/70から40/60の範囲のままである。
【0091】
さらに、そのようなアプローチは、実施しなければならない作業の規模に基づいて検討されるべきである。20Lの規模では、この作業は時間を節約する手法とはならないだろう。
【0092】
(1.3. 粗製の異性体混合物からの、純粋なZの結晶化に対する評価)
粗製混合物である(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムから、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムを結晶化することに対する評価の最初のパートは、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの溶解性と潜在的な結晶化条件を調べることであった。15mg規模で実施された溶解性/結晶化試験の結果は下記の表3で説明される。
【表3】
【0093】
初期の溶解性スクリーニングは、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム異性体が、さまざまな溶媒において溶解することを示した。
【0094】
上記結果に基づき、貧溶媒の添加による結晶化が調べられ、その結果は表4に報告されている。貧溶媒がおよそ40〜50℃の温溶液に加えられて、室温で放冷された。
【0095】
とりわけ、IPA中の(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの温溶液(40〜50℃)に、混濁するまで水(貧溶媒)が加えられ、その混合物は室温まで放冷された。
【表4】
【0096】
IPA/水の結晶化条件が粗製の異性体混合物に適用された。トルエン溶液は、最初に、乾燥するまで濃縮された後、IPA(8容積)中で溶解され、水(18容積)が加えられた。残念ながら、これは油状として物質非混合という結果に終わった。
【0097】
別の実験では、粗製の(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム溶液(90.4%面積純度、0.5%w/wトルエンと3.7%w/w THFを含有)に、貧溶媒が室温で混濁するまで加えられた。その混合物は室温で放置された(表5)。
【表5】
【0098】
調査のこの時点において、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの結晶化、あるいは(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムを含有する固体の単離を可能とする、適切な条件は特定されなかった。
【0099】
(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの粗製の異性体混合物を用いて、さらなる結晶化の試みが行われた。すべての場合において、溶媒量は以前に用いられたものより少なく、単一溶媒にのみ基づくものであった。本結晶化に用いられた粗製物質(E/Z比33:67、純度(E+Z)面積79.52%)は、泡状物質となるまで濃縮された(表6)。
【表6】
【0100】
冷凍庫内での一晩かけた熟成を後に伴う酢酸エチルを用いた結晶化は、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム材を用いた結晶化をもたらしたが、試料が温められるとすぐに再融解された。結晶種が加えられた時でさえ、酢酸エチルにおける粗製物質を用いての結晶は見られなかった。
【0101】
冷蔵庫室内での熟成を後に伴うジエチルエーテルを使った結晶化は、粗製の(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム材を用いた結晶化をもたらした。固体は41%の回収率で収集された。残念ながら収集された固体は、投入原材料よりも僅かに悪いE/Z比と、僅かに高い化学純度を有していた。
【0102】
純粋および粗製両方のZに対する溶媒としてのTBMEは、冷凍庫内での熟成後にオイリング(oiling)をもたらし、結晶種の有る無しにかかわらず冷蔵庫内での熟成後の溶液中にとどまった。
【0103】
Z/E比および異性体混合物(E+Z)の純度の改善を可能とする、粗製の異性体混合物の適切な結晶化条件は見出されなかった。
【0104】
(1.4 (3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの実質的に純粋な形態)
(1.4.1 小規模精製)
(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの実質的に純粋な形態における単離工程は、オキシムエステルの還元後に単離された粗製の異性体混合物(実施例1のステージ7)の、バイオタージシステム(Biotage AB、SE−751 03 ウプサラ、スウェーデン)を用いたクロマトグラフィーによって実施された。
【0105】
粗製の異性体混合物の5つの別個のバッチ(No.020、180、062、068、076)がバイオタージクロマトグラフィーによって精製された。さらに、異なる条件がバッチNo.068および076に関して用いられた。オキシムメチルエステルの5%w/wスパイクが加えられ(No.068)、バイオタージカラムに装填され(No.076)た状態で、精製は実施された。
【0106】
各クロマトグラフィーは、トルエンで事前に流されたバイオタージ40Mカートリッジ(40gシリカ)を用いて実行された。次にトルエン:MeOH(99:1 v/v)が溶出されて100mlの画分(総容量4L)で収集され、トルエン:MeOH(96:4 v/v)で流された。
【0107】
画分はTLC(溶出液:酢酸エチル)で分析されて、どの画分を廃棄でき、どの画分がZ異性体を含んでいるかが決定された。これらZ画分は、次にHPLCで分析された。画分に対する判定基準は、96%超のZ異性体かつ1.2%未満のE異性体というものだった。
【0108】
驚くべきことに、バイオタージクロマトグラフィーによる様々なバッチの精製は非常に効率がよく、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの実質的に純粋な形態は、99.4%(バッチNo.020、No.062、No.068)および99.2%(バッチNo.180、No.076)で精製される。とりわけ、オキシムエステルの存在下でのバイオタージクロマトグラフィーは、回収率や質を低下させることなく5%w/wのオキシムエステルを除去し(バッチNo.068)、およびバイオタージカラムの25%過装填は、収率や質の減少を引き起こさない(バッチNo.076)。
【表7】
【0109】
(1.4.2 大量精製)
粗製の(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(0.392kg、1.16モル、1.0重量)の様々なバッチが、およそ50%w/wのトルエン溶液としてバイオタージ150L SIMユニットに装填されて、1%メタノールのトルエン溶液(150L)、次に2%メタノールのトルエン溶液(50L)で、分画サイズ5.0Lにて精製された。収集された画分はTLC15とHPLC分析で適切に分析された。不純物を含まない(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(基準:Z異性体が面積96.00%以上、E異性体が面積1.20%以下)を含むと考えられる画分は、混ぜ合わされて、40〜45℃の真空下で濃縮された。無水エタノール(2x2L)が残留物に加えられ、その溶液は、泡状の固体を処理し得るまで、40〜45℃の真空下で濃縮された。所望された生成物、(3Z,5S)−1−[(ビフェニル−4−イル−カルボニル)−5−ヒドロキシ−メチル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム
(0.089Kg、22.7%w/w、H NMR(CDCl)で構造と一致、HPLCにて面積99.3%、98.4:0.9のZ/E比)が、わずかに灰色がかった白色から薄茶色の固体として得られた。
【表8】
【0110】
バイオタージクロマトグラフィーから分離された(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(2.713kg、1.0重量)の適切なバッチは混ぜ合わされ、15〜25℃の無水エタノール(5.16L、2.0容積)中で溶解され、ガラス繊維紙による濾過により浄化され、無水エタノール洗浄(0.50L、0.2容積)がそのフィルタに適用された。混ぜ合わされたろ液は、40〜45℃の真空下で一部ずつ濃縮された。生成物は乾燥トレイに移されて、30℃の真空下で24時間、乾燥された。オーブン温度は次に、80時間かけて30℃から40度まで徐々に高められた。残滓溶媒のレベルはH NMR分析(CDCl)で決定され、それが1.0%w/w未満であると判定された場合、その固体は目開きが500mmのふるいにかけられた。その固体はオーブンに戻されて、溶媒レベルが0.40%w/w以下となって(3Z,5S)−1−[(ビフェニル−4−イル−カルボニル)−5−ヒドロキシ−メチル]−ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(2.633Kg、97.1%w/w、H NMR(CDCI)で構造と一致、HPLCで面積98.65%)が得られるまで、40〜42℃で乾燥された。
【0111】
組み合わせ処理は、下記に要約されている。
インプット:2.713kg
アウトプット:2.633kg
収量:97.1%w/w
【0112】
実施例2:(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの、OT−RとバソプレッシンV1aレセプターへの結合
【0113】
(OT−RとバソプレッシンV1aレセプターへの結合)
ヒトオキシトシンレセプターへの競合的結合が、シンチレーション近接アッセイによりin vitroで測定された。
【0114】
本アッセイにより、試験化合物のOT−Rに対する親和性を決定することができる。HEK293EBNA(OT−Rを発現している細胞)由来の膜組織が50mM Tris−HCl、pH7.4、5mM MgC1および0.1%BSA(w/v)を含む緩衝液中に懸濁された。その膜組織(2〜4μg)は、コムギ胚凝集素で被覆された0.1mgのSPAビーズ(Amersham社のWGA−PVT−ポリエチレンイミンビーズ)、および、0.2nMの125放射性標識された[I]−OVTA(OVTAはオルニチン血管作用性であって、すなわち競合的結合実験におけるOTの類似体)と混合された。非特定的結合は1μMのオキシトシンの存在下で決定された。総アッセイ容量は100μlであった。プレート(Corning(登録商標)NBSプレート)は、室温で30分間インキュベートされ、Mibrobeta(登録商標)プレートシンチレーションカウンターでカウントされた。競合的結合は、本発明の化合物の存在下、次の濃度で実施された:30μM、10μM、1μM、300nM、100nM、10nM、1nM、100pM、10pM。競合的結合データは、反復型非線形曲線回帰プログラム"Prism"(GraphPad Software、Inc)を用いて分析された。
【0115】
OTレセプターへのI−OVTAの結合を抑制する本発明の化合物の能力は、上述のin vitroのバイオアッセイを用いて評価された。上記の実施例中の試験化合物の結合親和性は、阻害定数(Ki;nM)で示される。これらの値から、本発明に係る上記試験化合物は、オキシトシンレセプターへの著しい結合を示すことが導き出される。
【0116】
(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの、オキシトシンレセプターに対する阻害定数KiはKi(nM)=52nMであって、バソプレッシンV1aレセプターに対してはKi(nM)=120nMである。したがって、(3Z、5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムは、オキシトシンレセプターに対して選択的である。
【0117】
実施例3:(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムはOT−Rアンタゴニストである。
【0118】
OT−Rを遺伝子導入されたHEK293EBNA細胞における、オキシトシン誘発性Ca2+動員の阻害が、FLIPR(蛍光イメージングプレートリーダー)で測定された。
【0119】
化合物(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムによる、OT/OT−R媒介性カルシウム動員の阻害が、このアッセイにより測定された。
【0120】
FLIPR(登録商標)は、同時照射用のレーザ(アルゴン−イオンレーザ)を使い、96ウェルプレートの各ウェルを読み込む(冷却CCDカメラ)ことにより、多数の試料の迅速な測定をすることができる蛍光イメージング装置である。
【0121】
プレートの調整:FLIPRプレートは、HEK293EBNA細胞(OT−Rを発現しているヒト胎児由来腎臓細胞)が付着するように、PLL(ポリ−L−リシンl0μg/ml+0.1%ゼラチン)でプレコートされ、30分から2日間まで37℃でインキュベートされた。細胞は96ウェルプレートに播かれた(60000細胞/ウェル)。
【0122】
Fluo−4による標識:50μgのFluo−4(Ca2+感受性蛍光染料)が、20μlのプルロニック酸(20%DMSO溶液)で溶解された。溶解したfluo−4は次に、10mlのDMEM(ダルベッコ最小必須培地)−F12培養培地で希釈された。プレートはDMEM−F12培地で1回洗われた。Fluo−4を含有する100μlのDMEM−F12培地が、この蛍光培地で1.5〜2時間にわたりインキュベートされたHEK細胞に加えられた。Fluo−4は細胞の細胞質に取り込まれる。
【0123】
緩衝液:145mM NaCl、5mM KCl、lmM MgCl、10mM Hepes、10mM グルコース、EGTA(エチレンビス オキシエチレンニトリロ テトラ酢酸)。pHは7.4に調整された。
【0124】
アッセイの実施:上記緩衝液(1x)中の化合物(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(5x)を、最低80μl/ウェルとして用意された(96ウェルプレート)。化合物(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムが、異なる濃度(30μM、10μM、1μM、300nM、100nM、10nM、1nM、100pM、10pM)で、96ウェルプレートに加えられた。オキシトシン(OT)が、濃度40nMで加えられた。
【0125】
次に、Fluo−4(λex=488nm、λem=590nm)の相対蛍光は、化合物(3Z、5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの存在または不存在を問わず、FLIPRによって測定される。そのマーカの蛍光はCa2+の量に敏感なため、Ca2+の挙動が検出され得る。その結果、化合物(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムが有する、オキシトシンレセプター媒介性のオキシトシン誘発性細胞内Ca2+動員に拮抗する能力が判断され得る。
【0126】
式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物は、OT−Rに対するオキシトシンの活性を、IC50=81nMで阻害する。
【0127】
実施例4:麻酔下にある妊娠後期のラットにおける自発性の子宮収縮の抑制
【0128】
(4.1 実験プロトコル)
妊娠後期(妊娠19−21日目で認証)で体重が350〜400gの、Sprague Dawley CD(SD)BRのメスのラット(Charles River、カルコ、イタリア)が、ウレタン(1.05g/kg、腹腔内投与)で麻酔されて恒温の手術台におかれた。下腹部レベルでの正中切開がなされ、一の妊娠子宮角を露出させて、(卵巣近くの)その卵管端を外科用絹糸での結紮で閉じた。
【0129】
卵巣に近い胎児に対応して、隣接する胎盤を傷つけないよう注意しながら子宮角壁が切開され、上部にラテックスバルーンを備えたPE240チューブ(空時の長さ9mm、容量0.1mL;Radnoti、Monrovia、カリフォルニア、米国)が内腔に挿入されて、外科用絹糸で子宮壁に固定された。ラテックスバルーンの内部空洞を0.1mLの滅菌生理食塩水で充填した後、P23ID Gould−Statham圧力変換器を介して、増幅/記録システム(MacLab、ADInstruments Pty Ltd、キャッスルヒル、オーストラリア)に、カテーテルがつながれた。一の頸静脈が単離されて、経静脈投与のために、PE60ポリエチレンカニューレでカニューレ処置された。手術準備後、30分の静定時間をみたのち、本発明の化合物の投与(10分間の静脈内点滴、静脈内または経口のボーラス投与)を増やすことの効果を、結果として生ずる子宮収縮を測定することによって評価した。
【0130】
静脈内投与(点滴またはボーラス投与)に対し、10分間の注入過程中にそのAUCを算出することにより、子宮収縮活動は定量化された。各化合物の投与後に見られる自発性の子宮反応と比べたAUC値の百分率変化が、最初の投与前に記録された値(基底値)と比較して算出された。本発明の試験化合物の効果が、処置前と処置後の子宮内腔の圧力値により評価された。
【0131】
経口投与に対し、同じ算出処理が処置後の異なる時点で適用された。各時点における処置群間の統計的な差は、一元配置分散分析とそれに続くテューキーの検定によって決定された。
【0132】
(4.2 結果)
図1AとBは、麻酔下にある出産間近の妊娠ラット(妊娠日齢19−21)における自発性の子宮収縮の抑制に対する、経口ルートにより投与されたZ異性体とE異性体の投与反応効果を示している。n=6〜8である動物のグループごとの平均±標準誤差としてのデータである。y軸は、投与前を100%として比べたときの%値として子宮収縮を表している。x軸は分単位での投与後の時間を表している。収縮は連続的に記録され、10分間隔ごとに曲線下面積(AUC)が積分された。
【0133】
図1Aで示される結果が、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(Z形態)は、NP3S(5%N−メチルピロリドン、25%ポリエチレングリコール200、30%ポリエチレングリコール400、20%プロピレングリコール、20%生理食塩水)の溶媒対照群と比較した場合、種々の投与量(10、30、60mg/kg)で、麻酔下にある妊娠後期のラットにおける自発性の子宮収縮を急速に抑制することができることを実証する。実質的に純粋なZ形態の投与から5〜15分後に、15%の子宮収縮抑制が観察された。42%という高い効率の抑制が、上記化合物を投与してから170〜180分後に見られる。
【0134】
対して、その170〜180分の観察中のどの時点においても、種々の投与量(10、30または60mg/kg、E形態)の(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムでは、子宮収縮の抑制は何ら観察されなかった(図1B)。
【0135】
驚くことに、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムを有する実質的に純粋なZ形態は子宮収縮を抑制する一方、実質的に純粋なE形態はなんら有効性を持たないことを、本発明は示している。したがって、本発明は、有利にも、実質的に純粋な形態における式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの生理活性化合物および/またはその代謝物であって、異性体混合物にて供される上記化合物と比較して、低投与量で投与され得るものに関する。
【0136】
実施例5:(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムのin vivo安定性
【0137】
14C]−(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの異性体相互変換が、8匹の健康なメスのラット(各投与ルートごとにn=4)に対する、単回の経口投与および静脈内投与(名目30mg/kg、25μCi/ラット)の後に調査された。
【0138】
本研究で用いられた動物はSprague−Dawley、Crl:CD(登録商標)BRシロネズミであった。全ての動物はCharles River UK Ltd(Margate、ケント、英国)により供給された。動物は体重が200〜260gの範囲にあり、およそ生後2か月であった。ラットには、固有の識別番号が与えられ、ケージの場所に加えて固有のテールマーキングで識別された。
【0139】
投与グループは次のとおりであった:4匹のメスは経口投与を受け、4匹のメスが静脈内投与を受けた。
【0140】
14C]−(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの経口投与および静脈内投与の剤型は、30mg/kgを至適用量レベルとする各投与段階と、約25μCi/ラットの放射性濃度とで、別々に用意された。投与剤型は適切な母材で調製された;静脈内投与はNP3Sで調製され、一方、経口投与はLabrasol:水(1:1v/v)で調製された。
【0141】
HPLCを用いたクロマトグラフィー分析は、式(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムのE異性体とコクロマトグラフィーを示す放射性成分は、投与前と投与後の何れにおいても、経口投与または静脈内投与の剤型には存在しないことを示した。従って、投薬準備または投与中の、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムから、(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムへの相互転換は検出できなかった。式(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの[14C]−E異性体が、[14C]−(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの経口または静脈内投与後6時間に至るまで採取された血漿中に存在することを示す証拠はなかった。
【0142】
したがって、説明された方法を用いると、[14C]−(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムは、経口投与または静脈内投与後にin vivoにおいて検出可能な異性体の相互変換を経ない。
図1A
図1B