【実施例】
【0077】
実施例1:(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの精製
【0078】
(1.1 (3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの合成)
本発明は、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムと、(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムと、を含む粗製の異性体混合物として得られる、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの合成および精製に関する。
【0079】
本発明の化合物の合成経路は、例えば、国際公開2004005249と国際公開2005082848に説明されているものである。
【0080】
例えば、本発明の化合物(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムは、下記に記載されるステージ1から7の段階を踏んで調製され得る。
【0081】
ステージ1:4−(2−メチルフェニル)安息香酸の調製
【化8】
炭酸カリウム(0.908Kg、6.57モル、2.06重量)の水溶液(2.20L、5.0容積)は、4−ブロモ安息香酸(0.441Kg、2.19モル、1.0重量)の水溶液(4.41L、15.0容積)のスラリーに、15〜25℃で加えられた。結果として得られたスラリーは、15〜25℃で撹拌され、真空−窒素パージサイクルを用いて3回脱気された。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.022Kg、0.019モル、0.05重量)が加えられ、真空−窒素パージサイクルが繰り返された。o−トリルボロン酸(0.313Kg、2.30モル、0.707重量)のメタノール溶液(3.53L、8.0容積)が、真空−窒素パージサイクルを用いて3回脱気され、それから、15〜25℃で4−ブロモ安息香酸のスラリーに加えられた。反応混合物は71〜78℃まで加熱され、反応完了(95%の転化率で反応が完了したとみなされる)まで、その温度で加熱還流を維持された。反応完了は
1H NMR分析(d6−DMSO)で判定され、通常1.5から2.5時間である。反応混合物は、40〜45℃の真空下で、15容積まで濃縮された。トルエン(4.41L、10.0容積)とテトラヒドロフラン(4.41L、10.0容積)が残留物に加えられた。結果として得られた混合物は激しく撹拌され、塩酸(6M、2.00L、4.5容積)で、pH1まで酸性化された。その内容物は30〜60分にわたって激しく撹拌され、複数の層に分離された。トルエン(2.20L、5.0容積)とテトラヒドロフラン(2.20L、5.0容積)が水相に加えられ、その混合物は5〜10分間撹拌された。複数の層に分離され、合一した有機相は濾過されて、35〜40℃の真空下で10.0容積まで濃縮された。トルエン(4.41L、10.0容積)がその残留物に加えられ、その反応生成物は35〜40℃の真空下で濃縮された。結果として得られたスラリーのテトラヒドロフラン含有量は
1H NMR分析(d6−DMSO)によって決定された(パスレベル:トルエンに対して1.0%w/w以下のテトラヒドロフラン)。スラリーは0〜5℃まで冷却されて30〜60分間熟成され、固体は濾過によって収集され、濾過ケークはトルエン(2.20L、5.0容積)で洗浄された。その固体を35〜40℃において真空オーブン内で乾燥させて、淡黄色の固体としての4−(2−メチルフェニル)安息香酸[0.438Kg、94.1%th、99.3%w/w、
1H NMR(d6−DMSO)で構造と一致]を得た。
【0082】
ステージ2:4−(2−メチルフェニル)塩化ベンゾイルの調製
【化9】
塩化チオニル(0.300L、4.11モル、0.685容積)が、10〜25℃で、トルエン(4.35L、10.0容積)中の、4−(2−メチルフェニル)安息香酸(0.435Kg、2.05モル、1.0重量)のスラリーに加えられた。その混合物は75〜80℃まで加熱され、
1H NMR分析(d6−ベンゼン)によって完了するまで、通常4〜5時間、その温度で維持された。反応完了は、濁りのある溶液の形成を伴った。反応生成物は35〜45℃での減圧下で、トルエンの除去により5.0容積まで濃縮された。トルエン(2.18L、5.0容積)が濃縮物に加えられ、その混合物は35〜45℃の減圧下で、トルエンの除去により4.0容積まで濃縮された。反応生成物はガラス繊維紙によって濾過され、濾過ケークはトルエン(0.44L、1.0容積)で洗浄された。4−(2−メチルフェニル)塩化ベンゾイル[0.439Kg、92.8%th、100.9%w/w、
1H NMR(d6−ベンゼン)にて構造と一致]のトルエン溶液が、ステージ3において直接使用された。
【0083】
ステージ3:(4R)−4−ヒドロキシ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4イル)−カルボニル]−L−プロリンの調製
【化10】
炭酸カリウム(0.526Kg、3.81モル、1.2重量)の水溶液(0.57L、1.3容積)が、15℃〜25℃で、テトラヒドロフラン(2.20L、5.0容積)と水(0.44L、1.0容積)中の、4−ヒドロキシ−L−プロリン(0.274Kg、2.09モル、0.625重量)溶液に加えられたのち、水(0.44L、1.0容積)でラインリンス(line rinse)が行われた。混合物は迅速に撹拌しつつ0〜5℃まで冷却され、4−(2−メチルフェニル)塩化ベンゾイル(0.438Kg、1.90モル、1.0重量)のトルエン溶液(2.19L、5.0容積)がその温度で加えられたのち、トルエン(0.44L、1.0容積)でラインリンスが行われた。反応混合物は、15〜25℃まで1〜2時間にわたり温められ、TLC分析による完了の判定がなされるまでこの温度で撹拌された。15〜25℃で水(2.20L、5.0容積)が反応混合物に加えられ、複数の層に分離された。水相は、15〜25℃において、塩酸(6M、0.66L、1.5容積)でpH5〜6まで酸性化され、その後、塩酸(2M、0.88L、2.0容積)でpH1まで酸性化された。混合物は0〜5℃まで冷却されて、30〜60分間熟成された。沈殿した固体は濾過により収集され、濾過ケークは水(2x1.75L、2x4.0容積)とトルエン(0.88L、2.0容積)で洗浄され、12〜24時間、フィルタ上で吸引乾燥された。収集された固体は40〜45℃の真空下で、KFによる含水量が0.2%w/w以下になるまで乾燥され、わずかに灰色がかった白色の固体としての(4R)−4−ヒドロキシ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリン[0.599Kg、97.0%th、136.8%w/w、
1H NMR(d
6−DMSO)で構造と一致]が得られた。
【0084】
ステージ4:1−(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル−4−オキソ−L−プロリンの調製
【化11】
トリエチルアミン(1.80L、13.56モル、3.0容積)が、15〜20℃で、ジメチルスルホキシド(4.42L、7.4容積)中の(4R)−4−ヒドロキシ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリン(0.598Kg、1.84モル、1.0重量)溶液に加えられた。三酸化硫黄ピリジン錯体(0.879Kg、5.52モル、1.47重量)が15〜25℃で一部ずつ加えられ、TLC分析によって反応完了が確認されるまで(通常1〜3時間)、反応混合物はその温度で撹拌された。反応は0〜30℃で塩酸(3M、4.80L、8.0容積)によりクエンチされ、テトラヒドロフラン(3.00L、5.0容積)とヘプタン(0.60L、1.0容積)が加えらえた。複数の層が分離され、水相はテトラヒドロフラン(2x3.00L、2x5.0容積)で抽出された。合一した有機相は、塩酸(1M、2x1.20L、2x2.0容積)と飽和塩化ナトリウム溶液(2x1.20L、2x2.0容積)で洗浄され、水性の洗浄液は混ぜ合わされて、テトラヒドロフラン(2x0.60L、2x1.0容積)で戻し抽出された。合一した有機物は、硫酸マグネシウム(1.794Kg、3.0重量)上で乾燥されて濾過され、濾過ケークはテトラヒドロフラン(0.60L、1.0容積)で洗浄された。そのろ液を40〜45℃の真空下で濃縮して、薄茶色の泡状物質を得た。酢酸エチル(6.00L、10.0容積)がその泡状物質に加えられ、溶解するまでその内容物は5〜10分撹拌され、40〜45℃の真空下で溶媒が除去された。テトラヒドロフランが
1H NMR分析(d
6−DMSO)で検出されなくなるまで、酢酸エチル(6.00L、5.0容積)を用いてこれを繰り返した。残留物は酢酸エチル(4.80L、8.0容積)でスラリーにされ、活性炭(0.084Kg、0.14重量)が加えられてから、酢酸エチル(3.00L、5.0容積)でラインリンスされた。生じた結果物は70〜80℃まで加熱されて、そのまま20〜30分間維持され、40〜55℃まで冷却された後、ガラス繊維紙で濾過された。濾過ケークは酢酸エチル(1.50L、2.5容積)で洗浄され、混ぜ合わされたろ液と洗浄液は、40〜45℃の真空下で2.5〜3.5容積まで濃縮された。濃縮中に結晶化が始まった。濃縮物は、酢酸エチル(0.30L、0.5容積)のラインリンスとともに適切な容器に移されて、70〜80℃まで加熱された。溶解させるために必要な、追加の酢酸エチル(0.30L、0.5容積)が加えられた。へプタン(1.80L、3.0容積)が70〜80℃で加えられ、その内容物は15℃と25℃の間になるまで1〜2時間にわたり放冷された。そのスラリーはさらに0〜5℃まで冷却され、その温度で2〜3時間かけて熟成されてから濾過された。濾過ケークは、0〜5℃で酢酸エチル:ヘプタン(1:1、0.60L、1.0容積)で洗浄され、引き続きヘプタン(3.0L、2.5容積)で洗浄された。収集された固体は40〜45℃の真空下で乾燥され、わずかに灰色がかった白色の固体である1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−4−オキソ−L−プロリン[0.444Kg、74.7%th、74.2%w/w、
1H NMR(d
6−DMSO)で構造と一致]が得られた。
【0085】
ステージ5:(4Z/E)−4−メトキシイミノ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリンの調製
【化12】
トリエチルアミン(0.40L、2.85モル、0.92容積)が、10〜25℃で、ジクロロメタン(4.40L、10.0容積)中の、1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−4−オキソ−L−プロリン(0.434Kg、1.34モル、1.0重量)溶液に加えられ、続いてジクロロメタン(0.43L、1.0容積)でラインリンスされた。メトキシルアミン塩酸塩(0.130Kg、1.56モル、0.30重量)が一部ずつ、10〜25℃で加えられから、ジクロロメタン(0.43L、1.0容積)でラインリンスされ、その反応混合物は、TLC分析(通常3〜5時間、TLC溶出液:ジクロロメタン:メタノール:酢酸(90:10:1);紫外線による視覚化)で反応完了が確認されるまで、10〜25℃で撹拌された。溶媒は35〜40℃の真空下で除去され、反応生成物は酢酸エチル(4.40L、10.0容積)に溶解されて、塩酸(1M、2x2.20L、2x5.0容積)で洗浄された。酸性洗浄液は酢酸エチル(2.20L、5.0容積)で戻し抽出された。合一した有機相は飽和塩化ナトリウム水溶液(3.10L、7.0容積)で洗浄されてから、硫酸マグネシウム(0.300Kg、0.69重量)上で乾燥されて、濾過され、その濾過ケークは酢酸エチル(2.20L、5.0容積)で洗浄された。ろ液と洗浄液は混ぜ合わされて、35〜40℃の真空下で濃縮され、わずかに灰色がかった白色の固体である、4−メトキシイミノ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリン[0.476Kg、100.6%th、109.6%w/w、
1H NMR(CDCl
3)で構造と一致]が得られた。
【0086】
ステージ6:(4Z/E、2S)−メチル−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)−カルボニル]−4−メトキシイミノピロリジン−2−カルボン酸塩の調製
【化13】
炭酸カリウム(0.476Kg、3.44モル、1.0重量)が、アセトン(4.75L、10.0容積)中の、4−メトキシイミノ−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]−L−プロリン(0.475Kg、1.35モル、1.0重量)溶液に加えられ、その混合物は0〜10℃まで冷却された。硫酸ジメチル(0.128L、1.35モル、0.27容積)が0〜15℃で加えられて、その混合物は、TLC分析により反応完了が確認されるまで、通常3〜16時間、15〜25℃で撹拌された。溶媒は40〜45℃の真空下で除去され、反応生成物は酢酸エチル(3.80L、8.0容積)と水(3.80L、8.0容積)の間で分けられた。複数の層に分離し、有機相は飽和塩化ナトリウム水溶液(2.85L、6.0容積)で洗浄され、硫酸ナトリウム(0.953Kg、2.0重量)上で乾燥され、その後濾過された。濾過ケークは酢酸エチル(0.48L、1.0容積)で洗浄され、混ぜ合わされたろ液と洗浄液は40〜45℃の真空下で濃縮された。余分な酢酸エチルは、40〜45℃の真空下で、テトラヒドロフラン(2x0.95L、2x2.0容積)との共沸蒸留により除去され、(4Z/E、2S)−メチル−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)−カルボニル]−4−メトキシイミノピロリジン−2−カルボン酸塩[0.492Kg、99.6%th、103.6%w/w、
1H NMR(CDCl
3)で構造と一致]が、粘性のある褐色油として得られた。
【0087】
ステージ7:(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの調製
【化14】
水素化ホウ素リチウム(0.049Kg、2.26モル、0.1重量)が、一部ずつ、0〜30℃の窒素下で、テトラヒドロフラン(2.31L、4.7容積)とメタノール(2.31L、4.7容積)中の、(4Z/E、2S)−メチル−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)−カルボニル]−4−メトキシイミノピロリジン−2−カルボン酸塩(0.492Kg、1.34モル、1.0重量)の撹拌溶液に加えられた。TLC分析(溶出液:酢酸エチル;発色試薬:ニンヒドリン)で反応完了が確認されるまで、通常2時間から6時間、その混合物は15〜25℃で撹拌された。反応混合物は、15〜25℃で水(0.40L、0.8容積)によりクエンチされ、16〜20時間かけて15〜25℃で撹拌された。反応生成物は40〜45℃の真空下で濃縮され、その残留物は水(2.46L、5.0容積)と酢酸エチル(4.92L、10.0容積)との間で分けられた。複数の層に分離し、有機相は、塩酸(1M、2.46L、5.0容積)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2.46L、5.0容積)、飽和塩化ナトリウム水溶液(2.46L、5.0容積)で、連続して洗浄された。有機相は硫酸マグネシウム(0.985Kg、2.0重量)上で乾燥されてから濾過され、その濾過ケークは酢酸エチル(0.50L、1.0容積)で洗浄された。混ぜ合わされたろ液と洗浄液は真空下で濃縮されて、粘性のある褐色油としての(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムと、(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム[0.395Kg、86.9%th、80.3%w/w、
1H NMR(CDCl
3)で構造と一致;HPLCによる面積82.0%、71.4:28.6のZ/E比]と、を含有する粗製の異性体混合物が得られた。その油状物は、トルエン(生成物の重量に関して0.40L、1.0容積)で溶解されて、必要となるまで保存された。
【0088】
(1.2. 粗製の(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの乾式フラッシュクロマトグラフィー)
上述のプロトコルに従って得られた粗製の異性体混合物の乾式フラッシュクロマトグラフィー精製が、異なる溶出条件を用いて試みられた。乾燥するまで濃縮された(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの粗製混合物は、2容積のトルエン中で再溶解され、SiO
2(5重量)のパッドに装填され、25画分容積の溶出液で溶出された。
画分1〜5:純トルエンでの溶出
画分6〜10:トルエン/MeOH1%vol/volでの溶出
画分10〜15:トルエン/MeOH2%vol/volでの溶出
【表1】
【0089】
ZおよびE形態は網掛けによって示されている。画分8から13までが混ぜ合わされて、乾燥するまで濃縮された。結果は75%の回収率を示す。E/Z比の改善はなかった。異性体混合物(E+Z)の純度におけるおよそ4%の領域のわずかな増加が、乾式フラッシュクロマトグラフィーの前後で見られた(表2)。
【表2】
【0090】
粗製の異性体混合物の乾式フラッシュクロマトグラフィーでは、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムは精製できない。乾式フラッシュの前後でのE/Z比は、30/70から40/60の範囲のままである。
【0091】
さらに、そのようなアプローチは、実施しなければならない作業の規模に基づいて検討されるべきである。20Lの規模では、この作業は時間を節約する手法とはならないだろう。
【0092】
(1.3. 粗製の異性体混合物からの、純粋なZの結晶化に対する評価)
粗製混合物である(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムから、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムを結晶化することに対する評価の最初のパートは、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの溶解性と潜在的な結晶化条件を調べることであった。15mg規模で実施された溶解性/結晶化試験の結果は下記の表3で説明される。
【表3】
【0093】
初期の溶解性スクリーニングは、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム異性体が、さまざまな溶媒において溶解することを示した。
【0094】
上記結果に基づき、貧溶媒の添加による結晶化が調べられ、その結果は表4に報告されている。貧溶媒がおよそ40〜50℃の温溶液に加えられて、室温で放冷された。
【0095】
とりわけ、IPA中の(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの温溶液(40〜50℃)に、混濁するまで水(貧溶媒)が加えられ、その混合物は室温まで放冷された。
【表4】
【0096】
IPA/水の結晶化条件が粗製の異性体混合物に適用された。トルエン溶液は、最初に、乾燥するまで濃縮された後、IPA(8容積)中で溶解され、水(18容積)が加えられた。残念ながら、これは油状として物質非混合という結果に終わった。
【0097】
別の実験では、粗製の(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム溶液(90.4%面積純度、0.5%w/wトルエンと3.7%w/w THFを含有)に、貧溶媒が室温で混濁するまで加えられた。その混合物は室温で放置された(表5)。
【表5】
【0098】
調査のこの時点において、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの結晶化、あるいは(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムを含有する固体の単離を可能とする、適切な条件は特定されなかった。
【0099】
(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの粗製の異性体混合物を用いて、さらなる結晶化の試みが行われた。すべての場合において、溶媒量は以前に用いられたものより少なく、単一溶媒にのみ基づくものであった。本結晶化に用いられた粗製物質(E/Z比33:67、純度(E+Z)面積79.52%)は、泡状物質となるまで濃縮された(表6)。
【表6】
【0100】
冷凍庫内での一晩かけた熟成を後に伴う酢酸エチルを用いた結晶化は、純粋な(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム材を用いた結晶化をもたらしたが、試料が温められるとすぐに再融解された。結晶種が加えられた時でさえ、酢酸エチルにおける粗製物質を用いての結晶は見られなかった。
【0101】
冷蔵庫室内での熟成を後に伴うジエチルエーテルを使った結晶化は、粗製の(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム材を用いた結晶化をもたらした。固体は41%の回収率で収集された。残念ながら収集された固体は、投入原材料よりも僅かに悪いE/Z比と、僅かに高い化学純度を有していた。
【0102】
純粋および粗製両方のZに対する溶媒としてのTBMEは、冷凍庫内での熟成後にオイリング(oiling)をもたらし、結晶種の有る無しにかかわらず冷蔵庫内での熟成後の溶液中にとどまった。
【0103】
Z/E比および異性体混合物(E+Z)の純度の改善を可能とする、粗製の異性体混合物の適切な結晶化条件は見出されなかった。
【0104】
(1.4 (3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの実質的に純粋な形態)
(1.4.1 小規模精製)
(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの実質的に純粋な形態における単離工程は、オキシムエステルの還元後に単離された粗製の異性体混合物(実施例1のステージ7)の、バイオタージシステム(Biotage AB、SE−751 03 ウプサラ、スウェーデン)を用いたクロマトグラフィーによって実施された。
【0105】
粗製の異性体混合物の5つの別個のバッチ(No.020、180、062、068、076)がバイオタージクロマトグラフィーによって精製された。さらに、異なる条件がバッチNo.068および076に関して用いられた。オキシムメチルエステルの5%w/wスパイクが加えられ(No.068)、バイオタージカラムに装填され(No.076)た状態で、精製は実施された。
【0106】
各クロマトグラフィーは、トルエンで事前に流されたバイオタージ40Mカートリッジ(40gシリカ)を用いて実行された。次にトルエン:MeOH(99:1 v/v)が溶出されて100mlの画分(総容量4L)で収集され、トルエン:MeOH(96:4 v/v)で流された。
【0107】
画分はTLC(溶出液:酢酸エチル)で分析されて、どの画分を廃棄でき、どの画分がZ異性体を含んでいるかが決定された。これらZ画分は、次にHPLCで分析された。画分に対する判定基準は、96%超のZ異性体かつ1.2%未満のE異性体というものだった。
【0108】
驚くべきことに、バイオタージクロマトグラフィーによる様々なバッチの精製は非常に効率がよく、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの実質的に純粋な形態は、99.4%(バッチNo.020、No.062、No.068)および99.2%(バッチNo.180、No.076)で精製される。とりわけ、オキシムエステルの存在下でのバイオタージクロマトグラフィーは、回収率や質を低下させることなく5%w/wのオキシムエステルを除去し(バッチNo.068)、およびバイオタージカラムの25%過装填は、収率や質の減少を引き起こさない(バッチNo.076)。
【表7】
【0109】
(1.4.2 大量精製)
粗製の(3Z/E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(0.392kg、1.16モル、1.0重量)の様々なバッチが、およそ50%w/wのトルエン溶液としてバイオタージ150L SIMユニットに装填されて、1%メタノールのトルエン溶液(150L)、次に2%メタノールのトルエン溶液(50L)で、分画サイズ5.0Lにて精製された。収集された画分はTLC
15とHPLC分析で適切に分析された。不純物を含まない(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(基準:Z異性体が面積96.00%以上、E異性体が面積1.20%以下)を含むと考えられる画分は、混ぜ合わされて、40〜45℃の真空下で濃縮された。無水エタノール(2x2L)が残留物に加えられ、その溶液は、泡状の固体を処理し得るまで、40〜45℃の真空下で濃縮された。所望された生成物、(3Z,5S)−1−[(ビフェニル−4−イル−カルボニル)−5−ヒドロキシ−メチル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム
(0.089Kg、22.7%w/w、
1H NMR(CDCl
3)で構造と一致、HPLCにて面積99.3%、98.4:0.9のZ/E比)が、わずかに灰色がかった白色から薄茶色の固体として得られた。
【表8】
【0110】
バイオタージクロマトグラフィーから分離された(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(2.713kg、1.0重量)の適切なバッチは混ぜ合わされ、15〜25℃の無水エタノール(5.16L、2.0容積)中で溶解され、ガラス繊維紙による濾過により浄化され、無水エタノール洗浄(0.50L、0.2容積)がそのフィルタに適用された。混ぜ合わされたろ液は、40〜45℃の真空下で一部ずつ濃縮された。生成物は乾燥トレイに移されて、30℃の真空下で24時間、乾燥された。オーブン温度は次に、80時間かけて30℃から40度まで徐々に高められた。残滓溶媒のレベルは
1H NMR分析(CDCl
3)で決定され、それが1.0%w/w未満であると判定された場合、その固体は目開きが500mmのふるいにかけられた。その固体はオーブンに戻されて、溶媒レベルが0.40%w/w以下となって(3Z,5S)−1−[(ビフェニル−4−イル−カルボニル)−5−ヒドロキシ−メチル]−ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(2.633Kg、97.1%w/w、
1H NMR(CDCI
3)で構造と一致、HPLCで面積98.65%)が得られるまで、40〜42℃で乾燥された。
【0111】
組み合わせ処理は、下記に要約されている。
インプット:2.713kg
アウトプット:2.633kg
収量:97.1%w/w
【0112】
実施例2:(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの、OT−RとバソプレッシンV1aレセプターへの結合
【0113】
(OT−RとバソプレッシンV1aレセプターへの結合)
ヒトオキシトシンレセプターへの競合的結合が、シンチレーション近接アッセイによりin vitroで測定された。
【0114】
本アッセイにより、試験化合物のOT−Rに対する親和性を決定することができる。HEK293EBNA(OT−Rを発現している細胞)由来の膜組織が50mM Tris−HCl、pH7.4、5mM MgC1
2および0.1%BSA(w/v)を含む緩衝液中に懸濁された。その膜組織(2〜4μg)は、コムギ胚凝集素で被覆された0.1mgのSPAビーズ(Amersham社のWGA−PVT−ポリエチレンイミンビーズ)、および、0.2nMの125放射性標識された[I]−OVTA(OVTAはオルニチン血管作用性であって、すなわち競合的結合実験におけるOTの類似体)と混合された。非特定的結合は1μMのオキシトシンの存在下で決定された。総アッセイ容量は100μlであった。プレート(Corning(登録商標)NBSプレート)は、室温で30分間インキュベートされ、Mibrobeta(登録商標)プレートシンチレーションカウンターでカウントされた。競合的結合は、本発明の化合物の存在下、次の濃度で実施された:30μM、10μM、1μM、300nM、100nM、10nM、1nM、100pM、10pM。競合的結合データは、反復型非線形曲線回帰プログラム"Prism"(GraphPad Software、Inc)を用いて分析された。
【0115】
OTレセプターへのI−OVTAの結合を抑制する本発明の化合物の能力は、上述のin vitroのバイオアッセイを用いて評価された。上記の実施例中の試験化合物の結合親和性は、阻害定数(Ki;nM)で示される。これらの値から、本発明に係る上記試験化合物は、オキシトシンレセプターへの著しい結合を示すことが導き出される。
【0116】
(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの、オキシトシンレセプターに対する阻害定数KiはKi(nM)=52nMであって、バソプレッシンV1aレセプターに対してはKi(nM)=120nMである。したがって、(3Z、5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムは、オキシトシンレセプターに対して選択的である。
【0117】
実施例3:(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムはOT−Rアンタゴニストである。
【0118】
OT−Rを遺伝子導入されたHEK293EBNA細胞における、オキシトシン誘発性Ca2+動員の阻害が、FLIPR(蛍光イメージングプレートリーダー)で測定された。
【0119】
化合物(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムによる、OT/OT−R媒介性カルシウム動員の阻害が、このアッセイにより測定された。
【0120】
FLIPR(登録商標)は、同時照射用のレーザ(アルゴン−イオンレーザ)を使い、96ウェルプレートの各ウェルを読み込む(冷却CCDカメラ)ことにより、多数の試料の迅速な測定をすることができる蛍光イメージング装置である。
【0121】
プレートの調整:FLIPRプレートは、HEK293EBNA細胞(OT−Rを発現しているヒト胎児由来腎臓細胞)が付着するように、PLL(ポリ−L−リシンl0μg/ml+0.1%ゼラチン)でプレコートされ、30分から2日間まで37℃でインキュベートされた。細胞は96ウェルプレートに播かれた(60000細胞/ウェル)。
【0122】
Fluo−4による標識:50μgのFluo−4(Ca2+感受性蛍光染料)が、20μlのプルロニック酸(20%DMSO溶液)で溶解された。溶解したfluo−4は次に、10mlのDMEM(ダルベッコ最小必須培地)−F12培養培地で希釈された。プレートはDMEM−F12培地で1回洗われた。Fluo−4を含有する100μlのDMEM−F12培地が、この蛍光培地で1.5〜2時間にわたりインキュベートされたHEK細胞に加えられた。Fluo−4は細胞の細胞質に取り込まれる。
【0123】
緩衝液:145mM NaCl、5mM KCl、lmM MgCl
2、10mM Hepes、10mM グルコース、EGTA(エチレンビス オキシエチレンニトリロ テトラ酢酸)。pHは7.4に調整された。
【0124】
アッセイの実施:上記緩衝液(1x)中の化合物(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(5x)を、最低80μl/ウェルとして用意された(96ウェルプレート)。化合物(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムが、異なる濃度(30μM、10μM、1μM、300nM、100nM、10nM、1nM、100pM、10pM)で、96ウェルプレートに加えられた。オキシトシン(OT)が、濃度40nMで加えられた。
【0125】
次に、Fluo−4(λex=488nm、λem=590nm)の相対蛍光は、化合物(3Z、5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの存在または不存在を問わず、FLIPRによって測定される。そのマーカの蛍光はCa2+の量に敏感なため、Ca2+の挙動が検出され得る。その結果、化合物(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムが有する、オキシトシンレセプター媒介性のオキシトシン誘発性細胞内Ca2+動員に拮抗する能力が判断され得る。
【0126】
式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムで表される化合物は、OT−Rに対するオキシトシンの活性を、IC50=81nMで阻害する。
【0127】
実施例4:麻酔下にある妊娠後期のラットにおける自発性の子宮収縮の抑制
【0128】
(4.1 実験プロトコル)
妊娠後期(妊娠19−21日目で認証)で体重が350〜400gの、Sprague Dawley CD(SD)BRのメスのラット(Charles River、カルコ、イタリア)が、ウレタン(1.05g/kg、腹腔内投与)で麻酔されて恒温の手術台におかれた。下腹部レベルでの正中切開がなされ、一の妊娠子宮角を露出させて、(卵巣近くの)その卵管端を外科用絹糸での結紮で閉じた。
【0129】
卵巣に近い胎児に対応して、隣接する胎盤を傷つけないよう注意しながら子宮角壁が切開され、上部にラテックスバルーンを備えたPE240チューブ(空時の長さ9mm、容量0.1mL;Radnoti、Monrovia、カリフォルニア、米国)が内腔に挿入されて、外科用絹糸で子宮壁に固定された。ラテックスバルーンの内部空洞を0.1mLの滅菌生理食塩水で充填した後、P23ID Gould−Statham圧力変換器を介して、増幅/記録システム(MacLab、ADInstruments Pty Ltd、キャッスルヒル、オーストラリア)に、カテーテルがつながれた。一の頸静脈が単離されて、経静脈投与のために、PE60ポリエチレンカニューレでカニューレ処置された。手術準備後、30分の静定時間をみたのち、本発明の化合物の投与(10分間の静脈内点滴、静脈内または経口のボーラス投与)を増やすことの効果を、結果として生ずる子宮収縮を測定することによって評価した。
【0130】
静脈内投与(点滴またはボーラス投与)に対し、10分間の注入過程中にそのAUCを算出することにより、子宮収縮活動は定量化された。各化合物の投与後に見られる自発性の子宮反応と比べたAUC値の百分率変化が、最初の投与前に記録された値(基底値)と比較して算出された。本発明の試験化合物の効果が、処置前と処置後の子宮内腔の圧力値により評価された。
【0131】
経口投与に対し、同じ算出処理が処置後の異なる時点で適用された。各時点における処置群間の統計的な差は、一元配置分散分析とそれに続くテューキーの検定によって決定された。
【0132】
(4.2 結果)
図1AとBは、麻酔下にある出産間近の妊娠ラット(妊娠日齢19−21)における自発性の子宮収縮の抑制に対する、経口ルートにより投与されたZ異性体とE異性体の投与反応効果を示している。n=6〜8である動物のグループごとの平均±標準誤差としてのデータである。y軸は、投与前を100%として比べたときの%値として子宮収縮を表している。x軸は分単位での投与後の時間を表している。収縮は連続的に記録され、10分間隔ごとに曲線下面積(AUC)が積分された。
【0133】
図1Aで示される結果が、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシム(Z形態)は、NP3S(5%N−メチルピロリドン、25%ポリエチレングリコール200、30%ポリエチレングリコール400、20%プロピレングリコール、20%生理食塩水)の溶媒対照群と比較した場合、種々の投与量(10、30、60mg/kg)で、麻酔下にある妊娠後期のラットにおける自発性の子宮収縮を急速に抑制することができることを実証する。実質的に純粋なZ形態の投与から5〜15分後に、15%の子宮収縮抑制が観察された。42%という高い効率の抑制が、上記化合物を投与してから170〜180分後に見られる。
【0134】
対して、その170〜180分の観察中のどの時点においても、種々の投与量(10、30または60mg/kg、E形態)の(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムでは、子宮収縮の抑制は何ら観察されなかった(
図1B)。
【0135】
驚くことに、式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムを有する実質的に純粋なZ形態は子宮収縮を抑制する一方、実質的に純粋なE形態はなんら有効性を持たないことを、本発明は示している。したがって、本発明は、有利にも、実質的に純粋な形態における式(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの生理活性化合物および/またはその代謝物であって、異性体混合物にて供される上記化合物と比較して、低投与量で投与され得るものに関する。
【0136】
実施例5:(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムのin vivo安定性
【0137】
[
14C]−(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの異性体相互変換が、8匹の健康なメスのラット(各投与ルートごとにn=4)に対する、単回の経口投与および静脈内投与(名目30mg/kg、25μCi/ラット)の後に調査された。
【0138】
本研究で用いられた動物はSprague−Dawley、Crl:CD(登録商標)BRシロネズミであった。全ての動物はCharles River UK Ltd(Margate、ケント、英国)により供給された。動物は体重が200〜260gの範囲にあり、およそ生後2か月であった。ラットには、固有の識別番号が与えられ、ケージの場所に加えて固有のテールマーキングで識別された。
【0139】
投与グループは次のとおりであった:4匹のメスは経口投与を受け、4匹のメスが静脈内投与を受けた。
【0140】
[
14C]−(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの経口投与および静脈内投与の剤型は、30mg/kgを至適用量レベルとする各投与段階と、約25μCi/ラットの放射性濃度とで、別々に用意された。投与剤型は適切な母材で調製された;静脈内投与はNP3Sで調製され、一方、経口投与はLabrasol:水(1:1v/v)で調製された。
【0141】
HPLCを用いたクロマトグラフィー分析は、式(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムのE異性体とコクロマトグラフィーを示す放射性成分は、投与前と投与後の何れにおいても、経口投与または静脈内投与の剤型には存在しないことを示した。従って、投薬準備または投与中の、(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムから、(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムへの相互転換は検出できなかった。式(3E,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの[
14C]−E異性体が、[
14C]−(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムの経口または静脈内投与後6時間に至るまで採取された血漿中に存在することを示す証拠はなかった。
【0142】
したがって、説明された方法を用いると、[
14C]−(3Z,5S)−5−(ヒドロキシメチル)−1−[(2′−メチル−1,1′−ビフェニル−4−イル)カルボニル]ピロリジン−3−オンO−メチルオキシムは、経口投与または静脈内投与後にin vivoにおいて検出可能な異性体の相互変換を経ない。