(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0011】
〔第1実施形態〕
先ず、
図1から
図12(b)を用いて第1実施形態を説明する。
本実施形態に係る冠状動脈バイパス術用処置具100は、可撓性チューブ11と、可撓性チューブ11に連通している開口部12aが形成され可撓性チューブ11の遠位端11aに設けられている吸盤部12と、吸引路21を有するジョイント部20と、可撓性チューブ11の近位端11bとジョイント部20の吸引路21の遠位端21aとのうち、一方に設けられている雄コネクタ40と、他方に設けられていて雄コネクタ40に対して着脱可能に連結される雌コネクタ50と、を備えている。
【0012】
本実施形態に係る冠状動脈バイパス術用処置具100によれば、可撓性チューブ11とジョイント部20とが着脱可能である。
このため、冠状動脈バイパス術用処置具100のハンドリング性が良好なものとなる。
例えば、ジョイント部20から取り外した可撓性チューブ11を開創部93(
図11)から胸腔96(
図11)内に挿入し、小切開孔95(
図12(a)、(b))から可撓性チューブ11を引き出して、該可撓性チューブ11をジョイント部20に接続することができる。これにより、開創部93を小さくすることができ、生体の負担を低減することが可能である。
【0013】
なお、本実施形態に係る冠状動脈バイパス術用処置具100の各構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0014】
以下、本実施形態についてより詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、冠状動脈バイパス術用処置具100は、例えば、複数(例えば3つ)の処置具用部品10と、ジョイント部20と、吸引源30と、を備えている。
【0016】
吸引源30からは、吸引用の吸引管31が導出されている。吸引管31の遠位端がジョイント部20の近位端(以下に説明する主管22の近位端)に接続されるようになっている。
【0017】
図2に示すように、ジョイント部20は、例えば、主管22と、主管22の遠位端から複数に分枝(例えば3つに分枝)している複数(例えば3本)の副管23と、を備えている。
主管22は、当該主管22の遠位端から近位端に亘って、当該主管22の内部を気体が流通可能な管状部材である。
また、副管23は、当該副管23の遠位端から近位端に亘って、当該副管23の内部を気体が流通可能な管状部材である。
各副管23の近位端は、主管22の遠位端に対して連通している。したがって、ジョイント部20には、主管22の近位端から各副管23の遠位端に亘って、一連の吸引路21が形成されている。
各副管23には、当該副管23の内部を気体が流通可能な開状態と、当該副管23内での気体の流通を遮断する閉状態と、の切り替え操作を行うための三方バルブ24が設けられている。
【0018】
各副管23の遠位端(つまりジョイント部20の遠位端)には、それぞれ雄コネクタ40が設けられており、雄コネクタ40は吸引路21と連通している。すなわち、本実施形態の場合、ジョイント部20の吸引路21の遠位端に雄コネクタ40が設けられている。
【0019】
図5に示すように、雄コネクタ40は、本体部41と、本体部41の一端(
図5における左端)から突出している雄ルアー43と、本体部41の一端から突出していて雄ルアー43の周囲に配置されている筒部44と、を備えている。
雄ルアー43は、当該雄ルアー43が先端側(
図5における左側)に向けて先細となるテーパー形状に形成されている。
なお、雄ルアー43の先端側は、例えば、筒部44の先端44aよりも更に突出している。
筒部44の内周面には、例えば、螺旋状の螺合部45が形成されている。すなわち筒部44は雌ネジ形状となっている。
【0020】
雄コネクタ40の内部には、本体部41の他端から雄ルアー43の先端に亘って、貫通孔42が形成されている。
貫通孔42における本体部41の他端側の部分は、例えば、貫通孔42における雄ルアー43の先端側の部分よりも小径の副管固定部42aとなっている。
副管固定部42aに対して副管23の遠位端が差し込まれることによって、副管23の遠位端が雄コネクタ40に固定されている。
【0021】
図3に示すように、処置具用部品10は、例えば、可撓性チューブ11と、可撓性チューブ11の遠位端11aに設けられている吸盤部12と、可撓性チューブ11の近位端11bに設けられている雌コネクタ50と、を備えている。
処置具用部品10は、更に、可撓性の線状体60と、線状体側コネクタ70と、を備えている。
【0022】
吸盤部12には、例えば、連結部材13が一体に形成されている。
連結部材13には、第1差込孔13aと第2差込孔13bとが形成されている。
連結部材13の形状は特に限定されないが、連結部材13は、例えば、一方に長尺な形状に形成されている。そして、第1差込孔13a及び第2差込孔13bの軸方向は、連結部材13の長手方向に対して平行に延在している。
また、第1差込孔13a及び第2差込孔13bの開口方向は、例えば、互いに同方向となっている。
【0023】
第1差込孔13aには、可撓性チューブ11の遠位端11aが差し込まれることによって、該遠位端11aが固定されている。すなわち、吸盤部12は、連結部材13を介して、可撓性チューブ11の遠位端11aに設けられている。
【0024】
第2差込孔13bには、線状体60の一端側60aが差し込まれることによって、該一端側60aが固定されている。すなわち、本実施形態の場合、線状体60の一端側60aは、連結部材13を介して可撓性チューブ11の遠位端11aに固定されているとともに、連結部材13を介して吸盤部12に固定されている。
ただし、本発明は、この例に限らず、線状体60の一端側60aが吸盤部12に対して直に固定されていてもよいし、線状体60の一端側60aが可撓性チューブ11の遠位端11aに対して直に固定されていてもよい。
このように、可撓性チューブ11の遠位端11a又は吸盤部12に線状体60の一端側60aが固定されている。
【0025】
なお、上述のように、第1差込孔13a及び第2差込孔13bの開口方向が互いに同方向であるため、可撓性チューブ11及び線状体60が互いに同方向に連結部材13から導出されている。
【0026】
吸盤部12は、椀型に形成されており、開口部12aを有している。なお、吸盤部12の内部には、必要に応じて凹凸形状が形成されていることも好ましい。
吸盤部12の開口部12aは、吸盤部12の内部空間と連結部材13の内部空間とを介して、可撓性チューブ11の内部空間と連通している。
【0027】
吸盤部12の開口部12aが生体の心臓にあてがわれた状態で、吸盤部12の内部空間の気体が、連結部材13の内部空間、可撓性チューブ11の内部空間、雌コネクタ50の内部空間(
図6の貫通孔50a)、雄コネクタ40の内部空間(
図6の貫通孔42)、ジョイント部20の内部の吸引路21、及び、吸引管31を介して、吸引源30によって吸引されることにより、吸盤部12が心臓を吸着するようになっている。その状態で吸盤部12を所望の位置に保持することによって、心臓を所望の位置に維持させることが可能となっている。
【0028】
ここで、
図7を用いて線状体側コネクタ70について説明する。
線状体側コネクタ70は、線状体60の他端側60b側に設けられている。この線状体側コネクタ70は、雌コネクタ50に対して着脱可能に連結可能である(
図8参照)。
すなわち、処置具用部品10は(したがって冠状動脈バイパス術用処置具100は)、可撓性チューブ11の遠位端11a又は吸盤部12に一端側60aが固定されている線状体60を備え、線状体60の他端側60bに線状体側コネクタ70が設けられており、線状体側コネクタ70は、雄コネクタ40と雌コネクタ50とのうち、可撓性チューブ11の近位端11bに設けられている方のコネクタである可撓性チューブ側コネクタ(雌コネクタ50)に対して着脱可能に連結可能である。
【0029】
図7に示すように、線状体60は、線状体側コネクタ70の軸周りの周面70aから導出されている。
線状体側コネクタ70は、当該線状体側コネクタ70の一端側に配置されていて可撓性チューブ側コネクタ(雌コネクタ50)と接続される連結部72と、当該線状体側コネクタ70の他端側に配置されている先細形状の突起部73と、を有する。
【0030】
線状体側コネクタ70は、本体部71を備えており、連結部72は、本体部71から一方に突出して形成されている突部である。連結部72は、
図8に示すように雌コネクタ50に挿入されるようになっている。つまり、線状体側コネクタ70は雄コネクタ(第2雄コネクタ)である。
このように、可撓性チューブ側コネクタは、雌コネクタ50であり、線状体側コネクタ70は、雌コネクタ50と連結可能な第2雄コネクタであり、線状体側コネクタ70は、本体部71と、本体部71から突出して形成されていて雌コネクタ50に挿入される突部である連結部72と、を有する。
【0031】
なお、本体部71からの突起部73の突出方向と、本体部71からの連結部72の突出方向とは、互いに反対方向となっている。
【0032】
線状体側コネクタ70は、例えば、第1部材75と第2部材76との2つの部材を相互に組み付けることによって構成されている。
【0033】
このうち第1部材75は、本体部構成部751と、上述の突起部73と、を備えて構成されている。
本体部構成部751は、本体部71を構成する筒状の部分である。
本体部構成部751は、一端側が開口していて、他端側(突起部73側)が閉塞している。
本体部構成部751には、線状体60の他端側60bが固定されている固定孔751aと、第2部材76が嵌入固定されている嵌入孔751bと、が形成されている。
固定孔751aと嵌入孔751bとは相互に隣接して配置されているとともに、相互に連通している。
固定孔751aと嵌入孔751bとのうち、嵌入孔751bが本体部構成部751の開口側に配置されている。
本体部構成部751において嵌入孔751bが形成されている部分の外周壁には、切欠形状部751cが形成されている。
【0034】
第2部材76は、第1部材75の嵌入孔751bに嵌入されている嵌入部761と、上述の連結部72と、を備えて構成されている。
嵌入部761には、凹部761aが形成されている。
凹部761aは、固定孔751aと連通しているとともに、切欠形状部751cと連通している。
他端側60bが固定孔751aに固定された線状体60は、凹部761aの内部と、切欠形状部751cとを介して、線状体側コネクタ70の周面70aから導出されている(引き出されている)。
連結部72は、嵌入部761から一方に突出している。
連結部72の外周面には、係合凸部72aが形成されている。
【0035】
より詳細には、連結部72は、円柱状の大径部77と、大径部77よりも小径の円柱状の小径部78と、を備えている。大径部77と小径部78とは、互いに同軸に配置されており、軸方向において相互に連接されている。
大径部77における小径部78側とは反対側の端部に嵌入部761が設けられている。
大径部77の外周面に係合凸部72aが形成されている。
【0036】
ここで、
図10に示すように、冠状動脈バイパス術用処置具100を用いた施術の際に、線状体側コネクタ70の突起部73を鉗子91で掴んで、処置具用部品10を牽引することなどが可能となっている。
【0037】
次に、
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)を用いて雌コネクタ50について説明する。
雌コネクタ50は、当該雌コネクタ50の全体が管状に形成されている。すなわち、雌コネクタ50の一端から他端に亘って貫通孔50a(
図4(c))が形成されている。
雌コネクタ50の軸方向(貫通孔50aの軸方向)における雌コネクタ50の一部分は、収容部52を構成しており、残りの部分は、差込管部59を構成している。
【0038】
収容部52の一端52aには開口53が形成されている。この開口53から収容部52内に線状体側コネクタ70の連結部72が挿入されるようになっている。
収容部52の内周面54には、螺旋状の係合凹部56(螺旋溝)が形成されている。
収容部52の係合凹部56と連結部72の係合凸部72aとが螺合することによって、雌コネクタ50と線状体側コネクタ70とが着脱可能に連結されるようになっている。
ただし、本発明は、この例に限らず、連結部72の外周面に係合凹部56が形成されている一方で、収容部52の内周面54に係合凸部72aが形成されていて、これら係合凹部56と係合凸部72aとが螺合されることで雌コネクタ50と線状体側コネクタ70とが連結されるようになっていてもよい。
【0039】
このように、雌コネクタ50は、一端52aに開口53を有していて開口53から連結部72が挿入される中空の収容部52を有し、連結部72の外周面と収容部52の内周面54とのうち、一方には係合凸部72aが形成され、他方には螺旋状の係合凹部56が形成され、係合凸部72aと係合凹部56とが螺合することにより線状体側コネクタ70と雌コネクタ50とが着脱可能に連結される。
【0040】
また、本実施形態の場合、連結部72の外周面に係合凸部72aが形成され、収容部52の内周面54に係合凹部56が形成されている。
【0041】
収容部52は、開口53からの深さ方向に向かって当該収容部52の内径が小さくなる雌ルアーである。すなわち、
図5の左方に向けて、収容部52の内径が徐々に小さくなっている。
また、収容部52の外周面における収容部52の一端52aの近傍には、第2係合凸部58が形成されている。
また、上述のように、ジョイント部20の吸引路21の遠位端21aには雄コネクタ40が設けられている。
雄コネクタ40の雄ルアー43(
図5)は、収容部52と嵌合する形状に形成されている。雄コネクタ40の筒部44の内周面に形成された螺合部45は、収容部52の第2係合凸部58と螺合するようになっている。すなわち、雄コネクタ40は、雌ルアー(収容部52)と嵌合する雄ルアー43と、雄ルアー43の周囲に設けられている筒部44と、筒部44の内周面に形成されていて収容部52の第2係合凸部58と螺合する螺合部45と、を備える雄ルアーロック構造46を有する。
【0042】
より詳細には、収容部52は、一端52aを含む大径部521と、小径部522と、を備えている。小径部522の外周面は、大径部521の外周面よりも小径に形成されている。
大径部521と小径部522とは、互いに同軸に配置され、且つ、軸方向において相互に連接されている。
そして、第2係合凸部58は、大径部521の外周面に形成されている。
差込管部59の外周面は、例えば、小径部522の外周面よりも更に小径に形成されている。
【0043】
なお、例えば、
図10に示すように、小径部522の外周面には、収容部52の軸方向に延在する複数のリブ55が形成されていてもよい。この場合、リブ55が滑り止めとなるため、雌コネクタ50と線状体側コネクタ70とを相互に螺合させる操作をより容易に行うことができる。
また、雌コネクタ50の収容部52の外周面において第2係合凸部58が形成されている位置は、
図7、
図8及び
図10に示す例のように、一端52aから離間していても良いし、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)、
図5及び
図6に示す例のように、一端52aと隣接していても良い。いずれにしても、雌コネクタ50は、雄コネクタ40と線状体側コネクタ70とのいずれに対しても連結可能に形成されている。
【0044】
図5に示すように、可撓性チューブ11の近位端11bに対して差込管部59が差し込まれることによって、雌コネクタ50が可撓性チューブ11の近位端11bに取り付けられている。
【0045】
雌コネクタ50は、雄コネクタ40又は線状体側コネクタ70の一方に対して選択的に着脱可能に連結することができるようになっている。
すなわち、
図6に示すように、雄ルアー43を収容部52に差し込むとともに螺合部45と第2係合凸部58とを螺合させることにより、雌コネクタ50と雄コネクタ40とを相互に連結することができる。雌コネクタ50と雄コネクタ40とが連結した状態では、雄ルアー43と収容部52とが相互に嵌合し、互いに密着する。
また、
図8に示すように、連結部72を収容部52に差し込むとともに係合凸部72aと係合凹部56とを螺合させることにより、雌コネクタ50と線状体側コネクタ70とを相互に連結することができる。なお、雌コネクタ50と線状体側コネクタ70とが連結した状態では、例えば、連結部72と収容部52とは相互に嵌合状態にはならず、互いに密着はしない。
【0046】
上記の説明から分かるように、処置具用部品10は、可撓性チューブ11と、可撓性チューブ11に連通している開口部12aが形成され可撓性チューブ11の一端(遠位端11a)に設けられている吸盤部12と、可撓性チューブ11の一端又は吸盤部12に一端側60aが固定された線状体60と、中空の収容部52を有し可撓性チューブ11の他端(近位端11b)に設けられた雌コネクタ50と、を備えている。
そして、収容部52は、一端52aに開口53を有しているとともに、開口53からの深さ方向に向かって当該収容部52の内径が小さくなる雌ルアーであり、雌ルアーの内周面54に螺旋溝(係合凹部56)が形成されている。
【0047】
また、線状体60の他端側60bに、雌コネクタ50に対して連結可能な線状体側コネクタ70が設けられており、線状体側コネクタ70は、本体部71と、本体部71から突出して形成されていて収容部52に挿入される突部である連結部72と、を有し、連結部72の外周面に、螺旋溝(係合凹部56)と螺合する係合凸部72aが形成されている。
【0048】
ここで、冠状動脈バイパス術用処置具100の各構成要素の材料の例を説明する。
副管23、可撓性チューブ11及び線状体60は、例えば、軟質樹脂により構成されており、可撓性を有しており、柔軟に屈曲可能となっている。
吸盤部12は、例えば、軟質樹脂により構成されている。
三方バルブ24、雄コネクタ40及び雌コネクタ50は、例えば、それぞれ硬質樹脂により構成されている。
連結部材13は、例えば、樹脂(硬質樹脂又は軟質樹脂)により構成されている。
線状体側コネクタ70の第1部材75は、例えば、樹脂(軟質樹脂又は硬質樹脂)により構成されている。
線状体側コネクタ70の第2部材76は、例えば、硬質樹脂により構成されている。
【0049】
ここで、
図3に示す処置具用部品10(タイプ1)の場合、連結部材13は一方に長尺に形成されている。また、吸盤部12も一方に長尺に形成されており、且つ、吸盤部12は連結部材13の長手方向に沿って配置されている。
一方、処置具用部品10としては、
図9に示すタイプ2を用いることもできる。
図9に示す処置具用部品10の場合、吸盤部12の長手方向が連結部材13の長手方向に対して直交して配置されている。
【0050】
また、複数の処置具用部品10と1つのジョイント部20とをセット(キット)として提供することもできる。この場合、例えば、
図3に示すタイプ1の処置具用部品10と、
図9に示すタイプ2の処置具用部品10とを含むセットを提供することができる。
これにより、タイプ1の処置具用部品10とタイプ2の処置具用部品10とのうち、施術者の好みに合う方、又は、必要な施術に相応しい方を選択して用いることが可能となる。
【0051】
次に、
図11、
図12(a)、
図12(b)を用いて、冠状動脈バイパス術用処置具100を用いた施術の例を説明する。
【0052】
図11に示すように、人体などの被験体92の胸壁97に、胸腔96に達する開口である開創部93を形成し、心臓94を外部に臨ませる。
その一方で、胸壁97における開創部93の周囲の部分に、開創部93よりも小さい複数の小切開孔95を形成する。小切開孔95の数は、冠状動脈バイパス術用処置具100が備える処置具用部品10の数と等しくすることができ、本実施形態の場合、例えば3つとする。
なお、各小切開孔95内には、留置型シース(不図示)が設けられてもよい。
【0053】
次に、ジョイント部20から分離した状態の処置具用部品10であって、且つ、雌コネクタ50と線状体側コネクタ70とが相互に連結した状態の処置具用部品10の雌コネクタ50及び線状体側コネクタ70を、胸腔96内における小切開孔95の近傍の位置に配置する。
次に、
図12(a)に示すように、鉗子91の先端側を被験体92の外部から小切開孔95を介して胸腔96に差し込み、処置具用部品10の線状体側コネクタ70の突起部73を鉗子91で掴む。
そして、鉗子91を牽引することにより、線状体側コネクタ70及び雌コネクタ50と、線状体60及び可撓性チューブ11の一部分とを、小切開孔95を介して胸腔96から引き出す。なお、この状態で、処置具用部品10における吸盤部12及び連結部材13側の部分は、胸腔96内に位置する。
そして、
図12(b)に示すように、吸盤部12を心臓94の所望の吸着部位の近傍に配置する。
また、線状体側コネクタ70を雌コネクタ50から分離させる。
また、被験体92の外部において、雌コネクタ50をジョイント部20の雄コネクタ40と連結させる。
この作業を各処置具用部品10について繰り返す。
その結果、ジョイント部20の各雄コネクタ40に対してそれぞれ処置具用部品10が接続された状態となる(
図1参照)。
その後、各処置具用部品10の吸盤部12を心臓94の所望の吸着部位にあてがい、吸引源30を稼働させ、各吸盤部12を心臓94に吸着させる。
こうして、心臓94を所望の位置に保持することができる。
その後、冠状動脈バイパス術を行うことができる。
【0054】
ここで、各処置具用部品10をジョイント部20から分離させることができるため、個々の処置具用部品10を個別にハンドリングすることができる。また、各処置具用部品10を雌コネクタ50及び線状体側コネクタ70側の部分から胸腔96に挿入し、鉗子91などを用いて、各小切開孔95を介して線状体側コネクタ70、雌コネクタ50、線状体60及び可撓性チューブ11を胸腔96から引き出した後、処置具用部品10をジョイント部20と連結することができる。
よって、各処置具用部品10の雌コネクタ50及び線状体側コネクタ70と可撓性チューブ11及び線状体60の一部分とを、それぞれ対応する小切開孔95から引き出すことができる。
このため、各吸盤部12を所望の位置に配置する作業や、その後の冠状動脈バイパス術の際に、可撓性チューブ11や線状体60が邪魔にならないようにできる。
よって、開創部93を従来よりもコンパクトにしても、冠状動脈バイパス術や、その準備(吸盤部12の配置等)を好適に行うことができる。
【0055】
以上のような第1の実施形態によれば、可撓性チューブ11とジョイント部20とが着脱可能である。
このため、冠状動脈バイパス術用処置具100のハンドリング性が良好なものとなる。
例えば、ジョイント部20から取り外した可撓性チューブ11を開創部93(
図11)から胸腔96(
図11)内に挿入し、小切開孔95(
図12(a)、(b))から可撓性チューブ11を引き出して、該可撓性チューブ11をジョイント部20に接続することができる。
よって、各処置具用部品10の雌コネクタ50及び線状体側コネクタ70と可撓性チューブ11及び線状体60の一部分とを、それぞれ対応する小切開孔95から引き出す作業を容易に行うことができる。
これにより、開創部93を小さくすることができるため、生体の負担を低減することが可能である。
【0056】
また、線状体60が線状体側コネクタ70の軸周りの周面70aから導出されているため、
図8に示すように、可撓性チューブ11と線状体60とを互いに並列にしやすい。よって、
図12(b)のように処置具用部品10を胸腔96から引き出す際の抵抗を低減することができる。
【0057】
また、線状体側コネクタ70は、線状体側コネクタ70の他端側に配置されている突起部73と、を備えているので、突起部73を鉗子91などで掴んで処置具用部品10のハンドリング(例えば、
図12(a)のように処置具用部品10を胸腔96から引き出す操作)を容易に行うことができる。
また、突起部73が先細形状であるため、
図12(b)のように処置具用部品10を胸腔96から引き出す際の抵抗を低減することができる。
【0058】
また、線状体側コネクタ70の連結部72の外周面に係合凸部72aが形成され、雌コネクタ50の収容部52の内周面54に係合凹部56が形成されており、係合凸部72aと係合凹部56とが螺合することにより線状体側コネクタ70と雌コネクタ50とが着脱可能に連結される。
よって、線状体側コネクタ70の連結部72を、雄コネクタ40の雄ルアーロック構造46よりもコンパクトにすることができる。すなわち、少なくとも連結部72の外径を雄ルアーロック構造46の外径(筒部44の外径)よりも小さくすることができる。
【0059】
また、鉗子91で突起部73を掴んで処置具用部品10のハンドリングを行うことができるため、線状体60や可撓性チューブ11を掴む必要が無く、線状体60や可撓性チューブ11の損傷を抑制できる。
【0060】
〔第2実施形態〕
次に、
図13から
図16を用いて第2実施形態を説明する。
本実施形態に係る処置具用部品10(
図13)は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る処置具用部品10(
図3に示す処置具用部品10、又は、
図9に示す処置具用部品10)と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る処置具用部品10と同様に構成されている。
【0061】
図13に示すように、本実施形態に係る処置具用部品10は、第1実施形態に係る処置具用部品10(
図3又は
図9)と比べて、線状体側コネクタ70の構造が相違している。
【0062】
図14に示すように、本実施形態の場合、線状体側コネクタ70は、本体部71と、本体部71の一端から一方に突出している連結部72と、を備えている。
【0063】
連結部72は、第1実施形態と同様に、雌コネクタ50と接続される部分である。
第1実施形態と同様に、連結部72の外周面には係合凸部72aが形成されている。
本実施形態の場合も、
図15に示すように、雌コネクタ50と線状体側コネクタ70とを相互に連結することができる。
【0064】
また、連結部72は、第1実施形態と同様に、大径部77と小径部78とを有しており、大径部77の外周面に係合凸部72aが形成されている。
本体部71の内部には、線状体60の他端側60bを嵌入固定するための固定孔71aが形成されている。
ここで、本実施形態では、線状体側コネクタ70の両端間に亘って貫通孔が形成されている例を示すが、本発明は、この例に限らず、線状体側コネクタ70における固定孔71a以外の部分(挿入突部72等)は、非中空の、中実構造であってもよい。
本体部71の外周面は、当該本体部71の他端側(連結部72側とは反対側)に向けて縮径するテーパー面71bを含んでいる。
本実施形態の場合、線状体60は、本体部71における連結部72側とは反対側から導出されている。
【0065】
このように、本実施形態の場合、線状体側コネクタ70は、当該線状体側コネクタ70の一端側に配置されていて可撓性チューブ側コネクタ(雌コネクタ50)と接続される連結部72を有し、線状体60は、線状体側コネクタ70の他端側から導出されている。
【0066】
本実施形態の場合、
図13及び
図16に示すように、線状体60における線状体側コネクタ70の近傍の部分に、当該線状体60における他部よりも補強された補強部80が形成されている。
この補強部80は、例えば、線状体60の周囲に補強管81が外嵌されることにより構成されている。
本実施形態の場合、処置具用部品10を胸腔から引き出す際に、
図16に示すように鉗子91で補強部80を掴むことができる。
【0067】
また、補強管81の外周面には、例えば、補強管81の軸方向に延在する複数の溝が形成されている。これにより、鉗子91で補強管81を掴んだ際に鉗子91が補強管81から滑ってしまうことを抑制できる。
【0068】
また、本実施形態に係る冠状動脈バイパス術用処置具(全体図示略)は、
図3又は
図9に示す処置具用部品10の代わりに、
図13に示す処置具用部品10を備える点で、上記の第1実施形態に係る冠状動脈バイパス術用処置具100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る冠状動脈バイパス術用処置具100と同様に構成されている。
【0069】
本実施形態の場合、鉗子91で補強部80を掴んで処置具用部品10のハンドリングを行うことができるため、線状体60を直に掴んだり、可撓性チューブ11を掴んだりする必要が無く、線状体60や可撓性チューブ11の損傷を抑制できる。
【0070】
また、線状体側コネクタ70の本体部71の外周面がテーパー面71bを有しているため、処置具用部品10を胸腔から引き出す際の抵抗を低減することができる。
【0071】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0072】
例えば、上述の各実施形態においては、可撓性チューブ11の近位端11bに雌コネクタ50が設けられている一方で、ジョイント部20の吸引路21の遠位端21aには雄コネクタ40が設けられている例を説明したが、この例とは逆に、可撓性チューブ11の近位端11bに雄コネクタ40が設けられている一方で、ジョイント部20の吸引路21の遠位端21aには雌コネクタ50が設けられていてもよい。
この場合、線状体側コネクタ70は、雄コネクタ40と連結可能な雌コネクタ(第2雌コネクタ)となる。
【0073】
また、例えば、
図17に示す変形例のように、雌コネクタ50とジョイント部側コネクタ40とが連結した状態で、可撓性チューブ11と副管23とが相互に軸回転自在となる構成のジョイント部側コネクタ40を用いることができる。
図17に示すように、この変形例に係るジョイント部側コネクタ40は、第1部材40aと第2部材40bとの2つの部材を備えて構成されている。
【0074】
このうち第1部材40aは、中空管形状の部材であり、当該第1部材40aの軸心に沿って貫通孔42が形成されている。
第1部材40aは、先端側に雄ルアー43を有している。
第1部材40aにおいて、雄ルアー43の基端側に隣接する部分は、円管状の大径部48となっている。
更に、第1部材40aにおいて、大径部48の基端側に隣接する部分(第1部材40aの基端部)は、円管状の小径部47となっている。
大径部48の外径は、小径部47の外径よりも大径であるとともに、雄ルアー43の外径よりも大径となっている。
第1部材40aにおける小径部47から大径部48にかけての部位の貫通孔42は、当該貫通孔42における他部よりも大径の副管固定部42aとなっている。
小径部47の外面には、第1部材40aに対して第2部材40bが相対的に軸方向に移動することを規制する移動規制リブ49が形成されている。
【0075】
一方、第2部材40bは、円筒状の部材であり、筒部44を含んで構成されている。筒部44は、第1実施形態で説明した構造と同様に、当該筒部44の内周面に形成された螺合部45を有している。
第2部材40bにおいて、筒部44の基端側に隣接する部分は、円筒状の軸受部44cとなっている。
第2部材40bにおいて、軸受部44cの基端側に隣接する部分(第2部材40bの基端部)は、円筒状(リング状)の基端側縮径部44bとなっている。
軸受部44cの内径は、第1部材40aの大径部48の外径よりも若干大きい。
基端側縮径部44bの内径は、第1部材40aの大径部48の外径よりも小さく、且つ、第1部材40aの小径部47の外径よりも若干大きい。
【0076】
そして、基端側縮径部44b内に小径部47が挿通されているとともに、軸受部44c内に大径部48が収容されている。
よって、第1部材40aと第2部材40bとは、軸周りに相互に回転可能となっている。
このため、ジョイント部側コネクタ40の第2部材40bと雌コネクタ50とが連結された状態において、第1部材40aと、第2部材40b及び雌コネクタ50とが、軸周りに相互に回転可能となる。
つまり、雌コネクタ50とジョイント部側コネクタ40とが連結した状態で、可撓性チューブ11と副管23とが相互に軸回転自在となる。
なお、第1部材40aと第2部材40bとが相互に軸方向に移動することが規制されている。すなわち、第2部材40bが第1部材40aに対して相対的に
図17における左方に移動しようとすると、基端側縮径部44bが大径部48と干渉することで移動が規制される。逆に、第2部材40bが第1部材40aに対して相対的に
図17における右方に移動しようとすると、基端側縮径部44bが移動規制リブ49と干渉することで移動が規制される。
【0077】
また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0078】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)
可撓性チューブと、
前記可撓性チューブに連通している開口部が形成され、前記可撓性チューブの遠位端に設けられている吸盤部と、
吸引路を有するジョイント部と、
前記可撓性チューブの近位端と前記ジョイント部の前記吸引路の遠位端とのうち、一方に設けられている雄コネクタと、他方に設けられていて前記雄コネクタに対して着脱可能に連結される雌コネクタと、を備える冠状動脈バイパス術用処置具。
(2)
前記可撓性チューブの前記遠位端又は前記吸盤部に一端側が固定されている線状体を更に備え、
前記線状体の他端側に線状体側コネクタが設けられており、
前記線状体側コネクタは、前記雄コネクタと前記雌コネクタとのうち、前記可撓性チューブの近位端に設けられている方のコネクタである可撓性チューブ側コネクタに対して着脱可能に連結可能である(1)に記載の冠状動脈バイパス術用処置具。
(3)
前記線状体は、前記線状体側コネクタの軸周りの周面から導出されており、
前記線状体側コネクタは、
当該線状体側コネクタの一端側に配置されていて前記可撓性チューブ側コネクタと接続される連結部と、
当該線状体側コネクタの他端側に配置されている先細形状の突起部と、
を有する(2)に記載の冠状動脈バイパス術用処置具。
(4)
前記線状体側コネクタは、当該線状体側コネクタの一端側に配置されていて前記可撓性チューブ側コネクタと接続される連結部を有し、
前記線状体は、前記線状体側コネクタの他端側から導出されている(2)に記載の冠状動脈バイパス術用処置具。
(5)
前記線状体における前記線状体側コネクタの近傍の部分に、当該線状体における他部よりも補強された補強部が形成されている(4)に記載の冠状動脈バイパス術用処置具。
(6)
前記可撓性チューブ側コネクタは、前記雌コネクタであり、
前記線状体側コネクタは、前記雌コネクタと連結可能な第2雄コネクタであり、
前記線状体側コネクタは、本体部と、前記本体部から突出して形成されていて前記雌コネクタに挿入される突部である連結部と、を有する(2)から(5)のいずれか一項に記載の冠状動脈バイパス術用処置具。
(7)
前記雌コネクタは、一端に開口を有していて前記開口から前記連結部が挿入される中空の収容部を有し、
前記連結部の外周面と前記収容部の内周面とのうち、一方には係合凸部が形成され、他方には螺旋状の係合凹部が形成され、前記係合凸部と前記係合凹部とが螺合することにより前記線状体側コネクタと前記雌コネクタとが着脱可能に連結される(6)に記載の冠状動脈バイパス術用処置具。
(8)
前記連結部の外周面に前記係合凸部が形成され、前記収容部の内周面に前記係合凹部が形成されている(7)に記載の冠状動脈バイパス術用処置具。
(9)
前記収容部は、前記開口からの深さ方向に向かって当該収容部の内径が小さくなる雌ルアーであり、
前記収容部の外周面における前記一端の近傍に第2係合凸部が形成されており、
前記ジョイント部の前記吸引路の遠位端には前記雄コネクタが設けられ、
前記雄コネクタは、前記雌ルアーと嵌合する雄ルアーと、前記雄ルアーの周囲に設けられている筒部と、前記筒部の内周面に形成されていて前記収容部の前記第2係合凸部と螺合する螺合部と、を備える雄ルアーロック構造を有する(8)に記載の冠状動脈バイパス術用処置具。
(10)
可撓性チューブと、
前記可撓性チューブに連通している開口部が形成され、前記可撓性チューブの一端に設けられている吸盤部と、
前記可撓性チューブの前記一端又は前記吸盤部に一端側が固定された線状体と、
中空の収容部を有し前記可撓性チューブの他端に設けられた雌コネクタと、を備え、
前記収容部は、一端に開口を有しているとともに、前記開口からの深さ方向に向かって当該収容部の内径が小さくなる雌ルアーであり、
前記雌ルアーの内周面に螺旋溝が形成されている処置具用部品。
(11)
前記線状体の他端側に、前記雌コネクタに対して連結可能な線状体側コネクタが設けられており、
前記線状体側コネクタは、本体部と、前記本体部から突出して形成されていて前記収容部に挿入される突部である連結部と、を有し、
前記連結部の外周面に、前記螺旋溝と螺合する係合凸部が形成されている(10)に記載の処置具用部品。