(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記動脈側血液回路に接続された被しごきチューブをローラでしごくことにより送液可能な血液ポンプを具備するとともに、前記陰圧発生手段で陰圧を発生させる前記任意部位は、前記被しごきチューブの少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
前記陰圧発生手段は、前記血液ポンプと、前記血液回路におけるプライミング液が充填された前記任意部位を閉塞する閉塞手段とを有することを特徴とする請求項2記載の血液浄化装置。
前記血液回路の所定部位に接続され、当該所定部位の液面を調整するためのレベル調整用ポンプを具備するとともに、前記陰圧発生手段は、前記レベル調整用ポンプと、前記血液回路におけるプライミング液が充填された前記任意部位を閉塞する閉塞手段とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置。
前記静脈側血液回路には、エアトラップチャンバが接続されるとともに、前記排出部は、当該エアトラップチャンバの上部から延設されたオーバーフローラインから成ることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置。
前記動脈側血液回路に接続された被しごきチューブをローラでしごくことにより送液可能な血液ポンプを具備するとともに、前記陰圧発生手段で陰圧を発生させる前記任意部位は、前記被しごきチューブの少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項7記載の血液浄化装置による気泡の排出方法。
前記陰圧発生手段は、前記血液ポンプと、前記血液回路におけるプライミング液が充填された前記任意部位を閉塞する閉塞手段とを有することを特徴とする請求項8記載の血液浄化装置による気泡の排出方法。
前記血液回路の所定部位に接続され、当該所定部位の液面を調整するためのレベル調整用ポンプを具備するとともに、前記陰圧発生手段は、前記レベル調整用ポンプと、前記血液回路におけるプライミング液が充填された前記任意部位を閉塞する閉塞手段とを有することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の血液浄化装置による気泡の排出方法。
前記静脈側血液回路には、エアトラップチャンバが接続されるとともに、前記排出部は、当該エアトラップチャンバの上部から延設されたオーバーフローラインから成ることを特徴とする請求項7〜10の何れか1つに記載の血液浄化装置による気泡の排出方法。
前記排出部は、前記動脈側血液回路の先端又は前記静脈側血液回路の先端から成ることを特徴とする請求項7〜10の何れか1つに記載の血液浄化装置による気泡の排出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、特に被しごきチューブに充填されたプライミング液中に微小気泡が残留した場合、その微小気泡を血液回路外に排出させるためには、大量且つ流速が高いプライミング液が必要となってしまう虞があった。また、このような微小気泡の残留は、被しごきチューブに限らず、プライミング液が充填される血液回路の流路全般に亘って生じ得ることから、プライミング工程で残留した微小気泡を円滑且つ確実に除去する要求が高まっている。
【0007】
しかるに、本出願人は、プライミング液が充填された流路に陰圧を発生させると、残留した微小気泡が膨張し、隣接する複数の気泡がまとまって比較的大きな気泡となる現象に着目し、当該現象を利用して、被しごきチューブ内に残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出することを鋭意検討した。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、プライミング工程後に残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出させることができる血液浄化装置及びその気泡の排出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有するとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、前記動脈側血液回路の基端及び静脈側血液回路の基端に接続され、前記血液回路を流れる血液を浄化し得る血液浄化手段と、前記血液回路内に供給されたプライミング液を外部に排出させ得る排出部と、前記血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位に陰圧を発生させ得る陰圧発生手段と、前記陰圧発生手段を制御可能な制御手段とを有した血液浄化装置であって、前記制御手段は、前記血液回路内に供給されたプライミング液を前記排出部から排出させるとともに前記血液回路の流路内に充填させるプライミング工程と、前記プライミング工程後、前記陰圧発生手段によって前記任意部位に陰圧を発生させる陰圧発生工程と、前記陰圧発生工程にて陰圧を発生させた前記任意部位の気泡を流動させ、前記排出部から排出させ得る排出工程とを行わせることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記動脈側血液回路に接続された被しごきチューブをローラでしごくことにより送液可能な血液ポンプを具備するとともに、前記陰圧発生手段で陰圧を発生させる前記任意部位は、前記被しごきチューブの少なくとも一部を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の血液浄化装置において、前記陰圧発生手段は、前記血液ポンプと、前記血液回路におけるプライミング液が充填された前記任意部位を閉塞する閉塞手段とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記血液回路の所定部位に接続され、当該所定部位の液面を調整するためのレベル調整用ポンプを具備するとともに、前記陰圧発生手段は、前記レベル調整用ポンプと、前記血液回路におけるプライミング液が充填された前記任意部位を閉塞する閉塞手段とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記静脈側血液回路には、エアトラップチャンバが接続されるとともに、前記排出部は、当該エアトラップチャンバの上部から延設されたオーバーフローラインから成ることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記排出部は、前記動脈側血液回路の先端又は前記静脈側血液回路の先端から成ることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有するとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、前記動脈側血液回路の基端及び静脈側血液回路の基端に接続され、前記血液回路を流れる血液を浄化し得る血液浄化手段と、前記血液回路内に供給されたプライミング液を外部に排出させ得る排出部と、前記血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位に陰圧を発生させ得る陰圧発生手段とを有した血液浄化装置による気泡の排出方法であって、前記血液回路内に供給されたプライミング液を前記排出部から排出させるとともに前記血液回路の流路内に充填させるプライミング工程と、前記プライミング工程後、前記陰圧発生手段によって前記任意部位に陰圧を発生させる陰圧発生工程と、前記陰圧発生工程にて陰圧を発生させた前記任意部位の気泡を流動させ、前記排出部から排出させ得る排出工程とを行わせることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の血液浄化装置による気泡の排出方法において、前記動脈側血液回路に接続された被しごきチューブをローラでしごくことにより送液可能な血液ポンプを具備するとともに、前記陰圧発生手段で陰圧を発生させる前記任意部位は、前記被しごきチューブの少なくとも一部を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の血液浄化装置による気泡の排出方法において、前記陰圧発生手段は、前記血液ポンプと、前記血液回路におけるプライミング液が充填された前記任意部位を閉塞する閉塞手段とを有することを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項7又は請求項8記載の血液浄化装置による気泡の排出方法において、前記血液回路の所定部位に接続され、当該所定部位の液面を調整するためのレベル調整用ポンプを具備するとともに、前記陰圧発生手段は、前記レベル調整用ポンプと、前記血液回路におけるプライミング液が充填された前記任意部位を閉塞する閉塞手段とを有することを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の発明は、請求項7〜10の何れか1つに記載の血液浄化装置による気泡の排出方法において、前記静脈側血液回路には、エアトラップチャンバが接続されるとともに、前記排出部は、当該エアトラップチャンバの上部から延設されたオーバーフローラインから成ることを特徴とする。
【0020】
請求項12記載の発明は、請求項7〜10の何れか1つに記載の血液浄化装置による気泡の排出方法において、前記排出部は、前記動脈側血液回路の先端又は前記静脈側血液回路の先端から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1、7の発明によれば、プライミング工程後、陰圧発生手段によって任意部位に陰圧を発生させる陰圧発生工程と、陰圧発生工程にて陰圧を発生させた任意部位の気泡を流動させ、排出部から排出させ得る排出工程とを行わせるので、陰圧発生工程にて発生させた陰圧によって任意部位に残留した微小気泡を膨張させ、その膨張した複数の気泡をまとめることで微小気泡を大きくすることができるので、プライミング工程後に残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出させることができる。
【0022】
請求項2、8の発明によれば、動脈側血液回路に接続された被しごきチューブをローラでしごくことにより送液可能な血液ポンプを具備するとともに、陰圧発生手段で陰圧を発生させる任意部位は、被しごきチューブの少なくとも一部を含むので、プライミング工程後、被しごきチューブに残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出させることができる。
【0023】
請求項3、9の発明によれば、陰圧発生手段は、血液ポンプと、血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位を閉塞する閉塞手段とを有するので、血液浄化治療に必要な血液ポンプを流用して任意部位に陰圧を発生させることができる。
【0024】
請求項4、10の発明によれば、血液回路の所定部位に接続され、当該所定部位の液面を調整するためのレベル調整用ポンプを具備するとともに、陰圧発生手段は、レベル調整用ポンプと、血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位を閉塞する閉塞手段とを有するので、液面調整に必要なレベル調整用ポンプを流用して任意部位に陰圧を発生させることができる。
【0025】
請求項5、11の発明によれば、静脈側血液回路には、エアトラップチャンバが接続されるとともに、排出部は、当該エアトラップチャンバの上部から延設されたオーバーフローラインから成るので、動脈側血液回路の先端と静脈側血液回路の先端とを接続してプライミング工程を行った際、血液回路の任意部位に残留した微小気泡をオーバーフローラインから良好に排出させることができる。
【0026】
請求項6、12の発明によれば、排出部は、動脈側血液回路の先端又は静脈側血液回路の先端から成るので、動脈側血液回路の先端と静脈側血液回路の先端とを接続しないでプライミング工程を行った際、血液回路の任意部位に残留した微小気泡を動脈側血液回路の先端又は静脈側血液回路の先端から良好に排出させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る血液浄化装置は、透析治療を行うための透析装置から成り、
図1に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1の基端及び静脈側血液回路2の基端に接続され、血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化手段)と、静脈側血液回路2に接続されたエアトラップチャンバ5と、動脈側血液回路1に接続され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインLdと、プライミング液供給ラインLdにて血液回路内に供給されたプライミング液を外部に排出させ得るオーバーフローラインLe(排出部)と、血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位に陰圧を発生させ得る陰圧発生手段(本実施形態においては血液ポンプ4及び閉塞手段としての電磁弁V1)と、陰圧発生手段(血液ポンプ4及び電磁弁V1)を制御可能な制御手段Eとから主に構成されている。
【0029】
動脈側血液回路1には、その先端にコネクタcを介して動脈側穿刺針aが接続されるとともに、途中にしごき型の血液ポンプ4が配設されている。静脈側血液回路2には、その先端にコネクタdを介して静脈側穿刺針bが接続されるとともに、途中にエアトラップチャンバ5が接続されている。さらに、動脈側血液回路1の先端側(コネクタc近傍)及び静脈側血液回路2の先端側(コネクタd近傍)には、それら流路をそれぞれ閉塞又は開放し得る電磁弁V1及びV2が接続されている。
【0030】
そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ4を駆動させると、患者の血液は、動脈側血液回路1を通ってダイアライザ3に至った後、該ダイアライザ3によって血液浄化が施され、エアトラップチャンバ5で除泡がなされつつ静脈側血液回路2を通って患者の体内に戻る。すなわち、患者の血液を血液回路の動脈側血液回路1の先端から静脈側血液回路2の先端まで体外循環させつつダイアライザ3にて浄化することにより血液浄化治療が行われるのである。なお、本明細書においては、血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「動脈側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「静脈側」と称しており、「動脈側」及び「静脈側」とは、穿刺の対象となる血管が動脈及び静脈の何れかによって定義されるものではない。
【0031】
また、動脈側血液回路1の途中(プライミング液供給ラインLdの接続部とダイアライザ3との間)には、被しごきチューブHが接続されており、当該被しごきチューブHを血液ポンプ4(具体的には、
図2、3に基づいて後で詳述する血液ポンプ4のステータ12に形成された取付凹部12a)に取り付けることが可能とされている。かかる被しごきチューブHは、血液ポンプ4(しごき型ポンプ)のローラ14(しごき部)にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体をロータ13の回転方向に流動させ得るものであり、動脈側血液回路1を構成する他の可撓性チューブより軟質且つ大径の可撓性チューブから成る。
【0032】
本実施形態に係る血液ポンプ4は、
図2、3に示すように、ステータ12と、ステータ12内で回転駆動可能なロータ13と、該ロータ13に形成されたローラ14と、上下一対のガイドピン15と、被しごきチューブHを把持して固定する把持部16とから主に構成されている。なお、同図においては、血液ポンプ4におけるステータ12の上部を覆うカバーについて省略してある。
【0033】
ステータ12は、被しごきチューブHが取り付けられる取付凹部12aが形成されたもので、
図2、3に示すように、当該取付凹部12aを形成する内周壁面に沿って被しごきチューブHが取り付けられるよう構成されている。また、取付凹部12aの略中央には、モータにより回転駆動可能なロータ13が配設されている。かかるロータ13の側面(取付凹部12aの内周壁面と対向する面)には、一対(2つ)のローラ14と、ガイドピン15とが配設されている。
【0034】
ローラ14は、ロータ13の外縁側に形成された回転軸M(
図3参照)を中心として回転可能とされたもので、取付凹部12aに取り付けられた被しごきチューブHを径方向に圧縮しつつ当該ロータ13の回転に伴い長手方向(血液の流動方向)にしごくことにより、動脈側血液回路1内で血液を流動させ得るものである。すなわち、取付凹部12a内に被しごきチューブHを取り付けてロータ13を回転駆動させると、ローラ14と取付凹部12aの内周壁面との間で当該被しごきチューブHが圧縮されるとともに、ロータ13の回転駆動に伴ってその回転方向(被しごきチューブHの長手方向)にしごき得るのである。かかるしごき作用により、動脈側血液回路1内の血液がロータ13の回転方向に送液されることとなるので、当該動脈側血液回路1内で体外循環させることが可能とされている。
【0035】
さらに、本実施形態に係る血液ポンプ4は、ロータ13を正回転駆動させてローラ14を同方向(
図3の符号αで示す方向)に回動させつつ被しごきチューブHの長手方向に沿って転動させることにより動脈側血液回路1の先端からダイアライザ3(血液浄化手段)に向かって送液可能とされるとともに、ロータ13を逆回転駆動させてローラ14を同方向(
図3の符号βで示す方向)に回動させつつ被しごきチューブHの長手方向に沿って転動させることによりダイアライザ3(血液浄化手段)から動脈側血液回路1の先端に向かって送液可能とされている。
【0036】
ガイドピン15は、
図2に示すように、ロータ13の上端側及び下端側から取付凹部12aの内周壁面に向かってそれぞれ突出形成された上下一対のピン状部材から成るものであり、これら上下一対のガイドピン15の間に被しごきチューブHが保持されることとなる。すなわち、ロータ13の駆動時、上下一対のガイドピン15により被しごきチューブHを正規の位置に保持させ、取付凹部12aから被しごきチューブHが上方又は下方に離脱しないようになっているのである。
【0037】
エアトラップチャンバ5には、上部から延びて先端が大気解放とされたオーバーフローラインLe(排出部)が延設されており、当該エアトラップチャンバ5をオーバーフローした液体(プライミング液)を外部に排出させ得るよう構成されている。このオーバーフローラインLeには、電磁弁V3が配設されており、当該オーバーフローラインLeの流路を任意タイミングで閉塞又は開放可能とされている。
【0038】
ダイアライザ3は、その筐体部に、血液導入口3a(血液導入ポート)、血液導出口3b(血液導出ポート)、透析液導入口3c(透析液流路入口:透析液導入ポート)及び透析液導出口3d(透析液流路出口:透析液導出ポート)が形成されており、このうち血液導入口3aには動脈側血液回路1の基端が、血液導出口3bには静脈側血液回路2の基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入口3c及び透析液導出口3dは、透析装置本体から延設された透析液導入ラインLa及び透析液排出ラインLbにそれぞれ接続されている。
【0039】
ダイアライザ3内には、複数の中空糸(不図示)が収容されており、この中空糸が血液を浄化するための血液浄化膜を構成している。而して、ダイアライザ3内には、血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路(血液導入口3aと血液導出口3bとの間の流路)及び透析液が流れる透析液流路(透析液導入口3cと透析液導出口3dとの間の流路)が形成されている。そして、血液浄化膜を構成する中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微小な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0040】
複式ポンプ10は、透析装置本体内で透析液導入ラインLa及び透析液排出ラインLbに跨って配設されているとともに、透析液排出ラインLbにおける複式ポンプ10をバイパスするバイパスラインLcには、ダイアライザ3中を流れる患者の血液から水分を除去するための除水ポンプ11が配設されている。なお、透析液導入ラインLaの一端は、ダイアライザ3(透析液導入口3c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ラインLbの一端は、ダイアライザ3(透析液導出口3d)に接続されるとともに、他端が図示しない排液手段と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ラインLaを通ってダイアライザ3に至った後、透析液排出ラインLbを通って排液手段に送られるようになっている。
【0041】
プライミング液供給ラインLdは、その一端が透析液導入ラインLaにおける複式ポンプ10とダイアライザ3との間の所定位置に接続されるとともに、他端が動脈側血液回路1における血液ポンプ4と動脈側気泡検知手段6との間の所定位置に接続されている。かかるプライミング液供給ラインLdには、その流路を任意タイミングで閉塞又は開放し得る電磁弁V4が配設されており、当該電磁弁V4を開状態とすることで、透析液導入ラインLaの透析液(プライミング液)を動脈側血液回路1に供給し得るようになっている。
【0042】
一方、動脈側血液回路1の先端側には、その部位を流れる液体中の気泡を検知し得る動脈側気泡検知手段6が配設されるとともに、静脈側血液回路2の先端側には、その部位を流れる液体中の気泡を検知し得る静脈側気泡検知手段7が配設されている。なお、図中符号8、9は、動脈側血液回路1の先端側及び静脈側血液回路2の先端側にそれぞれ配設された血液判別器をそれぞれ示している。
【0043】
また、本実施形態における静脈側血液回路2には、静脈圧を計測し得る静脈圧計測手段Pが形成されている。この静脈圧計測手段Pは、静脈側血液回路2におけるダイアライザ3とエアトラップチャンバ5との間の位置に形成されており、静脈側血液回路2を流れる血液の液圧を計測することにより、血液浄化治療中の患者の静脈圧を経時的に計測し得るよう構成されている。
【0044】
なお、本実施形態に係る静脈圧計測手段Pは、例えば静脈側血液回路2に接続されたチャンバ部及び当該チャンバ部内の液圧を計測し得るセンサ等から構成されている。チャンバ部は、血液浄化治療前においてはプライミング液、血液浄化治療中においては血液で満たされた状態とされ、空気層が形成されないようになっている。しかして、静脈圧計測手段Pを流れる液体(血液)の液圧がセンサによって直接計測され、血液浄化治療中の患者の静脈圧を経時的に監視し得るものとされている。
【0045】
具体的には、本実施形態に係る静脈圧計測手段Pは、
図4(a)に示すように、静脈側血液回路2に接続されたチャンバ部m1を有するとともに、そのチャンバ部m1内に液体を透過しない膜m2が形成されており、当該チャンバ部m1内において、液体が充填可能な液相Q1と、空気が充填可能な気相Q2とが形成可能とされている。さらに、気相Q2側からは、大気開放ラインLfが延設されており、その大気開放ラインLfに、しごき型ポンプから成るレベル調整用ポンプ17が取り付けられている。そして、同図(b)に示すように、レベル調整用ポンプ17を駆動させることにより、気相Q2内の空気を外部に排出させることにより、チャンバ部m1内における膜m2の位置(液面)を調整し得る(本実施形態においてはチャンバ部m1内の空気を全て排出して空気層を形成しない)ようになっている。
【0046】
電磁弁V1〜V4は、上述のように開閉動作により、配設された各々の部位における流路を閉塞及び開放し得るものであり、その開閉動作がマイコン等で構成された制御手段Eにて制御されるようになっている。特に、本実施形態における制御手段Eは、静脈側気泡検知手段7による検知信号を受信し且つ血液ポンプ4及び各電磁弁V1〜V4を制御可能なものとされ、これら構成要素と電気的に接続されている。
【0047】
ここで、本実施形態に係る制御手段Eは、透析治療前(血液浄化治療前)において、プライミング液供給ラインLdから供給されたプライミング液をオーバーフローラインLe(排出部)から排出させるとともに血液回路の流路内に充填させるプライミング工程と、プライミング工程後、血液ポンプ4及び電磁弁V1(陰圧発生手段)によって任意部位に陰圧を発生させる陰圧発生工程と、陰圧発生工程にて陰圧を発生させた任意部位の気泡を流動させ、オーバーフローラインLe(排出部)から排出させ得る排出工程とを順次行わせるようになっている。
【0048】
以下、本実施形態に係る制御手段Eによる制御内容について、
図10のフローチャートに基づいて説明する。
血液浄化治療前において、
図5、6に示すように、ダイアライザ3の血液導入口3aが上方を向いた状態(図示しない固定手段により固定)とし、且つ、コネクタcとコネクタdとを接続して互いの流路を連通させた後、プライミング工程(オーバーフロー工程S1及び送液工程S2)を行わせる。かかるプライミング工程は、プライミング液供給ラインLdから供給されたプライミング液をオーバーフローラインLe(排出部)から排出させるとともに血液回路の流路内に充填させる工程であり、本実施形態においては、オーバーフロー工程S1(
図5)と送液工程S2(
図6)とが繰り返し行われる。
【0049】
オーバーフロー工程S1は、
図5に示すように、血液ポンプ4を停止させつつ電磁弁(V1〜V4)を開状態とすることにより、プライミング液供給ラインLdから供給されたプライミング液(透析液)をエアトラップチャンバ5まで流動させ、当該エアトラップチャンバ5をオーバーフローしたプライミング液をオーバーフローラインLeを介して外部に排出させる工程である。これにより、プライミング液供給ラインLdにて供給されたプライミング液(透析液)は、動脈側血液回路1におけるプライミング液供給ラインLdとの接続部から、動脈側血液回路1の先端部と静脈側血液回路2の先端部との接続部を介し、エアトラップチャンバ5に至る流路及び当該エアトラップチャンバ5内に充填されることとなる。
【0050】
そして、オーバーフロー工程S1が開始されてから所定時間経過すると、送液工程S2が行われる。かかる送液工程S2は、
図6に示すように、血液ポンプ4を逆回転駆動(
図6のβ方向へ回転駆動)させつつ電磁弁(V1、V2)を開状態、且つ、電磁弁(V3、V4)を閉状態とすることにより、オーバーフロー工程S1にて充填されたプライミング液(透析液)を血液回路内で送液(循環)させる工程である。これにより、ダイアライザ3内の血液側流路を下方から上方に向けてプライミング液が流れることとなり、気泡がスムーズに上方へ移動して除去されることとなる。
【0051】
上記の如き送液工程S2の後、静脈側気泡検知手段7が気泡検知したか否かが判定され(S3)、気泡検知が検知されたと判定すると、再びオーバーフロー工程S1が行われることとなる。そして、オーバーフロー工程S1が所定時間行われた後、送液工程S2が行われ、再度S3にて気泡検知があるか否かが判定される。こうして、静脈側気泡検知手段7による気泡検知がなくなるまでオーバーフロー工程S1と送液工程S2とが繰り返し行われることにより、血液回路及びエアトラップチャンバ5内にプライミング液が充填されることとなる。
【0052】
そして、S3にて静脈側気泡検知手段7による気泡検知がないと判定され、プライミング工程(オーバーフロー工程S1及び送液工程S2)が終了すると、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の流路、並びにダイアライザ3の血液流路には、プライミング液が満たされた状態(充填状態)とされるとともに、エアトラップチャンバ5及び静脈圧計測手段Pのチャンバ部もプライミング液が満たされた状態(空気層が形成されない状態)とされる。
【0053】
上記のようにプライミング工程が終了すると、陰圧発生工程S4が行われる。かかる陰圧発生工程S4は、
図7に示すように、血液ポンプ4を正回転駆動(
図7のα方向へ回転駆動)させつつ電磁弁(V1、V3、V4)を閉状態、且つ、電磁弁V2を開状態とすることにより、プライミング液が充填された任意部位に陰圧を発生させる工程である。この場合、陰圧発生手段は、血液ポンプ4と電磁弁V1(閉塞手段)とにより構成される。
【0054】
すなわち、電磁弁(V1、V4)を閉状態としつつ血液ポンプ4を正回転駆動(
図7のα方向へ回転駆動)させると、動脈側血液回路1における血液ポンプ4と電磁弁V1との間の流路に加え、被しごきチューブHの一部(ローラ14でしごかれている部位までの流路)を含む部位(任意部位)に陰圧を発生させることができるので、その部位(特に、被しごきチューブHの一部)に残留した微小気泡を膨張させることができ、隣接する複数の気泡がまとまって比較液大きな気泡とすることができるのである。これにより、陰圧発生工程S4で発生した陰圧により、残留した微小気泡を大きくすることができ、血液ポンプ4の駆動による流量で当該気泡を比較的容易に流動させることができる。
【0055】
その後、陰圧発生工程S4にて陰圧を発生させた任意部位の気泡を流動させ、オーバーフローラインLe(排出部)から排出させ得る排出工程(第1排出工程S5及び第2排出工程S6)が順次行われる。第1排出工程S5は、
図8に示すように、血液ポンプ4を逆回転駆動させつつ電磁弁(V1、V2)を開状態、且つ、電磁弁(V3、V4)を閉状態とすることにより、陰圧発生工程S4による陰圧の影響で大きくなった(陰圧により膨張した複数の気泡がまとまることで大きくなった)任意部位の気泡をエアトラップチャンバ5まで流動させる工程である。
【0056】
そして、第1排出工程S5の後、第2排出工程S6が行われる。かかる第2排出工程S6は、
図9に示すように、血液ポンプ4を停止させつつ電磁弁(V1〜V4)を開状態とすることにより、第1排出工程S5にてエアトラップチャンバ5まで流れた気泡をオーバーフローラインLeを介して外部に排出させることができる。このように、第1排出工程S5及び第2排出工程S6を経ることにより、陰圧発生工程S4による陰圧の影響で大きくなった(陰圧により膨張した複数の気泡がまとまることで大きくなった)気泡を外部に排出させることができる。
【0057】
本実施形態によれば、プライミング工程(オーバーフロー工程S1及び送液工程S2)後、血液ポンプ4及び電磁弁V1(陰圧発生手段)によって任意部位に陰圧を発生させる陰圧発生工程S4と、陰圧発生工程S4にて陰圧を発生させた任意部位の気泡を流動させ、オーバーフローラインLe(排出部)から排出させ得る排出工程(第1排出工程S5及び第2排出工程S6)とを行わせるので、陰圧発生工程S4にて発生させた陰圧によって任意部位に残留した微小気泡を膨張させ、その膨張した複数の気泡をまとめることで微小気泡を大きくすることができるので、プライミング工程後に残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出させることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、動脈側血液回路1に接続された被しごきチューブHをローラ14でしごくことにより送液可能な血液ポンプ4を具備するとともに、陰圧発生手段(本実施形態においては当該血液ポンプ4及び電磁弁V1)で陰圧を発生させる任意部位は、被しごきチューブHの少なくとも一部を含むので、プライミング工程後、被しごきチューブHに残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出させることができる。特に、本実施形態に係る陰圧発生手段は、血液ポンプ4と、血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位を閉塞する電磁弁V1(閉塞手段)を有するので、血液浄化治療に必要な血液ポンプ4を流用して任意部位に陰圧を発生させることができる。
【0059】
さらに、本実施形態によれば、静脈側血液回路2には、エアトラップチャンバ5が接続されるとともに、気泡を排出するための排出部は、当該エアトラップチャンバ5の上部から延設されたオーバーフローラインLeから成るので、動脈側血液回路1の先端と静脈側血液回路2の先端とを接続してプライミング工程を行った際、血液回路の任意部位に残留した微小気泡をオーバーフローラインLeから良好に排出させることができる。
【0060】
しかるに、本実施形態に係る陰圧発生工程S4は、
図7に示すように、血液ポンプ4を正回転駆動(
図7のα方向へ回転駆動)させつつ電磁弁(V1、V3、V4)を閉状態、且つ、電磁弁V2を開状態としているが、これに代えて、
図11に示すように、血液ポンプ4を正回転駆動(
図11のα方向へ回転駆動)させつつ電磁弁(V2、V3、V4)を閉状態、且つ、電磁弁V1を開状態とし、同図中太線で示す任意部位の流路に陰圧を形成するようにしてもよい。この場合、陰圧発生手段は、血液ポンプ4と電磁弁V2(閉塞手段)とにより構成される。
【0061】
また、
図12に示すように、血液ポンプ4を逆回転駆動させつつ電磁弁(V1、V3、V4)を閉状態、且つ、電磁弁V2を開状態とし、同図中太線で示す任意部位の流路に陰圧を形成するようにしてもよい。この場合、陰圧発生手段は、血液ポンプ4と電磁弁V1(閉塞手段)とにより構成される。この場合にも、陰圧発生手段で陰圧を発生させる任意部位は、被しごきチューブHの少なくとも一部を含むので、プライミング工程後、被しごきチューブHに残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出させることができる。さらに、この場合、ダイアライザ3の血液導入口3aに付着した微小気泡も陰圧発生手段により発生した陰圧の影響で膨張してまとまり大きくなるので、その排出を容易に行わせることができる。
【0062】
さらに、
図13に示すように、血液回路(静脈側血液回路2)の所定部位に形成された静脈圧計測手段Pに接続され、当該所定部位の液面を調整するためのレベル調整用ポンプ17を具備するもの(同図及び
図5参照)とし、陰圧発生手段は、当該レベル調整用ポンプ17と、閉塞手段としての血液ポンプ4のローラ14とで構成されるものとしてもよい。このレベル調整ポンプ17は、同図に示すように、静脈圧計測手段Pから延設された大気開放ラインLfに取り付けられ、静脈圧計測手段P内に形成された空気層の空気を大気開放ラインLfを介して外部に排出することにより、液面を調整し得る(本実施形態においては静脈圧計測手段Pのチャンバ部の空気を全て排出して空気層を形成しない)ようになっている。
【0063】
しかして、陰圧発生工程S4において、
図13に示すように、血液ポンプ4を停止させつつレベル調整用ポンプ17を駆動させるとともに、電磁弁(V3、V4)を閉状態、且つ、電磁弁(V1、V2)を開状態とすることにより、プライミング液が充填された任意部位(図中太線で示された部位)に陰圧を発生させることができる。この場合、陰圧発生手段を構成する閉塞手段は、停止状態の血液ポンプ4のローラ14から成る。
【0064】
このように、レベル調整用ポンプ17を具備するとともに、陰圧発生手段は、レベル調整用ポンプ17と、血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位を閉塞する閉塞手段(血液ポンプ4のローラ14)とを有するものとすれば、液面調整に必要なレベル調整用ポンプ17を流用して任意部位に陰圧を発生させることができる。
【0065】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、第1の実施形態と同様、透析治療を行うための透析装置から成り、
図14に示すように、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2から成る血液回路と、動脈側血液回路1の基端及び静脈側血液回路2の基端に接続され、血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ3(血液浄化手段)と、静脈側血液回路2に接続されたエアトラップチャンバ5と、動脈側血液回路1に接続され、血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインLdと、血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位に陰圧を発生させ得る陰圧発生手段(本実施形態においては血液ポンプ4及び閉塞手段としての電磁弁V1)と、陰圧発生手段(血液ポンプ4及び電磁弁V1)を制御可能な制御手段Eとから主に構成されている。
【0066】
ここで、本実施形態に係る排出部(プライミング液供給ラインLdにて血液回路内に供給されたプライミング液を外部に排出させ得る排出部)は、動脈側血液回路1の先端又は静脈側血液回路2の先端から成るものとされている。また、本実施形態においては、第1の実施形態に係るエアトラップチャンバ5から延設されたオーバーフローラインLeを具備していない。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付すこととし、それらの詳細な説明を省略する。
【0067】
以下、本実施形態に係る制御手段Eによる制御内容について、
図18のフローチャートに基づいて説明する。
血液浄化治療前において、
図14、15に示すように、ダイアライザ3の血液導入口3aが上方を向いた状態(図示しない固定手段により固定)とし、且つ、コネクタcとコネクタdとを開放した状態(コネクタ同士を接続しない状態)とした後、プライミング工程(動脈側プライミング工程S1及び静脈側プライミング工程S2)を行わせる。かかるプライミング工程は、プライミング液供給ラインLdから供給されたプライミング液を動脈側血液回路1の先端及び静脈側血液回路2の先端(排出部)から排出させるとともに血液回路の流路内に充填させる工程であり、本実施形態においては、動脈側プライミング工程S1(
図14)と静脈側プライミング工程S2(
図15)とが行われる。
【0068】
動脈側プライミング工程S1は、
図14に示すように、血液ポンプ4を停止させつつ電磁弁(V1、V2、V4)を開状態とすることにより、プライミング液供給ラインLdから供給されたプライミング液(透析液)を動脈側血液回路1の先端まで流動させ、当該先端から外部に排出させる工程である。これにより、プライミング液供給ラインLdにて供給されたプライミング液(透析液)は、動脈側血液回路1におけるプライミング液供給ラインLdとの接続部から、動脈側血液回路1の先端部に至る流路に充填されることとなる。
【0069】
そして、動脈側プライミング工程S1が開始されてから所定時間経過すると、静脈側プライミング工程S2が行われる。かかる静脈側プライミング工程S2は、
図15に示すように、血液ポンプ4を正回転駆動させつつ電磁弁(V2、V4)を開状態、且つ、電磁弁V1を閉状態とすることにより、プライミング液供給ラインLdから供給されたプライミング液(透析液)を静脈側血液回路2の先端まで流動させ、当該先端から外部に排出させる工程である。これにより、プライミング液供給ラインLdにて供給されたプライミング液(透析液)は、動脈側血液回路1におけるプライミング液供給ラインLdとの接続部から、ダイアライザ3の血液側流路を介して、動脈側血液回路2の先端部に至る流路に充填されることとなる。
【0070】
その後、静脈側プライミング工程S2が開始されてから所定時間経過すると、プライミング工程が終了すると、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の流路、並びにダイアライザ3の血液流路には、プライミング液が満たされた状態(充填状態)とされるとともに、エアトラップチャンバ5及び静脈圧計測手段Pのチャンバ部もプライミング液が満たされた状態(空気層が形成されない状態)とされる。
【0071】
上記のようにプライミング工程が終了すると、陰圧発生工程S3が行われる。かかる陰圧発生工程S3は、
図16に示すように、血液ポンプ4を正回転駆動させつつ電磁弁(V1、V2、V4)を閉状態とすることにより、プライミング液が充填された任意部位に陰圧を発生させる工程である。この場合、陰圧発生手段は、血液ポンプ4と電磁弁V1(閉塞手段)とにより構成される。
【0072】
すなわち、電磁弁(V1、V2、V4)を閉状態としつつ血液ポンプ4を正回転駆動させると、動脈側血液回路1における血液ポンプ4と電磁弁V1との間の流路に加え、被しごきチューブHの一部(ローラ14でしごかれている部位までの流路)を含む部位(任意部位)に陰圧を発生させることができるので、その部位(特に、被しごきチューブHの一部)に残留した微小気泡を膨張させることができ、隣接する気泡同士をまとめて比較液大きな気泡とすることができるのである。これにより、陰圧発生工程S3で発生した陰圧により、残留した微小気泡を大きくすることができ、血液ポンプ4の駆動による流量で当該気泡を比較的容易に流動させることができる。
【0073】
その後、陰圧発生工程S3にて陰圧を発生させた任意部位の気泡を流動させ、動脈側血液回路1の先端(排出部)から排出させ得る排出工程S4が行われる。排出工程S4は、
図17に示すように、血液ポンプ4を逆回転駆動させつつ電磁弁(V1、V2)を開状態、且つ、電磁弁V4を閉状態とすることにより、陰圧発生工程S3による陰圧の影響で大きくなった任意部位の気泡を動脈側血液回路1の先端から排出させる。
【0074】
このように、排出工程S4を経ることにより、陰圧発生工程S3による陰圧の影響で大きくなった(陰圧により膨張した複数の気泡がまとまることで大きくなった)気泡を外部に排出させることができる。なお、本実施形態に係る排出工程S4においては、ダイアライザ3の透析液流路から血液流路に透析液が逆濾過されており、その透析液が動脈側血液回路1側に加えて、静脈側血液回路2側に流動し、その先端から排出されるようになっている。
【0075】
本実施形態によれば、プライミング工程(動脈側プライミング工程S1及び静脈側プライミング工程S2)後、血液ポンプ4及び電磁弁V1(陰圧発生手段)によって任意部位に陰圧を発生させる陰圧発生工程S3と、陰圧発生工程S3にて陰圧を発生させた任意部位の気泡を流動させ、動脈側血液回路1の先端(排出部)から排出させ得る排出工程とを行わせるので、陰圧発生工程S3にて発生させた陰圧によって任意部位に残留した微小気泡を膨張させ、その膨張した複数の気泡をまとめることで微小気泡を大きくすることができるので、プライミング工程後に残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出させることができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、動脈側血液回路1に接続された被しごきチューブHをローラ14でしごくことにより送液可能な血液ポンプ4を具備するとともに、陰圧発生手段(本実施形態においては当該血液ポンプ4)で陰圧を発生させる任意部位は、被しごきチューブHの少なくとも一部を含むので、プライミング工程後、被しごきチューブHに残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出させることができる。特に、本実施形態に係る陰圧発生手段は、血液ポンプ4と、血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位を閉塞する電磁弁V1(閉塞手段)を有するので、血液浄化治療に必要な血液ポンプ4を流用して任意部位に陰圧を発生させることができる。
【0077】
さらに、本実施形態によれば、気泡を排出するための排出部は、動脈側血液回路1の先端(又は静脈側血液回路2の先端であってもよい)から成るので、動脈側血液回路1の先端と静脈側血液回路2の先端とを接続しないでプライミング工程を行った際、血液回路の任意部位に残留した微小気泡を動脈側血液回路1の先端(又は静脈側血液回路の先端)から良好に排出させることができる。
【0078】
しかるに、本実施形態に係る陰圧発生工程S3は、
図16に示すように、血液ポンプ4を正回転駆動させつつ電磁弁(V1、V2、V4)を閉状態としているが、これに代えて、
図19に示すように、血液ポンプ4を逆回転駆動させつつ電磁弁(V1、V2、V4)を閉状態とし、同図中太線で示す任意部位の流路に陰圧を形成するようにしてもよい。この場合、陰圧発生手段は、血液ポンプ4と電磁弁V1及び電磁弁V2(閉塞手段)とにより構成される。この場合にも、陰圧発生手段で陰圧を発生させる任意部位は、被しごきチューブHの少なくとも一部を含むので、プライミング工程後、被しごきチューブHに残留した微小気泡を円滑且つ確実に排出させることができる。さらに、この場合、ダイアライザ3の血液導入口3aに付着した微小気泡も陰圧発生手段により発生した陰圧の影響で膨張してまとまり大きくなるので、その排出を容易に行わせることができる。
【0079】
さらに、
図20に示すように、血液回路(静脈側血液回路2)の所定部位に形成された静脈圧計測手段Pに接続され、当該所定部位の液面を調整するためのレベル調整用ポンプ17を具備するものとし、陰圧発生手段が当該レベル調整用ポンプ17と、閉塞手段としての血液ポンプ4のローラ14及び電磁弁V2とで構成されるものとしてもよい。このレベル調整ポンプ17は、同図に示すように、静脈圧計測手段Pから延設された大気開放ラインLfに取り付けられ、静脈圧計測手段P内に形成された空気層の空気を大気開放ラインLfを介して外部に排出することにより、液面を調整し得る(本実施形態においては静脈圧計測手段Pのチャンバ部の空気を全て排出して空気層を形成しない)ようになっている。
【0080】
しかして、陰圧発生工程S3においては、
図20に示すように、血液ポンプ4を停止させつつレベル調整用ポンプ17を駆動させるとともに、電磁弁(V2、V4)を閉状態、且つ、電磁弁V1を開状態とすることにより、プライミング液が充填された任意部位(図中太線で示された部位)に陰圧を発生させることができる。この場合、陰圧発生手段を構成する閉塞手段は、停止状態の血液ポンプ4のローラ14と、電磁弁V2とから成る。
【0081】
このように、レベル調整用ポンプ17を具備するとともに、陰圧発生手段は、レベル調整用ポンプ17と、血液回路におけるプライミング液が充填された任意部位を閉塞する閉塞手段(血液ポンプ4のローラ14及び電磁弁V2)とを有するものとすれば、液面調整に必要なレベル調整用ポンプ17を流用して任意部位に陰圧を発生させることができる。
【0082】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プライミング工程は、プライミング液供給ラインLdから供給されたプライミング液を排出部(オーバーフローラインLeや動脈側血液回路1若しくは静脈側血液回路2の先端等)から排出させるとともに血液回路の流路内に充填させる工程であれば、他の如何なる形態の工程であってもよい。
【0083】
また、本実施形態に係るプライミング液供給ラインLdは、その一端が透析液導入ラインLaに接続され、電磁弁V4を開状態とすることで血液回路に対してプライミング液としての透析液を供給するものとされているが、例えば生理食塩液が収容された収容バッグにプライミング液供給ラインLdの一端を接続し、血液回路に対してプライミング液としての生理食塩液を供給するものとしてもよい。さらに、プライミング液供給ラインLdを形成せず、例えばダイアライザ3の浄化膜(本実施形態においては中空糸膜)を介して透析液導入ラインLaの透析液(プライミング液)を濾過(逆濾過)させ、血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)に供給し得るものであってもよい。
【0084】
なお、プライミング液として、透析液や生理食塩液とは異なる他の液体を用いるものとしてもよい。また、本実施形態においては、透析治療時に用いられる透析装置に適用しているが、患者の血液を体外循環させつつ浄化し得る他の装置(例えば血液濾過透析法、血液濾過法、AFBFで使用される血液浄化装置、血漿吸着装置など)に適用してもよい。
【解決手段】プライミング液供給ラインLdから供給されたプライミング液をオーバーフローラインLeから排出させるとともに血液回路の流路内に充填させるプライミング工程と、プライミング工程後、血液ポンプ4によって任意部位に陰圧を発生させる陰圧発生工程と、陰圧発生工程にて陰圧を発生させた任意部位の気泡を流動させ、オーバーフローラインLeから排出させ得る排出工程とを行わせる制御手段Eを具備したものである。