特許第6462101号(P6462101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462101
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】コラーゲン加水分解物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/01 20060101AFI20190121BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20190121BHJP
   A61Q 19/06 20060101ALI20190121BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20190121BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   A61K38/01
   A61K8/65
   A61Q19/06
   A61P17/00
   A61K31/19
   A61K38/39
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-235964(P2017-235964)
(22)【出願日】2017年12月8日
(62)【分割の表示】特願2014-543839(P2014-543839)の分割
【原出願日】2012年11月21日
(65)【公開番号】特開2018-43999(P2018-43999A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2017年12月8日
(31)【優先権主張番号】102011055800.4
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012101911.8
(32)【優先日】2012年3月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502084056
【氏名又は名称】ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ウルリヒ フレヒ
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン エッサー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ハウスマンス
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−053798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/01
A61K 8/65
A61K 31/19
A61K 38/39
A61P 17/00
A61Q 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルライトを治療及び/又は予防するための有効成分としてのコラーゲン加水分解物を含む医薬組成物であって、該コラーゲン加水分解物の平均分子量は1,700Da〜2,300Daの範囲にあって、該コラーゲン加水分解物の分子量分布が、5重量%未満のコラーゲン加水分解物が7,500Da超であり、12〜18重量%が3,500〜7,500Daであり、25〜31重量%が1,500〜3,500Daであり、40〜46重量%が500〜1,500Daであり、及び5〜10重量%が500Da未満であり、該コラーゲン加水分解物が、ブタ皮膚のゼラチンの酵素的加水分解によって製造され、前記加水分解に使用される酵素が、微生物バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、及びアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来の酵素から選択されるメタロプロテアーゼ及び/又はセリンプロテアーゼである、上記医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも45重量%のコラーゲン加水分解物が1,500Da未満の分子量を有する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
コラーゲン加水分解物が、 MALDI質量分析によって見出された分子量分布における 600Da〜1,200Daの分子量を有する少なくとも4つペプチドを含み、ここで、前記ペプチドは、それらの周辺と比較して少なくとも2倍の強度有する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
MALDI質量分析によって見出された分子量分布における少なくとも4つペプチドが、それらの周辺と比較して少なくとも4倍の強度を有する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
コラーゲン加水分解物が、620Da〜690Daのペプチド、790Da〜860Daのペプチド、980〜1,050Daのペプチド、及び1,175Da〜1,245Daのペプチドを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
コラーゲン加水分解物が、12重量%以上のヒドロキシプロリン含量を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
コラーゲン加水分解物のN末端アミノ酸の少なくとも50%がアラニン、ロイシン及びイソロイシンである、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
コラーゲン加水分解物が経口投与のために与えられる、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
コラーゲン加水分解物が、栄養補助食品であり錠剤、カプセル、糖衣丸薬、トローチ、サシェ、ゲル、又は溶液の形態で存在する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
1日の摂取量として約1.5g〜5gのコラーゲン加水分解物が与えられる、請求項又はに記載の医薬組成物。
【請求項11】
1日の摂取量として約2g〜3gコラーゲン加水分解物が与えられる、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
1日の摂取量として約2.3g〜2.7gのコラーゲン加水分解物が与えられる、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ビタミン、ミネラル、オメガ−3脂肪酸、オメガ−6脂肪酸、オメガ−9脂肪酸、ビオチン、ルテイン、リコピン、カフェイン、グルコサミン、コンドロイチン、ヒアルロナン、葉酸、アミノ酸、ユビキノン−10、スーパーオキシドジスムターゼ、及びローズヒップ、レモンバーベナ又は緑茶からの植物抽出物から選択される1つ以上のさらなる有効成分と組み合わせられる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
コラーゲン加水分解物が閉経後の女性に投与するために与えられる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン加水分解物に関し、セルライトの治療及び/又は予防するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セルライトは、皮膚の特性に望ましくない変化を引き起し、皮膚表面のくぼみの形成として外見上目立つ。影響を受けているのはほぼ独占的に女性であり、加齢とともに、80%から98%程度の女性が関わっている。セルライトは、とりわけ、重大な皮下脂肪組織を含む領域、すなわち、腰、臀部、腹部、上部の太もも及び二の腕において発生する。
【0003】
最新の研究によると、セルライトの原因は、真皮及び皮下の結合組織における特定の変化、特に、皮下脂肪の下に横たわっている筋肉に網状層を接続するコラーゲン繊維から形成される隔壁の収縮であると考えられている。これは、全体的に、皮膚の弾力性の低下をもたらす。
【0004】
セルライトの既知の治療は、特に、リンパ排出、超音波又は真空などの物理的方法を含むが、これらは、典型的には、成功をもたらさないか、又は少なくとも成功を持続させるものではない。表皮の上部皮膚層は直接現象にかかわっていないため、クリーム又は軟膏などの化粧品の局所使用もまたセルライトのいずれかの原因治療を可能としない。
【0005】
コラーゲン加水分解物の経口摂取を介して、有利な効果は、ヒトにおいて皮膚の健康に関して達成され得ることが知られている(V.Zague:“A new view concerning the effects of collagen hydrolysate intake on skin properties”,Arch.Dermatol.Res.2008(9)479参照)。適切な低分子コラーゲンペプチドの吸収能力及び皮膚の良好な灌流により、経口摂取されたコラーゲン加水分解物の蓄積がそこで特に大幅に起こり、その濃度は、摂取後約12〜24時間の期間において最大である(M.Watanabe−Kamiyama et al.:“Absorption and effectiveness of orally administered low molecular weight collagen hydrolysate in rats”,J.Agric.Food Chem.2010(58)835参照)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような背景に対して、本発明は、セルライトの原因治療及び/又は予防への新しいアプローチを提案し、このアプローチはコラーゲン加水分解物の使用を伴う。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、セルライトを治療及び/又は予防するための有効成分としてコラーゲン加水分解物に関する。
【0008】
また、コラーゲン加水分解物の投与後、皮膚の弾力性が測定可能に増加することが、臨床試験において示されている。この効果は、50歳を超える女性において特に顕著である。より大きな皮膚の弾力性は、重症なセルライトの減少をもたらす。
【0009】
さらに、様々なインビトロ研究は、真皮結合組織の細胞外マトリックスタンパク質の合成がコラーゲン加水分解物によって刺激されることを示している。皮膚細胞(真皮線維芽細胞)によって形成されたこれらのタンパク質は、コラーゲン(特にI型)、エラスチン及びプロテオグリカン(例えば、ビグリカン、バーシカン及びデコリン)を含む。十分な量のこれらのタンパク質の合成は、皮膚の細胞外マトリックスの形成及び再生に決定的であり、細胞外マトリックスは、次に、弾力性、復元力及び水分調節などの真皮の特性に本質的な決定因子である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、I型コラーゲン、ビグリカン又はバーシカンの合成の刺激に関するグラフを示す。
図1B図1Bは、I型コラーゲン、ビグリカン又はバーシカンの合成の刺激に関するグラフを示す。
図1C図1Cは、I型コラーゲン、ビグリカン又はバーシカンの合成の刺激に関するグラフを示す。
図2A図2Aは、無毛マウスにおける皮膚水分の増加に関するグラフを示す。
図2B図2Bは、無毛マウスにおける皮膚水分の増加に関するグラフを示す。
図3】CEタンパク質合成の刺激に関するグラフを示す。
図4A図4Aは、種々のコラーゲン加水分解物のMALDIマススペクトルを示す。
図4B図4Bは、種々のコラーゲン加水分解物のMALDIマススペクトルを示す。
図4C図4Cは、種々のコラーゲン加水分解物のMALDIマススペクトルを示す。
図5A図5Aは、I型コラーゲン、デコリン及びバーシカンの合成の刺激に関するグラフを示す。
図5B図5Bは、I型コラーゲン、デコリン及びバーシカンの合成の刺激に関するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明と関連において使用されるコラーゲン加水分解物は、好適には、相対的に低い分子量を有する。好ましくは、少なくとも90重量%のコラーゲン加水分解物は、3,500Da未満の分子量を有し、より好ましくは、少なくとも45重量%が、1,500ダルトン未満の分子量を有する。より顕著な効果は、特に低分子量成分を用いて達成され得ることが見出されている。コラーゲン加水分解物の分子量分布は、関連する限界値に供され、例えば、画定されたコラーゲン断片で構成される較正標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって、非常に正確かつ再現可能に決定することができる。
【0012】
本発明に従って使用されるコラーゲン加水分解物の平均分子量(質量平均モル質量Mw)は、典型的には、約1,700Daから約2,300Daの範囲にある。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、コラーゲン加水分解物は、600Daから1,200Daの間の分子量を有する少なくとも4つの特徴的なペプチドを含む。コラーゲン加水分解物は、コラーゲンのタンパク質鎖が分割されるときに生じる異なる鎖長又は分子量を有するペプチドを含み、ここで、これらのペプチドの分子量分布は、加水分解物の製造条件によって有意に異なる場合がある。驚くべきことに、上記の特性を有するコラーゲン加水分解物は、マトリックスタンパク質の合成に特に有利な効果を有することが判明している。すなわち、特徴的なペプチドを含まないコラーゲン加水分解物よりも著しく良好な結果を示す。
【0014】
コラーゲン加水分解物の特徴的なペプチドの存在は、特に、特徴的なペプチドが、質量スペクトルのピークとして現れるMALDI質量分析によって決定することができる。好ましくは、MALDIによって決定される質量分析を用いて見出される分子量分布における少なくとも4つの特徴的なペプチドは、それらの周囲と比較して、少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも4倍の強度を有する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、コラーゲン加水分解物は、620Da〜690Daのペプチド、790Da〜860Daのペプチド、980Da〜1,050Daのペプチド、及び1,175Da〜1,245Daのペプチドを含む。コラーゲン加水分解物はまた、1,500〜3,500Daの特徴的なペプチドを有することができる。
【0016】
好ましくは、コラーゲン加水分解物は、12重量%以上のヒドロキシプロリン含有量を有する。プロリンの翻訳後ヒドロキシル化によって形成されたアミノ酸ヒドロキシプロリンは排他的にコラーゲンに生じ、その結果、コラーゲン加水分解物における高比率のヒドロキシプロリンが、他の結合組織タンパク質(例えば、エラスチン及びプロテオグリカン)の広範な不存在の尺度を提供する。これらの断片は、製造方法に依存して、コラーゲン加水分解物において特定量で含ませることができる。
【0017】
コラーゲン加水分解物は、ゼラチンの酵素的加水分解によって製造される場合に有利である。ゼラチンは、変性されたコラーゲンを含み、様々な動物種の結合組織又は骨から、当業者に知られている様々な方法によって得られる。本発明との関連で、コラーゲン加水分解物の出発材料として使用されるゼラチンは、好ましくは、動物、特にブタ又はウシの皮膚から抽出されるが、家禽由来のゼラチンの使用はまた排除されない。ブタのゼラチン、特に豚皮膚のゼラチンは、特に、出発材料として好適である。
【0018】
ゼラチンの酵素的加水分解は、典型的には、エンドプロテアーゼによって行われ、それによって得られたコラーゲン加水分解物のアミノ酸プロファイルに影響を与え、従って、加水分解物の正の効果を増加させるために、複数のエンドプロテアーゼ(すなわち、少なくとも2つの異なるエンドプロテアーゼ)を用いることが、本発明との関連で好ましい。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、コラーゲン加水分解物は、異なる特異性を有する少なくとも2つのエンドプロテアーゼ、特に、少なくとも2つの異なるメタロプロテアーゼ及び/又はセリンプロテアーゼ、すなわち、特定のアミノ酸の前又は後のいずれかでコラーゲン分子のアミノ酸配列を分割するプロテアーゼの連続作用により製造される。好都合には、メタロプロテアーゼ及び/又はセリンプロテアーゼは、微生物バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、及びアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来の酵素である。
【0020】
適切なエンドプロテアーゼの選択によって、特徴的な分子量分布のコラーゲン加水分解物を得ることができるだけでなく、加水分解物において得られたペプチドの末端のアミノ酸タイプにも影響を及ぼす。この文脈において、例えば、コラーゲン加水分解物のN−末端アミノ酸の少なくとも50%が疎水性アミノ酸、例えば、好ましいアラニン、ロイシン及びイソロイシンである場合が好ましい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、コラーゲン加水分解物は、特に経口摂取の形態で、経腸投与のために提供される。経口摂取時に、作用部位、すなわち、真皮線維芽細胞への、血液循環を介したコラーゲン加水分解物のより効果的な輸送が、局所投与の場合よりももたらされる。さらに、この投与形態は、典型的には、ユーザーのために有意に少ない労力と関連する。
【0022】
コラーゲン加水分解物が、食品の法律下で許可された原料から抽出されるため、セルライトを治療及び/又は予防するための、好ましくは栄養補助食品として、本発明の文脈において使用することができる。このような栄養補助食品は、「栄養補給食品」又は「栄養化粧品」として特定することができる。
【0023】
栄養補助食品は、ほとんど全ての形態、例えば、錠剤、カプセル、糖衣丸薬、トローチ、サシェ又は(例えば、単一アンプル中又は飲料中の)ゲル又は溶液において提供することができる。
【0024】
あるいは、コラーゲン加水分解物は、食品又は高級食品アイテム、例えば、菓子類又は飲み物を作るためのインスタント粉末に含まれ得る。従って、加水分解物は、通常の栄養素(「機能性食品」として)との関連で、付加的な労力なしにユーザーによって消費され得る。この点で、コラーゲン加水分解物は実質的に風味がない場合が特に有利である。
【0025】
約1.5g〜5g、好ましくは約2g〜3g、より好ましくは約2.3g〜2.7gのコラーゲン加水分解物の毎日の摂取が提供される場合が好適である。この量の加水分解物の経口摂取を介して、毎日の用量を増加させることによって実質的に高めることができない顕著な効果が達成できることが見出された。
【0026】
本発明に従って使用されるとき、コラーゲン加水分解物は、健康に、特に皮膚の健康に有利な効果を有する他の有効成分、とりわけ抗酸化作用を有する有効成分と組み合わせることができる。このような有効成分は、好ましくは、ビタミン類、特にビタミンC及びE、ミネラル、オメガ−3脂肪酸、オメガ−6脂肪酸、ω−9脂肪酸、ビオチン、ルテイン、リコピン、カフェイン、グルコサミン、コンドロイチン、ヒアルロン酸、葉酸、アミノ酸、ユビキノン10、スーパーオキシドジスムターゼ、並びにローズヒップ、レモンバーベナ又は緑茶からの植物抽出物から選択される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、コラーゲン加水分解物の投与は、特に50歳以上の年齢の女性、典型的には、閉経後の女性において、セルライトを治療及び/又は予防するために提供される。一般にセルライトによって重度に影響を受けているこの年齢群において、効果は特に顕著であり、以下に記述される臨床試験によって示される。
【0028】
本発明はまた、患者におけるセルライトを治療及び/又は予防するための方法に関し、該方法は、特に経口摂取の形態で、患者へのコラーゲン加水分解物の投与を含む。
【0029】
本方法の好ましい実施形態は、特に、コラーゲン加水分解物の特性及び投与されるべき用量に関して、本発明による使用に関連してすでに記載されている。
【0030】
本発明はまた、特に妊娠中の女性において起こるいわゆる妊娠ストレッチ・マーク(妊娠線脈理)の形態のストレッチ・マークを治療及び/又は予防するためにコラーゲン加水分解物の使用に関する。これらのストライプの原因は、皮膚の重度の伸縮に起因する皮下の結合組織における微細水滴(fine tear)である。セルライトと同様に、このような水滴の発生もコラーゲン加水分解物の投与により皮膚の弾力性を増加させることによって相殺することができる。
【0031】
本発明のさらなる態様は、褥瘡性潰瘍により引き起こされる圧力の結果としての皮膚への局所的障害、例えば、床ずれの発生を治療及び/又は予防するためにコラーゲン加水分解物の使用に関する。これは、皮膚が外部からの圧力を受けることを伴い、その負の効果は、皮膚の弾力性を増加させることによって軽減することができる。
【0032】
本発明の上記及び他の利点は、ここで、以下の実施例に基づいて、図面を参照して、より詳細に説明される。
【実施例】
【0033】
1.コラーゲン加水分解物の生産と特性
本発明による使用のためのコラーゲン加水分解物を生産するために、(乾燥材料の)20重量%と40重量%の間の濃度での豚皮ゼラチン水溶液(タイプA、200g〜250gのブルーム(Bloom))を出発材料として使用する。ゼラチンは、120分〜180分間、50℃〜60℃にて、微生物起源の2つの異なるエンドプロテアーゼの連続作用によって酵素的に加水分解され、ここで、第1の酵素として、枯草菌又はバチルス・アミロリケファシエンス由来のエンドプロテアーゼを用い、第2の酵素として、バチルス・リケニホルミス由来のエンドプロテアーゼを用いる。続いて、酵素は熱的に非活性化され、溶液を噴霧乾燥する。
【0034】
得られたコラーゲン加水分解物の分子量分布は、以下のパラメータを用いて、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定することができる。
静的相:TSK 2000 SW XL(Tosoh Bioscience GmbH)
移動相:0.4mol/lのリン酸二水素ナトリウム(pH5.3)
流速:0.5ml/分
較正標準:画定されたI型コラーゲン断片(FILK,Freiberg)
検出:UV検出器Knauer K−2501(214nm)
【0035】
下記の表1に記載されるように、決定は、このコラーゲン加水分解物(以下、低分子量の加水分解物と呼ぶ)に関する分子量分布をもたらした。比較目的のために、表1において、同様の方法を用いて決定された市販のコラーゲン加水分解物(以下、高分子加水分解物とも呼ぶ)の分子量分布を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
この低分子量の加水分解物のヒドロキシプロリン含有量は約12重量%〜13重量%であり、続いて、クロラミン−Tによる酸化、及びp−ジメチルアミノベンズアルデヒドによる変換により、光度的に決定することができる。加水分解物のN−末端アミノ酸の50%超が疎水性アミノ酸であり、特にアラニン、ロイシン及びイソロイシンである。
【0038】
2.セルライトに関するコラーゲン加水分解物の有効性についての臨床試験
セルライトの治療及び/又は予防のために、実施例1に従って生産した、低分子量のコラーゲン加水分解物の有効性を二重盲検無作為化プラセボ対照試験において調べた。試験被験者は、35.3〜55.4歳の69人の健康な女性であり、各23人の被験者の3つのグループに分けた。68人の被験者が首尾よく試験を完了した。
【0039】
試験開始前6週間から開始し、皮膚科の治療の使用は許されなかった。被験者はまた、自らの生活及び栄養週間を試験中に変更すべきでなく、いかなる追加の栄養補給剤及びビタミン調製物の摂取もすべきでなく、強烈なUV照射に皮膚を暴露すべきではなかった。化粧品製剤は、前腕の掌側側面に使用すべきでなく、そこでは、皮膚特性におけるコラーゲン加水分解物の影響が調査されるべきであった。
【0040】
3つのグループのうち、8週間にわたって、第1のグループは、毎日(午前)2.5gのコラーゲン加水分解物を受け入れ、第2のグループは、毎日(それぞれ午前と午後に2.5g)を受入れ、第3のグループは、プラセボを受けた。
毎日25gのコラーゲン加水分解物、3番目はプラセボ投与を受けた。経口摂取のために、加水分解物を水又は冷たい飲み物(牛乳を除く)に溶かすことができた。
【0041】
最初の摂取前、4週間後、8週間後に、皮膚の次のパラメータが被験者の左上腕の掌側側面で測定された:
−Cutometer(登録商標)SEM575による皮膚弾力性
(3回の測定からの平均値)
−DermaLab(登録商標)デバイスによる経皮水分喪失(TEWL)
(3回の測定からの平均値)
−Corneometer(登録商標)CM825による皮膚水分含量
(10回の測定からの平均値)
【0042】
全ての測定は、21.5℃(±1℃)の温度、50%(±5%)の相対空気湿度にて、気候制御室内の順化の30分後に実施された。
【0043】
3つ全てのパラメータは、4週間後及び8週間後の両方において、コラーゲン加水分解物で治療された群において有意に増加した。プラセボ投与群と比較して、8週間後の測定値は、特にパーセンテージ増加として、以下の表2に与えられる。
【0044】
【表2】
【0045】
皮膚弾力性の増加は、セルライトの治療及び/又は予防するためにコラーゲン加水分解物の経口投与の有効性を示す。TEWL及び皮膚水分の改善は、皮膚の健康における加水分解物の更なる有利な効果であり、特に表皮バリア機能の増加をもたらす。
【0046】
年齢グループによって区別される皮膚弾力性の増加の試験は、表3に記載の結果を生じさせた。50歳以下(平均年齢44.1歳)の女性を、50歳を超える(平均年齢53.0歳)女性と比較した。
【0047】
【表3】
【0048】
ここで、顕著なことは、50歳超の女性の皮膚弾力性の特に顕著な向上であり、したがって、50歳超の女性は、コラーゲン加水分解物の本発明による使用のための好ましい標的グループを表す。
【0049】
皮膚弾力性は、8週間の投与期間終了後の4週間再度測定された。8週間後に測定された92%〜98%の増加がなおも保持され、これは、コラーゲン加水分解のより長期持続効果を示唆した。
【0050】
3.インビトロでの細胞外マトリックスタンパク質の合成の刺激
コラーゲン(I型)の合成、及びプロテオグリカンのバイグリカンとバーシカンの合成の刺激は、ヒト真皮線維芽細胞(皮膚細胞)をインビトロで調べた。この目的のために、細胞は、0.5mg/mlの低分子量又は高分子量の加水分解物のいずれかとともに24時間インキュベートされ、次に、コラーゲンRNA、バイグリカンRNA及びバーシカンRNAの発現は、リアルタイムPCRによって決定され、半定量的に評価された(加水分解物を含まない対照と比較した)。
【0051】
結果は、図1AにおいてI型コラーゲン、図1Bにおいてバイグリカン、及び図1Cにおいてバーシカンのバーチャートとして示され、グラフの表記は、各々、少なくとも18回の測定からの平均値を示す。横軸に示したものは、対照を基準にしたRNA発現である(n=1)。左側の実線カラムは、各々のケースにおいて、対照を示し、一方、中央では、斜線のカラムは、高分子量の加水分解物であり、右側の破線カラムは、低分子量の加水分解物である。
【0052】
3つ全てのマトリックスタンパク質の合成は、両方のコラーゲン加水分解物によって刺激されるが、低分子量の加水分解物の陽性効果は、高分子量の加水分解物よりも、各々のケースにおいてより強く発現されることは明らかである。エラスチンの他に、皮膚の復元力及び弾力性に主に関与するコラーゲンについて、及び皮膚の水分調節において重要な部分を果たすバーシカンについて、低分子量の加水分解物の効果の増大が特に明確に表されている。
【0053】
異なるマトリックスタンパク質におけるコラーゲン加水分解物のこれらの刺激特性はまた、本発明によるセルライトの治療及び/又は予防とは別にして、疾患、例えば乾癬に関して出発点を与え、そこでは皮膚の自然な機能が損なわれている。
【0054】
4.動物研究における皮膚の水分含量の増加
コラーゲン加水分解物を用いた皮膚水分量の影響を直接、無毛マウスを用いて調べた。無毛マウスは、多くの場合、皮膚科学的調査のために使用される確立されたモデル系であり、それから得られた知識は、原理的にはヒト皮膚に適用することができる(例えば、T.Fujimura et al.;J.Dermatol.Sci.2000(24)105−111、Y.Nishimori et al.;J.Invest.Dermatol.2001(117)1458−1463参照)。
【0055】
3週間の全期間、毎日150μgコラーゲン加水分解物/kg体重で動物に食餌を与え、一方、対照群は、代わりにBSAを受け入れた。同時に、全ての動物は、毎週、18mJ/cm2皮膚表面のUV−B照射線量を受け、それによって、皮膚水分量は負に影響を受けた。
【0056】
水分含有量を1週間後及び3週間後にCorneometer CM825(製造業者Courage & Khazaka)を用いて測定した。ここでの測定原理は、上部皮膚層に結合した水の誘電率に起因した測定コンデンサの静電用量の変化に基づき、それは、他の大部分の物質の誘電率とは顕著に異なっている。
【0057】
結果は、図2Aにおいて1週間後の測定について、図2Bについて3週間後の測定についてバーチャートとして示され、グラフの表記は、各々、7回の測定値+標準誤差を示す。横軸に示したものは、対照を基準にした皮膚水分量である(n=1)。左側の実線カラムは、各々のケースにおいて、対照を示し、中央では、斜線のカラムは、高分子量の加水分解物であり、右側の破線カラムは、低分子量の加水分解物である。
【0058】
低分子量の加水分解物を用いた皮膚水分量の増加は、高分子量の加水分解物よりも、1週間後と3週間後の両方において大きいようである。
【0059】
5.インビトロでのCEタンパク質の合成の刺激
いわゆる「角化膜」タンパク質は、病原微生物及び毒性物質の侵入に対する皮膚のバリア機能に重要な役割を果たす。CEタンパク質であるインボルクリン、ロリクリン及びフィラグリンの合成は、予め、毎日150μgコラーゲン加水分解物/kg体重(上記の通り)で5週間、食餌を与えられた無毛マウスにおいて決定された。(BSAを与えた)対照群を基準としたタンパク質の定量は、皮膚からのタンパク質の抽出後、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、及び特異的抗体を用いたウェスタンブロットにより行われた。
【0060】
結果を図3のヒストグラムとして示し、グラフの表記は、7回の測定の平均値+標準偏差を示す。横軸に示したものは、対照を基準にした低分子量の加水分解物を用いた食餌後のCEタンパク質の定量である(n=1)。左側のカラムはインボルクリンを示し、中央のカラムはロリクリンを示し、右側のカラムはフィラグリンを示す。
【0061】
調査された3つ全てのCEタンパク質の合成は、コラーゲン加水分解物の経口摂取によって刺激されることは明らかであり、インボルクリンの場合には、実際に3倍を超えている。
【0062】
6.MALDI−MSを用いた分子量分布の分析
約2,000Daの平均分子量を有する実施例1に従って生産された低分子量のコラーゲン加水分解物(以下、加水分解物Aと呼ぶ)は、約2,100Da(以下、加水分解物Bと呼ぶ)及び約2,900Da(以下、加水分解物Cと呼ぶ)の平均分子量を有する2つの市販のコラーゲン加水分解物と比較した。
【0063】
これら3つの加水分解物の正確な分子量分布をMALDI質量分析(MALDI−MS)によって分析した。この目的のために、試料を0.1%トリフルオロ酢酸中、10μg/μlの最終濃度に調整し、次に、μC18材料を用いて精製した。試料は、MALDIターゲット上のHCCAマトリックスを用いて調製され、質量スペクトルは、Ultraflex−III−TOF/TOF質量分析計(製造者:Bruker Daltonics)を用いて決定された。
【0064】
図4A〜4Cは、コラーゲン加水分解物A、B及びCの対応する質量スペクトル又は分子量分布を示し、ここで、分子量又は質量数を縦軸に表し、強度を横軸に表す。3つスペクトルの比較は、加水分解物Aが、表4の通り、以下の特徴的なペプチドを含み、相対的ピークは、それらの周囲と比較して2〜4倍の強度を有する。
【0065】
【表4】
【0066】
具体的には、600Da〜1,500Daの4つペプチドは、2つの市販の加水分解物B及びCに対応していないため、したがって、加水分解物Aに特に特徴的である。
【0067】
7.インビトロでの細胞外マトリックスタンパク質の合成の刺激
コラーゲン(I型)及びプロテオグリカンのデコリン及びバーシカンの合成の刺激をヒト真皮線維芽細胞(皮膚細胞)においてインビトロで調べた。この目的のために、それぞれ加水分解物A、B及びCの0.5mg/mlとともに細胞を24時間インキュベートし、次に、コラーゲンRNA、デコリンRNA及びバーシカンRNAの発現をリアルタイムPCRによって決定し、半定量的に評価した。デコリンは、皮膚中のコラーゲン繊維の形成に重要な役割を果たしている。
【0068】
結果は、図5Aにおいて加水分解物Bについて、図5Bにおいて加水分解物Cについてバーチャートとして示され、横軸は、加水分解物Aを用いたRNA発現と比較して、それぞれ市販の加水分解物BとCにおけるRNA発現を表す(=1)。左側のカラムはI型コラーゲンを表し、中央カラムはデコリンを表し、右側のカラムはバーシカンを表す。それぞれのケースにおいて、少なくとも7回の測定からの平均値を標準誤差とともに示す。
【0069】
興味深いことに、データは、3つの全てのマトリックスタンパク質を用いて、加水分解物Aと比較して、RNA合成の著しくより小さい刺激が、分子量がほんの僅かに高い加水分解物BとCの両方で起こることを示す。したがって、加水分解物Aの特徴的なペプチドは、その有利な効果において決定的な役割を果たしているようである。
【0070】
8.栄養(補助)製品のための例示的なレシピ
コラーゲン加水分解物の本発明による使用のためのいくつかの例示的レシピを以下に示すが、これらは、通常、多くの方法において修正され得る。
【0071】
カプセット(Capsette)(栄養補助食品)
グリシン 53.67重量%
コラーゲン加水分解物 21.95重量%
ゼラチン 10.08重量%
グアーガム 6.00重量%
レシチン 5.00重量%
クエン酸 2.00重量%
香味料(カシス) 0.50重量%
オレンジ油 0.50重量%
アセサルフェームK 0.30重量%
【0072】
チョコレート
ココア塊 51.0重量%
ショ糖 22.4重量%
ココアバター 16.6重量%
コラーゲン加水分解物 10.0重量%
【0073】
飲料
水 63.00重量%
アロエベラ濃縮物 31.00重量%
コラーゲン加水分解物 4.00重量%
ショ糖 1.50重量%
クエン酸 0.26重量%
香味料及び着色剤 0.24重量%
スクラロース 0.0031重量%
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B