【実施例】
【0033】
1.コラーゲン加水分解物の生産と特性
本発明による使用のためのコラーゲン加水分解物を生産するために、(乾燥材料の)20重量%と40重量%の間の濃度での豚皮ゼラチン水溶液(タイプA、200g〜250gのブルーム(Bloom))を出発材料として使用する。ゼラチンは、120分〜180分間、50℃〜60℃にて、微生物起源の2つの異なるエンドプロテアーゼの連続作用によって酵素的に加水分解され、ここで、第1の酵素として、枯草菌又はバチルス・アミロリケファシエンス由来のエンドプロテアーゼを用い、第2の酵素として、バチルス・リケニホルミス由来のエンドプロテアーゼを用いる。続いて、酵素は熱的に非活性化され、溶液を噴霧乾燥する。
【0034】
得られたコラーゲン加水分解物の分子量分布は、以下のパラメータを用いて、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定することができる。
静的相:TSK 2000 SW XL(Tosoh Bioscience GmbH)
移動相:0.4mol/lのリン酸二水素ナトリウム(pH5.3)
流速:0.5ml/分
較正標準:画定されたI型コラーゲン断片(FILK,Freiberg)
検出:UV検出器Knauer K−2501(214nm)
【0035】
下記の表1に記載されるように、決定は、このコラーゲン加水分解物(以下、低分子量の加水分解物と呼ぶ)に関する分子量分布をもたらした。比較目的のために、表1において、同様の方法を用いて決定された市販のコラーゲン加水分解物(以下、高分子加水分解物とも呼ぶ)の分子量分布を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
この低分子量の加水分解物のヒドロキシプロリン含有量は約12重量%〜13重量%であり、続いて、クロラミン−Tによる酸化、及びp−ジメチルアミノベンズアルデヒドによる変換により、光度的に決定することができる。加水分解物のN−末端アミノ酸の50%超が疎水性アミノ酸であり、特にアラニン、ロイシン及びイソロイシンである。
【0038】
2.セルライトに関するコラーゲン加水分解物の有効性についての臨床試験
セルライトの治療及び/又は予防のために、実施例1に従って生産した、低分子量のコラーゲン加水分解物の有効性を二重盲検無作為化プラセボ対照試験において調べた。試験被験者は、35.3〜55.4歳の69人の健康な女性であり、各23人の被験者の3つのグループに分けた。68人の被験者が首尾よく試験を完了した。
【0039】
試験開始前6週間から開始し、皮膚科の治療の使用は許されなかった。被験者はまた、自らの生活及び栄養週間を試験中に変更すべきでなく、いかなる追加の栄養補給剤及びビタミン調製物の摂取もすべきでなく、強烈なUV照射に皮膚を暴露すべきではなかった。化粧品製剤は、前腕の掌側側面に使用すべきでなく、そこでは、皮膚特性におけるコラーゲン加水分解物の影響が調査されるべきであった。
【0040】
3つのグループのうち、8週間にわたって、第1のグループは、毎日(午前)2.5gのコラーゲン加水分解物を受け入れ、第2のグループは、毎日(それぞれ午前と午後に2.5g)を受入れ、第3のグループは、プラセボを受けた。
毎日25gのコラーゲン加水分解物、3番目はプラセボ投与を受けた。経口摂取のために、加水分解物を水又は冷たい飲み物(牛乳を除く)に溶かすことができた。
【0041】
最初の摂取前、4週間後、8週間後に、皮膚の次のパラメータが被験者の左上腕の掌側側面で測定された:
−Cutometer(登録商標)SEM575による皮膚弾力性
(3回の測定からの平均値)
−DermaLab(登録商標)デバイスによる経皮水分喪失(TEWL)
(3回の測定からの平均値)
−Corneometer(登録商標)CM825による皮膚水分含量
(10回の測定からの平均値)
【0042】
全ての測定は、21.5℃(±1℃)の温度、50%(±5%)の相対空気湿度にて、気候制御室内の順化の30分後に実施された。
【0043】
3つ全てのパラメータは、4週間後及び8週間後の両方において、コラーゲン加水分解物で治療された群において有意に増加した。プラセボ投与群と比較して、8週間後の測定値は、特にパーセンテージ増加として、以下の表2に与えられる。
【0044】
【表2】
【0045】
皮膚弾力性の増加は、セルライトの治療及び/又は予防するためにコラーゲン加水分解物の経口投与の有効性を示す。TEWL及び皮膚水分の改善は、皮膚の健康における加水分解物の更なる有利な効果であり、特に表皮バリア機能の増加をもたらす。
【0046】
年齢グループによって区別される皮膚弾力性の増加の試験は、表3に記載の結果を生じさせた。50歳以下(平均年齢44.1歳)の女性を、50歳を超える(平均年齢53.0歳)女性と比較した。
【0047】
【表3】
【0048】
ここで、顕著なことは、50歳超の女性の皮膚弾力性の特に顕著な向上であり、したがって、50歳超の女性は、コラーゲン加水分解物の本発明による使用のための好ましい標的グループを表す。
【0049】
皮膚弾力性は、8週間の投与期間終了後の4週間再度測定された。8週間後に測定された92%〜98%の増加がなおも保持され、これは、コラーゲン加水分解のより長期持続効果を示唆した。
【0050】
3.インビトロでの細胞外マトリックスタンパク質の合成の刺激
コラーゲン(I型)の合成、及びプロテオグリカンのバイグリカンとバーシカンの合成の刺激は、ヒト真皮線維芽細胞(皮膚細胞)をインビトロで調べた。この目的のために、細胞は、0.5mg/mlの低分子量又は高分子量の加水分解物のいずれかとともに24時間インキュベートされ、次に、コラーゲンRNA、バイグリカンRNA及びバーシカンRNAの発現は、リアルタイムPCRによって決定され、半定量的に評価された(加水分解物を含まない対照と比較した)。
【0051】
結果は、
図1AにおいてI型コラーゲン、
図1Bにおいてバイグリカン、及び
図1Cにおいてバーシカンのバーチャートとして示され、グラフの表記は、各々、少なくとも18回の測定からの平均値を示す。横軸に示したものは、対照を基準にしたRNA発現である(n=1)。左側の実線カラムは、各々のケースにおいて、対照を示し、一方、中央では、斜線のカラムは、高分子量の加水分解物であり、右側の破線カラムは、低分子量の加水分解物である。
【0052】
3つ全てのマトリックスタンパク質の合成は、両方のコラーゲン加水分解物によって刺激されるが、低分子量の加水分解物の陽性効果は、高分子量の加水分解物よりも、各々のケースにおいてより強く発現されることは明らかである。エラスチンの他に、皮膚の復元力及び弾力性に主に関与するコラーゲンについて、及び皮膚の水分調節において重要な部分を果たすバーシカンについて、低分子量の加水分解物の効果の増大が特に明確に表されている。
【0053】
異なるマトリックスタンパク質におけるコラーゲン加水分解物のこれらの刺激特性はまた、本発明によるセルライトの治療及び/又は予防とは別にして、疾患、例えば乾癬に関して出発点を与え、そこでは皮膚の自然な機能が損なわれている。
【0054】
4.動物研究における皮膚の水分含量の増加
コラーゲン加水分解物を用いた皮膚水分量の影響を直接、無毛マウスを用いて調べた。無毛マウスは、多くの場合、皮膚科学的調査のために使用される確立されたモデル系であり、それから得られた知識は、原理的にはヒト皮膚に適用することができる(例えば、T.Fujimura et al.;J.Dermatol.Sci.2000(24)105−111、Y.Nishimori et al.;J.Invest.Dermatol.2001(117)1458−1463参照)。
【0055】
3週間の全期間、毎日150μgコラーゲン加水分解物/kg体重で動物に食餌を与え、一方、対照群は、代わりにBSAを受け入れた。同時に、全ての動物は、毎週、18mJ/cm
2皮膚表面のUV−B照射線量を受け、それによって、皮膚水分量は負に影響を受けた。
【0056】
水分含有量を1週間後及び3週間後にCorneometer CM825(製造業者Courage & Khazaka)を用いて測定した。ここでの測定原理は、上部皮膚層に結合した水の誘電率に起因した測定コンデンサの静電用量の変化に基づき、それは、他の大部分の物質の誘電率とは顕著に異なっている。
【0057】
結果は、
図2Aにおいて1週間後の測定について、
図2Bについて3週間後の測定についてバーチャートとして示され、グラフの表記は、各々、7回の測定値+標準誤差を示す。横軸に示したものは、対照を基準にした皮膚水分量である(n=1)。左側の実線カラムは、各々のケースにおいて、対照を示し、中央では、斜線のカラムは、高分子量の加水分解物であり、右側の破線カラムは、低分子量の加水分解物である。
【0058】
低分子量の加水分解物を用いた皮膚水分量の増加は、高分子量の加水分解物よりも、1週間後と3週間後の両方において大きいようである。
【0059】
5.インビトロでのCEタンパク質の合成の刺激
いわゆる「角化膜」タンパク質は、病原微生物及び毒性物質の侵入に対する皮膚のバリア機能に重要な役割を果たす。CEタンパク質であるインボルクリン、ロリクリン及びフィラグリンの合成は、予め、毎日150μgコラーゲン加水分解物/kg体重(上記の通り)で5週間、食餌を与えられた無毛マウスにおいて決定された。(BSAを与えた)対照群を基準としたタンパク質の定量は、皮膚からのタンパク質の抽出後、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、及び特異的抗体を用いたウェスタンブロットにより行われた。
【0060】
結果を
図3のヒストグラムとして示し、グラフの表記は、7回の測定の平均値+標準偏差を示す。横軸に示したものは、対照を基準にした低分子量の加水分解物を用いた食餌後のCEタンパク質の定量である(n=1)。左側のカラムはインボルクリンを示し、中央のカラムはロリクリンを示し、右側のカラムはフィラグリンを示す。
【0061】
調査された3つ全てのCEタンパク質の合成は、コラーゲン加水分解物の経口摂取によって刺激されることは明らかであり、インボルクリンの場合には、実際に3倍を超えている。
【0062】
6.MALDI−MSを用いた分子量分布の分析
約2,000Daの平均分子量を有する実施例1に従って生産された低分子量のコラーゲン加水分解物(以下、加水分解物Aと呼ぶ)は、約2,100Da(以下、加水分解物Bと呼ぶ)及び約2,900Da(以下、加水分解物Cと呼ぶ)の平均分子量を有する2つの市販のコラーゲン加水分解物と比較した。
【0063】
これら3つの加水分解物の正確な分子量分布をMALDI質量分析(MALDI−MS)によって分析した。この目的のために、試料を0.1%トリフルオロ酢酸中、10μg/μlの最終濃度に調整し、次に、μC
18材料を用いて精製した。試料は、MALDIターゲット上のHCCAマトリックスを用いて調製され、質量スペクトルは、Ultraflex−III−TOF/TOF質量分析計(製造者:Bruker Daltonics)を用いて決定された。
【0064】
図4A〜4Cは、コラーゲン加水分解物A、B及びCの対応する質量スペクトル又は分子量分布を示し、ここで、分子量又は質量数を縦軸に表し、強度を横軸に表す。3つスペクトルの比較は、加水分解物Aが、表4の通り、以下の特徴的なペプチドを含み、相対的ピークは、それらの周囲と比較して2〜4倍の強度を有する。
【0065】
【表4】
【0066】
具体的には、600Da〜1,500Daの4つペプチドは、2つの市販の加水分解物B及びCに対応していないため、したがって、加水分解物Aに特に特徴的である。
【0067】
7.インビトロでの細胞外マトリックスタンパク質の合成の刺激
コラーゲン(I型)及びプロテオグリカンのデコリン及びバーシカンの合成の刺激をヒト真皮線維芽細胞(皮膚細胞)においてインビトロで調べた。この目的のために、それぞれ加水分解物A、B及びCの0.5mg/mlとともに細胞を24時間インキュベートし、次に、コラーゲンRNA、デコリンRNA及びバーシカンRNAの発現をリアルタイムPCRによって決定し、半定量的に評価した。デコリンは、皮膚中のコラーゲン繊維の形成に重要な役割を果たしている。
【0068】
結果は、
図5Aにおいて加水分解物Bについて、
図5Bにおいて加水分解物Cについてバーチャートとして示され、横軸は、加水分解物Aを用いたRNA発現と比較して、それぞれ市販の加水分解物BとCにおけるRNA発現を表す(=1)。左側のカラムはI型コラーゲンを表し、中央カラムはデコリンを表し、右側のカラムはバーシカンを表す。それぞれのケースにおいて、少なくとも7回の測定からの平均値を標準誤差とともに示す。
【0069】
興味深いことに、データは、3つの全てのマトリックスタンパク質を用いて、加水分解物Aと比較して、RNA合成の著しくより小さい刺激が、分子量がほんの僅かに高い加水分解物BとCの両方で起こることを示す。したがって、加水分解物Aの特徴的なペプチドは、その有利な効果において決定的な役割を果たしているようである。
【0070】
8.栄養(補助)製品のための例示的なレシピ
コラーゲン加水分解物の本発明による使用のためのいくつかの例示的レシピを以下に示すが、これらは、通常、多くの方法において修正され得る。
【0071】
カプセット(Capsette)(栄養補助食品)
グリシン 53.67重量%
コラーゲン加水分解物 21.95重量%
ゼラチン 10.08重量%
グアーガム 6.00重量%
レシチン 5.00重量%
クエン酸 2.00重量%
香味料(カシス) 0.50重量%
オレンジ油 0.50重量%
アセサルフェームK 0.30重量%
【0072】
チョコレート
ココア塊 51.0重量%
ショ糖 22.4重量%
ココアバター 16.6重量%
コラーゲン加水分解物 10.0重量%
【0073】
飲料
水 63.00重量%
アロエベラ濃縮物 31.00重量%
コラーゲン加水分解物 4.00重量%
ショ糖 1.50重量%
クエン酸 0.26重量%
香味料及び着色剤 0.24重量%
スクラロース 0.0031重量%