(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動車両のブレーキペダルの操作量から前記電動車両を減速させるために必要な油圧ブレーキ力と前記操作量に応じた回生ブレーキ力とを求め、前記油圧ブレーキ力から前記回生ブレーキ力を差し引いた結果を算出する要求トルク部と、
前記電動車両における車輪駆動用のSRモータの回転速度を求める回転速度検出部と、
前記要求トルク部から取得された前記ブレーキペダルの操作量を示すブレーキトルク指令と、前記回転速度検出部によって求められたSRモータの回転速度と、前記SRモータに出力する電流の目標値となる電流指令値と、が記憶された励磁電流指令マップを有する励磁電流指令マップ部、及び、前記ブレーキトルク指令と前記回転速度とに応じた電流指令値を前記励磁電流指令マップから選択する励磁電流決定部を備える励磁電流指令設定部と、
前記励磁電流決定部によって選択された電流指令値に基づき前記SRモータに流れる電流を制御することで、前記SRモータに制動トルクを発生させるPWM制御部と、
前記要求トルク部で算出された前記結果に基づいて、前記電動車両の車輪の油圧ブレーキの油圧を制御する油圧制御装置と、
を有することを特徴とする電動車両制動システム。
前記電動車両のブレーキ印加時において、後輪又は前輪に対して、前記油圧ブレーキ力と前記SRモータへの制動トルクによる回生ブレーキ力とを複合させて付与し、前記付与されている前記油圧ブレーキ力と前記回生ブレーキ力とは、前記ブレーキペダルの操作量が増加するについて増加するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電動車両制動システム。
電動車両のブレーキペダルの操作量から前記電動車両を減速させるために必要な油圧ブレーキ力と前記操作量に応じた回生ブレーキ力とを求め、前記油圧ブレーキ力から前記回生ブレーキ力を差し引いた結果を前記電動車両の油圧制御装置に送信する過程と、
前記電動車両における車輪駆動用のSRモータの回転速度を求める過程と、
要求トルク部から取得された前記ブレーキペダルの操作量を示すブレーキトルク指令と、回転速度検出部によって求められたSRモータの回転速度と、前記SRモータに出力する電流の目標値となる電流指令値と、が記憶された励磁電流指令マップを有する励磁電流指令マップ部と、前記ブレーキトルク指令と前記回転速度とに応じた電流指令値を前記励磁電流指令マップから選択する励磁電流決定部とによって、回生制御において前記SRモータに流す電流の電流指令値を算出する過程と、
前記励磁電流決定部によって選択された電流指令値に基づき前記SRモータに流れる電流を制御することで、前記SRモータに制動トルクを発生させる過程と、
前記油圧制御装置が前記要求トルク部からの前記結果に基づいて、前記電動車両の車輪の油圧ブレーキの油圧を制御する過程と、
を有することを特徴とする電動車両制動方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態におけるモータ回生制御装置1について図面を用いて説明する。
図1は第1の実施形態におけるモータ回生制御装置1を適用する電動車両のシステムの構成図である。
電動車両のシステムは、ブレーキペダル2、ブレーキペダル2の操作量(踏力量)を検出するブレーキ操作検出部3、油圧を前後輪のブレーキに配分する油圧制御装置4、配分された油圧に応じで制動力を発生する前輪8の油圧ブレーキ10と後輪7の油圧ブレーキ11、SRモータ5、SRモータ5に備えられている回転角センサ6、バッテリ9を備える。
【0013】
ブレーキ操作検出部3は、運転者が操作するブレーキの制動力を選択する入力装置、例えば、ブレーキペダル2の操作量を検出する。ブレーキ操作検出部3は、そのブレーキペダルの操作量に応じたブレーキ信号をモータ回生制御装置1に出力する。例えば、ブレーキ操作検出部3は、可変抵抗器を有し、ブレーキペダル2と可変抵抗器のつまみ部とを剛性部材で接続し、ブレーキペダル2の操作量に応じて変化する可変抵抗器により分圧させた電圧を検出し、検出した電圧をブレーキ信号としてモータ回生制御装置1に出力する。また、ブレーキ操作検出部3は、ブレーキペダル2の踏力量を検出する圧力センサ等を有し、その検出結果をブレーキ信号としてモータ回生制御装置1に出力してもよい。
【0014】
SRモータ5は、リアギア5Aを介して後輪7を駆動する。SRモータ5の詳細は後述する。
【0015】
前輪8の油圧ブレーキ10と後輪7の油圧ブレーキ11とは、制動時に発生する熱を放熱しやすく、制動性能の低下を防ぐためにディスクブレーキを用いてもよい。その際、ブレーキキャリパは、対向ピストン型を用いることが好ましい。なお、車両重量が軽量である場合にはドラムブレーキを用いてもよい。
【0016】
モータ回生制御装置1は、ブレーキ操作検出部3からブレーキ信号を取得する。モータ回生制御装置1は、後輪7の回転速度を検出する回転角センサ6の出力信号を受信する。モータ回生制御装置1は、ブレーキ信号と回転角センサ6の出力信号とに基づいて、SRモータ5の駆動を制御する。また、モータ回生制御装置1は、後輪7の油圧ブレーキ11の油圧を減圧することを示す減圧信号を油圧制御装置4に出力する。
【0017】
油圧制御装置4は、油圧を前後輪のブレーキに配分する。また、油圧制御装置4は、モータ回生制御装置1から減圧信号を受信すると、その減圧信号に基づいて後輪7の油圧ブレーキ11の油圧を減圧する。
【0018】
次に、第1の実施形態におけるSRモータ5のモータ回生制御装置1について説明する。
図2は、第1の実施形態におけるモータ回生制御装置1のブロック図である。
図2に示すように、第1の実施形態におけるモータ回生制御装置1は、駆動回路12と、制御装置13とを備えて構成されている。
【0019】
SRモータ5は、4つの突極部を有するロータ31と、ロータ31を外囲するように設けられ、内側のロータに向かって6つの突極部を有するステータ32と、ロータ31の回転角を検出する回転角センサ6とを備える。ステータ32の6つの突極部は、それぞれ巻線して励磁コイルを形成し、対向する突極部を対とするコイルLu、Lv、Lwを形成する。コイルLu、Lv、Lwに対して選択的に通電することにより、ステータ32の突極部がロータ31の突極部を磁気吸引して、ロータ31に駆動トルク及び制動トルクを発生させる。
【0020】
駆動回路12は、バッテリ9に接続され、コンデンサ51と、スイッチ素子としてn型チャネルのFET(Field Effective Transistor;電界効果トランジスタ)52〜57と、ダイオード58〜63とを備える。コンデンサ51は、一端がバッテリ9の正極に接続され、他端が負極に接続される。
FET52は、ドレインがバッテリ9の正極に接続され、ソースがダイオード58のカソードに接続される。ダイオード58のアノードは、バッテリ9の負極に接続される。ダイオード59は、カソードがバッテリ9の正極に接続され、アノードがFET53のドレインに接続される。FET53のソースは、バッテリ9の負極に接続される。
【0021】
FET54は、ドレインがバッテリ9の正極に接続され、ソースがダイオード60のカソードに接続される。ダイオード60のアノードは、バッテリ9の負極に接続される。
ダイオード61は、カソードがバッテリ9の正極に接続され、アノードがFET55のドレインに接続される。FET55のソースは、バッテリ9の負極に接続される。
FET56は、ドレインがバッテリ9の正極に接続され、ソースがダイオード62のカソードに接続される。ダイオード62のアノードは、バッテリ9の負極に接続される。
ダイオード63は、カソードがバッテリ9の正極に接続され、アノードがFET57のドレインに接続される。FET57のソースは、バッテリ9の負極に接続される。
【0022】
すなわち、コンデンサ51と、直列に接続されたFET52及びダイオード58と、直列に接続されたFET53及びダイオード59と、直列に接続されたFET54及びダイオード60と、直列に接続されたFET55及びダイオード61と、直列に接続されたFET56及びダイオード62と、直列に接続されたFET57及びダイオード63とは、それぞれバッテリ9に対して並列に接続される。
【0023】
また、FET52とダイオード58との接続点には、SRモータ5のコイルLuの一端が接続され、FET53とダイオード59との接続点には、コイルLuの他端が接続される。FET54とダイオード60との接続点には、SRモータ5のコイルLvの一端が接続され、FET55とダイオード61との接続点には、コイルLvの他端が接続される。FET56とダイオード62との接続点には、SRモータ5のコイルLwの一端が接続され、FET57とダイオード63との接続点には、コイルLwの他端が接続される。
【0024】
上述のように、駆動回路12は、Hブリッジ回路により構成され、制御装置13から入力される制御信号がFET52〜57のゲートに入力され、入力される制御信号に応じて、FET52〜57のオンとオフとが切り替えられることにより、SRモータ5が有するコイルLu、Lv、Lwそれぞれに通電を行う。
電流センサ20は、SRモータ5が有するコイルLu、Lv、Lwそれぞれに流れる電流を検出して制御装置13に出力する。
【0025】
制御装置13は、回生動作モード判別部131、要求トルク部132、励磁電流指令設定部133、PWM制御部134、位置検出部135、回転速度検出部136、通電タイミング決定部137、進角通電角マップ部138、電流検出部139を有する。
【0026】
回生動作モード判別部131は、ブレーキ操作検出部3が出力するブレーキ信号を検出する検出部である。また、回生動作モード判別部131がブレーキ信号を検出すると、モータ回生制御装置1は、SRモータ5の回生動作を行う。SRモータ5の回生動作を行う場合、回生動作モード判別部131は、要求トルク部132に回生動作を行うことを示す回生信号を出力する。
【0027】
要求トルク部132は、回生動作モード判別部131から回生信号が供給されると、ブレーキ操作検出部3からブレーキ信号を取得する。要求トルク部132は、回生信号を取得すると、不図示の記憶部に予め記憶してある第1のテーブルを参照し、ブレーキペダル2の操作量に対応した後輪7の油圧ブレーキ力を取得する。油圧ブレーキ力は、電動車両を減速させるのに必要な後輪7の油圧ブレーキ11のブレーキ力である。
また、要求トルク部132は、不図示の記憶部に予め記憶してある第2のテーブルを参照し、ブレーキペダル2の操作量に対応した回生ブレーキ力を取得する。回生ブレーキ力は、SRモータ5の回生動作によって、電動車両を減速させる制動力である。
要求トルク部132は、後輪7の油圧ブレーキ力から回生ブレーキ力を差し引くことで算出される差引ブレーキ力を減圧信号として油圧制御装置4に出力する。
また、要求トルク部132は、取得した回生ブレーキ力をブレーキトルク指令として励磁電流指令設定部133に送信する。
【0028】
図3は、前後輪のブレーキ力と回生ブレーキ力の分配例を説明する図である。
図3(a)は、前輪8に付与されるブレーキ力とブレーキペダル2の操作量の関係を説明する模式図であり、縦軸が前輪8に付与されるブレーキ力、横軸がブレーキペダル2の操作量を示している。
図3(a)に示すように、前輪8のブレーキ力において、油圧制御装置4は、ブレーキペダル2の操作量に比例し、前輪8の油圧ブレーキ10に与える油圧を大きくすることで電動車両を減速させる。
【0029】
図3(b)は、後輪7のブレーキ力とブレーキペダル2の操作量の関係を説明する模式図であり、縦軸が後輪7に付与されるブレーキ力、横軸がブレーキペダル2の操作量を示している。
図3(b)に示すように、後輪7のブレーキにおいて、油圧制御装置4は、ブレーキペダル2の操作量に比例し、前輪8の油圧ブレーキ11に与える油圧を大きくすることで電動車両を減速させる。
しかしながら、油圧制御装置4は、要求トルク部132から減圧信号を受信すると、その減圧信号が示す差引ブレーキ力だけ後輪7のブレーキ力を低下させるため、油圧ブレーキ11の油圧を下げる。
図3(c)は、後輪7のブレーキ力とブレーキペダル2の操作量の関係を説明する模式図であり、縦軸が後輪7に付与されるブレーキ力、横軸がブレーキペダル2の操作量を示している。
図3(c)に示すように、モータ回生制御装置1は、後輪7のブレーキ力において、油圧制御装置4が
図3(c)で低下させたブレーキ力(差引ブレーキ力分)をSRモータ5の回生ブレーキ力で補う。
【0030】
位置検出部135は、SRモータ5に備えられた回転角センサ6が出力する信号より、ロータ31の回転角(ロータ31の回転位置)を検出して、回転速度検出部136と、PWM制御部134とに出力する。
回転速度検出部136は、位置検出部135が出力するロータの回転角を示す信号の単位時間あたりの変化量を検出し、検出した変化量からロータ31の回転速度(回転数)を算出して励磁電流指令設定部133と通電タイミング決定部137とに出力する。
【0031】
励磁電流指令設定部133は、励磁電流決定部133Bと励磁電流指令マップ部133Aとを備える。励磁電流指令マップ部133Aは、例えば励磁電流マップが記憶されている内部記憶部を有している。
図4は、励磁電流指令設定部133の内部記憶部に記憶されている励磁電流指令マップの模型を示している。
図4において、励磁電流指令マップ部133Aは、SRモータ5の回生制御を行うときのSRモータ5の回転速度とブレーキペダル2の操作量を示すブレーキトルク指令とSRモータ5に出力する電流の目標値である励磁電流指令値とが記憶された励磁電流指令マップを有する。
図4に示すように、x軸方向がブレーキトルク指令、y軸方向が回転速度、z軸方向が励磁電流指令値を示している。励磁電流指令マップにおいて、ブレーキトルク指令値が増大し、回転速度が減少する傾向にある場合、励磁電流指令値は、増大傾向に変化することが示されている。なお、励磁電流指令マップにおける電流値(励磁電流指令値)は、SRモータ5の特性値よりシミュレーションを用いて算出されるか、又は、SRモータ5の実測値により予め定められる。
【0032】
励磁電流決定部133Bは、ブレーキペダル2の操作量を示すブレーキトルク指令を、要求トルク部132から取得すると、励磁電流指令マップを励磁電流指令マップ部133Aから読み出す。また、励磁電流決定部133Bは、SRモータ5の回転速度を、回転速度検出部136から取得する。励磁電流決定部133Bは、取得したブレーキトルク指令と回転速度とに応じた励磁電流指令値を、読み出した励磁電流指令マップから選択し、選択した励磁電流指令値をPWM制御部134に出力する。
また、励磁電流決定部133Bは、通電タイミング決定部137にブレーキトルク指令を出力する。
【0033】
電流検出部139は、電流センサ20より出力されるSRモータ5のコイルLu、Lv、Lwそれぞれに流れる電流の検出結果が入力されて、コイルLu、Lv、Lwに流れる電流値をPWM制御部134に出力する。例えば各電流センサ20から出力される各相電流(巻線電流)の検出信号に基づき、SRモータ5に通電されている巻線電流を検出し、この巻線電流の検出値をPWM制御部134に出力する。
【0034】
通電タイミング決定部137は、回転速度検出部136からの回転速度と励磁電流決定部133Bからのブレーキトルク指令とに応じた進角を回生進角マップから選択する。また。通電タイミング決定部137は、回転速度検出部136からの回転速度と励磁電流決定部133Bからのブレーキトルク指令とに応じた通電角を回生通電角マップから選択する。通電タイミング決定部137は、選択した進角および通電角をPWM制御部134に出力する。
【0035】
図5(a)は、回生進角マップを示す図である。
図5(a)に示すように、x軸方向がブレーキトルク指令、y軸方向が回転速度、z軸方向が進角を示している。回生進角マップは、SRモータ5の各相の各励磁コイルLu,Lv,Lwに対する通電開始位相および通電終了位相を、各相のインダクタンス変化に応じた所定位相(例えば、インダクタンスの増大開始位相および減少開始位相等)から進角側に変更するための進角と、ブレーキトルク指令と回転速度との所定の対応関係を示すマップである。
図5(b)は、回生通電角マップを示す図である。
図5(b)に示すように、x軸方向がブレーキトルク指令、y軸方向が回転速度、z軸方向が通電角を示している。回生通電角マップは、各相の各励磁コイルLu,Lv,Lwに対する通電角(例えば、電気角120°以上の値等)と、ブレーキトルク指令と回転速度との所定の対応関係を示すマップである。
【0036】
PWM制御部134は、電流制御処理部140、通電タイミング出力部141、PWM出力部142を備えている。
【0037】
電流制御処理部140は、SRモータ5に通電されている巻線電流のPWM(Pulse Width Modulation)制御を行う。電流制御処理部140は、励磁電流指令設定部133から供給される励磁電流指令値と電流検出部139から供給される電流検出値との差(以下、「電流差分値」という。)を算出する。
【0038】
PWM制御部134は、SRモータ5を回生制御する場合、電流差分値が減少するように、SRモータ5に電圧を印加する。そのために、例えば、電流制御処理部140は、FET52、54、56を常にオンにする100%のデューティ比をPWM出力部142に出力する。また、例えば、電流制御処理部140は、一旦、電流差分値が0になると、電流差分値が0になる電圧値を算出し、算出した電圧値からPWM制御におけるデューティ比を算出する。電流制御処理部140は、算出したデューティ比をPWM出力部142に出力する。ここで、電流制御処理部140は、入力される電流値の差に基づいて、一般的に公知のPI(Proportional Integral)制御、又は、PID(Proportional Integral Derivative)制御等を用いて上述のデューティ比を算出する。
【0039】
通電タイミング出力部141は、位置検出部135から入力されるロータ31の回転角を取得する。通電タイミング出力部141は、通電タイミング決定部137から進角および通電角を取得する。通電タイミング出力部141は、取得したロータ31の回転角と進角と通電角とに基づいて、駆動回路12が有するFET53、55、57のオンとオフとを切り替える制御信号をFET53,55、57のゲートに出力する。
また、通電タイミング出力部141は、取得した進角と通電角とをPWM出力部142に出力する。
【0040】
また、通電タイミング出力部141は、回生制御において、電流制御処理部140が出力する信号から、SRモータ5に流れる電流が励磁電流指令値に達したことを検出すると、FET53、55、57をオフにする。
【0041】
PWM出力部142は、通電タイミング出力部141から供給される進角及び通電角に応じた通電区間において、電流制御処理部140が算出したデューティ比を、FET52、54、56のゲートに出力する。
【0042】
図6は、低回転領域における回生制御時のSRモータ5の回転速度とトルク特性と電流波形との関係を示す波形図である。
図6(a)の縦軸方向が巻線インダクタンス、
図6(b)の縦方向が巻線電圧、
図6(c)の縦方向が巻線電流であり、
図6(a)、(b)、(c)各々の横軸方向がロータ31の回転角を示している。
図7は、高回転領域における回生制御時のSRモータ5の回転速度とトルク特性と電流波形との関係を示す波形図である。
図7(a)の縦軸方向が巻線インダクタンス、
図6(b)の縦方向が巻線電圧、
図7(c)の縦方向が巻線電流であり、
図7(a)、(b)、(c)各々の横軸方向がロータ31の回転角を示している。
図6、
図7に示すように、それぞれの関係をSRモータ5におけるロータ31の回転速度に応じて、低回転領域と高回転領域とに分けて説明する。以下にまず、本実施形態における回生制御について説明し、次に低回転領域と高回転領域における回生制御について説明する。ここでは、コイルLuにおけるインダクタンスと巻線電圧と巻線電流とについて説明するが、コイルLv、Lwについても同様である。
【0043】
回生制御において、コイルLuにロータ31の突極がステータ32の突極との対向位置に近づく場合、PWM制御部134の通電タイミング出力部141は、回生により起電力を得るために、例えばFET53とFET52とをオン状態にして、予め定めた電流値である励磁電流指令値の電流が流れるまでコイルLuに通電し、コイルLuを励磁する。コイルLuに流れる電流値が励磁電流指令値に達すると、通電タイミング出力部141は、FET53をオフ状態にし、PWM出力部142は、PWMデューティ算出部213から入力されたデューティ比によりFET52のオンとオフとを切り替える。
ここで、FET52、53ともにオン状態、すなわち、バッテリ9により供給される電力がコイルLuに印加される状態を供給モードという。また、FET52がオン状態であり、FET53がオフ状態、すなわち、コイルLuに生じた起電力をFET52、コイルLu、ダイオード59に還流させる状態を還流モードという。また、FET52、53がともにオフ状態、すなわち、コイルLuに生じた起電力をバッテリ9に出力する状態を回生モードという。
【0044】
低回転領域において巻線インダクタンスは、ロータ31の突極がコイルLuに近づくにしたがい増加し、ロータ31の突極とコイルLuの突極とが対向する回転角において最も高くなり、ロータ31の突極がコイルLuから離れるにしたがい減少する。このコイルLuのインダクタンスが減少する領域において回生による発電が行われる。
回生制御において、PWM制御部134は、コイルLuとロータ31が対向する付近で上述の供給モードにより、起電力を得るために電圧をコイルLuに印加する(巻線電圧が正の値になる)ことで、巻線電流が上昇する。巻線電流が励磁電流指令値に達すると、PWM制御部134は、還流モードと回生モードへ切り替えて、コイルLuに生じる起電力をバッテリ9に出力させる(巻線電圧が負の値と0とに変化する)。また、PWM制御部134は、還流モードと回生モードとを切り替えることにより、コイルLuに流れる巻線電流を励磁電流指令値近傍に保つ。
【0045】
高回転領域における回生制御において、低回転領域と同様に、コイルLuとロータ31が対向する付近で供給モードにより、起電力を得るために電圧をコイルLuに印加する。しかし、コイルLuに流れる電流が励磁電流指令値に達すると、還流モードと回生モードとを切り替えずに、回生モードのみを選択し、コイルLuに生じる起電力をバッテリ9に出力させる。
【0046】
次に、第1の実施形態におけるモータ回生制御装置1の処理について、図を用いて説明する。
図8は、第1の実施形態のモータ回生制御装置1の処理を示すフローチャートである。
【0047】
ステップS100において、回生動作モード判別部131は、ブレーキ信号を検出すると、回生制御を行う。回生動作モード判別部131は、回生制御を行う場合、要求トルク部132に、回生信号を送信する。
【0048】
ステップS101において、要求トルク部132は、回生動作モード判別部131から、回生信号を取得する。また、要求トルク部132は、ブレーキ操作検出部3からブレーキ信号を取得する。要求トルク部132は、後輪7のブレーキ力から上記ブレーキ信号に応じた回生ブレーキ力を減算し、減算結果として得られる減圧信号を油圧制御装置4に出力する。また、要求トルク部132は、回生ブレーキ力をブレーキトルク指令として励磁電流指令設定部133に送信する。
【0049】
ステップS102において、回転速度検出部136は、位置検出部135が出力するロータ31の回転角を示す信号の時間単位あたりの変化量を検出し、検出した変化量からロータ31の回転速度を算出して励磁電流決定部133Bと通電タイミング決定部137とに出力する。
【0050】
ステップS103において、励磁電流決定部133Bは、要求トルク部132からブレーキトルク指令を取得する。また、励磁電流決定部133Bは、回転速度検出部136から回転速度を取得する。励磁電流決定部133Bは、励磁電流指令マップ部133Aから励磁電流指令マップを読み出す。励磁電流決定部133Bは、取得した回転速度とブレーキトルク指令とに対応する励磁電流指令値を、励磁電流指令マップから選択して、選択した励磁電流指令値を電流制御処理部140に出力する。また、励磁電流決定部133Bは、通電タイミング決定部137にブレーキトルク指令を出力する。
【0051】
ステップS104において、通電タイミング決定部137は、回転速度検出部136からの回転速度と励磁電流決定部133Bからのブレーキトルク指令とに応じた進角を回生進角マップから選択する。また。通電タイミング決定部137は、回転速度検出部136からの回転速度と励磁電流決定部133Bからのブレーキトルク指令とに応じた通電角を回生通電角マップから選択する。通電タイミング決定部137は、選択した進角および通電角を通電タイミング出力部141に出力する。
【0052】
ステップS105において、電流制御処理部140は、電流差分値を算出してPWM出力部142と通電タイミング出力部141とに出力する。
また、電流制御処理部140は、電流差分値が0まで、FET52、54、56それぞれを常にオンにする100%のデューティ比をPWM出力部142に出力する。
通電タイミング出力部141は、位置検出部135から出力されるロータ31の回転角に応じて、FET53、55、57それぞれをオンにし、ロータ31の回転角より進角及び通電角を算出してPWM出力部142に出力する。
PWM出力部142は、電流制御処理部140から出力されたデューティ比と、通電タイミング出力部141から出力された進角及び通電角とに応じて、FET52、54、56それぞれをオンにして、SRモータ5のコイルLu、Lv、Lwそれぞれの通電状態を供給モードにする。
【0053】
ステップS106において、電流制御処理部140は、SRモータ5に流れる電流値が励磁電流指令値に到達したか否かを判定する。
電流制御処理部140は、電流検出部139から出力された電流値が、励磁電流指令値を超えない場合(電流差分値が0以上の場合)、上述のステップS105に進む。一方、電流制御処理部140は、電流検出部139から出力された電流値が、励磁電流指令値を超える場合(電流差分値が0未満の場合)、ステップS107に進む。
【0054】
ステップS107において、電流制御処理部140は、電流差分値に応じて、FET52、54、56それぞれをオンにするデューティ比を算出し、算出したデューティ比をPWM出力部142に出力する。さらに、通電タイミング出力部141は、FET53、55、57それぞれをオフにする。PWM出力部142は、電流制御処理部140から出力されたデューティ比に応じて、FET52、54、56それぞれのオンとオフとを切り替える。
これにより、SRモータ5のコイルLu、Lv、Lwそれぞれの通電状態が、FET52、54、56のオンとオフとの切り替え、すなわち、PWM制御により、還流モードと回生モードとになり、回生制御される。
【0055】
上述したように、本実施形態によると、モータ回生制御装置1は、ブレーキの操作量とSRモータ5の回転速度とから励磁電流指令マップを用いて励磁電流指令値を求める。また、モータ回生制御装置1は、電流指令値に基づきSRモータ5に流れる電流(巻線電流)を制御する。これにより、モータ回生制御装置1は、ブレーキペダル2の操作量に応じでSRモータ5のブレーキトルクを制御することができ、回生ブレーキ力を得ることができる。
【0056】
また、上述したように、本実施形態によると、前輪8の油圧ブレーキ10と後輪7の油圧ブレーキ11とが独立していて、後輪7を駆動するSRモータ5が搭載された電動車両において、モータ回生制御装置1は、後輪7又は前輪8に対して、油圧ブレーキ力とSRモータ5による回生ブレーキ力とを複合させて付与することで、エネルギー効率の向上を行うことができる。
【0057】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態におけるモータ回生制御装置1Aを適用する電動車両のシステムの構成図である。本実施形態におけるモータ回生制御装置1Aを適用した電動車両のシステムの構成は、第1の実施形態におけるモータ回生制御装置を適用した電動車両のシステムの構成と比べ、後輪7を回転させるのにSRモータ5が2つ搭載されている。それに応じで、回転角センサ6とリアギア5Aの数も同様に2つ搭載されている。なお、第1の実施形態と同じ構成には、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図10は、第2の実施形態におけるモータ回生制御装置1Aのブロック図である。
図10に示すように、本実施形態におけるモータ回生制御装置1Aは、2つのSRモータ5の回生制御を行うため、モータ回生制御装置1を2つ備えている。
バッテリ9は、駆動回路12の各々に接続されている。また、バッテリ9は、要求トルク部132の各々に接続されている。
ブレーキ操作検出部3は、回生動作モード判別部131の各々に接続され、ブレーキ信号を出力する。
油圧制御装置4は、要求トルク部132の各々に接続され、減圧信号を受信する。
モータ回生制御装置1Aの処理は、
図8のフローチャートと同様となるため、説明は省略する。
【0059】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
上述した実施形態において、モータ回生制御装置1は、ブレーキ操作検出部3からブレーキ信号を取得したが、本発明は、これに限定されない。例えば、モータ回生制御装置1は、油圧制御装置4から前輪8の油圧ブレーキ10の油圧をブレーキ信号として取得してもよい。
また、モータ回生制御装置1は、油圧制御装置4から後輪7の油圧ブレーキ11の油圧をブレーキ信号として取得してもよい。その際、SRモータ5が前輪8を駆動するように構成され、モータ回生制御装置1は、減圧信号を取得すると、その減圧信号に基づいて前輪8の油圧ブレーキ10の油圧を減圧する。
【0060】
また、上述した実施形態において、モータ回生制御装置1は、バッテリ9からバッテリ9の充電状態を示すSOC信号を取得し、バッテリ9の充電状態が満タンに近ければ、回生制御を行わないようにしてもよい。その際、モータ回生制御装置1は、油圧制御装置4に減圧信号を送信しない。
【0061】
また、上述した実施形態において、モータ回生制御装置1は、ブレーキ操作検出部3からブレーキ信号を受信することで、回生制御を行ったが、本発明は、これに限定されない。例えば、モータ回生制御装置1は、さらにアクセルペダルの操作量を示すアクセル信号を検出し、ブレーキ信号とアクセル信号とに基づいて回生制御を行ってもよい。また、モータ回生制御装置1は、ブレーキ信号とアクセル信号とに応じで励磁電流指令値を算出し、算出した励磁電流指令値をPWM制御部134に出力してもよい。
【0062】
また、上述した実施形態において、モータ回生制御装置1は、励磁電流指令値と電流検出部139からの電流検出値との差がなくなるように、巻線電流を制御したが、これに限定されず、電流指令値に基づき巻線電流を制御すればよい。例えば、モータ回生制御装置1は、電流検出部139からの電流検出値が励磁電流指令値から多少オフセットさせた電流値となるように巻線電流を制御してもよい。なお、モータ回生制御装置1が励磁電流指令値や励磁電流指令値から多少オフセットさせた電流値を目標値として巻線電流を制御する場合、巻線電流が目標値と一致せずに漸近してもよい。
【0063】
また、上述した実施形態の油圧制御装置4に代えて、アクチュエータを設け、油圧ブレーキ10、11の油圧制御を行うようにしてもよい。また、ブレーキパッドを直接押下する油圧なしのブレーキアクチュエータであってもよい。