特許第6462217号(P6462217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462217
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】ダストシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20190121BHJP
【FI】
   F16J15/3204 101
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-31683(P2014-31683)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-155744(P2015-155744A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】神保 一憲
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−292191(JP,A)
【文献】 特開2007−183005(JP,A)
【文献】 特開2011−254578(JP,A)
【文献】 特開2013−144747(JP,A)
【文献】 特開2012−047297(JP,A)
【文献】 特開2003−035373(JP,A)
【文献】 特開2007−064459(JP,A)
【文献】 特開2014−015956(JP,A)
【文献】 実開平03−000168(JP,U)
【文献】 特開2012−215188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204−15/3236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の外部から機器の内部へダストが侵入しないよう前記ダストをシールするダストリップと、機器の内部から機器の外部へオイルが漏洩しないよう前記オイルをシールするオイルリップとを有するダストシールであって、
前記ダストリップは、その基端部から先端部へかけて径寸法が徐々に縮小する傾斜面状の内周面と、同じく基端部から先端部へかけて径寸法が徐々に縮小する傾斜面状の外周面と、前記内周面に設けられ、前記機器における軸方向に往復動する作動ロッドの外周面に摺動可能に密接する摺動部とを有し、
前記摺動部の外周側に位置して前記ダストリップの外周面に、前記ダストリップの外周面の表面積を増大し前記ダストリップの放熱性を高める凹凸形状が付与され、
前記凹凸形状は、凹部を有し、
前記凹部は、軸方向に対し略平行な向きの内部底面および軸方向に対し略直交する向きの内部側面を有して断面略直角三角形状に形成され、前記ダストリップの円周方向に複数並設されていることを特徴とするダストシール。
【請求項2】
請求項1記載のダストシールにおいて、
前記凹凸形状は、前記ダストリップの円周方向に複数が並設された凹部と、前記複数の凹部間に設けられたリブ状部位との組み合わせよりなることを特徴とするダストシール。
【請求項3】
請求項2記載のダストシールにおいて、
前記ダストリップの外周面のうち少なくとも前記リブ状部位の表面に熱放射塗料が塗布されていることを特徴とするダストシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダストをシール対象とするダストシールに関する。本発明のダストシールは例えば、建設機械、産業機械または自動車関連の分野などで用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から図3に示すように、建設機械または産業機械における油圧シリンダなどの機器の内部Iへ機器の外部Oからダストが侵入しないようにダストをシールするダストシールであって、機器における作動ロッド61の外周面に摺動可能に密接するダストリップ52を有するダストシール51が知られているが、この従来のダストシール51には、ダストリップ52にヘタリが生じやすく、これにより耐ダスト性が低下する問題がある。ダストリップ52のヘタリに対しては主に高温下の使用による材料熱劣化が大きく影響し、特にダストリップ52がウレタン材よりなる場合には高温に対する劣化が課題になることが多い。
【0003】
そこで従来、ダストリップ52に耐熱性に優れた材料を適用したり、ダストリップ52の初期締め代を増加させたりなどの対策がなされており、また図4に示すように、スクレーパ53などの別部品を組み合わせることによりダストリップ52の補強や締め代の調整を実現する対策もなされている。
【0004】
しかしながら、これら従来の対策にはそれぞれ、以下の問題が指摘される。
【0005】
すなわちダストリップ52に耐熱性に優れた材料を適用する場合には、材料費が高く、ダストリップ52の初期締め代を増加させる場合には、ロッド61に対する緊迫力も増大するため、ロッド61の往復動などの作動性への影響が懸念される。また、スクレーパ53などの別部品を組み合わせる場合には、シール51の部品点数が増大するため、その組立て性や組付け性が悪化することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−168号公報
【特許文献2】特開2012−215188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて、ダストリップにヘタリが生じにくく、しかもシールの材料費が高騰することがなく、緊迫力が増大することがなく、部品点数が増大することもないダストシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるダストシールは、機器の外部から機器の内部へダストが侵入しないよう前記ダストをシールするダストリップと、機器の内部から機器の外部へオイルが漏洩しないよう前記オイルをシールするオイルリップとを有するダストシールであって、
前記ダストリップは、その基端部から先端部へかけて径寸法が徐々に縮小する傾斜面状の内周面と、同じく基端部から先端部へかけて径寸法が徐々に縮小する傾斜面状の外周面と、前記内周面に設けられ、前記機器における軸方向に往復動する作動ロッドの外周面に摺動可能に密接する摺動部とを有し、
前記摺動部の外周側に位置して前記ダストリップの外周面に、前記ダストリップの外周面の表面積を増大し前記ダストリップの放熱性を高める凹凸形状が付与され、
前記凹凸形状は、凹部を有し、
前記凹部は、軸方向に対し略平行な向きの内部底面および軸方向に対し略直交する向きの内部側面を有して断面略直角三角形状に形成され、前記ダストリップの円周方向に複数並設されている
ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2によるダストシールは、上記した請求項1記載のダストシールにおいて、前記凹凸形状は、前記ダストリップの円周方向または軸方向に複数が並設された凹部と、前記複数の凹部間に設けられたリブ状部位との組み合わせよりなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3によるダストシールは、上記した請求項2記載のダストシールにおいて、前記ダストリップの外周面のうち少なくとも前記リブ状部位の表面に熱放射塗料が塗布されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成を備える本発明のダストシールにおいて、ダストリップはその内周面に設定した摺動部にて機器における作動ロッドの外周面に摺動可能に密接するため、この摺動作動に伴って発熱または蓄熱をしやすい状況にあるところ、ダストリップの外周面に凹凸形状が付与されているため、ダストリップの外周面の表面積が増大し、放熱面積が増大し、よってダストリップの放熱性を向上させることが可能とされる。
【0012】
凹凸形状としては、ダストリップは環状であるので、このダストリップの円周方向または軸方向に複数が並設された凹部と、複数の凹部間に設けられたリブ状部位との組み合わせとするのが好適であり、この場合にはリブ状部位が放熱板(フィン)として作用するため、放熱効果が高い。
【0013】
また、ダストリップの外周面のうち少なくともリブ状部位の表面に熱放射塗料を塗布することも考えられ、この場合にはリブ状部位が放熱板(フィン)として作用するうえで熱放射塗料も放熱作用を奏するため、放熱効果が一層高くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0015】
すなわち本発明においては以上説明したように、ダストリップの外周面に凹凸形状が付与されているため、ダストリップの外周面の表面積が増大し、放熱面積が増大し、よってダストリップの放熱性が向上する。したがってダストリップの材料熱劣化によるヘタリを低減することができ、ダストリップの耐ダスト性およびシール性を向上させることができる。
【0016】
また、凹凸形状を凹部およびリブ状部位の組み合わせとする場合には、リブ状部位が放熱板(フィン)として作用することによる放熱作用が発揮され、熱放射塗料を塗布する場合には、この熱放射塗料による放熱作用が発揮されるため、ダストリップの放熱性が一層向上する。したがってヘタリの低減効果ならびに耐ダスト性およびシール性の向上効果を一層促進させることができる。
【0017】
また、本発明によれば、ダストリップの成形材料は従来と同等で良く特に耐熱性に優れた材料を適用する必要がないため、材料費が高くなることがない。またダストリップの初期締め代を増加させる必要がないため、緊迫力が増大することがない。またスクレーパなどの別部品を組み合わせる必要がないため、シールの部品点数が増大することがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施例に係るダストシールを示す図で、図1(A)は同ダストシールの半裁断面図、図1(B)は同ダストシールの一部平面図
図2】本発明の第2実施例に係るダストシールを示す図で、図2(A)は同ダストシールの半裁断面図、図2(B)は同ダストシールの一部平面図
図3】従来例に係るダストシールの断面図
図4】他の従来例に係るダストシールの断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)ダストリップの熱劣化によるヘタリを改善するため、以下の構成として材料劣化のスピードを低減する手法を提案する。
(1−1)ダストリップの外周部に肉盗み(凹部)を設けて、リブ状部位とこれよりもやや薄肉状の部分を設ける。
(1−2)リブの厚み、高さ、間隔と数は、外気が通るように適度に設定する。ダストリップの緊迫力がベース品(ダストリップ外周部に凹凸形状を付与していない従来品)に近くなることを考慮するのが望ましい。
(1−3)ダストリップ部付近の肉厚は極力、ベース品に近い大きさを確保する。
(1−4)金型成形を考えると、リブの方向(延設方向)は軸方向が望ましいが、横方向(円周方向)でも構わない。横方向の場合は、シール成形後にバイト等で後加工となる。工程は増えるが、緊迫力への影響は小さい。
【0020】
(2)上記構成とすることで、ダストリップ外周(大気側)の表面積が増えかつリブ状部位が放熱板(フィン)のような役目をし、ロッドからダストリップに伝達する熱を外気により発散させ、ダストシール自体の到達温度を低下して、既存品に対し熱劣化を低減することができる。
(3)熱劣化を低減することで、ヘタリが低減でき、ダストシールの寿命延長が期待できる。
(4)尚、ダストリップは、ウレタン材の放熱によるヘタリ低減を主な目的とするが、ゴムなどの材料でも放熱効果は期待できる。
【実施例】
【0021】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0022】
第1実施例・・・
図1は、本発明の第1実施例に係るダストシール1を示している。当該実施例に係るダストシール1は、建設機械または産業機械における油圧シリンダなどの機器に装着され、機器の内部Iへ機器の外部Oからダストが侵入しないようダストをシールするものであって、シールリップの一種としてのダストリップ21を有し、このダストリップ21がその内周面に設定した摺動部22において機器における作動ロッドの外周面に摺動可能に密接することによりダストをシールする。
【0023】
また、ダストシール1は、機器のシールハウジング(シリンダ本体など)の軸孔内周面に取り付けられる取付部11を有し、この取付部11の内周部にダストリップ21が軸方向一方(機器の外部O側)へ向けて設けられるとともにオイルリップ31が軸方向他方(機器の内部I側)へ向けて設けられている。オイルリップ31はその内周面に設定した摺動部32において機器における作動ロッドの外周面に摺動可能に密接し、これにより機器の内部Iから機器の外部Oへオイルが漏洩しないようこれをシールする。
【0024】
取付部11は、金属等剛材製の取付環12を有し、この取付環12の内周部にウレタンゴム等のゴム状弾性体13が被着され、このゴム状弾性体13によってダストリップ21およびオイルリップ31が一体成形されているが、金属等剛材製の取付環12は省略されても良く、この場合、取付部11はゴム状弾性体13のみよりなり、ダストシール1は全体としてもゴム状弾性体13のみよりなる単体の成形品とされる。
【0025】
ダストリップ21は、その基端部21aから先端部21bへかけて径寸法が徐々に縮小する形状に成形され、その基端部21aから先端部21bへかけて径寸法が徐々に縮小する傾斜面状の内周面21c、同じく基端部21aから先端部21bへかけて径寸法が徐々に縮小する傾斜面状の外周面21dおよび軸直角平面状の先端面21eを有し、このうちの内周面21cにおける先端面21e近傍位置に上記摺動部22が設けられている。
【0026】
また、この摺動部22の外周側に位置してダストリップ21の外周面21cに、ダストリップ21の放熱性を高めるための凹凸形状23が設けられている。
【0027】
この凹凸形状23は、ダストリップ21の円周方向に複数(多数)が並設された凹部24と、互いに隣り合う凹部24間に設けられたリブ状部位25との組み合わせよりなり、このような凹部24およびリブ状部位25がダストリップ21の全周に亙って設けられている。
【0028】
凹部24は図1(B)に示すように、軸方向一方からこれを見て略四角形ないし略扇形の形状でダストリップ21の外周面21dに開口している。また、凹部24は図1(A)に示すように、軸方向に対し略平行な向きの内部底面24aおよび軸方向に対し略直交する向きの内部側面24bを有し、上記したようにダストリップ21の外周面21dは傾斜面状に形成されているので、凹部24は断面略三角形状(直角三角形状)に形成されている。
【0029】
一方、リブ状部位25は図1(B)に示すように、軸方向一方からこれを見てダストリップ21の径方向に延設された突起として形成され、複数(多数)のリブ状部位25が放射状に配置されている。リブ状部位25の幅(円周方向幅)は凹部24の幅(円周方向幅)より小さく設定されている。また、リブ状部位25の外側表面はダストリップ21の外周面21cによって形成され、反対に云うとリブ状部位25の外側表面はダストリップ21の外周面21の一部をなし、よってリブ状部位25はダストリップ21の表面から外部へ突出することなくダストリップ21の見掛け上の体積内に収められている。
【0030】
上記構成を備えるダストシール1において、ダストリップ21はその内周面21cに設定した摺動部22において機器における作動ロッドの外周面に摺動可能に密接するため摺動作動に伴って発熱または蓄熱をしやすいところ、ダストリップ21の外周面21dに凹凸形状23が設けられているため、ダストリップ21の外周面21dの表面積が増大し、放熱面積が増大し、よってダストリップ21の放熱性を向上させることが可能とされている。したがってダストリップ21の材料熱劣化によるヘタリを低減することができ、ダストリップ21の耐ダスト性およびシール性を向上させることができる。また、凹凸形状23のうちの凸部としてのリブ状部位25が放熱板(フィン)として作用するため、放熱効果が高いものである。
【0031】
また、上記構成を備えるダストシール1によれば、ダストリップ21の成形材料は従来と同等で良く特に耐熱性に優れた材料を適用する必要がないため、材料費が高くなることがない。またダストリップ21の初期締め代を増加させる必要がないため、緊迫力が増大することがない。またスクレーパなどの別部品を組み合わせる必要がないため、ダストシール1の部品点数が増大することがない。
【0032】
第2実施例・・・
図2は、本発明の第2実施例に係るダストシール1を示している。当該実施例に係るダストシール1は、建設機械または産業機械における油圧シリンダなどの機器に装着され、機器の内部Iへ機器の外部Oからダストが侵入しないようダストをシールするものであって、シールリップの一種としてのダストリップ21を有し、このダストリップ21がその内周面に設定した摺動部22において機器における作動ロッドの外周面に摺動可能に密接することによりダストをシールする。
【0033】
また、ダストシール1は、機器のシールハウジング(シリンダ本体など)の軸孔内周面に取り付けられる取付部11を有し、この取付部11の内周部にダストリップ21が軸方向一方(機器の外部O側)へ向けて設けられるとともにオイルリップ31が軸方向他方(機器の内部I側)へ向けて設けられている。オイルリップ31はその内周面に設定した摺動部32において機器における作動ロッドの外周面に摺動可能に密接し、これにより機器の内部Iから機器の外部Oへオイルが漏洩しないようこれをシールする。
【0034】
取付部11は、金属等剛材製の取付環12を有し、この取付環12の内周部にウレタンゴム等のゴム状弾性体13が被着され、このゴム状弾性体13によってダストリップ21およびオイルリップ31が一体成形されているが、金属等剛材製の取付環12は省略されても良く、この場合、取付部11はゴム状弾性体13のみよりなり、ダストシール1は全体としてもゴム状弾性体13のみよりなる単体の成形品とされる。
【0035】
ダストリップ21は、その基端部21aから先端部21bへかけて径寸法が徐々に縮小する形状に成形され、その基端部21aから先端部21bへかけて径寸法が徐々に縮小する傾斜面状の内周面21c、同じく基端部21aから先端部21bへかけて径寸法が徐々に縮小する傾斜面状の外周面21dおよび軸直角平面状の先端面21eを有し、このうちの内周面21cにおける先端面21e近傍位置に上記摺動部22が設けられている。
【0036】
また、この摺動部22の外周側に位置してダストリップ21の外周面21cに、ダストリップ21の放熱性を高めるための凹凸形状23が設けられている。
【0037】
この凹凸形状23は、ダストリップ21の軸方向に複数(図では2本)が並設された凹部24と、互いに隣り合う凹部24間に設けられたリブ状部位25との組み合わせよりなり、このような凹部24およびリブ状部位25がダストリップ21の全周に亙って設けられている。
【0038】
凹部24は図2(B)に示すように、ダストリップ21の円周方向に延設された環状の溝として形成され、ダストリップ21の外周面21dに開口している。また、凹部24は図2(A)に示すように、軸方向に対し略平行な向きの内部底面24aおよび軸方向に対し略直交する向きの一対の内部側面24b,24cを有し、上記したようにダストリップ21の外周面21dは傾斜面状に形成されているので、凹部24は断面略台形状に形成されている。
【0039】
一方、リブ状部位25は図2(B)に示すように、ダストリップ21の円周方向に延設された環状の突起として形成されている。リブ状部位25の幅(径方向幅)は凹部24の幅(径方向幅)より小さく設定されている。また、リブ状部位25の外側表面はダストリップ21の外周面21cによって形成され、反対に云うとリブ状部位25の外側表面はダストリップ21の外周面21の一部をなし、よってリブ状部位25はダストリップ21の表面から外部へ突出することなくダストリップ21の見掛け上の体積内に収められている。
【0040】
上記構成を備えるダストシール1において、ダストリップ21はその内周面21cに設定した摺動部22において機器における作動ロッドの外周面に摺動可能に密接するため摺動作動に伴って発熱または蓄熱をしやすいところ、ダストリップ21の外周面21dに凹凸形状23が設けられているため、ダストリップ21の外周面21dの表面積が増大し、放熱面積が増大し、よってダストリップ21の放熱性を向上させることが可能とされている。したがってダストリップ21の材料熱劣化によるヘタリを低減することができ、ダストリップ21の耐ダスト性およびシール性を向上させることができる。また、凹凸形状23のうちの凸部としてのリブ状部位25が放熱板(フィン)として作用するため、放熱効果が高いものである。
【0041】
また、上記構成を備えるダストシール1によれば、ダストリップ21の成形材料は従来と同等で良く特に耐熱性に優れた材料を適用する必要がないため、材料費が高くなることがない。またダストリップ21の初期締め代を増加させる必要がないため、緊迫力が増大することがない。またスクレーパなどの別部品を組み合わせる必要がないため、ダストシール1の部品点数が増大することがない。
【0042】
上記第1実施例および第2実施例に共通するところとして、ダストリップ21の表面に熱放射塗料(図示せず、例えば商品名「ぺルクール」)を塗布するようにしても良く、この場合には凹凸形状23のリブ状部位25が放熱板(フィン)として作用するうえで熱放射塗料も放熱作用を奏するため、放熱効果を一層高めることができる。
【0043】
また、ダストリップ21の表面にDLC(ダイヤモンドライクコーティング)を施したり、あるいはダストリップ21の表面に放熱効果の高い充填剤を使用したりすることも考えられる。
【0044】
尚、これらの熱放射塗料の塗布やDLCの加工等はダストリップ21の外周面21dのみ(凹凸形状23の表面を含む)を対象としても良く、凹凸形状23の表面のみを対象としても良く、さらにはリブ状部位25の表面のみを対象としても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 ダストシール
11 取付部
12 取付環
13 ゴム状弾性体
21 ダストリップ
21a 基端部
21b 先端部
21c 内周面
21d 外周面
21e 先端面
22,32 摺動部
23 凹凸形状
24 凹部
24a 内部底面
24b,24c 内部側面
25 リブ状部位
I 機器内部側
O 機器外部側
図1
図2
図3
図4