(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、車両前部の側方には、車両の後方(車両の後側方を含む)を写すミラーが設けられており、運転者がミラーを見ることで、車両後方の状況を確認できるようになっている。
一方で、ミラーの代わりに撮像装置を取り付けて車両後方を撮像し、その撮像された画像をメーターパネル等に表示する、というシステムが近年研究されている。このシステムによれば、運転者が視線を前方から大きく外すことなく、車両後方の状況を確認できるようになる。
【0003】
ここで、下記特許文献1には、撮像装置とその撮像装置を収容するハウジングとを備え、車両後方を撮像する後方撮像装置が開示されている。
特許文献1の後方撮像装置では、ハウジングの後部に、有底筒状の凹部が形成されており、その凹部の底部に、撮像装置の胴体に保持されたレンズ、又はそのレンズを覆うレンズフィルターが配置されている。そして、撮像装置は、凹部の底部から車両後方を撮像している。以下、胴体の先端部に保持されるレンズやレンズフィルターを「透明部材」と称する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両走行時のハウジングの後方には、乱流が生じ易いという性質がある。ハウジングが流線形であっても同様である。
このため、後部に凹部が形成されたハウジングでは、ハウジングの外周面に付着した水滴が乱流に巻き込まれて凹部内に回り込んでしまう。そして、凹部の内周面に付着した水滴が凹部の底面側に移動すると、胴体に保持された透明部材上に水滴が付着し、画像中に水滴が写り込んでしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、画像中に水滴が写り込み難い後方撮像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する
第1発明は、移動体に取り付けられる後方撮像装置であって、中空部を有するとともに、後方に開口する凹部を後部に有するハウジングと、前記中空部に収容されるとともに前記移動体の後方を撮像する撮像装置と、を備え、前記撮像装置は、透明部材を保持する胴体を有し、前記胴体は、前記凹部の底部を貫通し、前記凹部の底面よりも後方へ突出し
ており、前記凹部の内面から前記胴体の後端の縁部までの距離は、前記胴体の突出長さ以上である。
【0008】
前記発明では、胴体に保持された透明部材が凹部の底面から離間し、凹部の内周面と透明部材とが連続していない。このため、凹部の底面に移動した水滴は、主として胴体の外周面に付着するようになり、透明部材に付着し難くなる。
【0009】
なお、凹部の内面から胴体の後端までの距離(L2)が胴体の突出長さ(L1)未満である場合には、凹部の内面を移動する水滴の径が突出長さ(L1)未満の場合でも、胴体の後端に付着するおそれがある。これに対し、凹部の内面から胴体の後端までの距離(L2)を胴体の突出長さ(L1)以上にしておけば、凹部の内面を移動する水滴の径が突出長さ(L1)を超えない限り、胴体の後端に付着することはない。
つまり、前記凹部の内面から前記胴体の後端の縁部までの距離は、前記胴体の突出長さ以上であることが好ましい。このようにすると、凹部の内面を移動する水滴が胴体の後端に付着し難くなり、ひいては、透明部材に水滴が付着し難くなる。
なお、凹部の「内面」とは、凹部の内周面と底面とを併せてなる面を指す。
【0010】
また、前記課題を解決する第2発明は、移動体に取り付けられる後方撮像装置であって、中空部を有するとともに、後方に開口する凹部を後部に有するハウジングと、前記中空部に収容されるとともに前記移動体の後方を撮像する撮像装置と、を備え、前記撮像装置は、透明部材を保持する胴体を有し、前記胴体は、前記凹部の底部を貫通し、前記凹部の底面よりも後方へ突出しており、前記胴体の突出長さは、前記ハウジングの外周面の後端縁と前記凹部の開口縁とで挟まれた環状領域の最大幅寸法よりも長い。
【0011】
前記ハウジングの外周面の後端縁と前記凹部の開口縁とで挟まれた環状領域(すなわち、ハウジングの後端面)に付着する水滴の径は、前記環状領域の幅寸法以下となる傾向がある。つまり、ハウジングの後端面を伝って凹部の内面に移動する水滴の径は、前記環状領域の幅寸法以下となる傾向にある。
よって、胴体の突出長さを前記環状領域の最大幅寸法よりも大きくしておけば、水滴が凹部の底面に達したとしても、胴体の後端に付着するする可能性は小さく、したがって、透明部材に水滴が付着し難くなる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、凹部の底面に水滴が移動しても水滴が透明部材に付着し難く、画像中に水滴が写り込み難くなっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、実施形態の説明では、「移動体」が四輪の車両(以下、単に「車両V」という)である場合を例に挙げて説明する。以下の説明においては、車両Vの前進方向を「前」、後進方向を「後」とする。また、「左右」は、車両Vの運転者を基準とする。
【0015】
図1、
図2に示すように、後方撮像装置1は、車両Vの左ドア50の左側方に配置されていて、左ドア50から左方に延出するステイ51(
図2参照)に固定されている。本実施形態の後方撮像装置1は、その外殻を構成するハウジング2と、後方を撮像する撮像装置3とを備えている。ハウジング2の後部には、凹部2aが形成されている。撮像装置3は、ハウジング2に収容されており、凹部2aの開口を通じて後方を撮像する。つまり、後方撮像装置1は、左ドア50の左側方から、車両Vの左側後方を撮像している。
なお、説明を省略するが、車両Vにも右ドアにも左右対称形に同様の後方撮像装置1が配置されている。また、本実施形態では、左右のドアに後方撮像装置1を配置する例を示すが、後方撮像装置1の配置位置は、車両側方であればどこに配置しても構わない。
【0016】
図3に示すように、ハウジング2は、撮像装置3を収容する空間を具備している。ハウジング2の後部には、後端面2bに対して前側に窪む凹部2aが形成されている。
【0017】
ハウジング2の後端面2bは、ハウジング2の外周面2cの後端縁と凹部2aの開口縁とで挟まれた部分にあり、後方から視て環状である。後端面2bの内側には、凹部2aの開口が形成されている。後端面2bの外周縁と内周縁には、衝突時の安全性を確保する観点から、R面(面取り)が形成されている。
【0018】
ハウジング2の外周面2cは、車両Vの前進時に発生する気流(前方から後方へ向かう気流)に対する抵抗が小さくなるとともに、ハウジング2の外周面2cの近傍で乱流が発生し難くなるような形状(いわゆる流線形)を呈している。本実施形態の外周面2cは、回転放物面状を呈していて、前方に向かうにつれて先細り形状になっている。
なお、ハウジング2は、下方が開放した上部ハウジング部材2dと、上方が開放した下部ハウジング部材2eと、を上下方向から組み合せることで構成されている。また、ハウジング2には、撮像装置3の取付座4が形成されている。
【0019】
図3に示すように、凹部2aの周壁部11は、球帯状を呈していて、後端面2bの内周縁から前方に延出している。撮像装置3の光軸を法線とする平面で周壁部11を切断したときの断面形状は円形である。周壁部11の径は、前方に向かうにつれて縮径している。
【0020】
凹部2aの底部12は、前後方向を垂線方向とする中空円板状を呈している。なお、底部12は、周壁部11の前端に滑らかに連続している部分を含む。
底部12の中央部にある中空部分は、前後方向に貫通する貫通孔13になっており、その貫通孔13に、撮像装置3の筒体6が挿通されている。なお、胴体6は、円筒状の部材であり、断面視で円形の外周面が前後方向に延在している。
貫通孔13の形状は、胴体6の外周面と同一形状(円形)に形成されていて、貫通孔13の孔壁と胴体6との隙間から、ハウジング2内に水滴が浸入しないようになっている。
【0021】
なお、周壁部11と底部12とは、レンズ7aの画角(すなわち、撮像装置3の最大撮像範囲)よりも径方向外側にある。つまり、レンズ7aは、周壁部11および底部12が映り込まないような位置に配置されている。
【0022】
撮像装置3は、ハウジング2内の取付座4に固定された本体部5と、本体部5から後方に延出する胴体6と、胴体6内に格納された複数のレンズ7(
図3、
図4では、複数のレンズ7のうち最後方のレンズ7aのみ図示)と、を備える。
なお、本実施形態では、取付座4に本体部5を固定しているが、撮像装置3の固定方法はこれに限定されるものではない。例えば、ハウジング2の内面に上下方向から延びる一対のリブを設け、その一対のリブに挟持するようにしてもよい。
【0023】
本体部5は、車両後方の映像を電気信号に変換するものであり、レンズ7からの光を光電変換可能なイメージセンサ(不図示)を備えている。本体部5は、取得した情報(電気信号)を車両Vの車内のモニタ等に送信する。これにより、撮像装置3で取得された映像がモニタに映し出され、運転者がモニタを見ることで左側後方の状況を確認することができる。
【0024】
胴体6は、前後方向に延びる円筒状の部材であり、底部12を貫通して底面12aに略直立(直交)している。胴体6は、前後方向に亘って外径が同一径で形成されている。
また、胴体6の後端6aには、レンズ7aが保持されている。ここで、胴体6によるレンズ7aの保持とは、胴体6がレンズ7aに当接しながらレンズ7aを支持する場合の他に、胴体6とレンズ7aとの間に他の部材が介在している場合も含む。
レンズ7aの球面は、胴体6の後端6aから後方に突出し、胴体6の外部に露出している。すなわち、レンズ7aの外表面は、ハウジング2の底部12よりも後方(凹部2aの開口側)に配置されていて、凹部2aの開口を通して車両後方に臨んでいる。
また、レンズ7aは、凹部2aの開口端(ハウジング2の後端面2b)よりも底部12側に配置されている。このため、レンズ7aは、凹部2aの周壁部11に囲まれており、凹部2aの開口端と底部12の間に配置されている。すなわち、撮像装置3の最も撮像側に配置されたレンズ7a又はレンズフィルター等の透明体は、凹部2aによって形成される空間内に配置されている。撮像装置3は、この透明体を通して撮像対象を撮像する。
なお、本実施形態に係るレンズ7aが特許請求の範囲に記載される「透明部材」に相当する構成である。ちなみに、撮像装置3の画角(
図3の破線C−C´が成す角度)は、90°となっている。
【0025】
凹部2aの内面と撮像装置3との関係をより詳細に説明する。なお、下記においては、周壁部11の表裏二面のうち、凹部2aに臨む面(ハウジング2の外部に露出する面)を「内周面11a」と称し、底部12の表裏二面のうち、凹部2aに臨む面を「底面12a」と称する。
図4に示すように、撮像装置3の胴体6は、凹部2aの底面12aよりも後方へ突出している。このため、胴体6に保持されたレンズ7aは、底面12aから離間しており、底面12aと連続していない。よって、内周面11aに付着した水滴が底面12a側に移動したとしても(
図3の矢印B2参照)、主として胴体6の側面に付着するようになる。
【0026】
胴体6の突出長さL1は、ハウジング2の外周面2cの後端縁と凹部2aの開口縁とで挟まれた環状領域の幅寸法(以下、後端面2bの幅寸法という。)L3よりも大きい。また、凹部2aの内面(内周面11aおよび底面12a)と胴体6の後端6aの縁部との距離L2は、底部12側から後方に向かうにつれて次第に大きくなっている。なお、距離L2は、後端面2bの幅寸法L3より大きい。
【0027】
次に、車両走行時における水滴の移動経路の例を説明する。
雨天時等に車両Vが走行すると、後方撮像装置1の前方から水滴が飛来し、ハウジング2の外周面2cに付着する。外周面2cに付着した水滴は、気流に押されてハウジング2の後端側へと移動する。
【0028】
ハウジング2の後端部に達した水滴の多くは、ハウジング2の後方へ飛散するが、一部の水滴は、ハウジング2の後端部周辺に発生した乱流(渦)に巻き込まれ、後端面2bを伝って凹部
2aの内周面11aに回り込む場合がある(
図3の矢印B1参照)。なお、後端面2bに付着する水滴の径は、後端面2bの幅寸法L3以下であることが多いため、内周面11aに付着する水滴の径も、後端面2bの幅寸法L3以下であることが多い。
【0029】
凹部2aの内周面11aに付着した水滴の一部は、乱流(渦)の影響によって底面12a側に移動するが(
図3の矢印B2参照)、底面12aから胴体6が突出しているので、底面12a側に移動した水滴は、主として胴体6の外周面に付着するようになる。
前述のとおり、後端面2bを伝って凹部2aの内周面11aに至る水滴の径は、後端面2bの幅寸法L3以下である場合が多い。この点を考慮し、本実施形態では、胴体6の突出長さL1を後端面2bの幅寸法L3よりも大きくしているので、水滴が底面12aに達したとしても、レンズ7aに水滴が付着する可能性は小さい。
また、本実施形態では、凹部2aの内面と胴体6の後端6aの縁部との距離L2が、後端面2bの幅寸法L3よりも大きいことから、水滴が底面12aに向けて移動する途中でレンズ7aに付着する可能性も小さい。
【0030】
また、凹部2aの底面12a側に移動した水滴および胴体6の外周面に付着した水滴は、乱流の影響が小さい低速走行時や停止時においては、重力の作用によって胴体6の下方側へと移動し(
図2の矢印B3参照)、さらに、凹部2aの下方側の内周面11aに沿って凹部2aの開口へ向かい、開口から排水されるようになる(
図2の矢印B4参照)。
また、胴体6が底面12aに対して略直立(直交)し、胴体6の外周面が水平方向に延びているので、水滴が胴体6の外周面に付着しても、胴体6の外周面を伝って後方に流れにくい。
【0031】
以上、実施形態に係る後方撮像装置1によれば、ハウジング2の外周面2cから凹部2a内に水滴が巻き込まれたとしても、水滴がレンズ7aに付着し難く、撮像装置3に撮像された画像中にも水滴が写り込み難くなっている。
【0032】
また、撮像装置3のレンズ7aは、ハウジング2の後端面2bよりも前方に位置している。つまり、レンズ7aは、凹部2aの奥に位置している。このようにすると、雨水やタイヤが跳ね上げる泥水などがレンズ7aを直撃し難くなる。
【0033】
なお、実施形態では、後方撮像装置1が搭載される移動体として、四輪の車両Vを挙げて説明しているが、本発明の適用範囲を限定する趣旨ではない。たとえば、四輪以上の車両にも本発明を適用することができるし、バーハンドル車両、鉄道車両などの車両の他に、船舶、飛行機などの移動体にも本発明を適用することができる。
【0034】
また、実施形態に係る胴体6では、外周面が断面視で円形である円筒状のものであったが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、胴体6の外周面が断面視で矩形状又は多角形状に形成されていてもよい。
【0035】
また、実施形態の撮像装置3は、レンズ7aの後方に何ら設けられていないが、レンズ7aの後方にレンズフィルターを備えたものを使用しても良い。なお、レンズフィルター等の透明な部材を撮像装置3の最も撮像面側(後方側)に備え、その透明な部材を通して後方を撮像する撮像装置3では、透明な部材が本発明における透明部材に相当する。