(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の配管防護装置は、配管の係止部材に、クランプ配管をなすクランプ配管部材の貫通孔を嵌入しているだけであり、配管が破断した場合、貫通孔からクランプ配管の外部に高温・高圧の流体が噴出することになる。このように、特許文献1に記載の配管防護装置は、流体の噴出を抑制することが困難であり、この結果、噴出した流体が配管周囲の構造物を破損させる影響や、流体の蒸気により配管周囲の機器類(電気機器など)に故障を生じさせる影響を与えるため、当該構造物や機器類を保護することが困難となる。
【0006】
また、配管を定着部に対して支持する係止部材の周囲に特許文献2に記載の配管防護装置を設けることで、配管の周りへの流体の噴出および配管の破断の進行を抑制できる。しかしながら、配置の制約、例えば、配管の係止部材の近傍にバルブ等の部材が設置されている場合や空間に余裕がない場合、特許文献2に記載の配管防護装置を設けることができない。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、配管の周りへの流体の噴出および配管の破断の進行を抑制することのできる配管防護装置および原子力設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、定着部に固定された固定部に連結された配管を防護する配管防護装置であって、前記配管の前記固定部に固定された位置から直管で延在している部分に固定された支持部と、一方が前記支持部に支持され、他方が前記定着部に対して支持され、前記配管の延在方向に伸縮可能な向きで配置された緩衝器と、を有し、前記緩衝器は、前記配管の延在方向の振動を減衰させ、前記支持部側の端部が、前記配管が前記固定部から離れる方向へ移動可能な距離が閾値距離となることを特徴とする。
【0009】
この配管防護装置によれば、配管の固定部に固定されている部分の近傍、つまり配管の固定部と支持部との間の部分が破断した場合、緩衝器により、破断した配管の固定部に固定されていない側の部分が、固定部に固定されている側から離れる距離を閾値距離以下とすることができる。これにより、配管の破断した部分が広がることを抑制でき、配管を流れる流体が配管の外部に噴出する量の増加を抑制することができる。また、配管防護装置は、固定部の周辺に設置していなくても、噴出する量の増加を抑制することができる。また、緩衝器で振動を抑制することで、破断発生時の衝撃的な荷重により生じる振動を抑制することができ、破断の進行を抑制することができる。さらに、配管の周りへの流体の噴出を抑制することで、配管と安全上重要な設備とを物理的に分離するための区画化の必要がなく、設備の建屋形状に影響を及ぼす事態を防ぐことができる。
【0010】
ここで、前記緩衝器は、スナバであることが好ましい。この配管防護装置によれば、緩衝器をスナバとすることで、熱膨張する配管に対しても設置が可能であり、破断発生時の衝撃的な荷重により生じる振動を抑制することができ、その後の配管の移動量を的確に閾値距離とすることができる。
【0011】
また、前記緩衝器と前記定着部との間に設置され、前記緩衝器を前記定着部に対して固定する架構構造を有することが好ましい。この配管防護装置によれば、配管の固定部に固定されている部分から直管上に伸びている任意の位置に設置することができる。
【0012】
また、前記緩衝器は、前記配管の周囲に複数配置されていることが好ましい。この配管防護装置によれば、破断発生時の衝撃的な荷重により生じるモーメントを抑制することができ、その後の配管の移動量を的確に閾値距離とすることができる。
【0013】
また、前記緩衝器は、前記配管の直径を2rとし、前記配管に流体が流れている状態において、前記配管が前記固定部から離れる方向への前記支持部側の端部の移動可能距離をd
1とした場合、d
1≦(r/20)となることが好ましい。この配管防護装置によれば、配管から噴出する流体の量を低減することができる。
【0014】
また、前記緩衝器は、前記配管に流体が流れている状態において、前記配管が前記固定部から離れる方向への前記支持部側の端部の移動可能距離が10mm以下であることが好ましい。この配管防護装置によれば、配管から噴出する流体の量を低減することができる。
【0015】
上述の目的を達成するために、本発明は、原子炉で生成された熱により高温・高圧の流体を発生させて配管で送り、当該流体を利用する原子力設備であって、前記配管に配置された上記のいずれかに記載の配管防護装置を有することを特徴とする。
【0016】
この原子力設備によれば、配管防護装置により、配管から噴出した流体が配管の周りの設備内構造物や機器類に影響を与える事態を防ぎ、当該構造物や機器類を保護することができる。このため、設備内構造物には、配管ホイップに耐える構造や、配管から噴出した流体を遮るジェットバリアを設置する必要がなく、構造物側に大きな荷重の作用をなくすことができる。さらに、配管の周りへの流体の噴出を抑制することで、配管と安全上重要な設備とを物理的に分離するための区画化の必要がなく、設備の建屋形状に影響を及ぼす事態を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、係止部材の周囲に配管を保護する構造が設置できない場合でも、配管の周りへの流体の噴出および配管の破断の進行を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
図1は、本実施形態に係る原子力設備の一例を示す概略構成図である。
図1に示す原子力設備は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。この原子力設備は、原子炉格納容器100内において、原子炉圧力容器101、加圧器102、蒸気発生器103および一次冷却水ポンプ104が、一次冷却水管105により順次接続されて、流体である一次冷却水の循環経路が構成されている。
【0021】
原子炉圧力容器101は、内部に炉心である複数の燃料集合体101aを密閉状態で格納するもので、燃料集合体101aが挿抜できるように、容器本体101bとその上部に装着される容器蓋101cとにより構成されている。容器蓋101cは、容器本体101bに対して開閉可能に設けられている。容器本体101bは、上方が開口し、下方が半球形状とされて閉塞された円筒形状をなし、上部に、一次冷却水としての軽水を給排する入口側管台101dおよび出口側管台101eが設けられている。出口側管台101eは、蒸気発生器103の入口側水室103aに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口側管台101dは、蒸気発生器103の出口側水室103bに連通するように一次冷却水管105が接続されている。
【0022】
蒸気発生器103は、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように各端部が管板103dに支持されている。そして、入口側水室103aは、入口側の一次冷却水管105が接続され、出口側水室103bは、出口側の一次冷却水管105が接続されている。また、蒸気発生器103は、管板103dによって区画された上部側の上端に、出口側の二次冷却水管106aが接続され、上部側の側部に、入口側の二次冷却水管106bが接続されている。
【0023】
また、原子力設備は、蒸気発生器103が、原子炉格納容器100外で二次冷却水管106a,106bを介して蒸気タービン107に接続されて、流体である二次冷却水の循環経路が構成されている。
【0024】
蒸気タービン107は、高圧タービン108および低圧タービン109を有すると共に、発電機110が接続されている。また、高圧タービン108および低圧タービン109は、湿分分離加熱器111が、二次冷却水管106aから分岐して接続されている。二次冷却水管106aは、蒸気発生器103から高圧タービン108および低圧タービン109に至る途中に蒸気隔離弁(開閉弁)119が設けられている。蒸気隔離弁119は、非常時などに閉塞されて蒸気発生器103から高圧タービン108および低圧タービン109に至る蒸気が隔離される。また、低圧タービン109は、復水器112に接続されている。この復水器112は、二次冷却水管106bに接続されている。二次冷却水管106bは、上述したように蒸気発生器103に接続され、復水器112から蒸気発生器103に至り、復水ポンプ113、低圧給水加熱器114、脱気器115、主給水ポンプ116、高圧給水加熱器117および主給水弁(開閉弁)118が設けられている。
【0025】
従って、原子力設備では、一次冷却水が原子炉圧力容器101にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換後の冷却した一次冷却水は、一次冷却水管105を介して一次冷却水ポンプ104側に回収され、原子炉圧力容器101に戻される。一方、熱交換により蒸気となった二次冷却水は、蒸気タービン107に供給される。蒸気タービン107に係り、湿分分離加熱器111は、高圧タービン108からの排気から湿分を除去し、さらに加熱して過熱状態とした後に低圧タービン109に送る。蒸気タービン107は、二次冷却水の蒸気により駆動され、その動力が発電機110に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、復水器112に排出される。復水器112は、取水管112aを介してポンプ112bにより取水した冷却水(例えば、海水)と、低圧タービン109から排出された蒸気とを熱交換し、当該蒸気を凝縮させて低圧の飽和液に戻す。熱交換に用いられた冷却水は、排水管112cから排出される。また、凝縮された飽和液は、二次冷却水となり、復水ポンプ113によって二次冷却水管106bを介して復水器112の外部に送り出される。さらに、二次冷却水管106bを経る二次冷却水は、低圧給水加熱器114で、例えば、低圧タービン109から抽気した低圧蒸気により加熱され、脱気器115で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去された後、主給水ポンプ116により送水され、高圧給水加熱器117で、例えば、高圧タービン108から抽気した高圧蒸気により加熱された後、蒸気発生器103に戻される。ここで、二次冷却水を蒸気発生器103に給水する系統を主給水系という。主給水系は、蒸気発生器103の二次冷却水の水位を維持するため、主給水ポンプ116や主給水弁118などが制御される。
【0026】
次に、
図2から
図5を用いて、原子力設備の配管に設置する配管防護装置について説明する。
図2は、本実施形態に係る配管防護装置の部分断面側面図である。
図3は、本実施形態に係る配管防護装置の上面図である。
図4は、本実施形態に係る配管防護装置の機能を説明するための説明図である。
図5は、本実施形態に係る配管防護装置の機能を説明するための説明図である。
【0027】
本実施形態の配管防護装置14は、上述したような原子力設備に適用される。例えば、配管防護装置14は、原子力設備において、流体である二次冷却水が流通される配管としての二次冷却水管106a,106bに配置される。具体的に、二次冷却水管106aにおいて、配管防護装置14は、原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された直後の部分、または機器(蒸気発生器103,高圧タービン108,低圧タービン109,湿分分離加熱器111,蒸気隔離弁119)との溶接接続部分に配置される。また、二次冷却水管106bにおいて、配管防護装置14は、原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された直後の部分、または機器(蒸気発生器103,復水器112,復水ポンプ113,低圧給水加熱器114,脱気器115,主給水ポンプ116,高圧給水加熱器117,主給水弁118)との溶接接続部分に配置される。なお、配管防護装置14は、原子力設備において、流体である一次冷却水が流通される配管としての一次冷却水管105における各溶接接続部分に配置されてもよい。また、本実施形態に係る配管防護装置14は、原子力設備に限らず、高温・高圧の流体が流通される配管に適用されるものである。また、流体とは、高温水などの液体や、蒸気などの気体を含む。
【0028】
図2及び
図3に示すように、配管10は、流通流体Rが所定の方向、本実施形態では、
図2の矢印で示す方向に流れる管路である。配管10は、内周面の直径が2r、つまり半径がrとなる断面円形の管路である。なお、配管10の断面形状は円に限定されない。アンカ12は、配管10を定着部に対して固定する機構(固定部)である。定着部は、地面、土台、筐体等、配管10を含む施設を支持する部分であり、実質的に固定され、動かない部分である。
【0029】
配管防護装置14は、配管10のアンカ12が固定されている部分と、直管でつながっている部分に設けられている。つまり、配管10は、直管となる部分、配管10の中心線が直線となる部分に、アンカ12と配管防護装置14とが設置されている。配管10は、アンカ12に連結されて固定され、配管防護装置14に支持されている。また、配管防護装置14は、配管10の流通流体Rの流れ方向において、アンカ12よりも下流側に設置されている。配管防護装置14は、
図2及び
図3に示すように、架構20と、クランプ部22と、ラグ部24と、スナバ28と、を有する。
【0030】
架構20は、配管10の横、つまり、配管10の延在方向に直交し、かつ水平方向に平行な方向の配管に隣接する位置の、2か所に設置されている。架構20は、梁30と梁32とを有する。梁30は、定着部に対して直交する方向が延在方向(長手方向)となる向きで設置されており、一方の端部が定着部に固定されている。梁32は、定着部に対して直交する方向に対して鋭角に傾斜した方向が延在方向(長手方向)となる向きで設置されており、一方の端部(鉛直方向下側の端部)が定着部に固定され、他方の端部(鉛直方向上側の端部)が梁30に固定されている。また、梁32は、梁30のアンカ12側に配置されている。このように、架構20は、梁30と梁32でトラス構造を形成している。
【0031】
クランプ部22は、配管10の所定位置を挟持し、配管10の所定位置に固定されている。クランプ部22は、架構20よりもアンカ12から遠い位置の部分の配管10に固定されている。つまり、クランプ部22は、架構20のアンカ12側とは反対側に配置されている。クランプ部22は、ライザークランプであり、水平方向の端部に、配管10から離れる方向に突出した突起(フランジ)が形成されている。
【0032】
ラグ部24は、クランプ部22の架構20側に配置され、溶接等により配管10に固定されている。ラグ部24は、クランプ部22と連結されている。ラグ部24は、配管10に固定されているクランプ部22が配管10に沿って配管10の延在方向に移動した場合、クランプ部22の移動を規制する。つまり、ラグ部24は、配管10に対してクランプ部22がずれないようにクランプ部22を支持している。
【0033】
スナバ28は、配管10の横、つまり、配管10の延在方向に直交し、かつ水平方向に平行な方向の配管に隣接する位置の、2か所に設置されている。スナバ28は、架構20と、クランプ部22との間に配置され、架構20とクランプ部22とに連結されている。
【0034】
スナバ28は、周波数が高い振動を減衰し、かつ、周波数の低い、つまりゆっくりした荷重に追従して伸縮する特性を備える緩衝器である。スナバ28は、シリンダ40と、ロッド42と、ピストン44と、連結部46と、を有する。シリンダ40は、内部に作動油が充填された筒である。シリンダ40は、配管10の延在方向が筒の延在方向となる向きで配置されている。シリンダ40は、筒形状の一方の端部が架構20の梁30に固定されている。ロッド42は、シリンダ40の架構20に固定されていない側の端面からシリンダ40に挿入されている。ロッド42は、棒状の部材であり、配管10の延在方向が棒の延在方向となる向きで配置されている。ピストン44は、ロッド42の一方の端部(シリンダ40に挿入されている側の端部)に固定されている。ピストン44は、シリンダ40の内部にシリンダ40に対して摺動可能な状態で配置されている。
図2では、ピストン44が、クランプ部22側に配置されており、ピストン44の端面と、シリンダ40のクランプ部22側の端面との距離がd
1となる。連結部46は、ピストン44の他方の端部(シリンダ40に挿入されていない側の端部)とクランプ部22とを連結する。連結部46は、軸受等を有し、ピストン44がクランプ部22に対して回動可能な状態で、ピストン44とクランプ部22とを連結させている。
【0035】
スナバ28は、以上のように、シリンダ40が架構20に固定され、ロッド42及びピストン44が連結部46、クランプ部22を介して配管10に連結されている。また、スナバ28は、ロッド42及びピストン44がシリンダ40に対して配管10の延在方向に移動可能な状態で配置されている。また、スナバ28は、ピストン44がシリンダ40に対して移動すると、シリンダ40に充填されている作動油がピストン44の一方から他方に向かって移動し、ピストン44を移動させない方向の力が作用する。つまり、スナバ28は、ピストン44とシリンダ40との間に発生する力、つまり定着部に対して配管10が移動しようとする力を減衰する。また、スナバ28は、シリンダ40に対してピストン44が移動し、シリンダ40の筒の延在方向の端面とピストン44とが接触すると、当該移動している方向において、それ以上ピストン44が移動できなくなる。つまり、配管10の延在方向におけるシリンダ40と連結部46との距離がそれ以上伸びなく、または縮まなくなる。
【0036】
配管防護装置14は、
図2に示すように、配管10と定着部との間を、クランプ部22及びラグ部24とスナバ28と架構20とで繋いでいる。これにより、定着部に対して配管10が振動すると、定着部と配管10とを繋いでいる各部のばね剛性及び減衰、主にスナバ28のばね剛性及び減衰によって、配管10の振動を低減することができる。また、配管防護装置14は、定着部に対して配管10がゆっくり移動するとスナバ28のピストン44とシリンダ40との相対位置が変化し、配管防護装置14の架構20とクランプ部22との相対位置も追従して変動する。
【0037】
また、配管防護装置14は、ピストン44の端面とシリンダ40のクランプ部22側の端面との距離d1が示すように、移動可能距離に制限がある。このため、スナバ28は、シリンダ40に対してピストン44が移動し、シリンダ40の筒の延在方向の端面とピストン44とが接触すると、当該移動している方向において、それ以上ピストン44が移動できなくなる。つまり、配管10の延在方向におけるシリンダ40と連結部46との距離がそれ以上伸びなく、または縮まなくなる。したがって、配管防護装置14は、シリンダ40と連結部46との距離が変化しなくなると、架構20とクランプ部22との距離も変化しなくなる。
【0038】
ここで、配管10は、高温の流通流体Rが流れる。このため、流通流体Rが流れない状態から流通流体Rが流れる状態に変化すると、つまり配管10は設置されているシステムが稼働すると、配管10は、アンカ12を基点として伸びていく。したがって、配管防護装置14は、
図4に示すように、設置時、流通流体Rが流れない状態では、ピストン44の端面とシリンダ40のクランプ部22側の端面との距離をd
2とする。ここで、距離d
2は、距離d
1よりも長い距離である。
【0039】
配管防護装置14は、
図4に示すような位置関係で設置した後、配管10に高温の流通流体Rが流れると、配管10の伸びに追従して、架構20に対してクランプ部22が配管10の延在方向に移動する。その後、配管10の温度が定常状態となると、
図2に示すように、ピストン44の端面とシリンダ40のクランプ部22側の端面との距離がd
1となる。
【0040】
さらに、配管防護装置14は、
図5に示すように、配管10がアンカ部12の近傍、具体的には、アンカ部12とクランプ部22との間で破断した場合、作動流体が気化した噴出流体Sが破断部分から噴出する。配管防護装置14は、噴出流体Sが配管10から噴出することで、配管10の破断部よりも下流側、クランプ部22側の部分に生じる衝撃的な荷重をスナバ28で減衰される。これにより、噴出流体Sが噴射されることで、配管10の破断部よりも下流側、クランプ部22側の部分に生じる力で、配管10が振動することを抑制でき、配管10の破断部よりも下流側の部分が、より下流側に移動することを抑制することができる。また、噴出流体Sが配管10から噴出することで、配管10の破断部よりも上流側、アンカ12側の部分に生じる衝撃的な荷重は、アンカ12によって吸収される。
【0041】
また、配管防護装置14は、噴出流体Sが配管10から噴出することで、配管10の破断部よりも下流側、クランプ部22側の部分に生じる力により、徐々に配管10の破断部よりも上流側の部分に対して、下流側の部分がより下流側に移動する。ここで、配管防護装置14は、スナバ28の下流側に移動できる範囲、つまり移動可能範囲が、距離d
1となる。つまり、配管防護装置14は、スナバ28のピストン44は、下流側に距離d
1移動すると、シリンダ40の延在方向の端面と接触する。このため、ピストン44は、シリンダ40に接触している位置から下流側に移動することができない。ピストン44が移動できないことで、ロッド42、クランプ部22も架構20に対して、下流側に移動できなくなり、架構20に対して、配管10の破断部よりも下流側の部分がより下流側に移動できなくなる。したがって、配管防護装置14は、配管10が破断した場合も、配管10の破断部よりも下流側が下流側に移動する距離を閾値距離、具体的には距離d
1に対応する距離とすることができる。
【0042】
このように、配管防護装置14は、配管10のアンカ12に固定されている部分の近傍、つまり配管10のアンカ12とクランプ部22との間の部分が破断した場合、スナバ28により、破断した配管10のアンカ12に固定されていない側の部分が、アンカ12に固定されている側から離れる距離を閾値距離以下とすることができる。これにより、配管10の破断した部分が広がることを抑制でき、配管10を流れる流体が配管10の外部に噴出する量の増加を抑制することができる。また、配管防護装置14は、アンカ12の周辺に設置していなくても、噴出する量の増加を抑制することができる。
【0043】
また、配管防護装置14は、スナバ28で振動を抑制することで、破断発生時の衝撃的な荷重により生じる振動を抑制することができ、破断の進行を抑制することができる。さらに、配管10の周りへの流体の噴出を抑制することで、配管10と安全上重要な設備とを物理的に分離するための区画化の必要がなく、設備の建屋形状に影響を及ぼす事態を防ぐことができる。
【0044】
また、本実施形態の原子力設備は、原子炉で生成された熱により高温・高圧の流体を発生させて配管10(二次冷却水管106a,106bや一次冷却水管105など)で送り、当該流体を利用する原子力設備であって、配管10に、上述した配管防護装置14が適用されることが好ましい。
【0045】
この原子力設備によれば、配管防護装置14により、配管10から噴出した流体が配管10の周りの設備内構造物や機器類に影響を与える事態を防ぎ、当該構造物や機器類を保護することができる。このため、設備内構造物には、配管ホイップに耐える構造や、配管10から噴出した流体を遮るジェットバリアを設置する必要がなく、構造物側に大きな荷重の作用をなくすことができる。さらに、配管10の周りへの流体の噴出を抑制することで、配管10と安全上重要な設備とを物理的に分離するための区画化の必要がなく、設備の建屋形状に影響を及ぼす事態を防ぐことができる。
【0046】
スナバ28は、配管10の直径を2rと、配管10に流体が流れている状態において、配管10がアンカ(固定部)12から離れる方向へのクランプ部(支持部)22側の端部の移動可能距離、つまり距離d
1との関係が、d
1≦(r/20)となることが好ましい。これにより、配管10の破断時に配管10から漏れる噴出流体Sの量を確実に少なくすることができる。
【0047】
スナバ28は、配管10の直径を2rと、配管10に流体が流れている状態において、配管10がアンカ(固定部)12から離れる方向へのクランプ部(支持部)22側の端部の移動可能距離、つまり距離d
1を10mm以下とすることが好ましい。これにより、配管の破断時に配管10から漏れる噴出流体Sの量を確実に少なくすることができる。
【0048】
また、本実施形態の配管防護装置14は、スナバ28を配管10の周方向に2つ設けたが、スナバ28の数は、特に限定されない。配管防護装置14は、スナバ28を1つのみ備えてもよいし、3つ以上備えていてもよい。スナバ28は、配管10の周方向に均等に、つまり、一定角度毎に配置することが好ましい。
【0049】
ここで、配管防護装置14は、緩衝器として油圧スナバ28を用いたが本発明はこれに限定されない。配管防護装置14は、緩衝器として、配管の延在方向の振動(高い周波数の振動)を減衰させ、支持部側の端部が、配管10がアンカ12から離れる方向へ移動可能な距離が閾値距離となる機能を備えている各種機構を用いることができる。例えば、緩衝器としては、機械式スナバ、油圧式のダンパを用いることができる。
【0050】
配管防護装置14の架構20の構造は、特に限定されず、スナバ28を支持し、かつ、スナバ28から付与される荷重に対する耐久性を備えている構造であればよい。例えば、架構20は、剛性が高く、定着部に対して強固に固定されていれば梁30のみとしてもよい。
【0051】
[他の実施形態]
図6は、他の実施形態に係る配管防護装置の部分断面側面図である。
図7は、他の実施形態に係る配管防護装置の上面図である。なお、
図6及び
図7に示す実施形態の配管防護装置14は、上述した実施形態1の配管防護装置14に対して配管10が架構20を設けずに定着部120に固定されている点が異なり、スナバ28が固定されている構成の他の構成は同様である。従って、以下に説明する
図6及び
図7の実施形態において、
図1から図の実施形態と同等の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
図6及び
図7に示す配管防護装置14は、ロッド42が挿入されていない側のシリンダ40の端部が、定着部120と対面している。定着部120は、ロッド42が挿入されていない側のシリンダ40の端面と対面する部分が他の部分に対して隆起した壁となっており、シリンダ40の端面と対面する壁面が形成されている。固定金具121は、定着部120の壁面に固定され、ロッド42が挿入されていない側のシリンダ40の端部に連結されている。また、定着部120は、配管10が通過する部分に穴124が形成されている。配管10は、定着部120の穴124に挿入されている。配管防護装置14は、
図6及び
図7に示すように、架構20を設けない構成として、上記と同様の効果を得ることができる。配管防護装置14は、直接または他の実質的に剛体とみなせる部材を介して、スナバ28の一方が定着部120に対して固定され、他方が配管10に対して固定されることで、配管10に対して追従して移動し、かつ、許容範囲以上の移動を規制することができ、上述したように配管10が破断した場合に噴出流体Sが増加することを抑制できる。
【0053】
図8は、他の実施形態に係る配管防護装置の部分断面側面図である。なお、
図8に示す実施形態の配管防護装置214は、上述した実施形態1の配管防護装置14に対して、スナバと架構の位置関係が異なる。従って、以下に説明する
図8の実施形態において、
図1から
図3の実施形態と同等の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
配管防護装置214は、
図8に示すように、架構220と、クランプ部222と、ラグ部226と、スナバ228と、を有する。なお、架構220と、クランプ部222と、ラグ部226と、スナバ228とは、配置されている向きが異なるのみで基本的な構造は、架構20と、クランプ部22と、ラグ部24と、スナバ28と同様である。
【0055】
架構220は、配管10の横、つまり、配管10の延在方向に直交し、かつ水平方向に平行な方向の配管に隣接する位置の2か所に設置されている。架構220は、梁230と梁232とを有する。梁230、232は、設置されている向き以外は梁30、32と同様である。梁232は、梁230のアンカ12側とは反対側に配置されている。
【0056】
クランプ部222は、架構220よりもアンカ12側の部分の配管10に固定されている。ラグ部226は、クランプ部222の架構220側とは反対側に配置され、溶接等により配管10に固定されている。ラグ部226は、クランプ部22と連結されている。ラグ部226は、配管10に対してクランプ部222がずれないようにクランプ部222を支持している。
【0057】
スナバ28は、配管10の横、つまり、配管10の延在方向に直交し、かつ水平方向に平行な方向の配管に隣接する位置の2か所に設置されている。スナバ228は、架構220と、クランプ部222との間に配置され、架構220とクランプ部222とに連結されている。
【0058】
スナバ228は、シリンダ240と、ロッド242と、ピストン244と、連結部246と、を有する。シリンダ240は、配管10の延在方向が筒の延在方向となる向きで配置されている。シリンダ240は、筒形状の一方の端部が架構220の梁230に固定されている。ロッド242は、シリンダ240の架構220に固定されていない側の端面からシリンダ240に挿入されている。ピストン244は、ロッド242の一方の端部(シリンダ240に挿入されている側の端部)に固定されている。
図8では、ピストン244が、架構220側に配置されており、ピストン244の端面と、シリンダ240の架構220側の端面との距離がd
1となる。連結部246は、ピストン244の他方の端部(シリンダ240に挿入されていない側の端部)とクランプ部222とを連結する。連結部246は、軸受等を有し、ピストン244がクランプ部222に対して回動可能な状態で、ピストン244とクランプ部222とを連結させている。
【0059】
配管防護装置214は、架構220よりもアンカ12側にクランプ部222を設けている。配管防護装置214は、配管10のアンカ12の近傍が破断した場合、クランプ部222が、配管10とともに架構220に近づく方向に移動する。この時、クランプ部222とともに移動するピストン244が距離d
1移動するとシリンダ240の架構220が側の端面と接触し、それ以上架構220側に移動できない状態となる。これにより、クランプ部222が支持している配管10が、アンカ12から離れることができる距離を所定距離とすることができる。以上より、配管防護装置214の配置を異なる配置とした場合も配管10の破断時のスナバ(緩衝器)の移動距離が閾値以下となるように移動を規制できる配置であれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
なお、上述した原子力設備は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)が用いられたものを説明したが、この限りではない。例えば、図には明示しないが、沸騰型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)が用いられた原子力設備であってもよく、上述した配管防護装置14は、沸騰型原子炉にて発生した蒸気や液体を通過させる配管についても適用することができる。