(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記電源をオンするより前に測定された前記取得環境情報に基づいて前記条件を制御した後は、前記取得環境情報を用いず、前記検知環境情報に基づいて前記条件を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
前記制御手段は、前記電源をオンしてから所定時間経過した場合、前記取得環境情報を用いず、前記検知環境情報に基づいて、前記条件を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
(プリンタの全体構成)
図1は、本発明の画像形成装置の実施形態に係るレーザビームを用いたプリンタの概略構成を示す図である。
【0020】
プリンタ100は、OPCやa−Si等の光導電層を有する像担持体としての感光体ドラム1を備えている。感光体ドラム1は、プリンタ100の装置本体101によって回転自在に支持されており、メインモータ(不図示)によって矢印Aの方向に所定の速度で回転駆動される。
【0021】
感光体ドラム1の周囲には、感光体ドラム1を均一に帯電させる帯電ローラ2が設けられている。清掃ブラシ40は、帯電ローラ2に所定の圧力で押圧され、帯電ローラ2からの駆動入力で回転することにより帯電ローラ2の表面を清掃する。レーザースキャナ3は、感光体ドラム1の表面をレーザ光により露光し、静電潜像を形成する。現像装置4は、現像スリーブ4aにより感光体ドラム1の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナーにより顕像化する。転写ローラ5は、紙等のシート状の記録材Pに感光体ドラム1上に形成されたトナー画像を転写する。クリーニング装置6は、感光体ドラム1上に残留する未転写トナーをクリーニングブレード6aによって回収する。
【0022】
装置本体101の下部には、記録材Pを収納した給紙カセット7が設けられており、感光体ドラム1の上部には定着装置8が設けられている。装置本体101の背面には、画像形成動作等を制御する制御基板9と帯電ローラ2や現像装置4等に高圧を印加する高圧基板10が配置されている。制御基板9には、画像形成動作等を実行する指令を出すCPU9a、定着の温度制御等を実行するCPU9b、プログラム等が格納されたメモリ9cが搭載されている。高圧基板10には、帯電ローラ2に、帯電のための電圧を印加する帯電印加電源10aと、現像スリーブ4aに、現像のための電圧を印加する現像印加電源10bと、転写ローラ5に転写のための電圧を印加する転写印加電源10cとが設けられている。プリンタの動作は、制御基板9のCPU9a、9bがメモリ9cから必要なプログラム、データを読み出して各種制御を実行することによって実現される。
【0023】
なお、定着装置8には、定着装置8内の部品を冷却するための冷却ファン13が設けられており、CPU9bにより制御される。
【0024】
また、プリンタ100には、プリンタ100の統括的な動作を制御する中央制御装置201が設けられている。また、プリンタ100には、送受信装置204(環境情報取得手段)が設けられており、ルータ207に接続されたネットワークと中央制御装置201との間で通信を行うことができるようになっている。
【0025】
(定着装置の構成)
図2は、定着装置8の構成を示す断面図である。本実施形態では、エンドレスフィルムを用いたオンデマンド定着装置を例として挙げるが、他の構成の定着装置を用いることも可能である。
【0026】
定着フィルム10と加圧ローラ11は、加圧装置(不図示)により加圧され、定着ニップ部Nfを形成している。加圧ローラ11は、図示しない駆動装置によって回転駆動され、定着フィルム10を摺動させ、記録材Pを矢印Bの方向へ搬送させる。ヒータ12はヒータステイ15により支持され、定着ニップ部Nfを直接加熱している。ヒータ12の温度はサーミスタ14(温度検出手段)により常にモニターされている。
【0027】
例えば、次のように、サーミスタ14から得られた温度データを元に、ヒータ12の制御温度が決められている。すなわち、印刷ジョブが開始された場合、その時のサーミスタ14の検知温度を読み取り、100°C以上の検知温度であれば、前の印刷ジョブの直後で定着装置8が温まっていると判断し、ヒータ12の制御温度を5°C下げるといった制御がなされている。
【0028】
なお、給紙カセット7に収納されている記録材Pは、感光体ドラム1と転写ローラ5との間の転写ニップNtにおいて、トナーの画像が形成され、定着フィルム10と加圧ローラ11との間の定着ニップ部Nfにおいて定着処理がなされる。その後、記録材Pは、プリンタ100の外へ排出される。
【0029】
(中央制御装置と通信ネットワークの構成)
図3は、プリンタ100に設けられた中央制御装置201と、プリンタ100に接続される通信ネットワークの構成を示すブロック図である。
【0030】
同図に示すように、中央制御装置201は、プリンタ100の各部の動作を制御する制御部202と、温度、湿度等の環境情報を検知する環境検知部205と、プリンタ100の内部環境の状態を判別する環境判別部203とを有している。また、中央制御装置201には、環境検知部205に異常が無いか否かを検知する異常検知部206が設けられている。
【0031】
なお、ルータ207には、インターネット等の外部ネットワーク208と会社等の内部イントラネット209とが接続されている。
【0032】
さらに、外部ネットワーク208には、各地域の月日及び時間毎の温湿度データがデータベースに格納されて、外部からアクセスがあると、特定の月日の特定の時間帯の温湿度データを提供することができる(送信可能である)温湿度データベースサーバ300(送信手段)が接続されている。
【0033】
また、制御部202には、時計機能を有するタイマ210が接続されており、時刻を取得することが出来るようになっている。このタイマは、プリンタ100の電源がオフになっている場合でも、内部のバッテリーにより月日及び時間のカウント動作を続けることができるようになっている。
【0034】
プリンタ100の電源がオンされると、制御部202から、環境判別部203、送受信装置204、ルータ207、外部ネットワーク208を介して温湿度データベースサーバ300にアクセスする。そして、プリンタ100が置かれている地域を示す情報及び日付時間を示す情報を送信して、その地域、日付、時間に対応する温湿度データを取得する。
【0035】
この地域を示す情報は、プリンタ100の操作パネル等からユーザが地域を入力することにより地域に対応して割り振られるようになっている。なお、GPS(Global Positioning System)の受信機を内蔵し、この受信機からGPSによる位置情報を取得して送るようにしても良い。また、プリンタ100が接続しているインターネットのIPアドレスにより温湿度データベースサーバ300がプリンタ100の置かれている位置を検出するようにしてもよい。
【0036】
また、上述の説明では、プリンタ100にタイマ210を設けて、日付、時間をプリンタ100から温湿度データベースサーバ300に送信するようにしている。しかし、プリンタ100側からは地域を示す情報のみを送信し、温湿度データベースサーバ300側で日付、時刻等を管理し、プリンタ100からアクセスがあった日付及び時刻から一定の時間帯の温湿度データを送出するようにしても良い。
【0037】
一方、環境検知部205には、プリンタ100の内部の気温及び湿度を検知する環境情報検知センサが設けられており、環境情報検知センサによって検知された気温及び湿度の情報は環境判別部203に常時送られるようになっている。
【0038】
そして、環境判別部203は、環境検知部205から送られてきたプリンタ100の内部の気温及び湿度の情報と、温湿度データベースサーバ300から送られてきた気温及び湿度の情報とを比較する。そして、環境検知部205の環境情報検知センサによって検知された気温及び湿度が適正なものであるかどうかを判別して制御部202に結果を通知する。そして、適正なものと判断される場合には、制御部202により通常の立ち上げ動作に移行し、不適正なものと判断された場合には、制御部202により氷溶解モード等の異常時モードに移行する。
【0039】
なお、上述の説明では、温湿度データベースサーバ300を立ち上げ、温度及び湿度のデータベースを構築した。しかし、第3者が提供する天候の情報などを提供するホームページのデータを読むことで公表された一定の時間帯の温湿度データを入手するようにしても良い。
【0040】
内部イントラネット209に接続されているコンピュータ21からプリント命令が発せられると、ルータ207、送受信装置204等を介して制御部202にプリント命令が送られ、画像形成の条件が判断される。
【0041】
画像形成条件の判断は、環境検知部205によって検知された温度と湿度のデータを元にする。たとえば、温度が30°C、湿度が80%に検知された際、定着バイアスを−500Vに、転写バイアスを2kVに、定着温調を160°Cにするなどの制御を行っている。
【0042】
異常検知部206は、常時、環境検知部205の異常がないか確認をしている。環境検知部205の環境センサが断線した場合などは、検知される電圧値が異常な値となってしまうため、環境検知装置故障と判断される。
【0043】
なお、プリンタ100と、温湿度データベースサーバ300と、外部ネットワーク208と、ルータ207とにより画像形成システムが構成される。
【0044】
図4は、制御部202の構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御部202は、プログラムの実行をするCPU400と、プログラムやデータが格納されているROM401と、プログラム実行時のワークエリア等として使われるRAM402を有する。そして、I/Oインターフェイス403を介して他の部分と接続されている。
【0045】
(プリンタの立ち上げ時の動作)
次に、プリンタ100の立ち上げ時の動作の詳細について説明する。
【0046】
図5は、プリンタ100の立ち上げ時の動作の詳細を示すフローチャートである。
【0047】
同図に示すように、例えば、前日の夜が極低温だった場合の次の朝にユーザが出社し、プリンタ100の電源をオンにする(ステップS401)。すると、プリンタ100の制御部202は、温湿度データベースサーバ300にアクセスし、プリンタ100が設置されている地域の気温データを6時間分とってくる(ステップS402)。たとえば、埼玉県三郷市に設置されたプリンタが午前10時に電源オンにされたのであれば、埼玉県三郷市の午前4時〜午前10時までの外気温データを温湿度データベースサーバ300から取得する。
【0048】
取得した気温データの6時間の平均が0°C以上で、環境検知センサの温度が0°C以上で(ステップS403)、定着装置8のサーミスタ14の検知温度が正常(ステップS404)である場合には、正常状態であり、通常の立ち上げモードに移行する(ステップS405)。一方、ステップS403及びステップS404の条件のうち一つでも満たしていない場合、プリンタ100内の一部が氷点下になっている可能性がある。このため、氷結という異常状態を解消(氷結を消失)するための氷溶解モード(氷結消失手段)に移行する(ステップS406)。
【0049】
(氷溶解モードの動作)
図6は、氷溶解モードの動作を示すフローチャートである。
【0050】
同図に示すように、まず、加圧ローラ11を回さずに、ヒータ12の通電比率を50%にし、サーミスタ14の温度が100°Cに達してから、冷却ファン13を回しながら10秒間待つ(ステップS501)。これにより、定着ニップ部Nfの氷を溶かす。
【0051】
次に、加圧ローラ11をニップ幅分(本実施形態の場合、約5mm)だけ回転させる(ステップS502)。回転させる量はニップ幅分が理想ではあるが、冷却時間短縮のため、定着ニップ部Nfのニップ幅の1.5〜2倍程度の量でも構わない。そして、加圧ローラ11がまだ1周分回転していない場合は(ステップS503)、冷却ファン13を停止させ、ヒータの通電をオフし、サーミスタ14の温度低下を確認する(ステップS505)。
【0052】
サーミスタ14の温度低下が1秒間に3°C以上だった場合は(ステップS506)、ニップ部が凍っているとみなし、冷却ファン13を回転させながらヒータ制御温度100°Cにて5秒間待つ(ステップS507)。
【0053】
一方、サーミスタ14の温度低下が1秒間に3°C未満であった場合は(ステップS506)、ニップ部は凍っていないとみなし、何もせずに、ステップS502に戻る。
【0054】
そして、以上のステップを繰り返し、ステップS503で、加圧ローラ11が1周したと判断された場合には、氷溶解モードを終了する(ステップS504)。
【0055】
このように、
図6に示す制御により、加圧ローラ11の全面に張り付いた氷を溶かしていく。なお、加圧ローラ11をニップ幅分回転させながら定着装置8の冷却ファン13を回すことで、定着装置8内のニップ部の氷を溶かすのみでなく、プリンタ100の内部に定着装置8の熱を循環させ、感光体ドラム1や搬送ギアの温度を上げる働きも持たせている。ヒータ制御温度を100°Cとして、通常の印字動作温度(180°C)よりも下げているのは、高温の熱が、低温の他の部材に急激に伝達することでプリンタ内が結露することを防ぐためである。
【0056】
このように、ギア部や定着部は凍っているのに環境検知センサは常温を示すという今まで検知が困難であった状態を検知して氷を溶解することで、低温時の定着不良、ギアや定着装置、感光体ドラム等の破損を防止することができる。
【0057】
図7は、従来技術と比べた本実施形態の効果を示す表である。
【0058】
同図に示すように、従来技術では、極低温環境下(0°C)にてプリンタ本体の付近で暖房を入れて通紙させると、高い割合(14/100)でジャムが起こったが、本実施形態では、大幅にその割合を軽減させることができる。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の他の実施形態であるプリンタについて説明する。以下、第1実施形態と異なる部分を説明し、第1実施形態と同一又は類似の部分については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0060】
第1実施形態においては、環境検知部205(環境情報検出手段)の環境検知センサのみでなく、定着装置8のサーミスタ14によって、氷溶解モードに入るかどうか、氷溶解モードから抜けるかどうかを判断していた。
【0061】
しかし、サーミスタ14も、ローラ定着のように、ローラの外周に接触する形式だった場合は、熱容量が小さいうえに外部に直接さらされているため、他の部材よりも非常に温度が上がりやすい。また、第1実施形態に示すベルト定着のように、ヒータ12の内部にサーミスタ14が存在する場合は、ヒータ12の直下にあるうえ、周囲がヒータステイ15など熱容量の大きな部材に覆われているため、周辺環境よりも温度が下がりにくい。たとえば、厚紙の吸湿紙を大量に流した後、極低温環境下に放置された場合、吸湿によって、ギア部や感光体ドラム1は凍りつきやすいものの、多くの部材で覆われたサーミスタ14の温度は下がりにくい。
【0062】
このサーミスタ14の検知温度が、感光体ドラム1やギアなど他の部材の温度と大幅に乖離していた場合、本来制御されるべき温度で制御されない可能性も出てくる。よって感光体ドラム1や現像装置4内の温度も判断の基準に入れた方が、故障検知の精度が良くなる。しかし、感光体ドラム1、現像装置4など、画像形成に影響がある全ての箇所に温度検知センサを置くことは、コスト、スペース等で非効率である。
【0063】
そこで、本実施形態では、新たに温度検知センサを置くのではなく、既存の構成を温度検知に用いるようにしている。すなわち、現像装置4内の温度検知に関しては、現像剤(トナー)の残量検知に用いられるアンテナ電極式のトナー残量検知装置を利用する。以下に、アンテナ電極式のトナー残量検知部について説明する。
【0064】
(現像容器内の温度の測定)
このような画像形成装置において、現像容器内に蓄えられているトナーは、画像形成動作が行われる度にその消費が進む。そのため、画像形成装置では、現像容器内にトナー残量検出部を設けて、現像容器内のトナー残量が所定量にまで減じたことを検出し、次のトナーの補給の必要性を表示してユーザに知らせるようにしている。このようなトナー残量検出部の構成としては、現像容器の内部に設けた現像スリーブと、この現像スリーブに対して平行に配置された棒状のアンテナ電極の間の誘導電圧を測定し、その誘電電圧から現像容器内のトナー残量を検出する構成が知られている。
【0065】
ここで、現像容器内に残っているトナーの残量に応じて、現像スリーブとアンテナ電極の間に生じる誘導電圧が変化する理由を説明する。
【0066】
図8は、現像装置4のアンテナ電極式のトナー残量検知部の構成を示す回路図である。
【0067】
同図に示すように、現像装置4の現像容器4b内にアンテナ電極4cが設けられ、現像スリーブ4aとの間で静電容量C2が生じる。交流電源ACから電流が静電容量C2と抵抗R2とを流れ、アンテナ電極4cの電圧がアンテナ出力として測定される。なお、静電容量C2と抵抗R2とにより微分回路が構成される。
【0068】
交流電源ACからの電圧は、基板に組み込まれたコンデンサC1と抵抗R1とで構成される微分回路を介して基準出力から測定可能になっている。
【0069】
交流電源ACからの出力は、コンデンサC1、抵抗R1を含む微分回路により測定された立ち上がりの電圧と、静電容量C2、抵抗R2を含む微分回路により測定された立ち上がりの電圧とを有する。そして、これらの電圧はピークホールド回路(不図示)で安定化させて、基準出力、アンテナ出力として出力させている。
【0070】
静電容量C2の値は、現像スリーブ4aとアンテナ電極4cとの間の距離や、現像スリーブ4aとアンテナ電極4cとの間に存在する物質の誘電率などによって変化する。
【0071】
現像スリーブ4aとアンテナ電極4cは現像容器4bに固定されているので、両者間(電極間)の距離は変化しないが、現像容器4b内のトナーの残量に応じて、現像スリーブ4aとアンテナ電極4cとの間の空間に存在するトナーの量が変化する。このため、現像スリーブ4aとアンテナ電極4cとの間の空間に存在するトナーの量の変化に応じて、アンテナ出力から出力される電圧が変化する。
【0072】
一方で、基準出力からの電圧は、トナーの残量に応じて変化しないため、
図8に示すアンテナ出力と基準出力との間の電圧を測定することで、トナーの残量を測定することができる。
【0073】
ところで、基準出力には、今回の実施形態においては、
図8の抵抗R1、コンデンサC1の部品の温度特性のため、下記のような温度による依存性がある。
【0074】
基準電圧読み値=基準電圧設定値−0.0013×環境温度+0.0299
例えば、設定電圧値が3.0Vで、環境温度が30℃だった場合、基準電圧の読み値は、2.93Vとなる。
【0075】
そのため、抵抗R1、コンデンサC1を現像容器4bの付近に設置しておき、基準電圧を測定すれば、現像容器4b付近の温度をある程度の確度で予測することが可能である。
【0076】
(感光体ドラム付近の温度の測定)
以上のトナー残量検知部により現像器内の温度を検知するのと同時に、感光体ドラム1付近の温度も測定することが望ましい。感光体ドラム1付近の温度を測定するのに適切な既存技術は、ATVC(Auto Transfer Voltage Control)と呼ばれる転写電流の制御方法である。
【0077】
接触転写方式において、転写ローラ5は環境変化等により特性変化を生じるので、転写ローラ5に対する印加転写電圧を転写ローラ5の特性変化に対応させて適切に制御する方策が一般にとられる。その印加転写電圧制御方式の1つとしてATVC(自動転写電圧制御)方式がある。
【0078】
ATVCは、転写部位が非画像領域時(非通紙時)のタイミングにおいて、転写ローラ5に流れる電流が予め設定された定電流値Ioとなるように転写バイアス印加手段を制御し(定電流モード)、この時の印加電圧Vtoを検出する。
【0079】
この検出した印加電圧Vtoを基に転写電圧Vtを決定する。例えば、
Vt=a×Vto+b[kV]
なる算定式を用いて、転写電圧Vtを算定する。
【0080】
そして、転写部位が画像領域時(通紙時)において算出した転写電圧Vtを定電圧制御で転写ローラ5に印加して像担持体側から記録媒体側へのトナー像の転写を実行させる(定電圧モード)。
【0081】
このような方法で転写電圧を決定することで、環境変化等による転写ローラ5の特性変化に関わらず、転写ローラ5に対する印加転写電圧を転写ローラ5の材質の特性変化に対応させて適切に制御して、常時良好な転写性を得ることが出来る。
【0082】
ここで、転写部位が非画像領域時のタイミングとは、「前回転時」の転写部位における像担持体非画像領域時(=非通紙時)のタイミング、又は、「紙間時」の転写部位における像担持体非画像領域時(=非通紙時)のタイミングである。なお、「前回転時」とは、スタンバイ(待機)状態にあるプリンタ100の駆動がプリント開始信号に基づいて開始されてから1枚目の記録材Pの先端部が転写部位に到達するまでをいう。また、「紙間時」とは、連続給紙プリントモードの場合の記録媒体の後端部と次の記録媒体の先端部との間隔をいう。
【0083】
このような環境変動により変化する転写バイアスを利用すれば、感光体ドラム1を含めた転写ローラ付近の温度をある程度の確度で予測することが可能である。
【0084】
以上のように、第1実施形態のサーミスタの他に、現像容器4b内のトナー残量検知部およびATVCを用いることにより、さらに検知精度を高くすることができる。
【0085】
図9は、この二つの判断基準を追加した場合の氷溶解モードに移行する条件を示すフローチャートである。
【0086】
同図に示すように、第1実施形態と同様に、プリンタ100の電源をオンにする(ステップS801)。すると、プリンタ100の制御部202は、温湿度データベースサーバ300にアクセスし、プリンタ100が設置されている地域の気温データを6時間分とってくる(ステップS802)。
【0087】
取得した気温データの6時間の平均が0°C以上で、環境検知センサの温度が0°C以上である場合いは(ステップS803)、定着装置8のサーミスタ14の検知温度が正常であるか否かが調べられる(ステップS804)。上述のようにサーミスタ14自身が環境温度と乖離している可能性があるため、サーミスタ14が正常であってもATVCの検知電圧を確認する(ステップS805)。この値が閾値(本実施形態では10V)以上あった場合は、最後にトナー残量検出の基準電圧値(本実実施形態では、1.5V)以下であるか否かを確認する(ステップS806)。ステップS803からステップS806の値の確認ですべて正常である場合には通常の立ち上げモードに移行する(ステップS807)。これらのステップのうち、1つでも正常値でない場合には、プリンタ100内の一部が氷点下になっている可能性があるので、氷溶解モードに移行する(ステップS808)。
【0088】
図10は、本実施形態の氷溶解モードの動作を示すフローチャートである。
【0089】
同図に示すように、まず、加圧ローラ11を回さずに、ヒータ12の通電比率を50%にし、サーミスタ14の温度が100°Cに達してから、冷却ファン13を回しながら10秒間待つ(ステップS901)。これにより、定着ニップ部Nfの氷を溶かす。
【0090】
次に、加圧ローラ11をニップ幅分(本実施形態の場合、約5mm)だけ回転させる(ステップS902)。回転させる量はニップ幅分が理想ではあるが、冷却時間短縮のため、ニップ幅の1.5〜2倍程度の量でも構わない。そして、加圧ローラ11がまだ1周分回転していない場合は(ステップS903)、冷却ファン13を停止させ、ヒータの通電をオフし、サーミスタ14の温度低下を確認する(ステップS904)。
【0091】
サーミスタ14の温度低下が1秒間に3°C以上だった場合は(ステップS906)、ニップ部が凍っているとみなし、冷却ファン13を回転させながらヒータ制御温度100°Cにて5秒間待つ(ステップS907)。その後、ステップS902に戻る。
【0092】
一方、サーミスタ14の温度低下が1秒間に3°C未満であった場合は(ステップS506)、ニップ部は凍っていないとみなし、何もせずに、ステップS902に戻る。
【0093】
一方、ステップS903で、加圧ローラ11が1周分回転した場合には、ATVCによる印加電圧Vtoのフィードバック電圧値の確認(ステップS907)及びトナー残量検知の基準電圧値の確認(ステップS908)がなされる。
【0094】
ここで、どちらかでも基準値よりも小さな値になっていた場合は、感光体ドラム1や現像容器4b内の氷が溶解されていないとみなす。そして、ヒータ制御温度を100°Cに設定して定着装置8を通常の速度の半分で回転させながら、冷却ファン13を回す(ステップS909)。
【0095】
一方、ATVCによる印加電圧Vto、トナー残量検知装置の基準電圧値を測定し、両者ともにあらかじめ決められた値をクリアした場合は氷溶解モードを終了する(ステップS910)。
【0096】
以上の手順を行うことにより、より精度の高い機内温度の検知を行うことができる。
【0097】
<第3実施形態>
次に本発明のさらに他の実施形態のプリンタについて説明する。以下、第1実施形態と異なる部分を説明し、第1実施形態と同一又は類似の部分については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0098】
第1実施形態及び第2実施形態では、環境温度検知部の温度の検出値が、実際のプリンタ100内の温度よりも高いことが想定されて、氷溶解モードに移行するモードを設けていたが、実際の市場では以下のようなことも考えられる。
【0099】
真夏に、気温が40°C、湿度が80%を超えた日の昼、SOHOで、午前中社員が外出していて室内でエアコンを使っていない場合、室内の温度が50°Cを超える場合がある。午後に社員が帰社し、プリンタのそばにあるエアコンのスイッチを入れた場合は、環境検知センサの温度は常温常湿になりやすいものの、高温多湿にさらされた紙は水分を吸い取ってしまっている。
【0100】
現行技術では、高温多湿環境下では、吸湿した紙のカールなどを抑制するため、高温多湿環境下であると検知した場合には、通紙時のヒータ制御温度を下げるという制御を行っている。しかし、上述した状況を想定した場合には、高温多湿にさらされた紙が通紙されるにもかかわらず、環境検知センサが正常値を示していると、常温常湿時のヒータ制御温度にて通紙を行ってしまう。このため通紙不良や排紙積載への影響が強く出てしまう。
【0101】
図11は、紙の水分量及びヒータ制御温度と、カール量及び通紙不良の状態を示す図である。同図に示すように、ヒータ温度が高く、水分量が多い場合には、カール量が大きく通紙不良が起こることがわかる。
【0102】
通紙不良が起こると、装置が停止することによる生産性の低下、ユーザが紙を引っ張って出すことによる装置の故障などの弊害がある。仮に通紙できたとしても、排紙トレイに積載された紙が大きくカールしていた場合、次に通紙された紙が、積載されていた紙の後端を押してしまうことによって、紙が丸まってしまうという問題も懸念される。
【0103】
図12は、高温多湿下における紙のカールを抑制する動作を示すフローチャートである。
【0104】
同図に示すように、まず、プリント命令が発せられた場合に(ステップS1101)、外部の温湿度データベースサーバ300から過去3時間分の温湿度データを取得する(ステップS1102)。そして、環境センサの検知温度が30°C以上(所定値以上)かつ検知湿度が80%以上(所定値以上)であった場合には(ステップS1103)、高温多湿モードに移行する(ステップS1104)。この高温多湿モードとは、従来から用いられているカール低減モードでもよい。
【0105】
ステップS1103の条件を満たさなかった場合でも、外気温が高温多湿であった場合は、温湿度センサと機内実温度の乖離の可能性もある。このため、温湿度データベースサーバ300から得られた過去3時間分の平均気温が30°C以上、かつ、平均湿度が70%以上であるか否かが調べられる(ステップS1105)。そして、ステップS1105の条件を満足しない場合には、通常制御モードに移行する(ステップS1106)。一方、ステップS1105の条件を満足する場には、環境センサの検知温度が30°C以下で、かつ湿度が70%以下である状態を1時間以上維持していた場合は(ステップS1107)、通常制御モードに移行する(ステップS1106)。一方、ステップS1107の条件を満足しなかった場合には、準高温制御モードへ移行する(ステップS1108)。すなわち、ステップS1105で、平均気温が30°C未満(所定値未満)で平均湿度が70%未満(所定値未満)の場合に通常制御モード(通常モード)に移行する。
【0106】
図13は、
図12に示す動作を環境センサの検知温湿度の範囲と外部の温湿度データベースサーバ300から取得した温湿度の範囲とに応じて各モードが選択されることを示す表である。
【0107】
同図に示すように、プリンタ100内の環境センサの検知は重要視するものの、仮に環境センサが常温常湿を示していても、外気温が高温多湿であれば、立ち上げから1時間までは準高温多湿モードにて制御される。
【0108】
図14は、高温多湿モード、準高温多湿モード、通常制御モードにおけるヒータ制御温度、転写バイアス値、及び、現像バイアス電圧を示す表である。
【0109】
同図に示すように、準高温多湿モードでは、高温多湿モードと通常制御モードの中間値を採っている。これにより、実際には高温多湿であったのに、通常制御をされた場合の弊害、外気温が非常に高いにもかかわらず、室内が冷えていた場合の弊害を極力抑えることができる。