特許第6462272号(P6462272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヴェントゥーノの特許一覧

<>
  • 特許6462272-フコイダン系健康食品 図000002
  • 特許6462272-フコイダン系健康食品 図000003
  • 特許6462272-フコイダン系健康食品 図000004
  • 特許6462272-フコイダン系健康食品 図000005
  • 特許6462272-フコイダン系健康食品 図000006
  • 特許6462272-フコイダン系健康食品 図000007
  • 特許6462272-フコイダン系健康食品 図000008
  • 特許6462272-フコイダン系健康食品 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462272
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】フコイダン系健康食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20190121BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20190121BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
   A23L33/105
   A23L2/00 F
   A23L2/38 F
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-167716(P2014-167716)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-42804(P2016-42804A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】500517374
【氏名又は名称】株式会社ヴェントゥーノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中溝 公次
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 義之
【審査官】 布川 莉奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−024054(JP,A)
【文献】 体力・栄養・免疫学雑誌,2012年,Vol. 22, No. 3,pp. 189-190
【文献】 日本癌学会学術総会記事,2009年,Vol. 68,pp. 463-464,P-1090
【文献】 日本農芸化学会大会講演要旨集,2008年,pp. 287,3B03a07
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/40− 5/49
A23L 31/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モズクフコイダンを65〜70%、ガゴメフコイダンを5〜10%、メカブフコイダンをその残部として含有する混合物を有効成分として含むフコイダン系健康食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状、カプセル、錠剤、あるいは、飲みやすくするために調味した溶液に溶解した水などの溶媒に溶解した飲み物として経口投与される、フコイダンを主体とした健康食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メカブフコイダンとモズクフコイダンの混合物を用いることで、生体防御亢進剤及び免疫賦活性剤として優れた機能を有するとともに、健康食品としての味と風味を向上させる技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2004−24054号公報)には、ワカメ芽株より抽出分画したフコイダン画分を1〜90%と残部が沖縄フトモズクより抽出分画したフコイダン画分からなる混合物にアガリクス粉末を配合した高血糖を抑制し、血糖を低く保つ効果を持つフコイダン系健康食品が開示されている。
そして、その後の研究によりフコイダンは、「抗ガン作用」「コレステロール低下作用」「血圧低下作用」「抗ウイルス作用」など様々な生理機能を有することが解明されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−24054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フコイダンについてさらに研究を進めた結果、由来となる海藻の違いで効果が違うことが明確となったため、その効果の違いに着目し、違う由来のフコイダンを3種類以上掛け合わせて、お互いの機能性の補完と相乗効果を見出すことを課題として開発を進めた。
【0006】
そして、モズクフコイダン、メカブフコイダン及びガゴメフコイダンの混合比を最適化することにより、抗腫瘍活性の強いフコイダン系健康食品が得られることを突き止めるに至った。
すなわち、本発明は、抗腫瘍活性の強いフコイダン系健康食品の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、モズクフコイダンを65〜70%、ガゴメフコイダンを5〜10%、メカブフコイダンをその残部として含有する混合物を有効成分として含むフコイダン系健康食品である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明のフコイダン系健康食品によれば、モズクフコイダン、メカブフコイダン及びガゴメフコイダンのいずれかを有効成分として含むフコイダン系健康食品、並びにモズクフコイダン、メカブフコイダン及びガゴメフコイダンのうちいずれか2つを含有する混合物を有効成分として含むフコイダン系健康食品よりも抗腫瘍活性の非常に強いフコイダン系健康食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】マウス脾臓細胞を用いて、各種フコイダンのサイトカイン産生に及ぼす影響を示すグラフ。
図2】実施例のフコイダン系健康食品のマウスへの投与と体重変化を示すグラフ。
図3】実施例のフコイダン系健康食品のマウスへの投与と総摂食量を示すグラフ。
図4】実施例のフコイダン系健康食品のマウスへの投与と臓器重量を示すグラフ。
図5】実施例のフコイダン系健康食品のマウスへの投与と腫瘍重量を示すグラフ。
図6】実施例のフコイダン系健康食品のマウスへの投与とTNF−α産生量の変化を示すグラフ。
図7】実施例のフコイダン系健康食品のマウスへの投与とIFN−γ産生量の変化を示すグラフ。
図8】実施例のフコイダン系健康食品のマウスへの投与とIL−12産生量の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例】
【0014】
モズクフコイダン、メカブフコイダン及びガゴメフコイダンの混合比(以下「MMG混合比」という。)を検討するため、マウス脾臓細胞を用いて、様々なMMG混合比及び単体フコイダンの細胞増殖に対する効果を以下の手順により検討した。
なお、MMG混合比については、表記を簡略化するため、例えば、モズクフコイダンを50%、メカブフコイダンを30%及びガゴメフコイダンを20%混合したものについて、[50:30:20]と記載する。
【0015】
・フコイダンサンプルの調製
(手順1)各フコイダン粉末を50mg/mLとなるように超純水に溶解し、不溶物を遠心分離した後、上清を凍結乾燥する。
(手順2)凍結乾燥物を10mg/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、フィルター滅菌してフコイダンサンプルとする。
各フコイダンサンプルとしては、単体のモズクフコイダン、メカブフコイダン及びガゴメフコイダン、並びにMMG混合比[50:50:00]、[50:00:50]、[00:50:50]、[50:25:25]、[25:50:25]、[25:25:50]、[60:35:05]、[60:05:35]、[65:30:05]、[65:05:30]、[70:25:05]、[70:05:25]、[80:15:05]、[80:10:10]、[80:05:15]のものを用いた。
【0016】
・細胞培養及び機能検定
(手順3)マウス脾臓細胞を、雄Balb/cマウスの脾臓から、33%パーコールを用いた遠沈により調製し、調製した脾臓細胞を10の7乗cells/mLに調製して、96穴プレート(100μL)に播種する。
(手順4)各フコイダンサンプルを終濃度10μg/mL程度となるように培地に添加し、3日間培養した後、細胞増殖能をWST−8法にて測定する。
【0017】
測定の結果を図1に示す。
その結果から、MMG混合比が[60:35:05]、[60:05:35]、[65:30:05]、[65:05:30]、[70:25:05]、[70:05:25]、[80:15:05]、[80:10:10]及び[80:05:15]であれば、各フコイダン単体やMMG混合比が[50:50:00]、[50:00:50]及び[00:50:50]の2種混合物のいずれよりも細胞増殖に対する効果が大きいことが分かった。
そのうち、MMG混合比が[60:35:05]、[65:30:05]、[70:25:05]、[80:15:05]及び[80:10:10]のものについては、吸光度の平均が1.1を超えており、細胞増殖に対する効果が特に大きいことが分かった。
【0018】
これらの測定結果を総合すると、モズクフコイダンを60〜80%、メカブフコイダン及びガゴメフコイダンをその残部として含有する混合物は、フコイダン単体やフコイダンの2種混合物より細胞増殖に対する効果に好影響をもたらし、なかでもモズクフコイダンを65〜70%、メカブフコイダン及びガゴメフコイダンをその残部として含有する混合物は、細胞増殖に対する効果が特に大きいことが分かる。
また、モズクフコイダンを60〜80%、ガゴメフコイダンを5〜10%、メカブフコイダンをその残部として含有する混合物は、細胞増殖に対する効果が特に大きいことも分かる。
そして、細胞増殖に対する効果という観点からみると、モズクフコイダンを65〜70%、ガゴメフコイダンを5〜10%、メカブフコイダンをその残部として含有する混合物が最適なものであることが分かる。
【0019】
そこで、細胞増殖に対する効果が最適なフコイダン混合物(以下「フコイダンコンプレックスMMG」という。)を2%配合した飼料(以下「フコイダンコンプレックスMMG飼料」という。)をマウスに投与することにより、抗腫瘍効果が上がるか否かを以下の手順により検討した。
【0020】
(手順1)実験動物として雄Balb/cマウス50匹を購入し、個別飼育、自由摂取、自由摂水、23±2℃、12時間明暗サイクルの飼育条件で、1週間の予備飼育を行った。
(手順2)上記のマウス50匹を前飼育0日目に、体重の平均が各群でほぼ等しくなるように次の4群に分け、予備飼育と同条件で2週間の前飼育及び3週間の本飼育を行った。
・コントロール群:サルコーマ180を移植せずフコイダンコンプレックスMMG飼料を与えない群。
・Sコントロール群:本飼育0日目にサルコーマ180を移植しフコイダンコンプレックスMMG飼料を与えない群。
・前飼育MMG2%群:前飼育0日目以降フコイダンコンプレックスMMG飼料を与え続け本飼育0日目にサルコーマ180を移植する群。
・本飼育MMG2%群:本飼育0日目にサルコーマ180を移植し、同日以降フコイダンコンプレックスMMG飼料を与え続ける群。
なお、コントロール群及びSコントロール群に与える飼料組成は、コーンスターチ42%、カゼイン25%、セルロース7%、スクロース15%、コーン油6%、ビタミンMix1%、ミネラルMix3.5%、塩化コリン0.2%、DL−MET0.3%であり、フコイダンコンプレックスMMG飼料の組成は、上記の飼料組成のうちコーンスターチ42%をコーンスターチ34%とサンプル8%に代えたものとなっている。そして、そのサンプルにはMMG混合比が[65:30:05]のフコイダン混合物が飼料全体の2%分配合されている。
(手順3)前飼育0日目から1週間経過する毎に体重を計測するとともに飼料減少量の測定と補充を行った。
(手順4)飼育期間終了後に解剖を行い、肝臓・腎臓・脾臓・盲腸・腎周辺脂質・睾丸周辺脂質・腫瘍を摘出してその重量を測定した。
(手順5)脾臓からリンパ球を取り出し、TNF−α,IFN−γ,IL−12産生量の測定を行った(Invitrogen社のBiosource ELISAキットを使用)。
【0021】
測定の結果を、図2〜8に示す。
なお、図2における日数は前飼育0日目からの経過日数を示し、図6〜9における横軸の数字は本飼育0日目からの経過日数、縦軸は産生量(単位はpg/ml)を示す。
また、図中ではコントロール群及びSコントロール群を、それぞれコントロール及びSコントロールと表記し、前飼育MMG2%群及び本飼育MMG2%群を、それぞれ前MMG2%及び本MMG2%と表記している。
(1)体重変化(図2参照):7日目において前飼育MMG2%群が他の群よりも有意に体重減少が見られたが、7日目以降どの群においても有意差は認められなかった。
(2)総摂食量(図3参照):どの群においてもコントロール群と比較して有意差は認められなかった。
なお、各群の総摂食量は、コントロール群が138.8g、Sコントロール群が140.5g、前飼育MMG2%群が148.1g、本飼育MMG2%群が140.7gであった。
(3)臓器重量(図4参照):脾臓重量以外の臓器において有意差は認められなかった。
(4)腫瘍重量(図5参照):Sコントロール群と比較して、前飼育MMG2%群及び本飼育MMG2%群において有意差が認められ、低い値を示した。
前飼育MMG2%群と本飼育MMG2%群間では有意差は認められない。
【0022】
各種サイトカイン産生量の変化については、次のとおりとなった。
(5)TNF−α(図6参照):0日目及び3日目の産生量は、他の群と比較して前飼育MMG2%群において有意に産生量が増加した。
14〜21日目の産生量は、Sコントロール群と比較して前飼育MMG2%群および本飼育MMG2%群において有意に増加した。また、前飼育MMG2%群、本飼育MMG2%群及びコントロール群間においては有意差が認められなかった。
(6)IFN−γ(図7参照):0日目の産生量は、他の群と比較して前飼育MMG2%群において有意に産生量が増加した。
3日目〜14日目の産生量は、コントロール群及びSコントロール群と比較して前飼育MMG2%群及び本飼育MMG2%群において有意に増加した。
21日目の産生量は、どの群においても有意差は認められなかった。
(7)IL−12(図8参照):0日目の産生量は、他の群と比較して前飼育MMG2%群において有意に産生量が増加した。
3日目から21日の産生量は、どの群においても有意差は認められなかった。
【0023】
体重変化、総摂食量、臓器重量の結果から、フコイダンコンプレックスMMG飼料を食べても体重、摂食量及び内臓に悪影響を与えるような有害性は認められなかったため、フコイダンコンプレックスMMGは安全な食品であるといえる。
また、腫瘍重量においては、Sコントロール群と比較し、前飼育MMG2%群及び本飼育MMG2%群ともに有意に低い値を示しているので、フコイダンコンプレックスMMGによって抗腫瘍効果が上がったことが示唆される。
【0024】
サイトカイン量のうちTNF−α量では、0日目は前飼育MMG2%群において有意に産生量が増加しており、健康なうちからフコイダンコンプレックスMMG飼料を摂取していたほうが免疫力を高めることがわかる。また、腫瘍を移植して3日目は、前飼育MMG2%群において他の群と比較して有意に産生量が増加し、21日目は、Sコントロールと比較して、前飼育MMG2%群および、本飼育MMG2%群で産生量が有意に増加した。
TNF−αは細胞接着分子の発現やアポトーシスの誘導、炎症メディエーター(IL−1、IL−6、プロスタグランジンE2など)や形質細胞による抗体産生の亢進を行うことにより感染防御や抗腫瘍作用に関与するといわれており、前飼育MMG2%群と本飼育MMG2%群において腫瘍が有意に小さくなったのは、増加したTNF−αにより腫瘍細胞を壊死させたことが示唆される。
【0025】
サイトカイン量のうちIFN−γ量では、0日目は前飼育MMG2%群において有意に産生量が増加した。また、腫瘍を移植して3日目は、前飼育MMG2%群及び、本飼育MMG2%群において有意に産生量が増加した。21日目においては、どの群においても有意差は認められなかった。
IFN−γは、活性化されたT細胞で産生され、免疫系と炎症反応に対して調節作用を有し、リンホカインの一種ともされる。IFN−γにも抗ウイルス作用と抗腫瘍作用があるが弱く、その代わりIFN−αとβの効果を増強する作用がある。
また、IFN−αとβはマクロファージとNK細胞をともに刺激し、腫瘍細胞に対しても直接的に増殖抑制作用を示すため、IFN−γ量の増加は、腫瘍の増殖抑制作用を間接的にサポートする役割がある。
これらの作用等からみて、0日目、3日目でのIFN−γ産生量の増加により前飼育MMG2%群及び本飼育MMG2%群で腫瘍が有意に小さくなったことが示唆される。
【0026】
サイトカイン量のうちIL−12では、0日目は前飼育MMG2%群において有意に産生量が増加した。その後の3日目、21日目においてはどの群においても有意差は認められなかった。
IL−12はB細胞および単球系細胞より産生され、T細胞やNK細胞に対して細胞増殖の促進、細胞傷害活性誘導、IFN−γ産生誘導、LAK細胞誘導などの作用を示す。
0日目において前飼育MMG2%群において有意に増加していたことから、上記に示した作用により前飼育MMG2%群において抗腫瘍効果が上がることが示唆される。
【0027】
以上の考察から、フコイダンコンプレックスMMG飼料は、健康なときから摂取していた方が、主にTNF−α産生量、IFN−γ産生量が増加し、免疫力を高めることが分かった。
そのため、健康な状態の時に摂取すると他の病気を防ぐこともできるのではないかと考えられ、疾病予防のためにもお勧めすることができる。
また、癌接種後にフコイダンコンプレックスMMG飼料を摂取した場合においても、フコイダンコンプレックスMMG飼料を摂取していない場合と比較してIFN−γ産生量が有意に増加した。
このことから、癌接種後にフコイダンコンプレックスMMG飼料を摂取すると、免疫力を高めることができ、抗腫瘍効果を発揮することが考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8