(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462285
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】バタフライ弁の組み立て方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/22 20060101AFI20190121BHJP
F16K 1/226 20060101ALI20190121BHJP
F16K 1/46 20060101ALI20190121BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20190121BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20190121BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20190121BHJP
【FI】
F16K1/22 Z
F16K1/226 J
F16K1/46 Z
F16J15/00 C
F16J15/10 L
B23P21/00 306Z
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-188074(P2014-188074)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-61335(P2016-61335A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】坂上 達也
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭47−009025(JP,U)
【文献】
実開平02−135180(JP,U)
【文献】
特開昭63−034378(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/136490(WO,A1)
【文献】
実開昭60−064824(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00 − 1/54
F16K 27/00 − 27/12
B23P 21/00
F16J 15/00
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体内に流路軸線に沿って延びる内部流路の内周面に、円筒状の本体部の中心軸線方向両端部にフランジ部を有したシートリングが装着されており、前記内部流路内に回動可能に軸支された円板状の弁体を前記弁本体内で回動させて前記弁体の周縁を前記シートリングの前記本体部の内周面に圧接、離間させることにより弁の開閉を行うバタフライ弁の組み立て方法であって、
複数の把持片を含む把持部を有し、往復動軸線に沿った前記把持部の移動と、前記弁本体の内部流路を通過できるように前記複数の把持片を前記往復動軸線へ向かって接近させた収縮状態と前記シートリングの前記フランジ部の外縁を越えるまで前記複数の把持片を前記往復動軸線から離れる方向に移動させた拡開状態との間で前記往復動軸線に対して接近及び離反させる前記複数の把持片の移動とを行うことができる変形把持装置を設け、
前記変形把持装置の往復動軸線と前記弁本体の前記内部流路の前記流路軸線とが整列するように前記弁本体を配置すると共に、前記弁本体を挟んで前記変形把持装置と対向する位置に、前記フランジ部の一方を前記弁本体へ向けて前記シートリングを配置し、
前記収縮状態で、前記弁本体の内部流路の一方の側から他方の側へ前記把持部を通過させ、
前記拡開状態で、前記弁本体に近い側に位置する前記シートリングの前記フランジ部の周囲に前記把持部を配置した後、前記複数の把持片を前記収縮状態に移動させることにより、前記シートリングの一方の前記フランジ部を縮小させて把持し、
前記把持部によって前記シートリングの一方の前記フランジ部を縮小させて把持した状態で、前記弁本体の内部流路の前記他方の側から前記一方の側へ前記把持部を通過させ、
前記シートリングの他方の前記フランジ部を前記弁本体に接触させることにより、前記シートリングの前記一方の前記フランジ部を前記収縮状態の把持部から解放させ、前記シートリングを前記弁本体の前記内部流路に装着することを特徴とするバタフライ弁の組み立て方法。
【請求項2】
前記把持部によって前記シートリングの前記フランジ部を把持するとき、前記複数の把持片は、前記往復動軸線に接近する方向と前記往復動軸線に沿って前記弁本体に接近する方向に同時に移動される、請求項1に記載のバタフライ弁の組み立て方法。
【請求項3】
前記弁体を前記弁本体に軸支する弁軸を取り付けるための弁軸孔が前記弁体に設けられていると共に、前記弁軸を貫通させるための弁軸貫通孔が前記シートリングに設けられており、前記弁体の前記弁軸孔が前記シートリングの前記弁軸貫通孔とを整列させた状態で前記弁体が前記シートリングの前記本体部内に予め装着される、請求項1又は請求項2に記載のバタフライ弁の組み立て方法。
【請求項4】
前記把持部によって前記シートリングの一方の前記フランジ部を縮小させて把持した状態で、前記弁本体の内部流路の前記他方の側から前記一方の側へ前記把持部を通過させるとき、弁体押さえ機構によって前記弁体を押さえながら前記シートリングを移動させる、請求項3に記載のバタフライ弁の組み立て方法。
【請求項5】
弁本体内に流路軸線に沿って延びる内部流路の内周面に、中心軸線に沿って延びる円筒状の本体部と該本体部の中心軸線方向両端部に設けられたフランジ部とを含むシートリングが装着されており、弁本体内に回動可能に軸支された円板状の弁体を弁本体内で回動させて弁体の周縁をシートリングの本体部の内周面に圧接、離間させることにより弁の開閉を行うバタフライ弁の組み立て装置であって、
前記弁本体を支持する支持機構と、
前記シートリングを保持するシートリング保持装置と、
複数の把持片を含む把持部を有し、往復動軸線に沿った前記把持部の移動と、前記弁本体の内部流路を通過できるように前記複数の把持片を前記往復動軸線へ向かって接近させた収縮状態と前記シートリングの前記フランジ部の外縁を越えるまで前記複数の把持片を前記往復動軸線から離れる方向に移動させた拡開状態との間で前記往復動軸線に対して接近及び離反させる前記複数の把持片の移動とを行うことができる変形把持装置と、
前記変形把持装置を制御する制御装置と、
を備え、前記支持機構が、前記変形把持装置の前記往復動軸線と前記弁本体の前記内部流路の前記流路軸線とが整列するように、前記弁本体を支持し、前記シートリング保持装置が、前記弁本体を挟んで前記変形把持装置と対向する位置に、前記フランジ部の一方を前記弁本体へ向けて前記シートリングを保持し、前記制御装置は、前記収縮状態の前記把持部を前記往復動軸線に沿って移動させて前記支持機構によって支持された前記弁本体の前記内部流路の一方の側から他方の側へ前記把持部を通過させ、前記把持部を前記拡開状態にした後に、前記弁本体に近い側に位置する前記シートリングの前記フランジ部の周囲に前記把持部を配置し、把持部を前記収縮状態に移動させることにより、前記シートリングの一方の前記フランジ部を縮小させて把持して、前記弁本体の内部流路の前記他方の側から前記一方の側へ前記把持部を通過させるように制御し、前記シートリングの他方の前記フランジ部を前記弁本体に接触させることにより、前記シートリングの前記一方の前記フランジ部を前記収縮状態の把持部から解放させ、前記シートリングを前記弁本体の前記内部流路に装着することを特徴とするバタフライ弁の組み立て装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記把持部によって前記シートリングの前記一方の前記フランジ部を把持するとき、前記往復動軸線に接近する方向と前記往復動軸線に沿って前記弁本体に接近する方向に同時に前記複数の把持片を移動させる、請求項5に記載のバタフライ弁の組み立て装置。
【請求項7】
前記複数の把持片を移動させるための移動機構が、アクチュエータによって往復動軸線周りに回転させられるはすば歯車と、該はすば歯車と噛合するように配置された複数のすぐばラックと、前記複数の把持片の各々をそれぞれ支持する複数の支持フレームとによって構成されており、前記複数のすぐばラックが前記複数の支持フレームにそれぞれ固定されている、請求項6に記載のバタフライ弁の組み立て装置。
【請求項8】
前記複数の把持片を移動させるための移動機構が、アクチュエータによって往復動軸線周りに回転させられる平歯車と、該平歯車と噛合するように配置された複数のはすばラックと、前記複数の把持片の各々をそれぞれ支持する複数の支持フレームとによって構成されており、前記複数のはすばラックが前記複数の支持フレームにそれぞれ固定されている、請求項6に記載のバタフライ弁の組み立て装置。
【請求項9】
前記弁体を前記弁本体に軸支するための弁軸を取り付けるための弁軸孔が前記弁体に設けられていると共に、前記弁軸を貫通させるための弁軸貫通孔が前記シートリングに設けられており、前記弁体の前記弁軸孔と前記シートリングの前記弁軸貫通孔とを整列させた状態で前記弁体が前記シートリングの前記本体部内に予め装着され、
前記バタフライ弁の組み立て装置は、前記シートリングに保持された前記弁体を押さえる弁体押さえ機構をさらに備え、前記弁体押さえ機構は、前記把持部によって前記シートリングの一方の前記フランジ部を縮小させて把持した状態で、前記弁本体の内部流路の前記他方の側から前記一方の側へ前記把持部を通過させるとき、前記弁体を押さえ続けるように移動される、請求項5から請求項8の何れか一項に記載のバタフライ弁の組み立て装置。
【請求項10】
前記複数の把持片の各々は、前記往復動軸線周りに延びる筒状環状体を複数に分割した形態の弧状把持片である、請求項5から請求項9の何れか一項に記載のバタフライ弁の組み立て装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工場、上下水道、農業・水産などの配管ラインに好適に使用されるバタフライ弁の組み立て方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バタフライ弁は、内部流路を有する弁本体と、弁本体の内部流路の内周面に装着される環状のシートリングと、シートリングを貫通して延び且つ弁本体に支承される弁軸と、弁本体の内部流路の内周面に装着されたシートリング内に配置され且つ弁軸と共に回動するように弁軸に固定的に取り付けられた弁体とを備え、弁軸を用いて弁本体内で弁体を回動させ、弁体の周縁をシートリングの内周面に弁体を圧接、離間させることにより、弁の開閉が行われる。
【0003】
弁本体には、内部流路の径方向の対向する位置に、弁軸を支承するための一対の弁軸支持孔が設けられており、少なくともその一方が弁本体を貫通して延びている。また、シートリングは、円筒状の本体部と、本体部の中心軸線両端部に設けられたフランジ部とを含んでおり、弁本体の内部流路の両端の開口部の周囲に設けられた嵌合凹部にシートリングのフランジ部を嵌合させることにより、弁本体にシートリングを装着する。シートリングの本体部には、弁軸を貫通させるための一対の弁軸貫通孔が径方向に互いに対向して形成されている。さらに、弁体にも、弁軸を貫通させるための弁軸孔が形成されている。
【0004】
弁本体が分割されないバタフライ弁の組み立ては、弁本体の一対の弁軸支持孔とシートリングの一対の弁軸貫通孔とが一直線上に整列するように弁本体の内部流路にシートリングを装着し、さらに、シートリングの一対の弁軸貫通孔と弁体の弁軸孔とが一直線上に整列するようにシートリング内に弁体を配置した後に、弁本体の貫通した弁軸支持孔から他方の弁軸支持孔に到達するまで弁軸を挿入してシートリングの一対の弁軸貫通孔、弁体を貫通させ、弁体を弁本体に軸支させることにより行われる。また、シートリングの一対の弁軸貫通孔と弁体の弁軸孔とが一直線上に整列するように弁体をシートリングに予め組み付け、シートリングの一対の弁軸貫通孔と弁本体の一対の弁軸支持孔とが一直線上に整列するように、弁体とシートリングとの組立体を弁本体の内部流路に装着した後に、弁本体の貫通した弁軸支持孔から他方の弁軸支持孔に到達するまで弁軸を挿入してシートリングの一対の弁軸貫通孔、弁体を貫通させ、弁体を弁本体に軸支させることもある。
【0005】
シートリングのフランジ部は、弁本体の内部流路の内径よりも大きいため、弁本体へのシートリングの装着の際に、一方のフランジ部を弁本体の
内部流路の内径よりも小さくなるまで変形させてから、内部流路を通過させると共に、弁本体の一対の弁軸支持孔の中心軸線とシートリングの一対の弁軸貫通孔の中心軸線とを整列させるように位置合わせを行いつつシートリングを装着させる必要がある。このため、弁本体へのシートリングの装着を手作業で行う場合、シートリングの変形に大きな力を要するだけでなく、作業の熟練を要する。このような組み立て作業を容易にするために、特許文献1は、一対の位置決めピンによりシートリングの弁軸貫通孔を貫通させた状態で、予め長楕円形に変形させたシートリングを、弁全開方向の向きに弁本体の弁軸支持孔とシートリングの弁軸貫通孔とを一致させるようにして挿入し、各弁軸貫通孔の一致状態を維持しつつ、一対の捩じり爪を用いて、シートリングの長軸方向の対角位置の両端部を対称的にそれぞれ同じ方向に捩じり、一対の回転プッシャによって、捩じられた状態のシートリングを、弁軸貫通孔を中心にして捩じり方向と同じ回転方向に旋回させ、シートリングのフランジ部を弁本体の嵌合凹部へ強制的に嵌入させながら弁本体にシートリングを装着させるようにしたバタフライ弁の組立装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−34378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のバタフライ弁の組立装置では、シートリング全体を大きく変形させるため、歪みによる皺や破損、弁軸貫通孔の変形を発生させ得るという問題がある。また、シートリングの弁軸貫通孔などに予め組み込む部品がある場合、部品の脱落の危険性がある。さらに、シートリングに弁体を予め組み付けたものを弁本体に装着する場合には、上記装置を適用できないという問題もある。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するために、バタフライ弁の品質を損なうことなく、簡単かつ効率的にバタフライ弁の弁本体へシートリングを装着することを可能とさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み、本発明は、第1の態様として、弁本体内に流路軸線に沿って延びる内部流路の内周面に、円筒状の本体部の中心軸線方向両端部にフランジ部を有したシートリングが装着されており、
前記内部流路内に回動可能に軸支された円板状の弁体を前記弁本体内で回動させて前記弁体の周縁を前記シートリングの前記本体部の内周面に圧接、離間させることにより弁の開閉を行うバタフライ弁の組み立て方法であって、複数の把持片を含む把持部を有し、往復動軸線に沿った前記把持部の移動と、前記弁本体の内部流路を通過できるように前記複数の把持片を前記往復動軸線へ向かって接近させた収縮状態と前記シートリングの前記フランジ部の外縁を越えるまで前記複数の把持片を前記往復動軸線から離れる方向に移動させた拡開状態との間で前記往復動軸線に対して接近及び離反させる前記複数の把持片の移動とを行うことができる変形把持装置を設け、前記変形把持装置の往復動軸線と前記弁本体の前記内部流路の前記流路軸線とが整列するように前記弁本体を配置すると共に、前記弁本体を挟んで前記変形把持装置と対向する位置に、前記フランジ部の一方を前記弁本体へ向けて前記シートリングを配置し、前記収縮状態で、前記弁本体の
内部流路の一方の側から他方の側へ前記把持部を通過させ、前記拡開状態で、前記弁本体に近い側に位置する前記シートリングの前記フランジ部の周囲に前記把持部を配置した後、前記複数の把持片を前記収縮状態に移動させることにより、前記シートリングの
前記一方の前記フランジ部を縮小させて把持し、前記把持部によって前記シートリングの
前記一方の前記フランジ部を縮小させて把持した状態で、前記弁本体の内部流路の前記他方の側から前記一方の側へ前記把持部を通過させ、前記シートリングの他方の前記フランジ部を前記弁本体に接触させることにより、前記シートリングの
前記一方の前記フランジ部を前記収縮状態の把持部から解放させ、前記シートリングを前記弁本体の前記内部流路に装着するバタフライ弁の組み立て方法を提供する。
【0010】
上記バタフライ弁の組み立て方法では、弁本体の内部流路の流路軸線が変形把持装置の往復動軸線と整列するように変形把持装置の往復動軸線上に弁本体を配置すると共に、弁本体を挟んで変形把持装置と対向する位置にフランジ部を弁本体へ向けてシートリングを配置している。また、変形把持装置の把持部は、収縮状態で弁本体の内部流路を通過でき、また、拡開状態ではシートリングのフランジ部の外縁を越えるまで複数の把持片を往復動軸線から離れる方向に移動させることができる。したがって、変形把持装置の把持部を収縮状態にして弁本体の内部流路を通過させた後に、拡開状態にした複数の把持片をフランジ部の周囲に配置し、拡開状態から収縮状態へ複数の把持片を移動させてシートリングのフランジ部の一方を縮小させて把持すれば、把持されたフランジ部は弁本体の内部流路を通過することが可能となる。一方、シートリングの他方のフランジ部は弁本体の内部流路を通過できず、弁本体に接触する。この結果、シートリングは把持部と共に移動することができなくなって、収縮状態の把持部からシートリングが解放され、シートリングが弁本体に装着される。すなわち、弁本体へのシートリングの装着を容易に行うことができる。また、シートリングの一方のフランジ部のみが収縮状態の把持部によって把持されて、弁本体の内部流路を通過できる程度に変形されればよく、シートリングの本体部の変形を抑制することができるので、変形に伴うシートリングの破損や変形などの発生の危険性を軽減させることができる。
【0011】
上記方法では、前記把持部によって前記シートリングの前記フランジ部を把持するとき、前記複数の把持片は、前記往復動軸線に接近する方向と前記往復動軸線に沿って前記弁本体に接近する方向に同時に移動されることが好ましい。シートリングのフランジ部の把持の際に、複数の把持片が往復動軸線に沿って弁本体に接近する方向に移動することにより、シートリングの本体部の把持されるフランジ部側の部分を本体部の内側に湾曲変形するように誘導し、不規則な変形を防止することが可能となる。
【0012】
上記方法では、前記弁体を前記弁本体に軸支する弁軸を取り付けるための弁軸孔が前記弁体に設けられていると共に、前記弁軸を貫通させるための弁軸貫通孔が前記シートリングに設けられており、前記弁体の前記弁軸孔が前記シートリングの前記弁軸貫通孔とを整列させた状態で前記弁体が前記シートリングの前記本体部内に予め装着されるようにしてもよい。この場合、前記把持部によって前記シートリングの一方の前記フランジ部を縮小させて把持した状態で、前記弁本体の内部流路の前記他方の側から前記一方の側へ前記把持部を通過させるとき、弁体押さえ機構によって前記弁体を押さえながら前記シートリングを移動させることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、第2の態様として、弁本体内に流路軸線に沿って延びる内部流路の内周面に、中心軸線に沿って延びる円筒状の本体部と該本体部の中心軸線方向両端部に設けられたフランジ部とを含むシートリングが装着されており、弁本体内に回動可能に軸支された円板状の弁体を弁本体内で回動させて弁体の周縁をシートリングの本体部の内周面に圧接、離間させることにより弁の開閉を行うバタフライ弁の組み立て装置であって、前記弁本体を支持する支持機構と、前記シートリングを保持するシートリング保持装置と、複数の把持片を含む把持部を有し、往復動軸線に沿った前記把持部の移動と、前記弁本体の内部流路を通過できるように前記複数の把持片を前記往復動軸線へ向かって接近させた収縮状態と前記シートリングの前記フランジ部の外縁を越えるまで前記複数の把持片を前記往復動軸線から離れる方向に移動させた拡開状態との間で前記往復動軸線に対して接近及び離反させる前記複数の把持片の移動とを行うことができる変形把持装置と、前記変形把持装置を制御する制御装置とを備え、前記支持機構が、前記変形把持装置の前記往復動軸線と前記弁本体の前記内部流路の前記流路軸線とが整列するように、前記弁本体を支持し、前記シートリング保持装置が、前記弁本体を挟んで前記変形把持装置と対向する位置に、前記フランジ部
の一方を前記弁本体へ向けて前記シートリングを保持し、前記制御装置は、前記収縮状態の前記把持部を前記往復動軸線に沿って移動させて前記支持機構によって支持された
前記弁本体の
前記内部流路の一方の側から他方の側へ前記把持部を通過させ、前記把持部を前記拡開状態にした後に、前記弁本体に近い側に位置する前記シートリングの前記フランジ部の周囲に前記把持部を配置
し、把持部を前記収縮状態に移動させることにより、前記シートリングの一方の前記フランジ部を縮小させて把持し
て、前記弁本体の内部流路の前記他方の側から前記一方の側へ前記把持部を通過させるように制御し、前記シートリングの他方の前記フランジ部を前記弁本体に接触させることにより、前記シートリングの前記一方の前記フランジ部を前記収縮状態の把持部から解放させ、前記シートリングを前記弁本体の前記内部流路に装着するバタフライ弁の組み立て装置を提供する。
【0014】
上記装置において、前記制御装置は、前記把持部によって前記シートリングの前記一方の前記フランジ部を把持するとき、前記往復動軸線に接近する方向と前記往復動軸線に沿って前記弁本体に接近する方向に同時に前記複数の把持片を移動させることが好ましい。
【0015】
この場合、さらに、前記複数の把持片を移動させるための移動機構が、アクチュエータによって往復動軸線周りに回転させられるはすば歯車と、該はすば歯車と噛合するように配置された複数のすぐばラックと、前記複数の把持片の各々をそれぞれ支持する複数の支持フレームとによって構成されており、前記複数のすぐばラックが前記複数の
支持フレームにそれぞれ固定されていることが好ましい。また、前記複数の把持片を移動させるための移動機構が、アクチュエータによって往復動軸線周りに回転させられる平歯車と、該平歯車と噛合するように配置された複数のはすばラックと、前記複数の把持片の各々をそれぞれ支持する複数の支持フレームとによって構成されており、前記複数のはすばラックが前記複数の
支持フレームにそれぞれ固定されているようにしてもよい。これにより、一つのアクチュエータを用いて、拡開状態と収縮状態との間の移動と往復動軸線に沿った移動とを同時に複数の把持片に行わせることが可能となる。アクチュエータは歯車を回転させることができれば、電気駆動、各種流体圧による駆動など任意の駆動方式を採用することができる。
【0016】
また、上記装置では、前記弁体を前記弁本体に軸支するための弁軸を取り付けるための弁軸孔が前記弁体に設けられていると共に、前記弁軸を貫通させるための弁軸貫通孔が前記シートリングに設けられており、前記弁体の前記弁軸孔と前記シートリングの前記弁軸貫通孔とを整列させた状態で前記弁体が前記シートリングの前記本体部内に予め装着され、前記バタフライ弁の組み立て装置は、前記シートリングに保持された前記弁体を押さえる弁体押さえ機構をさらに備え、前記弁体押さえ機構は、前記把持部によって前記シートリングの一方の前記フランジ部を縮小させて把持した状態で、前記弁本体の内部流路の前記他方の側から前記一方の側へ前記把持部を通過させるとき、前記弁体を押さえ続けるように移動されるようにしてもよい。
【0017】
さらに、上記装置では、前記複数の把持片の各々は、前記往復動軸線周りに延びる筒状環状体を複数に分割した形態の弧状把持片とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るバタフライ弁の組み立て方法及び装置によれば、変形把持装置の簡単な動作で、シートリングのフランジ部の一方に小さい変形を与えることにより、シートリングの破損や弁軸貫通孔等の変形などの発生を抑制しつつバタフライ弁の弁本体へのシートリングの装着が可能となる。また、装着の際に、シートリングのフランジ部の一方のみを変形させ変形量が少ないので、弁体などをシートリングに予め装着している場合でも、本発明を適用して、弁体などの部品を脱落させることなくバタフライ弁の組み立てを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明によるバタフライ弁の組み立て装置の全体構成を示す全体構成図である。
【
図3】
図1に示されているバタフライ弁の組み立て装置の変形把持装置の詳細図であり、複数の把持片が収縮状態にあるときを示しており、(a)が上面図、(b)が側面図である。
【
図4】
図1に示されているバタフライ弁の組み立て装置の変形把持装置の詳細図であり、複数の把持片が拡開状態にあるときを示しており、(a)が上面図、(b)が部分断面図である。
【
図5】バタフライ弁の組み立て装置を用いて、弁体を予め装着されたシートリングをバタフライ弁の弁本体に装着する手順を示す説明図である。
【
図6】バタフライ弁の組み立て装置を用いて、弁体を予め装着されたシートリングをバタフライ弁の弁本体に装着する手順を示す説明図である。
【
図7】バタフライ弁の組み立て装置を用いて、弁体を予め装着されたシートリングをバタフライ弁の弁本体に装着する手順を示す説明図である。
【
図8】バタフライ弁の組み立て装置を用いて、弁体を予め装着されたシートリングをバタフライ弁の弁本体に装着する手順を示す説明図である。
【
図9】バタフライ弁の組み立て装置を用いて、弁体を予め装着されたシートリングをバタフライ弁の弁本体に装着する手順を示す説明図である。
【
図10】バタフライ弁の組み立て装置を用いて、弁体を予め装着されたシートリングをバタフライ弁の弁本体に装着する手順を示す説明図である。
【
図11】変形把持装置の別の実施形態を示しており、(a)が上面図、(b)が部分断面図である。
【
図12】本発明によるバタフライ弁の組み立て方法及び装置を適用可能な他の構造のバタフライ弁を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明によるバタフライ弁の組み立て方法及び装置を説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0021】
バタフライ弁の組み立て装置11はバタフライ弁1の自動組み立てを行うための装置である。バタフライ弁1は、
図2に示されているように、弁本体3と、弁体5と、シートリング7とを少なくとも含んでいる。弁体5は、樹脂材料から形成されており、円板形状を有している。弁体5の中心部には、弁軸9を挿入するための弁軸孔5aが貫通して形成されている。弁本体3は、樹脂材料から形成されており、流路軸線に沿って延びる内部流路3aが弁本体3の内部に形成されている。また、弁本体3の外周の中央付近にはフランジ状の基板部3bが設けられていると共に、内部流路3aの径方向に互いに対向して一対の直線状の弁軸支持孔3cが形成され、一方の弁軸支持孔3cが基板部3bまで貫通して延びている。シートリング7は、弾性を有するエラストマ材料から形成されており、中心軸線に沿って延びる円筒状の本体部7aと、本体部7aの中心軸線方向の両端部に設けられた環状のフランジ部7bとを含む。シートリング7は、両端部のフランジ部7bの間に弁本体3を挟み込むようにして、弁本体3の内部流路3aに装着される。また、フランジ部7bは、弁本体3の両端部の内部流路3aの開口部の周囲に設けられた嵌合凹部3dに嵌合され、弁本体3に対するシートリング7の移動を防止するようになっている。さらに、シートリング7には、弁軸9を貫通させるための弁軸貫通孔7cが設けられており、シートリング7の弁軸貫通孔7c、弁体5の弁軸孔5aを弁本体3の弁軸支持孔3cと一直線上に整列させた状態で、これらに弁本体3の基板部3b側から弁軸9を挿入し、弁軸9と弁体5とを少なくとも相対的に回転できないように固定することにより、弁体5を弁本体3に回動可能に軸支される。弁軸9と弁体5とが少なくとも相対的に回転できないようにする固定は、例えば、多角形状の横断面を有した弁軸孔5aに挿入部分の横断面が相補的な多角形状を有した弁軸9を挿入したり、弁軸9と弁体5の弁軸孔5aに設けたキー溝にキーを係合させたりすることにより、可能となる。弁軸9の基端部は弁本体3の基板部3bから突出して延びており、この突出部分に、基板部3b上に設けられたレバー式駆動部、ギア式駆動部、自動式駆動部などの駆動部(図示せず)を接続することにより、弁体5を回動させ、弁本体3の内部流路3aに装着されたシートリング7の内周面に弁体5の周縁を圧接、離間させることにより、弁の開閉を行う。なお、弁本体3及び弁体5は、樹脂材料から形成されたものに限定されるものではなく、剛性材料であれば、例えば樹脂、金属又はその複合材料から形成されてもよい。また、弁本体3と弁体5は、異なる材料から形成されてもよい。さらに、シートリング7は、エラストマ材料から形成されたものに限定されるものではなく、例えば樹脂材料に全部又は一部を覆われたエラストマ材料から形成されてもよい。
【0022】
図1を参照すると、バタフライ弁1の組み立て装置11は、支持機構13と、シートリング保持装置15と、変形把持装置17と、制御装置19とを備えており、弁体5を予め装着されたシートリング7を弁本体3に自動的に装着し、バタフライ弁1を組み立てる。
【0023】
支持機構13は、変形把持装置17と対向する位置に弁本体3を支持するように配置される。支持機構13の中央部には、後述する収縮状態の変形把持装置17の把持部25の通過を許容する通過穴21が設けられており、支持機構13は、通過穴21と弁本体3の内部流路3aとが整列するように、弁本体3を位置決め支持する。支持機構13は、例えば、
図1に示されているように、把持部25の通過を許容する通過穴21と弁本体3を嵌合させることができる凹部とが形成された載置台を備え、載置台の凹部に弁本体3を嵌合させると、通過穴21の中心軸線、弁本体3の内部流路3aの流路軸線及び変形把持装置17の往復動軸線が一直線上に整列するような位置及び姿勢で弁本体3を支持するように構成され得る。
【0024】
シートリング保持装置15は、弁本体3を挟んで変形把持装置17と対向する位置に、フランジ部7bの一方を弁本体3へ向けるようにシートリング7を保持する。シートリング保持装置15によってシートリング7が保持されたときに、支持機構13によって支持される弁本体3の内部流路3aの流路軸線とシートリング7の本体部7aの中心軸線とが一直線上に整列されることが好ましい。また、シートリング保持装置15によってシートリング7が保持されると、支持機構13によって支持される弁本体3の弁軸支持孔3cとシートリング7の弁軸貫通孔7cとが平行な位置関係となることが好ましい。シートリング保持装置15は、例えば、
図1に示されているように、開閉式の一対のアームを備え、一対のアームの先端をシートリング7の本体部7aに設けられた弁軸貫通孔7cに挿入することによってシートリング7を保持するように構成することができる。この場合、一対のアームの各々の中央部は、互いから離れる方向に湾曲し、一対のアームの間にシートリング7を保持したときに一対のアームがシートリング7のフランジ部7bに干渉しないように形成される。
【0025】
弁体5が予め装着されたシートリング7をシートリング保持装置15に保持するようにしてもよい。この場合、弁体5は、弁全開方向の向きにしてシートリング7に装着される。また、支持機構13に対して接近、離反するように移動することができる弁体押さえ機構23を設けて弁体5の一部に係合させ、シートリング7を弁体5に装着する際にシートリング7に対して弁体5が回動するのを防ぐと共に、支持機構13によって支持される弁本体3に弁体5を押し付けながら弁本体3にシートリング7を装着できるようにすることが好ましい。さらに、シートリング保持装置15を支持機構13に接近及び離反させる方向に移動可能にしてもよい。
【0026】
変形把持装置17は、複数の把持片25aを含む把持部25を有している。把持部25は、往復動軸線に沿って移動し、シートリング保持装置15に保持されるシートリング7に対して接近及び離反することができる。また、把持部25の複数の把持片25aは、支持機構13によって支持された弁本体3の内部流路3aを通過できるように複数の把持片25aを往復動軸線へ向かって接近させた収縮状態(
図3参照)と、シートリング保持装置15に保持されたシートリング7のフランジ部7bの外縁を越えるまで複数の把持片25aを往復動軸線から離れる方向に移動させた拡開状態(
図4参照)との間で往復動軸線に対して接近及び離反する方向に移動することができ、シートリング7のフランジ部7bを取り囲むように拡開状態の複数の把持片25aを配置した後に拡開状態から収縮状態へ複数の把持片25aを移動させることによって、シートリング7のフランジ部7bを縮小させた状態に変形させて把持することができるようになっている。複数の把持片25aの各々は、筒状環状体を複数に分割した形態の弧状形状を有する弧状把持片によって構成されており、収縮状態において概略筒形状となることが好ましい。また、把持部25は、三つ以上且つ五つ以下の把持片25aによって構成されていることが好ましく、
図1に示されている実施形態では、把持部25は、四つの把持片25aを含むように構成されている。
【0027】
変形把持装置17は、支持機構13によって支持される弁本体3の内部流路3aの流路軸線と往復動軸線とが一直線上に整列するように配置される。したがって、シートリング保持装置15によって保持されるシートリング7へ向かって往復動軸線に沿って収縮状態の把持部25を移動させると、把持部25は、支持機構13の通過穴21及び弁本体3の内部流路3aを通過することができる。
【0028】
図3及び
図4は、それぞれ、
図1に示されている実施形態の変形把持装置17の把持部25が収縮状態及び拡開状態になっている状態を示している。なお、
図4においては、シリンダ装置17bの一部を省略して記載されている。
図1に示されている実施形態の変形把持装置17は、支持台17aと、支持台17aを往復動軸線方向に移動させるためのシリンダ装置17bと、支持台17a上に設けられ四つの弧状の把持片25aを含む把持部25と、支持台17a上で把持部25の各把持片25aを往復動軸線に対して垂直な方向に移動させるための四つのスライダ17cとによって構成されており、把持部25がシリンダ装置17bによって支持台17aと共に往復動軸線に沿って移動させられると共に、把持部25の各把持片25aが支持台17a上でスライダ17cによって往復動軸線に対して接近及び離反する方向に
図3に示されている収縮状態と
図4に示されている拡開状態との間で移動されるようになっている。また、弧状の把持片25aの下端部に往復動軸線に向かって延びる扇形状のタブ部25bが設けられており、タブ部25bをスライダ17cに固定することにより、把持片25aがスライダ17cによって移動されるようになっている。さらに、各弧状の把持片25aの先端部には、往復動軸線へ向かう方向に突出する線状の突起部25cが設けられており、把持部25を収縮状態にしてシートリング7のフランジ部7bを把持するときに把持片25aとフランジ部7bとを確実に係合させるようになっている。
【0029】
制御装置19は、変形把持装置17、シートリング保持装置15、及び弁体押さえ機構23の動作を制御する。制御装置19は、支持機構13によって弁本体3が支持され、シートリング保持装置15によってシートリング7が保持されると、変形把持装置17の把持部25を収縮状態にした後に往復動軸線に沿ってシートリング保持装置15によって保持されているシートリング7へ接近する方向へ移動させることによって、支持機構13によって支持される弁本体3の内部流路3aを通して支持機構13側からシートリング7側へ把持部25を通過させるように変形把持装置17の動作を制御する。
【0030】
また、制御装置19は、把持部25が弁本体3の内部流路3aを完全に通過すると、把持部25を拡開状態にして、弁本体3に近い側に位置するシートリング7のフランジ部7bの周囲を取り囲むように配置した後、往復動軸線に沿って弁本体3へ向かって把持部25を移動させながら把持部25を収縮状態にすることにより、弁本体3の内部流路3aを通過できる大きさまでシートリング7のフランジ部7bを縮小させて把持するように制御する。このように往復動軸線に沿って弁本体3へ向かって把持部25を移動させつつ把持部25を収縮状態にさせることにより、フランジ部7bを弁本体3側へ折り返してシートリング7の本体部7aの内部へ向かうようにフランジ部7bを変形させることができ、フランジ部7bの不規則な変形を防止すると共に、シートリング7の本体部7aの外径よりも小さいサイズにフランジ部7bを縮小させやすくなる。
【0031】
さらに、制御装置19は、フランジ部7bが把持部25によって把持されると、往復動軸線に沿って弁本体3へ向かって把持部25を移動させることによって、把持されたフランジ部7bを弁本体3の内部流路3aのシートリング保持装置15側から変形把持装置17側へ通過させるように変形把持装置17の動作を制御する。また、シートリング7に弁体5が予め装着されており、弁体押さえ機構23が設けられている場合、制御装置19は、往復動軸線に沿って弁本体3へ向かって把持部25を移動させるときに、弁体押さえ機構23を弁本体3へ向かって移動させて弁体5と係合させ続けるように制御し、シートリング7と共に弁体5を弁本体3の内部流路3a内に押し込ませる。
【0032】
次に、
図5から
図10を参照して、
図1に示されているバタフライ弁の組み立て装置11を用いたバタフライ弁の組み立て手順を説明する。なお、
図5から
図10では、簡略化のために、支持機構13、シートリング保持装置15、変形把持装置17の一部が省略されている。
【0033】
最初に、
図5に示されているように、弁本体3が支持機構13の載置台の凹部に嵌合され、弁本体3の内部流路3aの流路軸線と変形把持装置17の往復動軸線とが一直線上に整列するような位置及び姿勢で支持される。また、弁全開方向となる姿勢で且つ弁軸孔5aとシートリング7の弁軸貫通孔7cとが一直線上に整列するように弁体5がシートリング7に予め装着され、シートリング保持装置15の一対のアームの先端をシートリング7の本体部7aの弁軸貫通孔7cに挿入することによって、弁体5を予め装着したシートリング7がシートリング保持装置15によって保持される。このとき、弁体押さえ機構23が弁体5に係合し、シートリング7に対する回動が防止される。なお、一対のアームの各々の中央部は互いから離れる方向に湾曲しているので、一対のアームの間にシートリング7を保持したときに一対のアームがシートリング7のフランジ部7bに干渉することはない。
【0034】
次に、シリンダ装置17bによって支持台17aを移動させることによって、収縮状態にした変形把持装置17の把持部25を往復動軸線に沿ってシートリング7へ向かって上昇させる。収縮状態の把持部25は、支持機構13の通過穴21及び弁本体3の内部流路3aを通過することができる。把持部25が支持機構13によって支持される弁本体3の内部流路3aを完全に通過した後に、支持台17a上のスライダ17cにより各把持片25aを移動させることによって、
図6に示されているように、把持部25を拡開状態にして、シートリング保持装置15によって保持されるシートリング7の弁本体3に近い側(すなわち
図1における下側)のフランジ部7bの周囲を取り囲むように複数の把持片25aを配置させる。変形把持装置17の往復動軸線は、支持機構13によって支持される弁本体3の内部流路3aの流路軸線と一直線上に配置されるようになっている。したがって、弁本体3が支持機構13によって支持され且つシートリング7がシートリング保持装置15によって保持されたときに、弁本体3の内部流路3aの流路軸線とシートリング7の本体部7aの中心軸線とが一直線上に配置されるようになっていれば、拡開状態にした把持部25を往復動軸線に沿って移動させるだけで、シートリング保持装置15によって保持されるシートリング7の弁本体3に近い側のフランジ部7bの周囲を取り囲むように複数の把持片25aを配置させることができる。
【0035】
次に、
図7に示されているように、シリンダ装置16bを駆動することによって、往復動軸線に沿って弁本体3へ向かって把持部25を移動させながら、スライダ17cを駆動させることによって把持部25の複数の把持片25aを往復動軸線に接近させる。収縮状態の把持部25は支持機構13の通過穴21及び弁本体3の内部流路3aを通過することができる大きさであるので、
図8に示されているように、収縮状態になるまで把持部25の複数の把持片25aを往復動軸線に接近させると、収縮状態の把持部25に把持されるシートリング7のフランジ部7bも、支持機構13の通過穴21及び弁本体3の内部流路3aを通過することができる大きさに変形させられる。また、往復動軸線に沿って弁本体3へ向かって把持部25を移動させつつ把持部25を収縮状態にさせることにより、複数の把持片25aの突起部25cをフランジ部7bに係合させてフランジ部7bを弁本体3側へ折り返し、シートリング7の本体部7aの内部へ向かうようにフランジ部7bを変形させることができ、フランジ部7bの不規則な変形を防止すると共に、シートリング7の本体部7aの外径よりも小さいサイズにフランジ部7bを縮小させやすくなる。フランジ部7bが把持部25によって把持された後は、シートリング保持装置15は一対のアームによるシートリング7の保持を解除してもよく、シートリング保持装置15によるシートリング7の保持を継続してもよい。
【0036】
次に、シリンダ装置17bを駆動することによって、弁本体3側のフランジ部7bを把持した状態で、変形把持装置17の把持部25を往復動軸線に沿って弁本体3へ向かって下降させる。このとき、弁体押さえ機構23も往復動軸線に沿って下降し、弁体5との係合を継続させる。また、把持部25によるフランジ部7bの把持後もシートリング保持装置15によるシートリング7の保持を継続する場合は、往復動軸線に沿った把持部25の下降に伴って、シートリング保持装置15も下降させる。
【0037】
収縮状態の把持部25は、支持機構13の通過穴21及び弁本体3の内部流路3aを通過することができ、収縮状態の把持部25によって把持されるフランジ部7bも弁本体3の内部流路3aを通過することができる。しかしながら、把持部25によって把持されていない他方のフランジ部7bは、弁本体3の内部流路3aを通過することができない。したがって、収縮状態の把持部25を往復動軸線に沿って下降させると、
図9に示されているように、把持部25によって把持されるフランジ部7bが弁本体3の内部流路3aを通過し、把持部25によって把持されていない他方のフランジ部7bが弁本体3の内部流路3aの周囲の側面に接触して嵌合凹部3dに嵌合する。これにより、把持部25は往復動軸線に沿って下降する一方で把持部25によって把持されるシートリング7は下降を妨げられて往復動軸線に沿って移動できなくなり、
図10に示されているように、シートリング7のフランジ部7bが把持部25から解放され、フランジ部7bが変形状態から元の形状に回復して、弁本体3の内部流路3aの周囲の側面の嵌合凹部3dに嵌合し、二つのフランジ部7bの間に弁本体3を挟むように、シートリング7が弁本体3の内部流路3aに装着される。弁本体3の内部流路3aへのシートリング7の装着が完了すると、シートリング保持装置15及び弁体押さえ機構23は、上昇して、待機位置に再び配置される。
【0038】
シートリング7がシートリング保持装置15によって保持されたときに、支持機構13によって支持される弁本体3の弁軸支持孔3cとシートリング7の弁軸貫通孔7cとが平行な位置関係となっていれば、把持部25によるシートリング7のフランジ部7bの把持後もその状態が維持されるので、往復動軸線に沿って、シートリング7のフランジ部7bを把持した把持部25を下降させて弁本体3にシートリング7を装着したときに、弁本体3の弁軸支持孔3cとシートリング7の弁軸貫通孔7cとが一直線上に整列した状態となる。また、弁軸孔5aとシートリング7の弁軸貫通孔7cとが一直線上に整列するように弁体5がシートリング7に予め装着されているので、シートリング7が弁本体3に装着されたときに、弁本体3の弁軸支持孔3c、シートリング7の弁軸貫通孔7c及び弁体5の弁軸孔5aが一直線上に整列する。したがって、弁本体3に弁体5を回動可能に軸支するために、弁本体3の弁軸支持孔3cに弁軸9を挿入することが容易となる。
【0039】
なお、把持部25によるフランジ部7bの把持後もシートリング保持装置15によるシートリング7の保持を継続する場合は、
図9に示されているように、シートリング保持装置15の一対のアームが弁本体3と接触する前に、シートリング保持装置15の下降を停止させて、一対のアームを開くことによりシートリング保持装置15からシートリング7を解放し、シートリング保持装置15と弁本体3との干渉を回避する。また、弁体押さえ機構23が設けられている場合には、シートリング保持装置15の停止後も弁体押さえ機構23を下降させて、弁体5を弁本体3の内部流路3a内に押し込み、装着時におけるシートリング7からの弁体5の脱落を防止する。
【0040】
このように、バタフライ弁の組み立て装置11を用いれば、変形把持装置17の簡単な動作で、シートリング7のフランジ部7bの一方に小さい変形を与えることにより、シートリング7の破損や弁軸貫通孔7c等の変形などの発生を抑制しつつバタフライ弁1の弁本体3へのシートリング7の装着が可能となる。また、装着の際に、シートリング7のフランジ部7bの一方のみを変形させればよく変形量が少ないので、弁体5などをシートリング7に予め装着している場合でも、本発明を適用して、弁体5などの部品を脱落させることなくバタフライ弁1の組み立てを行うことが可能となる。
【0041】
図11は、バタフライ弁の組み立て装置11に使用される別の実施形態の変形把持装置17’を示している。
図11では、
図1と共通する構成要素に対して、同じ参照符号を付している。
【0042】
図1に示されている実施形態の変形把持装置17では、複数の把持片25aがスライダ17cによって支持台17a上で往復動軸線に対して垂直な方向にのみ移動できるようになっているのに対して、
図11に示されている変形把持装置17’では、複数の把持片25aがはすば歯車とすぐばラックとの組み合わせを用いて支持台17a上で往復動軸線に沿った移動と往復動軸線に対して接近離反する方向との移動を同時に行えるようになっている点において、
図11に示されている変形把持装置17’は
図1に示されている変形把持装置17と異なっている。
【0043】
変形把持装置17’においても、シリンダ装置17bが設けられており、往復動軸線に沿った支持台17aの移動がシリンダ装置17bによって行われる。一方、支持台17a上における複数の把持片25aの移動は、アクチュエータ27によって往復動軸線周りに回転駆動されるはすば歯車29と、各把持片25aから延びるタブ部25bに接続された支持フレーム33に取り付られ且つはすば歯車の外周に係合する複数のすぐばラック31(
図11では、四つのすぐばラック31)とによって行われる。アクチュエータ27ははすば歯車29を回転させることができれば、電気駆動、各種流体圧による駆動など任意の駆動方式を採用することができる。各すぐばラック31は、はすば歯車29の回転により、はすば歯車29の捻じれ角分だけ角度をもって往復動軸線に対して斜め方向に駆動されるため、すぐばラック31に接続されている各把持片25aは往復動軸線に沿った移動と同時に往復動軸線に対して接近及び離反する方向の移動を行うことができる。したがって、把持部25によるシートリング7のフランジ部7bの把持の際に、電気的又は流体的な制御を要することなく機械的に、複数の把持片25aを下降させつつ往復動軸線へ向かって接近させる移動の制御を行い、フランジ部7bを弁本体3側へ折り返して、シートリング7の本体部7aの内部へ向かうようにフランジ部7bを変形させることができる。機械的な制御により、誤作動を防止することが可能となる。
【0044】
以上、図示された実施形態を参照して、本発明によるバタフライ弁の組み立て方法及び装置を説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではない。例えば、
図11に示されている実施形態では、変形把持装置17’において、はすば歯車29を回転させ、はすば歯車29に係合するすぐばラック31により複数の把持片25aを往復動軸線に対して斜め方向に移動させているが、はすば歯車29の代わりに平歯車を回転させると共に斜めに歯筋が延びるはすばラックを平歯車に係合させ、はすばラックにより複数の把持片25aを往復動軸線に対して斜め方向に移動させるようにしてもよい。また、本発明によるバタフライ弁の組み立て方法及び装置が適用可能なバタフライ弁として、
図2に示されているバタフライ弁1が例示されており、バタフライ弁1では、弁体5の弁軸孔5aに一つの弁軸9を挿入することにより、弁本体3に弁体5を回動可能に軸支している。しかしながら、本発明によるバタフライ弁の組み立て方法及び装置が適用可能なバタフライ弁における弁本体への弁体の軸支方式は、限定されるものではない。例えば、弁体5において同一軸線上の正反対の位置に設けられた二つの弁軸孔5a’、5a’と弁本体3に設けられた弁軸支持孔3c’、3c’にそれぞれ弁軸9’、9’を挿入することにより弁本体3に弁体5を軸支するタイプの
図12に示されているバタフライ弁1’の組み立てにも、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 バタフライ弁
3 弁本体
3a 内部流路
3b 基板部
3c 弁軸支持孔
3d 嵌合凹部
5 弁体
5a 弁軸孔
7 シートリング
7a 本体部
7b フランジ部
7c 弁軸貫通孔
9 弁軸
11 組み立て装置
13 支持機構
15 シートリング保持装置
17 変形把持装置
17a 支持台
17b シリンダ装置
17c スライダ
19 制御装置
21 通過穴
23 弁体押さえ機構
25 把持部
25a 把持片
25b タブ部
25c 突起部