(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6462354
(24)【登録日】2019年1月11日
(45)【発行日】2019年1月30日
(54)【発明の名称】エッジエンボスリング
(51)【国際特許分類】
B31F 1/07 20060101AFI20190121BHJP
A47K 10/16 20060101ALN20190121BHJP
【FI】
B31F1/07
!A47K10/16 D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-260984(P2014-260984)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-120623(P2016-120623A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504030004
【氏名又は名称】大阪利器製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】藁科 真一
(72)【発明者】
【氏名】上村 芳之
【審査官】
小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−087875(JP,A)
【文献】
特開2009−153754(JP,A)
【文献】
特開2007−089825(JP,A)
【文献】
特開2008−126254(JP,A)
【文献】
特開2013−031903(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01493552(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31F 1/07
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面の回転する方向に沿って所定間隔で凸部が配置されたパターンリングが、他の部材に対して着脱自在であって、かつ、前記凸部の底面よりも軸心側に位置するパターンリングの外周縁部分が前記他の部材の外周縁よりも外方に位置するようにして組み付けられ、前記外周縁部分の切削によって凸部の再生を可能とした、ことを特徴とするエッジエンボスリング。
【請求項2】
周面の回転する方向に沿って所定間隔で凸部が配置されたパターンリングを複数と、
それら複数のパターンリングを軸心が一致するようにして各々を着脱自在に係止するリングホルダーと、
前記リングホルダーとの間にパターンリングを挟み込んで前記リングホルダーとともにパターンリングを押さえる着脱自在な押さえリングと、
前記押さえリングとリングホルダーと各パターンリングとを再分解再組立て可能に固定して一体化する固定手段とを備え、
前記各パターンリングが、前記凸部の底面よりも軸心側に位置する外周縁部分が、前記押さえリングとリングホルダーの外周縁よりも外方に突出して位置するようにして組み付けられ、前記外周縁部分の切削によって凸部の再生を可能とした、
ことを特徴とするエッジエンボスリング。
【請求項3】
パターンリングの間に介在してパターンリング間の間隔を調整する着脱自在なスペーサーリングを有し、このスペーサーリングが前記固定手段によって、押さえリングとリングホルダーと複数のパターンリングとともに再分解再組立て可能に固定されて一体化されている、請求項2記載のエッジエンボスリング。
【請求項4】
各パターンリングが、それぞれ回転する方向に位置調整可能とされ、各々が調整可能な適宜の位置で前記固定手段によって固定されて一体化される、請求項2又は3記載のエッジエンボスリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数プライの衛生薄葉紙がプライ剥離しないように積層一体化するために用いられるエッジエンボスリングに関する。特に、重ね合わされた帯状の複数枚の衛生薄葉紙の原紙に対して、その連続方向に沿って型押しすることで積層一体化するために用いられるエッジエンボスリングに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーやティシュペーパーなどの衛生薄葉紙には、複数枚の原紙が重ねられた複数プライのものがある。このような複数プライの衛生薄葉紙は、使用する際などに各原紙同士が剥離してしまわないように、各原紙同士をエンボスによって圧着して積層一体化されているものがある。複数プライの衛生薄葉紙の製品例として、
図15に複数プライのトイレットペーパーを巻いたトイレットロール100を示す。このトイレットロール100では、トイレットペーパー101の両縁に沿ってエンボス102が付与されており、使用時に各原紙101A,101Bがプライ剥離しないようにしている。このエンボス102は、エッジエンボス、ナーリング処理、コンタクトエンボスなどとも称されている(本発明及び本明細書ではエッジエンボスという)。
【0003】
衛生薄葉紙へのエッジエンボスの付与は、重ね合わせた原紙を、周面に複数の凸部が所定のパターンで配列された比較的幅の狭いエンボスリングと、エンボスリングを受ける金属製又はゴム製の受けロールとの間を通して行われる。
【0004】
一方で、エッジエンボスは、プライ剥離の防止性とともに、紙面に目立たず配されていることが求められる。例えば、意匠性向上のために紙面全体に付与されるデザインエンボスの意匠性に影響を与えないように目立たないことが求められる。このようなエッジエンボスに対する要求から、エッジエンボスを付与するエンボスリングでは、一つの凸部の大きさを小さくし、また、そのような小さい凸部を分散的に配置する傾向にあり、そのパターンは複雑化してきている。一例として、
図16に示すように、比較的小さい面積の凸部111が所定間隔で並ぶ列111Lを、複数列配するようにして分散的に配置したりしている。
【0005】
他方、衛生薄葉紙においては、トイレットペーパー、ティシュペーパーといった用途の違いがある。さらに、近年は特に、トイレットペーパーの中だけでも汎用に加え厚手で高級なシャワートイレ用のものが開発されたり、ティシュペーパーにおいても汎用のほかに薬液付与タイプのものが開発されたりするなど、衛生薄葉紙の種類用途は多様化してきている。そして、それにともなって、原紙紙厚や素材も多様化してきており、それゆえそれらの衛生薄葉紙の用途毎の製品の種類に適したエッジエンボスのパターンとすることも求められはじめている。
【0006】
ここで、エッジエンボスを付与するための前記エンボスリング(本発明及び本明細書ではエッジエンボスリングという)は、焼入れ工具鋼等の硬質鋼材により形成されており、その周面をマシニング機(マシニングセンターとも称される)によって切削加工等することよって凸部を形成している。そして、上述のような凸部を分散配置等のパターンの複雑化にともなって、マシニング機による製造の困難性も高まり、エッジエンボスリングは高価になってきている。
【0007】
その一方で、エッジエンボスリングは、凸部の面積を小さくすると摩耗が早くなり交換頻度も高まり、また、ある凸部のみが摩耗してしまうようなこともある。さらに、エッジエンボスリングの周面を紙面に接触させてエッジエンボスを付与する際には、紙面に対して傾いて接触してしまう「片あたり」という現象が発生してしまうことがあり、特に上記のような凸部が並ぶ列を複数列を有するようなパターンでは、ある列のみの凸部が早く摩耗してしまうことがある。
【0008】
従来のエッジエンボスリングは、このような摩耗が生じた場合、エッジエンボスのパターンが配されている部分全体を交換しなければならない。また、衛生薄葉紙の用途等に応じてエッジエンボスのパターンを変更する際にも同様に全体の交換が必須であった。
【0009】
このように、エッジエンボスリングにおいては、パターンの複雑化に伴って製造の困難性が高まり、またそれゆえ価格も上昇しているにも関わらず、摩耗が発生しやすく交換が必要となる機会が増加している。また、パターン変更を簡易に行ないたいとの要求も増加してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−173267号公報
【特許文献2】特開2007−143659号公報
【特許文献3】特開2006−271458号公報
【特許文献4】特開2003−180550号公報
【特許文献5】特開2002−227099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の主たる課題は、摩耗が生じた際に凸部の再生が可能であり、エッジエンボスリングの全体、エッジエンボスのパターンが配されている部材全体を頻繁に交換する必要がないエッジエンボスリングを提供することにあり、さらには、エッジエンボスのパターン配列を変更することも可能で、しかも、製造が容易なエッジエンボスリングをも提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0013】
〔請求項1記載の発明〕
周面の回転する方向に沿って所定間隔で凸部が配置されたパターンリングが、他の部材に対して着脱自在であって、かつ、前記凸部の底面よりも軸心側に位置する
パターンリングの外周縁部分が前記他の部材
の外周縁よりも外方に位置するようにして組み付けられ、前記外周縁部分の切削によって凸部の再生を可能とした、ことを特徴とするエッジエンボスリング。
【0014】
〔請求項2記載の発明〕
周面の回転する方向に沿って所定間隔で凸部が配置されたパターンリングを複数と、
それら複数のパターンリングを軸心が一致するようにして各々を着脱自在に係止するリングホルダーと、
前記リングホルダーとの間にパターンリングを挟み込んで前記リングホルダーとともにパターンリングを押さえる着脱自在な押さえリングと、
前記押さえリングとリングホルダーと各パターンリングとを再分解再組立て可能に固定して一体化する固定手段とを備え、
前記各パターンリングが、前記凸部の底面よりも軸心側に位置する外周縁部分が、前記押さえリングとリングホルダーの外周縁よりも外方に突出して位置するようにして組み付けられ、前記外周縁部分の切削によって凸部の再生を可能とした、
ことを特徴とするエッジエンボスリング。
【0015】
〔請求項3記載の発明〕
パターンリングの間に介在してパターンリング間の間隔を調整する着脱自在なスペーサーリングを有し、このスペーサーリングが前記固定手段によって、押さえリングとリングホルダーと複数のパターンリングとともに再分解再組立て可能に固定されて一体化されている、請求項2記載のエッジエンボスリング。
【0016】
〔請求項4記載の発明〕
各パターンリングが、それぞれ回転する方向に位置調整可能とされ、各々が調整可能な適宜の位置で前記固定手段によって固定されて一体化される、請求項2又は3記載のエッジエンボスリング。
【発明の効果】
【0017】
以上の本発明によれば、摩耗が生じた際に凸部の再生が可能であり、エッジエンボスリングの全体、少なくともエッジエンボスのパターンが配されている部材全体を頻繁に交換する必要がないエッジエンボスリングが提供され、さらに、エッジエンボスのパターン配列を変更することも可能で、しかも、製造が容易なエッジエンボスリングをも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るエッジエンボスリングの正面及び側面を表した図である。
【
図2】本発明に係るエッジエンボスリングの分解図である。
【
図3】本発明に係るエッジエンボスリングの一部(
図1のA部分)の拡大正面図である。
【
図4】本発明に係るエッジエンボスリングの分解状態の一部拡大断面図である。
【
図5】本発明に係るエッジエンボスリングの組立て状態の一部拡大断面図である。
【
図6】本発明に係るエッジエンボスリングの再利用を説明するための図である。
【
図7】本発明に係るパターンリングの他の例を示す図である。
【
図8】本発明に係るパターンリングの別の例を示す図である。
【
図9】本発明に係るエッジエンボスリングの組立て状態のバリエーションを説明するための図である。
【
図10】本発明に係るエッジエンボスリングの他の形態の一部(
図1のA部分に相当する部分)の拡大正面図及び拡大断面図である。
【
図11】本発明に係るエッジエンボスリングの別の形態の一部(
図1のA部分に相当する部分)の拡大正面図及び拡大断面図である。
【
図12】本発明に係るエッジエンボスリングのさらに別の形態の一部(
図1のA部分に相当する部分)の拡大断面図である。
【
図13】本発明に係るエッジエンボスリングの使用態様を説明するための概略図である。
【
図14】本発明に係るエッジエンボスリングの使用態様を説明するための他の概略図である。
【
図15】エッジエンボスが付与された衛生薄葉紙の製品例である、2プライのトイレットロールを示す斜視図である。
【
図16】エッジエンボスのパターン例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次いで、本発明の実施形態を
図1〜13を参照しながら以下に詳述する。
【0020】
図1〜
図5に示す実施形態のエッジエンボスリング1は、複数のパターンリング10,10,10、スペーサーリング20,20、支持リング30,30、リングホルダー40及び押さえリング50のリング状の各部材を有しており、これらのリング状の各部材10,20,30,40,50が、固定手段によって軸心Xを一致させた状態で再分解・再組立て可能に組立てられて、一体のリング状に構成され、各パターンリング10の周面に形成された凸部11が組み合わされた凸部11の配列パターンを有するものとなっている。なお、エッジエンボスリング1の構成部材は、これらのみに限られるものではない。本発明の作用効果を妨げない範囲で適宜の他の構成部材を有していてもよい。例えば、各リング部材間にそれらの密着性を高めるためのガスケットを配するなどしてもよい。
【0021】
パターンリング10は、周面の回転方向に沿って所定間隔で凸部11,11…が配置されているリング状の部材である。なお、図示の形態では、その周面に矩形の凸部11が、回転方向に一定間隔で並ぶ列が一列配置された形態となっているが、本発明においては、各パターンリング10における凸部11の大きさ、高さ、形状、凸部間の間隔、凸部が並ぶ列数、さらにパターンリング10の厚みは、特に限定されるものではない。これらは、エッジエンボス付与の対象である衛生薄葉紙の用途、原紙の組成・物性に応じて適宜に設計することができる。また、図示の形態では、各パターンリング10における凸部11の配列パターンが同一であるが、このように同一である必要もない。但し、組立て状態において各パターンリング10における凸部11が、所望のパターンで紙面に接するように、各パターンリング10における軸心Xから凸部11の頂面までの距離を一致させるなど、適宜に設計する。
【0022】
スペーサーリング20は、パターンリング10,10,10の間に配置され、パターンリング10,10,10間の間隔を調整するものである。スペーサーリング20は、パターンリング10の凸部11が紙面に適切な圧力で接することができるように、その外径は、組立て時においてその外周面がパターンリング10の凸部11の頂面よりも軸心側に位置する径とする必要がある。このスペーサーリング20の有無及びスペーサーリング20の厚みによってパターンリング10,10,10の間隔が調整される。この調整によって、各パターンリング10の外周面に回転方向に沿って所定間隔で並ぶ凸部11による列の離間距離を任意に調整することが可能となる。なお、図示の形態では、パターンリング10,10の間に一枚のスペーサーリング20が介在されている例を示しているが、パターンリング10,10の間には一枚のみならず複数のスペーサーリング20を介在させることもできる。
【0023】
支持リング30は、パターンリング10とリングホルダー40のリング板状部41との間、押さえリング50とパターンリング10との間に介在して、リングホルダー40と押さえリング50による押圧力をパターンリング10に効率よく伝達するようにして支持するものである。この支持リング30によって、パターンリング10の軸心方向へのブレやがたつきが効果的に抑制される。
【0024】
リングホルダー40は、平板環状のリング状板部41とその内周縁から軸心方向の一方側に突出する係止筒部42を有し、この係止筒部42の外径が、パターンリング10、スペーサーリング20及び支持リング30の内径と等しいか極若干小さく形成され、前記係止筒部42が複数のパターンリング10,10,10、スペーサーリング20,20及び支持リング30,30に面一に挿入されることにより、パターンリング10,10,10、スペーサーリング20,20及び支持リング30,30がリングホルダー40に対して軸心一致かつ着脱自在に係止される。なお、図示の形態では、好ましい形態として、押さえリング50の内径もパターンリング10、スペーサーリング20及び支持リング30と同径とされており、係止筒部42が押さえリング50にも挿入されることで、押さえリング50も軸心一致に容易に着脱自在に係止可能となっている。また、図示の形態では、パターンリング10、スペーサーリング20及び支持リング30、さらに押さえリング50を軸心一致に係止する係止手段として、リングホルダー40に係止筒部42を形成するとともに、その外径とパターンリング10、スペーサーリング20及び支持リング30、さらに押さえリング50の内径を一致等に形成するようにした係止構造としているが、本発明に係る係止手段は、かかる係止構造に限定されるものではない。例えば、リングホルダー40のリング状板部41の内周縁から突出する係止筒部42ではなく、外周側が湾曲面とされ、パターンリング等10,20,30,50の内周面に面一となる係止凸片など、リングホルダー40のリング状板部41の内周縁から突出する部分を筒形状ではない形状とした係止構造が挙げられる。また、パターンリング等10,20,30,50の内周面に軸心方向に延在する一又は複数の溝部を形成したものとするとともに、前記リングホルダー40を、リング状板部41から軸心方向の一方に向かって係止凸片を延在させたものとして、その係止凸片を溝部に嵌合するようにして、パターンリング等10,20,30,50を軸心一致かつ着脱自在に係止する係止構造としてもよい。さらに、パターンリング等10,20,30,50に貫通孔を設け、前記リングホルダー40のリング状板部41から軸心方向の一方に向かって係止凸部を延在させその貫通孔に差し込むことで着脱自在に係止する係止構造としてもよい。リング状板部41は、パターンリング10等が係止筒部42等から抜けることを防止する抜け止めの効果と、押さえリング50とともに、パターンリング10、スペーサーリング20及び支持リング30を挟持して位置固定する部分であり、その側面は隣接するパターンリング10、スペーサーリング20又は支持リング30に面接するように構成するのが望ましい。
【0025】
押さえリング50は、リングホルダー40のリング状板部41とでパターンリング10,10,10、スペーサーリング20,20及び支持リング30,30を挟み込んでリングホルダー40とともにパターンリング10等を押さえるものである。押さえリング50は、パターンリング10、スペーサーリング20又は支持リング30の側面に押しあて可能な形状であればよく、必ずしもその側面が平面である必要はないが、平面としてパターンリング10、スペーサーリング20又は支持リング30の側面に面接するようにしたほうが、パターンリング10等の固定、押し当てが効果的となるため望ましい。
【0026】
一方、実施形態に係るエッジエンボスリング1は、上記のとおり各リング部材10,20,30,40,50が互いに係止された状態で、これらの各部材10,20,30,40,50が再分解、再組立て可能な固定手段によって固定されて一体化されている。
【0027】
実施形態に係るエッジエンボスリング1における固定手段は、押さえリング50、パターンリング10,10,10、スペーサーリング20,20及び支持リング30,30の各部材が、軸心Xから外周面へ向かう半径方向に同一距離離間した位置にネジ挿通孔61が形成されたものとなっているとともに、リングホルダー40のリング状板部41には、前記押さえリング50、パターンリング10,10,10、スペーサーリング20,20及び支持リング30,30がそのリングホルダー40に係止された状態においてそれらの部材の前記ネジ挿通孔61に対応一致する位置に雌ネジ部62が形成されたものとなっており、少なくとも先端に雄ネジ部63を有するネジ部材65を前記押さえリング50、パターンリング10,10,10、スペーサーリング20,20及び支持リング30,30のネジ挿通孔61,61…に嵌通して前記雌ネジ部62に螺合させることにより各部材10,20,30,40,50が固定される固定構造となっている。図示の形態では、特に、ネジ部材65が先端のみに雄ネジ部63を有し、基端との間の胴部64はネジ部を有さないものとなっているとともに、その胴部64の直径が前記押さえリング50、パターンリング10,10,10、スペーサーリング20,20及び支持リング30,30のネジ挿通孔61,61…の内周面と少なくとも二面で一致するように形成され、固定時の半径方向へのがたつきが生じないように固定されるように形成されている。また、図示の形態では、ネジ部材65が最初に挿通される押さえリング50のネジ挿通孔61はざぐり加工61Aが施されているとともに、前記ネジ部材65の頭部66が皿ビス形態となっており、ネジ部材65による固定が完了した際に押さえリング50の側面とネジ部材65の頭部頂面とが面一となり、また、ネジ部材65の締付けによって生ずる押さえリング50による各部材の押圧による固定力が効果的に伝わるようになっている。ここで、図示の実施形態では、固定手段として、ネジ部材65をリングホルダー40に形成された雌ネジ部62に螺合される固定構造としているが、固定手段は、この例に限らず、例えば、リングホルダーを雌ネジ部とせずに、単なる貫通孔としてネジ部材を貫通させた上、ナットによって締付けるボルト・ナットによる締結構造としてもよい。また、公知のクイックリリースピンによる締結構造としてもよい。また、図示の形態では、軸心から半径方向に適宜の位置において等間隔で八箇所においてネジ部材65によって各リング部材をリングホルダー40に対して固定するようにしているが、この形態に限らず固定箇所については適宜に設計することができる。
【0028】
ここで、実施形態のエッジエンボスリング1では、特に、
図3〜5に示されるように、特徴的に、上記の組立て構造においてその組立て時に各パターンリング10,10,10が、凸部11,11…の底面以下の所定深さ範囲、すなわち底面よりも軸心側に位置する範囲である外周縁部分12が、押さえリング50とリングホルダー40の外周縁Eよりも外方に突出して位置するようになっている。すなわち、パターンリング10が押さえリング50やリングホルダー40のリング状板部41よりもやや大径となっている。そして、パターンリング10の材質は、焼入れ工具鋼など従来のエッジエンボスリングにおいて凸部を形成可能な公知の材質とされ、前記外周縁部分12を再切削して凸部を再生することが可能となっている。
【0029】
したがって、
図6(A)に示すように、エッジエンボスリング1を使用して、その凸部11が摩耗した際には、分解してパターンリング10の外周縁部分12を再切削して凸部11を再生し、その後に、
図6(B)及び(C)に示すように、リングホルダー40や押さえリング50に対して再組み付けを行なっても、その再生された凸部11Rがリングホルダー40のリング状板部41や押さえリング50の外周縁Eよりも突出して位置することになる。スペーサーリング20や支持リング30については、パターンリング10と同様の材質として、外周縁部分12に対応する外周縁部を切削して小径化して再利用してもよいし、予め外周縁部分12を切削して凸部11が再生されたパターンリング10の径に対応するような小径のものを用意して、これに交換するようにしてもよい。このように、本実施形態のエッジエンボスリング1では、パターンリング10の凸部11が摩耗した際に、再切削によってその凸部11を再生でき、エッジエンボスリング1全体として再度の利用が可能となる。なお、スペーサーリング20や支持リング30については、再生前においても外周縁部分12が外周側に突出されるように、予め軸心から外周縁部分12までの半径よりも小さい半径の小径のものを利用するようにしてもよいが、このようにスペーサーリング20や支持リング30を小径にすると凸部再生前のパターンリング10の支持力が低下して軸心方向へのがたつきが生じやすくなるため、パターンリング10の凸部11のみが突出するようになる程度の径とするのが望ましい。また、外周縁部分12の軸心側の深さ範囲は、再生する凸部の高さ等を考慮して適宜の深さ範囲とすればよい。例えば、エッジエンボスリングにおける凸部の高さは0.5〜2.0mm程度であるので、これと同程度か表面切削部分を0.1〜0.5mm程度加えた深さとすればよい。
【0030】
押さえリング50及びリングホルダー40の材質については、特に限定されるものではない。パターンリング10と同様に、焼入れ工具鋼など従来のエッジエンボスリングにおいて用いられる公知の材質とすることができる。
【0031】
また、特に、実施形態の複数のパターンリング10,10,10を有するエッジエンボスリング1では、マシニング機でなければ形成できなかった凸部11の配列パターンを、マシニング機での切削加工に比して簡易かつ低コストなワイヤーカット(ワイヤー放電加工などとも称される)によって形成することも可能であり、この点において優れた利点をも有する。例えば、
図16に示すような3列の凸部列が並ぶ配列パターンにおいて、各列における凸部が軸心方向で一部重なる部分(
図16中重なり部分を符号Dで示す)を有していると、パターンリングが分割されないエッジエンボスリングでは、軸心方向にワイヤーを通すことができないためワイヤーカットで凸部を形成することはできない。しかし、実施形態の複数のパターンリング10,10,10を分解、再組立て可能にしたものとすれば、周面に凸部が回転方向に一定間隔で並ぶ列が一列配置された凸部の配列パターンは、パターンリング自体が薄く加工が容易であり、また、軸心方向、回転方向にワイヤーを通すことが可能であるため、ワイヤーカットによって形成することができる。そして、この実施形態のエッジエンボスリング1では、係るパターンリングを複数枚、回転方向に適宜にずらして固定することで、各パターンリング間における凸部の回転方向における相対的な位置がずれ、もって
図16のような配列パターンを構築することができる。すなわち、本実施形態に係るエッジエンボスリング1では、従来、マシニング機でなければ形成できなかった凸部の配列パターンを、ワイヤーカットによって簡易かつ低コストに形成することができる。
【0032】
以上のとおり、エッジエンボスリング1では、ネジ部材65を螺合させることで組立てられ、また、ネジ部材65を緩めて取り外すことで各部材10,20,30,40,50が分解される。そして、その分解されたパターンリング10の外周縁部分12を再切削して凸部11を再生して再利用することができる。このため、エッジエンボスリング1の交換頻度を減少させコストを低減させることができる。さらに、パターンリング10を複数にすることでそこに形成する凸部11の簡素な配列パターンとしても、各パターンリング10の組み合わせによって複雑なパターンとすることができる。また、各パターンリング10におけるワイヤーカットやマシニング機による切削加工も容易となり、凸部形成に係るコストも低減される。
【0033】
他方で、エッジエンボスリング1においては、
図7に示すように、パターンリング10に形成するネジ挿通孔61を、パターンリング10の軸心から一定距離の同心円上に一致する長軸を有する長孔にしたり、又は、
図8に示すようにネジ挿通孔61を一部連通して複数設ける等するのが望ましい。このようにすることによって、パターンリング10をネジ部材65によって固定する際に、回転方向の適宜の位置に調整して固定することが可能となる。すなわち、各パターンリング10の凸部11の相対的な位置を回転方向に適宜にずらして固定することが可能となり、
図9(a),(b)に示すように、各パターンリング10の凸部11の位置を適宜に変更して、エッジエンボスリング1全体としての凸部11の配列パターンを変更することが可能となる。
【0034】
なお、上記の説明のエッジエンボスリング1は、スペーサーリング20及び支持リング30を備える形態を例に説明したが、本発明においてはスペーサーリング20及び支持リング30は必ずしも必須ではない。例えば、
図10に示すように押さえリング50及びリングホルダー40のリング状板部41とパターンリング10との間に支持リング30を有さない形態とすることもできる。但し、支持リング30を備えるほうが押さえリング50とリングホルダー40のリング状板部41との挟持力をパターンリング10に効果的に伝達でき、パターンリング10の軸心方向のブレやがたつきが効果的に防止されるようになるので、支持リング30を有する形態のほうが望ましい。また、
図11に示すようにスペーサーリング20を配さない形態とすることもできる。この場合には、隣接するパターンリング10,10の凸部が一体となって一つの凸部を形成するようにしてもよい。
【0035】
さらに、本発明に係るエッジエンボスリング1は、
図12に示すようにパターリング10が分割されない形態とすることもできる。この形態においても、凸部11の再生によるパターンリング10の再利用の効果は奏する。
【0036】
ここで、エッジエンボスリング1の使用について説明すると、エッジエンボスリング1は、
図13に示されるように、例えば、クランプ2に固定される軸3の両端に対して図示されないボールベアリング軸受け5等を係止筒部42内等のその孔に介在させて回転自在に取り付ける。そして、
図13及び
図14に示すように、複数の原反ロール80,80から単層の原紙81,81を繰り出し、その後に各原紙81,81を重ねて積層状態(積層状態の原紙は符号81Aとする)として、その積層状態でエッジエンボスリング1と、このエッジエンボスリング1を受ける金属製又はゴム製の受けロール6との間を通紙させて行なう。エッジエンボスリング1の凸部11の再生によりパターンリング10の径が小さくなった場合には、クランプ2の位置調整を行なうなどして原紙に対する圧接具合を調整すればよい。エッジエンボスリング1と受けロール6との間を通過した原紙81Aは後段の工程で巻き取られてロール状にされる等の処理がなされる。例えば、トイレットロールとするのであれば、トイレットロールの直径と同径に巻き取ってログと称されるロール状の中間製品とされ、ティシュペーパーとするのであれば、その後の折畳み設備へ供給するための原反ロールに巻き取られる。なお、
図14では、エッジエンボスリング1が上方、受けロール6が下方位置となっているがこれらロールの位置関係は、これに限られたものではなく、エッジエンボスリング1と受けロール6の配置は、
図14の位置と上下逆転していても良い。また、
図14では、各々単層の原紙81を巻き取った原反ロール80から各々原紙81,81を繰り出しているが、予め複数枚が積層された原紙81Aを巻き取った原反ロールから原紙を繰出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…エッジエンボスリング、10…パターンリング、20…スペーサーリング、30…支持リング、40…リングホルダー、41…リング状板部、42…係止筒部、50…押さえリング、X…軸心、11,111…凸部、61…ネジ挿通孔、62…雌ネジ部、63…雄ネジ部、64…胴部、65…ネジ部材、66…頭部、61A…ざぐり加工、12…外周縁部分、2…クランプ、3…軸、5…ボールベアリング軸受け、6…受けロール、80…原反ロール、81…原紙、100…トイレットロール、101…トイレットペーパー、101A,101B…トイレットペーパー原紙、102…エンボス、111L…凸部列。