(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.一実施形態
本発明のカーボンナノチューブ複合繊維の製造方法は、例えば、
図2および
図3に示すように、芯材2を準備する工程と、基板8上に配置される複数のカーボンナノチューブ12を準備する工程と、基板8上の複数のカーボンナノチューブ12からカーボンナノチューブ無撚糸3を引き出す工程と、芯材2にカーボンナノチューブ無撚糸3を巻き付けて、複合繊維前駆体4を調製する工程と、複合繊維前駆体4を加熱処理して、カーボンナノチューブ複合繊維1を調製する工程とを含んでいる。
【0033】
このような製造方法では、まず、芯材2およびカーボンナノチューブ無撚糸3のそれぞれを準備する。
【0034】
芯材2は、所定方向に延びる線形状を有している。芯材2の断面形状(芯材2を所定方向と直交する方向に切断したときの断面形状)は、特に制限されず、例えば、円形状、多角形状(例えば、四角形状、六角形状、八角形状など)などが挙げられ、中空であってもよく、中実であってもよい。このような芯材2の断面形状のなかでは、
図4に示すように、好ましくは、円形形状、さらに好ましくは、中実の円形形状が挙げられる。
【0035】
芯材2の材料は、カーボンナノチューブ複合繊維1の用途により適宜選択されるが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属、高分子材料などが挙げられ、好ましくは、金属および高分子材料が挙げられる。
【0036】
金属としては、特に制限されず、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、スズ、白金、金、および、それらを含む合金などが挙げられる。このような金属のなかでは、好ましくは、アルミニウム、チタン、銅、銀、金、および、それらを含む合金が挙げられ、さらに好ましくは、銅が挙げられる。
【0037】
高分子材料としては、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0038】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリアミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP))、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタンなどが挙げられる。このような熱可塑性樹脂のなかでは、好ましくは、ポリエステルが挙げられる。
【0039】
芯材2の断面形状が円形状である場合、芯材2の外径は、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上、例えば、2000μm以下、好ましくは、1500μm以下である。
【0040】
より具体的には、芯材2の断面形状が円形状であり、かつ、芯材2の材料が金属である場合、芯材2の外径は、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上、例えば、300μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0041】
芯材2の断面形状が円形状であり、かつ、芯材2の材料が高分子材料である場合、芯材2の外径は、例えば、100μm以上、好ましくは、500μm以上、例えば、2000μm以下、好ましくは、1500μm以下である。
【0042】
カーボンナノチューブ無撚糸3は、
図1Dに示すように、撚り合わされていない無撚糸であって、糸形状(線形状)を有している。つまり、カーボンナノチューブ無撚糸3の撚り角度は、略0°である。また、カーボンナノチューブ無撚糸3は、複数のカーボンナノチューブ12が直線状に連続することにより形成されている。
【0043】
カーボンナノチューブ12としては、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブが挙げられ、好ましくは、多層カーボンナノチューブが挙げられる。これらカーボンナノチューブ12は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれの平均外径は、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下、さらに好ましくは、20nm以下である。
【0045】
また、複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれの平均長さ(平均軸線方向寸法)は、例えば、1μm以上、好ましくは、100μm以上、さらに好ましくは、200μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、さらに好ましくは、400μm以下である。なお、カーボンナノチューブ12の平均外径および平均長さは、例えば、ラマン分光分析や、電子顕微鏡観察などの公知の方法により測定される。
【0046】
そして、複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれは、カーボンナノチューブ無撚糸3において、カーボンナノチューブ無撚糸3の延びる方向に沿うように配向される。
【0047】
このようなカーボンナノチューブ無撚糸3を調製(準備)するには、例えば、化学気相成長法(CVD法)により、基板8上に複数のカーボンナノチューブ12を成長させた後、それらカーボンナノチューブ12を引き出す。
【0048】
より詳しくは、この方法では、まず、
図1Aに示すように、基板8を準備する。
【0049】
基板8としては、特に限定されず、例えば、CVD法に用いられる公知の基板が挙げられ、市販品を用いることができる。
【0050】
基板8として、具体的には、シリコン基板や、二酸化ケイ素膜10が積層されるステンレス基板9などが挙げられ、好ましくは、二酸化ケイ素膜10が積層されるステンレス基板9が挙げられる。なお、
図1Aでは、基板8が、二酸化ケイ素膜10が積層されるステンレス基板9である場合を示す。
【0051】
そして、基板8上、好ましくは、二酸化ケイ素膜10上に触媒層11を形成する。
【0052】
基板8上に触媒層11を形成するには、金属触媒を、公知の成膜方法により、基板8(好ましくは、二酸化ケイ素膜10)上に成膜する。
【0053】
金属触媒としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。このような金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0054】
成膜方法としては、例えば、真空蒸着およびスパッタリングが挙げられ、好ましくは、真空蒸着が挙げられる。
【0055】
これによって、基板8上に触媒層11が配置される。
【0056】
なお、基板8が、二酸化ケイ素膜10が積層されるステンレス基板9である場合、二酸化ケイ素膜10および触媒層11は、例えば、特開2014−94856号公報に記載されるように、二酸化ケイ素前駆体溶液と金属触媒前駆体溶液とが混合される混合溶液を、ステンレス基板9に塗布した後、その混合液を相分離させ、次いで、乾燥することにより、同時に形成することもできる。
【0057】
次いで、触媒層11が配置される基板8を、
図1Bに示すように、例えば、700℃以上900℃以下に加熱する。これにより、触媒層11が、凝集して、複数の粒状体11Aとなる。
【0058】
そして、加熱された基板8に、
図1Cに示すように、原料ガスを供給する。
【0059】
原料ガスは、炭素数1〜4の炭化水素ガス(低級炭化水素ガス)を含んでいる。
【0060】
炭素数1〜4の炭化水素ガスとしては、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどが挙げられ、好ましくは、アセチレンガスが挙げられる。
【0061】
また、原料ガスは、必要により、水素ガスや、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)、水蒸気などを含むこともできる。
【0062】
原料ガスが水素ガスや不活性ガスを含む場合、原料ガスにおける炭化水素ガスの濃度は、例えば、1体積%以上、好ましくは、30体積%以上、例えば、90体積%以下、好ましくは、50体積%以下である。
【0063】
原料ガスの供給時間としては、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0064】
これによって、複数の粒状体11Aのそれぞれを起点として、複数のカーボンナノチューブ12が成長する。なお、
図1Cでは、便宜上、1つの粒状体11Aから、1つのカーボンナノチューブ12が成長するように記載されているが、これに限定されず、1つの粒状体11Aから、複数のカーボンナノチューブ12が成長してもよい。
【0065】
このような複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれは、基板8上において、互いに略平行となるように、基板8の厚み方向に延びている。つまり、複数のカーボンナノチューブ12は、基板8に対して直交するように配向(垂直に配向)されており、カーボンナノチューブ集合体13を構成している。
【0066】
カーボンナノチューブ集合体13において、複数のカーボンナノチューブ12の嵩密度は、例えば、10mg/cm
3以上、好ましくは、20mg/cm
3以上、例えば、60mg/cm
3以下、好ましくは、50mg/cm
3以下である。なお、カーボンナノチューブ12の嵩密度は、例えば、単位面積当たり質量(目付量:単位 mg/cm
2)と、カーボンナノチューブの長さ(SEM(日本電子社製)または非接触膜厚計(キーエンス社製)により測定)とから算出される。
【0067】
次いで、
図1Dに示すように、基板8上のカーボンナノチューブ集合体13から、カーボンナノチューブ12を引き出して、カーボンナノチューブ無撚糸3を形成する。
【0068】
カーボンナノチューブ集合体13からカーボンナノチューブ12を引き出すには、例えば、カーボンナノチューブ集合体13のうち、一部のカーボンナノチューブ12の一端(上端)を、図示しない引出具により、基板8の厚み方向と交差する方向に引っ張る。
【0069】
すると、引っ張られたカーボンナノチューブ12は、対応する粒状体11Aから引き抜かれる。このとき、引き抜かれるカーボンナノチューブ12に隣接するカーボンナノチューブ12は、引き抜かれるカーボンナノチューブ12との摩擦力およびファンデルワ―ルス力により、そのカーボンナノチューブ12の一端(上端)が、引き抜かれるカーボンナノチューブ12の他端(下端)に付着され、対応する粒状体11Aから引き抜かれる。
【0070】
これによって、複数のカーボンナノチューブ12が、順次連続して、カーボンナノチューブ集合体13から引き出され、複数のカーボンナノチューブ12が連続的に繋がるカーボンナノチューブ無撚糸3を形成する。
【0071】
より詳しくは、カーボンナノチューブ無撚糸3において、連続するカーボンナノチューブ12は、先側のカーボンナノチューブ12の他端(下端)が、次に連続するカーボンナノチューブ12の一端(上端)に付着されている。
【0072】
カーボンナノチューブ12の引き出し速度としては、例えば、10mm/分以上、好ましくは、30mm/分以上、例えば、100mm/分以下、好ましくは、70mm/分以下である。
【0073】
次いで、必要により、芯材2およびカーボンナノチューブ無撚糸3を、それらを互いに密着させるために、前処理する。
【0074】
前処理としては、例えば、芯材2およびカーボンナノチューブ無撚糸3のそれぞれの表面処理が挙げられ、具体的には、プラズマ処理、UV処理などが挙げられる。なお、表面処理は、好ましくは、真空下または不活性ガス雰囲気下において実施される。これにより、芯材2およびカーボンナノチューブ無撚糸3のそれぞれの表面が改質されて、それらの密着性が向上する。
【0075】
次いで、
図2および
図4に示すように、カーボンナノチューブ無撚糸3を、芯材2の周面に巻き付けて、複合繊維前駆体4を調製する。
【0076】
カーボンナノチューブ無撚糸3を芯材2に巻き付けるには、
図2に示すように、例えば、カーボンナノチューブ無撚糸3の一端部を芯材2(または、芯材2の周りに巻き付けられたカーボンナノチューブ無撚糸3)に固定した後、芯材2を、芯材2の軸線を中心として回転させる。
【0077】
また、カーボンナノチューブ無撚糸3は、好ましくは、芯材2に対して螺旋状に巻き付けられる。このような場合、カーボンナノチューブ無撚糸3の一端部(カーボンナノチューブ12の一端)を芯材2に固定した後、芯材2を、芯材2の軸線を中心として回転させるとともに、所定方向の一方に向かって移動させる。
【0078】
これによって、カーボンナノチューブ無撚糸3は、少なくとも1周、好ましくは、複数周、芯材2の周面に巻き付けられる。
【0079】
カーボンナノチューブ無撚糸3が芯材2の周面に複数周巻き付けられる場合、芯材2の回りには、
図4に示すように、カーボンナノチューブ無撚糸3が、芯材2の全周にわたって複数積層される。
【0080】
カーボンナノチューブ無撚糸3の積層数としては、例えば、2層以上、好ましくは、5層以上、例えば、50層以下、好ましくは、20層以下である。
【0081】
カーボンナノチューブ無撚糸3の積層数が、上記下限以上であれば、後述するカーボンナノチューブ複合繊維1に所望する物性を確実に付与でき、上記上限以下であれば、芯材2に対するカーボンナノチューブ無撚糸3の巻き付け作業の円滑化を図ることができる。
【0082】
より具体的には、カーボンナノチューブ集合体13は、
図2に示すように、カーボンナノチューブ無撚糸3の引き出し方向に沿って並ぶように配置される複数のカーボンナノチューブ12からなる列13Aを、引き出し方向と直交する方向に複数備えている。これによって、カーボンナノチューブ集合体13は、略シート形状に形成されている。
【0083】
そのため、カーボンナノチューブ集合体13から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を一括して引き出すことができる。この場合には、複数の列13Aのカーボンナノチューブ12を同時かつ平行に引き出す(
図2の拡大図参照)。これにより、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3は、カーボンナノチューブ無撚糸3の延びる方向と交差する方向に並列配置される。このように並列配置される複数のカーボンナノチューブ無撚糸3は、略シート形状を有しており、カーボンナノチューブシート14として構成される。
【0084】
そして、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を同時に芯材2に巻き付けるには、例えば、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3のそれぞれの一端部(カーボンナノチューブシート14の一端)を芯材2(または、芯材2の周りに巻き付けられたカーボンナノチューブ無撚糸3)に固定し、芯材2を回転させる。
【0085】
また、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3(カーボンナノチューブシート14)は、1つの基板8を準備して、それに対応する1つのカーボンナノチューブ集合体13から引き出すこともできるが、複数の基板8を準備して、それらに対応する複数のカーボンナノチューブ集合体13から引き出すこともできる。なお、
図2では、2つの基板8を準備し、2つのカーボンナノチューブ集合体13から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3(2つのカーボンナノチューブシート14)を引き出す態様を示している。
【0086】
これによって、
図4に示すように、芯材2と、芯材2の周りに巻き付けられるカーボンナノチューブ無撚糸3とを備える複合繊維前駆体4が調製される。
【0087】
複合繊維前駆体4において、芯材2は、複合繊維前駆体4の略中央に配置されており、カーボンナノチューブ無撚糸3は、芯材2の全周にわたって、芯材2の周面に略一定の厚み(径方向寸法)で積層されている。
【0088】
次いで、
図3に示すように、複合繊維前駆体4を加熱処理する。
【0089】
複合繊維前駆体4を加熱処理するには、例えば、複合繊維前駆体4全体を加熱してもよく、複合繊維前駆体4のうち、カーボンナノチューブ無撚糸3のみを局所加熱してもよい。
【0090】
複合繊維前駆体4全体を加熱する場合、例えば、複合繊維前駆体4を公知の加熱炉によって加熱する。また、複合繊維前駆体4のうち、カーボンナノチューブ無撚糸3のみを局所加熱する場合、例えば、高周波誘導加熱により、カーボンナノチューブ無撚糸3を加熱する。
【0091】
複合繊維前駆体4(カーボンナノチューブ無撚糸3)の加熱温度としては、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上、例えば、1500℃以下、好ましくは、1300℃以下である。
【0092】
より詳しくは、芯材2が金属である場合、複合繊維前駆体4(カーボンナノチューブ無撚糸3)の加熱温度は、例えば、800℃以上、好ましくは、1000℃以上、例えば、1500℃以下、好ましくは、1300℃以下である。
【0093】
また、芯材2が高分子材料である場合、複合繊維前駆体4(カーボンナノチューブ無撚糸3)の加熱温度は、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上、例えば、600℃以下、好ましくは、400℃以下である。
【0094】
なお、加熱処理は、好ましくは、真空下または不活性ガス雰囲気下において実施される。
【0095】
すると、
図4に示すように、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3とが複合化、すなわち、芯材2および/またはカーボンナノチューブ無撚糸3が熱溶融し、相互に強固に接着される。
【0096】
以上によって、カーボンナノチューブ複合繊維1が調製される。
【0097】
カーボンナノチューブ複合繊維1は、芯材2と、芯材2に巻き付けられるカーボンナノチューブ無撚糸3とを備えている。
【0098】
このようなカーボンナノチューブ複合繊維1において、芯材2の体積割合(芯材2/カーボンナノチューブ複合繊維1×100)は、例えば、95.0体積%以上、好ましくは、98.0体積%以上、例えば、99.99体積%以下、好ましくは、99.98体積%以下である。
【0099】
また、カーボンナノチューブ複合繊維1において、カーボンナノチューブ無撚糸3の体積割合(カーボンナノチューブ無撚糸3/カーボンナノチューブ複合繊維1×100)は、例えば、0.01体積%以上、好ましくは、0.02体積%以上、例えば、5.0体積%以下、好ましくは、2.0体積%以下である。
【0100】
より詳しくは、芯材2が金属である場合、カーボンナノチューブ複合繊維1に対する芯材2の体積割合は、例えば、95.0体積%以上、好ましくは、98.0体積%以上、例えば、99.9体積%以下、好ましくは、99.5体積%以下であり、カーボンナノチューブ複合繊維1に対するカーボンナノチューブ無撚糸3の体積割合は、例えば、0.01体積%以上、好ましくは、0.05体積%以上、例えば、5.0体積%以下、好ましくは、2.0体積%以下である。
【0101】
また、芯材2が高分子材料である場合、カーボンナノチューブ複合繊維1に対する芯材2の体積割合は、例えば、99.00体積%以上、好ましくは、99.50体積%以上、例えば、99.99体積%以下、好ましくは、99.98体積%以下であり、カーボンナノチューブ複合繊維1に対するカーボンナノチューブ無撚糸3の体積割合は、例えば、0.01体積%以上、好ましくは、0.02体積%以上、例えば、1.00体積%以下、好ましくは、0.05体積%以下である。
【0102】
このようなカーボンナノチューブ複合繊維1は、例えば、炭素繊維が用いられる織物(シート)、電気機器(例えば、モータ、トランス、センサーなど)の導電線材、スポーツ用品(例えば、ゴルフシャフト、テニスラケット、釣竿のシャフトなど)の材料など各種産業製品に利用される。
【0103】
このようなカーボンナノチューブ複合繊維の製造方法は、
図2および
図3に示すように、例えば、カーボンナノチューブ複合繊維の製造装置の一例としての複合繊維製造装置20により、連続的に実施される。
【0104】
複合繊維製造装置20は、送出部21と、回収部22と、供給部23と、加熱部24とを備えている。
【0105】
送出部21は、
図2に示すように、芯材2を所定方向一方に向かって送り出すように構成されており、送出回転部28と、送出軸27と、軸駆動部30と、回転駆動部29とを備えている。
【0106】
送出回転部28は、所定方向の一方に向かって開放される平面視略コ字状を有しており、1対の軸支持部28Aと、連結部28Bとを一体に有している。
【0107】
1対の軸支持部28Aは、所定方向と直交する幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。1対の軸支持部28Aのそれぞれは、所定方向に延びる略板形状を有している。
【0108】
連結部28Bは、1対の軸支持部28Aの所定方向の他端部間に架設されている。連結部28Bは、幅方向に延びる略板形状を有している。
【0109】
送出軸27は、1対の軸支持部28Aの所定方向の一端部間に配置されている。送出軸27は、幅方向に延びる略円柱形状を有しおり、その両端部のそれぞれが、対応する軸支持部28Aに回転可能に支持されている。なお、送出軸27には、芯材2が複数巻回されている。
【0110】
軸駆動部30は、外部から電力が供給されることにより、送出軸27に駆動力を供給するように構成されている。軸駆動部30は、幅方向において1対の軸支持部28Aの間に配置され、所定方向において送出軸27と連結部28Bとの間に配置されている。
【0111】
軸駆動部30は、モータ軸30Aと、駆動伝達ベルト30Bとを備えている。
【0112】
モータ軸30Aは、1対の軸支持部28Aのうち、一方の軸支持部28Aに回転可能に支持されており、図示しないモータ本体から駆動力が入力されることで回転する。
【0113】
駆動伝達ベルト30Bは、公知の無端ベルトであって、モータ軸30Aの幅方向一端部と、送出軸27の幅方向一端部とに架け渡されている。
【0114】
回転駆動部29は、外部から電力が供給されることにより、送出回転部28に駆動力を供給するように構成されている。回転駆動部29は、送出回転部28に対して、所定方向の他方に配置されている。
【0115】
回転駆動部29は、例えば、公知のモータからなり、モータ本体29Aと、モータ本体29Aに回転可能に支持されるモータ軸29Bとを備えている。そして、モータ軸29Bの所定方向一端部は、送出回転部28の連結部28Bの幅方向中央部に固定されている。これによって、送出回転部28は、モータ軸29B、つまり、所定方向に沿う軸線を回転中心として回転可能である。
【0116】
回収部22は、送出部21から送り出された芯材2を回収するように構成されており、送出部21に対して、所定方向の一方に間隔を空けて配置されている。回収部22は、回収回転部33と、回収軸32と、軸駆動部35と、回転駆動部34とを備えている。
【0117】
回収回転部33は、所定方向の他方に向かって開放される平面視略コ字状を有しており、1対の軸支持部33Aと、連結部33Bとを一体に有している。
【0118】
1対の軸支持部33Aは、幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。1対の軸支持部33Aのそれぞれは、所定方向に延びる略板形状を有している。
【0119】
連結部33Bは、1対の軸支持部33Aの所定方向の一端部間に架設されている。連結部33Bは、幅方向に延びる略板形状を有している。
【0120】
回収軸32は、1対の軸支持部33Aの所定方向の他端部間に配置されている。回収軸32は、幅方向に延びる略円柱形状を有しおり、その両端部のそれぞれが、対応する軸支持部33Aに回転可能に支持されている。
【0121】
軸駆動部35は、外部から電力が供給されることにより、回収軸32に駆動力を供給するように構成されている。軸駆動部35は、幅方向において1対の軸支持部28Aの間に配置され、所定方向において回収軸32と連結部33Bとの間に配置されている。
【0122】
軸駆動部35は、モータ軸35Aと、駆動伝達ベルト35Bとを備えている。
【0123】
モータ軸35Aは、1対の軸支持部33Aのうち一方の軸支持部33Aに回転可能に支持されており、図示しないモータ本体から駆動力が入力されることで回転する。
【0124】
駆動伝達ベルト35Bは、公知の無端ベルトであって、モータ軸35Aの幅方向一端部と、回収軸32の幅方向一端部とに架け渡されている。
【0125】
回転駆動部34は、外部から電力が供給されることにより、回収回転部33に駆動力を供給するように構成されている。回転駆動部34は、回収回転部33に対して、所定方向の一方に配置されている。
【0126】
回転駆動部34は、例えば、公知のモータからなり、モータ本体34Aと、モータ本体34Aに回転可能に支持されるモータ軸34Bとを備えている。そして、モータ軸34Bの所定方向他端部は、回収回転部33の連結部33Bの幅方向中央に固定されている。これによって、回収回転部33は、モータ軸34B、つまり、所定方向に沿う軸線を回転中心として回転可能である。なお、回収回転部33の回転軸線と、送出回転部28の回転軸線とは、互いに一致している。
【0127】
供給部23は、詳しくは後述するが、送出部21と回収部22との間に配置される芯材2に対して、カーボンナノチューブ無撚糸3を供給するように構成されている。
【0128】
供給部23は、基板8と、図示しない引出具とを備えている。
【0129】
基板8は、送出部21と回収部22との間に複数配置されており、具体的には、2つの基板8である。複数の基板8は、所定方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の基板8のそれぞれは、上記したように、カーボンナノチューブ集合体13を支持している。
【0130】
カーボンナノチューブ集合体13は、平面視において略矩形形状を有している。カーボンナノチューブ集合体13では、複数のカーボンナノチューブ12からなり、引出方向に延びる列13Aは、引出方向と直交する方向に複数配置されている。
【0131】
そして、複数の列13Aのそれぞれにおいて、最も引出方向の下流(芯材2側)に位置するカーボンナノチューブ12は、引出方向と直交する方向に直線的に並んでおり、カーボンナノチューブ集合体13の引出方向の下流端部13Lを構成している。
【0132】
加熱部24は、
図3に示すように、所定方向において、供給部23と回収部22との間に配置されている。加熱部24は、公知の加熱炉であって、内部に芯材2が通過するように構成されている。
【0133】
このような複合繊維製造装置20では、
図2および
図3に示すように、まず、送出軸27に巻回される芯材2を、送出軸27から、所定方向の一方に向かって引き出す。そして、芯材2の所定方向一端部を、加熱部24を通過させた後、回収軸32に固定する。これにより、芯材2が、送出部21から回収部22にわたって架け渡される。
【0134】
次いで、
図2に示すように、複数の基板8のそれぞれのカーボンナノチューブ集合体13から、図示しない引出具により、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3(カーボンナノチューブシート14)を引き出す。
【0135】
より詳しくは、カーボンナノチューブ集合体13の引出方向の下流端部13Lを、図示しない引出具により、一括して保持し、芯材2に向かって引っ張る。
【0136】
すると、複数の列13Aのそれぞれにおいて、複数のカーボンナノチューブ12が連続するように引き出され、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3(カーボンナノチューブシート14)が形成される。このとき、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3は、引出方向と直交する方向に並列配置され、略シート形状となる。
【0137】
そして、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3のそれぞれの一端部(カーボンナノチューブシート14の一端部)を、送出部21と加熱部24との間に配置される芯材2に固定する。
【0138】
次いで、送出部21の回転駆動部29に電力が供給するとともに、回収部22の回転駆動部34に電力を供給する。
【0139】
すると、回転駆動部29のモータ軸29B、および、回転駆動部34のモータ軸34Bのそれぞれが、所定方向一方から見て時計回り方向に回転し、それに伴って、送出回転部28および回収回転部33のそれぞれが、所定方向一方から見て時計回り方向に回転する。なお、送出回転部28および回収回転部33の回転速度は、互いに同一である。
【0140】
これによって、芯材2が、所定方向一方から見て時計回り方向に回転する。このとき、芯材2の回転速度(周速度)は、例えば、0.1m/min以上、好ましくは、0.5m/min以上、例えば、10m/min以下、好ましくは、6.0m/min以下、さらに好ましくは、3.0m/min以下である。
【0141】
これにより、芯材2に一端部が固定されたカーボンナノチューブ無撚糸3(カーボンナノチューブシート14)は、芯材2の回転に伴って、芯材2の周りに巻き付けられる。すると、カーボンナノチューブ無撚糸3は、カーボンナノチューブ集合体13からさらに引き出され、芯材2に連続的に供給される。
【0142】
そして、送出部21の軸駆動部30および回収部22の軸駆動部35に電力を供給する。すると、軸駆動部30のモータ軸30A、および、軸駆動部35のモータ軸35Aのそれぞれが、幅方向他方から見て時計回り方向に回転し、それに伴って、送出軸27および回収軸32のそれぞれが、幅方向他方から見て時計回り方向に回転する。
【0143】
これによって、芯材2は、送出軸27から送り出され、張力がかかった状態で所定方向一方に移動した後、回収軸32に巻き取られる。そのため、芯材2は、回転しながら、送出部21から回収部22に向かって連続的に移動される。
【0144】
このとき、芯材2の移動速度は、例えば、0.1m/min以上、好ましくは、0.5m/min以上、例えば、10m/min以下、好ましくは、6.0m/min以下、さらに好ましくは、3.0m/min以下である。
【0145】
すると、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3は、芯材2に対して、螺旋状に巻き付けられる。
【0146】
これにより、芯材2の周りにカーボンナノチューブ無撚糸3が複数積層される複合繊維前駆体4が調製される。
【0147】
その後、複合繊維前駆体4は、
図3に示すように、芯材2の移動に伴って、加熱部24内に到達する。そして、複合繊維前駆体4は、回転しながら加熱部24内を通過し、加熱部24により、上記の温度に加熱される。
【0148】
これによって、芯材2およびカーボンナノチューブ無撚糸3は、複合化して、カーボンナノチューブ複合繊維1が調製される。その後、カーボンナノチューブ複合繊維1は、送出軸27および回収軸32の回転により、回収軸32に巻き取られる。
【0149】
以上によって、複合繊維製造装置20による、カーボンナノチューブ複合繊維1の製造が完了する。
【0150】
このような実施形態では、
図3および
図4に示すように、芯材2にカーボンナノチューブ無撚糸3が巻き付けられた複合繊維前駆体4が、加熱処理される。そのため、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3とを複合化させることができ、カーボンナノチューブ複合繊維1の機械特性の向上を確実に図ることができる。
【0151】
また、複合繊維前駆体4は、カーボンナノチューブ無撚糸3を、芯材2に巻き付けるという簡易な方法で調製することができる。そして、複合繊維前駆体4において、芯材2は確実に中心部に配置され、カーボンナノチューブ無撚糸3は芯材2の周囲に配置される。そのため、カーボンナノチューブ複合繊維1において、芯材2を確実に中心部に配置でき、かつ、カーボンナノチューブ無撚糸3を芯材2の周囲に配置できる。その結果、機械特性のさらなる向上を図ることができながら、カーボンナノチューブ複合繊維1において、芯材2およびカーボンナノチューブ無撚糸3のバランスの良い特性を得ることができる。
【0152】
また、カーボンナノチューブ無撚糸3は、
図1Dに示すように、基板8に対して直交するように配向(垂直配向)される複数のカーボンナノチューブ12から引き出されることにより調製される。そのため、カーボンナノチューブ無撚糸3において、複数のカーボンナノチューブのそれぞれが、カーボンナノチューブ無撚糸3の延びる方向に沿うように配向される。
【0153】
その結果、
図4に示すように、カーボンナノチューブ無撚糸3が芯材2に巻き付けられた状態においても、カーボンナノチューブ12の配向性を確実に確保することができ、カーボンナノチューブ複合繊維1において、カーボンナノチューブ無撚糸3に基づく特性を確実に付与することができる。
【0154】
また、
図1Cに示すように、複数のカーボンナノチューブ12は、基板8基板上に配置される触媒層11を起点として成長する。そのため、基板8に対して垂直に配向される複数のカーボンナノチューブ12を確実に準備することができる。
【0155】
複合繊維製造装置20では、
図2および
図3に示すように、簡易な構成でありながら、送出部21および回収部22のそれぞれが回転することにより、芯材2にカーボンナノチューブ無撚糸3を巻き付けることができ、その後、加熱部24により、カーボンナノチューブ無撚糸3が巻き付けられた芯材2を加熱することができる。
【0156】
そのため、芯材2にカーボンナノチューブ無撚糸3が巻き付けられ、かつ、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3とが複合化したカーボンナノチューブ複合繊維1を、効率よく製造することができる。
2.他の実施形態
次に、
図5および
図6を参照して、本発明のカーボンナノチューブ複合繊維の製造方法の他の実施形態について説明する。
【0157】
上記の実施形態では、カーボンナノチューブ無撚糸3を芯材2に巻き付ける前処理として、例えば、芯材2およびカーボンナノチューブ無撚糸3のそれぞれの表面処理を挙げているが、前処理は、これに限定されない。
【0158】
例えば、芯材2が金属からなる場合、カーボンナノチューブ無撚糸3を芯材2に巻き付ける前に、カーボンナノチューブ無撚糸3を、金属を含有する金属含有液に浸漬した後、乾燥させることもできる。
【0159】
金属としては、例えば、上記した金属と同様の金属が挙げられる。このような金属は、芯材2を形成する金属と同一の金属であることが好ましい。
【0160】
また、金属含有液としては、例えば、金属粒子が分散される金属分散液や、金属アルコキシドが溶解される金属アルコキシド溶液などが挙げられる。
【0161】
このような場合、複合繊維製造装置20の供給部23は、
図5に示すように、複数の浸漬部38を備えている。
【0162】
複数の浸漬部38は、複数の基板8のそれぞれに1つずつ対応しており、基板8と、芯材2との間に配置されている。
【0163】
複数の浸漬部38のそれぞれは、浸漬槽40と、複数のローラ39とを備えている。
【0164】
浸漬槽40は、上方に向かって開放される略ボックス形状を有しており、その内部に、金属含有液が貯留されている。
【0165】
複数のローラ39のそれぞれは、カーボンナノチューブ無撚糸3が、浸漬槽40内の金属含有液に浸漬されるように、所定の位置に適宜配置されている。
【0166】
これによって、カーボンナノチューブ集合体13から引き出されたカーボンナノチューブ無撚糸3は、浸漬槽40内の金属含有液に浸漬された後、乾燥され、カーボンナノチューブ無撚糸3に金属が担持される。
【0167】
その後、金属が担持されたカーボンナノチューブ無撚糸3が、金属からなる芯材2に巻き付けられる。
【0168】
また、芯材2が金属からなる場合、
図6に示すように、カーボンナノチューブ無撚糸3を芯材2に巻き付ける前に、カーボンナノチューブ無撚糸3に、金属を蒸着することもできる。
【0169】
このような場合、複合繊維製造装置20の供給部23は、複数の蒸着部42を備えている。
【0170】
複数の蒸着部42は、複数の基板8のそれぞれに1つずつ対応しており、基板8と、芯材2との間に配置されている。
【0171】
複数の蒸着部42のそれぞれは、蒸着装置43と、ローラ39とを備えている。
【0172】
蒸着装置43は、金属蒸着に用いられる公知の装置であって、特に制限されない。
【0173】
ローラ39は、金属が蒸着されたカーボンナノチューブ無撚糸3が、芯材2に向かうように、所定の位置に適宜配置されている。
【0174】
これによって、カーボンナノチューブ集合体13から引き出されたカーボンナノチューブ無撚糸3は、蒸着装置43によって金属が蒸着され、カーボンナノチューブ無撚糸3に金属膜が形成される。
【0175】
その後、金属膜が形成されたカーボンナノチューブ無撚糸3が、金属からなる芯材2に巻き付けられる。
【0176】
このような他の実施形態では、金属からなる芯材に、金属(金属膜)を有するカーボンナノチューブが巻き付けられるので、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3とを確実に密着させることができる。さらに、複合繊維前駆体4を加熱処理するときに、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3が有する金属(金属膜)とが互いに溶融し、その金属が複数のカーボンナノチューブ12間に入り込むので、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3とを強固に複合化することができる。
【0177】
また、芯材2が高分子材料からなる場合、
図5に示すように、カーボンナノチューブ無撚糸3を芯材2に巻き付ける前に、カーボンナノチューブ無撚糸3を、高分子材料を含有する高分子含有液に浸漬した後、乾燥させることもできる。
【0178】
高分子材料としては、例えば、上記した高分子材料と同様の材料が挙げられる。このような高分子材料は、芯材2を形成する高分子材料と同一の材料であることが好ましい。
【0179】
また、高分子含有液としては、例えば、高分子材料が溶解される高分子材料溶液などが挙げられる。
【0180】
このような場合、浸漬部38の浸漬槽40には、金属含有液に代えて、高分子含有液が貯留されている。
【0181】
そして、カーボンナノチューブ集合体13から引き出されたカーボンナノチューブ無撚糸3は、浸漬槽40内の高分子含有液に浸漬された後、乾燥され、カーボンナノチューブ無撚糸3に高分子材料が担持される。
【0182】
その後、高分子材料が担持されたカーボンナノチューブ無撚糸3が、高分子材料からなる芯材2に巻き付けられる。
【0183】
また、芯材2が高分子材料からなる場合、カーボンナノチューブ無撚糸3を芯材2に巻き付ける前処理として、カーボンナノチューブ無撚糸3を高分子材料からなるフィルムに重ねるか、カーボンナノチューブ無撚糸3に、高分子材料が溶解した高分子溶液をエレクトロスピニングすることもできる。
【0184】
このような他の実施形態では、高分子材料からなる芯材2に、高分子材料を有するカーボンナノチューブが巻き付けられるので、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3とを確実に密着させることができる。さらに、複合繊維前駆体4を加熱処理するときに、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3が有する高分子材料とが互いに溶融して、高分子樹脂が複数のカーボンナノチューブ12間に入り込むので、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3とを強固に複合化することができる。
【0185】
このような他の実施形態によっても、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
3.変形例
また、
図3に示すように、芯材2にカーボンナノチューブ無撚糸3を巻き付けて、複合繊維前駆体4を調製した後、加熱処理の前に、複合繊維前駆体4をプレスすることもできる。
【0186】
このような場合、複合繊維製造装置20は、
図3に仮想線で示すように、1対の加圧ローラ46を備えている。
【0187】
1対の加圧ローラ46は、所定方向において、供給部23と加熱部24との間に配置されている。1対の加圧ローラ46のそれぞれは、幅方向に延びている。そして、1対の加圧ローラ46は、複合繊維前駆体4を挟むように、所定方向および幅方向の両方向と交差する方向に互いに向かい合っている。
【0188】
これによって、芯材2にカーボンナノチューブ無撚糸3が巻き付けられた複合繊維前駆体4は、1対の加圧ローラ46の間を通過するときに、プレスされる。
【0189】
そのため、芯材2とカーボンナノチューブ無撚糸3とがより一層密着するとともに、カーボンナノチューブ無撚糸3における複数のカーボンナノチューブ12が互いに凝集する。
【0190】
その後、複合繊維前駆体4が加熱部24により加熱処理され、カーボンナノチューブ複合繊維1が調製される。
【0191】
その結果、カーボンナノチューブ複合繊維1の機械特性のさらなる向上を確実に図ることができる。
【0192】
また、このような変形例によっても、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、これら実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0193】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0194】
実施例1
ステンレス製の基板に二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。
【0195】
次いで、基板を所定の温度に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を供給した。これにより、基板上において、カーボンナノチューブ集合体が形成された。カーボンナノチューブ集合体において、複数のカーボンナノチューブは、互いに略平行となるように延び、基板に対して直交するように配向(垂直配向)されていた。カーボンナノチューブの平均外径は、約12nm、カーボンナノチューブの平均長さは、約300μm、カーボンナノチューブ集合体における、複数のカーボンナノチューブ12の嵩密度は、約30mg/cm
3であった。
【0196】
次いで、外径が50μmの銅線(芯材)を準備した。
【0197】
また、カーボンナノチューブ集合体から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸を一括して引き出した。複数のカーボンナノチューブ無撚糸は、カーボンナノチューブ無撚糸の延びる方向と直交する方向に並列配置されており、略シート形状を形成していた。
【0198】
次いで、複数のカーボンナノチューブ無撚糸を、銅線(芯材)の周りに10層積層されるように、銅線(芯材)に巻き付けて、複合繊維前駆体を調製した。
【0199】
次いで、複合繊維前駆体を、アルゴン雰囲気下において、加熱炉内で、1200℃に加熱処理した。
【0200】
これによって、銅線(芯材)と、カーボンナノチューブ無撚糸とが複合化したカーボンナノチューブ複合繊維を得た。
【0201】
実施例2
実施例1と同様にして調製した複数のカーボンナノチューブ無撚糸を、外径が1mmのポリエステル線材(芯材)の周りに10層積層されるように、ポリエステル線材(芯材)に巻き付けて、複合繊維前駆体を調製した。
【0202】
次いで、複合繊維前駆体を、アルゴン雰囲気下において、加熱炉内で、300℃に加熱処理した。
【0203】
これによって、ポリエステル線材(芯材)と、カーボンナノチューブ無撚糸とが複合化したカーボンナノチューブ複合繊維を得た。
【0204】
実施例3
実施例1と同様にして調製した複数のカーボンナノチューブ無撚糸に、銅(金属)を蒸着させて前処理した。次いで、前処理した複数のカーボンナノチューブ無撚糸を、外径50μmの銅線(芯材)の周りに10層積層されるように、銅線(芯材)に巻き付けて、複合繊維前駆体を調製した。
【0205】
次いで、複合繊維前駆体を、アルゴン雰囲気下において、加熱炉内で、1200℃に加熱処理した。
【0206】
これによって、銅線(芯材)と、カーボンナノチューブ無撚糸とが複合化したカーボンナノチューブ複合繊維を得た。
【0207】
評価:
実施例1および実施例2で得られたカーボンナノチューブ複合繊維のそれぞれは、外径50μmの銅線に対して、30%の強度の向上が確認された。
【0208】
また、実施例3で得られたカーボンナノチューブ複合繊維は、外径50μmの銅線に対して、50%の強度の向上が確認された。
【0209】
なお、カーボンナノチューブ複合繊維の強度は、一軸引張強度試験機により測定した。