(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カーボンナノチューブ中心糸を調製する工程において、複数の前記カーボンナノチューブ無撚糸を撚り合わせて、前記カーボンナノチューブ中心糸を撚糸として調製することを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブ繊維の製造方法。
前記カーボンナノチューブ無撚糸を前記カーボンナノチューブ中心糸に巻き付ける工程において、前記カーボンナノチューブ無撚糸を、前記カーボンナノチューブ中心糸の撚り方向に沿うように、前記カーボンナノチューブ中心糸に巻き付けることを特徴とする、請求項2に記載のカーボンナノチューブ繊維の製造方法。
前記カーボンナノチューブ無撚糸を前記カーボンナノチューブ中心糸に巻き付ける工程において、前記カーボンナノチューブ集合体から、複数の前記カーボンナノチューブ無撚糸を引き出し、複数の前記カーボンナノチューブ無撚糸のうち、少なくとも2つの前記カーボンナノチューブ無撚糸を、巻き方向が互いに異なるように、前記カーボンナノチューブ中心糸に螺旋状に巻き付けることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ繊維の製造方法。
前記カーボンナノチューブ中心糸を調製する工程において、前記カーボンナノチューブ中心糸に揮発性有機溶媒を付着させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ繊維の製造方法。
前記カーボンナノチューブ無撚糸を前記カーボンナノチューブ中心糸に巻き付ける工程において、前記カーボンナノチューブ無撚糸を前記カーボンナノチューブ中心糸に巻き付ける前に、
前記カーボンナノチューブ中心糸および前記カーボンナノチューブ無撚糸のそれぞれを、金属を含有する金属含有液に浸漬した後、乾燥させるか、または、
前記カーボンナノチューブ中心糸および前記カーボンナノチューブ無撚糸のそれぞれに、金属を蒸着させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ繊維の製造方法。
前記カーボンナノチューブ無撚糸を前記カーボンナノチューブ中心糸に巻き付ける工程において、前記カーボンナノチューブ無撚糸を前記カーボンナノチューブ中心糸に巻き付ける前に、
前記カーボンナノチューブ中心糸および前記カーボンナノチューブ無撚糸のそれぞれを、高分子材料からなるフィルムに重ねるか、または、高分子材料を含有する高分子含有液に浸漬した後、乾燥させるか、あるいは、
前記カーボンナノチューブ中心糸および前記カーボンナノチューブ無撚糸のそれぞれに、高分子材料が溶解した高分子溶液をエレクトロスピニングすることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ繊維の製造方法。
前記カーボンナノチューブ無撚糸が巻き付けられた前記カーボンナノチューブ中心糸を加熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7または8に記載のカーボンナノチューブ繊維の製造方法。
前記カーボンナノチューブ無撚糸を前記カーボンナノチューブ中心糸に巻き付ける工程において、前記カーボンナノチューブ無撚糸を前記カーボンナノチューブ中心糸に巻き付ける前に、
前記カーボンナノチューブ中心糸および前記カーボンナノチューブ無撚糸のそれぞれを、UV処理またはプラズマ処理により表面処理することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ繊維の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0046】
1.第1実施形態
本発明のカーボンナノチューブ繊維の製造方法は、例えば、
図2および
図3Aに示すように、カーボンナノチューブ集合体13を有するカーボンナノチューブ支持体5を複数準備する工程と、カーボンナノチューブ集合体13から複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を引き出し束ねて、カーボンナノチューブ中心糸2を調製する工程と、カーボンナノチューブ集合体13からカーボンナノチューブ無撚糸3を引き出し、カーボンナノチューブ中心糸2に巻き付ける工程とを含んでいる。
【0047】
このような製造方法では、まず、カーボンナノチューブ支持体5を複数準備する。
【0048】
カーボンナノチューブ支持体5は、基板8と、基板8上に配置されるカーボンナノチューブ集合体13とを備えている。
【0049】
基板8は、平面視略矩形形状の板状を有しており、具体的には、所定の厚みを有し、厚み方向と直交する所定方向に延び、平坦な表面および平坦な裏面を有している。
【0050】
カーボンナノチューブ集合体13は、基板8に対して直交するように配向(垂直に配向)される複数のカーボンナノチューブ12を備えている。
【0051】
このようなカーボンナノチューブ支持体5を調製(準備)するには、例えば、化学気相成長法(CVD法)により、基板8上に複数のカーボンナノチューブ12を成長させる。
【0052】
この方法では、まず、
図1Aに示すように、基板8を準備する。
【0053】
基板8は、特に限定されず、例えば、CVD法に用いられる公知の基板が挙げられ、市販品を用いることができる。
【0054】
基板8として、具体的には、シリコン基板や、二酸化ケイ素膜10が積層されるステンレス基板9などが挙げられ、好ましくは、二酸化ケイ素膜10が積層されるステンレス基板9が挙げられる。なお、
図1A〜
図1Dおよび
図2では、基板8が、二酸化ケイ素膜10が積層されるステンレス基板9である場合を示す。
【0055】
そして、
図1Aに示すように、基板8上、好ましくは、二酸化ケイ素膜10上に触媒層11を形成する。
【0056】
基板8上に触媒層11を形成するには、金属触媒を、公知の成膜方法により、基板8(好ましくは、二酸化ケイ素膜10)上に成膜する。
【0057】
金属触媒としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。このような金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
成膜方法としては、例えば、真空蒸着およびスパッタリングが挙げられ、好ましくは、真空蒸着が挙げられる。
【0059】
これによって、基板8上に触媒層11が配置される。
【0060】
なお、基板8が、二酸化ケイ素膜10が積層されるステンレス基板9である場合、二酸化ケイ素膜10および触媒層11は、例えば、特開2014−94856号公報に記載されるように、二酸化ケイ素前駆体溶液と金属触媒前駆体溶液とが混合される混合溶液を、ステンレス基板9に塗布した後、その混合液を相分離させ、次いで、乾燥することにより、同時に形成することもできる。
【0061】
次いで、触媒層11が配置される基板8を、
図1Bに示すように、例えば、700℃以上900℃以下に加熱する。これにより、触媒層11が、凝集して、複数の粒状体11Aとなる。
【0062】
そして、加熱された基板8に、
図1Cに示すように、原料ガスを供給する。
【0063】
原料ガスは、炭素数1〜4の炭化水素ガス(低級炭化水素ガス)を含んでいる。
【0064】
炭素数1〜4の炭化水素ガスとしては、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどが挙げられ、好ましくは、アセチレンガスが挙げられる。
【0065】
また、原料ガスは、必要により、水素ガスや、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)、水蒸気などを含むこともできる。
【0066】
原料ガスが水素ガスや不活性ガスを含む場合、原料ガスにおける炭化水素ガスの濃度は、例えば、1体積%以上、好ましくは、30体積%以上、例えば、90体積%以下、好ましくは、50体積%以下である。
【0067】
原料ガスの供給時間としては、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0068】
これによって、複数の粒状体11Aのそれぞれを起点として、複数のカーボンナノチューブ12が成長する。なお、
図1Cでは、便宜上、1つの粒状体11Aから、1つのカーボンナノチューブ12が成長するように記載されているが、これに限定されず、1つの粒状体11Aから、複数のカーボンナノチューブ12が成長してもよい。
【0069】
このような複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれは、基板8上において、互いに略平行となるように、基板8の厚み方向に延びている。つまり、複数のカーボンナノチューブ12は、基板8に対して直交するように配向(垂直に配向)されている。
【0070】
複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれであってもよく、好ましくは、多層カーボンナノチューブである。これらカーボンナノチューブ12は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0071】
複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれの平均外径は、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下、さらに好ましくは、20nm以下である。
【0072】
また、複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれの平均長さ(平均軸線方向寸法)は、例えば、1μm以上、好ましくは、100μm以上、さらに好ましくは、200μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、さらに好ましくは、400μm以下である。なお、カーボンナノチューブ12の平均外径および平均長さは、例えば、ラマン分光分析や、電子顕微鏡観察などの公知の方法により測定される。
【0073】
これによって、複数のカーボンナノチューブ12を備えるカーボンナノチューブ集合体13が、基板8上に形成される。
【0074】
このようなカーボンナノチューブ集合体13は、
図2に示すように、複数のカーボンナノチューブ12が直線的に並ぶように配置される列13Aを、列13Aの延びる方向と直交する方向に複数備えている。これによって、カーボンナノチューブ集合体13は、略シート形状に形成されている。
【0075】
カーボンナノチューブ集合体13において、複数のカーボンナノチューブ12の嵩密度は、例えば、10mg/cm
3以上、好ましくは、20mg/cm
3以上、例えば、60mg/cm
3以下、好ましくは、50mg/cm
3以下である。なお、カーボンナノチューブ12の嵩密度は、例えば、単位面積当たり質量(目付量:単位 mg/cm
2)と、カーボンナノチューブの長さ(SEM(日本電子社製)または非接触膜厚計(キーエンス社製)により測定)とから算出される。
【0076】
そして、このような基板8およびカーボンナノチューブ集合体13を備えるカーボンナノチューブ支持体5を、複数準備する。つまり、カーボンナノチューブ集合体13を複数準備する。
【0077】
より具体的には、複数のカーボンナノチューブ支持体5は、第1カーボンナノチューブ支持体6と、第2カーボンナノチューブ支持体7とを備えている。
【0078】
第1カーボンナノチューブ支持体6は、カーボンナノチューブ中心糸2を調製するための複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を引き出すものである。第1カーボンナノチューブ支持体6は、1つであってもよく、複数であってもよいが、好ましくは、1つである。
【0079】
第2カーボンナノチューブ支持体7は、カーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けるためのカーボンナノチューブ無撚糸3を引き出すものである。第2カーボンナノチューブ支持体7は、1つであってもよく、複数であってもよいが、好ましくは、複数である。
【0080】
なお、
図2では、第1カーボンナノチューブ支持体6が1つであり、第2カーボンナノチューブ支持体7が2つである態様を示している。
【0081】
次いで、
図1Dに示すように、第1カーボンナノチューブ支持体6のカーボンナノチューブ集合体13から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を引き出す。
【0082】
カーボンナノチューブ集合体13からカーボンナノチューブ無撚糸3を引き出すには、例えば、カーボンナノチューブ集合体13のうち、一部のカーボンナノチューブ12を、図示しない引出具により、基板8の厚み方向と交差する方向、好ましくは、列13Aが延びる方向に引っ張る。
【0083】
すると、引っ張られたカーボンナノチューブ12は、対応する粒状体11Aから引き抜かれる。このとき、引き抜かれるカーボンナノチューブ12に隣接するカーボンナノチューブ12は、引き抜かれるカーボンナノチューブ12との摩擦力およびファンデルワ―ルス力により、そのカーボンナノチューブ12の一端(上端)が、引き抜かれるカーボンナノチューブ12の他端(下端)に付着され、対応する粒状体11Aから引き抜かれる。
【0084】
これによって、複数のカーボンナノチューブ12が、順次連続して、カーボンナノチューブ集合体13から引き出され、複数のカーボンナノチューブ12が連続的に繋がるカーボンナノチューブ無撚糸3を形成する。
【0085】
より詳しくは、カーボンナノチューブ無撚糸3において、連続するカーボンナノチューブ12は、先側のカーボンナノチューブ12の他端(下端)が、次に連続するカーボンナノチューブ12の一端(上端)に付着されている。
【0086】
また、カーボンナノチューブ集合体13は、
図2に示すように、複数のカーボンナノチューブ12からなる列13Aを複数備えているので、第1カーボンナノチューブ支持体6のカーボンナノチューブ集合体13から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を一括して引き出すことができる。この場合には、複数の列13Aのカーボンナノチューブ12を同時に引き出す(
図2の拡大図参照)。これにより、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が、第1カーボンナノチューブ支持体6のカーボンナノチューブ集合体13から一括して引き出される。
【0087】
カーボンナノチューブ無撚糸3の引き出し速度としては、例えば、10mm/分以上、好ましくは、30mm/分以上、例えば、100mm/分以下、好ましくは、70mm/分以下である。
【0088】
以上によって、第1カーボンナノチューブ支持体6のカーボンナノチューブ集合体13から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が引き出される。
【0089】
複数のカーボンナノチューブ無撚糸3のそれぞれは、撚り合わされていない無撚糸であって、糸形状(線形状)を有している。つまり、カーボンナノチューブ無撚糸3の撚り角度は、略0°である。そして、複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれは、カーボンナノチューブ無撚糸3において、直線状に連続しており、カーボンナノチューブ無撚糸3の延びる方向に沿うように配向されている。
【0090】
複数のカーボンナノチューブ無撚糸3のそれぞれの径(複数のカーボンナノチューブ無撚糸3からなるカーボンナノチューブシートの厚み)は、例えば、30nm以上、好ましくは、60nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、80nm以下である。
【0091】
次いで、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を束ねてカーボンナノチューブ中心糸2を調製する。
【0092】
複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を束ねる方法としては、特に制限されず、例えば、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を、穴部を有するダイを通過させる方法(例えば、特開2014−169521号公報に記載の方法など)、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を、複数のローラにより挟む方法(例えば、特開2011−208296号公報に記載の方法など)、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を、僅かな間隔を隔てて配置される1対の軸部の間を通過させる方法などが挙げられる。
【0093】
このような方法の中では、好ましくは、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を、僅かな間隔を隔てて配置される1対の軸部29の間を通過させる方法が挙げられる。
【0094】
1対の軸部29のそれぞれは、詳しくは後述するが、カーボンナノチューブ無撚糸3の延びる方向と直交する方向に延びており、軸線を中心として回転可能に構成されている。
【0095】
そして、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が束ねられることにより、所定方向に延びるカーボンナノチューブ中心糸2が調製される。
【0096】
カーボンナノチューブ中心糸2は、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が撚り合わされていない無撚糸であってもよいが、好ましくは、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が撚り合わされる撚糸である。
【0097】
カーボンナノチューブ中心糸2が撚糸である場合、カーボンナノチューブ中心糸2の撚角度θ1は、
図3Aに示すように、例えば、40°以上85°以下、好ましくは、50°以上75°以下である。
【0098】
カーボンナノチューブ中心糸2の径は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、例えば、50μm以下、好ましくは、45μm以下、さらに好ましくは、30μm以下である。
【0099】
カーボンナノチューブ中心糸2の径が、上記下限以上であれば、カーボンナノチューブ中心糸2の機械強度を確実に確保することができ、上記上限以下であれば、カーボンナノチューブ中心糸2の密度の向上(つまり、カーボンナノチューブ中心糸2の空隙率の低下)を確実に図ることができる。
【0100】
より具体的には、カーボンナノチューブ中心糸2の嵩密度は、例えば、0.6g/cm
3以上、好ましくは、0.8g/cm
3以上、例えば、2.0g/cm
3以下である。なお、カーボンナノチューブ中心糸2が撚糸である場合、カーボンナノチューブ中心糸2の嵩密度は、例えば、0.6g/cm
3を超過する。
【0101】
次いで、第2カーボンナノチューブ支持体7のカーボンナノチューブ集合体13から、上記と同様にして、カーボンナノチューブ無撚糸3を引き出す。
【0102】
また、好ましくは、第2カーボンナノチューブ支持体7のカーボンナノチューブ集合体13から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を一括して引き出す。この場合、複数の列13Aのカーボンナノチューブ12を同時かつ平行に引き出す(
図2の拡大図参照)。これにより、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3は、カーボンナノチューブ無撚糸3の延びる方向と交差する方向に並列配置される。このように並列配置される複数のカーボンナノチューブ無撚糸3は、略シート形状を有しており、カーボンナノチューブシート14として構成される。
【0103】
また、第1実施形態では、複数の第2カーボンナノチューブ支持体7のそれぞれのカーボンナノチューブ集合体13から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3(カーボンナノチューブシート14)が引き出されている。
【0104】
なお、以下において、第2カーボンナノチューブ支持体7から引き出されるカーボンナノチューブ無撚糸3を、カーボンナノチューブ巻付糸4とする。
【0105】
次いで、カーボンナノチューブ巻付糸4(カーボンナノチューブシート14)を、カーボンナノチューブ中心糸2の周面に巻き付ける。
【0106】
カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けるには、例えば、カーボンナノチューブ巻付糸4の一端部をカーボンナノチューブ中心糸2(または、カーボンナノチューブ中心糸2の周りに巻き付けられたカーボンナノチューブ無撚糸3)に固定した後、カーボンナノチューブ中心糸2を、カーボンナノチューブ中心糸2の軸線を中心として回転させる。
【0107】
なお、カーボンナノチューブ中心糸2が一方に延びる方向と、カーボンナノチューブ巻付糸4が一方に延びる方向とがなす角θ2は、
図3Aに示しように、鋭角であって、その角の角度は、例えば、5°以上50°以下、好ましくは、15°以上40°以下である。
【0108】
また、カーボンナノチューブ巻付糸4は、好ましくは、カーボンナノチューブ中心糸2に対して螺旋状に巻き付けられる。このような場合、カーボンナノチューブ巻付糸4の一端部(カーボンナノチューブ12の一端)をカーボンナノチューブ中心糸2に固定した後、カーボンナノチューブ中心糸2を、カーボンナノチューブ中心糸2の軸線を中心として回転させるとともに、所定方向の一方に向かって移動させる。
【0109】
また、カーボンナノチューブ中心糸2が撚糸である場合、カーボンナノチューブ巻付糸4は、好ましくは、カーボンナノチューブ中心糸2の撚り方向に沿うように、カーボンナノチューブ中心糸2に対して螺旋状に巻き付けられる。
【0110】
この場合、カーボンナノチューブ巻付糸4の一端部は、巻付角θ3(角θ2の余角)の角度が、カーボンナノチューブ中心糸2の撚角度θ1と略同じとなるように、カーボンナノチューブ中心糸2に固定される。より具体的には、カーボンナノチューブ巻付糸4の巻付角θ3は、カーボンナノチューブ中心糸2の撚角度θ1に対して、例えば、±5°以内、好ましくは、±3°以内である。
【0111】
これによって、カーボンナノチューブ巻付糸4は、少なくとも1周、好ましくは、複数周、カーボンナノチューブ中心糸2の周面に巻き付けられる。
【0112】
カーボンナノチューブ巻付糸4がカーボンナノチューブ中心糸2の周面に複数周巻き付けられる場合、カーボンナノチューブ中心糸2の周りには、
図3Bに示すように、カーボンナノチューブ巻付糸4が、カーボンナノチューブ中心糸2の全周にわたって複数積層される。
【0113】
カーボンナノチューブ巻付糸4の積層数としては、例えば、20層以上、好ましくは、50層以上、さらに好ましくは、80層以上、例えば、200層以下、好ましくは、150層以下、より好ましくは、120層以下である。
【0114】
以上によって、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が束ねられるカーボンナノチューブ中心糸2と、カーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられるカーボンナノチューブ巻付糸4とを備えるカーボンナノチューブ繊維1が調製される。
【0115】
カーボンナノチューブ繊維1において、カーボンナノチューブ中心糸2は、カーボンナノチューブ繊維1の略中央に配置されており、カーボンナノチューブ巻付糸4は、カーボンナノチューブ中心糸2の全周にわたって、カーボンナノチューブ中心糸2の周面に略一定の厚み(径方向寸法)で積層されている。
【0116】
このようなカーボンナノチューブ繊維1の径は、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上、さらに好ましくは、10μm以上、例えば、70μm以下、好ましくは、60μm以下、さらに好ましくは、40μm以下、とりわけ好ましくは、20μm以下である。
【0117】
カーボンナノチューブ繊維1の径が、上記下限以上であれば、カーボンナノチューブ繊維1の機械強度を確実に確保することができ、上記上限以下であれば、カーボンナノチューブ繊維1の密度の向上を確実に図ることができる。
【0118】
より具体的には、カーボンナノチューブ繊維1の嵩密度は、例えば、0.6g/cm
3以上、好ましくは、0.8g/cm
3以上、例えば、2.0g/cm
3以下である。なお、カーボンナノチューブ中心糸2が撚糸である場合、カーボンナノチューブ繊維1の嵩密度は、例えば、0.6g/cm
3を超過する。
【0119】
このようなカーボンナノチューブ繊維1の破断強度は、例えば、200mN以上、好ましくは、300mN以上、例えば、800mN以下、好ましくは、700mN以下である。
【0120】
なお、カーボンナノチューブ繊維1の破断強度は、一軸引張強度試験機により測定される。
【0121】
このようなカーボンナノチューブ繊維1は、例えば、炭素繊維が用いられる織物(シート)、電気機器(例えば、モータ、トランス、センサーなど)の導電線材など各種産業製品に利用される。
【0122】
このようなカーボンナノチューブ繊維の製造方法は、
図2に示すように、例えば、カーボンナノチューブ繊維の製造装置の一例としての繊維製造装置20により、連続的に実施される。
【0123】
繊維製造装置20は、第1供給部の一例としての中心糸供給部21と、回収部22と、第2供給部の一例としての巻付糸供給部23とを備えている。
【0124】
中心糸供給部21は、カーボンナノチューブ中心糸2を所定方向一方に向かって送り出すように構成されており、第1カーボンナノチューブ支持体6と、図示しない引出具と、収束部27とを備えている。
【0125】
第1カーボンナノチューブ支持体6は、上記したように、基板8と、カーボンナノチューブ集合体13とを備えている。
【0126】
そして、第1カーボンナノチューブ支持体6は、カーボンナノチューブ集合体13の列13Aの延びる方向が所定方向に沿うように配置されている。
【0127】
また、第1カーボンナノチューブ支持体6のカーボンナノチューブ集合体13は、平面視において略矩形形状を有している。そして、複数の列13Aのそれぞれにおいて、最も所定方向一方に位置するカーボンナノチューブ12は、所定方向と直交する幅方向に直線的に並んでおり、カーボンナノチューブ集合体13の所定方向一端部13Xを構成している。
【0128】
収束部27は、第1カーボンナノチューブ支持体6に対して、所定方向の一方に間隔を空けて配置されている。収束部27は、支持板28と、1対の軸部29とを備えている。
【0129】
支持板28は、幅方向に延びる平面視略矩形形状の板状を有している。
【0130】
1対の軸部29は、支持板28の上面の略中央部分において、互いに僅かな間隔を隔てて配置されている。1対の軸部29のそれぞれは、垂直方向に延びる略円柱形状を有しており、支持板28に、軸芯周りに相対回転可能に支持されている。
【0131】
回収部22は、中心糸供給部21から送り出されたカーボンナノチューブ中心糸2を回収するように構成されており、中心糸供給部21に対して、所定方向の一方に間隔を空けて配置されている。回収部22は、回転部33と、回収軸32と、軸駆動部35と、回転駆動部34とを備えている。
【0132】
回転部33は、所定方向の他方に向かって開放される平面視略コ字状を有しており、1対の軸支持部33Aと、連結部33Bとを一体に有している。
【0133】
1対の軸支持部33Aは、幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。1対の軸支持部33Aのそれぞれは、所定方向に延びる略板形状を有している。
【0134】
連結部33Bは、1対の軸支持部33Aの所定方向の一端部間に架設されている。連結部33Bは、幅方向に延びる略板形状を有している。
【0135】
回収軸32は、1対の軸支持部33Aの所定方向の他端部間に配置されている。回収軸32は、幅方向に延びる略円柱形状を有しおり、その両端部のそれぞれが、対応する軸支持部33Aに回転可能に支持されている。
【0136】
軸駆動部35は、外部から電力が供給されることにより、回収軸32に駆動力を供給するように構成されている。軸駆動部35は、幅方向において1対の軸支持部28Aの間に配置され、所定方向において回収軸32と連結部33Bとの間に配置されている。
【0137】
軸駆動部35は、モータ軸35Aと、駆動伝達ベルト35Bとを備えている。
【0138】
モータ軸35Aは、1対の軸支持部33Aのうち一方の軸支持部33Aに回転可能に支持されており、図示しないモータ本体から駆動力が入力されることで回転する。
【0139】
駆動伝達ベルト35Bは、公知の無端ベルトであって、モータ軸35Aの幅方向一端部と、回収軸32の幅方向一端部とに架け渡されている。
【0140】
回転駆動部34は、外部から電力が供給されることにより、回転部33に駆動力を供給するように構成されている。回転駆動部34は、回転部33に対して、所定方向の一方に配置されている。
【0141】
回転駆動部34は、例えば、公知のモータからなり、モータ本体34Aと、モータ本体34Aに回転可能に支持されるモータ軸34Bとを備えている。そして、モータ軸34Bの所定方向他端部は、回転部33の連結部33Bの幅方向中央に固定されている。これによって、回転部33は、モータ軸34B、つまり、所定方向に沿う軸線を回転中心として回転可能である。
【0142】
巻付糸供給部23は、詳しくは後述するが、中心糸供給部21と回収部22との間に配置されるカーボンナノチューブ中心糸2に対して、カーボンナノチューブ無撚糸3(カーボンナノチューブ巻付糸4)を供給するように構成されている。
【0143】
巻付糸供給部23は、第2カーボンナノチューブ支持体7と、図示しない引出具とを備えている。
【0144】
第2カーボンナノチューブ支持体7は、収束部27と回収部22との間に複数配置されており、具体的には、2つの第2カーボンナノチューブ支持体7である。
【0145】
複数の第2カーボンナノチューブ支持体7のそれぞれは、上記したように、基板8と、カーボンナノチューブ集合体13とを備えている。
【0146】
そして、複数の第2カーボンナノチューブ支持体7のそれぞれは、カーボンナノチューブ集合体13の列13Aの延びる方向が、所定方向および幅方向の両方向と交差するように配置されている。また、複数の第2カーボンナノチューブ支持体7は、カーボンナノチューブ集合体13の列13Aの延びる方向が互いに略平行となるように、所定方向に間隔を空けて配置されている。
【0147】
また、第2カーボンナノチューブ支持体7のカーボンナノチューブ集合体13は、平面視において略矩形形状を有している。そして、複数の列13Aのそれぞれにおいて、最もカーボンナノチューブ中心糸2側に位置するカーボンナノチューブ12は、列13Aの延びる方向と直交する方向に直線的に並んでおり、カーボンナノチューブ集合体13の引出方向下流端部13Yを構成している。
【0148】
このような繊維製造装置20では、第1カーボンナノチューブ支持体6のカーボンナノチューブ集合体13から、図示しない引出具により、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を引き出す。
【0149】
より詳しくは、カーボンナノチューブ集合体13の所定方向一端部13Xを、図示しない引出具により、一括して保持し、所定方向一方に向かって引っ張る。
【0150】
すると、複数の列13Aのそれぞれにおいて、複数のカーボンナノチューブ12が連続するように引き出され、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が形成される。
【0151】
そして、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を、1対の軸部29の間に通過させる。このとき、1対の軸部29のそれぞれは、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3と摺擦することにより、従動回転する。
【0152】
これによって、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が束ねられて、1本のカーボンナノチューブ中心糸2が調製される。
【0153】
そして、カーボンナノチューブ中心糸2を、巻付糸供給部23に対して、幅方向の一方を通過するように、さらに所定方向の一方に向かって引き出して、カーボンナノチューブ中心糸2の所定方向一端部を、回収部22の回収軸32に固定する。これにより、カーボンナノチューブ中心糸2が、中心糸供給部21から回収部22にわたって架け渡される。
【0154】
なお、この状態において、カーボンナノチューブ中心糸2は、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が撚り合わされていない無撚糸である。
【0155】
次いで、複数の第2カーボンナノチューブ支持体7のそれぞれのカーボンナノチューブ集合体13から、図示しない引出具により、複数のカーボンナノチューブ巻付糸4(複数のカーボンナノチューブ無撚糸3)を引き出す。
【0156】
より詳しくは、カーボンナノチューブ集合体13の引出方向下流端部13Yを、図示しない引出具により、一括して保持し、カーボンナノチューブ中心糸2に向かって引っ張る。
【0157】
すると、複数の列13Aのそれぞれにおいて、複数のカーボンナノチューブ12が連続するように引き出され、複数のカーボンナノチューブ巻付糸4が形成される。このとき、複数のカーボンナノチューブ巻付糸4は、引出方向と直交する方向に並列配置され、略シート形状となり、カーボンナノチューブシート14を構成する。
【0158】
そして、複数のカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれの一端部(カーボンナノチューブシート14の一端部)を、収束部27と回収部22との間に配置されるカーボンナノチューブ中心糸2に固定する。
【0159】
次いで、回収部22の回転駆動部34に電力を供給するとともに、軸駆動部35に電力を供給する。
【0160】
すると、回転駆動部34のモータ軸34Bのそれぞれが、所定方向一方から見て時計回り方向に回転し、それに伴って、回転部33が、所定方向一方から見て時計回り方向に回転する。また、軸駆動部35のモータ軸35Aが、幅方向他方から見て時計回り方向に回転し、それに伴って、回収軸32が幅方向他方から見て時計回り方向に回転する。
【0161】
これによって、カーボンナノチューブ中心糸2が、所定方向一方から見て時計回り方向に回転し撚り合わされるとともに、回収軸32に巻き取られる。
【0162】
より詳しくは、カーボンナノチューブ中心糸2は、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が、第1カーボンナノチューブ支持体6のカーボンナノチューブ集合体13から連続的に引き出され、収束部27に束ねられることにより、中心糸供給部21から送り出され、回転しながら、所定方向一方に向かって移動した後、回収軸32に巻き取られる。つまり、カーボンナノチューブ中心糸2は、回転しながら、中心糸供給部21から回収部22に向かって連続的に移動する。
【0163】
このとき、カーボンナノチューブ中心糸2の回転速度(周速度)は、例えば、0.1m/min以上、好ましくは、0.5m/min以上、例えば、10m/min以下、好ましくは、6.0m/min以下、さらに好ましくは、3.0m/min以下である。
【0164】
また、カーボンナノチューブ中心糸2の移動速度は、例えば、0.1m/min以上、好ましくは、0.5m/min以上、例えば、10m/min以下、好ましくは、6.0m/min以下、さらに好ましくは、3.0m/min以下である。
【0165】
そして、カーボンナノチューブ中心糸2に一端部が固定されたカーボンナノチューブ巻付糸4は、カーボンナノチューブ中心糸2の回転および移動に伴って、カーボンナノチューブ中心糸2の撚り方向に沿うように、カーボンナノチューブ中心糸2の周りに螺旋状に巻き付けられる。これにより、複数のカーボンナノチューブ巻付糸4は、第2カーボンナノチューブ支持体7のカーボンナノチューブ集合体13からさらに引き出され、カーボンナノチューブ中心糸2に連続的に供給され、順次巻き付けられる。このとき、複数のカーボンナノチューブ巻付糸4は、巻き方向が互いに同一である。
【0166】
これにより、カーボンナノチューブ中心糸2の周りにカーボンナノチューブ巻付糸4が複数積層されるカーボンナノチューブ繊維1が調製される。
【0167】
その後、カーボンナノチューブ繊維1は、回収軸32の回転により、回収軸32に巻き取られる。
【0168】
以上によって、繊維製造装置20による、カーボンナノチューブ繊維1の製造が完了する。
【0169】
このような第1実施形態では、
図2に示すように、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を束ねてカーボンナノチューブ中心糸2を調製した後、そのカーボンナノチューブ中心糸2に、カーボンナノチューブ巻付糸4(カーボンナノチューブ無撚糸3)が巻き付けられる。そのため、簡易な方法でありながら、カーボンナノチューブ繊維1の密度の向上を容易に図ることができる。
【0170】
また、
図3Bに示すように、カーボンナノチューブ繊維1において、カーボンナノチューブ中心糸2は確実に中心部に配置され、カーボンナノチューブ巻付糸4はカーボンナノチューブ中心糸2の周囲に配置される。そのため、カーボンナノチューブ繊維1において、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4をバランス良く配置できる。
【0171】
つまり、カーボンナノチューブ繊維1の密度の向上を図ることができながら、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4をバランス良く配置できるので、カーボンナノチューブ繊維1の機械特性の向上を確実に図ることができる。
【0172】
また、カーボンナノチューブ中心糸2は、
図3Aに示すように、撚糸として調製される。そのため、カーボンナノチューブ中心糸2の密度の向上を確実に図ることができ、ひいては、カーボンナノチューブ繊維1の密度の向上を確実に図ることができる。
【0173】
また、カーボンナノチューブ巻付糸4は、
図3Aに示すように、カーボンナノチューブ中心糸2の撚り方向に沿うように、カーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる。そのため、カーボンナノチューブ中心糸2を構成するカーボンナノチューブ無撚糸3の撚り方向と、カーボンナノチューブ巻付糸4の巻付方向とを揃えることができる。
【0174】
そのため、カーボンナノチューブ繊維1において、カーボンナノチューブ12の配向性をより確実に確保することができる。
【0175】
また、カーボンナノチューブ無撚糸3は、
図1Dに示すように、基板8に対して垂直に配向される複数のカーボンナノチューブ12から引き出されるので、カーボンナノチューブ無撚糸3において、複数のカーボンナノチューブ12のそれぞれが、カーボンナノチューブ無撚糸3の延びる方向に沿うように配向される。
【0176】
そのため、
図3Bに示すように、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3が束ねられるカーボンナノチューブ中心糸2、および、カーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれにおいて、カーボンナノチューブ12の配向性を確実に確保することができ、カーボンナノチューブ繊維1において、カーボンナノチューブ12の配向性を確実に確保することができる。
【0177】
また、
図1Cに示すように、カーボンナノチューブ集合体13を複数準備する工程は、触媒層11が配置される基板8に原料ガスを供給することにより、触媒層11を起点として、複数のカーボンナノチューブ12が成長する。
【0178】
そのため、複数のカーボンナノチューブ12を確実に基板8に対して垂直に配向することができ、カーボンナノチューブ集合体13を確実に準備することができる。
【0179】
また、繊維製造装置20では、
図2に示すように、中心糸供給部21が、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を束ねて、カーボンナノチューブ中心糸2を供給でき、巻付糸供給部23が、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に供給できる。そして、回収部22が回転することにより、カーボンナノチューブ中心糸2にカーボンナノチューブ巻付糸4を巻き付けることができる。
【0180】
そのため、カーボンナノチューブ中心糸2にカーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられるカーボンナノチューブ繊維1を、効率よく製造することができる。
【0181】
また、カーボンナノチューブ中心糸2にカーボンナノチューブ巻付糸4を巻き付ける工程において、巻付糸供給部23の回収軸32が、幅方向に沿う軸線を中心として回転するとともに、回転部33が、所定方向に沿う軸線を中心として回転する。
【0182】
これによって、カーボンナノチューブ中心糸2が撚り合わされるとともに、カーボンナノチューブ巻付糸4がカーボンナノチューブ中心糸2に螺旋状に巻き付けられる。
【0183】
つまり、カーボンナノチューブ中心糸2の撚り合わせと、カーボンナノチューブ巻付糸4の巻き付けとを同時に実施することができる。そのため、カーボンナノチューブ繊維1の生産効率の向上を図ることができる。
【0184】
なお、第1実施形態の繊維製造装置20では、巻付糸供給部23の回転部33が、所定方向に沿う軸線を中心として回転するが、これに限定されず、中心糸供給部21の第1カーボンナノチューブ支持体6が、所定方向に沿う軸線を中心として回転するように構成することもできる。
【0185】
これによっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
2.第2実施形態
次に、
図4を参照して、本発明のカーボンナノチューブ繊維の製造方法の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0186】
第1実施形態では、
図2に示すように、複数のカーボンナノチューブ巻付糸4が、カーボンナノチューブ中心糸2に対して、互いに巻き方向が同一となるように螺旋状に巻き付けられているが、これに限定されない。
【0187】
第2実施形態では、
図4に示すように、複数のカーボンナノチューブ巻付糸4のうち、少なくとも2つのカーボンナノチューブ巻付糸4が、カーボンナノチューブ中心糸2に対して、巻き方向が互いに異なるように螺旋状に巻き付けられている。
【0188】
このような場合、例えば、繊維製造装置20の巻付糸供給部23において、複数(2つ)の第2カーボンナノチューブ支持体7は、カーボンナノチューブ集合体13の列13Aの延びる方向が互いに交差するように、所定方向に間隔を空けて配置されている。
【0189】
より具体的には、2つの第2カーボンナノチューブ支持体7のうち、所定方向の他方の第2カーボンナノチューブ支持体7は、列13Aの延びる方向が、幅方向の他方から一方に向かうにつれて、所定方向の他方から一方に傾斜するように配置される。また、所定方向の一方の第2カーボンナノチューブ支持体7は、列13Aの延びる方向が、幅方向の他方から一方に向かうにつれて、所定方向の一方から他方に傾斜するように配置される。
【0190】
そして、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付ける工程において、所定方向の他方の第2カーボンナノチューブ支持体7のカーボンナノチューブ集合体13から、引き出される第1のカーボンナノチューブ巻付糸4Aは、カーボンナノチューブ中心糸2に対して、左巻き(S巻き)となるように螺旋状に巻き付けられる。
【0191】
なお、カーボンナノチューブ中心糸2が一方に延びる方向と、第1のカーボンナノチューブ巻付糸4Aが一方に延びる方向とがなす角θ2は、鋭角であって、角θ2の角度は、例えば、20°以上80°以下である。
【0192】
また、所定方向の一方の第2カーボンナノチューブ支持体7のカーボンナノチューブ集合体13から、引き出される第2のカーボンナノチューブ巻付糸4Bは、第1のカーボンナノチューブ巻付糸4Aが巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2に対して、右巻き(Z巻き)となるように螺旋状に巻き付けられる。
【0193】
なお、カーボンナノチューブ中心糸2が一方に延びる方向と、第2のカーボンナノチューブ巻付糸4Bが一方に延びる方向とがなす角θ4は、鈍角であって、角θ4の角度は、例えば、110°以上170°以下である。
【0194】
このような第2実施形態では、第1のカーボンナノチューブ巻付糸4Aおよび第2のカーボンナノチューブ巻付糸4Bが、巻き方向が互いに異なるように、カーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる。
【0195】
そのため、カーボンナノチューブ繊維1において、第1のカーボンナノチューブ巻付糸4Aのカーボンナノチューブ12と、第2のカーボンナノチューブ巻付糸4Bのカーボンナノチューブ12とを互いに異なる方向に配向させることができる。その結果、カーボンナノチューブ繊維1の電気特性を適宜調整することができる。
【0196】
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
3.第3実施形態
次に、
図5を参照して、本発明のカーボンナノチューブ繊維の製造方法の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態では、上記した第1実施形態および第2実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0197】
第3実施形態では、複数のカーボンナノチューブ無撚糸3を凝集させるために、カーボンナノチューブ中心糸2に、カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられる前に、揮発性有機溶媒を付着させる。
【0198】
揮発性有機溶媒は、沸点(at 1atm)が、100℃未満の有機溶媒であって、例えば、アルコール類(例えば、メタノール(沸点:64.7℃)、エタノール(沸点:78.4℃)、プロパノール(沸点:98℃)など)、ケトン類(例えば、アセトン(沸点:56.5℃)など)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル(沸点:35℃)、テトラヒドロフラン(沸点:66℃)など)、アルキルエステル類(例えば、酢酸エチル(沸点:77.1℃)など)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、クロロホルム(沸点:61.2℃)、ジクロロメタン(沸点:40℃)など)などが挙げられる。
【0199】
このような揮発性有機溶媒のなかでは、好ましくは、沸点(at 1atm)が80℃以下の有機溶媒、さらに好ましくは、アルコール類、とりわけ好ましくは、エタノールが挙げられる。
【0200】
このような揮発性有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0201】
そして、カーボンナノチューブ中心糸2に、揮発性有機溶媒を付着させるには、例えば、揮発性有機溶媒を、カーボンナノチューブ中心糸2に向けて霧状に吹き付ける。
【0202】
このような場合、繊維製造装置20の中心糸供給部21は、噴霧部37を備えている。
【0203】
噴霧部37は、収束部27と巻付糸供給部23との間において、カーボンナノチューブ中心糸2に対して間隔を空けて配置されている。
【0204】
噴霧部37は、内部に揮発性有機溶媒が貯留されており、揮発性有機溶媒をカーボンナノチューブ中心糸2に向かって噴霧可能に構成されている。
【0205】
これによって、中心糸供給部21から供給されるカーボンナノチューブ中心糸2は、カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられる前に、噴霧部37により、揮発性有機溶媒が付着される。
【0206】
また、繊維製造装置20は、必要により、乾燥部36を備えている。
【0207】
乾燥部36は、巻付糸供給部23と回収部22との間に配置されている。乾燥部36は、公知の乾燥装置であって、内部に、カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2(カーボンナノチューブ繊維1)が通過するように構成されている。
【0208】
そのため、カーボンナノチューブ中心糸2は、揮発性有機溶媒が付着され、次いで、カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられた後、乾燥部36を通過し、乾燥される。
【0209】
これらによって、揮発性有機溶媒が気化して、カーボンナノチューブ中心糸2の複数のカーボンナノチューブ無撚糸3、および、カーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられるカーボンナノチューブ巻付糸4(カーボンナノチューブ無撚糸3)のそれぞれが、互いに凝集する。
【0210】
そのため、カーボンナノチューブ繊維1の密度のさらなる向上を図ることができる。より具体的には、カーボンナノチューブ繊維1の嵩密度は、例えば、0.6g/cm
3以上、好ましくは、0.8g/cm
3以上、例えば、2.0g/cm
3以下である。
【0211】
その結果、カーボンナノチューブ繊維1の機械特性の向上をより一層確実に図ることができる。
【0212】
このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
4.第4実施形態
次に、
図6を参照して、本発明のカーボンナノチューブ繊維の製造方法の第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態では、上記した第1実施形態〜第3実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0213】
第4実施形態では、カーボンナノチューブ巻付糸4が、カーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる前に、上記の揮発性有機溶媒に浸漬される。
【0214】
このような場合、繊維製造装置20の巻付糸供給部23は、浸漬部38を備えている。
【0215】
浸漬部38は、複数の第2カーボンナノチューブ支持体7のそれぞれに1つずつ対応しており、第2カーボンナノチューブ支持体7と、カーボンナノチューブ中心糸2との間に配置されている。
【0216】
浸漬部38のそれぞれは、浸漬槽40と、複数のローラ39とを備えている。
【0217】
浸漬槽40は、上方に向かって開放される略ボックス形状を有しており、その内部に、揮発性有機溶媒が貯留されている。
【0218】
複数のローラ39のそれぞれは、カーボンナノチューブ巻付糸4が、浸漬槽40内の揮発性有機溶媒に浸漬されるように、所定の位置に適宜配置されている。
【0219】
これによって、第2カーボンナノチューブ支持体7のカーボンナノチューブ集合体13から引き出されたカーボンナノチューブ巻付糸4は、浸漬槽40内の揮発性有機溶媒に浸漬された後、カーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる。
【0220】
その後、カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2は、必要により、乾燥部36を通過するときに乾燥される。
【0221】
そのため、カーボンナノチューブ繊維1の密度のさらなる向上を図ることができ、カーボンナノチューブ繊維1の機械特性の向上をより一層確実に図ることができる。
【0222】
このような第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
5.第5実施形態
次に、
図7を参照して、本発明のカーボンナノチューブ繊維の製造方法の第5実施形態について説明する。なお、第5実施形態では、上記した第1実施形態〜第4実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0223】
第5実施形態では、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれを、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付ける前に、表面処理する。
【0224】
表面処理としては、UV処理またはプラズマ処理が挙げられる。なお、表面処理は、好ましくは、真空下または不活性ガス雰囲気下において実施される。
【0225】
例えば、表面処理がUV処理により実施される場合、繊維製造装置20の中心糸供給部21および巻付糸供給部23のそれぞれは、UV装置43を備えている。
【0226】
中心糸供給部21のUV装置43は、収束部27と巻付糸供給部23との間に配置されており、内部にカーボンナノチューブ中心糸2が通過するように構成されている。
【0227】
UV装置43としては、特に制限されず、表面処理に用いられる公知のUV照射装置が挙げられる。
【0228】
巻付糸供給部23のUV装置43は、複数の第2カーボンナノチューブ支持体7のそれぞれに1つずつ対応しており、第2カーボンナノチューブ支持体7と、カーボンナノチューブ中心糸2との間に配置されている。また、巻付糸供給部23のUV装置43は、内部にカーボンナノチューブ巻付糸4が通過するように構成されている。
【0229】
そして、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれは、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付ける前に、UV装置43により表面処理される。
【0230】
そのため、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれの表面が改質されて、それらの密着性が向上する。
【0231】
また、表面処理がプラズマ処理により実施される場合、繊維製造装置20の中心糸供給部21および巻付糸供給部23のそれぞれは、UV装置43に代えて、プラズマ装置44を備える。
【0232】
プラズマ装置44としては、特に制限されず、表面処理に用いられる公知のプラズマ発生装置が挙げられる。
【0233】
このような第5実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
6.第6実施形態
次に、
図8を参照して、本発明のカーボンナノチューブ繊維の製造方法の第6実施形態について説明する。なお、第6実施形態では、上記した第1実施形態〜第5実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0234】
第6実施形態では、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けて、カーボンナノチューブ繊維1を調製した後、カーボンナノチューブ繊維1をプレスする。
【0235】
このような場合、繊維製造装置20は、1対の加圧ローラ46を備えている。
【0236】
1対の加圧ローラ46は、所定方向において、巻付糸供給部23と回収部22との間に配置されている。1対の加圧ローラ46のそれぞれは、幅方向に延びている。そして、1対の加圧ローラ46は、カーボンナノチューブ繊維1を挟むように、所定方向および幅方向の両方向と交差する方向に互いに向かい合っている。
【0237】
これによって、カーボンナノチューブ中心糸2にカーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ繊維1は、1対の加圧ローラ46の間を通過するときに、プレスされる。
【0238】
そのため、カーボンナノチューブ中心糸2とカーボンナノチューブ巻付糸4とがより一層密着するとともに、カーボンナノチューブ中心糸2におけるカーボンナノチューブ無撚糸3およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれにおいて、複数のカーボンナノチューブ12が互いに凝集する。
【0239】
その結果、カーボンナノチューブ繊維1の機械特性のさらなる向上を確実に図ることができる。
【0240】
また、このような第6実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
7.第7実施形態
次に、
図6および
図9を参照して、本発明のカーボンナノチューブ繊維の製造方法の第7実施形態について説明する。なお、第7実施形態では、上記した第1実施形態〜第6実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0241】
第7実施形態では、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付ける前に、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれを、金属を含有する金属含有液に浸漬した後、乾燥させる。
【0242】
金属としては、特に制限されず、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、スズ、白金、金、および、それらを含む合金などが挙げられる。このような金属のなかでは、好ましくは、アルミニウム、チタン、銅、銀、金、および、それらを含む合金が挙げられ、さらに好ましくは、銅が挙げられる。
【0243】
また、金属含有液としては、例えば、金属粒子が分散される金属分散液や、金属アルコキシドが溶解される金属アルコキシド溶液などが挙げられる。
【0244】
このような場合、繊維製造装置20の中心糸供給部21および巻付糸供給部23のそれぞれは、
図6に示すように、浸漬部38を備えている。
【0245】
なお、中心糸供給部21の浸漬部38は、
図6において仮想線で示されており、収束部27と巻付糸供給部23との間に配置されている。
【0246】
また、複数の浸漬部38の浸漬槽40のそれぞれは、その内部に、金属含有液が貯留されている。
【0247】
そして、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれは、ローラ39により、対応する浸漬槽40内の金属含有液に浸漬される。
【0248】
これによって、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれは、カーボンナノチューブ巻付糸4がカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる前に、対応する浸漬槽40内の金属含有液に浸漬された後、乾燥され、金属を担持する。
【0249】
その後、金属を担持するカーボンナノチューブ巻付糸4が、金属を担持するカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる。
【0250】
また、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付ける前に、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれに、金属を蒸着させることもできる。
【0251】
このような場合、繊維製造装置20の中心糸供給部21および巻付糸供給部23のそれぞれは、
図9に示すように、蒸着部47を備えている。
【0252】
中心糸供給部21の蒸着部47は、収束部27と巻付糸供給部23との間に配置されており、巻付糸供給部23の蒸着部47は、第2カーボンナノチューブ支持体7と、カーボンナノチューブ中心糸2との間に1つずつ配置されている。
【0253】
蒸着部47は、金属蒸着に用いられる公知の装置であって、特に制限されない。
【0254】
これによって、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれは、カーボンナノチューブ巻付糸4がカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる前に、対応する蒸着部47によって金属が蒸着され、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれに金属膜が形成される。
【0255】
その後、金属膜が形成されたカーボンナノチューブ巻付糸4が、金属膜が形成されたカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる。
【0256】
そのため、カーボンナノチューブ繊維1に金属の特性を付与することができるとともに、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けたときに、カーボンナノチューブ中心糸2とカーボンナノチューブ巻付糸4とを確実に密着させることができる。
【0257】
また、
図6および
図9に示すように、第7実施形態では、好ましくは、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けた後、それらを加熱処理する。
【0258】
カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2を加熱処理するには、例えば、それら全体を加熱してもよく、それらのうち、カーボンナノチューブ巻付糸4のみを局所加熱してもよい。
【0259】
カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2全体を加熱する場合、例えば、それらを公知の加熱炉によって加熱する。また、カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2のうち、カーボンナノチューブ巻付糸4のみを局所加熱する場合、例えば、高周波誘導加熱により、カーボンナノチューブ巻付糸4を加熱する。
【0260】
加熱温度としては、例えば、例えば、800℃以上、好ましくは、1000℃以上、例えば、1500℃以下、好ましくは、1300℃以下である。
【0261】
なお、加熱処理は、好ましくは、真空下または不活性ガス雰囲気下において実施される。
【0262】
このような場合、繊維製造装置20は、加熱部48をさらに備えている。
【0263】
加熱部24は、巻付糸供給部23と回収部22との間に配置されている。加熱部24は、公知の加熱炉であって、内部に、カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2が通過するように構成されている。
【0264】
そして、カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2が加熱処理されると、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれが有する金属が互いに溶融する。
【0265】
そのため、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれのカーボンナノチューブ12と、金属とを確実に複合化することができる。
【0266】
また、このような第7実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
8.第8実施形態
次に、
図6を参照して、本発明のカーボンナノチューブ繊維の製造方法の第8実施形態について説明する。なお、第8実施形態では、上記した第1実施形態〜第7実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0267】
第8実施形態では、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付ける前に、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれを、高分子材料を含有する高分子含有液に浸漬した後、乾燥させる。
【0268】
高分子材料としては、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0269】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリアミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP))、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタンなどが挙げられる。このような熱可塑性樹脂のなかでは、好ましくは、ポリエステルが挙げられる。
【0270】
また、高分子材料として、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性高分子を用いることもできる。
【0271】
高分子含有液としては、例えば、高分子材料が溶解される高分子材料溶液などが挙げられる。
【0272】
このような場合、繊維製造装置20の中心糸供給部21および巻付糸供給部23のそれぞれは、
図6に示すように、浸漬部38を備えており、浸漬部38の浸漬槽40には、高分子含有液が貯留されている。
【0273】
そして、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれは、ローラ39により、対応する浸漬槽40内の高分子含有液に浸漬される。
【0274】
これによって、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれは、カーボンナノチューブ巻付糸4がカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる前に、対応する浸漬槽40内の高分子含有液に浸漬された後、乾燥され、高分子材料を担持する。
【0275】
その後、高分子材料を担持するカーボンナノチューブ巻付糸4が、高分子材料を担持するカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けられる。
【0276】
そのため、カーボンナノチューブ繊維1に高分子材料の特性を付与することができるとともに、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けたときに、カーボンナノチューブ中心糸2とカーボンナノチューブ巻付糸4とを確実に密着させることができる。
【0277】
また、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付ける前に、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれを、高分子材料からなるフィルムに重ねるか、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれに、高分子材料が溶解した高分子溶液をエレクトロスピニングすることもできる。
【0278】
また、第8実施形態では、好ましくは、カーボンナノチューブ巻付糸4をカーボンナノチューブ中心糸2に巻き付けた後、それらを加熱処理する。
【0279】
カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2を加熱処理するには、例えば、上記した方法が挙げられる。
【0280】
加熱温度としては、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上、例えば、600℃以下、好ましくは、400℃以下である。
【0281】
このような場合、繊維製造装置20は、加熱部48をさらに備えている。
【0282】
そして、カーボンナノチューブ巻付糸4が巻き付けられたカーボンナノチューブ中心糸2が加熱処理されると、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれが有する高分子材料が互いに溶融する。
【0283】
そのため、カーボンナノチューブ中心糸2およびカーボンナノチューブ巻付糸4のそれぞれのカーボンナノチューブ12と、高分子材料とを確実に複合化することができる。
【0284】
また、このような第8実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0285】
これら第1実施形態〜第8実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0286】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0287】
実施例1
ステンレス製の基板に二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。
【0288】
次いで、基板を所定の温度に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を供給した。これにより、基板上において、平面視略矩形形状のカーボンナノチューブ集合体が形成された。カーボンナノチューブ集合体において、複数のカーボンナノチューブは、互いに略平行となるように延び、基板に対して直交するように配向(垂直配向)されていた。カーボンナノチューブの平均外径は、約12nm、カーボンナノチューブの平均長さは、約300μm、カーボンナノチューブ集合体における、複数のカーボンナノチューブ12の嵩密度は、約30mg/cm
3であった。
【0289】
これによって、基板と、カーボンナノチューブ集合体とを備える第1カーボンナノチューブ支持体が調製された。
【0290】
第1カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体は、長手方向(所定方向)寸法が、200mmであり、幅方向寸法が15mmであった。
【0291】
また、第1カーボンナノチューブ支持体の調製と同様にして、第2カーボンナノチューブ支持体を調製した。
【0292】
第2カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体は、長手方向寸法が、200mmであり、幅方向寸法が15mmであった。
【0293】
そして、第1カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体において、所定方向の一端に配置される複数のカーボンナノチューブを、引出具により、全幅にわたって一括して保持し、所定方向に引っ張った。これによって、第1カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸を引き出した。複数のカーボンナノチューブ無撚糸のそれぞれの径(カーボンナノチューブシートの厚み)は、約60nm〜80nmであった。
【0294】
次いで、複数のカーボンナノチューブ無撚糸を、
図2に示すように、収束部27の1対の軸部29の間を通過させることにより束ねて、カーボンナノチューブ中心糸を調製した。
【0295】
次いで、カーボンナノチューブ中心糸の所定方向一端部を、回収部22の回収軸32に固定し、カーボンナノチューブ中心糸を、第1カーボンナノチューブ支持体から回収部22にわたって架け渡した。
【0296】
また、第2カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体において、長手方向の一端に配置される複数のカーボンナノチューブを、引出具により、全幅にわたって一括して保持し、長手方向に引っ張った。これによって第2カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸(以下、カーボンナノチューブ巻付糸とする。)を引き出した。複数のカーボンナノチューブ巻付糸は、カーボンナノチューブ巻付糸の延びる方向と直交する方向に並列配置されており、略シート形状を形成していた。複数のカーボンナノチューブ巻付糸のそれぞれの径(カーボンナノチューブシートの厚み)は、約60nm〜80nmであった。
【0297】
次いで、複数のカーボンナノチューブ巻付糸のそれぞれの一端部を、収束部27と回収部22との間に配置されるカーボンナノチューブ中心糸に固定した。
【0298】
そして、回転部33を回転させるとともに、回収軸32を回転させた。これによって、カーボンナノチューブ中心糸が、回転して撚り合わされるとともに、所定方向の一方に移動して、回収軸に巻き取られた。
【0299】
撚り合わされたカーボンナノチューブ中心糸の径は、約24μm〜27μmであった。カーボンナノチューブ中心糸の密度は、約0.8g/cm
3であった。
【0300】
このとき、複数のカーボンナノチューブ巻付糸は、カーボンナノチューブ中心糸の回転および移動に伴って、カーボンナノチューブ中心糸の周りに螺旋状に巻き付けられた。
【0301】
以上によって、カーボンナノチューブ中心糸の周りにカーボンナノチューブ巻付糸が、約100層積層されるカーボンナノチューブ繊維を得た。カーボンナノチューブ繊維の径は、約30μm〜35μmであった。カーボンナノチューブ繊維の密度は、0.9g/cm
3であった。
【0302】
実施例2
実施例1と同様にして、長手方向(所定方向)寸法が、200mmであり、幅方向寸法が40mmであるカーボンナノチューブ集合体を備える第1カーボンナノチューブ支持体と、長手方向(所定方向)寸法が、200mmであり、幅方向寸法が15mmであるカーボンナノチューブ集合体を備える第2カーボンナノチューブ支持体とを準備した。
【0303】
次いで、第1カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸を引き出した後、それらを束ね撚り合わせて、カーボンナノチューブ中心糸を調製した。
【0304】
撚り合わされたカーボンナノチューブ中心糸の径は、約40μm〜45μmであった。カーボンナノチューブ中心糸の密度は、約0.7g/cm
3であった。
【0305】
また、第2カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体から、複数のカーボンナノチューブ巻付糸を引き出し、カーボンナノチューブ中心糸の周りに螺旋状に巻き付けた。
【0306】
以上によって、カーボンナノチューブ中心糸の周りにカーボンナノチューブ巻付糸が、約100層積層されるカーボンナノチューブ繊維を得た。カーボンナノチューブ繊維の径は、約50μm〜55μmであった。カーボンナノチューブ繊維の密度は、約0.8g/cm
3であった。
【0307】
比較例1
実施例1と同様にして、長手方向(所定方向)寸法が、200mmであり、幅方向寸法が30mmであるカーボンナノチューブ集合体を備えるカーボンナノチューブ支持体を準備した。
【0308】
そして、カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸を引き出した後、それらを束ね撚り合わせて、カーボンナノチューブ繊維を得た。撚り合わされたカーボンナノチューブ繊維の径は、約30μm〜33μmであった。カーボンナノチューブ繊維の密度は、約0.6g/cm
3であった。
【0309】
比較例2
実施例1と同様にして、長手方向(所定方向)寸法が、200mmであり、幅方向寸法が60mmであるカーボンナノチューブ集合体を備えるカーボンナノチューブ支持体を準備した。
【0310】
そして、カーボンナノチューブ支持体のカーボンナノチューブ集合体から、複数のカーボンナノチューブ無撚糸を引き出した後、それらを束ねて、カーボンナノチューブ繊維を得た。カーボンナノチューブ繊維の径は、約50μm〜53μmであった。カーボンナノチューブ繊維の密度は、約0.6g/cm
3であった。
【0311】
評価:
実施例1で得られたカーボンナノチューブ繊維は、破断強度が350mN〜400mNであって、比較例1で得られたカーボンナノチューブ繊維(破断強度が240mN〜320mN)に対して、20%程度の強度の向上が確認された。
【0312】
実施例2で得られたカーボンナノチューブ繊維は、破断強度が600mN〜700mNであって、比較例2で得られたカーボンナノチューブ繊維(破断強度が490mN〜600mN)に対して、20%程度の強度の向上が確認された。
【0313】
なお、カーボンナノチューブ繊維の破断強度は、一軸引張強度試験機により測定した。
【0314】
その結果を、表1に示す。
【0315】
【表1】