【実施例】
【0021】
図1および
図2に示すように、成形天井10は、車室天井に応じた形状に形成され、車両の前後方向に長く延在する略矩形状の板体である。前記成形天井10は、硬質ポリウレタンフォームからなる前記基材12と、該基材12の裏面(車体天井を指向する面)に設けたガラスマット(補強材)14と、該基材12の表面(車室を指向する面)に設けたガラスマット(補強材)16と、前記ガラスマット14の裏面に設けた裏面材(表皮材)18と、前記ガラスマット16の表面に設けた表面材(表皮材)20とを上下の厚み方向に積層配置した積層板として構成されている。なお、前記基材12、ガラスマット14,16、裏面材18および表面材20の夫々は、バインダーにより接着されている。
【0022】
(基材12について)
図1、
図2および
図6に示すように、前記成形天井10の中間材となる基材12は、車両の前後方向に長尺な板材であって、発泡固化した第1の硬質ポリウレタンフォーム22に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24A(
図3(b)参照)を接触させて発泡固化したものである。そして実施例の基材12は、
図1から判明する如く、該基材12の長手方向に延在する両端縁(以下、長手端縁と云う)12a,12aに夫々位置する前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22,22と、該基材12の短手方向の中央部に位置する前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24とから基本的に構成されている。すなわち、前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22および第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、互いに隣接して位置し、両ポリウレタンフォーム22,24の境界領域に後述する固化含浸層30が付与されている。なお、第1の硬質ポリウレタンフォーム22および第2の硬質ポリウレタンフォーム24のセルは、完全な独立気泡ではなく、一部の気泡が連通して吸音性等の特性が付与されているものが好適である。
【0023】
(第1の硬質ポリウレタンフォーム22について)
図1、
図2および
図6に示すように、前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22は、連続気泡構造のセルを有し、前記基材12の長手端縁12aから所要の範囲(実施例では20cm〜30cm)で、該基材12の前端から後端に亘って形成されている。第1の硬質ポリウレタンフォーム22の密度は、特に限定されないが、軽量化の観点からは、40kg/m
3以下にするのが好ましく、実施例では30kg/m
3〜40kg/m
3の密度範囲に設定されている。なお、密度は、
図6に示す必要な厚みとした基材12から、第1の硬質ポリウレタンフォーム22の一部を切り出し、この切り出した第1の硬質ポリウレタンフォーム22の重量を測定し、この重量を切り出した第1の硬質ポリウレタンフォーム22の体積で割ることで算出した。以下、第2の硬質ポリウレタンフォーム24、固化含浸層30および高密度層28の密度についても同様に算出した。また、第1の硬質ポリウレタンフォーム22は、厚さを5mmとして測定した通気量(JIS K 6400−7)が、1cm
3/cm
2・S以上であるのが製造上好ましい。
【0024】
(第2の硬質ポリウレタンフォーム24について)
図1、
図2および
図6に示すように、前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、前記2つの第1の硬質ポリウレタンフォーム22の間に、前記該基材12の前端から後端に亘って延在する。この第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、該第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aを、既に発泡固化した前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22に接触させた状態で発泡固化して形成される。また、第2の硬質ポリウレタンフォーム24における後述する高密度層28を除いた部位(以下、一般部26と云う)の密度は、15kg/m
3〜25kg/m
3範囲に設定するのが好ましく、この密度範囲とすることで、成形天井10に要求される各種の性能を良好に発揮させることができる。なお、一般部26の密度を15kg/m
3以上とすることで、座屈が発生し難く成形天井10に必要な剛性を十分に確保することができる。
【0025】
(固化含浸層30について)
図1、
図2および
図6に示すように、前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22と前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24との境界領域には、第1の硬質ポリウレタンフォーム22のセル中に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aが浸透固化した固化含浸層30が基材12の長手方向に帯状に形成されている。前記固化含浸層30の密度は、少なくとも前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22より高くなるよう設定されている。実施例では、固化含浸層30の密度は、35kg/m
3以上となっている。この固化含浸層30は、前記基材12において最も密度の高い領域であり、成形天井10を補強する柱として機能する。また、前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22および第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、固化含浸層30の存在により互いに強固に接合されている。なお、第1の硬質ポリウレタンフォーム22および第2の硬質ポリウレタンフォーム24は何れも硬質ポリウレタンフォームであるため、異なる素材同士を接合する場合に較べて、接合不良は発生し難くなっている。実施例では、前記2つの第1の硬質ポリウレタンフォーム22,22の夫々の内側に、前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24を挟むよう、2つの固化含浸層30,30が形成されている。実施例の各固化含浸層30は、前記基材12の長手端縁12aから前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22の幅寸法だけ内側の位置に、約2mm〜10mmの幅寸法で形成されている。
【0026】
(高密度層28について)
図1、
図2および
図6に示すように、前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24における前記固化含浸層30へ遷移する部位には、発泡倍率の低い前記高密度層28が前端から後端に亘って帯状に形成されている。すなわち、第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、基材12の長手方向に延在する両端縁に前記高密度層28が設けられ、該高密度層28の硬度が、この高密度層28に挟まれた前記一般部26の硬度より高くなっている。すなわち、高密度層28の密度は、少なくとも第2の硬質ポリウレタンフォーム24の一般部26の密度より高くなっている。なお、実施例の高密度層28は、その密度範囲が20kg/m
3〜50kg/m
3に設定されている。高密度層28は、前記固化含浸層30に連なって、該固化含浸層30に沿って基材12の長手方向に帯状に延在しており、固化含浸層30と共に基材12の剛性を高める相乗効果が得られる。
【0027】
(製造方法について)
次に、実施例に係る成形天井10の製造方法について説明する。先ず、
図3および
図4を主に参照して、基材12を製造する方法について説明する。基材12の製造には、
図3〜
図5に示すように、上方に開口する箱状に形成され、目的とする基材12を上下に複数重ねた形状に応じたキャビティ42を有する発泡型40を用いる。この発泡型40は、底内壁44aと、該底内壁44aの端縁に立設された4つの側内壁44b,44b,44c,44cとを備え、左右に対向する一対の側内壁44b,44bが基材12の長手端縁12aに対応するようになっている。
【0028】
先ず、前記第1の硬質ポリウレタンフォーム22からなる一対のブロック体23,23を用意する。ブロック体23は、前記キャビティ42の前記側内壁44bに沿って延在する矩形状の板面を有している。実施例では、
図9に示すように、前記ブロック体23として、別の基材を製造した際に生ずる端材を使用している。すなわち、前記発泡型40でブロック材46を発泡成形し、該ブロック材46における前記キャビティ42の一対の側内壁44b,44bに接触して硬化した端部46a(所謂スキン層)を切り落としてブロック体23としている。すなわち、ブロック体23は、第1の硬質ポリウレタンフォーム22が露出して、切断されたセルが開口する切断端面23aを備えている。
【0029】
図3(a)および
図5に示すように、前記発泡型40のキャビティ42に、発泡固化した第1の硬質ポリウレタンフォーム22からなる一対のブロック体23,23を、前記キャビティ42の一対の側内壁44b,44bに当接させた状態で配置する。この際、ブロック体23は、前記キャビティ42の底内壁44aに載置され、該キャビティ42の側内壁44bを覆うよう該側内壁44bに沿って延在する。実施例では、前記キャビティ42に配置された一対のブロック体23,23は、前記切断端面23aがキャビティ42において後に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aが供給される領域48を指向するよう、該切断端面23aを互いに対向させている。
【0030】
図3(b)に示すように、前記ブロック体23を配置した発泡型40のキャビティ42に、第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aを供給する。前記原料樹脂24Aは、注入機51でキャビティ42における前記一対のブロック体23,23の間の前記供給領域48に注入される。すなわち、原料樹脂24Aはブロック体23の前記切断端面23aに接触する。
【0031】
次に、
図4(a)に示すように、前記原料樹脂24Aを発泡固化させて、一対のブロック体23,23の間に前記第2の硬質ポリウレタンフォーム24を形成する。この際、発泡圧により原料樹脂24Aがブロック体23へ浸透するので、前記ブロック体23と発泡固化した第2の硬質ポリウレタンフォーム24との境界領域には、原料樹脂24Aがブロック体23のセル中に浸透固化した前記固化含浸層30が形成される。なお、原料樹脂24Aは、ブロック体23の前記切断端面23aに開口するセルの存在により、ブロック体23のセル中へ容易に浸透する。そして、該セルへ侵入した原料樹脂24Aは、連通する他のセルへと浸透していく。従って、第1の硬質ポリウレタンフォーム22は連続気泡構造のセルを多く有しているのが好ましく、第1の硬質ポリウレタンフォーム22が、連続気泡構造の所謂連通のセル構造であれば、帯状の固化含浸層30の形成範囲を広く(幅寸法を大きく)でき、成形天井10の剛性の向上が図られる。また、前記原料樹脂24Aが発泡固化する際に、一対のブロック体23に近接する範囲の第2の硬質ポリウレタンフォーム24は、該ブロック体23の存在により発泡倍率が低くなるので、第2の硬質ポリウレタンフォーム24における前記固化含浸層30に遷移する部位には、該第2の硬質ポリウレタンフォーム24の前記一般部26より密度の高い前記高密度層28が形成される。このように、原料樹脂24Aは、ブロック体23のセル中に浸透して前記固化含浸層30を形成すると共に、ブロック体23に近接する領域に所謂スキン層のような高密度層28を形成しながら発泡固化する。そして、発泡型40のキャビティ42には、ブロック体23と第2の硬質ポリウレタンフォーム24とが固化含浸層30により接合された接合体52が形成される。次いで、
図4(b)に示す如く、発泡型40から前記接合体52を脱型した後、該接合体52を必要な厚みに切断することで、
図6に示す如く、長尺板材の基材12が得られる。
【0032】
基材12を製造した後、
図7に示すように、天井製造ライン54において、両面にバインダーを塗布した基材12と、ガラスマット14,16と、裏面材18と、表面材70とを重ねて積層体56とする。そして、
図8に示すように、積層体56を成形型58で加熱プレスしてからトリミングすることで所要形状の成形天井10が得られる。
【0033】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る成形天井10の作用について説明する。成形天井10の基材12に、第1の硬質ポリウレタンフォーム22のセル中に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aが浸透固化した固化含浸層30を帯状に形成したので、該固化含浸層30により成形天井10の剛性を高めることができる。このため、成形天井10は、剛性低下を伴うような軽量化を実施しても、面積の大きな成形天井に要求される剛性を確保することができる。すなわち、成形天井10は、軽量化を図ると共に剛性の確保も併せて達成し得るので、作業者が持ち上げたりする際に基材12に変形や折れが発生し難く、取り扱い性に優れている。また、成形天井10の基材12に、固化含浸層30と隣接して帯状の高密度層28を形成したので、該高密度層28によっても成形天井10の剛性を高めることができる。
【0034】
前記成形天井10は、基材12の長手方向に延在する両端部に、長手方向に延在する固化含浸層30や高密度層28を形成したので、該固化含浸層30や高密度層28により変形や折れの発生し易い基材12の長手方向の剛性を高めることができる。また、成形天井10は、固化含浸層30や高密度層28が基材12の厚みに亘って形成されているので、該固化含浸層30や高密度層28により、基材12の表面側に発生する変形や折れを抑えることができる。
【0035】
次に、実施例に係る成形天井10の製造方法の作用について説明する。成形天井10の製造方法では、発泡型40に第1の硬質ポリウレタンフォーム22からなるブロック体23を配置して、該ブロック体23に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aを接触させて発泡固化することで、ブロック体23のセル中に、原料樹脂24Aが浸透固化した固化含浸層30が形成される。すなわち、得られた成形天井10は、固化含浸層30により剛性が高められるので、前述したように、剛性の確保と軽量化とを両立できる。また、前記製造方法では、成形天井10の剛性を高めるために工場の天井製造ライン54に新たな機構を設ける必要がないので、設備投資の費用を抑える効果も期待できる。
【0036】
前記製造方法では、ブロック体23を前記キャビティ42の側内壁44bに当接させて配置するようにしたので、ブロック体23をキャビティ42へ簡単に位置決めできる。また、ブロック体23はキャビティ42の底内壁44aおよび側内壁44bにより位置規制されるので、ブロック体23に発泡圧が加わってもブロック体23の位置がズレ難く、発泡型40にブロック体23を保持する機構を設ける必要がなく、簡単な構成の発泡型40を採用できる。また、前記製造方法では、ブロック体23の切断端面23aをキャビティ42における原料樹脂24Aの供給領域48に指向するようにしたので、原料樹脂24Aがセルの開口する切断端面23aに接触する。このため、原料樹脂24Aを切断端面23aからブロック体23のセル中に浸透させ易い。なお、第1の硬質ポリウレタンフォーム22が連通のセル構造であれば、セル中に原料樹脂24Aをより浸透させ易い。このように、ブロック体23に積極的に原料樹脂24Aを浸透させることで、浸透する原料樹脂24Aの量を増加させ、固化含浸層30の形成範囲を広くしたり、固化含浸層30の密度を高めたりして、剛性を高める効果の大きな固化含浸層30を形成できる。また、ブロック体23に適切に原料樹脂24Aを浸透させることで、該ブロック体23と第2の硬質ポリウレタンフォーム24との接合強度を高め、基材12に生じる割れや破れなどの発生を抑える効果も期待できる。
【0037】
また、前記製造方法では、発泡型40に前記ブロック体23を配置して、該ブロック体23に第2の硬質ポリウレタンフォーム24の原料樹脂24Aを接触させて発泡固化することで、第2の硬質ポリウレタンフォーム24におけるブロック体23に隣接する部位に、該第2の硬質ポリウレタンフォーム24の前記一般部26より発泡倍率の低い前記高密度層28が形成される。従って、得られた成形天井10は、前述したように、高密度層28によっても剛性が高められる。このように前記製造方法によれば、成形天井10の剛性を高めるために発泡倍率の低い高密度層28を有効に活用できる。また、前記製造方法では、ブロック体23として発泡型40で発泡成形したブロック材46から切り落とした端部46aを使用している。このブロック材46の端部46aは、発泡成形した際に近接するキャビティ42の内壁44の存在により、該ブロック材46の他の部位より発泡倍率が低い所謂スキン層となっており、発泡倍率の均一な所要形状の基材を得るために切除されるのが一般的である。すなわち、前記製造方法では、製品とならないブロック材46の端部46aを有効に活用できる。
【0038】
〔変更例〕
前述した実施例の構成および実施例の製造方法に限定されず、例えば以下のようにも変更可能である。
(1)実施例では、車両内装部材として成形天井を例に挙げたが、これに限定されず、ドアトリムなどであっても本発明を適用できる。
(2)実施例では、2つの固化含浸層を有する基材を例に挙げたが、固化含浸層の数は1つや3つ以上であってもよい。また、固化含浸層の延在方向も基材の長手方向に限定されることはなく、短手方向に延在したり、複数の固化含浸層が異なる方向に延在する構成であってもよい。
(3)第1の硬質ポリウレタンフォームおよび第2の硬質ポリウレタンフォームは、夫々異なる配合の原料樹脂を発泡固化させたものであってもよく、異なる密度や同じ密度であってもよい。
(4)第1の硬質ポリウレタンフォームからなるブロック体としては、ブロック材の端部以外の部分を使用してもよい。また、ブロック体をキャビティの内壁から離間させてキャビティへ配置してもよく、発泡型にブロック体を保持する構成を設けるようにしてもよい。